JP2007317597A - 燃料電池システム及び開閉弁の診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池システムにおいて、インジェクタ下流側におけるガス圧力の大幅な変動を抑制しながら、インジェクタの異常検出を実現させる。
【解決手段】燃料電池10と、燃料供給源30から供給される燃料ガスを燃料電池10へと流すための燃料供給流路31と、燃料供給流路31の上流側のガス状態を調整して下流側に供給するインジェクタ35と、を備える燃料電池システム1であって、燃料供給流路31のインジェクタ上流側における燃料ガスの圧力を低下させる上流圧低下手段(制御装置4及び遮断弁33)と、この上流圧低下手段により燃料供給流路31のインジェクタ上流側における燃料ガスの圧力が低下して所定の閾値未満になった場合に、インジェクタ35に所定時間連続的に通電を行ってインジェクタ35の異常を検出する異常検出手段(制御装置4)と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】燃料電池10と、燃料供給源30から供給される燃料ガスを燃料電池10へと流すための燃料供給流路31と、燃料供給流路31の上流側のガス状態を調整して下流側に供給するインジェクタ35と、を備える燃料電池システム1であって、燃料供給流路31のインジェクタ上流側における燃料ガスの圧力を低下させる上流圧低下手段(制御装置4及び遮断弁33)と、この上流圧低下手段により燃料供給流路31のインジェクタ上流側における燃料ガスの圧力が低下して所定の閾値未満になった場合に、インジェクタ35に所定時間連続的に通電を行ってインジェクタ35の異常を検出する異常検出手段(制御装置4)と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池システム及び開閉弁の診断方法に関する。
従来より、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池システムが提案され、実用化されている。かかる燃料電池システムには、水素タンク等の燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料供給流路が設けられており、燃料供給流路には、燃料供給源からの燃料ガスの供給圧力を一定の値まで低減させる調圧弁(レギュレータ)が設けられるのが一般的である。
現在においては、燃料ガスの供給圧力を例えば2段階に変化させる機械式の可変調圧弁(可変レギュレータ)を燃料供給流路に設けることにより、システムの運転状態に応じて燃料ガスの供給圧力を変化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。 また、近年においては、燃料電池システムの燃料供給流路にインジェクタを配置し、このインジェクタの作動状態を制御することにより燃料供給流路内の燃料ガスの供給圧力を調整する技術が提案されつつある。
インジェクタは、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス状態(ガス流量やガス圧力)を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。制御装置がインジェクタの弁体を駆動して燃料ガスの噴射時期や噴射時間を制御することにより、燃料ガスの流量や圧力を制御することが可能となる。通常、インジェクタの弁体はソレノイド等の電磁駆動装置により駆動され、この電磁駆動装置には外部の制御装置からパルス状励磁電流が供給される。そして、このパルス状励磁電流のオン(開指令)・オフ(閉指令)により、比較的短い駆動周期(例えば数ms〜数10ms)でインジェクタが制御されることとなる。
特開2004−139984号公報
ところで、インジェクタ等の電磁駆動式の開閉弁の異常(例えば、断線や短絡等に起因したインジェクタへの電力供給の遮断やインジェクタの弁固着等)を検出する目的で、開閉弁に比較的長い時間(例えば500ms)の通電を行い、この通電状態を監視する、という手法を採用することが考えられる。
しかし、開閉弁の異常検出のために長時間の通電を行うと、開弁状態が長時間持続することに起因して開閉弁の下流側における燃料ガスの圧力が大幅に変動してしまうため、種々の問題が発生するおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、燃料電池システムにおいて、開閉弁の下流側におけるガス圧力の大幅な変動を抑制しながら、開閉弁の異常検出を実現させることを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料供給流路と、この燃料供給流路の上流側のガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、を備える燃料電池システムであって、燃料供給流路の開閉弁上流側における燃料ガスの圧力を低下させる上流圧低下手段と、この上流圧低下手段により燃料供給流路の開閉弁上流側における燃料ガスの圧力が低下して所定の閾値未満になった場合に、開閉弁に所定時間連続的に通電を行って開閉弁の異常を検出する異常検出手段と、を備えるものである。
また、本発明に係る診断方法は、燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを燃料電池へと流すための燃料供給流路と、この燃料供給流路の上流側のガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、を備える燃料電池システムの開閉弁の診断方法であって、燃料供給流路の開閉弁上流側における燃料ガスの圧力を低下させる第1の工程と、この第1工程により燃料供給流路の開閉弁上流側における燃料ガスの圧力が低下して所定の閾値未満になった場合に、開閉弁に所定時間連続的に通電を行って開閉弁の異常を検出する第2の工程と、を含むものである。
かかる構成及び方法を採用すると、燃料供給流路の開閉弁上流側における燃料ガスの圧力を低下させた状態(圧力が所定の閾値未満になった状態)で開閉弁に連続通電を行って異常検出を行うことができる。従って、開閉弁への連続通電に起因した開閉弁下流側圧力の大幅な変動を抑制することができる。なお、「ガス状態」とは、流量、圧力、温度、モル濃度等で表されるガスの状態を意味し、特にガス流量及びガス圧力の少なくとも一方を含むものとする。また、「開閉弁の異常」とは、断線や短絡等により開閉弁への電力供給が遮断された状態や、開閉弁の閉故障(弁固着)等を意味する。
前記燃料電池システムにおいて、燃料供給流路の開閉弁上流側に配置された遮断弁を有する上流圧低下手段を採用することができる。かかる場合において、遮断弁を閉じた状態で開閉弁の異常を検出する異常検出手段を採用することができる。
また、前記燃料電池システムにおいて、燃料供給流路の開閉弁上流側に配置されたリリーフ流路と、このリリーフ流路に設けられたリリーフ弁と、を有し、開閉弁の上流側の燃料ガスを逃がす上流圧低下手段を採用することもできる。
また、前記燃料電池システムにおいて、燃料電池の起動時、発電一時停止時(例えば間欠運転時)、低負荷運転時及び発電終了時の少なくとも何れか一の時期に開閉弁の異常を検出する異常検出手段を採用することが好ましい。
また、前記燃料電池システム及び診断方法において、インジェクタを開閉弁として採用することができる。
本発明によれば、燃料電池システムにおいて、開閉弁下流側におけるガス圧力の大幅な変動を抑制しながら、開閉弁の異常検出を実現させることが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1について説明する。本実施形態においては、本発明を燃料電池車両(移動体)の車載発電システムに適用した例について説明することとする。
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。本実施形態に係る燃料電池システム1は、図1に示すように、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池10を備えるとともに、燃料電池10に酸化ガスとしての空気を供給する酸化ガス配管系2、燃料電池10に燃料ガスとしての水素ガスを供給する水素ガス配管系3、システム全体を統合制御する制御装置4等を備えている。
燃料電池10は、反応ガスの供給を受けて発電する単電池を所要数積層して構成したスタック構造を有している。燃料電池10により発生した電力は、PCU(Power Control Unit)11に供給される。PCU11は、燃料電池10とトラクションモータ12との間に配置されるインバータやDC‐DCコンバータ等を備えている。また、燃料電池10には、発電中の電流を検出する電流センサ13が取り付けられている。
酸化ガス配管系2は、加湿器20により加湿された酸化ガス(空気)を燃料電池10に供給する空気供給流路21と、燃料電池10から排出された酸化オフガスを加湿器20に導く空気排出流路22と、加湿器21から外部に酸化オフガスを導くための排気流路23と、を備えている。空気供給流路21には、大気中の酸化ガスを取り込んで加湿器20に圧送するコンプレッサ24が設けられている。
水素ガス配管系3は、高圧の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク30と、水素タンク30の水素ガスを燃料電池10に供給するための燃料供給流路としての水素供給流路31と、燃料電池10から排出された水素オフガスを水素供給流路31に戻すための循環流路32と、を備えている。なお、水素タンク30に代えて、炭化水素系の燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、この改質器で生成した改質ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクと、を燃料供給源として採用することもできる。また、水素吸蔵合金を有するタンクを燃料供給源として採用してもよい。
水素供給流路31には、水素タンク30からの水素ガスの供給を遮断又は許容する遮断弁33と、水素ガスの圧力を調整するレギュレータ34と、インジェクタ35と、が設けられている。また、インジェクタ35の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力及び温度を検出する一次側圧力センサ41及び温度センサ42が設けられている。また、インジェクタ35の下流側であって水素供給流路31と循環流路32との合流部A1の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力を検出する二次側圧力センサ43が設けられている。
レギュレータ34は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置である。本実施形態においては、一次圧を減圧する機械式の減圧弁をレギュレータ34として採用している。機械式の減圧弁の構成としては、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする公知の構成を採用することができる。本実施形態においては、図1に示すように、インジェクタ35の上流側にレギュレータ34を2個配置することにより、インジェクタ35の上流側圧力を効果的に低減させることができる。このため、インジェクタ35の機械的構造(弁体、筺体、流路、駆動装置等)の設計自由度を高めることができる。また、インジェクタ35の上流側圧力を低減させることができるので、インジェクタ35の上流側圧力と下流側圧力との差圧の増大に起因してインジェクタ35の弁体が移動し難くなることを抑制することができる。従って、インジェクタ35の下流側圧力の可変調圧幅を広げることができるとともに、インジェクタ35の応答性の低下を抑制することができる。
インジェクタ35は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ35は、水素ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座を備えるとともに、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に収容保持され噴射孔を開閉する弁体と、を備えている。本実施形態においては、インジェクタ35の弁体は電磁駆動装置であるソレノイドにより駆動され、このソレノイドに給電されるパルス状励磁電流のオン・オフにより、噴射孔の開口面積を2段階又は多段階に切り替えることができるようになっている。制御装置4から出力される制御信号によってインジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期が制御されることにより、水素ガスの流量及び圧力が高精度に制御される。インジェクタ35は、弁(弁体及び弁座)を電磁駆動力で直接開閉駆動するものであり、その駆動周期が高応答の領域(例えば数ms〜数10ms)まで制御可能であるため、高い応答性を有する。
インジェクタ35は、その下流に要求されるガス流量を供給するために、インジェクタ35のガス流路に設けられた弁体の開口面積(開度)及び開放時間の少なくとも一方を変更することにより、下流側(燃料電池10側)に供給されるガス流量(又は水素モル濃度)を調整する。なお、インジェクタ35の弁体の開閉によりガス流量が調整されるとともに、インジェクタ35下流に供給されるガス圧力がインジェクタ35上流のガス圧力より減圧されるため、インジェクタ35を調圧弁(減圧弁、レギュレータ)と解釈することもできる。また、本実施形態では、ガス要求に応じて所定の圧力範囲の中で要求圧力に一致するようにインジェクタ35の上流ガス圧の調圧量(減圧量)を変化させることが可能な可変調圧弁と解釈することもできる。
なお、本実施形態においては、図1に示すように、水素供給流路31と循環流路32との合流部A1より上流側にインジェクタ35を配置している。また、図1に破線で示すように、燃料供給源として複数の水素タンク30を採用する場合には、各水素タンク30から供給される水素ガスが合流する部分(水素ガス合流部A2)よりも下流側にインジェクタ35を配置するようにする。
循環流路32には、本気液分離器36及び排気排水弁37を介して、排出流路38が接続されている。気液分離器36は、水素オフガスから水分を回収するものである。排気排水弁37は、制御装置4からの指令によって作動することにより、気液分離器36で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素オフガス(燃料オフガス)と、を外部に排出(パージ)するものである。また、循環流路32には、循環流路32内の水素オフガスを加圧して水素供給流路31側へ送り出す水素ポンプ39が設けられている。なお、排気排水弁37及び排出流路38を介して排出される水素オフガスは、希釈器40によって希釈されて排気流路23内の酸化オフガスと合流するようになっている。
制御装置4は、車両に設けられた加速操作部材(アクセル等)の操作量を検出し、加速要求値(例えばトラクションモータ12等の負荷装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、負荷装置とは、トラクションモータ12のほかに、燃料電池10を作動させるために必要な補機装置(例えばコンプレッサ24、水素ポンプ39、冷却ポンプのモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等を含む電力消費装置を総称したものである。
制御装置4は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現されるようになっている。
具体的には、制御装置4は、図2に示すように、燃料電池10の運転状態(電流センサ13で検出した燃料電池10の発電時の電流値)に基づいて、燃料電池10で消費される水素ガスの量(以下「水素消費量」という)を算出する(燃料消費量算出機能:B1)。本実施形態においては、燃料電池10の電流値と水素消費量との関係を表す特定の演算式を用いて、制御装置4の演算周期毎に水素消費量を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、燃料電池10の運転状態(電流センサ13で検出した燃料電池10の発電時の電流値)に基づいて、インジェクタ35下流位置における水素ガスの目標圧力値(燃料電池10への目標ガス供給圧)を算出する(目標圧力値算出機能:B2)。本実施形態においては、燃料電池10の電流値と目標圧力値との関係を表す特定のマップを用いて、制御装置4の演算周期毎に、二次側圧力センサ43が配置された位置における目標圧力値を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、算出した目標圧力値と、二次側圧力センサ43で検出したインジェクタ35下流位置の圧力値(検出圧力値)と、の偏差に基づいてフィードバック補正流量を算出する(フィードバック補正流量算出機能:B3)。フィードバック補正流量は、目標圧力値と検出圧力値との偏差を低減させるために水素消費量に加算される水素ガス流量である。本実施形態においては、PI型フィードバック制御則を用いて、制御装置4の演算周期毎にフィードバック補正流量を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、インジェクタ35の上流のガス状態(一次側圧力センサ41で検出した水素ガスの圧力及び温度センサ42で検出した水素ガスの温度)に基づいてインジェクタ35の上流の静的流量を算出する(静的流量算出機能:B4)。本実施形態においては、インジェクタ35の上流側の水素ガスの圧力及び温度と静的流量との関係を表す特定の演算式を用いて、制御装置4の演算周期毎に静的流量を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、インジェクタ35の上流のガス状態(水素ガスの圧力及び温度)及び印加電圧に基づいてインジェクタ35の無効噴射時間を算出する(無効噴射時間算出機能:B5)。ここで無効噴射時間とは、インジェクタ35が制御装置4から制御信号を受けてから実際に噴射を開始するまでに要する時間を意味する。本実施形態においては、インジェクタ35の上流側の水素ガスの圧力及び温度と印加電圧と無効噴射時間との関係を表す特定のマップを用いて、制御装置4の演算周期毎に無効噴射時間を算出して更新することとしている。
また、制御装置4は、水素消費量とフィードバック補正流量とを加算することにより、インジェクタ35の噴射流量を算出する(噴射流量算出機能:B6)。そして、制御装置4は、インジェクタ35の噴射流量を静的流量で除した値にインジェクタ35の駆動周期を乗じることにより、インジェクタ35の基本噴射時間を算出するとともに、この基本噴射時間と無効噴射時間とを加算してインジェクタ35の総噴射時間を算出する(総噴射時間算出機能:B7)。ここで、駆動周期とは、インジェクタ35の噴射孔の開閉状態を表す段状(オン・オフ)波形の周期を意味する。本実施形態においては、制御装置4により駆動周期を一定の値に設定している。
そして、制御装置4は、以上の手順を経て算出したインジェクタ35の総噴射時間を実現させるための制御信号を出力することにより、インジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期を制御して、燃料電池10に供給される水素ガスの流量及び圧力を調整する。
また、制御装置4は、燃料電池10の起動時、発電一時停止時(間欠運転時等)、低負荷運転時及び発電終了時の少なくとも何れか一の時期に、遮断弁33を閉鎖することにより、水素供給流路31のインジェクタ35上流側における水素ガスの圧力を低下させる。すなわち、制御装置4及び遮断弁33は、本発明における上流圧低下手段の一実施形態を構成する。なお、間欠運転とは、例えばアイドリング時、低速走行時、回生制動時等のような低負荷運転時に燃料電池10の発電を一時的に休止し、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置からトラクションモータ12等の負荷装置への電力供給を行い、燃料電池10には開放端電圧を維持し得る程度の水素ガス及び空気の供給を間欠的に行う運転モードを意味する。
また、制御装置4は、遮断弁33を閉鎖した後に、一次側圧力センサ41を用いて、水素供給流路31のインジェクタ35上流側における水素ガスの圧力(一次圧)を検出し、この一次圧が低下して所定の閾値未満になった場合に、インジェクタ35の異常を検出する。具体的には、制御装置4は、一次圧が所定の閾値未満になった場合に、インジェクタ35に所定時間連続的に通電を行うとともにこの通電状態を観測することにより、断線や短絡によりインジェクタ35への通電が遮断されているか否かを判定する。また、制御装置4は、一次圧が所定の閾値未満になった場合に、インジェクタ35に所定時間連続的に通電を行い、通電によりインジェクタ35の下流側圧力(二次圧)が所定の閾値を超えるだけ上昇しているか否かを判定する。これにより、断線、短絡、弁固着(インジェクタ35の閉故障)等の異常を検出することが可能となる。すなわち、制御装置4は、本発明における異常検出手段の一実施形態として機能する。
続いて、図3のフローチャートを用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1のインジェクタ35の診断方法について説明する。
燃料電池システム1の通常運転時においては、水素タンク30から水素ガスが水素供給流路31を介して燃料電池10の燃料極に供給されるとともに、加湿調整された空気が空気供給流路21を介して燃料電池10の酸化極に供給されることにより、発電が行われる。この際、燃料電池10から引き出すべき電力(要求電力)が制御装置4で演算され、その発電量に応じた量の水素ガス及び空気が燃料電池10内に供給されるようになっている。本実施形態においては、このような通常運転時から間欠運転時等に移行した際に、インジェクタ35の異常検出を行う。
まず、燃料電池システム1の制御装置4は、アクセル操作量の時間履歴等に基づいて、燃料電池10の運転モードが間欠運転モードにあるか否かを判定する(運転モード判定工程:S1)。運転モード判定工程S1において、制御装置4は、例えば「アクセル操作量零の状態が一定時間継続した場合に燃料電池10の運転モードが間欠運転モードにある」ものと判定することができる。
制御装置4は、運転モード判定工程S1において燃料電池10の運転モードが間欠運転モードにないと判定した場合には、インジェクタ35の異常診断を行うことなく、制御を終了する。一方、制御装置4は、運転モード判定工程S1において燃料電池10の運転モードが間欠運転モードにあると判定した場合に、水素供給流路31に設けられた遮断弁33を閉鎖して、インジェクタ35の上流側における水素ガスの圧力(一次圧)を低下させる(遮断弁閉鎖工程:S2)。遮断弁閉鎖工程S2は、本発明における第1の工程に相当するものである。
遮断弁閉鎖工程S2に続いて、制御装置4は、一次側圧力センサ41を用いて一次圧Pを検出し(一次圧検出工程:S3)、一次圧Pが所定の閾値P0未満になったか否かを判定する(一次圧判定工程:S4)。次いで、制御装置4は、一次圧判定工程S3において一次圧Pが所定の閾値P0未満になったものと判定した場合に、インジェクタ35に所定時間(例えば500ms)連続的に通電を行う(連続通電工程:S5)。そして、制御装置4は、この通電状態を観測することにより、断線や短絡によりインジェクタ35への通電が遮断されているか否かを判定するとともに、通電によりインジェクタ35の下流側圧力(二次圧)が所定の閾値を超えるだけ上昇しているか否かを判定する(異常判定工程:S6)。連続通電工程S5及び異常判定工程S6は、本発明における第2の工程に相当するものである。
以上の工程群を経ることにより、インジェクタ35の異常検出を行うことができる。 なお、一次圧判定工程S4で採用する一次圧の閾値P0(インジェクタ35の診断開始条件)や連続通電工程S5における通電時間は、インジェクタ35の診断時に二次圧が過剰に上昇しないように、水素タンク30内の圧力や燃料電池10の仕様・規模等に応じて適宜設定するようにする。また、異常判定工程S6で採用する二次圧の閾値(インジェクタ35の異常判定条件)は、水素タンク30内の圧力や燃料電池10の仕様・規模等に応じて適宜設定することができる。
以上説明した実施形態に係る燃料電池システム1においては、水素供給流路31のインジェクタ35上流側における水素ガスの圧力(一次圧)を低下させた状態(一次圧Pが所定の閾値P0未満になった状態)でインジェクタ35に連続通電を行って異常検出を行うことができる。従って、インジェクタ35への連続通電に起因したインジェクタ35の下流側圧力の大幅な変動を抑制することができる。
なお、以上の実施形態においては、燃料電池システム1の水素ガス配管系3に循環流路32を設けた例を示したが、例えば、図4に示すように、燃料電池10に排出流路38を直接接続して循環流路32を廃止することもできる。かかる構成(デッドエンド方式)を採用した場合においても、制御装置4で前記実施形態と同様に間欠運転時に遮断弁33の閉鎖やインジェクタ35への連続通電等を行うことにより、インジェクタ35の異常検出を行うことができる。
また、以上の実施形態においては、制御装置4及び遮断弁33を本発明における上流圧低下手段として採用した例を示したが、遮断弁33に代えてレギュレータ34を上流圧低下手段の一部として採用することもできる。すなわち、制御装置4が間欠運転時にレギュレータ34を駆動制御してインジェクタ35の上流側の圧力(一次圧)を低下させ、この一次圧が所定の閾値未満となった場合にインジェクタ35への連続通電を行うことにより、インジェクタ35の異常検出を行うことができる。
また、以上の実施形態においては、制御装置4及び遮断弁33を本発明における上流圧低下手段として採用した例を示したが、上流圧低下手段の構成はこれに限られるものではない。例えば、図5に示すように、水素供給流路31のインジェクタ35上流側にリリーフ流路44を分岐接続するとともに、リリーフ流路44にリリーフ弁45を設け、制御装置4が間欠運転時にリリーフ弁45を開放して水素ガスを外部に逃がすことにより、インジェクタ35の上流側の圧力(一次圧)を低下させることもできる。かかる場合には、制御装置4、リリーフ流路44及びリリーフ弁45によって本発明における上流圧低下手段が構成されることとなる。
また、以上の実施形態においては、燃料電池10の間欠運転時(発電一時停止時)に一次圧を低下させてインジェクタ35の異常検出を実施した例を示したが、異常検出を行う時期はこれに限られるものではない。例えば、燃料電池10の起動時、低負荷運転時、発電終了時等において一次圧を低下させてインジェクタ35の異常検出を行うこともできる。
また、以上の実施形態においては、本発明における開閉弁としてインジェクタ35を採用した例を示したが、開閉弁は供給流路(水素供給流路31)の上流側のガス状態を調整して下流側に供給するものであればよく、インジェクタ35に限られるものではない。
また、以上の各実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した例を示したが、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)に本発明に係る燃料電池システムを搭載することもできる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用してもよい。
1…燃料電池システム、4…制御装置(上流圧低下手段、異常検出手段)、10…燃料電池、31…水素供給流路(燃料供給流路)、33…遮断弁(上流圧低下手段)、34…レギュレータ(上流圧低下手段)、35…インジェクタ(開閉弁)、44…リリーフ流路(上流圧低下手段)、45…リリーフ弁(上流圧低下手段)。
Claims (7)
- 燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを前記燃料電池へと流すための燃料供給流路と、この燃料供給流路の上流側のガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、を備える燃料電池システムであって、
前記燃料供給流路の前記開閉弁上流側における燃料ガスの圧力を低下させる上流圧低下手段と、
前記上流圧低下手段により前記燃料供給流路の前記開閉弁上流側における燃料ガスの圧力が低下して所定の閾値未満になった場合に、前記開閉弁に所定時間連続的に通電を行って前記開閉弁の異常を検出する異常検出手段と、
を備える燃料電池システム。 - 前記上流圧低下手段は、前記燃料供給流路の前記開閉弁上流側に配置された遮断弁を有するものであり、
前記異常検出手段は、前記遮断弁を閉じた状態で前記開閉弁の異常を検出するものである、
請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記上流圧低下手段は、前記燃料供給流路の前記開閉弁上流側に配置されたリリーフ流路と、このリリーフ流路に設けられたリリーフ弁と、を有し、前記開閉弁の上流側の燃料ガスを逃がすものである、
請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記異常検出手段は、前記燃料電池の起動時、発電一時停止時、低負荷運転時及び発電終了時の少なくとも何れか一の時期に前記開閉弁の異常を検出するものである、
請求項1から3の何れか一項に記載の燃料電池システム。 - 前記開閉弁は、インジェクタである、
請求項1から4の何れか一項に記載の燃料電池システム。 - 燃料電池と、燃料供給源から供給される燃料ガスを前記燃料電池へと流すための燃料供給流路と、この燃料供給流路の上流側のガス状態を調整して下流側に供給する開閉弁と、を備える燃料電池システムの開閉弁の診断方法であって、
前記燃料供給流路の前記開閉弁上流側における燃料ガスの圧力を低下させる第1の工程と、
前記第1の工程により前記燃料供給流路の前記開閉弁上流側における燃料ガスの圧力が低下して所定の閾値未満になった場合に、前記開閉弁に所定時間連続的に通電を行って前記開閉弁の異常を検出する第2の工程と、
を含む開閉弁の診断方法。 - 前記開閉弁は、インジェクタである、
請求項6に記載の開閉弁の診断方法。
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