JP5199613B2 - 除菌システム - Google Patents

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Description

本発明は、ビル内に供給される空気を除菌する除菌システムに関する。
従来、例えばビル等の建屋の屋上に配置されたルーフトップ型空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のルーフトップ型空気調和装置は、圧縮機及び熱源側熱交換器を有する熱源側ユニットと、送風機及び利用側熱交換器を有する利用側ユニットとを一体に備え、この利用側ユニット内にビル内の空気を吸い込み、この吸い込んだ空気を利用側熱交換器で熱交換した後、再び当該ビル内に供給するようになっている。
特開2000−74414号公報
ところで、ルーフトップ型空気調和装置は、例えば、劇場、映画館、病院、または、ショッピングセンタ等、不特定多数の人が長時間滞在する大空間施設に設けられるため、この大空間に清浄化(除菌)した空気を供給することが望まれている。
しかしながら、ルーフトップ型空気調和装置からビル内へは大量の空気が供給されるため、この大量の空気を除菌することは難しかった。
そこで、本発明の目的は、ルーフトップ型空気調和装置からビル内に供給される空気を簡単な構成で除菌及び脱臭できる除菌システムを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、ビルの屋上に配置されたルーフトップ型空気調和装置の当該ビル内への送風経路を流れる空気を除菌する除菌システムであって、
前記ルーフトップ型空気調和装置は、筺体内に前記送風経路の一部を構成し、熱交換器を配置した熱交換室と、この熱交換室の空気下流側に設けられた除菌室とを備え、これら熱交換室と除菌室とを区分けする仕切板に、前記熱交換室から前記除菌室に向けて送風する送風機を配置し、前記熱交換室における前記熱交換器よりも上流に前記ビル内の空気と屋外空気とが導入されて混合される構成とし、水を電気分解して電解水を生成する電解水生成部と、前記除菌室内に配置され、前記電解水生成部から供給された電解水と前記空気とを接触させて当該空気を除菌する空気除菌部と、前記ビルの屋上に設けられ、外部の給水源から供給された水を貯める水槽と、この水槽と前記電解水生成部との間を繋ぐ給水路とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、ルーフトップ型空気調和装置に連動して、水槽に貯められた水が給水路を介して電解水生成部に供給され、この電解水生成部で電解水が生成される。そして、この電解水がルーフトップ型空気調和装置の送風経路内に配置された空気除菌部に供給されることにより、この送風経路を通過する空気が空気除菌部で除菌されるため、この除菌された空気をビル内に広く行き渡らせることが可能となり、このビル内の被空調空間の空気除菌及び脱臭を簡単な構成で行うことができる。さらに、この水槽はビルの屋上に設けられるため、この水槽と電解水生成部とを繋ぐ給水路の配管長を短く施工することができるため、施工コストの低減を図れるとともに、屋上空間の有効利用を図ることができる。
この構成において、前記水槽の排出口に排水管を備え、この排水管の出口を前記ビルの屋上に形成された排水溝に指向させた構成としても良い。また、前記空気除菌部から流下した水を前記水槽に戻す循環路を備える構成としても良い。
また、前記空気除菌部は、少なくとも前記除菌室の上下方向に並べて配置される複数の気液接触部材を備え、これら気液接触部材に前記電解水生成部から電解水をそれぞれ供給する構成としても良い。
本発明によれば、ルーフトップ型空気調和装置からビル内に供給される空気を簡単な構成で除菌及び脱臭することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、ルーフトップ型空気調和装置(以下、空気調和装置という)110が配置される大空間施設としての映画館100を示す概略図である。
この図1に示すように、映画館100には、前方にスクリーン101が配置され、このスクリーン101の後方に階段状に客席部102が設けられている。一方、映画館100の天井部103には、空気調和装置110から館内に調和空気を吹き出す複数の吹出口104が設けられている。これら吹出口104は、供給ダクト105を介して、空気調和装置110の供給口111に連結されている。
また、映画館100の床部106には、この床部106付近の館内空気(内気)を吸い込む吸込口107が設けられている。この吸込口107は、スクリーン101の背面側に設けられ、このスクリーン101の背面空間を上方に延びる吸気ダクト108を介して、空気調和装置110の内気導入口112に連結されている。また、空気調和装置110には、この空気調和装置110内に屋外の空気(外気)を導入するための外気導入口113が形成されている。
映画館100内の空気(内気)は、矢印Xで示すように、吸込口107から吸い込まれ、吸気ダクト108及び内気導入口112を通じて、空気調和装置110内に導かれる。ここで、空気調和装置110内には、外気導入口113を通じて外気が導かれているため、この外気と上記内気とが当該空気調和装置110内で混合される。この混合された空気は、利用側熱交換器(後述する)で熱交換された後、供給口111及び供給ダクト105を通じて、吹出口104から調和空気として映画館100内に供給される。
空気調和装置110は、例えば、映画館、病院、または、ショッピングセンタ等、不特定多数の人が長時間滞在する大空間施設を有する構造物(ビル)200の屋上に配置されるものであり、図2に示すように、1つの筐体114内に熱源側ユニット1と利用側ユニット2とを一体に備えて構成されている。
具体的には、筐体114内は、仕切板115によって区分けされており、一方の室116に熱源側ユニット1が配置され、他方の室117に利用側ユニット2が配置されている。これら熱源側ユニット1及び利用側ユニット2は、冷媒配管10で連結されて冷媒回路を形成している。
熱源側ユニット1は、図2に示すように、冷媒配管10に設けられた圧縮機11を備え、この圧縮機11の吸込側に、アキュムレータ12が接続され、その吐出側には四方弁13と熱源側熱交換器14と電動膨張弁15とが順に接続されている。また、熱源側ユニット1には、熱源側熱交換器14へ向かって送風する熱源側送風機16が配設されている。
一方、利用側ユニット2は、上記冷媒配管10を介して電動膨張弁15に接続される利用側熱交換器21と、この利用側熱交換器21へ向かって送風する利用側送風機22とを備えて構成され、当該利用側熱交換器21は、上記冷媒配管10を介して上記四方弁13に接続されている。
冷房運転時には、図2に示す実線矢印の方向に冷媒が流れるように、四方弁13が切り換えられる。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、アキュムレータ12を経て熱源側熱交換器14に達し、この熱源側熱交換器14において凝縮されて電動膨張弁15に送られる。この高圧の冷媒は電動膨張弁15で膨張して利用側熱交換器21に流入し、この利用側熱交換器21において蒸発することにより、利用側ユニット2内に導入された空気を冷却する。利用側熱交換器21で蒸発した冷媒は圧縮機11の吸込側に戻る。
また、暖房運転時には、図中に示す破線矢印の方向に冷媒が流れるように、四方弁13が切り換えられる。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、利用側熱交換器21に送られ、この利用側熱交換器21において凝縮することにより、利用側ユニット2内に導入された空気を加温する。利用側熱交換器21で凝縮した冷媒は、電動膨張弁15で膨張して熱源側熱交換器14に流入し、この熱源側熱交換器14で蒸発した後、四方弁13を介してアキュムレータ12に送られ、圧縮機11の吸込側に戻る。
本実施形態では、空気調和装置110には、利用側送風機22の運転により、大空間施設としての映画館100から利用側ユニット2に導入された空気を除菌する除菌システム150が取り付けられている。この除菌システム150は、図2に示すように、利用側ユニット2に導入された空気に活性酸素種を含む電解水を接触させて空気の除菌を行う空気除菌部4と、所定のイオン種を含む水を電気分解して、活性酸素種を含む電解水を生成して上記空気除菌部4に供給する電解水生成部5と、上記空気除菌部4から流下した水を受けるとともに、この水を電解水生成部5に循環供給する循環供給部6とを備えている。
詳述すると、利用側ユニット2が設けられる他方の室117は、図3に示すように、仕切板118によって、さらに熱交換室119と除菌室(送風経路)120とに区分けされている。この熱交換室119には、上記した内気導入口112及び外気導入口113が形成され、これら内気導入口112及び外気導入口113の下流側に利用側熱交換器21が筋交い状に配置されている。また、仕切板118には利用側送風機22が設けられ、この利用側送風機22の運転により、熱交換室119内の空気が除菌室120に送風されるようになっている。この除菌室120には空気除菌部4が配置され、この空気除菌部4の下流側に供給口111が形成されている。これにより、利用側ユニット2に導入された空気は、送風経路としての除菌室120を通過する際に、この除菌室120に配置された空気除菌部4で除菌され、この除菌された空気が供給口111及び供給ダクト105を通じて、吹出口104から映画館100内に供給される。
次に、除菌システム150の各構成について説明する。
空気除菌部4は、図4に示すように、保水性の高く、略同一の大きさに形成された複数(本実施形態では12枚)の気液接触部材41A1〜41F2を備える。具体的には、空気除菌部4は、横並びに配置された一対の気液接触部材(例えば、気液接触部材41A1、41A2)からなる系統を6系統(系統A〜系統F)備えて構成されている。
気液接触部材41A1〜41F2は、この気液接触部材41A1〜41F2に吹き付けられた空気に電解水を接触させるための部材である。これら気液接触部材41A1〜41F2において除菌室120内に吸い込まれた空気が所定の活性酸素種を含む電解水に接触することで、空気中に含まれるウイルス等が不活化されることなどにより、空気の除菌が行われる。
気液接触部材41A1〜41F2は、ハニカム構造に似た3次元構造を持ったフィルタ部材であり、気体に接触するエレメント部をフレームにより支持する構造を有する。エレメント部は、図示を省略するが、波板状の波板部材と平板状の平板部材とが積層されて構成され、これら波板部材と平板部材との間に略三角状の多数の開口が形成されている。従って、エレメント部に空気を通過させる際の気体接触面積が広く確保され、電解水の滴下が可能で、目詰まりしにくい構造になっている。
エレメント部には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)又はセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂を用いるものとする。また、エレメント部には親水性処理が施され、電解水に対する親和性が高められており、これによって、気液接触部材41A1〜41F2の電解水の保水性(湿潤性)が保たれ、後述する活性酸素種(活性酸素物質)と空気との接触が長時間持続される。
気液接触部材の数は、除菌室120を通過する空気量に応じて決定されるものであり、本実施形態では、除菌室120を通過する空気量と気液接触部材41Aの除菌能力(気体接触面積)とから算出され、当該空気を十分に除菌できる数の気液接触部材が除菌室120に配置される。また、これら気液接触部材41A1〜41F2の下方には、当該気液接触部材41A1〜41F2から排出された水を受けるドレンパン44が配置されている。
次に、各系統の気液接触部材の構成について説明する。例えば、系統Aにおいて、気液接触部材41A1、41A2の上部には、この気液接触部材41A1、41A2に均一に電解水を分散させるための散水ボックス42A1、42A2が組み付けられている。この散水ボックス42A1、42A2は、電解水を一時的に貯留するトレー部材を備え、このトレー部材の側面に複数の散水孔(図示略)が開口し、この散水孔から気液接触部材41A1、41A2に対して電解水を滴下するようになっている。
また、気液接触部材41A1、41A2の上面には、散水ボックス42A1、42A2から滴下される電解水をエレメント部に効率よく分散させるため、分流シート(図示略)が配設されている。この分流シートは、液体の浸透性を有する繊維材料からなるシート(織物、不織布等)であり、気液接触部材41A1、41A2の厚み方向断面に沿って一または複数設けられる。
また、気液接触部材41A1、41A2の下部には、これら気液接触部材41A1、41A2から流下した水を受ける電解水トレー43Aが取り付けられている。この電解水トレー43Aの底面には、当該電解水トレー43Aで受けた水をドレンパン44(図4)に導くドレンホース45Aが取り付けられている。他の系統(系統B〜系統F)の構成は、上記した系統Aのものと略同等であるため、同種の符号を付して説明を省略する。
また、循環供給部6は、図4に示すように、貯水タンク61(水槽)と、この貯水タンク61内の水を電解水生成部5に送水する送水ポンプ62と、上記ドレンパン44で受けた水を当該貯水タンク61に戻す循環路63とを備える。貯水タンク61及び送水ポンプ62は、1つの箱体64内に収容されてビル200の屋上における空気調和装置110の近くに配設されている。これにより、循環路63及び電解水生成部5への給水路52(後述する)の管路長を短く施工することができるため、施工コストの低減を図れるとともに、屋上空間の有効利用を図ることができる。
また、貯水タンク61には、この貯水タンク61に市水(水道水)を供給する給水管65を備え、この給水管65には給水弁66と、貯水タンク61内の水量に応じて給水もしくは止水するボールタップ67とが接続されている。ここで、給水管65に接続されて、貯水タンク61に水を供給する給水源は、市水(水道水)或いは給水槽等に貯留された水等のいずれであってもよい。この給水槽等に貯留される水とは、水道水等のように塩化物イオン等のイオン種が予め含有されている水であってもよいし、井戸水等の塩化物イオンの濃度の希薄な水を使う場合には、この水に塩化物イオンを添加して水道水相当に調整された水であってもよい。本実施形態では、これらを総称して水という。
本構成では、ドレンパン44で受けた水を循環路63を通じて貯水タンク61に戻す水循環方式を採用しており、少量の水を有効に利用することで、長時間にわたって効率よく空気の除菌を行うことができる。また、蒸発により貯水タンク61内の水位が減少するので、ボールタップ67が開いて給水口より水道水が適量供給される。このように、水を循環させることにより、ドレンパン44で受けた水をそのまま排出する方式に比べて、水使用量を低減することができ、除菌システム150を運転する際のランニングコストの低減を図ることができる。特に、本実施形態のようなルーフトップ型空気調和装置110では、ビル200内に送風される空気量が多いため、この空気を除菌するために上記気液接触部材41A1〜41F2に供給される水量は、上記空気量に応じて多くなる。従って、ルーフトップ型空気調和装置110において、ドレンパン44で受けた水を循環路63を通じて貯水タンク61に戻すことによる節水効果はより大きい。
また、貯水タンク61には、この貯水タンク61内の水を排出する排出口61Aが形成され、この排出口61Aには、排水弁68を介して排水管69が接続されている。この排水弁68は、例えば、除菌システム150の運転時間が所定時間に達する毎に開放されて貯水タンク61内の水の入れ替えが行われる。また、本構成では、排水管69の出口69Aは、ビル200の屋上に形成された排水溝200Aに指向するように設けられている。これによれば、貯水タンク61から排水管69を通じて排出される水はすべて排水溝200Aに流入されるため、ビル200の屋上の床面に排水されることが防止され、この屋上の多目的利用に支障を来たすことを防止できる。
電解水生成部5は、水を電気分解して電解水を生成する複数(本実施形態では6つ)の電解ユニット51A〜51Fを備え、これら電解ユニット51A〜51Fにそれぞれ上記貯水タンク61から給水する給水路52A〜52Fが接続されている。これら給水路52A〜52Fは、送水ポンプ62に接続された1本の給水路52を6本に分岐して形成されており、図示は省略したが、送水ポンプ62から送られた水が各給水路52A〜52Fに略均等に分流されるように構成されている。
また、電解ユニット51A〜51Fには、これら電解ユニット51A〜51Fから上記各系統A〜Fの気液接触部材41A1〜41F2にそれぞれ電解水を供給するための電解水注入チューブ56A〜56Fが接続されている。これら電解水注入チューブ56A〜56Fはそれぞれ2つに分岐しており、図5に示すように、例えば、系統Aの電解水注入チューブ56Aは、下流側端部で2つの分岐管56A1、56A2に分岐されている。これら分岐管56A1、56A2は、それぞれ散水ボックス42A1、42A2に接続され、これら散水ボックス42A1、42A2を介して、上記気液接触部材41A1、41A2に電解水を供給する。また、電解ユニット51A〜51Fは、1つの箱体54に収容されて、空気調和装置110(特に空気除菌部4)に隣接配置されている。これによれば、上記電解水注入チューブ56A〜56Fの配管長を短く施工することができるため、施工コストの低減を図ることができる。
次に、電解ユニット51Aの構成を説明する。電解ユニット51B〜51Fは、電解ユニット51Aと略同一の構成を有するため説明を省略する。電解ユニット51Aは、図6に示すように、上記貯水タンク61(図4)から給水路52Aを通じて水が供給される電解ユニット本体55Aを有する。この電解ユニット本体55Aの内部には、少なくとも一対の電極57A、58Aが配設され、これら電極57A、58A間に電圧を印加することにより、水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成させる。
ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素分子と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。
電極57A、58Aは、例えば、ベースがチタン(Ti)で皮膜層がイリジウム(Ir)、白金(Pt)から構成された2枚の電極板である。
上記電極57A、58A間に電圧を印加すると、カソード電極(陰極)では、下記式(1)に示すように反応する。
2H2O+2e-→H2+2OH- ・・・(1)
アノード電極(陽極)では、下記式(2)に示すように反応する。
2H2O→O2+4H++4e- ・・・(2)
これらカソード電極及びアノード電極での反応を合わせると、下記式(3)に示すように水が電気分解される。
2H2O→2H2+O2 ・・・(3)
この反応とともに、アノード電極においては、水に含まれる塩素イオン(塩化物イオン:Cl-)が下記式(4)に示すように反応し、塩素(Cl2)が発生する。
2Cl-→Cl2+2e- ・・・(4)
さらに、この塩素は下記式(5)に示すように水と反応し、次亜塩素酸(HClO)と塩化水素(HCl)が発生する。
Cl2+H2O→HClO+HCl ・・・(5)
アノード電極で発生した次亜塩素酸(広義の活性酸素種)は、強力な酸化作用や漂白作用を有する。次亜塩素酸が溶解した水溶液、すなわち電解ユニット51Aにより生成される電解水は、ウイルス等の不活化、殺菌、有機化合物の分解等、種々の空気清浄効果を発揮する。このように、次亜塩素酸を含む電解水が散水ボックス42A1、42A2を介して気液接触部材41A、41Bに滴下されると、利用側送風機22により吹き出された空気が気液接触部材41A、41Bにおいて次亜塩素酸と接触する。これにより、空気中に浮遊するウイルス等が不活化されるとともに、当該空気に含まれる臭気物質が次亜塩素酸と反応して分解され、或いはイオン化して溶解する。従って、空気の除菌及び脱臭がなされ、清浄化された空気が気液接触部材41A、41Bから排出される。
活性酸素種によるウイルス等の不活化の作用機序として、インフルエンザウイルスの例を挙げる。上述した活性酸素種は、インフルエンザウイルスの感染に必須とされるウイルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する作用を有する。この表面蛋白が破壊された場合、インフルエンザウイルスと、インフルエンザウイルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、感染が阻止される。このため、空気中に浮遊するインフルエンザウイルスは、気液接触部材41A、41Bにおいて活性酸素種を含む電解水に接触することにより、感染力を失うこととなり、感染が阻止される。
従って、ルーフトップ型空気調和装置110の除菌室120に気液接触部材41A1〜41F2を配置することにより、この除菌室120を通過する空気が気液接触部材41A1〜41F2で除菌され、図1に示すように、この除菌された空気を映画館100内で広く行き渡らせることが可能となり、大空間施設内での空気除菌及び脱臭を容易に、効率良く行うことができる。
ここで、電解ユニット51A内の電極57A、58Aのうち任意の側に正電位を与えるための電極の切り替えは、電極の極性を反転させることで行うことができ、本実施形態では、不図示の制御手段によって電極57A、58Aに印加する電圧を変化(反転)させることにより、実行可能である。
また、電解水中の活性酸素種の濃度は、除菌するウイルス等を不活化させる濃度となるように調整される。活性酸素種の濃度の調整は、電極57A、58A間に印加する電圧を調整して、電極57A、58A間に流す電流値を調整することにより行われる。
例えば、電極57Aに正の電位を与えて、電極57A、58A間に流れる電流値を、電流密度で20mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)とすると、所定の遊離残留塩素濃度(例えば1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。また、電極57A、58A間に印加する電圧を変更して、電流値を高くすることで、電解水中の次亜塩素酸の濃度を高い濃度に調整できる。
本実施形態によれば、ビル200の屋上に配置されたルーフトップ型空気調和装置110の当該ビル200内への送風経路を流れる空気を除菌する除菌システム150であって、水を電気分解して電解水を生成する電解水生成部5と、空気調和装置110内の除菌室120に配置され、電解水生成部5から供給された電解水と上記空気とを接触させて当該空気を除菌する空気除菌部4と、ビル200の屋上に設けられ、外部の給水源から供給された水を貯める貯水タンク61と、この貯水タンク61と電解水生成部5との間を繋ぐ給水路52とを備えるため、貯水タンク61に貯められた水が給水路52を介して、空気調和装置110と連動して電解水生成部5に供給され、この電解水生成部5で電解水が生成される。そして、この電解水が除菌室120に配置された空気除菌部4に供給されることにより、この除菌室120を通過する空気が空気除菌部4で除菌されるため、この除菌された空気をビル200の映画館100内で広く行き渡らせることが可能となり、この大空間である映画館100での空気除菌及び脱臭を簡単な構成で行うことができる。
さらに、貯水タンク61はビル200の屋上に設けられるため、この貯水タンク61と電解水生成部5とを繋ぐ給水路52の配管長を短く施工することができるため、施工コストの低減を図れるとともに、屋上空間の有効利用を図ることができる。
また、本実施形態によれば、貯水タンク61の排出口61Aに排水管69を備え、この排水管69の出口69Aをビル200の屋上に形成された排水溝200Aに指向させたため、貯水タンク61から排水管69を通じて排出される水はすべて排水溝200Aに流入されるため、ビル200の屋上の多目的利用に支障を来たすことを防止できる。
また、本実施形態によれば、空気除菌部4から流下した水を貯水タンク61に戻す循環路63を備えるため、少量の水を有効に利用することで、長時間にわたって効率よく空気の除菌を行うことができ、水を循環させることにより、ドレンパン44で受けた水をそのまま排出する方式に比べて、水使用量を低減することができ、除菌システム150を運転する際のランニングコストの低減を図ることができる。
また、本実施形態によれば、ルーフトップ型空気調和装置110は、このルーフトップ型空気調和装置110内に送風経路の一部を構成する除菌室120を備え、この除菌室120内に空気除菌部4を配置したため、既存のルーフトップ型空気調和装置110に簡単に除菌システム150を組み込むことができ、当該ルーフトップ型空気調和装置110から映画館100へと送風する空気を簡単に除菌することができる。
また、本実施形態によれば、空気除菌部4は、少なくとも除菌室120の上下方向に並べて配置される複数の気液接触部材41A1〜41F2を備え、これら気液接触部材41A1〜41F2に電解ユニット51A〜51Fから電解水をそれぞれ供給したため、当該気液接触部材41A1〜41F2に略均等に電解水を供給することが可能となり、当該除菌室120を流れる空気を効率良く除菌することができる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、活性酸素種として次亜塩素酸を発生させる構成について説明したが、活性酸素種としてオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を発生させる構成としても良い。この場合、例えば、電極として白金タンタル電極を用いると、イオン種が希薄な水からでも、電気分解により高効率に安定して活性酸素種を生成できる。
すなわち、電極57A、58A間に通電することにより、アノード電極では、下記式(6)〜(8)に示す反応が起こり、オゾンが生成される。
2H2O→4H++O2+4e- ・・・(6)
3H2O→O3+6H++6e- ・・・(7
2H2O→O3+4H++4e- ・・・(8)
一方、カソード電極では、下記式(9)及び(10)に示す反応が起こり、この(10)式では、電極反応により生成したO2 -と溶液中のH+とが結合して、過酸化水素(H22)が生成される。
2H2O+2e-→H2+2OH- ・・・(9)
2 -+e-+2H+→H22 ・・・(10)
この構成では、電極57A、58Aに通電することにより、殺菌力の大きいオゾンや過酸化水素が発生し、これらオゾンや過酸化水素を含んだ電解水を作ることができる。そして、この電解水中におけるオゾンもしくは過酸化水素の濃度を、対象ウイルス等を不活化させる濃度に調整し、この濃度の電解水が供給された気液接触部材41A1、41A2に空気を通過させることにより、空気中に浮遊する対象ウイルス等を不活化することができる。また、臭気等のガス状物質も気液接触部材41A1、41A2を通過する際に、電解水に溶解したり、電解水中のオゾンまたは過酸化水素と反応したりすることにより、空気中から除去されるため、脱臭することができる。
また、本構成では、イオン種が希薄な水(純水、精製水、井戸水、一部の水道水等を含む)を用いた場合も同様の反応を起こさせることが可能である。すなわち、イオン種が希薄な水にハロゲン化合物(食塩等)を添加すれば、上記式(3)及び(4)と同様の反応が起こり、活性酸素種を得ることができる。つまり、除菌システム150は、塩素化合物が十分に添加された水道水に限らず、他の水を用いた場合であっても、十分な空気清浄効果(ウイルス等の不活化、殺菌、脱臭等)を発揮できる。
この場合、電解ユニット51A〜51Fに導入される水に、薬剤(ハロゲン化合物等)が供給される構成とすればよい。例えば、上記薬剤を供給する薬剤供給装置を貯水タンク61に設けてもよく、この薬剤供給装置は、貯水タンク61から電解ユニット51A〜51Fに至る経路上において薬剤を注入するものであってもよいし、電解ユニット51A〜51Fに直接薬剤を注入する構成としてもよい。
ここで、薬剤としては食塩または食塩水を用いることができる。例えば、電解ユニット51A〜51F中の食塩水の濃度を2〜3%(重量パーセント)程度に調整すれば、電解ユニット51A〜51Fにおいて食塩水を電気分解することにより次亜塩素酸もしくは過酸化水素を含んだ電解水(0.5〜1%)を生成できる。この構成によれば、電解ユニット51A〜51Fに導入される水中のイオン種が希薄な場合でも、食塩または食塩水を添加することにより、イオン種を増加させて、水の電気分解時に、高効率に安定して活性酸素種を生成できる。
また、本実施形態では、ルーフトップ型空気調和装置110内に形成された送風経路に気液接触部材41A1〜41F2を配置した構成としたが、これに限るものではなく、例えば、空気調和装置110と映画館100の天井部103に形成された吹出口104とを接続する供給ダクト105内に配置する構成としても良いことは勿論である。
また、本実施形態では、ドレンパン44で受けた水を循環路63を通じて貯水タンク61に戻す水循環方式としているが、このドレンパン44で受けた水をそのまま排出する構成としても良い。この構成では、水使用量が水循環方式に比べて増加するものの、循環路63を設ける必要がなくなるため、設備コストの低減を図ることが可能となる。
本実施形態にかかるルーフトップ型空気調和装置が建屋に設置された状態を示す断面図である。 空気調和装置の概略構成を示す図である。 空気調和装置の内部構成を示す図である。 空気調和装置に設けられた除菌システムの概略構成を示す図である。 気液接触部材の構成を示す斜視図である。 電解ユニットの構成を示す模式図である。
符号の説明
1 熱源側ユニット
2 利用側ユニット
4 空気除菌部
5 電解水生成部
21 利用側熱交換器
22 利用側送風機
41A1、41A2、41B1、41B2、41C1、41C2、41D1、41D2、41E1、41E2、41F1、41F2 気液接触部材
44 ドレンパン
51A、51B、51C,51D、51E、51F 電解ユニット
52、52A、52B、52C,52D、52E、52F 給水路
61 貯水タンク(水槽)
61A 排出口
63 循環路
65 給水管
69 排水管
69A 出口
100 映画館(被空調空間)
120 除菌室(送風経路)
150 除菌システム
200 ビル(建屋)
200A 排水溝

Claims (4)

  1. ビルの屋上に配置されたルーフトップ型空気調和装置の当該ビル内への送風経路を流れる空気を除菌する除菌システムであって、
    前記ルーフトップ型空気調和装置は、筺体内に前記送風経路の一部を構成し、熱交換器を配置した熱交換室と、この熱交換室の空気下流側に設けられた除菌室とを備え、これら熱交換室と除菌室とを区分けする仕切板に、前記熱交換室から前記除菌室に向けて送風する送風機を配置し、前記熱交換室における前記熱交換器よりも上流に前記ビル内の空気と屋外空気とが導入されて混合される構成とし、
    水を電気分解して電解水を生成する電解水生成部と、前記除菌室内に配置され、前記電解水生成部から供給された電解水と前記空気とを接触させて当該空気を除菌する空気除菌部と、前記ビルの屋上に設けられ、外部の給水源から供給された水を貯める水槽と、この水槽と前記電解水生成部との間を繋ぐ給水路とを備えたことを特徴とする除菌システム。
  2. 前記水槽の排出口に排水管を備え、この排水管の出口を前記ビルの屋上に形成された排水溝に指向させたことを特徴とする請求項1に記載の除菌システム。
  3. 前記空気除菌部から流下した水を前記水槽に戻す循環路を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の除菌システム。
  4. 前記空気除菌部は、少なくとも前記除菌室の上下方向に並べて配置される複数の気液接触部材を備え、これら気液接触部材に前記電解水生成部から電解水をそれぞれ供給したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の除菌システム。
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