JP5196604B2 - インゴットスライシング用フレットバーを用いたインゴットの切断方法及び該フレットバーを貼着したインゴット - Google Patents

インゴットスライシング用フレットバーを用いたインゴットの切断方法及び該フレットバーを貼着したインゴット Download PDF

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【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチワイヤソーでインゴットを薄くウエハ状に切断するに際し、インゴットスライシング用フレットバーを用いたインゴットの切断方法及び該フレットバーを貼着したインゴットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光エネルギーを直接電力に変換する太陽電池は、環境保護に対する意識の高まりから、クリーンで再生可能なエネルギー供給源として注目が集まっており、民生機器、住宅機器、輸送用機器、道路管理施設、通信施設等の幅広い分野で用いられている。一般に、太陽電池はその使用材料の種類によって、シリコン系、化合物系、有機系等に分類されるが、発電効率が優れているなどの点から、シリコン系太陽電池が現在主流となっている。
シリコン系太陽電池に用いられるシリコン基板は、引き上げ法(チョクラルスキー法)、キャスト法(鋳造法)等によって得られた単結晶又は多結晶のシリコンインゴットを薄く切断したウエハに種々の加工を施すことによって作製されている。シリコン系太陽電池用インゴットのサイズとしては、現在156mm角のサイズが標準であり、その他125mm角、104mm角等の各種サイズのインゴットが作製されている。またシリコン系太陽電池用インゴットの形状としては、太陽電池モジュールにおいて有効占有面積を広く取ることができ、インゴットからウエハに加工する際の歩留りがよいことなどから角柱形が主流となっている。
【0003】
一方、シリコン、石英等の半導体素材からなる半導体用インゴットの直径は、情報通信分野の飛躍的発展に伴い、従前の8インチ(200mm)から、現在では12インチ(300mm)が主流を占めており、次世代では450mmに移行すると言われている。製造コストの低減化を図るため、半導体用インゴットの大口径化はより一層進んでいる。
【0004】
これらのインゴットを薄いウエハに切断する手段としては、従来使用されてきた内周刃方式のカッターに代わり、最近ではマルチワイヤソーが多用されている。このマルチワイヤソーは、1本のワイヤを複数のガイドローラ間に巻き付けて張り、このワイヤを1方向あるいは往復方向に走行させ、砥粒を含むスラリーを供給しながら、走行するワイヤに押し付けるようにインゴットを移動させて、ワイヤピッチ間隔の厚さにインゴットを切断する装置であり、一度に多くの枚数のウエハを切り出すことができるため、効率的な切断が可能である。また、切り代が狭いため、切断時の材料損失が比較的少なく、さらに、インゴットの大口径化に対して容易に対応することができるという利点も有している。
ウエハの歩留り等を向上させたマルチワイヤソーシステムとして、例えば、インゴットの硬度に近似する当て板を用いた当該システムが報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2003−159642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、太陽電池の需要が増大するにつれて、材料となるシリコン等の需給関係が逼迫してきていることに加えて、太陽電池の利用範囲を更に拡大するために製造コストを低下させる必要があることから、より有効に材料を活用することが課題となっている。このような状況から、マルチワイヤソーでウエハに切り出すにあたり、切り代をできるだけ狭くして切断時の材料損失を減少させ、あるいはウエハの厚さをできるだけ薄くすることによって、1回のスライシング作業で得られるウエハの取得枚数を増やし、材料の利用効率(歩留り)を向上させることが検討されている。ちなみに、太陽電池用インゴットから切り出されるウエハの厚さは、従前の320μmから、現在では180μmが主流となり、今後、その厚さは、ますます薄くなるであろうと予測されている。
【0007】
インゴットから切り出すウエハの厚さを薄くし、あるいは切り代を狭くすることによって1回のスライシング作業で得られるウエハの取得枚数を増やすためには種々の方法が考えられるが、それらの方法のうちの1つとして、ワイヤの径をできるだけ細くして切り代を狭くすることにより材料の歩留りを向上させる方法が広く検討されている。
【0008】
しかしながら、この方法では、ワイヤの径を細くするのでワイヤが断線しやすくなり、インゴットを切断するのに必要な切断荷重をワイヤに加えることが難しくなる。ワイヤにかかる切断荷重が十分でないとインゴットを切断するのに必要な剛性が得られなくなるため、スライス加工に要する時間が増加して作業効率が低下することになる。したがって、ワイヤの径を細くすることには限界があるのが実情である。
【0009】
また、特に角柱形のインゴットを切断する場合は、ワイヤの径を細くするとワイヤにかかる切断荷重を少なくする必要が生じる。またインゴットを切断するのに必要なワイヤのたわみ状態を作り出すのに時間がかかるため、作業効率もよくないという問題があった。またワイヤとインゴットの接点の位置の精度が低下し、切断面間隔が不均一になるという問題もあった。
【0010】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、マルチワイヤソーを利用してインゴットを切断する際、得られるウエハ間での厚みのバラツキを抑え、切断時の材料損失を減少させて材料の利用効率を向上させると共に、スライシングに要する時間を短縮させて作業効率を向上させるインゴットの切断方法及び該フレットバーを貼着したインゴットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために、インゴットの形状、ワイヤの切断挙動等について体系的に検討を行った結果、マルチワイヤソーがインゴットを切断する際、切断開始時において多数のワイヤがインゴット表面の広い面積に接触することによって横ぶれを起こすため、切り代が大きくなって材料損失が増大し、また得られるウエハ間の厚みのバラツキが大きくなること、また横ぶれによってインゴットを切断するのに必要なワイヤの状態である、たわみ状態を作り出すのに時間がかかり、スライシングの作業時間が増加すること、そして、このような現象は特にワイヤとの接触面積が大きい角柱形のインゴットにおいて顕著に現れることを見出した。
そこで、本発明者は、切断開始時におけるワイヤの横ぶれを効果的に防止する方法について鋭意検討した結果、切断開始時におけるワイヤとインゴットとの接触面積をなるべく小さくすればワイヤの横ぶれの程度が減少すること、但し、角柱インゴットの角部より切断を開始したのでは、切断開始時の接触面積は小さくなるが、対角部までの切断距離が大きくなり、時間がかかり過ぎることを知り、さらに検討して、インゴットに付属物を取り付け、切断開始時において、これに切り溝を形成させることが有効であると考え、かかる考えに基づいて新たな技術を開発するに至った。
すなわち、請求項1に記載の第1の発明は、マルチワイヤソーによる四角柱インゴットの切断に際し、切断開始時に切り溝を形成させるために、インゴット表面の一部に、インゴットの長さ方向に沿って貼着させる柱状体であるインゴットスライシング用フレットバーを、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該インゴット表面と一対の該対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを超えるように、前記インゴットスライシング用フレットバーを1本ずつ貼着し、これらのフレットバーを同時に切り始めることを特徴とするインゴットの切断方法である。
請求項2に記載の第2の発明は、マルチワイヤソーによる四角柱インゴットの切断に際し、切断開始時に切り溝を形成させるために、インゴット表面の一部に、インゴットの長さ方向に沿って貼着させる柱状体であるインゴットスライシング用フレットバーを、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の面取りされたコーナーの表面に、該切断開始側インゴット表面を含む平面よりワイヤソー側に突出するように、前記インゴットスライシング用フレットバーを1本ずつ貼着し、これらのフレットバーを同時に切り始めることを特徴とするインゴットの切断方法である。
なお、前記インゴットスライシング用フレットバーは、三角柱形又は四角柱形で、合成樹脂製とし、インゴットとの貼着面に梨地又は凹条が形成されているのが好ましい。
インゴットに係る第1の発明は、四角柱形のインゴットであって、一側面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該一側面と該一対の対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを超えるように、インゴットスライシング用柱状フレットバーを1本ずつ貼着した四角柱形インゴットである。
インゴットに係る第2の発明は、側面間のコーナー部が面取りされた四角柱状のインゴットであって、一側面と隣り合う一対の対抗側面により形成される一対のコーナーの表面上に該一側面を超えるように、インゴットスライシング用柱状フレットバーを1本ずつ貼着した四角柱形インゴットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチワイヤソーによる切断開始時において、ワイヤが本発明に係るインゴットスライシング用フレットバーと狭い面積で接触して、該フレットバーに切り溝が形成されるため、ワイヤの横ぶれの程度が減少し、その結果、切り代が減少して材料の利用効率が上昇する。また、横ぶれが防止されるため、より短時間でワイヤがたわみ状態となり、スライシングに要する時間が短縮される。また、得られるウエハ間の厚みのバラツキが低減する。
このように、本発明は、切断時における材料損失を減少させ、得られるウエハ間の厚みのバラツキを小さくし、また作業効率を上昇させるので、製造コストの削減、ウエハ厚みの均一性の向上、及び生産性の向上を図る上で非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 インゴットスライシング用フレットバーをインゴットの切断開始側表面に貼着した状態の一例を示す概略平面図である。
【図2】 インゴットスライシング用フレットバーの各種態様を例示した説明図であり、(a)は三角柱状の当該フレットバーの概略説明図、(b)は四角柱状の当該フレットバーの概略説明図、(c)は断面凸状の当該フレットバーの概略説明図である。
【図3】 マルチワイヤソーを用いて、インゴットスライシング用フレットバーを貼着した角柱形のインゴットの切断を開始する段階の状態を示す説明図である。
【図4】 第1の発明に係る、インゴットスライシング用フレットバーをインゴットの対向側面に貼着した状態の一例を示す概略断面図である。
【図5】 第2の発明に係る、インゴットスライシング用フレットバーをインゴットのコーナーに貼着した状態の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1:インゴット
2:インゴットスライシング用フレットバー
3:ワイヤ
4A、4B、4C:ワイヤガイドローラ
5:台座
6:当て板
7:切断液(スラリー液)
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、インゴットスライシング用フレットバーをインゴットの切断開始側表面に貼着した状態の一例を示す概略正面図であり、図1中、1はインゴット、2はインゴットスライシング用フレットバーである。また、図4は、第1の発明に係るインゴットスライシング用フレットバーをインゴットの対向側面に貼着した状態の一例を示す概略断面図、図5は、第2の発明に係るインゴットスライシング用フレットバーをインゴットのコーナーに貼着した状態の一例を示す概略断面図であり、図4、5中、1はインゴット、2はインゴットスライシング用フレットバー、3はワイヤである。
【0016】
切断の対象物であるインゴット1は、太陽電池用インゴット、半導体用インゴットのいずれであってもよい。具体的には、単結晶又は多結晶のシリコン、石英、水晶、サファイア、GaPやInP等の化合物半導体等の素材からなり、角柱形(四角柱形、八角柱形等)、円柱形等の適宜の形状を有するインゴットである。しかしながら、上述したように、インゴットスライシング用フレットバーの作用が、切断開始時においてワイヤとの接触面積を狭くするという点に鑑みれば、もともと切断開始時においてワイヤとの接触面積が小さい円柱形のインゴットではなく、ワイヤとの接触面積が大きい角柱形の形状を有するインゴットが適しており、したがって、通常、角柱形の形状を有するシリコン系太陽電池用インゴットが、本発明の効果が顕著に現れるという点で好適である。
【0017】
また、従来の内周刃方式によるスライシングでは、インゴットの口径が大きくなるにつれて刃厚を大きくする必要があるが、刃厚が大きくなるとそれに伴って切り代が必然的に多くなり材料損失が大きくなる。そのため直径300mm以上の円柱形のインゴットに対して内周刃方式を適用することは従来困難であるが、本発明では、この内周刃方式で切断が困難な直径300mm以上である円柱形のインゴットに対しても有効に適用することができる。
【0018】
本発明に係るインゴットスライシング用フレットバー2は、マルチワイヤソーによるインゴットの切断に際し、切断開始時にワイヤを接触させて切り溝を形成させることにより、ワイヤの横ぶれを阻止してワイヤを均一の間隔に揃えるとともに、インゴットを切断するために必要なワイヤの状態、すなわち、ワイヤがたわんだ状態を早期に作りだすための柱状体である。
【0019】
インゴットスライシング用フレットバー2の形状としては、インゴット表面に貼着できる形状であることが必要であり、例えば、インゴットスライシング用フレットバーの長さ方向に対して垂直に切断したときの断面の周の少なくとも一部が直線である形状や弧状に窪んだ形状等が挙げられる。具体的には、三角柱状あるいは四角柱状が例示されるが、切断開始時点においてワイヤとの接触面積が小さいほどワイヤの横ぶれが小さく、また切り溝が早く形成されて好ましいことから、三角柱状がよく、また四角柱状とする場合は、図1に示すように、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面にインゴットスライシング用フレットバーを貼着するのであれば、インゴット切断用フレットバーの長さ方向に対して垂直方向に切断したときの断面が、高さ(図1中のh)3〜20mm、好ましくは3〜10mm、幅(図1中のw)3〜20mm、好ましくは5〜10mmの略矩形とするのが好適である。高さが20mmを超えるとスライシング時間が必要以上に長くなり、また幅が3mm未満であると成形性、取り扱い等の点で容易ではなく、20mmを超えるとワイヤとの接触面積が大きくなるため効果が十分に発揮されなくなる。なお、インゴットスライシング用フレットバー2の長さは、切断対象のインゴットの長さ等に応じて適宜決定すればよい。
また、図4に示すように、インゴットスライシング用フレットバーを、切断を開始するインゴット表面に隣り合う対向側面に貼着する場合であって、インゴットスライシング用フレットバーの形状を四角柱状とする場合は、インゴット切断用フレットバーの長さ方向に対して垂直方向に切断したときの断面が、高さ5〜50mm、好ましくは10〜40mm、幅8〜16mm、好ましくは5〜10mmの略矩形とするのが好適である。
また、図5に示すように、インゴットスライシング用フレットバーをインゴットの周に貼着する場合であって、インゴットスライシング用フレットバーの形状を四角柱状とする場合は、インゴット切断用フレットバーの長さ方向に対して垂直方向に切断したときの断面が、高さ5〜50mm、好ましくは10〜40mm、幅8〜16mm、好ましくは5〜10mmの略矩形とするのが好適である。
図2に、インゴットスライシング用フレットバーの各種態様を示す。(a)は三角柱状の当該フレットバーの概略説明図、(b)は四角柱状の当該フレットバーの概略説明図、(c)は断面凸状の当該フレットバーの概略説明図である。
【0020】
インゴットスライシング用フレットバー2は、インゴット表面の一部に、インゴットの長さ方向(軸方向)に沿って貼着させる。例えば、図1に示すように、インゴットスライシング用フレットバー2の面のうち、インゴットの軸方向に沿う面で、切断開始側のインゴット表面に貼着させる。その場合、切断開始側のインゴット表面において、インゴットスライシング用フレットバー2を貼着させる位置は任意であり、図1に示すように、切断開始側のインゴット表面の中央部分でもよいし、あるいは一方又は両方の縁付近でもよい。なお、両方の縁付近に貼着させる場合は、2本のインゴットスライシング用フレットバーを用いる。
また、切断開始側のインゴット表面以外にインゴットスライシング用フレットバーを貼着させる態様としては、図4に示すように、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該インゴット表面と一対の該対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを超えるようにフレットバーを1本ずつ貼着させる態様、さらには、図5に示すように、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面と該切断開始側インゴット表面とによって形成されるそれぞれのコーナーが面取りされており、これらのコーナー面(平面又は曲面)にフレットバーを1本ずつ貼着させる態様が例示される。切断開始するインゴット表面と隣り合う一対の対向側面にインゴットスライシング用フレットバーを貼着させる場合、切断を開始するインゴット表面と、該インゴット表面に隣り合う一対の対向側面とによって形成されるコーナーから、インゴットスライシング用フレットバーが0.3〜10mm超える(突出する)ようにインゴットスライシング用フレットバーをインゴットに貼着させるのが好ましい。
インゴットと当該フレットバー2との貼着には、それらの材質、コスト等を考慮して適当な接着剤を用いればよい。また、インゴットスライシング用フレットバー2のインゴット貼着面には、梨地、凹条等を形成するなどして、接着剤との接着力を強化しておくことが、インゴット1から分離するときに接着剤がインゴット1側に残留する可能性を少なくすることができる、という意味合いで好ましい。なお、図2に例示したインゴットスライシング用フレットバーは、曲面を有していないことからわかるように、いずれも主として角柱形のインゴットに対して使用される。
【0021】
インゴットスライシング用フレットバー2の材質については、接着剤の付きがよく、コスト的に安価なものを適宜選択すればよく、具体的には、ガラス、カーボン、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。接着剤の付きがよいことやコストの点から、ガラス、特にすりガラスが好ましい。
一方、加工物の厚さが薄くなることによって、切断されたフレットバーも薄くなり、切断時に割れて切断液中に混入し、再度切断加工部分に入り込み、事故発生することの危険性からみると合成樹脂製がさらに好ましい。
【0022】
次に、インゴットスライシング用フレットバーを用いてインゴットを切断する方法について、図3を参照しながら具体的に説明する。図3は、マルチワイヤソーを用いて、インゴットスライシング用フレットバーを貼着した角柱形のインゴットの切断を開始する段階の状態を示す説明図である。
インゴットの切断にはマルチワイヤソーを使用するが、このマルチワイヤソーは従来一般のものでよく特に限定はない。
図3に例示したマルチワイヤソーは、3本のワイヤガイドローラ4A、4B、4Cに設けられた多数の溝に、細い1本のワイヤ(ピアノ線)3を、一定ピッチ間隔で巻き付けたものであり、末端部はドラム(図示せず)に巻き取るようになっている。
【0023】
切断の手順としては、まず、インゴットスライシング用フレットバーを、インゴット表面の一部に、インゴットの長さ方向(軸方向)に沿って貼着させる。例えば、図3に示すように、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット1表面の一部(図3では中央部付近)にインゴットスライシング用フレットバー2をインゴットの軸方向に貼着する。
その後、図3に示すように、台座5上の当て板6に接着剤で接着したインゴット1を、水平に配置されたワイヤガイドローラ4A、4B間のワイヤに押し付けるように下降移動させ、砥粒を分散させた切断液(スラリー液)7をワイヤ3とインゴットスライシング用フレットバー2の接触部分に連続的に供給しながら切断する。駆動モータ(図示せず)により一方向あるいは往復走行するワイヤ3は、切断開始時点において、インゴット1に貼着したインゴットスライシング用フレットバー2に押し付けられ、それによって押圧力が作用し、また砥粒を介する研削作用によって、当該フレットバーを最初に切削して切り溝を形成し、次いでインゴット1を切断していく。切断開始時にこの切り溝を上記フレットバーに形成させることが本発明の特徴であり、この特徴を有することによって厚さ精度を向上及び材料損失を減少させ、また作業効率を上昇させることが可能となる。
その他、前述したように、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該インゴット表面と一対の該対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを超えるようにフレットバーを1本ずつ貼着させてもよいし(図4参照)、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面と該切断開始側インゴット表面とによって形成されるそれぞれのコーナーが面取りされており、これらのコーナー面(平面又は曲面)にフレットバーを1本ずつ貼着させてもよい(図5参照)。その後は、上記と同様にして、ワイヤ3にて、これらのフレットバーを最初に同時に切削して切り溝を形成し、次いでインゴット1を切断していけばよい。
【0024】
ワイヤ3の材質は、通常、炭素を0.8〜0.9質量%程度含むピアノ線を使用する。またワイヤ3の径は、通常は140〜180μmであるが、本発明によれば、80〜120μmの細い径とすることも可能である。
【0025】
当て板6は、インゴット1の表面形状に適合するように表面が成形される。インゴット1が角柱状であれば、当て板6の接着面は平面に形成し、円柱状であれば円弧状の凹形面に形成する。当て板6の接着面には、梨地、凹条等を形成するなどして接着剤との接着力を強化しておくことが、インゴット1から分離するときに接着剤がインゴット1側に残留する可能性を少なくすることができる、という意味合いで好ましい。
【0026】
図3に示した例では、マルチワイヤソーとして、インゴット1を押し下げて多数張られているワイヤ3に押し付けるタイプを示したが、その他180°反転させた状態でインゴットが押し上げられて押し付けるタイプ、90°回転した状態で横方向に押し付けるタイプのものでもよい。
また、図3では、ワイヤガイドローラが3個用いられる例を示したが、ワイヤガイドローラが2個の場合、あるいは4個以上の場合であってもよい。
【0027】
切断液7の供給は、特にインゴット1の両側から行ってもよいし、インゴット1に向かってワイヤ3の側から(図3で下から上に向けて)供給しても差し支えない。
【0028】
このようにして、インゴットはマルチワイヤソーによりウエハにスライスされるが、インゴットの表面に貼着されたインゴットスライシング用フレットバーも同時にスライスされる。スライスされたインゴットスライシング用フレットバーは、ウエハから分離されて廃棄されるが、これを再回収し、溶融するなどしてインゴットスライシング用フレットバーに再成形してリサイクルすることもできる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
(実施例1)
四角柱の太陽電池用多結晶シリコンインゴット(156mm角、長さ200mm)を用意し、長さ方向に対して垂直方向に切断したときの断面が、高さ7mm、幅3mmの略矩形であり、長さ200mmの四角柱形の合成樹脂製柱状体であるインゴットスライシング用フレットバーを、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該インゴット表面と一対の該対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを0.4mm超えるように1本ずつ上記インゴットの長さ方向に沿って接着剤で貼着した(図4参照)。
こうして得られたシリコンインゴットを、図4に示したように、ピアノ線のマルチワイヤソーでスライシングした。その際の実験条件は、ワイヤ平均走行速度600mm/分、ワイヤ張力22N、切断速度0.35mm/分、ワイヤ径0.12mm、ワイヤ間ピッチ0.34mmとした。
その結果、得られたウエハの厚さは約0.18±0.010mm、切り代は約0.16±0.010mm、切断開始から終了までに要した時間は約442分であった。
【0031】
(実施例2)
四角柱の太陽電池用多結晶シリコンインゴット(156mm角、長さ200mm)を用意し、長さ方向に対して垂直方向に切断したときの断面が、高さ7mm、幅4mmの略矩形であり、長さ200mmの四角柱形の合成樹脂製柱状体であるインゴットスライシング用フレットバーを、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面に隣り合うそれぞれのコーナーに設けられたc(chamfer)曲面に1本ずつ上記インゴットの長さ方向に沿って接着剤で貼着した(図5参照)。
こうして得られたシリコンインゴットを、図5に示したように、ピアノ線のマルチワイヤソーでスライシングした。その際の実験条件は、ワイヤ平均走行速度600mm/分、ワイヤ張力22N、切断速度0.35mm/分、ワイヤ径0.12mm、ワイヤ間ピッチ0.34mmとした。
その結果、得られたウエハの厚さは約0.18±0.010mm、切り代は約0.16±0.010mm、切断開始から終了までに要した時間は約441分であった。尚、本実施例では実施しなかったが、このような態様の場合、インゴットスライシング用フレットバーの接着側面をc曲面に合致するよう窪ませると安定度の高い貼着が得られる。
【0032】
(比較例1)
四角柱の太陽電池用多結晶シリコンインゴット(156mm角、長さ200mm)を用意し、インゴットスライシング用フレットバーを用いない以外は、実施例1と同様の方法、条件でこのインゴットをスライシングした。
その結果、得られたウエハの厚さは約0.18±0.015mm、切り代は約0.16±0.015mm、切断開始から終了までに要した時間は約445分であった。
【0033】
上記の結果から、本発明によれば切り代は小さくなり、ウエハ間厚さのバラツキは低減し、スライシングに要する時間は短縮することが確認された。

Claims (7)

  1. マルチワイヤソーによる四角柱インゴットの切断に際し、切断開始時に切り溝を形成させるために、インゴット表面の一部に、インゴットの長さ方向に沿って貼着させる柱状体であるインゴットスライシング用フレットバーを、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該インゴット表面と一対の該対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを超えるように、前記インゴットスライシング用フレットバーを1本ずつ貼着し、これらのフレットバーを同時に切り始めることを特徴とするインゴットの切断方法。
  2. マルチワイヤソーによる四角柱インゴットの切断に際し、切断開始時に切り溝を形成させるために、インゴット表面の一部に、インゴットの長さ方向に沿って貼着させる柱状体であるインゴットスライシング用フレットバーを、マルチワイヤソーが切断を開始する側のインゴット表面と隣り合う一対の面取りされたコーナーの表面に、該切断開始側インゴット表面を含む平面よりワイヤソー側に突出するように、前記インゴットスライシング用フレットバーを1本ずつ貼着し、これらのフレットバーを同時に切り始めることを特徴とするインゴットの切断方法。
  3. 前記インゴットスライシング用フレットバーが三角柱形又は四角柱形である請求項1又は2に記載のインゴットの切断方法。
  4. 前記インゴットスライシング用フレットバーが合成樹脂製である請求項1乃至3のいずれかに記載のインゴットの切断方法。
  5. 前記インゴットスライシング用フレットバーがインゴットとの貼着面に梨地又は凹条が形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載のインゴットの切断方法。
  6. 四角柱形のインゴットであって、一側面と隣り合う一対の対向側面の各表面に、該一側面と該一対の対向側面とによって形成されるそれぞれのコーナーを超えるように、インゴットスライシング用柱状フレットバーを1本ずつ貼着した四角柱形インゴット。
  7. 側面間のコーナー部が面取りされた四角柱状のインゴットであって、一側面と隣り合う一対の対抗側面により形成される一対のコーナーの表面上に該一側面を超えるように、インゴットスライシング用柱状フレットバーを1本ずつ貼着した四角柱形インゴット。
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