JP5196123B2 - ユニバーサルジョイント用密封装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のプロペラシャフトやステアリングシャフトなどの連結手段として用いられるユニバーサルジョイントの軸受部をシールするユニバーサルジョイント用密封装置に関する。
自動車のプロペラシャフト等におけるユニバーサルジョイントは、駆動側回転軸の軸端に設けられるヨークと、従動側回転軸の軸端に設けられるヨークとを、十字形スパイダを介して互いに角変位可能に連結し、前記十字形スパイダを介して駆動側から従動側へ回転力を伝達するものである。十字形スパイダにおける互いに十字形をなすように突出した四本の軸部は、前記駆動側又は従動側のヨークにおける二股状のアームに開設された連結孔にそれぞれニードルベアリングを介して挿入されている。そしてニードルベアリングは、その内部に封入されたグリースが漏洩するのを防止すると共に外部からの泥水等の侵入を防止するために、密封装置によってシールされている。
図４は、ユニバーサルジョイント用密封装置の典型的な従来技術を示す半断面図、図５は、図４の密封装置の装着状態を示す半断面図である。
まず図５において、参照符号１１０はユニバーサルジョイントの十字形スパイダ、参照符号１２０は十字形スパイダ１１０の軸部１１１に遊嵌状態に配置されると共に不図示のヨークの連結孔に嵌着される外輪１２１と、この外輪１２１と前記軸部１１１との間に介在された多数の円柱状の転動体１２２からなるニードルベアリングである。
密封装置１００は、図４及び図５に示されるように、金属環１０１にゴム状弾性材料で一体成形したものであって、十字形スパイダ１１０の軸部１１１の外周面に圧入嵌着される内周シール部１０２と、ニードルベアリング１２０の外輪１２１の端部に転動体１２２の抜け止めのために屈曲形成された内向きフランジ部１２１ａの端面に摺動可能に密接される主シールリップ１０３と、その外周側に設けられ、先端内周面に前記外輪１２１の外周面に摺動可能に密接されるリップエッジ１０４ａが形成されたダストリップ１０４とを備える（例えば特許文献１，２参照）。
また、ダストリップ１０４が、外輪１２１の外周面に摺動可能に密接される複数のリップエッジを有するものも知られている（例えば特許文献３参照）。
特開平１１−１２５３３８号公報 特開平１１−１６６６３２号公報 特開２０００−２０５２９０号公報
この種の密封装置１００は、ダストリップ１０４が外部の泥水や土埃等をシールするものであるため、リップエッジ１０４ａが摩耗等によるダメージを受けやすく、摩耗の進行によって外部の泥水や土埃等が侵入しやすくなってしまう懸念がある。そこで、その対策としては外輪１２１の外周面に対するダストリップ１０４の締め付け力を大きくすることも考えられるが、この場合、摺動トルクの増大を来たしてしまうので好ましくない。
また、特許文献３のように、ダストリップが外輪の外周面に摺動可能に密接される複数のリップエッジを有するものの場合は、摺動箇所が増えることによる摺動トルクの増大を来たすばかりでなく、外輪１２１と密封装置１００との偏心やぶれなどが生じた場合に、ダストリップにおける内側リップエッジの面圧が高くなる部分では外側リップエッジの面圧が低くなり、その円周方向１８０°反対側では逆に内側リップエッジの面圧が低く、外側リップエッジの面圧が高くなるといった状態となって、安定したシール性を得られにくくなる問題がある。
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、摺動トルクの増大を来たすことなく、かつ安定したシール性が確保できるユニバーサルジョイント用密封装置を提供することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置は、ジョイントにおける十字形スパイダの軸部の外周面に嵌着される内周シール部と、前記軸部を相対回転可能に支持するベアリングの外輪の端面に摺動可能に密接される主シールリップと、前記主シールリップの外周側に設けられたダストリップとを備え、前記ダストリップが、前記外輪の外周面に摺動可能に密接される外側リップエッジと、それより内側にあって前記外輪と非接触で近接対向し前記外側リップエッジとの間の谷部空間にグリースを保持する内側リップエッジとを有し、この内側リップエッジは、前記外側リップエッジの摩耗によって前記外輪の外周面に摺動可能となるものである。
また、上記構成において好ましくは、主シールリップが、外輪の端面に摺動可能に密接される内周リップエッジと、それより外周側にあって前記外輪の端面と非接触で近接対向し前記内周リップエッジとの間の谷部空間にグリースを保持する外周リップエッジとを有し、この外周リップエッジは、前記内周リップエッジの摩耗によって前記外輪の端面に摺動可能となるものである。
本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置によれば、ダストリップが外側リップエッジと内側リップエッジの二つのリップエッジを持つものではあるが、このうち内側リップエッジはベアリングの外輪に対して通常は非接触であることに加え、この内側リップエッジによって保持されるグリースが外側リップエッジと外輪の外周面との摺動部を潤滑するため、摺動トルクを低く抑えることができ、しかも外側リップエッジが摩耗した場合は内側リップエッジが前記外輪と摺動するため、長期にわたって外部の泥水や土埃等に対する安定したシール性を確保することができる。
また、主シールリップが、外輪の端面に摺動可能に密接される内周リップエッジと、それより外周側にあって前記外輪の端面と非接触で近接対向し前記内周リップエッジの外側の谷部空間にグリースを保持する外周リップエッジとを有するものとすることによって、主シールリップの摺動トルクも低く抑えることができるほか、内周リップエッジが摩耗した場合は外周リップエッジが外輪の端面と摺動するため、長期にわたって安定したシール性を確保することができる。
以下、本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図１は、ユニバーサルジョイントを示す斜視図、図２は、本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置を単独で示す半断面図、図３は、本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置を示す装着状態の半断面図である。
まずユニバーサルジョイントの概略構成を説明すると、このユニバーサルジョイントは、図１に示されるように、駆動側回転軸及び従動側回転軸のうち一方の軸端に設けられるヨーク１３０と、他方の軸端に設けられるヨーク１４０とを、十字形スパイダ１１０を介して互いに角変位可能に連結したものである。十字形スパイダ１１０は、十字形をなすように互いに直角方向へ突出した四本の軸部（図３における参照符号１１１）と、その互いの交差部側から外径方向へ立ち上がるボス部１１２とを有し、各軸部１１１は、ヨーク１３０，１４０における二股状のアーム１３１，１４１に開設された連結孔１３１ａ，１４１ａにそれぞれニードルベアリング１２０を介して嵌挿されている。
図３に示されるように、ニードルベアリング１２０は、十字形スパイダ１１０の軸部１１１の外周に配置されると共に図１のヨーク１３０又は１４０の連結孔１３１ａ又は１４１ａに嵌着される金属プレス成形品からなる有底円筒状の外輪（シェルカップとも呼ばれる）１２１と、この外輪１２１と前記軸部１１１との間に介在された鋼製の多数の円柱状転動体１２２からなり、内部が不図示のグリースで潤滑されている。
本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置（以下、単に密封装置という）１は、図２及び図３に示されるように、鋼板等の金属板の打ち抜きプレス成形によって製作された金属環１１と、この金属環１１に一体成形（加硫接着）により設けられたゴム状弾性材料からなる内周シール部１２、主シールリップ１３及びダストリップ１４とを備える。
密封装置１における内周シール部１２は、断面Ｕ字形をなす金属環１１の内周側に形成されていて、十字形スパイダ１１０の軸部１１１の外周面に、適当なつぶし代をもって圧入嵌着されるものである。
密封装置１における主シールリップ１３は、図２に示されるように、先端側が大径となるような円錐筒状をなすものであって、その先端部に、図３に示されるニードルベアリング１２０の外輪１２１の端部に転動体１２２の抜け止めのために屈曲形成された内向きフランジ部１２１ａの端面と摺動可能に密接される内周リップエッジ１３ａと、それより外周側にあって前記内向きフランジ部１２１ａの端面と非接触で近接対向される外周リップエッジ１３ｂとを有する。内周リップエッジ１３ａと外周リップエッジ１３ｂの間の谷部空間１３ｃには不図示のグリースが保持される。
密封装置１におけるダストリップ１４は、図２に示されるように、主シールリップ１３の外周側を略円筒状をなして、かつ主シールリップ１３より長く延びるものであって、その先端部の内周面に、図３に示されるニードルベアリング１２０の外輪１２１の外周面と適当な締め代をもって摺動可能に密接される外側リップエッジ１４ａと、それより内側にあって前記外輪１２１における内向きフランジ部１２１ａへの屈曲部１２１ｂと非接触で近接対向される内側リップエッジ１４ｂとを有する。外側リップエッジ１４ａと内側リップエッジ１４ｂの間の谷部空間１４ｃには不図示のグリースが保持される。
以上のように構成された密封装置１は、ニードルベアリング１２０の内部に封入されたグリースが外輪１２１の外部へ漏洩するのを防止すると共に、外部からの泥水や土埃等の侵入を防止するものである。
そしてこの密封装置１によれば、ダストリップ１４は二つのリップエッジ１４ａ，１４ｂを持つが、このうち内側リップエッジ１４ｂはニードルベアリング１２０の外輪１２１に対して通常非接触であり、外側リップエッジ１４ａのみが前記外輪１２１の外周面に適当な締め代で摺接するので、摺動トルクの増大を来たさない。
また、外側リップエッジ１４ａと外輪１２１の外周面との摺動部を潤滑するグリースが内側リップエッジ１４ｂによって外側リップエッジ１４ａの内側の谷部空間１４ｃに保持されるため、摺動トルクを低く抑えることができるばかりでなく、前記谷部空間１４ｃに保持され前記摺動部に介在するグリースが外部からの泥水や土埃の介入を阻むので、シール性が向上すると共に、外側リップエッジ１４ａの摩耗も有効に抑制される。
また、外側リップエッジ１４ａが経時的に摩耗していくと、それに伴って内側リップエッジ１４ｂがニードルベアリング１２０の外輪１２１の屈曲部１２１ｂへ接近して行き、ある程度外側リップエッジ１４ａの摩耗が進行した時点で、内側リップエッジ１４ｂが前記屈曲部１２１ｂの外周面と摺接する。そしてこの場合も、外側リップエッジ１４ａと内側リップエッジ１４ｂの間に保持されたグリースが外部からの泥水や土埃の介入を阻むので、外部の泥水や土埃等に対する安定したシール性を長期にわたって確保することができる。
一方、主シールリップ１３も二つのリップエッジ１３ａ，１３ｂを持つが、このうち外周リップエッジ１３ｂはニードルベアリング１２０の外輪１２１における内向きフランジ部１２１ａの端面に対して通常非接触であり、内周リップエッジ１３ａのみが前記内向きフランジ部１２１ａの端面と摺接しており、外周リップエッジ１３ｂによって内周リップエッジ１３ａの外側の谷部空間１３ｃにグリースが保持されているため、摺動トルクを低く抑えることができ、内周リップエッジ１３ａの摩耗も有効に抑制される。
また、内周リップエッジ１３ａが経時的に摩耗していくと、それに伴って外周リップエッジ１３ｂがニードルベアリング１２０の外輪１２１の内向きフランジ部１２１ａへ接近して行き、ある程度内周リップエッジ１３ａの摩耗が進行した時点で、外周リップエッジ１３ｂが前記内向きフランジ部１２１ａの端面と摺接する。そしてこの場合も、内周リップエッジ１３ａと外周リップエッジ１３ｂの間に保持されたグリースによって、安定したシール性及び潤滑性を長期にわたって確保することができる。
ユニバーサルジョイントを示す斜視図である。 本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置を単独で示す半断面図である。 本発明に係るユニバーサルジョイント用密封装置を示す装着状態の半断面図である。 ユニバーサルジョイント用密封装置の典型的な従来技術を示す半断面図である。 図４の密封装置の装着状態を示す半断面図である。
符号の説明
１ ユニバーサルジョイント用密封装置
１１ 金属環
１２ 内周シール部
１３ 主シールリップ
１３ａ 内周リップエッジ
１３ｂ 外周リップエッジ
１３ｃ，１４ｃ 谷部空間
１４ ダストリップ
１４ａ 外側リップエッジ
１４ｂ 内側リップエッジ
１１０ 十字形スパイダ
１１１ 軸部
１２０ ニードルベアリング（ベアリング）
１２１ 外輪

Claims (2)

  1. ジョイントにおける十字形スパイダの軸部の外周面に嵌着される内周シール部と、前記軸部を相対回転可能に支持するベアリングの外輪の端面に摺動可能に密接される主シールリップと、前記主シールリップの外周側に設けられたダストリップとを備え、前記ダストリップが、前記外輪の外周面に摺動可能に密接される外側リップエッジと、それより内側にあって前記外輪と非接触で近接対向する内側リップエッジとを有し、この内側リップエッジは、前記外側リップエッジの摩耗によって前記外輪の外周面に摺動可能となるものであり、前記外側リップエッジと内側リップエッジの間の谷部空間にグリースが保持されることを特徴とするユニバーサルジョイント用密封装置。
  2. 主シールリップが、外輪の端面に摺動可能に密接される内周リップエッジと、それより外周側にあって前記外輪の端面と非接触で近接対向する外周リップエッジとを有し、この外周リップエッジは、前記内周リップエッジの摩耗によって前記外輪の端面に摺動可能となるものであり、前記内周リップエッジと外周リップエッジの間の谷部空間にグリースが保持されることを特徴とする請求項１に記載のユニバーサルジョイント用密封装置。
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