JPS6344576Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 イ 産業上の利用分野 この考案は、自動車等の車輪用転がり軸受の密
封装置に関するものである。

ロ 従来技術 上記用途に用いられる転がり軸受は、封入グリ
ースの洩れと、外部からの泥水や塵埃等の異物の
侵入を防止するため、軸受内外輪間の環状空間を
確実に密封する必要がある。

さらに、軸受内の限られた小スペース内に配さ
れて十分な密封性能を発揮するような厳しい設計
が求められている。

ところで、自動車等の車輪用転がり軸受の密封
装置として、例えば、第１図に示す様に、互に逆
対称な略Ｌ字形断面の金属環１，２同志を抱き合
せ状態に組合せて、両金属環１，２を内輪３と外
輪４とに個別に嵌着し、両金属環１，２が形成す
る内部環状空間５内に、複数のシールリツプをも
つ弾性シール部材６を設けたものが、特開昭56−
6921号公報に開示されている。

この密封装置は、両金属環１，２の軸方向対向
面の一方に弾性シール部材６を固着し、この弾性
シール部材６には、軸方向に平行に延びる複数の
シールリツプを設け、各シールリツプの先端を他
方の金属環の半径方向対向面に直角に当接させて
いる。

しかし乍ら、上記構造であると、リツプが異物
の侵入方向に向いていないのでシール作用が十分
でない。また、リツプを軸方向に当接させている
ため、トルクが増大し、発熱が大きく、リツプの
寿命が低下し、また、軸受に発熱が伝わつて軸受
全体の温度上昇を招く不具合がある。

ハ 考案の目的 この考案は、限られたスペースで、内部からの
グリースの洩れ防止と、外部からの異物の侵入防
止とに有効で、低トルクで発熱が少なく、極めて
長寿命な転がり軸受用密封装置を提供することを
目的としている。

ニ 考案の構成 この考案は内外輪間に配置される転がり軸受用
密封装置であつて、上記密封装置を、内輪に嵌着
されるダストシール要素と、外輪に嵌着されるグ
リースシール要素とで構成し、上記ダストシール
要素を、内輪外径面に嵌着される略Ｌ字形断面の
補強環と、該補強環の半径方向の先端部に固着さ
れ、かつ、半径方向リツプと軸方向リツプを有す
る弾性シールとで構成し、前記グリースシール要
素を、外輪内径面に嵌着される略Ｌ字形断面の補
強環と、該補強環の半径方向の先端部に固着さ
れ、かつ、内径面に浅い空気抜き溝を形成した半
径方向リツプを有する弾性シールとで構成し、上
記ダストシール要素の補強環を外側にして両要素
の補強環を軸方向に抱き合せ状態に組合わすと共
に、ダストシール要素の半径方向リツプと軸方向
リツプとをグリースシール要素の補強環に外向き
に屈曲させて当接させ、前記グリースシール要素
の半径方向リツプを上記ダストシール要素の補強
環に内向きに屈曲させて当接させたものである。

ホ 実施例 第２図はこの考案の密封装置を複列アンギユラ
型玉軸受に装着した場合の片側部分の実施例を示
すもので、同図において、１０はハウジング等に
固定される外輪、１１は回転軸に取付けられる内
輪、１２はリテナＲにより保持される鋼球、Ａは
ダストシール要素、Ｂはグリースシール要素を示
す。

ダストシール要素Ａとグリースシール要素Ｂと
は、第３図の分解図にも示す様に、先ず、ダスト
シール要素Ａは、内輪外径面１１ａに嵌着される
円筒状部分１３ａと、該部分１３ａの軸受外方側
一端より半径方向へ略直角に折曲された環状鍔部
１３ｂとからなる略Ｌ字形断面の補強環１３と、
該補強環１３の環状鍔部１３ｂの外径端部１３
b′に加硫焼付け、その他適宜の方法で基部１４ａ
が固着され、この基部１４ａの外径側で、かつ、
軸受内方側端部の位置１４a′より半径方向外方
へ、しかも、軸受外方側へ外向きに屈曲傾斜して
延びる半径方向リツプ１４ｂと、上記基部１４ａ
の内径側で、かつ、軸受内方側端部の位置１４
a″より軸方向へ、しかも、半径方向外方側へ外向
きに屈曲傾斜して延びる軸方向リツプ１４ｃとか
らなる弾性シール１４とで構成してある。

また、グリースシール要素Ｂは、外輪内径面１
０ａに嵌着される円筒状部分１５ａと、該部分１
５ａの軸受内方側一端より半径方向内方へ略直角
に折曲された環状鍔部１５ｂとからなる略Ｌ字形
断面の補強環１５と、該補強環１５の環状鍔部１
５ｂの内径端部１５b′に加硫焼付け、その他適宜
の方法で基部１６ａが固着され、この基部１６ａ
の内径側で、かつ、軸受外方側端部の位置１６
a′より半径方向内方へ、しかも、軸受内方側へ内
向きに屈曲傾斜して延びる半径方向リツプ１６ｂ
をもつ弾性シール１６とで構成してある。

弾性シール１４，１６は、耐熱性、耐油性、耐
摩耗性等に優れた弾性変形可能な材料、例えば、
ポリアクリルゴム等で構成される。

上記ダストシール要素Ａとグリースシール要素
Ｂとは、第２図に示す様に、補強環１３，１５同
志を、補強環１３を外方に位置させて軸方向に抱
合せ状態で組合せて内外輪１０，１１間に装着す
る。このように組合された補強環１３，１５で形
成される内部環状空間１７内に、前記の各リツプ
１４ｂ，１４ｃ，１６ｂが半径方向及び軸方向に
多面的に接触せしめられ、これによつて、スラス
ト方向及びラジアル方向の接触リツプシール構造
を構成している。これら各シールリツプ１４ｂ，
１４ｃ，１６ｂはいずれも、柔軟に屈伸変形可能
な姿勢で相手側補強環に所定の接触圧（締め代）
を以て接触せしめられており、外部からの異物の
侵入及び内部からのグリースの洩れを防止してい
る。

ダストシール要素Ａの半径方向リツプ１４ｂ
は、グリースシール要素Ｂの補強環１５の円筒状
部分１５ａの内径面１５a′に外向きに接触せしめ
られており、また、軸方向リツプ１４ｃは、相手
側補強環１５の環状鍔部１５ｂの半径方向の面１
５b″に外向きに接触せしめられており、これによ
つて、外部からの泥水等の異物の侵入が阻止され
る。

また、グリースシール要素Ｂの半径方向リツプ
１６ｂは、ダストシール要素Ａの補強環１３の円
筒状部分１３ａの外径面１３a′に内向きに接触せ
しめられており、これによつて、内部からのグリ
ースの流出が阻止される。そして、ダストシール
要素Ａの半径方向リツプ１４ｂおよび、軸方向リ
ツプ１４ｃと、グリースシール要素Ｂの半径方向
リツプ１６ｂは、軸方向及び半径方向に多面的に
屈折した迷路上の３点で接触シールしているか
ら、外部からの異物の侵入が効果的に阻止され
る。

また、上記のようにシールリツプの配置は、回
転するダストシール要素Ａ側が２点接触のリツプ
シール構造となつているが、軸方向リツプ１４ｃ
の接触圧は、回転中の遠心力作用で軽減され、回
転トルクの増大及び発熱は抑えられる。

半径方向リツプ１６ｂの内径面、即ち相手側補
強環１３の円筒状部外径面１３a′に接触する面に
は、先端から屈曲根部までに及ぶ浅い空気抜き溝
１６ｃが円周複数個所（例えば２ケ所）に形成し
てある。この空気抜き溝１６ｃは、回転中の軸受
の温度上昇によつて、軸受の内部圧力が上昇し、
上記半径方向リツプ１６ｂの接触圧が増大するこ
とを防止するために空気だけを逃し、グリースは
逃さないように浅く形成されている。そして、こ
の空気抜き溝１６ｃは回転する相手側補強環１３
の面１３a′に対向しているのでグリースの詰まり
がなく、かつ、リツプ１６ｂの全長に形成してあ
るので、リツプ１６ｂの先端が摩耗しても無くな
ることはない。

空気抜き溝１６ｃの深さｄは0.2mm程度であり、
円周方向の幅Ｗは５mm程度である。

補強環１３，１５の夫々の環状鍔部１３ｂ，１
５ｂの半径方向の端部１３b′，１５b′は、弾性シ
ール１４，１６を外側へ喰み出させず、各リツプ
を適正な接触位置へもつて行くために屈曲形成し
てある。

第４図は他の実施例であつて、グリースシール
要素Ｂの補強環１５の環状鍔部１５ｂを、その外
径端近傍１５ｂから軸受外方側へ若干屈曲させ
て軸受内部空間を軸方向に拡大し、グリースの充
填量を増加させ、また、鋼球１２のリテナＲの作
動スペースを確保させるようにした変形例であつ
て、他の構成は、前述の実施例と同様である。

また、この考案の密封装置は、複列アンギユラ
型玉軸受のみならず、他の各種型式の転がり軸受
の密封装置にも適用可能である。

ヘ 考案の効果 この考案はグリースの洩れに対しては軸受内方
に向いたグリースシール要素の半径方向リツプに
より防止され、外部からの泥水、塵埃等の異物の
侵入は、外方に向いたダストシール要素の半径方
向リツプと軸方向リツプとの２つのリツプにより
確実に防止される。また、空気抜き溝によつて軸
受の内部圧力の上昇が防止されることにより、低
トルクで発熱が少なく、極めて長寿命である。さ
らに３点接触リツプシール構造でリツプを半径方
向及び軸方向に多面的に接触させシールさせてい
るから、密封装置がコンパクトで、限られたスペ
ース内に装着可能であり、しかも、密封効果が高
い。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来公知の密封装置の断面図、第２図
は本考案の密封装置の軸受への装着状態の実施例
を示す断面図、第３図はその密封装置の分解断面
図、第３ａ図はグリースシール要素の半径方向リ
ツプに形成される空気抜き溝部分の部分正面図、
第４図は本考案密封装置の他の実施例を示す断面
図である。 Ａ…ダストシール要素、Ｂ…グリースシール要
素、１０…外輪、１１…内輪、１３，１５…補強
環、１４，１６…弾性シール。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 内外輪間に配置される転がり軸受用密封装置で
   あつて、上記密封装置を、内輪に嵌着されるダス
   トシール要素と、外輪に嵌着されるグリースシー
   ル要素とで構成し、上記ダストシール要素を、内
   輪外径面に嵌着される略Ｌ字形断面の補強環と、
   該補強環の半径方向の先端部に固着され、かつ、
   半径方向リツプと軸方向リツプを有する弾性シー
   ルとで構成し、前記グリースシール要素を、外輪
   内径面に嵌着される略Ｌ字形断面の補強環と、該
   補強環の半径方向の先端部に固着され、かつ、内
   径面に浅い空気抜き溝を形成した半径方向リツプ
   を有する弾性シールとで構成し、上記ダストシー
   ル要素の補強環を外側にして同要素の補強環を軸
   方向に抱き合せ状態に組合わすと共に、ダストシ
   ール要素の半径方向リツプと軸方向リツプとをグ
   リースシール要素の補強環に外向きに屈曲させて
   当接させ、前記グリースシール要素の半径方向リ
   ツプを上記ダストシール要素の補強環に内向きに
   屈曲させて当接させたことを特徴とする転がり軸
   受用密封装置。