JP5188064B2 - フッ酸及び塩酸の回収方法 - Google Patents

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本発明は、工場内で排出される、フッ酸−塩酸−HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)系の混合酸から、フッ酸及び塩酸をそれぞれ再利用が可能な純度及び濃度で効率良く、且つ、安全に分離・回収するフッ酸及び塩酸の回収方法に関するものである。
ULSIデバイスの製作に於いて湿式洗浄溶液は、ウエハー製造で使用される手段の約25%を占める。洗浄溶液の種類としては、硫酸(濃度96重量%)、過酸化水素水(濃度30重量%)、水酸化アンモニウム(濃度28重量%)、塩酸(濃度37重量%)、又はフッ酸(濃度49重量%)等が挙げられる。これらの洗浄溶液は、毒性及び腐食性が高い為、使用及び処分の際に費用を要する。例えば、使用済みの洗浄溶液の中和には、大量の消石灰等が必要となる。その為、使用済みの洗浄溶液の処理費用が、その購入費用を超える場合もある。そこで、前記に挙げた洗浄溶液を再利用の為、種々の方法が使用され、又は提案されている。例えば、蒸留、炭素吸着、逆浸透、イオン交換、膜ろ過、限外法などが挙げられる。しかし、これらの方法は、希薄な濃度の洗浄溶液に対してのみ適用できる。
洗浄溶液の回収には蒸留法が好ましいと考えられるが、塩酸及びフッ酸は水と共沸混合物を形成する。共沸混合物は、蒸気相の組成物が液相の組成物と同一であるもののうちの一つである。この共沸混合物の形成のため、蒸留法は、水からリサイクル可能な濃度で塩酸、又はフッ酸を回収する実用的な方法ではない。
そこで、低蒸気圧物質、例えば硫酸又はリン酸を添加することにより、塩酸−硫酸又は塩酸−リン酸水溶液から塩酸が分離される。同様に、フッ酸、臭酸及び硝酸に於いても、低蒸気圧物質を添加することにより、酸−水溶液から分離される。これは、塩化水素及びフッ化水素気体及び液体との間に形成された共沸混合物は、溶液に低蒸気圧の酸を添加することにより破壊される。低蒸気圧(高沸点)成分の効果は二重である。つまり、低蒸気圧成分は、液体に溶解された気体の蒸気圧を非常に増大させ、他方、液体の蒸気圧を減少させる。
下記特許文献1には、この方法を利用した高純度フッ化水素酸及び塩酸の再循環方法が開示されている。当該発明は、塩酸−硫酸若しくは塩酸−リン酸水溶液、又はフッ酸−硫酸若しくはフッ酸−リン酸水溶液の二成分系に対する蒸留方法を利用するものである。より詳細には、低蒸気圧物質:(汚染された)塩酸、又は低蒸気圧物質:(汚染された)フッ酸を容量0.4:1もしくは2:1の比で添加することによって、蒸留精製を行っている。しかしこの方法であると、(汚染された)塩酸又はフッ酸に対して、低蒸気圧物質が容量比0.4倍〜2倍と記載されており、例えばリン酸(HPO)の比重2.39を加味して重量換算すると、リン酸イオン(PO 3−)濃度は重量比0.96〜4.8となる。従って、(汚染された)塩酸等に対するリン(P)濃度は15重量%〜28重量%となり、大量のリンを要するので、回収費用が増大するという問題がある。また、リン濃度が非常に高いにも関わらず、実施例では、反応前の塩酸の規定度1.76が反応後4.5になったとの記載がある。これを濃度換算すると、凡そ6重量%であったものが14重量%になったということになる。しかし、高濃度(約35重量%)の塩酸を使用したい場合、当該発明では希薄な塩酸しか得られない為、適用は困難である。フッ酸についても同様である。
一方、業務用の冷蔵庫やクーラー、自動車クーラー等に使用されている冷媒用フロンガスの廃棄処理は、従来、その大半が大気放散されていたが、炭酸ガスと共に地球温暖化に起因するとして、地球環境保護の観点から、フロンガスの大気放散が禁止となった。そこでフロンガスの加水分解ガスからフッ酸及び塩酸を回収・再利用する方法が研究開発されている。
例えば、下記特許文献2には、フロンガスの分解ガス回収方法が開示されている。当該方法では、フロンガスの加水分解で生じたフッ酸、塩酸を散水塔の吸収液に吸収させ、フッ酸、塩酸を回収している。しかし、この回収方法で回収される塩酸は、その濃度が最大で4重量%程度であり、非常に希薄である。また、回収したフッ酸・塩酸水溶液は、例えば炭酸カルシウムを添加してフッ酸をフッ化カルシウムとして固定するとともに、塩酸を塩化カルシウムに各々無害化処理し再利用等を行うので、フッ酸濃度が非常に薄い。その結果、得られたフッ酸をそのまま再利用することは出来ないと思われる。また、この方法で回収されるフッ酸及び塩酸は、混合酸の形で回収され、それぞれ分離して回収することは出来ない。
更に、下記特許文献3では、含塩素樹脂を含む廃棄合成樹脂の熱分解によって生成する排ガスから、高度に精製された塩化水素ガスを回収する方法が記載されている。この方法では、フッ素化合物を含有する含塩素樹脂を熱分解・燃焼させ、約1重量%程度の非常に希薄なフッ化水素と塩化水素を蒸留・吸収によって回収を行っている。しかし、当該発明は、もともとフッ化水素の濃度が極めて低いので、蒸留を繰り返す公知の精留を行うことにより、塩化水素とフッ化水素を分離することが可能である。しかしながら、フッ酸が5重量%以上且つ塩酸が5重量%以上の混合酸を単純に蒸留するのみでは、高純度及び高濃度のフッ酸、及び塩酸をそれぞれ分離して回収することが困難である。
これに対して、下記特許文献4及び5に於いては、ペンタフルオロプロパン・塩酸・フッ化水素からなる混合物に硫酸を接触させ、フッ化水素、塩化水素を分離・回収する方法が記載されている。当該公報によれば、加熱によりフッ化水素を気化させ、更に凝縮することによりフッ化水素を分離・回収できる旨が開示されている。しかし、この発明は、硫酸中にフッ化水素を吸収・回収するのみであり、フッ化水素単体を分離し回収するものではない。硫酸中に吸収されたフッ化水素を、加熱により分離回収するのは、当該先行技術のみでは行えないと考えられる。
一方、リン化合物は、医薬・農薬の原料や、樹脂用の添加剤等として有用な、リン酸エステル化合物やリン酸アミド化合物等が広く用いられており、これらの製造に関して、塩化リン化合物が一般的に使用されている。塩化リン化合物は水と容易に反応し、多量の塩化水素ガスが発生する。一方、原料の塩化リン化合物は比較的沸点が低く、室温付近に於いても有意量の蒸気圧を持つものが多い。従って通常、これらの反応で発生する塩化水素ガスは、反応系の温度、又は発生したガスが凝縮器を経る場合は凝縮器の温度に相当する蒸気圧分の、塩化リン化合物を随伴している。この為、このガスは他の用途に利用できないのみならず、水に吸収して中和廃棄処理する場合にも、水質汚染の原因となるリン分を除くために、凝集沈殿等の複雑な排水処理を行う必要がある。
そこで、下記特許文献6では、発生する塩化水素ガスを、飽和塩酸水又は飽和されていない塩酸水の入っている槽に導き、随伴されている塩化リン化合物を加水分解して槽内に捕捉し、塩酸を回収する方法が提案されている。しかしこの方法では、リン分濃度の低い(<2ppm)塩酸は、必然的に希薄な濃度でしか回収出来ず、例えば前記半導体洗浄工程で使用されるような37重量%濃度の高濃度の塩酸を回収することは困難である。また、加水分解槽中の塩酸濃度は最大38.6重量%と非常に高濃度であるものの、この塩酸中には多量のリン化合物が含まれている。この為、この加水分解槽の塩酸を再利用することは出来ない。
一方、近年、高電圧、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池が開発され、その需要が急速に伸びている。更に、将来的には高性能な次世代ハイブリッド車向けに、ニッケル水素電池より小型で出力が大きいリチウムイオン二次電池の搭載が期待されている。
このリチウムイオン二次電池の電解質には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)等のリチウム塩が使用されており、例えば、六フッ化リン酸リチウムの製造方法としては、(1)無水フッ化水素中で五塩化リンとフッ化リチウムを反応させる方法(下記特許文献7参照)、(2)三塩化リンと無水フッ化水素を反応させ三フッ化リンを生成させ、この三フッ化リンに塩素を反応させて二塩化三フッ化リンを生成させ、更にこの二塩化三フッ化リンを無水フッ化水素と反応させて得られた五フッ化リンを無水フッ化水素中でフッ化リチウムとを反応させる方法(下記特許文献8参照)、(3)リンとフッ素ガスを反応させて、得られる高純度五フッ化リンを、フッ化リチウムと無水フッ化水素中で反応させる方法が広く知られている。
しかし、(1)及び(2)の方法で製造を行う場合、目的とする五フッ化リンに加え、大量の塩化水素が副生する。更に、反応系に使用されるフッ化水素が凝縮しきれずに随伴してしまう。また、塩酸と五フッ化リンの沸点は類似しているため、蒸留等による分離が困難であり、一部の五フッ化リンは、大量に副生する塩化水素に随伴する。この様にしてヘキサフルオロリン酸リチウム製造時には、大量のフッ化水素−塩化水素−PO(0≦m≦2,1≦n≦5、但しPOは単体の場合、複数の場合等、雰囲気によって大きく変わる。)の少なくとも三成分以上の排ガスが排出される。現在は、この三成分以上のガスを水に吸収させ、フッ酸−塩酸−HPO(1≦p≦3、0≦q≦4、0≦r≦6)の少なくとも三成分以上を含む混合酸は回収されず、直接排水処理を行って廃棄されているのが実情である。
但し、HPO(1≦p≦3、0≦q≦4、0≦r≦6)を含む廃水の処理に際して、フッ酸の濃度が高い場合には、リン酸まで完全に分解されない。これは下記化学反応式1のように、平衡反応であり、水が多い場合は右に反応が進行しやすく、HFが多い場合は分解が起こりにくい。この現象はHF濃度が20重量%以上になると顕著であり、HPOとなるまで完全に分解することは容易ではなく、排水の排出基準を満たす処理を行うことは困難を極める。
Figure 0005188064
特許3600834号 特開2004−42007号公報 特開2002−12411号公報 特開2001−342006号公報 特開2001−342007号公報 特許3819077号公報 特開昭60−251109号公報 特許第3494343号
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、例えば、工場内で排出される、フッ酸/塩酸/HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)の混合酸から、再利用可能な純度と濃度で、効率良く、安全にフッ酸及び塩酸を分別・回収するフッ酸及び塩酸の回収方法を提供することにある。
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、フッ酸及び塩酸の回収方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係るフッ酸及び塩酸の回収方法は、前記の課題を解決する為に、フッ酸、塩酸及びHxPOyFz(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)を含む混合酸から、フッ酸及び塩酸をそれぞれ分離して回収するフッ酸及び塩酸の回収方法であって、前記混合酸を蒸留することにより、該混合酸から塩化水素を留出分として分離する第1蒸留工程と、前記第1蒸留工程で得られた缶出分を蒸留することにより、留出分としてのフッ酸と、缶出分としてのHxPOyFz(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)とに分離する第2蒸留工程と、前記第1蒸留工程で得られた留出分を水に吸収させることにより塩酸を回収する吸収工程を含むことを特徴とする。
前記の方法によれば、前記混合酸を蒸留することにより、該混合酸から塩酸を含む留出分を分離する(第1蒸留工程)。この留出分を更に水に吸収させることにより、フッ酸、リン、硫黄の不純物の含有量が少なく、純度及び濃度の高い塩酸を回収することができる。その一方、第1蒸留工程で得られた缶出分を蒸留することにより、留出分としてのフッ酸と、缶出分としてのHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)に分離する(第2蒸留工程)。留出分として得られるフッ酸は、塩酸、リン、硫黄の不純物の含有量が少なく、純度及び濃度が高い。また、缶出分として得られるHPOは、フッ酸、塩酸等の不純物の含有量が少なく、純度及び濃度が高い。即ち、前記の方法によれば、フッ酸、塩酸及びHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)を含む少なくとも三成分系の混合酸から、純度及び濃度の高いフッ酸及び塩酸をそれぞれ分離、回収することができる。
前記混合酸にはHaSObFc(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)が含まれており、前記第1蒸留工程に於いて、缶出分として前記HxPOyFz(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)と共にHaSObFc(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)が分離されることが好ましい。
前記混合酸にHSO(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)が含まれている場合でも、第1蒸留工程で、缶出分として前記HPOと共にHSOを分離できるので、純度及び濃度の高い塩酸をえることができる。
前記第1蒸留工程は、30℃〜100℃の範囲内で行うことが好ましい。当該温度範囲で行うことにより、フッ酸、リン、硫黄の不純物の含有量を一層低減した、純度の高い塩酸の回収が図れる。
前記第2蒸留工程は、100℃〜150℃の範囲内で行うことが好ましい。当該温度範囲で行うことにより、塩酸、リン、硫黄の不純物の含有量を一層低減した、純度の高いフッ酸を回収することができる。また、フッ酸、塩酸等の不純物の含有量を一層低減した、純度の高いHPOを回収することができる。
前記混合酸に於けるフッ酸の濃度が15重量%以上40重量%以下であり、塩酸の濃度が5重量%以上30重量%未満であることが好ましい。
前記混合酸に於けるリン又は硫黄の少なくとも何れかの一方の濃度が、1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。これにより、混合酸の粘度が大きくなり過ぎるのを防止すると共に、安定的な蒸留操作を可能にする。
前記混合酸に低蒸気圧物質を添加することが好ましい。これにより、混合酸中に溶解している気体の蒸気圧を非常に増大させると共に、混合酸の蒸気圧を減少させることができる。
前記混合酸は、PCl5とHF、又はPCl3とCl2とHFを反応させることにより、PF6塩と共に生成するHF、HCl、及びPOdFe(0≦d≦2、1≦e≦5)の三成分を少なくとも含む混合ガスを水に吸収させて得られたものであってもよい。
前記第2蒸留工程で得られるフッ酸中に於ける塩酸の含有量が0.5重量%以下、リン又は硫黄の少なくとも何れか一方の含有量が0.1重量%以下であり、前記吸収工程で得られる塩酸中に於けるフッ酸の含有量が0.5重量%以下、リン又は硫黄の少なくとも何れか一方の含有量が0.1重量%以下であることが好ましい。
前記第1蒸留工程又は第2蒸留工程は、連続式蒸留又は回分式蒸留の何れかで行うことができる。
前記第2蒸留工程で得られたフッ酸の濃度は、30重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
前記混合酸に於けるフッ酸濃度と、前記第2蒸留工程で得られたフッ酸濃度との差は、10重量%以上であることが好ましい。
前記吸収工程で得られた塩酸の濃度は、20重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
本発明によれば、フッ酸、塩酸及びHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)を含む混合酸に対し蒸留を行うことにより、塩酸を留出分として分離し(第1蒸留工程)、更に、この留出分を水に吸収させることにより(吸収工程)、高濃度及び高純度の塩酸を回収することができる。また、第1蒸留工程で得られた缶出分を蒸留することにより(第2蒸留工程)、留出分としてのフッ酸と、缶出分としてのHPOとに分離することができる。即ち、本発明によれば、例えば、廃液として排出される前記混合酸から、安全で効率良く、かつ高濃度で、再利用が可能なフッ酸及び塩酸を分離し回収することができる。
先ず、本実施の形態に於いて使用する混合酸について説明する。当該混合酸は、フッ酸、塩酸、HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)の三成分を少なくとも含むものであれば、特に限定されない。この様な混合酸としては、例えば、工場内で排出される混合酸、より詳細には、半導体洗浄・エッチング工程等から排出される薬液、フロンガス・含塩素フッ素樹脂等の廃棄処理で生じる廃液が該当する。また、リチウムイオン二次電池の電解質に使用されるヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)など、六フッ化リン酸塩の製造の際に生じる廃液が該当する。この廃液は、より詳細には、五塩化リンとフッ化水素、又は三塩化リンと塩素及びフッ化水素とを反応させて六フッ化リン酸塩を製造する際に、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、及びPO(0≦d≦2、1≦e≦5)ガスの三成分を少なくとも含む混合ガスが発生し、この混合ガスが水に吸収されて得られるものである。
前記混合酸は、更にHSO(1≦a≦2、2≦b≦4,0≦c≦3)を含む四成分系であってもよく、フッ酸−塩酸−HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)に比べ、フッ酸−塩酸−HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)及びHSO(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)とすることで、第2蒸留工程で得られるフッ酸の濃度を更に高めることが出来る。また、前記HPOに於けるx、y、zは、それぞれ1≦x≦3、2≦y≦4、1≦z≦6であっても構わない。更に、前記HSOに於けるa、b、cは、それぞれ1≦a≦2、3≦b≦4,1≦c≦3であっても構わない。
尚、本願に於いては、フルオロオキシリン酸イオン、フルオロオキシ硫酸イオンを、それぞれHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)、HSO(1≦a≦2、2≦b≦4,0≦c≦3)と記載しているが、フルオロオキシリン酸イオンの場合、当該イオンが水溶液中では下記化学反応式の通りに平衡状態となっていると考えられるためである。またフルオロオキシ硫酸イオンの場合も同様と考えられる。
[化2]
POF⇔HPO
前記混合酸には、低蒸気圧物質を添加してもよい。これにより、混合酸中に溶解している気体の蒸気圧を非常に増大させると共に、混合酸の蒸気圧を減少させることができる。低蒸気圧物質としては、例えばリン酸、硫酸等が例示できる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
混合酸中のフッ酸濃度は、15重量%以上40重量%以下であることが好ましい。但し、回収前と回収後のフッ酸濃度差を高めるため、20重量%以上35重量%以下がより好ましい。フッ酸濃度が15重量%未満の場合は、回収前と回収後のフッ酸濃度差を上げることが困難な場合がある。その一方、フッ酸濃度が40重量%を超える場合は、相対的に塩酸濃度が小さくなるという不都合がある。
混合酸中の塩酸濃度は、5重量%以上30重量%未満であることが好ましく、より好ましくは15重量%以上20重量%以下である。塩酸濃度が5重量%未満の場合は、第1蒸留工程の終了後に塩酸濃度を30重量%以上に高めることが困難な場合がある。その一方、塩酸濃度が30重量%以上の場合は、相対的にフッ酸濃度が小さくなるという不都合がある。
加えて、回収前と回収後のフッ酸濃度差(回収後のフッ酸濃度−仕込み時のフッ酸濃度)は、10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。
また、回収前と回収後の塩酸濃度差(回収後の塩酸濃度−仕込み時の塩酸濃度)は、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。
混合酸中のリン又は硫黄の少なくとも何れかの濃度は、1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。10重量%以下にすることにより、混合酸の粘度が過度に増大するのを防止することができる。また、更に安定的に蒸留を行うため、前記濃度は5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。
次に、本実施の形態に係るフッ酸及び塩酸の回収方法について、図1を参照しながら説明する。当該フッ酸及び塩酸の回収方法は、フッ酸、塩酸及びHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)を含む混合酸を蒸留することにより、該混合酸から塩酸を留出分として分離する第1蒸留工程と、第1蒸留工程で得られた缶出分を蒸留することにより、留出分としてのフッ酸と、缶出分としてのHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)とに分離する第2蒸留工程と、第1蒸留工程で得られた留出分を水に吸収させることにより塩酸を回収する吸収工程を含む。
第1蒸留工程は、図1に示す第1蒸留塔1で行う。当該工程により、塔頂から塩化水素に富んだ留出分が得られ、これにより前記混合酸から塩酸成分を分離する。
前記第1蒸留工程は、30℃〜100℃の範囲内で行うことが好ましい。これにより、塔頂留出分としてフッ化水素濃度の低い塩化水素ガスの回収が可能になる。更に、回収するフッ酸中の塩酸濃度を極力低くする為、まず塩化水素のみを追い出すことが好ましく、この観点から40℃〜90℃、更に好ましくは50℃〜85℃以下で行う。
また第1蒸留工程で留出してくる留出分には、極微量のフッ化水素ガスが含まれている場合がある。その様な場合、フッ化水素ガス除去工程を設けても構わない。当該工程に於いて、フッ化水素を除去する方法としては、フッ化水素と反応して固体又は液体となる薬剤とを接触させる方法、吸着剤により吸着除去する方法等、公知の方法を利用することがでる。
フッ化水素と反応して固体又は液体となる薬剤としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、塩化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩類が挙げられる。これらの中でも塩化カルシウムを使用した場合は、フッ化水素との反応により、フッ化カルシウムと塩化水素が発生するため、塩化水素の濃度を高めることが可能である。こうした薬剤は、固体状、水に溶解又は分散させた状態の何れでも使用することができる。更に、固体状の薬剤は、粒状、破砕状、又は成形体のいずれも使用することが可能である。この様にして、フッ化水素濃度の低い精製塩化水素を得ることができる。
更に、フッ化水素ガスの除去に用いる装置としては、例えば、接触時に固体状態のまま使用する場合は充填塔形式や流動床形式が、固体を液体に分散する場合又は液体の薬剤を使用する場合には、充填塔、棚段塔や静置型ミキサー形式、気泡塔等が挙げられる。
尚、第1蒸留工程の前段にフラッシュ塔を設け、塩化水素ガスを先に発生させ、吸収工程で塩酸を回収しても構わない。
第2蒸留工程は、第2蒸留塔2で行う。当該工程で、第1蒸留工程で得られた塔底缶出分を蒸留することにより、塔頂からフッ化水素ガスに富んだ留出分が得られ、塔底からHPOに富んだ缶出分が得られる。
第2蒸留工程での塔底運転温度は、100℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは115℃〜130℃である。これにより、フッ化水素とHPOの分離を好適に行うことができる。
更に、塔頂留出分を冷却・凝縮させることによって、塩酸、リン等の含有量が少なく、且つ高濃度のフッ酸を回収する。冷却・凝縮の際の温度は特に限定されず、例えば、−20℃〜50℃の範囲内であることが好ましい。その一方、塔底缶出分は、蒸留によってフッ化水素濃度が低下するため、下記化学反応式に於ける反応の平衡を右(分解方向)に進めることが可能となり、蒸留が進むにつれて、完全にリン酸へ分解することが可能となる。ここで、分解条件については、公知の条件を採用することが可能である。
Figure 0005188064
尚、フッ酸の濃度を高めるために、この第2蒸留工程では、蒸留操作を繰り返し行っても構わない。また、塔頂から得られる蒸気の留出分を冷却凝縮させた凝縮液の一部を第2蒸留塔2に還流させてもよい。これにより、混合酸中のフッ酸の濃度が15〜40重量%であったものが、30〜60重量%、更には45〜60重量%程度で回収することが可能となる。
また、第1蒸留工程で得られる缶出分に於いて、その塩酸濃度が高い場合には、第2蒸留工程に於いて、留出分の未凝縮ガスとして塩化水素ガスが発生することがある。この場合、塩化水素ガスは、第1蒸留工程で発生する塩化水素ガスと混合し、その後、後述の第1散水吸収塔4に於いて水に吸収させ、塩酸として回収しても構わない。この場合、塩化水素ガスはフッ化水素を若干随伴する為、前記フッ化水素除去工程を経由させることが好ましい。
一方、第1蒸留工程で得られる缶出分に於いて、塩酸濃度を低くする様に蒸留を行うことで、第2蒸留工程に於いて回収されるフッ酸中の塩酸濃度を低くすることが可能となるが、更に塩酸濃度を低下させるために、第2蒸留工程を繰り返し行って精留しても構わない。更に必要であるなら、塔頂留出分の一部を第2蒸留塔2へ還流させることも出来る。
第2蒸留工程で得られる液体の缶出分は、リン等の濃度が非常に濃くなっている。この為、缶出分を第1蒸留工程の前の廃酸濃度調整に再利用してもよい。更に、公知の方法でアパタイト、又は加水分解を行い、リン酸、硫酸として回収し、再利用してもよい。
吸収工程は、循環式の第1散水吸収塔4により行う。具体的には、フッ化水素ガスが除去された前記留出分を第1散水吸収塔4に供給し、該第1散水吸収塔4の塔頂から留出したガスを水に吸収させる。更に、例えば乾燥用の塩化カルシウムを充填したフッ化水素ガス除去塔3を併用しても構わない。具体的には、第1蒸留工程で得られた塔頂留出分(塩化水素に富んだ留出分)をフッ化水素ガス除去塔3に供給し、該除去塔3でフッ化水素ガスを除去する。これにより、フッ化水素、リン等の含有量が少なく、且つ高濃度の塩酸を塔底から回収する。
吸収工程より得られる塩酸の濃度は、可及的に高い方が好ましいが、吸収効率等を考慮すれば、前記吸収液としての水の塩化水素濃度より高く、且つ、20重量%以上40重量%以下、より好ましくは33重量%以上38重量%以下である。
塩化水素の吸収に用いる水としては特に限定されず、回収した塩酸の再利用方法により適切なレベルの水を用いればよい。
更に、吸収に使用する装置としては、前記の第1散水吸収塔4に限定されず、公知の吸収塔が特に制限なく使用される。例えば、充填塔やキャップトレー等の棚段塔形式の吸収部を持ち、冷却器を通して液相を循環させる多段の吸収塔や、濡れ壁形式の吸収塔等が挙げられる。また、吸収塔は一塔のみでも構わないが、二段以上の多段式としても構わない。水循環式の第1散水吸収塔4を使用する場合は、水循環式の第1散水吸収塔4に順次導入して、第1散水吸収塔4の水を最下段から最上段にかけて順次オーバーフロー送水させ、循環水中の塩酸吸収濃度を漸増して回収する。
尚、本工程は、第1蒸留工程で得られた塔頂留出分を、第1散水吸収塔4に直接供給し、水に吸収させて塩酸を回収してもよい。
この様にして回収されたフッ酸中の塩酸含有量は0.5重量%以下であり、且つ、リン又は硫黄の少なくとも何れかの含有量は0.1重量%以下である。また、回収された塩酸中のフッ酸含有量は0.5重量%以下であり、且つ、リン等の含有量は0.1重量%以下とすることが可能である。更に、第1蒸留工程及び第2蒸留工程を繰り返し行うことにより、又は第1蒸留工程及び第2蒸留工程に於ける還流比等の条件を適宜設定することにより、フッ酸中の塩酸含有量を0.1重量%以下、リン等の含有量を0.01重量%以下にするとともに、回収された塩酸中のフッ酸含有量を0.1重量%以下、リン等の含有量を0.01重量%以下にすることが可能となる。
尚、出発原料が、HF、HCl、及びPO(0≦d≦2、1≦e≦5)の三成分を少なくとも含む混合ガスである場合は、図2に示す装置を用いることにより、フッ酸及び塩酸の分離・回収を行うことができる。
前記混合ガスは、PClと、HF又はPClと、Clと、HFとを反応させてPF塩を製造する際に生じるガスである。この混合ガスを、図2に示す水循環式の第2散水吸収塔5により、水(吸収液)に吸収させると、前記混合酸が得られる。
前記混合ガスの吸収に用いる水としては、回収される塩酸又はフッ酸の少なくとも何れかを汚染させる物質を含んでいなければ特に限定されるものではない。また、前記混合ガス成分のいずれか、又は全てを予め含んでいる溶液を用いることも可能である。
更に、吸収に使用する装置としては、前記の第2散水吸収塔5に限定されず、公知の吸収塔が特に制限なく使用される。例えば、充填塔やキャップトレー等の棚段塔形式の吸収部を持ち、冷却器を通して液相を循環させる多段の吸収塔や、濡れ壁形式の吸収塔等が挙げられる。また、吸収塔は一塔のみでも構わないが、二段以上の多段式としても構わない。水循環式の第2散水吸収塔5を使用する場合は、水循環式の第2散水吸収塔5に順次導入して、第2散水吸収塔5の水を最下段から最上段にかけて順次オーバーフロー送水させ、循環水中の塩酸吸収濃度を漸増して回収する。
尚、第1蒸留工程又は第2蒸留工程での蒸留方法は、連続式蒸留又は回分式蒸留の何れであってもよい。また、蒸留時間は、連続式蒸留、回分式蒸留のいずれの蒸留法でも濃度・組成によって適宜選択され、特に限定されない。
本実施の形態に係るフッ酸及び塩酸の回収方法で分離回収されたフッ酸は高濃度であり、塩酸、リン等の含有量が極めて低い。この為、単なるフッ酸の回収だけでなく再利用が可能である。同様に、本実施の形態に係るフッ酸及び塩酸の回収方法で分離回収される塩酸も高濃度であり、フッ酸、リン等の含有量が極めて低い。この為、単なる塩酸の回収だけでなく再利用が可能である。回収されたフッ酸及び塩酸は、それぞれそのままで再利用できるが、適宜必要に応じて濃度調整を行って使用してもよい。再利用をする場合の用途としては、特に限定されず、例えば半導体等の洗浄液・エッチング液、フッ化・化学薬品の原料、各種無機塩、防錆剤、医薬品、食品等への適用が挙げられる。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
(実施例1)
図1に示す装置を用いて、HF/HCl/HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)及びHSO(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)で構成される無機混合酸から、フッ酸及び塩酸の分離回収を行った。分離回収前の混合酸の成分を下記表1に示す。
先ず、混合酸を第1蒸留塔1のリボイラーを備えた塔底部に仕込み、60℃で8時間、蒸留を行った。このとき、第1蒸留塔1の塔頂から留出した留出分を、乾燥用塩化カルシウムを充填したフッ化水素ガス除去塔3へ導き、循環式の第1散水吸収塔4にてガスを水に吸収させた。これにより、塩酸を回収した。
8時間後、第1蒸留塔1の缶出分を第2蒸留塔2へ移し、120℃で8時間蒸留を行った。同時に塔頂から留出するガスを0℃で冷却した。これにより、留出分としてのフッ酸と缶出分としてのリン酸をそれぞれ回収した。
次に、回収した塩酸、及びフッ酸の分析を行った。その結果を下記表2に示した。尚、第2蒸留塔2で得られた缶出分はリン酸になるまで完全に分解されており、リン酸として再利用可能な状態であった。
Figure 0005188064
Figure 0005188064
(実施例2〜5)
実施例2〜5に於いては、前記表1に示す成分の混合酸を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして塩酸及びフッ酸を分離回収し、それぞれの分析を行った。その結果を前記表2に示す。尚、各実施例に於いて、第2蒸留塔2で得られた缶出分はリン酸になるまで完全に分解されており、リン酸として再利用可能な状態であった。
(実施例6)
図1に示す装置を用いて、HF/HCl/HPO(1≦x≦3,2≦y≦4,1≦z≦6)で構成される無機混合酸から、フッ酸及び塩酸の分離回収を行った。分離回収前の混合酸の成分を下記表3に示す。
先ず、混合酸を第1蒸留塔1のリボイラーを備えた塔底部に仕込み、85℃で8時間、蒸留を行った。このとき、第1蒸留塔1の塔頂から留出した留出分を、乾燥用塩化カルシウムを充填したフッ化水素ガス除去塔3へ導き、循環式の第1散水吸収塔4にてガスを水に吸収させた。これにより、塩酸を回収した。
8時間後、第1蒸留塔1の缶出分を第2蒸留塔2へ移し、120℃で8時間蒸留を行った。同時に塔頂から留出するガスを5℃で冷却した。更に、冷却して得られたフッ酸の留出分を、再度115℃で8時間蒸留を行い、同様に0℃で冷却を行った。これにより、留出分としてのフッ酸と缶出分としてのリン酸をそれぞれ回収した。
次に、回収した塩酸、及びフッ酸の分析を行った。その結果を下記表4に示した。尚、第2蒸留塔2で得られた缶出分はリン酸になるまで完全に分解されており、リン酸として再利用可能な状態であった。
Figure 0005188064
Figure 0005188064
(実施例7)
図1に示す装置を用いて、HF/HCl/HPO(1≦x≦3,2≦y≦4,1≦z≦6)で構成される無機混合酸から、フッ酸及び塩酸の分離回収を行った。分離回収前の混合酸の成分を下記表5に示す。
先ず、混合酸を第1蒸留塔1のリボイラーを備えた塔底部に仕込み、40℃で12時間、蒸留を行った。このとき、第1蒸留塔1の塔頂から留出した留出分を、循環式の第1散水吸収塔4にてガスを水に吸収させた。これにより、塩酸を回収した。
12時間後、第1蒸留塔1の缶出分を第2蒸留塔2へ移し、140℃で8時間蒸留を行った。同時に塔頂から留出するガスを0℃で冷却した。これにより、留出分としてのフッ酸と缶出分としてのリン酸をそれぞれ回収した。
次に、回収した塩酸、及びフッ酸の分析を行った。その結果を下記表6に示した。尚、第2蒸留塔2で得られた缶出分はリン酸になるまで完全に分解されており、リン酸として再利用可能な状態であった。
Figure 0005188064
Figure 0005188064
(実施例8)
本実施例に於いては、図2に示す装置を用いて塩酸及びフッ酸の分離回収を行った。先ず、HF、HCl、及びPFからなる混合ガスを、循環式の第2散水吸収塔5内で5時間水に吸収させた。この吸収により得られた吸収液としての混合酸の成分を、下記表7に示す。
次に、前記混合酸を第1蒸留塔1のリボイラーを備えた塔底部に仕込み、85℃で6時間、蒸留を行った。このとき、第1蒸留塔1の塔頂から留出した留出分を、乾燥用塩化カルシウムを充填したフッ化水素ガス除去塔3へ導き、循環式の第1散水吸収塔4にてガスを水に吸収させた。これにより、塩酸を回収した。
6時間後、第1蒸留塔1の缶出分を第2蒸留塔2へ移し、115℃で8時間蒸留を行った。同時に塔頂から留出するガスを0℃で冷却した。これにより、留出分としてのフッ酸と缶出分としてのリン酸をそれぞれ回収した。
次に、回収した塩酸、及びフッ酸の分析を行った。その結果を下記表8に示した。尚、第2蒸留塔2で得られた缶出分はリン酸になるまで完全に分解されており、リン酸として再利用可能な状態であった。
Figure 0005188064
Figure 0005188064
(比較例1)
図1に示す装置を用いて、HF/HClで構成される混合酸から、フッ酸及び塩酸の分離回収を行った。分離回収前の混合酸の成分を下記表9に示す。
先ず、混合酸を第1蒸留塔1のリボイラーを備えた塔底部に仕込み、80℃で8時間、蒸留を行った。このとき、第1蒸留塔1の塔頂から留出した留出分を、乾燥用塩化カルシウムを充填したフッ化水素ガス除去塔3へ導き、循環式の第1散水吸収塔4にてガスを水に吸収させた。これにより、塩酸を回収した。
8時間後、第1蒸留塔1の缶出分を第2蒸留塔2へ移し、120℃で8時間蒸留を行った。同時に塔頂から留出するガスを0℃で冷却した。これにより、留出分としてのフッ酸と缶出分をそれぞれ回収した。
次に、回収した塩酸、及びフッ酸の分析を行った。その結果を下記表10に示した。
Figure 0005188064
Figure 0005188064
(結果)
以上のことから、各実施例1〜8により回収されたフッ酸に於ける塩酸含有量は0.5重量%以下であり、且つ、リン等の含有量は0.1重量%以下であった。更に、回収されたフッ酸濃度は、仕込み濃度よりも10重量%以上高濃度になっており、いずれも30重量%以上60重量%以下の間の非常に高濃度で回収することが出来た。
また、同時に回収された塩酸に於けるフッ酸含有量は0.5重量%以下であり、且つ、リン等の含有量は0.1重量%以下であった。更に、回収された塩酸濃度は、仕込み濃度よりも20重量%以上高濃度になっており、いずれも20重量%以上50重量%以下の間の非常に高濃度で回収することが出来た。即ち、各実施例の方法でフッ酸及び塩酸の分離回収を行うと、そのままでも再利用が可能なフッ酸及び塩酸を回収できることが確認された。
一方、比較例1でHPO(1≦x≦3,0≦y≦4,0≦z≦6)及び/又はHSO(1≦a≦2,2≦b≦4,0≦c≦3)を添加しない場合は、回収前後のフッ酸濃度差は約1重量%であり、高濃度化することが出来なかった。
本発明の実施の一形態に係るフッ酸及び塩酸の回収方法を説明する為の工程図である。 本発明の実施の他の形態に係るフッ酸及び塩酸の回収方法を説明する為の工程図である。
符号の説明
1 第1蒸留塔
2 第2蒸留塔
3 フッ化水素ガス除去塔
4 第1散水吸収塔
5 第2散水吸収塔

Claims (13)

  1. フッ酸、塩酸及びHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)を含む混合酸から、フッ酸及び塩酸をそれぞれ分離して回収するフッ酸及び塩酸の回収方法であって、
    前記混合酸を蒸留することにより、該混合酸から塩化水素を留出分として分離する第1蒸留工程と、
    前記第1蒸留工程で得られた缶出分を蒸留することにより、留出分としてのフッ酸と、缶出分としてのHPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)とに分離する第2蒸留工程と、
    前記第1蒸留工程で得られた留出分を水に吸収させることにより塩酸を回収する吸収工程を含むことを特徴とするフッ酸及び塩酸の回収方法。
  2. 前記混合酸にはHSO(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)が含まれており、
    前記第1蒸留工程に於いて、缶出分として前記HPO(1≦x≦3、0≦y≦4、0≦z≦6)と共にHSO(1≦a≦2、2≦b≦4、0≦c≦3)が分離されることを特徴とする請求項1に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  3. 前記第1蒸留工程は、30℃〜100℃の範囲内で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  4. 前記第2蒸留工程は、100℃〜150℃の範囲内で行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  5. 前記混合酸に於けるフッ酸の濃度が15重量%以上40重量%以下であり、塩酸の濃度が5重量%以上30重量%未満であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  6. 前記混合酸に於けるリン又は硫黄の少なくとも何れかの一方の濃度が、1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  7. 前記混合酸に低蒸気圧物質を添加することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  8. 前記混合酸は、PClとHF、又はPClとClとHFを反応させることにより、PF塩と共に生成するHF、HCl、及びPO(0≦d≦2、1≦e≦5)の三成分を少なくとも含む混合ガスを水に吸収させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  9. 前記第2蒸留工程で得られるフッ酸中に於ける塩酸の含有量が0.5重量%以下、リン又は硫黄の少なくとも何れか一方の含有量が0.1重量%以下であり、
    前記吸収工程で得られる塩酸中に於けるフッ酸の含有量が0.5重量%以下、リン又は硫黄の少なくとも何れか一方の含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  10. 前記第1蒸留工程又は第2蒸留工程は、連続式蒸留又は回分式蒸留の何れかで行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  11. 前記第2蒸留工程で得られたフッ酸の濃度は、30重量%以上60重量%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  12. 前記混合酸に於けるフッ酸濃度と、前記第2蒸留工程で得られたフッ酸濃度との差は、10重量%以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
  13. 前記吸収工程で得られた塩酸の濃度は、20重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のフッ酸及び塩酸の回収方法。
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