JP5187654B2 - 複合金属硫化物の製造方法および複合金属硫化物焼結体の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、熱電変換材料、着色顔料および超伝導材料として有用な複合金属硫化物の製造方法およびその焼結体の製造方法に関する。
2種類以上の金属を含む複合金属硫化物は、既知の材料であり、熱電変換材料、着色顔料および超伝導材料などの幅広い分野での応用が期待されている。
組成式L3-y(ただし、Lは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類金属群から選ばれる1種、yの範囲は0以上で0.4以下)で表わせる二元系希土類硫化物は既知の材料であり、高温熱電変換材料の候補として知られている。
Lサイトの一部を、L以外の希土類金属L’で置換した複合金属硫化物(LL’1−x)3-yは、二元系希土類硫化物と比較して、さらに優れた熱電変換特性を示す(例えば、特許文献1と非特許文献1参照)。同様に、Lサイトの一部を、Be、Mg、Ca、Sr、Baのアルカリ土類金属群から選ばれる少なくとも1種で置換した複合金属硫化物も、高温領域で優れた熱電変換特性を示す(例えば、非特許文献2参照)。そのほかにも、遷移金属に分類されるCuやAlやHg、さらに非金属であるBなども、希土類硫化物の熱電変換特性を向上させる元素として知られている(例えば、非特許文献3から5参照)。
この材料には別の用途もあり、Lサイトの一部を、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Baの群から選ばれる少なくとも1種で置換した複合金属硫化物は、その鮮やかな色彩のため、プラスチックやゴムなどの着色顔料に用いられる(例えば、特許文献2から4参照)。
熱電変換材料ならびに着色顔料のいずれの場合も、Lサイトを置換する遷移金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属や非金属には最適な量が存在し、その性能を最大限に引き出すためには化学組成の制御が必要となる。さらに、性能を最大限に発揮するためには、Lサイトに置換した遷移金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属や非金属は、均一に分布している必要がある。当然、材料の純度も高い必要がある。
組成式(MS)TS又は組成式MTS(ただし、MとTは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Au、Al、Zn、Ga、Ge、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Biの群から選ばれる少なくとも1種で、MとTは一致しない、zの範囲は1.0以上で1.5以下)で表わせる層状結晶構造を持つ遷移金属硫化物も既知の材料であり、熱電変換材料として期待されている(例えば、特許文献5と6参照)。
そのほかにも、複合金属硫化物の中でも最も有名な、組成式MMo(Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Au、Al、Zn、Ga、Ge、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Biの群から選ばれる少なくとも1種)で表わせるシェブレル相は、超伝導材料や熱電変換材料としてよく知られており、数多くの研究がなされている。
例えば、二元系希土類硫化物の製造方法としては、非特許文献6によると、(1) 希土類金属と硫黄を直接反応させる方法と、(2)二元系希土類酸化物又は希土類金属の塩を、硫化水素又は二硫化炭素と反応させる方法が知られている。(1)の方法は、希土類金属が大気中ではすぐに酸化することと、希土類金属と硫黄との間に大きな蒸気圧の差があるために、製造が困難となり敬遠される。
一方、希土類酸化物や希土類金属の塩は大気中で安定であり、取扱いが容易であるために、一般には(2)の方法が多く用いられる。(2)の方法の中でも、硫化水素と比べて、熱力学的な観点から、低温・短時間で容易に硫化反応が進行する二硫化炭素が用いられることが多い。
また、非特許文献7によると、チオシアン酸アンモニウムの分解ガスと希土類酸化物を反応させても、二元系希土類硫化物を製造できる。
二元系希土類硫化物に限らず、二元系遷移金属硫化物である硫化チタンも、二硫化炭素とルチル型酸化チタンを反応させる方法で製造される(非特許文献8参照)。すなわち、二元系金属硫化物を製造するには、二元系金属酸化物又は金属の塩を、硫化水素若しくは二硫化炭素又はチオシアン酸アンモニウムの分解ガスといった、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理する製造方法が好ましい。
金属の酸化や、熱力学的な利点を考慮すると、複合金属硫化物を製造するにも、二元系金属硫化物の製法方法と同様に、複合金属酸化物又は金属の塩を、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理する製造方法が好ましい。例えば、非特許文献9によると、(LaS)MSを製造するために、まず、LaとMを固相反応(乾式法)で反応させて複合金属酸化物LaMOを製造し、その後、二硫化炭素を用いて硫化している。また、例えば、非特許文献10によると、同様に、LnCuSを製造するために、まず、LnとCuOを固相反応(乾式法)で反応させて複合金属酸化物LaCuを製造し、その後、硫化水素を用いて硫化している。
ここで問題なのは、乾式法では、均一な複合金属酸化物を得られない。すなわち、乾式法を用いた場合、製造された複合金属酸化物が不均一であり、結果、製造された複合金属硫化物も不均一となる。
複合金属酸化物又は金属の塩を、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理することで、均一でかつ高純度な複合金属硫化物を製造しようとする場合、当然、出発原料となる複合金属酸化物又は金属の塩が、均一でかつ高純度である必要がある。均一でかつ高純度な複合金属酸化物を製造するためには、乾式法を用いて製造する方法は適当ではなく、溶液法を用いて製造する方法が適切である。
非特許文献11によると、溶液法を用いて金属の蓚酸塩を製造して、これを二硫化炭素で硫化することにより複合金属硫化物を製造している。まず、二種の金属の硝酸塩を含む溶液と蓚酸を含む溶液を反応させて沈殿物を作る。この沈殿物を乾燥させて、金属の蓚酸塩を製造する。次に、この金属の蓚酸塩を、二硫化炭素を用いて硫化することによって、複合金属硫化物を製造する。
ここで問題は、製造過程で沈殿物を作っていることにある。溶液中では均一に混合していても、沈殿物となった状態でそれが分離してしまい、十分に均一であるとは言いがたい。
これまでの溶液法の問題点を解決したことで、近年、複合金属酸化物の合成方法として注目を浴びているのが、錯体重合法である。
この方法を用いれば、不均一性の要因となる沈殿物やゾルを作らないため、均一で純度の高い複合金属酸化物を製造することができる。特許文献7によると、錯体重合法とは、まず、複合金属酸化物を形成する金属の塩を、ヒドロキシ酸を含むグリコーゲン溶液中に溶解させて錯体化させる。次に、この溶液を加熱することによって、エステル重合反応が起き、ゲル状のポリエステルが得られる。最後に、このゲル状のポリエステルを焼成して、複合金属酸化物を製造する。
得られた複合金属酸化物は、超伝導材料をはじめ、近年では、誘電体材料、熱電変換材料、顔料など、あらゆる機能性セラミックスの分野で用いられている。
ただし、この方法が、複合金属硫化物の製造方法に応用された例はない。
United State Statutory Invention Registration、「Ternary Rare Earth−Lanthanide Sulfides」、Reg.Number:H197、1987年1月6日。 United State Patent、「Rare Earth Sesquisulfide Compositions Composing Alkali/Alkaline Earth Metal Values」、Patent Number:5,348,581、1994年9月20日。 United State Patent、「Rare Earth Metal Sulfide Pigment Compositions」、Patent Number:5,401,309、1995年3月28日。 United State Patent、「Rare Earth Metal Sulfide Pigment Composing Fluorine Values」、Patent Number:5,501,733、1996年3月26日。 特開2002−270907。 特開2003−188425。 特開平6−115934。
J.F.Nakahara、T.Takeshita、M.J.Tschetter、B.J.Beaudry、K.A.Gschneidner,Jr.、「Thermoelectric Properties of Lanthanum Sulfide with Sm, Eu, and Yb Additives」、Journal of Applied Physics、63巻、2331〜2336ページ、1988年4月1日。 S.Katsuyama、Y.Tanaka、H.Hashimoto、K.Majima、H.Nagai、「Effect of Substitution of La by Alkaline Earth Metal on the Thermoelectric Properties and the Phase Stability of γ−La3S4」、Journal of Applied Physics、82巻、5513〜5519ページ、1997年12月1日。 J.F.Nakahara、T.Takeshita、M.J.Tschetter、B.J.Beaudry、K.A.Gschneidner,Jr.、「A Study of the Thermoelectric Properties of Ca, Sr and Hg Substituted Lanthanum Sulfides」、The First European Conference on Thermoelectrics、14章、161〜170ページ、1988年12月。 J.Michiels、K.A.Gschneidner,Jr.、「Electrical Properties of Yttrium Sesquisulfide (Y2S3) Mechanically Alloyed with Copper, Boron, and Aluminum」、Journal of Alloys and Compounds、247巻、9〜14ページ、1997年1月30日。 S.H.Han、K.A.Gschneidner,Jr.、B.A.CooK、「Thermoelectric Properties of Cu−Doped Dysprosium Sesquisulfide」、Journal of Applied Physics、76巻、7899〜7906ページ、1994年12月15日。 足立吟也編著、「希土類の科学」、株式会社化学同人、398−425ページ、1999年3月30日。 加藤久詠、太田道広、平井伸治、V.V.Sokolov、「NH4SCNによる希土類硫化物の合成」、日本金属学会2006年秋期(第139回)大会講演概要集、176ページ、2006年9月16日。 J.Cuya、N.Sato、K.Yamamoto、A.Muramatsu、K.Aoki、Y.Taga、「Thermogravimetric Study of Sulfurization of TiO2 Nanoparticles Using CS2 and the Decomposition of Their Sulfurized Product」、Thermochimica Acta、410巻、27〜34ページ、2004年2月9日。 T.Takahashi、T.Oka、O.Yamada、K.Ametani、「Synthesis and Crystallographic Properties of Lanthanum Transition Metal Sulfides LaMS3; M = Cr,Mn,Fe,and Co」、Materials Research Bulletin、6巻、173〜182ページ、1971年3月。 T.Murugesan、J.Gopalakrishnan、「Rare Earth Copper Sulphides (LnCuS2)」、India Journal of Chemistry、22A巻、469〜474ページ、1983年6月。 S.Romero、A.Mosset、J.C.Trombe、P.Macaudiere、「Low−temperature Process of the Cubic Lanthanide Sesquisulfides: Remarkable Stabilization of the γ−Ce2S3 Phase」、Journal of Materials and Chemistry、7巻、1541〜1547ページ、1997年8月。
2種類以上の金属を含む複合金属硫化物は、既知の材料であり、熱電変換材料、着色顔料および超伝導材料などの幅広い分野での応用が期待されている。しかしながら、現存の製造方法では、製造した複合金属硫化物の均一性が悪く、又は純度が悪いといった問題があり、改善が必要とされている。また、性能を最大限に発揮させるために、その製造方法には、化学組成の制御が可能であることが求められる。
本発明では、この課題を解決するために、均一で純度の高い複合金属酸化物を製造することに成功を収めた「錯体重合法」と、金属硫化物の製造方法として成功を収めた「金属酸化物又は金属の塩を、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理する硫化合成法」を参考にした、複合金属硫化物の新しい製造方法を提供することを目的とする。この製造方法を用いれば、均一で、かつ純度の高い複合金属硫化物が製造でき、さらに、化学組成の制御も可能となる。
また、複合金属硫化物のバルク体である焼結体を製造する方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、組成式(L1−x)3-y若しくは組成式(LS)zMS又は組成式LMS(ただし、Lは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類金属群から選ばれる少なくとも1種、Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Auの遷移金属群から選ばれる少なくとも1種、xの範囲は0以上で1.0以下、yの範囲は0以上で0.4以下、zの範囲は1.0以上で1.5以下)で表わせる複合金属硫化物を、原子レベルで均一な状態で、かつ高純度な状態で製造できる方法を見出した。さらに、この製造方法を用いれば、化学組成の制御も可能となる。
この複合金属硫化物の製造方法は、第一の手順として、複合金属硫化物を形成する金属の硝酸塩を、クエン酸を加えたグリコール溶液中に溶解することによって錯体化し、第二の手順で、加熱することによってエステル重合させてポリエステルとする。さらに、第三の手順で、このポリエステルを焼成することで、オキシ炭酸塩若しくは複合金属酸化物又はこれらを含む混合物を製造し、最後の手順で、二硫化炭素を含むガス雰囲気下で処理することを特徴とする。
複合金属酸化物を製造するために用いられている既存の錯体重合法では、中間生成物として存在するオキシ炭酸塩を利用することはない。
しかし、本発明者らは、このオキシ炭酸塩が、複合金属硫化物を製造する上で重要な場合があることを見出した。第三の手順において、オキシ炭酸塩を含まない場合は、最後の手順で、二硫化炭素を含むガス雰囲気下で処理しても、単相の複合金属硫化物を製造できないこともある。
単に、これまでの錯体重合法と同じく、複合金属酸化物を製造すればよいというわけではない。製造を目的とする複合金属硫化物に合わせて、オキシ炭酸塩又は複合金属酸化物を作り分ける必要がある。特に、上記の組成式(L1−x)3-yで表わす複合金属硫化物を製造する場合は、第三の手順で、オキシ炭酸塩を含んでおくことが望ましい。
この発明は、オキシ炭酸塩又は複合金属酸化物を作り分けるという点においても、単に、既存の「錯体重合法」と「金属酸化物又は金属の塩を、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理する硫化合成法」を組み合わせたものではないといえる。
さらに検討を行った結果、第一の手順では、グリコール溶液中に金属イオンが存在し、それがクエン酸によって錯体化することが重要である。強調すれば、グリコール溶液中に金属イオンが存在することが重要である。すなわち、金属の硝酸塩だけではなく、金属イオンを提供できる、金属の塩のすべてにおいて、同様な効果が得られるという結論に至った。
第一の手順において、クエン酸だけではなく、1分子中にカルボキシ基−COOHとアルコール性ヒドロキシ基−OHをもつ有機化合物であるヒドロキシ酸(別名、オキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、オキシ酸、アルコール酸ともいう。)に分類されるすべての酸において、同様な効果が得られるという結論に至った。このカルボキシ基−COOHとグリコールのヒドロキシ基−OHとの間で、エステル重合反応が起こる。
第一の手順において、すべての遷移金属には硝酸塩又は金属の塩が存在し、ヒドロキシ酸を加えることで錯体化する。すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Auの遷移金属群から選ばれる少なくとも2種を含む複合金属硫化物について、本発明の製造方法は適用できるという結論に至った。
硝酸塩又は金属の塩は、遷移金属だけではなく、全ての金属に存在しており、ヒドロキシ酸を加えることで錯体化する。すなわち、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Au、Al、Zn、Ga、Ge、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Biの金属群から選ばれる少なくとも2種を含む複合金属硫化物について、本発明の製造方法は適用できるという結論に至った。
第一の手順で、金属の塩の混合比を変化させれば、それに対応して最終生成物である複合金属硫化物の化学組成も変化する。すなわち、金属の塩の混合比を変えるだけで、最終生成物の化学組成を制御ことができる。
最後の手順において、二硫化炭素を含むガスの他にも、硫化を促進するとして知られている硫化水素、チオシアン酸、チオシアン酸塩又はチオ尿素を含むガスにおいても、同様な効果が得られるという結論に至った。ここで、チオ尿素(SC(NH)は、チオシアン酸アンモニウム(NHSCN)の異性体である。
さらに、複合金属酸化物又は金属の塩は、熱力学的に考えて、上記以外の硫黄化合物を含むガス雰囲気下においても、時間はかかるものの、硫化する。すなわち、すべての硫黄化合物において、同様な効果が得られるという結論に至った。
300°C未満の低い温度では、熱力学的に、硫黄化合物を含むガス雰囲気下でも、オキシ炭酸塩若しくはオキシ炭酸塩と複合金属酸化物との混合物又は複合金属酸化物は安定であり、硫化反応が進行しない。ゆえに、硫黄化合物を含むガス雰囲気下での処理が、硫化反応が進行する300°C以上の温度で行われることが望ましい。
オキシ炭酸塩若しくはオキシ炭酸塩と複合金属酸化物との混合物は、後述する実施例に示すように、複合金属硫化物を形成する場合に、その多くは原子レベルで均一化されるので、上記の比較的低い温度で硫化することが可能であり、好ましい条件である。これは、本願発明の大きな特徴の一つである。
しかし、複合金属酸化物単独の場合には、原子レベルで均一化され難いことがある。これは、製造を目的としている複合金属硫化物によっては、対応する複合金属酸化物が存在しないか又は対応する複合金属酸化物の存在自体が不安定なためと考えられる。このような場合、第三の手順を終えても、原子レベルで完全には均一になっていない。
このような場合、後述する実施例に示すように、最後の手順で原子レベルでの均一を促すために、硫黄化合物を含むガス雰囲気下での処理を、500°C以上、好ましくは600°C以上の温度で行うことが望ましい。これによって、原子レベルで均一化された複合金属硫化物を製造することが可能となる。これは、本願発明において、知見した特徴のある方法であることは理解されるべきことである。
また、上記に述べた低温でも原子レベルでの均一化が達成され易いオキシ炭酸塩若しくはオキシ炭酸塩と複合金属酸化物との混合物においても、500°C以上の温度で硫化を行うことを否定するものではない。より高温で行うことは、反応を早め、より均一で迅速な処理が可能となるからである。
上記方法で製造した複合金属硫化物の分解する温度又は融点をA°Cとしたとき、複合金属硫化物を、A/2°C以上からA°C未満までの温度範囲で焼結することで、その密度が理論密度の90%以上であることを特徴とする複合金属硫化物の焼結体を製造できることを見出した。本願発明の複合金属硫化物は、焼結しても均一性は失われないという優れた効果がある。この場合、A/2°Cより低い温度では、結晶粒が成長せず、緻密な材料を得ることができない。したがって、上記の温度範囲で焼結することが望ましい。
焼結方法としては、試料の緻密化が容易に進行する、ホットプレス焼結法、パルス通電焼結法、熱間等方加圧式焼結法などの加圧焼結法が望ましい。しかしながら、事前に10MPa以上の圧力で押し固められた圧粉体を用いるのであれば、加圧をしない常圧焼結法を用いて、十分に緻密な焼結体を得ることができる。
この発明によれば、錯体重合法を参考にした溶液法の特徴を生かして、複合金属硫化物を、原子レベルでの混合が起きている均一な状態で、さらに、高純度な状態で製造することできる。また、第一の手順で用いる複数の金属の塩の混合比を変えるだけで、簡単に、複合金属硫化物の化学組成を制御できる。
第三の手順で、オキシ炭酸塩若しくは複合金属酸化物又はこれらを含む混合物を、最後の手順で、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理することで、容易に、複合金属硫化物を製造することができる。また、製造された複合金属硫化物を焼結することによって、均一かつ高純度のまま、使用者が使いやすいバルク体に成形することができる。
第一の手順として、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Au、Al、Zn、Ga、Ge、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Biの金属群から選ばれる少なくとも2種を含む複合金属硫化物、好ましくは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Auの遷移金属群から選ばれる少なくとも2種を含む複合金属硫化物、さらに好ましくは、組成式(L1−x)3-y若しくは組成式(LS)zMS又は組成式LMS(ただし、Lは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類金属群から選ばれる少なくとも1種、Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Auの遷移金属群から選ばれる少なくとも1種、xの範囲は0以上で1.0以下、yの範囲は0以上で0.4以下、zの範囲は1.0以上で1.5以下)で表わせる複合金属硫化物の製造方法において、この複合金属硫化物を形成する金属の塩を、好ましくは金属の硝酸塩を、所定の比で秤量して十分に混合して、1分子中にカルボキシ基−COOHとヒドロキシ基−OHをもつヒドロキシ酸が加えてあるグリコール溶液中に溶解する。ヒドロキシ酸は、好ましくはクエン酸が望ましい。
最終生成物である複合金属硫化物の化学組成にあわせて、金属の塩の混合比を決める。金属の塩を溶解したヒドロキシ酸が加えてあるグリコール溶液を、溶媒が揮発しない温度、好ましくは100°C以下で、錯体化が進行して、元はにごっていた溶液が透明になるまで保持する。
第二の手順として、上記で得られた、金属錯体を含む溶液を、加熱することによって、金属錯体のカルボキシ基−COOHとグリコールのヒドロキシ基−OHとの間でエステル重合反応が起き、ゲル状のポリエステルが得られる。
好ましくは、この加熱は100°C以上300°C以下で行う。100°Cより低い温度では、エステル重合反応が進行せず、300°Cを超える温度では、エステル重合反応が急激に進行して組成が不均一となる。この加熱は、ゲルの粘度が十分に向上したことを確認して終了する。
好ましくは、このゲル状のポリエステルを“か焼”して、余分な有機物を取り除き、粉末状で非晶質の前駆体を製造する。好ましくは、か焼は300°C以上500°C以下の温度で行う。300°C未満の温度では、有機物が十分に取り除けない。500°Cを超える温度では、前駆体が結晶化してしまう。純度が少し悪くても、製造を短時間ですませることを優先するときには、この工程を省くことができる。
第三の手順として、この前駆体を焼成することとで、オキシ炭酸塩若しくは複合金属酸化物又はこれらを含む混合物を製造する。焼成は、結晶化が望める500°C以上の温度で実施することが望ましい。製造を目的とする複合金属硫化物に合わせて、オキシ炭酸塩又は複合金属酸化物を作り分ける必要がある。
上記の組成式(L1−x)3-yで表わす複合金属硫化物を製造する場合には、好ましくはオキシ炭酸塩又はオキシ炭酸塩と複合金属酸化物との混合物であることが望ましい。すなわち、この場合は、オキシ炭酸塩の存在が重要である。
最後の手順として、この化合物を、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理することで、複合金属硫化物を製造する。このとき、硫黄化合物を含むガスは、好ましくは、二硫化炭素、硫化水素、チオシアン酸、チオシアン酸塩又はチオ尿素の少なくとも1種類を含むガスであることが望ましい。さらに好ましくは、熱力学的に有利な、二硫化炭素を含むガスであることが望ましい。
硫黄化合物を含むガス雰囲気下での処理は、好ましくは、硫化反応が進行する300°C以上の温度で行われることが望ましい。300°C未満の低い温度では、硫黄化合物を含むガス雰囲気下でも、オキシ炭酸塩若しくはオキシ炭酸塩と複合金属酸化物との混合物又は複合金属酸化物は安定であり、硫化反応が進行しないからである。
製造を目的としている複合金属硫化物によっては、対応する複合金属酸化物が存在しないか又は対応する複合金属酸化物の存在自体が不安定なことがある。すなわち、複合金属酸化物単独の場合には、原子レベルで均一化され難い。このような場合、第三の手順を終えても、原子レベルで完全には均一になっていない。
このような場合は、最後の手順で原子レベルでの均一を促すために、硫黄化合物を含むガス雰囲気下での処理を、500°C以上、好ましくは600°C以上の温度で行うことが望ましい。これによって、原子レベルでの均一化が達成できる。また、上記に述べた低温でも原子レベルでの均一化が達成され易いオキシ炭酸塩若しくはオキシ炭酸塩と複合金属酸化物との混合物においても、500°C以上の温度で硫化反応を行うことができる。より高温で行うことは、反応を高め、より均一で迅速な処理が可能となる。
本願の方法で製造した複合金属硫化物の分解する温度又は融点をA°Cとしたとき、複合金属硫化物を、A/2°C以上からA°C未満までの温度範囲で焼結すれば、その密度が理論密度の90%以上であることを特徴とする複合金属硫化物の焼結体を製造できることを見出した。A/2°C未満の低い温度では、結晶粒が成長せず、試料の緻密にならない。
焼結方法としては、ホットプレス焼結法、パルス通電焼結法、熱間等方加圧式焼結法などの加圧焼結法や、加圧をしない常圧焼結法のいずれでも良い。
常圧焼結法では、事前に10MPa以上の圧力で押し固められた圧粉体を用いることが望ましい。10MPa以上の圧力で押し固められた圧粉体を用いることで、結晶粒が隣接し、試料の緻密化が進行しやすい。より好ましくは、焼結方法としては、試料の緻密化が容易に進行する加圧焼結法が望ましい。
次に、実施例及び比較例について説明する。
なお、以下に示す実施例及び比較例の説明は、発明の理解を容易にするためのものであり、これらの実施の形態の説明によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施条件等は、当然本発明含まれるものである。
出発原料には、硝酸ネオジム六水和物(Nd(NO・6HO)、硝酸ガドリニウム六水和物(Gd(NO・6HO)、エチレングリコール、クエン酸一水和物を用いた。硝酸ネオジム六水和物、硝酸ガドリニウム六水和物、エチレングリコール、そしてクエン酸一水和物を、モル比で1:1:40:10になるように秤量し、硝酸塩、クエン酸一水和物、エチレングリコールの順で蒸留水に加えた。
この溶液をマグネチックスターラーで撹拌しながら60°Cまで加熱し、2時間保持した。溶液が透明になったことを目視で確認したのち、水溶液を120°Cから150°C程度の温度まで上昇させて、ゲル化よりマグネットスターラーの回転子が回らなくなるまでこの温度で保持し続けた。このゲル化には2時間から3時間を要した。その後、ゲル体を室温まで冷却した。
さらに、得られたゲルを、大気中において、350°Cで2時間保持してか焼し、余分な有機物を取り除いて前駆体を作製した。この前駆体は、粉末状であり、X線回折パターンから非晶質であることが確認された。
前駆体を、大気中において、500°Cから1000°Cまでの温度で2時間焼成した。2時間焼成した後も、試料の形状は粉末状のままであった。表1に、焼成温度を500°C、600°C、700°C、800°C、900°C、そして1000°Cとした場合の、X線回折パターンから判断した生成物を示す。
500°Cで焼成した場合、オキシ炭酸塩であるNdGdOCOが生成した。600°Cと700°Cで焼成した場合は、複合金属酸化物である立方晶のNdGdOが生成し、さらに、800°Cで、立方晶NdGdOのほかに結晶構造が異なる単斜晶のNdGdOが混合していた。そして、900°Cと1000°Cの場合、単斜晶NdGdOの単相が生成した。
上記の500°Cから1000°Cまでの温度で焼成したオキシ炭酸塩又は複合金属酸化物を、二硫化炭素ガスを用いて硫化した。オキシ炭酸塩又は複合金属酸化物を、別々に石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から800°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
次に、この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、オキシ炭酸塩又は複合金属酸化物を別々に硫化した。ここで、搬送ガスであるArガスの流量は、100ml/minとした。硫化時間は8時間とし、その後、アルゴン雰囲気中で、800°Cから室温まで自然冷却した。
X線回折パターンから判断した生成物を表1に示す。前駆体を500°Cの温度で焼成して製造したオキシ炭酸塩NdGdOCOを硫化した場合、目的としている複合金属硫化物である斜方晶NdGdSの単相が生成していた。前駆体を600°C以上の焼成温度で製造した複合金属酸化物NdGdOを硫化した場合、目的としている斜方晶NdGdSが生成していたものの、わずかではあるが、酸硫化物であるNdGdOSと推定される不純物相が含まれていた。
以上の結果より、オキシ炭酸塩の存在が、不純物相を含まない複合金属硫化物NdGdSを製造するために欠かせないことが分かる。また、いずれの場合も、Nd、Gd、NdSならびにGdSといった金属が複合していない化合物の生成は確認できなかった。すなわち、原子レベルでの混合が達成されていた。
ここで前駆体の加熱条件、特に高温の加熱によっては、オキシ炭酸塩が消失し、製造された複合金属硫化物にわずかな不純物相が認められる。しかし、この程度の不純物相の存在が無視できるものに適用される場合には、特に問題になるレベルの量ではないと言える。
ここまで、前駆体の焼成時間は2時間としていたが、24時間まで延長させた。焼成温度は500°Cとした。24時間焼成した後も、試料の形状は粉末状のままであった。生成物は、2時間焼成した場合と変わらず、オキシ炭酸塩NdGdOCOであった。この生成物を、上記と同じ条件、硫化温度を800°C、硫化時間を8時間として、二硫化炭素ガスを用いて硫化したところ、複合金属硫化物である斜方晶NdGdSの単相が生成していた。さらに、炭素と酸素の不純物濃度を調べたところ、それぞれ、0.19重量パーセントと0.43重量パーセントであった。すなわち、製造した斜方晶NdGdSの純度は、99重量パーセント程度の高純度である。
次に硫化温度を800°Cから1000°Cに上昇させた。前駆体を500°Cで2時間および24時間の条件で焼成した二種類のオキシ炭酸塩NdGdOCOを、硫化温度を1000°C、硫化時間を8時間として、二硫化炭素ガスを用いて硫化した。X線回折パターンから判断して、硫化温度を1000°Cに上昇させても、共に、目的としている複合金属硫化物である斜方晶NdGdSの単相が生成していた。
最後に、不純物相を含まない複合金属硫化物NdGdSを、加圧焼結法の1種であるパルス通電焼結法を用いて緻密なバルク体に成型した。NdGdSの融点は知られていないが、二元系希土類硫化物の融点は、上記の非特許文献6によると2000°C付近であるので、これを参考にして、焼結温度を1500°Cに設定した。
焼結実験には、前駆体を500°Cで2時間の条件で焼成したオキシ炭酸塩NdGdOCOを、800°Cもしくは1000°Cで硫化した二種類の斜方晶NdGdS単相の粉末を用いた。それぞれの粉末から1.5gずつを取り、別々に内径が10mmの黒鉛筒にいれて、一軸方向から50MPaの圧力を加えながら、10−2Pa以下の真空中にて、1500°Cの温度で、1時間保持する条件で焼結体を製造した。パルス通電焼結に用いた装置は、住友石炭鉱業株式会社のSPS511Sである。
室温から600°Cまで6分で昇温させ、さらに600°Cから1500°Cまで1分につき25°Cの速度で昇温させた。1500°Cで1持間保持したのち、1500°Cから600°Cまでは1分につき50°Cの速度で降温させて、それ以降は自然冷却させた。
昇温時における試料の収縮曲線を解析すると、すべての試料は、800°Cから1150°Cまでの温度範囲で急激に収縮しており、緻密化が進行している様子がうかがえた。およそ1200°C程度で収縮が終わったことから、この温度で緻密化が終了したものと思われる。
得られた焼結体の密度を、かさ密度から計算した。それらの密度は、理論密度と比較して、共に、98%以上に達していた。得られたすべての焼結体の一部を切断した後、それぞれ砕いて粉末にした。それらの粉末のX線回折パターンから判断したところ、二種類の斜方晶NdGdS粉末から製造した焼結体は、共に、複合金属硫化物である立方晶NdGdSの単相となっていた。
すなわち、融点の半分以上の温度と思われる1500°Cで加圧焼結したところ、斜方晶から立方晶へと結晶構造は変化したものの、原子レベルでの混合が保たれたまま、緻密で、不純物相を含まない複合金属硫化物の焼結体が得られた。
ここで、焼結実験に、前駆体を500°Cで24時間の条件で焼成したオキシ炭酸塩NdGdOCOを、800°Cもしくは1000°Cで硫化した二種類の斜方晶NdGdS粉末を用いても同様な結果が得られた。
Figure 0005187654
比較例1として、NdとGdから、乾式法の手順を用いて、複合金属硫化物である斜方晶NdGdS単相の製造を試みた。まず、NdとGdをモル比1:1になるように秤量して、よく混合した。この混合物を石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から800°C又は1000°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
次に、この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、混合物を硫化した。硫化時間は8時間とした。X線回折パターンから判断して、800°C又は1000°Cの温度で硫化して作製した生成物は、共に、斜方晶Ndと斜方晶Gdの混合物であった。斜方晶NdGdSの存在は確認されなかった。すなわち、この方法では、原子レベルでの混合は起きなかった。
比較例2として、比較例1と同様に、NdとGdから、乾式法の手順を用いて、複合金属硫化物である斜方晶NdGdS単相の製造を試みた。まず、NdとGdをモル比1:1になるように秤量して、よく混合した。この混合物を石英ボートに入れて、原子レベルでの混合を促すために、大気中にて、1000°Cの温度で48時間の焼成を行った。
次に、長時間、高温で焼成したこの混合物の入った石英ボートを石英反応管に挿入し、二硫化炭素ガスを用いて硫化した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から1000°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、混合物を硫化した。硫化時間は8時間とした。X線回折パターンから判断して、生成物は、斜方晶Ndと斜方晶Gdの混合物であった。斜方晶NdGdSの存在は確認されなかった。すなわち、この方法でも、原子レベルでの混合は困難であった。
実施例2として、複合金属硫化物SmGdSを製造した。出発原料には、硝酸サマリウム六水和物(Sm(NO・6HO)、硝酸ガドリニウム六水和物(Gd(NO・6HO)、エチレングリコール、クエン酸一水和物を用いた。
硝酸サマリウム六水和物、硝酸ガドリニウム六水和物、エチレングリコール、そしてクエン酸一水和物を、モル比で1:1:40:10になるように秤量し、硝酸塩、クエン酸一水和物、エチレングリコールの順で蒸留水に加えた。
この溶液をマグネチックスターラーで撹拌しながら60°Cまで加熱し、2時間保持した。溶液が透明になったことを目視で確認したのち、水溶液の温度を約130°Cまで上昇させて、ゲル化よりマグネットスターラーの回転子が回らなくなるまでこの温度で保持した。このゲル化には2時間から3時間を要した。
その後、ゲル体を室温まで冷却した。さらに、得られたゲルを、大気中において、350°Cで2時間保持してか焼し、余分な有機物を取り除いて前駆体を作製した。この前駆体は、粉末状であり、X線回折パターンから非晶質であることが確認された。
この前駆体を、大気中において、500°C又は800°Cの温度で2時間焼成した。2時間焼成した後も、試料の形状は粉末状のままであった。X線回折パターンから判断して、500°Cで焼成した場合、オキシ炭酸塩であるSmGdOCOが生成した。一方、800°Cで焼成した場合、複合金属酸化物である立方晶のSmGdOが生成した。
上記のオキシ炭酸塩SmGdOCOと複合金属酸化物SmGdOを、二硫化炭素ガスを用いてそれぞれ硫化した。オキシ炭酸塩と複合金属酸化物を、それぞれ石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から800°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
次に、この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、オキシ炭酸塩と複合金属酸化物をそれぞれ硫化した。ここで、搬送ガスであるArガスの流量は、100ml/minとした。硫化時間は8時間とし、その後、アルゴン雰囲気中で、800°Cから室温まで自然冷却した。
X線回折パターンから判断して、オキシ炭酸塩を硫化した場合は、目的としている複合金属硫化物である斜方晶SmGdSの単相が生成していた。一方、複合金属酸化物を硫化した場合は、目的としている斜方晶SmGdSが生成していたものの、わずかではあるが、酸硫化物のSmGdOSと推定される不純物相の存在が確認された。ここでも、オキシ炭酸塩の存在が、純度の高い複合金属硫化物を製造する上で重要であることが分かる。
次に、不純物相を含まない複合金属硫化物SmGdSを、加圧焼結法の1種であるパルス通電焼結法を用いて緻密なバルク体に成型した。SmGdSの融点は知られていないが、二元系希土類硫化物の融点は、上記の非特許文献6によると2000°C付近である。さらに、実施例1によると、試料の焼結収縮曲線から判断して、1200°C程度の温度で緻密化が終了したと思われたので、焼結温度を1300°Cに設定した。
焼結実験には、前駆体を500°Cで焼成したオキシ炭酸塩SmGdOCOを、800°Cで硫化した斜方晶SmGdS単相の粉末を用いた。粉末から1.5gを取り、内径が10mmの黒鉛筒にいれて、一軸方向から50MPaの圧力を加えながら、10−2Pa以下の真空中にて、1300°Cの温度で、1時間保持する条件で焼結体を製造した。パルス通電焼結に用いた装置は、住友石炭鉱業株式会社のSPS511Sである。
室温から600°Cまで6分で昇温させ、さらに600°Cから1300°Cまで1分につき25°Cの速度で昇温させた。1300°Cで1持間保持したのち、1300°Cから600°Cまでは1分につき50°Cの速度で降温させて、それ以降は自然冷却させた。
昇温時における試料の収縮曲線を解析すると、実施例1と同様に、試料は、800°Cから1150°Cの温度範囲で急激に収縮しており、緻密化が進行している様子がうかがえた。およそ1200°C程度で収縮が終わったことから、この温度で緻密化が終了したものと思われる。
得られた焼結体の密度を、かさ密度から計算した。その密度は、理論密度と比較して、98%以上に達していた。得られた焼結体の一部を切断して、砕いて粉末にした。その粉末のX線回折パターンから判断して、焼結体は、複合金属硫化物である立方晶SmGdSの単相であった。
実施例1と同様に、融点の半分以上の温度と思われる1300°Cで加圧焼結したところ、斜方晶から立方晶へと結晶構造は変化したものの、原子レベルでの混合が保たれたままの、緻密で、不純物相を含まない複合金属硫化物の焼結体が得られた。
比較例3として、市販のSmとGdから、乾式法を用いて、複合金属硫化物である斜方晶SmGdS単相の製造を試みた。まず、SmとGdをモル比1:1になるように秤量して、よく混合した。この混合物を石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から1000°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
次に、この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、この混合物を硫化した。硫化時間は8時間とした。X線回折パターンから判断して、生成物は、斜方晶Smと斜方晶Gdの混合物であった。斜方晶SmGdSの存在は確認されなかった。すなわち、この方法では、原子レベルでの混合は起きなかった。
比較例4として、比較例3と同様に、SmとGdから、乾式法を用いて、複合金属硫化物である斜方晶SmGdS単相の製造を試みた。まず、SmとGdをモル比1:1になるように秤量して、よく混合した。原子レベルでの混合を促すために、この混合粉末を、内径が10mmの黒鉛筒にいれて、一軸方向から50MPaの圧力を加えながら、10−2Pa以下の真空中にて、1000°Cの温度で、1時間保持する条件で焼成した。この焼成には、住友石炭鉱業株式会社のSPS511Sを用いた。室温まで温度を下げて、試料を取り出した後、さらに、大気中にて、1000°Cの温度で48時間焼成した。
次に、試料を石英ボートに入れて、石英反応管に挿入し、二硫化炭素ガスを用いて硫化した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から1000°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。次に、この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、試料を硫化した。硫化時間は8時間とした。X線回折パターンから判断して、生成物は、わずかな酸硫化物のNdGdOSを不純物相として含んでいたが、目的としている斜方晶NdGdSであった。
1000°Cにおける50MPaの圧力下での均一化熱処理、さらに1000°Cで48時間という長時間での均一化熱処理により、はじめて、不純物相は含んでいるものの、乾式法を用いて原子レベルでの混合がなされた。この原子レベルでの混合を達成するための条件を考慮すると、乾式法と比べて、本特許の製造方法の優位性は明らかである。
実施例3として、NdCuSの製造を試みた。出発原料には、硝酸銅三水和物(Cu(NO・3HO)、硝酸ネオジム六水和物(Nd(NO・6HO)、エチレングリコール、クエン酸一水和物を用いた。硝酸銅三水和物、硝酸ネオジム六水和物、エチレングリコール、そしてクエン酸一水和物を、モル比で1:1:40:10になるように秤量した。エチレングリコールと蒸留水の入ったビーカーにクエン酸一水和物を加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら80°Cまで加熱して、クエン酸一水和物を溶解させる。
クエン酸一水和物が溶解したら、80°Cの温度を保持したまま、硝酸銅三水和物と硝酸ネオジム六水和物を加えて撹拌する。溶液が透明になったことを目視で確認したのち、水溶液の温度を130°C程度まで上昇させてゲル化させた。最後に、得られたゲルを、大気中において、350°Cで2時間保持するか焼を行い、余分な有機物を取り除き、粉末状の前駆体を得た。
前駆体を大気中において、675°Cで12時間焼成した。生成した粉末を、X線回折法を用いて同定したところ、複合金属酸化物であるNdCuOの生成を確認した。ただし、CuOが不純物相として残留していた。この段階で、原子レベルでの混合は進んでいるものの、組成式NdCuOで表わせる化合物が熱力学的に不安定なため、CuOが不純物相として残留しているものと思われる。
CuOが残留しているNdCuOを石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から700°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
次に、この温度を保ったまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、CuOが残留しているNdCuOを硫化した。ここで、搬送ガスであるArガスの流量は、100ml/minとした。硫化時間は8時間とし、その後、アルゴン雰囲気中で、700°Cから室温まで自然冷却した。X線回折パターンから判断したところ、生成物は、複合金属硫化物であるNdCuSの単相であることが確認された。
複合金属酸化物の段階では達成できなかった完全な均一化を、700°Cという十分に高い硫化温度を設定することで、複合金属硫化物で完全に達成できた。
複合金属硫化物であるNdCuSを、加圧焼結法の1種であるパルス通電焼結法を用いて緻密なバルク体に成型した。NdCuSの融点は知られていないが、何度か実験を重ねて、焼結温度は、融点よりも300°C程度低いと思われる800°Cの温度が適切であると判断した。
粉末を1.5g取り、内径が10mmの黒鉛筒にいれて、一軸方向から50MPaの圧力を加えながら、10−2Pa以下の真空中にて、800°Cの温度で、1時間保持する条件で焼結体を製造した。パルス通電焼結に用いた装置は、住友石炭鉱業株式会社のSPS511Sである。
室温から800°Cまで1分につき25℃の速度で昇温させた。800°Cで1持間保持したのち、800°Cから600°Cまでは1分につき50°Cの速度で降温させて、それ以降は自然冷却させた。
得られた焼結体の密度を、かさ密度から計算した。その密度は、理論密度と比較して、98%以上に達していた。得られた焼結体の一部を切断し、砕いて粉末にした。この粉末のX線回折パターンから判断して、焼結体は、複合金属硫化物であるNdCuSの単相となっていた。結晶構造は、焼結の前後で変化しなかった。すなわち、原子レベルでの混合が保たれたままの、緻密で、不純物相を含まない複合金属硫化物の焼結体が得られた。
比較例5として、CuOとNdから、乾式法を用いて、複合金属硫化物であるNdCuS単相の製造を試みた。まず、CuOとNdをモル比1:1になるように秤量し、よく混合した。この混合物を石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から700°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
次に、この温度を保ったまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、混合物を硫化させた。硫化時間は8時間とした。X線回折パターンから判断して、生成物は、複合金属硫化物であるNdCuSと、複合酸硫化物であるNdOCuSとの混合物であった。すなわち、不純物相を含む純度の低い複合金属硫化物しか得られなかった。
比較例6として、比較例5と同様に、CuOとNdから、乾式法を用いて、複合金属硫化物である斜方晶NdCuS単相の製造を試みた。まず、CuOとNdをモル比1:1になるように秤量して、よく混合した。この混合物を石英ボートに入れて、原子レベルでの混合を促すために、大気中で、900°Cの温度で、48時間焼成した。
次に、長時間、高温で焼成したこの混合物の入った石英ボートを石英反応管に挿入し、二硫化炭素ガスにより硫化した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から700°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。
さらに、この温度を保持したまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、混合物を硫化した。硫化時間は8時間とした。X線回折パターンから判断して、生成物は、複合金属硫化物であるNdCuSと、複合酸硫化物であるNdOCuSとの混合物であった。すなわち、この場合も、不純物相を含む純度の低い複合金属硫化物しか得られなかった。
実施例4として、非化学量論比の複合金属硫化物であるNdが欠損したNd0.5CuSの製造を試みた。出発原料には、硝酸銅三水和物(Cu(NO・3HO)、硝酸ネオジム六水和物(Nd(NO・6HO)、エチレングリコール、クエン酸一水和物を用いた。硝酸銅三水和物、硝酸ネオジム六水和物、エチレングリコール、そしてクエン酸一水和物を、モル比で1:0.5:40:10になるように秤量した。
次に、エチレングリコールと蒸留水の入ったビーカーにクエン酸一水和物を加え、マグネチックスターラーで撹拌しながら80°Cまで加熱し、クエン酸一水和物を溶解させる。クエン酸一水和物が溶解したら、80°Cに温度を保持したまま、硝酸銅三水和物と硝酸ネオジム六水和物を加えて撹拌する。
溶液が透明になったことを目視で確認したのち、水溶液の温度を130°C程度まで上昇させゲル化させた。最後に、得られたゲルを、大気中において、350°Cで2時間保持するか焼を行い、余分な有機物を取り除き、粉末状の前駆体を得た。さらに、前駆体を大気中において、675°Cで12時間焼成した。
前駆体を焼成した粉末を石英ボートに入れて、石英反応管に挿入した。石英反応管内をアルゴン雰囲気にして、室温から700°Cの温度まで約1時間をかけて上昇させた。次に、この温度を保ったまま、二硫化炭素溶液中から気化させた二硫化炭素ガスを、アルゴンガスを搬送ガスとし、石英反応管内に導入して、粉末を硫化した。ここで、搬送ガスであるArガスの流量は、100ml/minとした。硫化時間は8時間とし、その後、アルゴン雰囲気中で、700°Cから室温まで自然冷却した。
X線回折パターンから判断して、生成物は、複合金属硫化物であるNdCuSと同じ結晶構造を保っていた。すなわち、生成物は、NdCuSの結晶構造を保っている非化学量論比のNd0.5CuSである。本発明の製造方法は、非化学量論比の複合金属硫化物の合成にも用いられることが実証された。
この非化学量論比の複合金属硫化物であるNd0.5CuSを、加圧焼結法の1種であるパルス通電焼結法を用いて緻密なバルク体に成型した。焼結温度は、NdCuSの焼結と同様に、融点に近い800°Cの温度が適切であると判断した。
Nd0.5CuSの粉末から1.5gを取り、内径が10mmの黒鉛筒にいれて、一軸方向から50MPaの圧力を加えながら、10−2Pa以下の真空中にて、800℃の温度で、1時間保持する条件で焼結体を製造した。パルス通電焼結に用いた装置は、住友石炭鉱業株式会社のSPS511Sである。
室温から800°Cまで1分につき25℃の速度で昇温させた。800°Cで1持間保持したのち、800°Cから600°Cまでは1分につき50°Cの速度で降温させて、それ以降は自然冷却させた。
得られた焼結体の密度を、かさ密度から計算した。その密度は、理論密度と比較して、98%以上に達していた。得られた焼結体の一部を切断し、砕いて粉末にした。この粉末のX線回折パターンから判断して、焼結体は、複合金属硫化物であるNdCuSの結晶構造を保っていた。すなわち、焼結体も、NdCuSの結晶構造を保っている非化学量論比のNd0.5CuSである。
熱電変換材料において、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する際に、熱電変換材料の性能を示す指標として、ゼーベック係数Sと電気抵抗率ρを用いて、式、P=S/ρ、で示される熱電出力因子Pが用いられる。熱電出力因子は、熱電変換材料から取り出せる電力の大きさの指標となる。
600°Cの温度で、非化学量論比の複合金属硫化物であるNd0.5CuS焼結体のゼーベック係数と電気抵抗率を測定して、熱電出力因子を計算したところ、およそ10μW/K・mであった。既存の材料であるBi−Te系に比べて、この値は小さいものの、今後の開発に期待できる値である。
本願発明は、上記実施例の材料を中心に説明したが、先に列挙した材料、すなわちLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Au、Al、Zn、Ga、Ge、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Biの金属群から選ばれる少なくとも2種を含む複合金属硫化物の製造方法および複合金属硫化物焼結体の製造方法に、同様に適用できることは言うまでもない。
実施例として特に示さないが、実施例1〜4に示すものと同様の条件又は類似の条件で、すなわち金属の選択、配合割合を任意に設定することにより、さらにこれらの選択又は設定を基にして、任意に加熱又はか焼及び焼成条件を選択することにより、全て実施できるものである。本願発明はこれらを全て包含する。
本発明の複合金属硫化物の製造方法は、原子レベルでの均一な混合が可能であり、また高純度の複合金属硫化物が製造でき、その組成比の制御も簡単に行うことができるという特徴を有し、さらにこのようにして製造された複合金属硫化物を焼結することによって、使用者が使いやすいバルク体に容易に成形することができるので、熱電変換材料、着色顔料および超伝導材料として有用である。

Claims (7)

  1. 組成式(L1−x)3-y若しくは組成式(LS)zMS又は組成式LMS(ただし、Lは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類金属群から選ばれる少なくとも1種、Mは、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir,Pt、Auの遷移金属群から少なくとも1種を含み、xの範囲は0を超え1.0未満、yの範囲は0以上で0.4以下、zの範囲は1.0以上で1.5以下)で表わせる複合金属硫化物の製造方法において、この複合金属硫化物を形成する金属の塩を、ヒドロキシ酸を加えたグリコール溶液中に溶解し、これを加熱してゲル化させるか又は粉末化させた後、焼成することによりオキシ炭酸塩若しくは複合金属酸化物又はこれらを含む混合物を製造し、次にこれらを、硫黄化合物を含むガス雰囲気下で処理することを特徴とする複合金属硫化物の製造方法。
  2. 金属の塩が、硝酸塩であることを特徴とする請求項1記載の複合金属硫化物の製造方法。
  3. 前記加熱を1又は2段階で行って、非晶質の粉末状前駆体を製造し、これを焼成してオキシ炭酸塩若しくは複合金属酸化物又はこれらを含む混合物を製造することを特徴とする請求項1又は2記載の複合金属硫化物の製造方法。
  4. 前記ヒドロキシ酸が、クエン酸であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載する複合金属硫化物の製造方法。
  5. 硫黄化合物を含むガスが、二硫化炭素、硫化水素、チオシアン酸、チオシアン酸塩又はチオ尿素から選ばれる少なくとも1種類を含むガスであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載する複合金属硫化物の製造方法。
  6. 硫黄化合物を含むガス雰囲気下での処理を、500°C以上の温度で行うことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載する複合金属硫化物の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6までに記載のいずれかの方法で製造した複合金属硫化物を、その分解する温度又は融点をA°Cとしたとき、A/2℃以上からA°C未満までの温度範囲で焼結し、その密度が理論密度の90%以上であることを特徴とする複合金属硫化物焼結体の製造方法。
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