JP5187340B2 - 化粧材の製造方法 - Google Patents
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Description
このような表面化粧板に使用される化粧シートには、ラミネート加工、ラッピング加工、Vカット加工などの二次加工のための適度な柔軟性、切削性、耐破断性などの加工適性、使用状態における耐候性、耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性、表面硬度、耐摩耗性、耐擦傷性など、種々の特性が要求される。
こうした要求を満たすために、上記加工適性を十分に満足する基材を用い、該基材の表面に表面保護層を施すことが行われており、表面保護層としては電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましく用いられている。
このような化粧材11は、浸透性が低い架橋硬化塗膜層19の上に、模様層14の中の艶消をする模様14aに対応する艶消する部分を選定して浸透性が高い架橋硬化模様層15を積層させたものであるため、該浸透性が高い架橋硬化模様層15に表面保護層17を形成する未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物が浸透する等によって、該浸透性が高い架橋硬化模様層15の直上部に一種の懸濁領域ができ、低艶層18が形成される。このことによって、模様層14のうち艶消をした部分14aの近傍が視覚的には凹、それ以外の艶が高い部分が凸として認識され、絵柄に立体感を与えることになる。つまり従来の化粧剤は、艶消をする部分を選択し、そこに懸濁層などを形成させて艶差を形成するものである。
(1)通常、模様の中の艶消をする部分は、木目模様における導管のように、極めて細い部分であることが多く、その幅が1000μm以下であり、時には100μm以下である。このような模様中の細い部分に正確に対応(同調)させて、浸透性が高い架橋硬化模様層15を形成することは極めて困難である。
(2)また、浸透性が高い架橋硬化模様層15の直上部に形成され、低艶層18となる懸濁領域が、図3における水平方向に膨張し、艶消する模様14a をはみ出して形成されることがある。そのため、艶消部分が膨張したり、その輪郭が不明瞭になり、幅が狭い、例えば100μm以下の部分を正確に艶消することができない現象が発生する。従って、艶消部分を緻密に形成し、模様を繊細に表現することは極めて困難な状況にある。
〔1〕基材上の艶消し処置を行う部分に低艶インキ層を積層し、その後、該基材上の全面に亘って艶消処置を行う部分を切抜いた形状を有する艶消防止層を積層し、続いて、該切抜き部分を含む艶消防止層の全面に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、さらに電離放射線を照射して表面保護層を形成し、該低艶インキ層の表面近傍であって、該艶消防止層の切抜き部分内に低艶層の少なくとも一部が形成されることを特徴とする化粧材の製造方法、
〔2〕前記艶消防止層を前記低艶インキ層より厚く積層する上記1に記載の化粧材の製造方法、
〔3〕前記基材と前記低艶インキ層との間に、さらに模様層を積層する上記1又は2に記載の化粧材の製造方法、
〔4〕前記模様層と前記低艶インキ層との間に、さらに浸透防止層を積層する上記3に記載の化粧材の製造方法、及び
〔5〕前記模様層の絵柄が木目であり、艶消し処置を行う部分が木目の導管に対応する部分である上記3又は4に記載の化粧材の製造方法、
を提供するものである。
(1)艶消防止層が艶消処置を行う部分を切抜いた形状を有して低艶インキ層の上(表面保護層側)に積層され、低艶インキ層が該艶消防止層の切抜き部分で表面保護層と接触しているので、低艶層がその切抜き部分内に形成される。そのため、低艶層が艶消防止層の切抜き部分より広く形成される可能性がなく、細い(シャープな)艶消層を形成することができる。この効果は、艶消防止層を低艶インキ層より厚く積層した場合にさらに大きくなる。
(2)低艶層の形状は、艶消防止層の切抜き部分の形状によって定まるため、低艶インキ層を積層する際、艶消しをする模様に厳密に合わせて積層する必要がなく、艶消処理をする部分を含んで積層すればよい。そのため、製造工程を簡易にすることができるとともに、艶消部分が100μm幅以下のような模様でも精密に艶消を行うことができ、より繊細に模様を表現することができる。
(3)電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物である表面保護層を有するため、耐水性、耐久性など優れた物性を有する。
図1は、本発明の第1の実施形態である化粧材の断面を示す模式図を示している。化粧材1は、大略すると、基材2、低艶インキ層5、艶消防止層6、及び表面保護層7などにより構成されている。
また、図1の化粧材の場合は、艶消防止層6は低艶インキ層5より厚く積層されている。従って、切抜き部分6a を含む艶消防止層6の上に積層された表面保護層7の原料である未硬化の電離放射線硬化性樹脂組成物は、切抜き部分6a 内で低艶インキ層5と接触した状態で積層されている。
艶消防止層6の切抜き部分6a においては、表面保護層7の原料である電離放射線硬化性樹脂組成物中に、浸透性がある低艶インキ層5の一部が溶出し懸濁状態となり、低艶層8を形成する。この低艶層8は、切抜き部分6a 内に形成されることから、水平方向にその部分を越えて形成されることがない。このことによって、細い部分を艶消する場合であってもこれに精密に同調した低艶層8を形成できることになる。これに対し、艶消防止層6の切抜き部分以外の領域は表面保護層7と接触しているが、表面保護層を形成する材料である電離放射線硬化性樹脂組成物に対して浸透性を有しないから、艶の変化は生ずることがなく、また境界領域が変化したりすることもない。
従って、艶消防止層6の艶消処置を行う領域を切抜いた切抜き部分6aのみが精密に艶消が行われ、模様層4にある模様が、全体として艶差が鮮明になって視角上繊細な凹凸として観察できる。
まず、基材1上に、着色層3、及び模様層4を形成する。次いで、模様層4のうち、艶消処理を行う部分4a に対応する部分に低艶インキ層5を形成する。本発明においては、着色層3、及び模様層4は必須ではないから、基材1の上に全面に亘って低艶インキ層5を形成することもある。その後、低艶インキ層5の上で、模様層4(基材1上に着色層3、模様層4が積層されていない場合は、基材1)上の全面に亘って艶消処置を行う部分を切抜いた形状の艶消防止層6を積層する(図1の場合は、艶消防止層6は前記低艶インキ層5より厚く形成する)。次いで、切抜き部分6a を含む艶消防止層6全面に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、その後電離放射線を照射して表面保護層7を形成し、化粧材1を得る。この製造方法では、低艶層8が形成される領域は、艶消防止層6における切抜き部分6a の形状で定まるため、低艶インキ層5の積層範囲は厳密であることは要求されず、艶消し処理をする模様の形状を含んで塗布すればよい。つまり艶消し処理をする模様の形状よりやや広めに塗布してもよい。そのため、従来のように.精密に描かれた艶消部分に厳密に合わせて積層する必要がなく、製造工程を簡易にすることができるとともに、より繊細な模様を艶消しすることが可能になる。
図2は、本発明の第2の実施形態である化粧材の断面を示す模式図を示している。図2における化粧材1は、浸透防止層9が模様層4の上に積層されたこと以外は、図1に示したものと同様である。前記浸透防止層9は、図2に示されるように模様層4と低艶インキ層5の間に設けられた、硬化性樹脂が架橋硬化した一様均一な層である。これによって、基材2上に着色層3、模様層4等がある場合には、これらの表面をならし、これらと低艶インキ層5及び表面保護層7との接着性を高める機能を果たすものであり、化粧材1の層間強度を高め、化粧材1全体の物性をさらに高めることができる。
まず、基材2としては、通常化粧材として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート、金属箔、金属シート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を行うことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
着色層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
この着色層3は厚さ1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
模様層4に用いる絵柄インキとしては、着色層3に用いるインキと同様のものを用いることができる。
低艶インキ層5を形成する低艶インキは、表面保護層7を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物との間で溶出、分散、混合等の相互作用を発現し得る性質を有するものであり、該電離放射線硬化性樹脂組成物(未硬化物)との関連で適宜選定されるものである。具体的には、バインダー樹脂として非架橋性樹脂を有するインキであることが好ましく、例えば熱可塑性(非架橋型)ウレタン樹脂などが好適である。また、必要に応じて、低光沢領域の発現の程度、低艶層とその周囲との艶差のコントラストを調整するため、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などを混合することができる。
艶消防止層6を形成する艶消防止インキの塗布量については、1〜30g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、低艶インキ層と電離放射線硬化性樹脂組成物との相互作用を遮蔽することが可能であり、化粧材表面に十分な艶差を与えることができる。一方30g/m2以下であると、艶消防止インキの印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、艶消防止インキの塗布量はさらに2〜10g/m2の範囲であることが好ましい。
但し、図1に示される化粧材1のように、艶消防止層6を低艶インキ層5より厚くする場合には、艶消防止インキの塗布量については、1〜30g/m2、さらには2〜10g/m2範囲とするとともに、低艶インキの塗布量は1〜20g/m2、さらには2〜5g/m2の範囲であることが好ましい。また、この場合の塗布膜の厚さについては、艶消防止インキが1〜30μm,さらには2〜10μm、低艶インキが1〜20μm,さらには2〜5μmであることが好ましい。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述のように低艶インキ層5を構成する低艶インキが表面保護層7を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物に対して、溶出、分散、混合等の相互作用を発現し得る性質を有することが重要であり、この観点から適当なインキと電離放射線硬化性樹脂組成物が選定されるが、電離放射線硬化性樹脂組成物としては、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
図1に示される表面保護層7においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、有機系紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μm程度になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy、好ましくは10〜50kGyの範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、通常波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することができる。
浸透防止層9を形成する浸透防止インキの塗布量については、1〜30g/m2の範囲であることが好ましい。1g/m2以上であると、化粧材の層間強度を高め物性を高めることができる。一方、30g/m2以下であると、浸透防止インキの印刷に際して機械的制約がなく、また経済的にも有利である。以上の観点から、浸透防止インキの塗布量はさらに1〜25g/m2の範囲であることが好ましい。
本発明における艶差発生の機構は、艶消防止層6が、艶消し処置を行う部分を切抜いた形状を有して、前記低艶インキ層5の上に積層されており、さらに表面保護層7を形成するために電離放射線硬化性樹脂の未硬化物を塗工した際に、艶消防止層6の切抜き部分6a 内又はその近傍で、低艶インキ層5の樹脂成分が一部表面保護層中に溶出、分散、混合、又は浸透などすることによるものと推測される。この際、低艶インキ層5のインキと電離放射線硬化性樹脂の未硬化物におけるそれぞれの樹脂成分は、短時間には完全相溶状態にならずに懸濁状態となって、低艶インキ層5の直上部及びその近傍、すなわち、艶消防止層6の切抜いた部分内に存在し、該懸濁状態となった部分が光を散乱して低光沢領域をなすものと考えられる。この懸濁状態を有したまま、表面保護層を架橋硬化せしめることにより、かかる状態が固定されると、表面保護層中に低光沢領域を有する低艶層8が形成され、その部分が凹部であるかの如く認知されるものと推測される。
また、該低艶層8の形状は、それが主として艶消防止層6の切抜き部分6a 内に形成されることから、この切抜き部分6a の幅を超えて存在することはなく、絵柄に基づいた精密(シャープ)な模様の艶差が形成される。
(評価方法)
各実施例で得られた化粧材について、以下の方法で評価した。
(1)艶消模様の外観の評価
目視により、幅が約80μmの艶消部分(木目模様の導管部分)が明確に凹として認識できるか(○)、できないか(×)を観察した。
(2)艶の評価
グロスメーター(村上色彩技術研究所製「GMX−203」)を用い、入射角75度の条件で、高光沢領域と低光沢領域におけるグロス値を測定した。数字が高いほど高光沢(高艶)であることを示し、数字が低いほど低光沢(低艶)であることを示す。
(3)耐水性
水を入れたコップを化粧材の表面に逆さに固定し、24時間放置後コップをとる。その後、室温で24時間放置し、表面に膨れ等の変化が発生していないかを目視で観察した。判定基準を以下のようにして評価した。
◎ 全く変化がない
△ 変化はあるものの軽微なもので実用上問題がない
× 膨れ等の変化が明瞭である
(4)経時剥離性
化粧材表面にセロファンテープ(ニチバン(株)製のセロファン粘着テープ、「セロテープ(登録商標)」2.5mm幅)を貼着させ、室温(25℃)及び50℃で24時間放置し、その後強制的に剥離した。該化粧材の剥離面を目視で観察し、以下の判定基準で評価した。
◎ 絵柄の剥離がいずれの温度においても全くない
△ 絵柄の剥離はあるものの軽微なもので実用上問題がない
× 絵柄の剥離が著しい
(5)耐汚染性
JIS K−6902に準拠して、汚染物を化粧材表面に塗布し、ふき取った後の汚染物の残存具合を目視にて観察した。判定基準を以下のようにして評価した。
◎ 汚染物の残存は全くない
△ 汚染物の残存はあるものの軽微なもので実用上問題がない
× 汚染物の残存が著しい
(6)マリーング性能
29.4kPa(300g/cm2)の荷重となるように調整された重りに、スチールウール(#0000)を取り付けて、化粧材の表面を50回擦り、該表面の艶の変化を目視にて観察した。判定基準を以下のようにして評価した。
◎ 全く変化がない
△ 変化はあるものの軽微なもので実用上問題がない
× 変化が著しい
基材2として、米秤量30g/m2の建材用紙間強化紙を用い、その片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量5g/m2の(全面ベタ)層をグラビア印刷にて施して着色層3とした。その上に硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含有するインキを用いて、木目模様の模様層4をグラビア印刷にて形成した。
次に、数平均分子量30,000、ガラス転移温度(Tg)−62.8℃のポリエステルウレタン系樹脂をバインダーとした透明インキ100質量部に対して、平均粒子径1.5μmのシリカ粒子を10質量部配合したインキ組成物を用いて、木目模様の導管部分を含み、それよりやや広めにグラビア印刷にて低艶インキ層5を形成した。この際の塗工量は4g/m2であり、次工程の表面保護層形成後の低艶インキ層5の厚さは4μmであった。
続いて、アクリルポリオールとイソシアネートの混合物からなる艶消防止インキを、導管部分を切抜いた形状になるようにグラビア印刷して、艶消防止層6を形成した。この際の塗工量は3g/m2であり、次工程の表面保護層形成後の艶消防止層6の厚さは3μmであった。
これらインキ層の上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部からなる電子線硬化性樹脂組成物を塗工量6g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGyの電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層7とした。表面保護層4の厚さは4μmであった。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧材を得た。
この化粧材について、艶消模様の外観評価、艶の評価、耐水性、経時剥離性、耐汚染性及びマリーング性能について評価した。その結果を第1表に示す。
低艶インキ層5の塗工量を3g/m2とし、艶消防止層6の塗工量を5g/m2とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、化粧材を得た。また、次工程の表面保護層形成後の低艶インキ層5、及び艶消防止層6の厚さは、それぞれ3μmと5μmであった。
模様層4をグラビア印刷にて形成した後で、平均分子量30,000、ガラス転移温度(Tg)+55.0℃のアクリルポリオール系樹脂を用いて、塗工量5g/m2で全面にグラビア印刷して浸透防止層9を形成した以外は、実施例1と同様の操作を行い、化粧材を得た。
2,12. 基材
3,13. 着色層
4,14. 模様層
4a 、14a 艶消する模様
5. 低艶インキ層
15. 架橋硬化模様層(低艶インキ層)
6. 艶消防止層
6a 切抜き部分
7,17. 表面保護層
8,18. 低艶層
9. 浸透防止層
19. 架橋硬化塗膜層
Claims (4)
- 基材上の全面に亘って、艶消し処理を行う部分を有する模様層を積層し、該模様層の艶消し処置を行う部分に低艶インキ層を積層し、その後、該基材上の全面に亘って艶消処置を行う部分を切抜いた形状を有する艶消防止層を積層し、続いて、該切抜き部分を含む艶消防止層の全面に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、さらに電離放射線を照射して表面保護層を形成し、該低艶インキ層の表面近傍であって、該艶消防止層の切抜き部分内に低艶層の少なくとも一部が形成されることを特徴とする化粧材の製造方法。
- 前記艶消防止層を前記低艶インキ層より厚く積層する請求項1に記載の化粧材の製造方法。
- 前記模様層と前記低艶インキ層との間に、さらに浸透防止層を積層する請求項1又は2に記載の化粧材の製造方法。
- 前記模様層の絵柄が木目であり、艶消し処置を行う部分が木目の導管に対応する部分である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧材の製造方法。
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