しかしながら、特許文献1に記載されているようにして、ベースフィルムに凸部を形成すると、ベースフィルムの凸部が形成された部分と凸部に隣接する平坦な部分との間の部分に大きな荷重が加わって急激に折れ曲がることとなり、端子部と導電パターンとの間に亀裂が入ってしまったり、断裂してしまったりする虞がある。
本発明の目的は、接続端子と対向する部分が他の部分よりも突出しているとともに、接続端子と配線との間に亀裂や断裂が生じないようなフレキシブル配線部材の製造方法、及びフレキシブル配線部材、並びに、このようなフレキシブル配線部材を有する圧電アクチュエータユニットの製造方法、及び圧電アクチュエータユニットを提供することである。
第1の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法は、絶縁性のフレキシブル層と、前記フレキシブル層の一表面に形成された配線と、前記フレキシブル層の一表面に形成されており、前記配線に接続された接続端子とを有するフレキシブル配線部材の製造方法であって、前記フレキシブル層の前記一表面と反対側の面における、前記接続端子が形成される部分と対向する部分に、加熱されることによって収縮硬化する熱収縮硬化材を接着する熱収縮硬化材接着工程と、前記フレキシブル層に接着された前記熱収縮硬化材を加熱して収縮硬化させることにより、前記フレキシブル層の前記接続端子が形成された部分に、前記一表面側に隆起した隆起部を形成する隆起部形成工程とを備えていることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の一表面と反対側の面における接続端子と対向する部分に接着した熱収縮硬化材を加熱して熱収縮硬化材を収縮硬化させることにより、フレキシブル層の接続端子が形成された部分に、フレキシブル層の一表面側に隆起した隆起部が形成された場合、フレキシブル層の一表面は、隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっているため、隆起部上に形成された接続端子、あるいは接続端子と配線との間に亀裂や断裂が生じにくい。
第2の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法は、第1の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法法であって、前記熱収縮硬化材接着工程の前に、前記フレキシブル層の前記一表面と反対側の面における前記熱収縮硬化材が接着されることとなる部分の一部に第1凹部を形成する第1凹部形成工程をさらに備え、前記熱収縮硬化材接着工程において、前記第1凹部と前記熱収縮硬化材との間に空間ができるように、前記熱収縮硬化材を接着することを特徴とするものである。
これによると、熱収縮硬化材を加熱したときに、フレキシブル層が、熱収縮硬化材と第1凹部との間に形成された空間を埋めるように変形するため、フレキシブル層が一表面側に隆起しやすくなり、隆起部の高さを高くすることができる。
第3の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法は、第1又は第2の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法であって、前記隆起部形成工程の前に、前記フレキシブル層の前記一表面に、前記接続端子が形成される部分を挟むように、1対の第2凹部を形成する第2凹部形成工程をさらに備えていることを特徴とするものである。
これによると、熱収縮硬化材を加熱したときに、フレキシブル層が、第2凹部を埋めるように変形するため、フレキシブル層が一表面側に隆起しやすくなり、隆起部の高さをさらに高くすることができる。
第4の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法は、第1〜第3のいずれかの発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法であって、前記熱収縮硬化材接着工程の前に、前記フレキシブル層の前記一表面と反対側の面における、前記熱収縮硬化材がそれぞれ接着される部分の全域に、前記熱収縮硬化材の厚みとほぼ同じ深さを有する第3凹部を形成する第3凹部形成工程をさらに備えており、前記熱収縮硬化材接着工程において、前記第3凹部の底面に前記複数の熱収縮硬化材を接着することを特徴とするものである。
これによると、熱収縮硬化材がその厚みと同じ深さを有する第3凹部の底面に配置されているため、フレキシブル層の一表面と反対側の面が平坦となり、フレキシブル配線が、汎用性のある使い勝手のよいものとなる。
第5の発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法は、第1〜第4のいずれかの発明に係るフレキシブル配線部材の製造方法であって、前記接続端子は、前記フレキシブル層の前記一表面と直交する方向から見て、前記熱収縮硬化材よりも外側まで延びていることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の一表面における隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する部分とにまたがった滑らかな曲面上に接続端子が形成されるので、接続端子に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。また、比較的大きな接続端子と接続端子よりも細い配線とがフレキシブル層の平坦な部分において接続されることとなるので、接続端子と配線の間に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。
第6の発明に係るフレキシブル配線部材は、フレキシブル層と、前記フレキシブル層の一表面に形成された配線と、前記フレキシブル層の前記一表面に形成されており、前記配線と接続された接続端子とを備えており、前記フレキシブル層の前記接続端子が形成された部分に、前記一表面側に隆起した隆起部が形成されており、前記フレキシブル層の前記一表面は、前記隆起部が形成された部分と前記隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっており、前記フレキシブル層の前記一表面と反対側の面における前記接続端子と対向する部分に接着された、加熱されることによって収縮硬化した熱収縮硬化材をさらに備えており、前記隆起部は、前記熱収縮硬化材が収縮硬化したことにより、前記フレキシブル層が隆起して形成されたものであることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の一表面は、隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっているため、隆起部上に形成された接続端子、あるいは接続端子と配線との間に亀裂や断裂が生じにくい。
また、これによると、隆起部を容易に形成することができる。
第7の発明に係るフレキシブル配線部材は、第6の発明に係るフレキシブル配線部材であって、前記接続端子は、前記フレキシブル層の前記一表面と直交する方向から見て、前記熱収縮硬化材よりも外側まで延びていることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の一表面における隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する部分とにまたがった滑らかな曲面上に接続端子が形成されるので、接続端子に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。また、比較的大きな接続端子と接続端子よりも細い配線とがフレキシブル層の平坦な部分において接続されることとなるので、接続端子と配線の間に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。
第8の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、活性部を有する圧電層と、前記圧電層に設けられた、前記活性部に電界を発生させるための電極とを有する圧電アクチュエータと、前記圧電層と対向するように配置された、絶縁性を有するフレキシブル層と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記電極に接続される配線と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記配線に接続された第1接続端子とを有するフレキシブル配線部材とを備えており、前記圧電層の前記フレキシブル層との対向面には、前記複数の電極に接続された第2接続端子が形成されており、前記第1接続端子と前記第2接続端子とが接続されることによって、前記配線と前記電極とが接続された圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記フレキシブル層の前記圧電層と反対側の面における、前記第1接続端子が形成される部分と対向する部分に、加熱されることによって収縮硬化する熱収縮硬化材を接着する熱収縮硬化材接着工程と、前記熱収縮硬化材を加熱して収縮硬化させることにより、前記フレキシブル層における前記第1接続端子が形成されている部分に、前記圧電層との対向面側に隆起した隆起部を形成する隆起部形成工程と、前記第1接続端子と前記第2接続端子とを電気的に接続するとともに前記フレキシブル配線部材と前記圧電層とを接合する接合工程とを備えていることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の圧電層と反対側の面における接続端子と対向する部分に接着した熱収縮硬化材を加熱して熱収縮硬化材を収縮硬化させることにより、フレキシブル層の接続端子が形成された部分に、フレキシブル層の圧電層との対向面側に隆起した隆起部が形成された場合、フレキシブル層の圧電層との対向面は、隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっているため、隆起部上に形成された第2接続端子、あるいは第2接続端子と配線との間に亀裂や断裂が生じにくい。
また、フレキシブル層に隆起部が形成されているので、圧電層とフレキシブル層との間に隙間ができ、フレキシブル層が圧電層に接触してしまうのを防止することができる。
第9の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第8の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記隆起部が形成される前の前記フレキシブル配線部材を、前記圧電層と反対側から前記圧電層に向かって押圧しながら加熱することにより、前記隆起部形成工程と前記接合工程とを同時に行うことを特徴とするものである。
これによると、隆起部の形成と、フレキシブル層と圧電層との形成とを同時に行うことができるので製造工程が簡略化される。
第10の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第9の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記隆起部形成工程及び前記接合工程の前に、前記第1接続端子又は前記第2接続端子にバンプを形成するバンプ形成工程をさらに備えていることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層を圧電層に接合する過程で、両者が接合される部分以外の部分において接触してしまうのを確実に防止することができる。
第11の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第10の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記接合工程の前に、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面における少なくとも前記接続端子が形成された部分に熱硬化性接着剤層を形成する接着剤層形成工程をさらに備えており、前記接合工程において、前記フレキシブル層を前記圧電層と反対側から前記圧電層に向かって押圧しながら加熱することにより、前記バンプに前記接着剤層を貫通させて、前記バンプと前記第1接続端子とを接続するととともに、前記バンプにより押し出された接着剤層により前記圧電層と前記フレキシブル層とを接合することを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層が圧電層に接触してしまうのが防止されているので、フレキシブル層に形成された接着剤層が圧電層に付着し、加熱後、接着剤層によりフレキシブル層が圧電層に接合されて変形が元に戻らなくなったり、変形が元に戻った場合でも圧電層に接着剤層が残留したりしてしまうのを防止することができる。
第12の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第8〜第11のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記熱収縮硬化材接着工程の前に、前記フレキシブル層の前記圧電層と反対側の面における前記熱収縮硬化材が接着されることとなる部分の一部に第1凹部を形成する第1凹部形成工程をさらに備え、
前記熱収縮硬化材接着工程において、前記第1凹部と前記熱収縮硬化材との間に空間ができるように、前記熱収縮硬化材を接着することを特徴とするものである。
これによると、熱収縮硬化材を加熱したときに、フレキシブル層が、熱収縮硬化材と第1凹部との間に形成された空間を埋めるように変形するため、フレキシブル層が圧電層の対向面側に隆起しやすくなり、隆起部の高さを高くすることができる。
第13の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第8〜第12のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記隆起部形成工程の前に、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に、前記接続端子が形成される部分を挟むように、1対の第2凹部を形成する第2凹部形成工程をさらに備えていることを特徴とするものである。
これによると、熱収縮硬化材を加熱したときに、フレキシブル層が、第2凹部を埋めるように変形するため、フレキシブル層が圧電層との対向面側に隆起しやすくなり、隆起部の高さをさらに高くすることができる。
第14の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第8〜第13のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記熱収縮硬化材接着工程の前に、前記フレキシブル層の前記圧電層と反対側の面における、前記熱収縮硬化材がそれぞれ接着される部分の全域に、前記熱収縮硬化材の厚みとほぼ同じ深さを有する第3凹部を形成する第3凹部形成工程をさらに備えており、前記熱収縮硬化材接着工程において、前記第3凹部の底面に前記複数の熱収縮硬化材を接着することを特徴とするものである。
これによると、熱収縮硬化材がその厚みと同じ深さを有する第3凹部の底面に配置されているため、フレキシブル層の一表面と反対側の面が平坦となり、フレキシブル配線が、汎用性のある使い勝手のよいものとなる。
第15の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第8〜第14のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記接続端子は、前記圧電層と前記フレキシブル層との積層方向と直交する方向から見て、前記熱収縮硬化材よりも外側まで延びていることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の一表面における隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する部分とにまたがった滑らかな曲面上に接続端子が形成されるので、接続端子に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。また、比較的大きな接続端子と接続端子よりも細い配線とがフレキシブル層の平坦な部分において接続されることとなるので、接続端子と配線の間に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。
第16の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、第8〜第15のいずれかの発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記圧電アクチュエータが、前記圧電層の前記フレキシブル層の反対側の面に接合された振動板をさらに備えたものであることを特徴とするものである。
これによると、活性部に電界を発生させることにより圧電層をその面方向に変形させることにより、圧電層及び振動板をその厚み方向に変形させる(いわゆるユニモルフ変形する)圧電アクチュエータにおいては、フレキシブル層が圧電層に接触してしまうとその駆動特性が特に大きく変動してしまうが、フレキシブル層が圧電層に接触してしまうのが防止されているため、圧電アクチュエータの駆動特性が変動してしまうのを防止することができる。
第17の発明に係る圧電アクチュエータユニットは、活性部を有する圧電層と、前記圧電層に設けられた、前記活性部に電界を発生させるための電極とを有する圧電アクチュエータと、前記圧電層と対向するように配置された、絶縁性を有するフレキシブル層と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記電極に接続される配線と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記配線に接続された第1接続端子とを有するフレキシブル配線部材とを備えており、前記圧電層の前記フレキシブル層との対向面には、前記電極に接続されているとともに前記第1接続端子に接続された第2接続端子が形成されており、前記フレキシブル層における前記第1接続端子が形成されている部分には、前記圧電層との対向面側に隆起した隆起部が形成されており、前記フレキシブル層の前記一表面は、前記隆起部が形成された部分と前記隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっており、前記フレキシブル層の前記圧電層と反対側の面における前記接続端子と対向する部分に接着された、加熱されることによって収縮硬化した複数の熱収縮硬化材をさらに備えており、前記隆起部は、前記熱収縮硬化材が収縮硬化したことにより、前記フレキシブル層が隆起して形成されたものであることを特徴とするものである。
これによると、フレキシブル層の圧電層との対向面は、隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっているため、隆起部上に形成された第2接続端子、あるいは、第2接続端子と配線との間に亀裂や断裂が生じにくい。
また、これによると、隆起部を容易に形成することができる。
本発明によれば、フレキシブル層の一表面と反対側の面における接続端子と対向する部分に接着した熱収縮硬化材を加熱して熱収縮硬化材を収縮硬化させることにより、フレキシブル層の接続端子が形成された部分に、フレキシブル層の一表面側に隆起した隆起部が形成された場合、フレキシブル層の一表面は、隆起部が形成された部分と隆起部に隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっているため、隆起部上に形成された接続端子、あるいは接続端子と配線との間に亀裂や断裂が生じにくい。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る圧電アクチュエータを有するプリンタ1の概略構成図である。このプリンタ1は、単独のプリンタ装置に適用しても、あるいは、ファクシミリ機能やコピー機能等の複数の機能を備えた多機能装置のプリンタ装置に適用してもよい。図1に示すように、プリンタ1は、装置本体内にキャリッジ2、インクジェットヘッド3(液体移送装置)、用紙搬送ローラ4などを備えている。なお、以下の説明ではノズルから液体を吐出する方向を下方向とし、その反対方向を上方向としている。また、必要に応じて図中の方向を定める場合は、適宜説明を付与する。
キャリッジ2は、その上面が開口された略箱状の樹脂製のケースで、図1の左右方向(走査方向)に延びるガイド軸5に移動可能に載置され、図示しない駆動ユニットによって走査方向(左右方向)に往復移動するように構成されている。装置本体内には、複数種類のインク(例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4種類)を供給するための交換式のインクカートリッジ(図示せず)が静置されていて、各インクカートリッジはインクチューブ(図示せず)を介してキャリッジ2内に載置されたインクジェットヘッド3に接続されている。また、キャリッジ2の下方に対向して、用紙搬送ローラ4とプラテン6が配置されていて、その両者の間に記録用紙Pが図1の手前方向(紙送り方向)に搬送される。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に配置されており、複数のノズルをキャリッジ2の下面に露出開口させて搭載している。
そして、プリンタ1においては、用紙搬送ローラ4により紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクを吐出することにより、記録用紙Pに印刷を行う。
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2は図1のインクジェットヘッド3の構成を示す斜視図である。図3はインクジェットヘッド3の平面図である。図4(a)は図3の部分拡大図である。図4(b)〜(d)は、図4(a)における後述する振動板40及び各圧電層41、42の表面をそれぞれ示す図である。図5は図4(a)のV−V線断面図である。図6は図4(a)のVI−VI線断面図である。
なお、図面を分かりやすくするため、図2においては、後述するランド52と配線53とを透過した状態で図示している。また、図3、図4においては、後述する流路ユニット31のインク流路の一部の図示を省略し、図3においては、圧電アクチュエータ32の下部電極43及び中間電極44の図示を省略している。また、図4(a)においては、ともに点線で図示すべき下部電極43及び中間電極44を、それぞれ二点鎖線及び一点鎖線で図示している。さらに、図4(b)〜(d)においては、圧力室10と後述する下部電極43、中間電極44及び上部電極45との平面視での位置関係を示していて、各電極43、44、45にハッチングを付している。
図2〜図6に示すように、インクジェットヘッド3は、複数のノズル15や複数の圧力室10等の複数のインク流路が形成された流路ユニット31と流路ユニット31の上面に配置され、圧力室10内に充満されたインクにノズル15からの吐出のための圧力を付与する圧電アクチュエータユニット33とを備えている。圧電アクチュエータユニット33は、圧電アクチュエータ32とその上面で電気かつ機械的に接続されたCOF50(Chip On Film)(配線部材)とからなる。流路ユニット31は、インク流路となる複数の貫通孔が形成された複数のプレート21〜24が互いに積層されることによって、インク供給口9からインクが供給されるマニホールド流路11、及び、マニホールド流路11の出口から流路12を経て圧力室10に至り、さらに、圧力室10から流路13、14を経てノズル15に至る複数の個別インク流路を有するインク流路(液体移送流路)が形成されている。そして、後述するように、圧電アクチュエータ32により、圧力室10内のインクに圧力が付与されると、圧力室10に連通するノズル15からインクが吐出される。ノズルプレート24を除く3枚のプレート21〜23はステンレス板やニッケル合金鋼板などの金属材料により構成されており、ノズルプレート24はポリイミド等の合成樹脂材料によって構成されている。
流路ユニット31の最上層のプレート21には、複数のノズル15に対応して複数の圧力室10が板厚を貫通して形成され、圧力室10は、走査方向(図3の左右方向)を長手方向とする略楕円形の平面形状(図4も参照)を有し、その一端を流路12と、他端がノズル15と連通するように形成されており、複数の圧力室10は紙送り方向(図3の上下方向)に沿って配列されて1つの圧力室列8を構成しており、このような圧力室列8が、走査方向に2列に配列されることによって1つの圧力室群7を構成している。さらに、このような圧力室群7が走査方向に沿って5つ配列されている。ここで、1つの圧力室群7に含まれる2列の圧力室列8を構成する圧力室10同士は、紙送り方向に関して互いにずれて配置されている。また、流路ユニット31の最下層のノズルプレート24には、複数の圧力室10の長手方向の一端と連通する複数のノズル15が下方に開口して貫通形成されていて、図示しないが、複数の圧力室10と同様に送り方向に配列しているとともに、ノズル列群をなし、走査方向に5つのノズル列群をなしている。
そして、5つの圧力室群7のうち、図3の右側の2つを構成する圧力室10に対応するノズル15からは使用頻度の高いブラックのインクが吐出され、図3の左側の3つの圧力室群7の圧力室10に対応するノズル15からは、図3の右側に配列されているものから順に、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。また、プレート22には、平面視で圧力室10の長手方向の両端部に重なる位置にそれぞれ流路12、13となる貫通孔が形成され、プレート23には、マニホールド流路11となる貫通孔が圧力室10の列に対応して紙送り方向に延び、平面視で圧力室10の長手方向と重なるとともにインク供給口9と連通する位置まで延設されている
次に、圧電アクチュエータ32は、振動板40、圧電層41、42、下部電極43、中間電極44、上部電極45、導電性バンプ46及びCOF50を備えている。振動板40は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、複数の圧力室10を覆うように、流路ユニット31の上面に配置されている。また、振動板40の厚みは20μm程度となっている。なお、この振動板40は必ずしも圧電材料からなる必要はない。圧電層41、42は、振動板40と同様の圧電材料からなり、互いに積層されて振動板40の上面に配置されている。また圧電層41、42の厚みは、それぞれ20μm程度となっている。
下部電極43は、振動板40と圧電層41との間に配置されており、図4(b)のように各圧力室群7に対応して、各圧力室群7を構成する2列の圧力室列8に沿って紙送り方向に延びており、これら2列の圧力室列8を構成する複数の圧力室10と平面視で重なり合うように対向している。また、図示しないが、各圧力室群7に対応して上記紙送り方向に延びた部分同士は互いに接続され、図示しない接続端子が設けられている。接続端子は、COF50上の図示しない配線のランドに接続され、配線を介して下部電極43は、常にグランド電位に保持されている。
中間電極44は、圧電層41と圧電層42との間に配置されており、図4(c)のように各圧力室群7毎に、それぞれ、複数の対向部44a及び接続部44b、44cを有している。複数の対向部44aは、紙送り方向に関する長さが圧力室10よりも短い略矩形の平面形状を有しており、複数の圧力室10の紙送り方向に関する略中央部と対向するように配置されている。
接続部44bは、紙送り方向に延びて、各圧力室群7を構成する2列の圧力室列8のうち、図4の右側に配置された圧力室列8を構成する複数の圧力室10に対応する複数の対向部44aの図4右側の端同士を接続している。接続部44cは、紙送り方向に延びて、各圧力室群7を構成する2列の圧力室列8のうち、図4の左側に配置された圧力室列8を構成する複数の圧力室10に対応する複数の対向部44aの図4左側の端同士を接続している。また、中間電極44は、図示しない接続端子と、COF50上の中間電極用の配線のランドに接続されており、配線を介して常に所定の正の電位(例えば、20V程度)に保持されている。
複数の上部電極45は、図3、図4(d)のように圧電層42の上面(COF50との対向面)に、複数の圧力室10に対応して、複数の圧力室10のほぼ全域と対向するように配置されており、紙送り方向に配列しているとともに、上部電極列群をなし、1つの上部電極列群に含まれる2列の上部電極45の列を構成する上部電極45同士は、紙送り方向に関して互いにずれて配置されている。また、上部電極45は、紙送り方向に関する長さが中間電極44の対向部44aよりも長い、略矩形の平面形状を有している。上部電極45は、走査方向に関するノズル15と反対側の端における一部分が、走査方向に圧力室10と対向しない部分まで延びており、この部分がCOF50の配線53のランド52に接続される接続端子45a(第1接続端子)となっている。接続端子45aは、Ag-Pd系の材料からなる。
さらに、接続端子45aの表面には、金属などの導電性材料(本実施形態では樹脂を含み、Agを含む導電性材料、例えば、ニホンハンダ社製のNH-070A(T)等)からなり、接続端子45aの表面から上方に突出した導電性バンプ46が形成されている。また、上部電極45は、後述するように、導電性バンプ46を介してCOF50上の配線53と接続され、COF50実装されたドライバIC54に接続されており、グランド電位と上記所定の電位(例えば、20V)との間でその電位が切り替えられる。なお、前述した中間電極44と下部電極43の図示しない接続端子も上部電極45と同様に導電性バンプを介して配線と電気的に接続されている。
また、前述した圧電層42は、予め上部電極45と中間電極44とに挟まれた部分が上向きに分極されており、圧電層41、42は、上部電極45と下部電極43とに挟まれた部分が、上部電極45から下部電極43に向かって下向きに分極されている。なお、圧電層41のうち、中間電極44と下部電極43とに挟まれた部分は、中間電極44から下部電極43に向かって下向きに分極されている。
次に、圧電アクチュエータ32に電位を付与するCOF50(フレキシブル配線部材)は、フレキシブル層51、複数のランド52(第2接続端子)、複数の配線53、53z及びドライバIC54を有している。COF50は、圧電アクチュエータ32の上方に配置されて接続されており、走査方向に引き出されている。
フレキシブル層51はポリイミドなどの樹脂材からなり絶縁性および可撓性を有した帯状体で、圧電材料よりも線膨張係数が大きい。また、フレキシブル層51は、その下面が圧電層42と対向して圧電アクチュエータ32上に配置されている。また、フレキシブル層51は、平面視で、導電性バンプ46と対向する部分が圧電層42側に隆起した隆起部51aとなっている。
ここで、フレキシブル層51の上面における導電性バンプ46と対向する部分には、凹部51b(第1凹部)が形成されているとともに、凹部51bを覆うように熱収縮硬化材56が接着されており、隆起部51aは、後述する圧電アクチュエータユニット33の製造過程で熱収縮硬化材56が加熱されて収縮硬化するのに伴って、フレキシブル層51の導電性バンプ46と対向する部分が凹部51bの隙間を埋めるように変形して圧電層側に隆起することによって形成されたものである。熱収縮硬化材は、例えば、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などである。また、このように隆起部51aが形成されていることにより、フレキシブル層51の下面においては隆起部51aと隆起部51aに隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっている。
複数のランド52は、銅などの導電性材料からなり、フレキシブル層51の下面における隆起部51aから隆起部51aに隣接する平坦な部分まで延びている。すなわち、隆起部51aと隆起部51aに隣接する平坦な部分とにまたがった滑らかな曲面上に連続的に形成されている。配線53は、銅などの導電性材料からなり、フレキシブル層51の下面に形成されており、フレキシブル層51の下面の平坦な部分において複数のランド52と接続されている。
ここで、本実施の形態とは異なり、フレキシブル層51が隆起部51aと隆起部51aに隣接する平坦な部分との間の部分において急激に折れ曲がっていると、この折れ曲がった部分においてランド52に亀裂や断裂が生じ、その結果、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が生じてしまう虞がある。
しかしながら、本実施の形態では、フレキシブル層51の下面においては隆起部51aと隆起部51aに隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっているため、ランド52に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができ、その結果、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。
さらに、本実施の形態では、隆起部51aに隣接する平坦な部分において比較的大きなランド52とランド52よりも細い配線53とが接続されるため、隆起部51a上でランド52と配線53とが接続されている場合と比較して、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が生じてしまうのを確実に防止することができる。
また、フレキシブル層51と圧電層42とは、導電性バンプ46及びランド52と対向する部分において、熱硬化性の接着剤層55により接合されている。また、接着剤層55は、フレキシブル層51の下面における導電性バンプ46及びランド52と対向する部分以外の部分にも延びて配線53が覆っている。なお、接着剤層55の導電性バンプ46及びランド52と対向する部分を除いた部分は、フレキシブル層51と圧電層42とを接合していない。
ドライバIC54は、圧電アクチュエータ32に印加する駆動信号を供給するための駆動回路を内蔵していて、COF50の引き出された部分の上面に配置されている。ドライバIC54には、電極43〜45に駆動信号を出力するための上記出力用の配線53が接続されているとともに、本体側から駆動信号が入力される入力用の配線53zが接続されている。
ここで、圧電アクチュエータ32の動作について説明する。まず、圧電アクチュエータ32がインクを吐出させる動作を行う前の待機状態においては、前述したように、下部電極43及び中間電極44が、それぞれ、常にグランド電位及び上記所定の電位(例えば、20V)に保持されているとともに、上部電極45の電位が予めグランド電位に保持されている。この状態では、上部電極45が中間電極44よりも低電位になっているとともに、下部電極43と同電位となっている。
これにより、上部電極45と中間電極44との間の電位差が生じ、圧電層42のこれらの電極に挟まれた部分にその分極方向と同じ上向きの電界が発生し、圧電層42のこの部分がこの電界と直交する水平方向に収縮する。これによりいわゆるユニモルフ変形が生じ、圧電層41、42及び振動板40の圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10に向かって凸となるように変形する。この状態では、圧電層41、42及び振動板40が変形していない場合と比較して、圧力室10の容積が小さくなっている。
そして、インクを吐出させるべく圧電アクチュエータ32を駆動させる際には、上部電極45の電位を、一旦、上記所定の電位に切り替えた後、グランド電位に戻す。上部電極45の電位を上記所定の電位に切り替えると、上部電極45が中間電極44と同電位となるとともに、下部電極43よりも高電位となる。これにより、圧電層42の上記収縮が元に戻る。そしてこれと同時に、上部電極45と下部電極43との間に電位差が生じ、圧電層41、42のこれらの電極に挟まれた部分にはその分極方向と同じ下向きの電界が発生し、圧電層41、42のこの部分が水平方向に収縮する。これにより、圧電層41、42及び振動板40が全体として、圧力室10と反対側に凸となるように変形し、圧力室10の容積が増加する。
この後、上部電極45の電位をグランド電位に戻すと、前述したのと同様、圧電層41、42及び振動板40の圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10に向かって凸となるように変形し、圧力室10の容積が小さくなる。これにより、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、圧力室10に連通するノズル15からインクが吐出される。
また、上述したようにして圧電アクチュエータ32を駆動させる場合、上部電極45の電位をグランド電位から所定の電位に切り替えたときには、圧電層42の上部電極45と中間電極44とに挟まれた部分が収縮した状態から収縮前の状態に伸長すると同時に、圧電層41、42の上部電極45と下部電極43とに挟まれた部分が収縮するため、圧電層42の上記の伸長が、圧電層41、42の上記収縮に一部吸収される。
一方、上部電極45の電位を所定の電位からグランド電位に戻したときには、圧電層42の上部電極45と中間電極44とに挟まれた部分が収縮するとともに、圧電層41、42の上部電極45と下部電極43とに挟まれた部分が収縮前の状態まで伸長するため、圧電層42の上記収縮が圧電層41、42の上記伸長によって一部吸収される。
以上のことから、圧電層41、42の圧力室10と対向する部分の変形が、他の圧力室10と対向する部分に伝達して当該他の圧力室10に連通するノズル15からのインクの吐出特性が変動してしまう、いわゆるクロストークが抑制される。
なお、上述した待機状態及び圧電アクチュエータ32が駆動されている間においては、圧電層41の中間電極44と下部電極43との間の部分には常に電位差が生じており、圧電層41のこの部分には、その分極方向と同じ方向の電界が発生している。これにより、圧電層41のこの部分は常に収縮した状態となっている。なお、アクチュエータの構成や駆動方式は、圧力室に充満されたインクをノズルから吐出させるための圧力が付与できれば、上述の実施形態と同様に限られることはない。
次に、インクジェットヘッド3(圧電アクチュエータユニット33)の製造方法について説明する。図7は、インクジェットヘッド3の製造工程を示す工程図である。
インクジェットヘッド3を製造するには、まず、図7(a)に示すように、振動板40、圧電層41、42、電極43〜45及び流路ユニット31(図示省略)の積層体における上部電極45の接続端子45aの表面に印刷などにより導電性バンプ46を形成する(バンプ形成工程)。導電性バンプは、樹脂を含有したAgなどの導電性ペーストにより形成されている。
また、図7(a)に示す工程とは別の工程で、図7(b)に示すように、フレキシブル層51の下面には、印刷などで形成されたランド52が形成されている。そして、フレキシブル層51の上面で、ランド52と対向する部分(熱収縮硬化材56が接着されることとなる部分の一部)に、レーザ加工、エッチング、サンドブラスタ加工などにより凹部51bを形成する(第1凹部形成工程)。凹部51bは、断面視で上側開口され下方に縮径されたV字状で、平面視外形形状が円形状をしている。続いて、図7(c)に示すように、フレキシブル層51の上面におけるランド52と対向する部分に、凹部51bを覆うとともに、凹部51bとの間に空間ができるように熱収縮硬化材56を接着する(熱収縮硬化材接着工程)。熱収縮硬化材56は、平面視で略円形状である。さらに、図7(d)に示すように、フレキシブル層51の下面にランドおよび配線を覆ってソルダーレジストなどの熱硬化性材料からなる接着剤層55を形成する(接着剤層形成工程)。このとき、接着剤層55は、温度等の諸条件を適切に調整して、熱硬化性材料からなる接着剤層55をフレキシブル層51から垂れ落ちない程度の未硬化(半硬化)の状態に維持しておく。
次に、図7(e)に示すように、COF50を、平面視でランド52と導電性バンプ46とが対向するように位置合わせした状態で、ヒータHにより圧電層42と反対側から圧電層42に向かって押圧しながら加熱する。ここで、ヒータHは、平滑な加熱面を有したバーヒータHである。
これにより、熱収縮硬化材56がヒータHにより温度Ta℃に加熱されることで収縮して硬化する。ここで、温度Taは、熱収縮材56を収縮硬化させることができ、且つ、接着剤層55の硬化温度よりも低い温度である。平面視略円形状の熱収縮硬化材56は、その中心方向(断面視で中心に互いに向き合う方向)に向かって収縮しようとする。このとき、熱収縮硬化材56が接着されたフレキシブル層51のランド52と対向する部分は、可撓性であり、熱収縮硬化剤56との密着性が良いため、熱収縮硬化剤56の収縮に伴って共に収縮方向へ引き寄せられる。そして、ランド部には凹部が形成されているため、熱収縮硬化材は前記中心方向に収縮するとともに、対向するフレキシブル層が引き寄せられ、その凹部の開口空間を埋めるように収縮しながら、凹部の先端部分(開口側とは反対側の部分)から、下面側へ逃げるようにして撓み変形し始め、圧電層42側に隆起して、フレキシブル層51の下面の隆起部51aに隣接する平坦な部分とつながった滑らかな面を有した隆起部51aを形成する。熱収縮硬化材56は、収縮した状態で硬化されるため、隆起部51aは隆起された状態で形状維持される。本提案では、特に断面視V字状に凹部が形成されているため、その先端部分から下面側にフレキシブル層が変形しやすくなっている。このときランド52は、フレキシブル層51に密着して形成されているため、フレキシブル層51の隆起部51aに沿って、ランド52の平坦な部分とつながったなだらかな面を有した隆起部51aをなしている。この状態で、導電性バンプ46が未硬化の接着剤層55を貫通して、隆起したランド52に接触して電気的に接続されるとともに、導電性バンプ46が貫通したことにより押し出された接着剤層55が導電性バンプ46を取り囲む部分を流れて圧電層42の接続端子45a上面に達する。そして、この状態でヒータHが温度Tb℃に加熱されることで接着剤層55が硬化することにより、ランド52と導電性バンプ46とが電気的機械的に接続されるとともに、COF50と圧電層42とが接合される。ここで、温度Tb℃は、上記温度Ta℃よりも高い、接着剤層55を硬化させることが可能な温度である。なお、導電性バンプが樹脂を含み、Agを含んだ導電性材料で形成されているため、導電性バンプは先端部が押しつぶされる程度の弾性を有し、さらにフレキシブル層上に設けられた隆起をなすランド部も弾性を有するため、両者はその互いの弾性力によりバンプおよび隆起部の先端部は押しつぶされる状態となっているため、接触面積を稼ぐことができ、電気的接続の信頼性を良くすることができる。
すなわち、本実施の形態では、ヒータHにより、COF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱することにより、本発明に係る隆起部形成工程と接合工程とが同時に行われる。
ここで、前述したように、フレキシブル層51は圧電層42よりも線膨張係数が大きいため、バーヒータであるヒータHにより圧電層42側へ押圧加熱を行ったときには、フレキシブル層51が圧電層42よりも大きく膨張することとなり、その結果、フレキシブル層51が圧電層42側に撓んで圧電層42に接触して、圧電層42を汚したり、傷つけたりしてしまう虞がある。
さらに、本実施の形態では、フレキシブル層51の下面の全域に未硬化状態の接着剤層55が形成されているため、フレキシブル層51が圧電層42に接触してしまうと、その状態で接着剤層55が硬化し、ヒータHを離して加熱をやめたときにフレキシブル層51の変形が元に戻らない虞がある。また、フレキシブル層51の変形が元に戻ったとしても、圧電層42の表面には接着剤層55が残留してしまう虞がある。そして、これらの場合には、上述したように圧電アクチュエータ32を駆動させたときの、圧電層41、42及び振動板40の変形が阻害されてしまい、ノズル15からのインクの吐出特性が変動してしまう虞がある。
特に、本実施の形態のように、いわゆるユニモルフ変形を用いた圧電アクチュエータ32においては、圧電層41、42及び振動板40の変形が阻害されたときの、ノズル15からのインクの吐出特性の変動は大きなものとなる。
しかしながら、本実施の形態では、フレキシブル層51の導電性バンプ46と対向する部分に隆起部51aが形成されるため、隆起部51aが形成された分だけ圧電層42とフレキシブル層51との間隔が大きくなる。したがって、フレキシブル層51が圧電層42側に撓んだとしても、フレキシブル層51が圧電層42に接触してしまうのを防止することができる。
さらに、フレキシブル層51には凹部51bが形成されており、フレキシブル層51は凹部51bの隙間を埋めるように変形するため、フレキシブル層51が隆起しやすくなり、隆起部51aの高さが高くなり、圧電層42とフレキシブル層51との間隔は大きなものとなる。
また、本実施の形態では、接続端子45aの表面に導電性バンプ46が形成されているため、COF50を圧電層42に向かって押圧した際、フレキシブル層51に隆起部51aが形成される前に(フレキシブル層51を圧電層42に接合する過程で)フレキシブル層51の隆起部51aとなる部分以外の部分が圧電層42に接触してしまうのが防止される。なお、本実施の形態の場合、フレキシブル層51の隆起部51aの高さは、隆起部51aの隆起量により制御されるため、フレキシブル層51の種類、熱収縮硬化材の種類、および収縮温度とを適宜条件選択することで決定される。
また、隆起部51aは、熱収縮硬化材56が収縮するのにともなってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に隆起することで形成されるため、隆起部51aは、フレキシブル層51の下面の隆起部51aに隣接する平坦な部分と滑らかにつながることとなる。
したがって、隆起部51aから隆起部51aに隣接する平坦な部分まで延びたランド52に亀裂や断裂が発生してしまうのが防止され、これにより、ランド52と配線53とノ間に亀裂や断裂が発生してしまうのを防止することができる。
さらに、ランド52が隆起部51aから隆起部51aに隣接する平坦な部分まで延びており、フレキシブル層51の下面の平坦な部分において比較的大きなランド52とランド52よりも細い配線53とが接続されているため、隆起部51a上でランド52と配線53とが接続される場合と比較して、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が発生してしまうのをさらに確実に防止することができる。
以上に説明したように、本実施の形態によると、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱すると、熱収縮硬化材56が収縮し、これに伴ってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に隆起して隆起部51aとなり、この状態で、導電性バンプ46が接着剤層55を貫通してランド52に接触するとともに、導電性バンプ46により押し出された接着剤層55が導電性バンプ46を取り囲む部分を流れて圧電層42の上面に達する。そして、この状態で加熱された接着剤層55が硬化することにより、ランド52と導電性バンプ46とが電気的に接続されるとともに、COF50と圧電層42とが接合される。
したがって、隆起部51aが形成された分だけ圧電層42とフレキシブル層51との間隔が大きくなり、フレキシブル層51が圧電層42側に撓んだとしても、フレキシブル層51が圧電層42に接触してしまうのを防止することができる。
さらに、フレキシブル層51には凹部51bが形成されており、フレキシブル層51は凹部51bの隙間を埋めるように変形するため、フレキシブル層51が隆起しやすくなり、隆起部51aの高さが高くなり、圧電層42とフレキシブル層51との間隔は大きなものとなる。
また、本実施の形態では、接続端子45aの表面に導電性バンプ46が形成されているため、COF50を圧電層42に向かって押圧した際、フレキシブル層51に隆起部51aが形成される前にフレキシブル層51の隆起部51aとなる部分以外の部分が圧電層42に接触してしまうのが防止される。
また、隆起部51aは、熱収縮硬化材56が収縮するのにともなってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に隆起することで形成されるため、隆起部51aは、フレキシブル層51の下面の隆起部51aに隣接する平坦な部分と滑らかにつながることとなる。
したがって、隆起部51aから隆起部51aに隣接する平坦な部分まで延びたランド52に亀裂や断裂が発生してしまうのが防止され、これにより、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が発生してしまうのを防止することができる。
さらに、ランド52が隆起部51aから隆起部51aに隣接する平坦な部分まで延びており、フレキシブル層51の下面の平坦な部分において比較的大きなランド52とランド52よりも細い配線53とが接続されているため、隆起部51a上でランド52と配線53とが接続される場合と比較して、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が発生してしまうのをさらに確実に防止することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
一変形例では、図8(b)に示すように、熱収縮硬化材56を接着する前(熱収縮硬化材接着工程の前)に、フレキシブル層51の下面に、平面視でランド52を挟むように1対の凹部51c(第2凹部)を形成する(第2凹部形成工程)(変形例1)。ただし、この場合には、上記実施の形態とは異なり、フレキシブル層51の下面に凹部51cが形成されており、ランド52の図8における左右両側の部分に配線53を形成することができないので、配線53は、ランド52の紙面手前側又は紙面奥側においてランド52と接続させる。凹部51cは、ランド52の周囲を囲った平面視で連続または不連続な環状となっていて、断面視V字状となっている。なお、凹部51cを形成すするのは、凹部51bを形成するの(第1凹部形成工程)と同時であってもよいし、凹部51bを形成する前、あるいは凹部51bを形成した後に形成してもよい。
この場合には、図8(e)に示すように、ヒータHにより、COF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱する(隆起部形成工程、接合工程)と、上述の実施の形態と同様、熱収縮硬化材56が収縮するのに伴ってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に収縮するが、このとき、フレキシブル層51は、凹部51bに加えて凹部51cの隙間を埋めるように変形するため、フレキシブル層51がさらに変形しやすくなり、隆起部51aの高さがさらに高くなり、圧電層42とフレキシブル層51との間隔がさらに大きくなる。
なお、変形例1においては、図8(a)に示す導電性バンプ46を形成する工程、図8(c)に示す熱収縮硬化材56を接着する工程(熱収縮硬化材接着工程)、及び、図(d)に示す、接着剤層55を形成する工程(接着剤層形成工程)については、上述の実施の形態と同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
別の一変形例では、図9(b)に示すように、熱収縮硬化材56を接着する前(熱収縮硬化材接着工程の前)に、フレキシブル層51の上面における熱収縮硬化材56が接着される部分の全域に、熱収縮硬化材56ほぼ同じ形状で同じ高さの凹部51d(第3凹部)を形成する(第3凹部形成工程)してから、凹部51dの底面に凹部51bを形成し(第1凹部形成工程)、凹部51dの底面に熱収縮硬化材56を接着する(熱収縮硬化材接着工程)(変形例2)。
上述の実施の形態では、凹部51dが形成されていないフレキシブル層51の上面に熱収縮硬化材56を接着しているため、フレキシブル層51の上面は、熱収縮硬化材56が接着された部分が他の部分よりも突出しており凹凸ができているが、変形例2の場合には、フレキシブル層51の上面に熱収縮硬化材56と同じ高さの凹部51dが形成されているとともに、凹部51dの底面に熱収縮硬化材56が接着されているため、図9(d)に示すように、ヒータHによる押圧加熱の前においてフレキシブル層51の上面が平坦となり、その後、図9(e)に示すように、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱する(隆起部形成工程、接合工程)ことによって、フレキシブル層51のランド52と対向する部分を圧電層42側に隆起させたときにも、フレキシブル層51の上面が平坦な状態となる。したがって、この後、COF50の上面に別の部材を配置する場合などに、熱収縮硬化材56が邪魔になることがなく、COF50が、汎用性のある使い勝手のよいものとなる。
また、上述の実施の形態では、フレキシブル層51の上面に凹部51bが形成されており、変形例1では、フレキシブル層51の上面に凹部51bが形成されているとともに下面に凹部51cが形成されており、変形例2では、フレキシブル層51の上面に凹部51b及び凹部51dが形成されていたが、これには限られず、フレキシブル層51には、凹部51b〜51dのうちの1つのみが形成されていてもよく、凹部51b〜51dのうち任意の2つが形成されていてもよく、凹部51b〜51dが全て形成されていてもよい。
また、上述の実施の形態及び変形例1、2では、フレキシブル層51に凹部51b〜51dが形成されていたが、これには限られない。別の一変形例では、図10(b)に示すように、凹部51b〜51d(図7〜9参照)が形成されていないフレキシブル層51の上面におけるランド52と対向する部分に熱収縮硬化材56を接着する(熱収縮硬化材接着工程)(変形例3)。
この場合にも、図10(d)に示すように、ヒータHにより、COF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱する(隆起部形成工程、接合工程)と、熱収縮硬化材56が収縮するのに伴って、フレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に隆起する。
なお、変形例3においては、図10(a)に示す導電性バンプ46を形成する工程(バンプ形成工程)、及び、図10(c)に示す、接着剤層55を形成する工程(接着剤層形成工程)については、上述の実施の形態と同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
また、本実施の形態では、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱することによって、熱収縮硬化材56を収縮させて、フレキシブル層51のランド52と対向する部分を圧電層42側に隆起させるのと同時に、導電性バンプ46とランド52とを電気的に接続するとともにCOF50と圧電層42とを接合したが、すなわち、本発明に係る隆起部形成工程と接合工程とを同時に行ったが、これには限られない。
別の一変形例では、上述の実施形態と同様、図11(c)に示すように、フレキシブル層51の上面に熱収縮硬化材56を接着した(熱収縮硬化材接着工程)後、図示しないヒータなどにより、熱収縮硬化材56を加熱して収縮させることにより、フレキシブル層51のランド52と対向する部分を下方に隆起させて隆起部51aを形成する(隆起部形成工程)。そして、その後、図11(d)に示すように、隆起部51aが形成されたフレキシブル層51の下面に接着剤層55を形成し、続いて、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱することにより、ランド52と導電性バンプ46とを接合するとともに、COF50と圧電層42とを接合する(接合工程)(変形例4)。
この場合でも、隆起部51aが形成されている分だけ、圧電層42とフレキシブル層51との間隔が大きくなり、フレキシブル層51が圧電層42との線膨張係数の違いにより圧電層42側に撓んでも、圧電層42に接触してしまうのを防止することができる。
なお、変形例4においては、図11(a)に示す導電性バンプ46を形成する工程(バンプ形成工程)、及び、図10(b)に示す凹部51bを形成する工程(第1凹部形成工程)については、上述の実施の形態と同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
また、上述の実施の形態では、接続端子45aの上面に導電性バンプ46を形成していたが、導電性バンプ46は形成しなくてもよい。この場合には、隆起部51a上に形成されたランド52が接続端子45aの表面に接触することにより、ランド52と接続端子45aとが電気的に接続される。さらに、この場合でも、隆起部51aの高さが十分にあれば、圧電層42とフレキシブル層51との間の間隔が大きくなるため、圧電層42とフレキシブル層51との線膨張係数の差によりフレキシブル層51が圧電層42側に撓んだときに、フレキシブル層51が圧電層42に接触してしまうのを防止することができる。
また、上述の実施の形態では、COF50と圧電層42とが接着剤層55を介して接合されていたが、これには限られない。
別の一変形例では、図12(a)に示すように、接続端子45aの表面に導電性バンプ46(図7参照)を形成せず、図12(b)、(c)に示すように、上述の実施の形態と同様、フレキシブル層51の上面に凹部51bを形成し(第1凹部形成工程)、続いてフレキシブル層51の上面に熱収縮硬化材56を接着する(熱収縮硬化材接着工程)。次に、図12(d)に示すように、フレキシブル層51の下面にソルダーレジスト層71を形成し、続いて、図12(e)に示すように、ソルダーレジスト層71のランド52と対向する部分をエッチングなどにより除去して貫通孔71aを形成するとともに貫通孔71aから露出したランド52の表面にハンダ72のバンプを形成する。
そして、図12(f)に示すように、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧する(隆起部形成工程、接合工程)。すると、熱収縮硬化材56が加熱されて収縮するのに伴ってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に隆起して隆起部51aが形成されるとともに、この状態で、ハンダ72が融解して接続端子45a上に流れ、これにより、ハンダ72を介して接続端子45aとランド52とが電気的に接続されるとともに、ハンダ72により、COF50と圧電層42とが接合される(変形例5)。
この場合でも、隆起部51aが形成されている分だけ、圧電層42とフレキシブル層51との間隔が大きくなるため、フレキシブル層51が圧電層42側に撓んでも、フレキシブル層51が圧電層42に接触してしまうのを防止することができる。
なお、変形例5では、凹部51bを形成し、熱収縮硬化材56を接着した後でフレキシブル層51の下面にソルダーレジスト層71及びハンダ72を形成したが、ソルダーレジスト層71及びハンダ72を形成した後、凹部51bを形成し、熱収縮硬化材56を接着してもよい。
また、本実施の形態では、ランド52が隆起部51aの表面から隆起部51aに隣接するフレキシブル層51の下面の平坦な部分まで延びていたが、これには限られず、図13に示すように、ランド52が、隆起部51a上にのみ形成されており、隆起部51a上でランド52と配線53とが接続されていてもよい(変形例6)。
この場合でも隆起部51aと隆起部51aに隣接する平坦な部分とが滑らかにつながっており、この滑らかな曲面上でランド52と配線53とが接続されているため、ランド52と配線53との間に亀裂や断裂が生じてしまうのを防止することができる。
また、以上の説明では、熱収縮硬化材56が収縮するのに伴ってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が隆起することにより隆起部51aが形成されていてが、これには限られず、隆起部51aが上述したのとは異なる方法によって形成されることで、フレキシブル層51の下面において隆起部51aが形成された部分と隆起部51aに隣接する部分とが滑らかにつながっていてもよい。
また、本実施の形態では、圧電アクチュエータ32がいわゆるユニモルフ変形により圧力室10内のインクに圧力を付与するものであったが、これには限られない。例えば、厚み方向に分極された複数の圧電層が圧力室上に積層されており、これらの圧電層にその厚み方向の電界を発生させることにより圧電層をその厚み方向に伸長させて、圧力室10内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータなど、ユニモルフ変形とは異なる変形によって圧力室10内のインクに圧力を付与する圧電アクチュエータに本発明を適用することも可能である。
また、以上の説明では、インクジェットヘッド3において圧力室10内のインクに圧力を付与するための圧電アクチュエータユニットに本発明を適用した例について説明したが、インクジェットヘッド以外の装置に用いられる圧電アクチュエータユニットに本発明を適用することも可能である。
また、以上の説明では圧電アクチュエータ32に駆動電位などを付与するためのCOF50に本発明を適用したが、圧電アクチュエータ32以外の装置に用いられるフレキシブル配線部材に本発明を適用することも可能である。