JP5185103B2 - 変態を起こす金属の表面硬化処理方法 - Google Patents

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Description

この発明は、金属の表面硬化処理方法に関し、特に変態を起こす金属の表面に摩擦および/または攪拌を施すことによってその金属表面の性質を改善するようにした表面硬化処理方法に関する。
従来から、プレス金型、工作機械の摺動部分、歯車等の鉄鋼部品では、表面の硬さを増し、耐摩耗性を向上させるために、各種方法により表面硬化処理が施されている。
鉄や鉄鋼等の金属材料の表面硬化処理方法としては、従来、固体浸炭方法、ガス浸炭方法、液体浸炭方法、高周波焼入れ方法、フレーム・ハードニング(火焔焼入れ、炎焼入れ)方法、メッキ方法、窒化方法などがある。
一般的には、鉄や鉄鋼等の金属材料の表面硬化処理方法として、表面に焼入れ処理を施す手法が広く行われている。鉄鋼における通常の焼入れは、内部の固溶体組織が面心立方の結晶構造を有するオーステナイト組織化する温度(800〜1300℃)まで被焼入れ材を加熱した後、フェライト、パーライト、ベイナイト変態を阻止するように、急冷することによってオーステナイト組織中に板状またはレンズ状の微細な結晶からなる針状結晶構造を有するマルテンサイト組織を生じさせる改質(硬化)手法であり、加熱熱源の種類別に呼び名が異なっている。
表面焼入れ処理には、フレーム・ハードニング、高周波焼入れ、電子ビーム焼入れ、レーザー焼入れなどがある。
フレーム・ハードニングは、バーナーを用いてアセチレンガスと酸素ガスとの火焔で被焼入れ材の表面を所定温度に加熱し、その後、急冷する焼入れ処理方法である。フレーム・ハードニングは特殊な設備を必要としないが、人手による作業の場合、加熱温度を正確に制御することができないので、均一な硬化層を得るには熟練を要すると言う欠点がある。このように、作業者の技量に依存する傾向が高いため、歯車などの複雑な形状の被焼入れ材に対してはその利点が発揮されるが、工作機械の摺動部のような単純形状の被焼入れ材に対しては非効率的で不適とされている。(下記の特許文献1、2、および3参照)
高周波焼入れは、電磁誘導によって、高周波の渦電流を誘起させて発生する熱を利用して被焼入れ材を所定温度に加熱し、その後、急冷する焼入れ処理方法である。この処理方法は、被焼入れ材の表面で誘導電流が最大となり、一方、内部に向かうに従って誘導電流が減少するという特性を利用している。渦電流を誘起させるための周波数、加熱コイルの材質や形状、冷却システムなどを被焼入れ材に応じて適切に組み合わせることによって焼き入れ特性の調整を効率よく行うことができると言う利点があるが、汎用性に乏しい欠点がある。(下記の特許文献4、5、および6参照)
電子ビーム焼き入れは、電子ビームを用いて被焼入れ材を所定温度に加熱し、その後、急冷する焼き入れ処理方法である。この焼き入れ処理は真空中で行われるので、高価な設備を必要とする。
レーザー焼き入れは、レーザーを用いて被焼入れ材を所定温度に加熱し、その後、急冷する焼き入れ処理方法である。電子ビーム焼き入れ同様、高価な設備を必要とする。また、金属の被焼入れ材がレーザーを反射してしまうため、被焼入れ材の表面に黒鉛などの吸収剤を塗布する面倒な作業を施さなければならない欠点がある。
なお、金属を接合する発明であり、本発明ように金属の表面硬化処理方法とは発明の目的において本質的に異なり、そこで使用される工具にも明らかな差異が認められるものの、本発明と同様に金属に摩擦・攪拌を施す技術を開示している下記特許文献7および8をここに紹介しておく。
特開平5−230536号公報、 特開平8−311636号公報 特開平11−131182号公報 特開2002−372382号公報 特開2005−2445号公報 特開2005−307307号公報 国際出願公開WO93/10935公報 国際出願公開WO95/10935公報
これら従来の処理方法に共通して言えることは、何れも被焼入れ材に対して外部から強制的に熱を加えるということであって、強制的な加熱によって下記のような共通の問題点や欠陥が発生する虞を避けることができない。
・積損失:過加熱により被焼入れ材が溶けてしまう現象(溶損)である。通常の焼き入れ処理においては、焼き入れ温度が高いほど硬度が増す傾向にあるので、温度を上げすぎて被焼入れ材を溶かしてしまう虞がある。
・結晶粒の粗大化:被焼入れ材の材料によっては結晶粒が粗大化し、硬化層を脆化させてしまう虞がある。
・焼き割れ:急加熱および急冷によって被焼入れ材の内・外部に生じた温度差による熱応力および/またはマルテンサイト変態に伴う異常膨張に起因する変態応力によって被焼入れ材に割れが生じる現象であり、被焼入れ材にとって致命的な欠陥となる。
・焼きむら:温度調節の不完全さから所定の温度以上および以下の部分が被焼入れ材に生じ、部分的に硬度が高くなり過ぎたり低下したりする現象である。
・変形・歪:実際の被焼入れ材は複雑な形状を有していることが多いので、付加する熱量や冷却速度に部分的な差が生じる。温度差が生じた部分に熱応力が発生すると共に、変態応力も加わり、これらの応力が複雑に影響して被焼入れ材の寸法が伸びたり、縮んだり、変形したりする現象である。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、従来技術における上記諸問題や欠陥を根本から解決する、画期的な金属の表面硬化処理方法を提供することができる。本発明の表面硬化処理方法は、加圧下における摩擦熱を利用する単純かつ迅速な処理によって被硬化処理材の表面内部に変態を引き起こさせ、それによって被硬化処理材の表面内部組織を微細化したマルテンサイト組織に改質するようにした、変態を起こす金属の表面硬化処理方法である。
本発明の第1の態様によれば、略円柱形状の加圧工具を高速で回転させながらその底面を被硬化処理材の表面に若干押し込むように所定の圧力で押圧することにより前記加圧工具と前記被硬化処理材との間に局部的な摩擦熱を発生させると共に前記被硬化処理材の表面を攪拌することと、前記被硬化処理材の摩擦熱を受けた部分に微細なマルテンサイト組織への変態と塑性流動とを起こさせることと、摩擦熱によって前記加圧工具付近に位置する被硬化処理材の表面が軟化し始めたとき、前記加圧工具を所定の速度で移動させることの各ステップを含み、前記摩擦熱による投入熱量は、前記被硬化処理材の融点温度×0.5(ケルビン)以上であり、前記被硬化処理材の表面温度は850〜1050℃の範囲であり、前記被硬化処理材の表面硬化処理後の硬度は、攪拌を受ける表層部において比較的低く、前記表層部から下の部分において高くなっていることを特徴とする、変態を起こす金属の表面硬化処理方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様に記載の表面硬化処理方法であって、比較的硬度の低い前記表層部は、機械加工により削り取られることを特徴とする表面硬化処理方法が提供される。
上記各態様を有する本発明は、次のような効果および利点を有する。
本発明の表面硬化処理方法は、材料の形状を問わず、単純かつ迅速な処理によって効率よく硬化処理を施すことができる。
また、本発明の表面硬化処理方法は、外部からの強制的加熱によらず、加圧下における摩擦熱による加熱であることから被硬化処理材を過加熱することなく、容積損失(溶損)を防止することができるとともに、被硬化処理材の再結晶化を促進し、結晶粒の粗大化および硬化層の脆化を防ぐことができる。
また、本発明の表面硬化処理方法は、摩擦熱の影響を受けるのは被硬化処理材の極小部に限られるので、内部応力の発生が少なく、そのため被硬化処理材に焼き割れ、歪、変形、等が生じない。
また、本発明の表面硬化処理方法は、加圧工具への加圧力制御と、加圧工具の回転ピッチ、すなわち、回転速度および移動速度の制御と、被硬化処理材に対する該加圧工具の姿勢制御という、被硬化処理材に対する投入熱量の最適条件を得やすい確実な制御に基づいて行われるので、焼むらを生じることなく、同一条件下であれば全体的に均一な硬度を得ることができる。
さらに、本発明の表面硬化処理方法は、被硬化処理材に対する熱の影響範囲が非常に少なく、かつ、熱による影響部が連続的に移動することから冷却も速やかに行われるので、温度差による熱応力や変態応力を発生することなく、被硬化処理材に変形や歪が生じない。
上記ならびに本発明の他の目的、態様、そして利点は、本発明の原理に合致する好適な具体例が実施例として示されている以下の詳細な記述及び添付の図面に関連して説明されることにより、当該技術の熟達者にとって明らかになるであろう。
図1の(a)は本発明の表面硬化処理方法を実施するための装置とその実施状態とを示す概略斜視図であり、(b)は本発明の表面硬化処理方法を実施する際における加圧工具の姿勢の一例を示す概略側面図であり、(c)および(d)は何れも加圧工具の形状を示す側面図である。 図2は、本発明の第1および第2の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の表面状態を示す上方からの写真である。 図3の(a)は本発明の第1の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の所定位置における硬度結果を示す表であり、(b)は、図3の(a)の表に基づいて、中心から前進側および後退側の各測定位置における硬度結果を示すグラフであり、(c)は、図3の(a)の表に基づいて、表面からの各測定深さにおける硬度結果を示すグラフである。 図4Aの(a)は攪拌処理部の中心から前進方向に6mm離れた位置で垂直方向に切断された本発明の第1の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(b)は図4A中の位置Bにおける拡大顕微鏡組織写真であり、(c)は図4A中の位置Cにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図4Bの(d)は攪拌処理部の中心部で垂直方向に切断された本発明の第1の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(e)は図4B中の位置Eにおける拡大顕微鏡組織写真であり、(f)は図4B中の位置Fにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図5の(a)は本発明の第2の実施例による被硬化処理材の硬化処理後の所定位置における硬度結果を示す表であり、(b)は、図5の(a)の表に基づいて、中心からの各測定位置における硬度結果を示すグラフであり、(c)は、図5の(a)の表に基づいて、表面からの各測定深さにおける硬度結果を示すグラフである。 図6Aの(a)は攪拌処理部の中心から前進方向に6mm離れた位置で垂直方向に切断された本発明の第2の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(b)は図6A中の位置Bにおける拡大顕微鏡組織写真であり、(c)は図6A中の位置Cにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図6Bの(d)は攪拌処理部の中心部で垂直方向に切断された本発明の第2の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(e)は図6B中の位置Eにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図7は、本発明の第3の実施例による被硬化処理材の効果処理後の表面状態を示す上方からの写真である。 図8の(a)は本発明の第3の実施例による被硬化処理材の硬化処理後の所定位置における硬度結果を示す表であり、(b)は、図8の(a)の表に基づいて、中心からの各測定位置における硬度結果を示すグラフであり、(c)は、図8の(a)の表に基づいて、表面からの各測定深さにおける硬度結果を示すグラフである。 図9Aの(a)は攪拌処理部の中心から前進方向に6mm離れた位置で垂直方向に切断された本発明の第3の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(b)は、図9Aの(a)中の位置Bにおける拡大顕微鏡組織写真であり、(c)は、図9Aの(a)中の位置Cにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図9Bの(d)は攪拌処理部の中心部で垂直方向に切断された本発明の第3の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(e)は、図9Bの(d)中の位置Eにおける拡大顕微鏡組織写真であり、(f)は、図9Bの(d)中の位置Fにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図10は、本発明の第4および第5の実施例による被硬化処理材の効果処理後の表面状態を示す上方からの写真である。 図11の(a)は本発明の第4の実施例による被硬化処理材の硬化処理後の所定位置における硬度結果を示す表であり、(b)は、図11Aの(a)の表に基づいて、中心からの各測定位置における硬度結果を示すグラフであり、(c)は、図11Aの(a)の表に基づいて、表面からの各測定深さにおける硬度結果を示すグラフである。 図12Aの(a)は攪拌処理部の中心から前進方向に6mm離れた位置で垂直方向に切断された本発明の第4の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真である。(b)は、図12A(a)中の位置Bにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図12Bの(c)は、攪拌処理部の中心部で垂直方向に切断された本発明の第4の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(d)は、図12Bの(c)中の位置Dにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図13の(a)は、本発明の第5の実施例による被硬化処理材の硬化処理後の所定位置における硬度結果を示す表であり、(b)は、図13の(a)の表に基づいて、中心からの各測定位置における硬度結果を示すグラフであり、(c)は、図13の(a)の表に基づいて、表面からの各測定深さにおける硬度結果を示すグラフである。 図14Aの(a)は、攪拌処理部の中心から前進方向に6mm離れた位置で垂直方向に切断された本発明の第5の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(b)は、図14Aの(a)中の位置Bにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図14Bの(c)は攪拌処理部の中心部で垂直方向に切断された本発明の第5の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(d)は、図14Bの(c)中の位置Dにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図15は、本発明の第6の実施例による被硬化処理材の効果処理後の表面状態を示す上方からの写真である。 図16の(a)は、本発明の第6の実施例による被硬化処理材の硬化処理後の所定位置における硬度結果を示す表であり、(b)は、図16の(a)の表に基づいて、中心からの各測定位置における硬度結果を示すグラフであり、(c)は、図16の(a)の表に基づいて、表面からの各測定深さにおける硬度結果を示すグラフである。 図17Aの(a)は攪拌処理部の中心から前進方向に6mm離れた位置で垂直方向に切断された本発明の第6の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(b)は図17Aの(a)中の位置Bにおける拡大顕微鏡組織写真である。 図17Bの(c)は、攪拌処理部の中心部で垂直方向に切断された本発明の第6の実施例による硬化処理後の被硬化処理材の顕微鏡組織写真であり、(d)は、図17Bの(c)中の位置Dにおける拡大顕微鏡組織写真である。 実施例1〜6における各表面硬化処理後の各被硬化処理材のロックウェル硬度を示す表である。
符号の説明
1 被硬化処理材
2 加圧工具
3 加圧、回転、移動装置
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
上記したとおり、本発明の表面硬化処理方法は、摩擦熱を利用して、被硬化処理材に変態と組織の微細化とを同時に引き起こさせるようにした、変態を起こす金属の表面硬化処理方法である。従って、被硬化処理材(母材)としては、鋼、鋳鉄、チタン等の材料からなるものが対象となる。組成面から言えば、パーライト組織を30%以上含む材料が本発明の表面硬化処理方法に適す母材となる。
図1の(a)には、本発明の変態を起こす金属の表面硬化処理方法を実施するための装置が概略斜視図で示されている。
図1の(a)において、参照符号1は変態を起こす金属からなる被硬化処理材を示し、参照符号2は具体的に図示しないNC(Numerical Control)工作機械等の加圧、回転、移動装置3で加圧、回転、および移動させられる略円柱状の加圧工具を示している。
この加圧工具2は、被硬化処理材1の材質によって異なるが、これまでの経験では、表面硬化処理時に凡そ2000〜6000Kgの範囲の圧力で被硬化処理材1の表面に若干押し込まれるように押し付けられ、400〜1500rpmの範囲の回転速度で帯矢印方向に回転させられながら40〜500mm/min.、好ましくは40〜200mm/min.、の範囲の速度で矢印M方向に移動させられるようになっている。しかし、これらの範囲に限定されないことは言うまでもない。
また、被硬化処理材1に対する表面硬化処理の長さは加圧工具2の移動距離によって調整され得、一方、表面硬化処理の幅は加圧工具の径の選択と処理回数によって調整され得る。すなわち、被硬化処理材1に対する所望の表面硬化処理幅が大きい場合は、隣接した摩擦攪拌工程を繰り返し施せばよい。
この加圧下における加圧工具2の高速回転により、被硬化処理材1と加圧工具2との間に摩擦熱が発生するとともに、摩擦熱を受けた部分の被硬化処理材1に変態が生じる。本発明では、この変態を通して、微細なマルテンサイト組織の結晶を生成させる。結晶が微細になれば材料の強度は増し、硬度も高くなる。
本発明において、変態後の結晶が微細なマルテンサイト組織になる他の要因として、高い圧力で加圧していること、および/または攪拌による被硬化処理材1の塑性流動が生じることが挙げられ、さらに、摩擦熱の発生に関与する加圧工具を移動させることから、被硬化処理材1の発熱は局部的なものとなり、従って、冷却速度が速いので結晶粒に成長時間が与えられないことが考えられる。
摩擦熱による被硬化処理材1への投入熱量Q(W)は、Q=4/3πμPNR/V(ただし、μは摩擦係数、Pは加圧工具による圧力、Nは加圧工具の回転速度、Rは加圧工具の直径、Vは加圧工具の移動速度である。)で表されることが知られている。これによれば、摩擦・攪拌による発熱量Qは加圧工具2による圧力P、加圧工具2の回転速度Nおよび加圧工具2の直径Rの3乗に比例し、一方、加圧工具2の移動速度に反比例することになる。上記の式以外に、投入熱量Q(W)は、p=V/N(ただし、pは加圧工具の回転ピッチ、Vは加圧工具の移動速度、Nは加圧工具の回転速度である。)で簡単に表すことができる。後述した式によれば、1回転する間における加圧工具2の移動距離(回転ピッチ)が1つの指標となっている。すなわち、回転ピッチが大きくなると、投入熱量は減少することになる。
本発明では、これらの式に基づいて被硬化処理材1の加熱制御が行われる。言い換えれば、被硬化処理材1の加熱温度は、加圧工具2の回転ピッチ、すなわち、加圧工具2の回転速度、加圧工具2の移動速度を適宜制御することによって調整され得る。その結果、本発明では被硬化処理材1に対して最適条件を得やすい確実な制御に基づいて表面硬化処理を行うことができる。
本発明における摩擦熱による投入熱量は、被硬化処理材1の融点温度(ケルビン)×0.5以上であり、この場合、被硬化処理材の表面温度は850〜1050℃の範囲となる。
また、本発明では、表面硬化処理時に被硬化処理材1に対する加圧工具2の姿勢、言い換えれば、加圧工具2の底面と被硬化処理材1の表面との角度関係が被硬化処理材1に対する加圧および攪拌作用に影響を与える。双方の面の角度関係は基本的には0°、すなわち、加圧工具2の底面と被硬化処理材1の表面とを平行状態とするが、被硬化処理材1の材質や加圧工具2の回転ピッチの選択如何で、双方の面の間に形成される角度θが0.5〜10°、好ましくは2〜5°、の範囲になるように、加圧工具2の移動方向(矢印M方向)における前方側の底面が浮き上がる傾き姿勢を加圧工具2に与えることができる。(図1の(b)参照)
次に、本発明の表面硬化処理に用いられる加圧工具2の形状について説明する。
後述する実施例では25mmの直径を有する略円柱状の加圧工具が使用されたが、本発明に至るまでの実験では、15〜50mmの直径を有する加圧工具の使用が試みられている。加圧工具2の直径が15mmより小さい場合には、処理施工中に表面の軟化により加圧工具2が必要以上に被硬化処理材1中に深く入り込んでしまうという問題が生じる。ただし、後述する実施例では荷重一定制御の装置を用いたことから、加圧工具2が必要以上に被硬化処理材1中に深く入り込むという問題が生じたが、被硬化処理材1に対する加圧工具2の位置一定制御等の制御法を採用すれば、この問題は回避可能であり、直径が15mmより小さい加圧工具2でも有効に使用することができる。一方、加圧工具2の直径が50mmより大きい場合には、微細マルテンサイト組織生成の一要因と考えられる十分な圧力を掛けるのに必要な荷重が大きくなり過ぎるという問題が生じる。しかし、極めて高剛性の大型装置を用いることにより、直径が50mmより大きい加圧工具2の使用が可能になることは言うまでもない。
また、表面硬化処理時に軟化した被硬化処理材1が加圧工具2の周面上に堆積する傾向があるため、図1の(c)および(d)に示されているように、その底面を膨らませた形状、またはその逆に、底面を凹ませた形状にすることが好ましい。なお、本発明では、加圧工具の底面は平坦面を基本としているが、被硬化処理材1の材質によっては、攪拌の促進とより深い攪拌とを得るためにプローブ(ピン状の突起)を底面の軸心位置または偏心位置に設けることも可能である。
加圧工具2の材質としては、被硬化処理材1の硬度よりも高い硬度を有する高融点金属またはセラミックスが用いられる。高融点金属としては、工具鋼、タングステン合金、モリブデン合金、イリジウム合金、タングステンカーバイド(超硬合金)等からなるグループから選ばれる何れか1つが用いられ、セラミックスとしてはPCBN(Polycrystalline
Cubic Boron Nitride)または窒化ケイ素(Si3N4)が用いられる。
次に、上記装置を用いた本発明の表面硬化処理方法に関する幾つかの好ましい具体的実施例を添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の記述において、被硬化処理材1の加圧・攪拌処理部における幅方向の中心(加圧工具2の直径方向の中心が位置するところ)を中心部Cと定義し、その中心部Cを基点にして、そこから加圧工具の移動方向Mとほぼ同じ方向に流れる加圧・攪拌処理部を前進側(アドバンシング側)と定義し、中心部Cを基点にして、そこから加圧工具の移動方向Mとほぼ逆方向に流れる加圧・攪拌処理部を後退側(リトリーティング側)と定義する。図1の(a)において、矢印Aが前進側を、また、矢印Rが後退側をそれぞれ示している。
(実施例1)
被硬化処理材1としての球状黒鉛鋳鉄(FCD700)に対して、図1の(a)に示された装置を用いて行った実施例1の表面硬化処理の結果は、硬化処理後の被硬化処理材1の表面状態を示す図2の2と、硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)を示す図3の(a)乃至(c)と、そして硬化処理後の被硬化処理材の内部組織状態をそれぞれ示す顕微鏡写真である図4Aの(a)乃至(c)並びに図4Bの(d)乃至(f)とに示される。なお、この被硬化処理材の母材硬度は202〜234Hvである。
実施例1における加圧工具2に関する実施条件は次の通りである。
直 径: 25mm(プローブなし)
材 質: タングステンカーバイド
加圧力: 2000〜3600Kg
回転速度: 800〜1000rpm
移動速度: 50mm/min.
処理開始時は、加圧力を2000Kg、回転速度を1000rpmとしたが、加圧力を徐々に強め、一方、回転速度は徐々に遅くし、図2における(2)の切断位置付近では加圧力を3600Kg、回転速度を800rpmとした。
図2における(2)の切断位置付近における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図3の(a)乃至(c)に示されるとおりであり、(2)の切断位置における後退側に10mm離れ、表面からの深さ0.8mmの場所における最低硬度226.6Hvと、(2)の切断位置における中心部であって表面からの深さ1.1mmの場所と、(2)の切断位置において後退側に2mm離れ、表面からの深さ1.0mmの場所とにおける最高硬度927Hvとの間でバラツキが見られる。
それでも、被硬化処理材1の表層部(0〜0.2mm)と加圧工具2の中心部近傍を除き、600〜930Hvの硬度が得られており、改質の効果が明らかに認められ得る。
(実施例2)
上記実施例1と同様に、被硬化処理材としての球状黒鉛鋳鉄(FCD700)に対して、図1の(a)に示された装置を用いて行った実施例2の表面硬化処理の結果は、硬化処理後の被硬化処理材の表面状態を示す図2の1と、硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)を示す図5の(a)乃至(c)と、そして硬化処理後の被硬化処理材の内部組織状態をそれぞれ示す顕微鏡写真である図6Aの(a)乃至(c)並びに図6Bの(d)および(e)とに示される。なお、この被硬化処理材の母材硬度は202〜234Hvである。
実施例2における加圧工具2に関する実施条件は次の通りである。
直 径: 25mm(プローブなし)
材 質: タングステンカーバイド
加圧力: 2000〜3000Kg
回転速度: 900rpm
移動速度: 100mm/min.
処理開始時は、加圧力を2000Kg、回転速度を900rpmとしたが、加圧力を徐々に強め、図2における(1)の切断位置付近では加圧力を3000Kg、回転速度を900rpmとした。
図2における(1)の切断位置付近における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図5の(a)乃至(c)に示されるとおりであり、(1)の切断位置における後退側に4mm離れ、表面からの深さ0.6mmの場所における最低硬度205.3Hvと、(1)の切断位置における前進側に2mm離れ、表面からの深さ0.1mmの場所とにおける最高硬度908.7Hvとの間で硬度にバラツキが見られる。
この実施例2では、上記実施例1に比べて、加圧工具2の加圧力がやや低く設定されているとともに、回転速度を落とし、移動速度を倍にすることによって回転ピッチを大きくし、摩擦・攪拌による投入熱量も低く設定されている。その結果、全体的な硬度分布は実施例1より低くなっている。それでも、被硬化処理材1の表層部(0〜0.2mm)と加圧工具2の中心部近傍を除き、500〜900Hvの硬度が得られており、改質の効果が明らかに認められ得る。
(比較実施例3)
この実施例は、上記実施例1および2と同じ球状黒鉛鋳鉄(FCD700)の被硬化処理材に対して、加圧工具2の底面に長さ1.5mmのプローブを設けた加圧工具を用いた実施例である。
この比較実施例3における表面硬化処理の結果は、硬化処理後の被硬化処理材の表面状態を示す図7と、硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)を示す図8の(a)乃至(c)と、そして硬化処理後の被硬化処理材の内部組織状態をそれぞれ示す顕微鏡写真である図9Aの(a)乃至(c)並びに図9Bの(d)乃至(f)とに示される。なお、この被硬化処理材の母材硬度は202〜234Hvである。
実施例3における加圧工具2に関する実施条件は次の通りである。
直 径: 25mm(長さ1.5mmのプローブ付き)
材 質: タングステンカーバイド
加圧力: 2000〜3200Kg
回転速度: 900rpm
移動速度: 50mm/min.
処理開始時は、加圧力を2000Kg、回転速度を900rpmとしたが、同じ回転速度を維持しながら加圧力を徐々に強め、図7における(1)の切断位置では加圧力を3200Kgとした。
加圧工具2にプローブを設けて攪拌作用を高めたことにより、加圧力は実施例1の時よりもやや低くしたが、加圧工具の移動速度は実施例1と同じにした。その結果、図7における(1)の切断位置付近における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図8の(a)乃至(c)に示されるとおりであり、(1)の切断位置における後退側に10mm離れ、深さ0.0mmの表面における最低硬度136.6Hvと、(1)の切断位置における前進側に6mmおよび8mm離れ、表面からの深さ0.1mmの2つの場所における最高硬度913.3Hvとの間でバラツキが見られるが、表層部(0〜0.2mm)と加圧工具2の中心部近傍を除き、400〜880Hvの硬度が得られている。
この比較実施例における硬度結果の分析によれば、実施例1の図3の(c)と本比較実施例の図8の(c)とを比較することによって顕著であるように、硬化処理後の被硬化処理材1の高度は全体的に実施例1の硬度結果より低くなっていることが解る。特に、攪拌部の硬度が低下している。
(実施例4)
被硬化処理材としての片状黒鉛鋳鉄(FC300)に対して、図1の(a)に示された装置を用いて行った実施例4の表面硬化処理の結果は、硬化処理後の被硬化処理材の表面状態を示す図10と、硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)を示す図11の(a)乃至(c)と、そして硬化処理後の被硬化処理材の内部組織状態をそれぞれ示す顕微鏡写真である図12Aの(a)および(b)並びに図12Bの(c)および(d)とに示される。なお、この被硬化処理材の母材硬度は178〜212Hvである。
実施例4における加圧工具2に関する実施条件は次の通りである。
直 径: 25mm(プローブなし)
材 質: タングステンカーバイド
加圧力: 1000〜5500Kg
回転速度: 900rpm
移動速度: 50mm/min.
処理開始時は、加圧力を1000Kg、回転速度を900rpmとしたが、同一回転即とを保持しながら加圧力を徐々に強め、図10における(1)の切断位置付近では加圧力を4600Kgとした。
図10における(1)の切断位置付近における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図11の(a)乃至(c)に示されるとおりであり、(1)の切断位置における後退側に8mm離れ、表面からの深さ1.1mmの場所における最低硬度141.7Hvと、(1)の切断位置における前進側に4mm離れ、表面からの深さ0.4mmの場所とにおける最高硬度927.0Hvとの間でバラツキが見られる。
それでも、被硬化処理材1の表層部(0〜0.2mm)と加圧工具2の中心部近傍を除き、600〜900Hvの硬度が得られており、改質の効果が明らかに認められ得る。
(実施例5)
実施例4と同一の被硬化処理材および同一の条件で実施した。ただし、硬度の測定箇所を図10の(2)の切断位置付近とした。実施例5における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図13の(a)乃至(c)に示され、硬化処理後の被硬化処理材の内部組織状態は図14Aの(a)および(b)並びに図14Bの(c)および(d)の顕微鏡写真にそれぞれ示される。
図10における(2)の切断位置付近における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図13の(a)乃至(c)に示されるとおりであり、(2)の切断位置における後退側に10mm離れ、表面からの深さ0.8mmの場所における最低硬度226.6Hvと、(2)の切断位置における前進側に8mm離れ、表面からの深さ0.2mmの場所における最高硬度869。6Hvとの間でバラツキが見られる。
それでも、被硬化処理材1の表層部(0〜0.2mm)と加圧工具2の中心部近傍を除き、600〜860Hvの硬度が得られており、改質の効果が明らかに認められ得る。
(実施例6)
被硬化処理材としての焼入れ鋼(HMD、日立金属(株)の商標名)に対して、図1の(a)に示された装置を用いて行った実施例6の表面硬化処理の結果は、硬化処理後の被硬化処理材の表面状態を示す図15の1と、硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)を示す図16の(a)乃至(c)と、そして硬化処理後の被硬化処理材の内部組織状態をそれぞれ示す顕微鏡写真である図17Aの(a)および(b)並びに図17Bの(c)および(d)とに示される。なお、この被硬化処理材の母材硬度は222〜247Hvである。
実施例6における加圧工具2に関する実施条件は次の通りである。
直 径: 25mm(プローブなし)
材 質: タングステンカーバイド
加圧力: 2000〜3000Kg
回転速度: 900rpm
移動速度: 50mm/min.
処理開始時は、加圧力を2000Kg、回転速度を900rpmとしたが、同じ回転速度を保持しながら加圧力を徐々に強め、図15における(1)の切断位置では加圧力を3600Kg、回転速度を800rpmとした。
図15における(1)の切断位置付近における硬化処理後の被硬化処理材の硬度結果(Hv)は図16の(a)乃至(c)に示されるとおりであり、(1)の切断位置における後退側に10mm離れ、表面からの深さ1.4mmの場所における最低硬度179.9Hvと、(1)の切断位置における前進側に6mm離れ、表面からの深さ0.4mmの場所における最高硬度873.8Hvとの間でバラツキが見られる。
この焼入れ鋼においては、被硬化処理材1の表面と加圧工具2の中心部近傍に関係なく、600〜870Hvの硬度が平均して得られており、改質の効果がより顕著に認められ得る。このように、本発明の表面硬化処理方法によれば、黒鉛の形態に依存することなく、鋳鉄に対して得た効果と同様な効果を得ることができる。
図18は、実施例1〜6における表面効果処理後の被硬化処理材のロックウェル硬度を示す表である。ロックウェル硬度測定器の測定具は鋼球であるため、ビッカース硬度測定器の測定針ように被硬化処理材の切断面の細部を測定することができないため、この表では実施例1〜6における表面効果処理を施した被硬化処理材の表面硬度が示される。縦軸に実施例1〜6で用いられた各被硬化処理材がしめされ、横軸には前進側および後退側における測定位置(加圧工具の中心からの距離(mm))が示されている。
以上の実施例1〜6から共通して言えることは、結晶の微細化により黒鉛粒が拡散いるため、硬度測定時に測定針がマルテンサイト組織に当接されず、黒鉛粒に当接したとも考えられる(この点は黒鉛を含まない鋼(HMD)材では軟化部が生じないことからも頷ける)が、表層部(本発明の実施例では深さ0〜0.2mm)は比較的柔らかい組織になっており、表層部より下の部分では、加圧作用と加熱・冷却作用とにより、微細な結晶粒の理想的なマルテンサイト組織になっていることが解る。
また、被硬化処理材1の表面部と加圧・攪拌処理部における中心部近傍(中心部から前進側および後退側へそれぞれ2mm離れた位置まで)を除き、所望の硬度に近い硬度が得られている。ただし、被硬化処理材1の加圧・攪拌処理部における前進側と後退側との硬度を比較してみると、前進側における硬度の方が後退側の硬度より平均して高くなっている。これは、後退側では攪拌作用による塑性流動の影響が大きいことに起因しているものと考えられる。
なお、攪拌を伴う本発明の表面硬化処理方法においては、表層部(本発明の実施例では深さ0〜0.2mm)が比較的柔らかい組織となるので、表面を滑らかにする目的から、バリや凹凸の削り取る機械加工が容易にできるという、加工面における利点が生じる。
以上の説明は、単に本発明の好適な実施例の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。本発明に関する更に多くの変形例や改造例が本発明の範囲を逸脱することなく当該技術の熟達者にとってみれば容易に思い当たるであろう。
特別な熟練技術や高価な処理設備を必要とすることなく、被硬化処理材の表面に所望の硬度(900Hv前後)でほぼ均一に焼き入れ処理を迅速に施すことができ、しかも、表面硬化処理が施された被硬化処理材に生じる歪や変形の量は著しく低減されるので、プレス金型、工作機械の摺動部分、等の工業製品の表面硬化処理に優れた効果を発揮することが見込まれる。

Claims (2)

  1. 略円柱形状の加圧工具を高速で回転させながらその底面を被硬化処理材の表面に若干押し込むように所定の圧力で押圧することにより前記加圧工具と前記被硬化処理材との間に局部的な摩擦熱を発生させると共に前記被硬化処理材の表面を攪拌することと、前記被硬化処理材の摩擦熱を受けた部分に微細なマルテンサイト組織への変態と塑性流動とを起こさせることと、摩擦熱によって前記加圧工具付近に位置する被硬化処理材の表面が軟化し始めたとき、前記加圧工具を所定の速度で移動させることの各ステップを含み、前記摩擦熱による投入熱量は、前記被硬化処理材の融点温度×0.5(ケルビン)以上であり、前記被硬化処理材の表面温度は850〜1050℃の範囲であり、前記被硬化処理材の表面硬化処理後の硬度は、攪拌を受ける表層部において比較的低く、前記表層部から下の部分において高くなっていることを特徴とする、変態を起こす金属の表面硬化処理方法。
  2. 比較的硬度の低い前記表層部は、機械加工により削り取られることを特徴とする請求項1に記載の表面硬化処理方法。
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