JP2005307307A - 高周波熱処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 均一な焼入品質が得られ、かつ効率的な加熱が行える高周波焼入装置を提供する。
【解決手段】 加熱コイル1で加熱中のワークWの温度を測定する温度測定手段28と、この温度測定手段28の測定値に応じて高周波電源2により加熱コイル1に給電する電力をフィードバック制御する電源制御手段21とを備える。電源制御手段21は、温度測定手段28で測定される温度の上昇に応じて、制御形態を切り換えるものとする。この場合に、加熱開始から鋼材のA1変態点付近に設定される第1の設定温度T1に達するまでは比例制御または開ループ制御とする。第1の設定温度T1に達した後、目標温度T3付近に設定される第2の設定温度T2に達するまでは比例微分制御とする。第2の設定温度T2に達した後はPID制御を行うものとする。
【選択図】 図1
【解決手段】 加熱コイル1で加熱中のワークWの温度を測定する温度測定手段28と、この温度測定手段28の測定値に応じて高周波電源2により加熱コイル1に給電する電力をフィードバック制御する電源制御手段21とを備える。電源制御手段21は、温度測定手段28で測定される温度の上昇に応じて、制御形態を切り換えるものとする。この場合に、加熱開始から鋼材のA1変態点付近に設定される第1の設定温度T1に達するまでは比例制御または開ループ制御とする。第1の設定温度T1に達した後、目標温度T3付近に設定される第2の設定温度T2に達するまでは比例微分制御とする。第2の設定温度T2に達した後はPID制御を行うものとする。
【選択図】 図1
Description
この発明は、各種の機械部品、例えば転がり軸受の軌道輪等につき、焼入に際する加熱を高周波誘導加熱により行う高周波焼入装置に関する。
機械部品、例えばリング状のワークの焼入に際する加熱方法として、単巻の加熱コイルを用い、その内周に同心にワークを配置し、高周波誘導加熱を行う方法がある(例えば非特許文献1)。
しかし、軸受軌道輪等の量産される機械部品の焼入は、雰囲気炉で全体焼入することが一般的である。軸受における高周波焼入は、車輪用軸受における軌道面のみの焼入等のように、局部的に焼入を施す場合に採用されている。
しかし、軸受軌道輪等の量産される機械部品の焼入は、雰囲気炉で全体焼入することが一般的である。軸受における高周波焼入は、車輪用軸受における軌道面のみの焼入等のように、局部的に焼入を施す場合に採用されている。
鋼帯の高周波焼入においては、温度制御方法として、放射温度計でワーク温度を計測し、ワーク温度に応じて加熱コイルの電力をフィードバック制御することが提案されている(特許文献1)。これには、キュリー点以上でフィードバック制御することが開示され、またそのフィードバック制御としてPID制御を行うことが開示されている。
(社)日本熱処理技術協会/日本金属熱処理工業会編集、「熱処理技術入門」大河出版、平成13年4月25日発行、第285頁 特開2002−372382号公報
(社)日本熱処理技術協会/日本金属熱処理工業会編集、「熱処理技術入門」大河出版、平成13年4月25日発行、第285頁
軸受軌道輪等の機械部品の全体焼入を行う場合の加熱は、上記のように炉内で行うことが一般的であるが、多品種少量生産の場合、炉による熱処理では、炉の処理可能個数に対して半端な個数となることがあり、効率が悪い。また、要求に応じて必要時に必要個数だけ焼入品をラインに供給したり、外部に納品するような場合は、炉による焼入れでは在庫を多く抱えることが必要となる。炉による加熱は、炉内に入れた機械部品の位置によっても、加熱温度がばらつくことがある。
このため、軸受軌道輪の焼入を、1個ずつ高周波焼入で行うことを試みた。高周波焼入によると、必要個数だけを処理することができ、また処理品間でのばらつきの少ない均一な熱処理が可能となる。
このため、軸受軌道輪の焼入を、1個ずつ高周波焼入で行うことを試みた。高周波焼入によると、必要個数だけを処理することができ、また処理品間でのばらつきの少ない均一な熱処理が可能となる。
しかし、高周波焼入は、短時間で急速に加熱する焼入方法であるため、均質な焼入品質を得るためには温度管理が重要となる。わずかな条件変動が焼入品質に大きく影響することがある。例えば、高周波焼入では、オーステナイト化時間も短いため、オーステナイト化の加熱温度が炉加熱の場合と比べて高めに設定される。この加熱の温度が低いと、ワークの均一オーステナイト化が不十分となる。また、加熱温度が高くなったり、加熱時間が長くなると、オーステナイト粒の成長が進行するため、高周波焼入の利点である組織の微細化が十分に得られず、靱性等の種々の特性の低下を伴う。
従来の高周波焼入では、ワーク毎に加熱コイルの寸法と加熱パターン(時間,電流)を試行錯誤で選定しているのが現状である。この加熱パターンの選定による温度管理は、ワークの変更時には、加熱パターンの再検討が必要になるため、多品種少量生産の場合には向かない。また、昇温時間が長くかかると、1個ずつ処理を行う高周波焼入では、生産性への影響も大きい。
適切な加熱制御を行うためには、加熱時のワーク温度の上昇特性を知る必要がある。このため、加熱コイルの電流を一定として加熱した場合のワークの温度上昇傾向の試験を行った。温度の測定は、測定範囲600〜1500℃の放射温度計を用いて行った。その結果を図9に示す。同図から、750℃付近で、加熱時間が経過しても温度上昇が進んでいないことがわかる。この温度は、A1変態点からA2変態点(キュリー点)付近の温度である。これは、共析変態のための潜熱としてワークに熱が蓄えられていると考えられる。そのため、温度によるフィードバック制御を行う場合も、単なる比例制御では共析変態の終了後に加熱が過剰となり、オーバシュートが生じると考えられる。
特許文献1には、キュリー点を超えると加熱効率が低下し、一定出力での温度制御が困難であるから、キュリー点以上でフィードバック制御を行うことが開示され、またそのフィードバック制御としてPID制御を行うことが開示されている。しかし、PID制御では、積分動作が加わるために、応答性が十分でなく、目標温度に達するときにオーバシュートを生じる恐れがある。キュリー点は760℃付近であり、均熱温度とする目標温度(例えば850℃程度)に対して近い温度であるため、PID制御ではオーバシュートを無くすことは難しい。オーバシュートが生じると、目標温度よりも高い温度に加熱されることになって、部分的にオーステナイト粒の成長の進行により靱性等の焼入品質が低下することがある。特許文献1の対象ワークとなる帯鋼等では、多少のオーバシュートは問題とならなくても、軸受軌道輪等の機械部品では、僅かな品質の違いが、転動寿命等の部品寿命に大きく影響する。
この発明の目的は、均一な焼入品質が得られ、かつ効率的な加熱が行える高周波焼入装置を提供することである。
この発明の高周波焼入装置は、加熱コイルと、この加熱コイルに高周波電流を給電する高周波電源と、ワークを加熱コイルに対して支持するワーク支持手段と、加熱中のワークの温度を測定する温度測定手段と、この温度測定手段の測定値に応じて前記高周波電源により加熱コイルに給電する電力をフィードバック制御する電源制御手段とを備える。この電源制御手段は、前記温度測定手段で測定される温度が、加熱開始から鋼材のA1変態点付近に設定される第1の設定温度に達するまでは比例制御または開ループ制御とし、第1の設定温度に達した後、目標温度付近に設定される第2の設定温度に達するまでは比例微分制御とし、第2の設定温度に達した後は、目標温度に維持されるようにPID制御を行うものとする。目標温度は、焼入前に均一に保つ温度であり、最高加熱温度である。
この構成によると、電源制御手段の制御により、加熱開始からA1変態点付近の第1の設定温度に達するまでは、比例制御、または開ループ制御とされる。A1変態点までは、生産性向上等のために、早く昇温させる必要があり、またこの温度領域では焼入品質に対する温度制御の必要性が少ないため、比例制御または開ループ制御とし、早く温度上昇させることが好ましい。第1の設定温度に達すると、比例微分制御(PD制御)に切替えられ、目標温度付近の第2の設定温度になるまではこの比例微分制御が続けられる。A1変態点まで加熱されると、共析変態のために温度が平衡状態となるが、潜熱として熱がワーク内に蓄えられることになる。そのため、比例制御に微分制御を加えることで、応答性を高め、目標温度に達するときのオーバシュートを防ぐ。オーバシュートが生じると、目標温度よりも高い温度に加熱されることになって、部分的にオーステナイト粒の成長の進行により靱性等の焼入品質が低下することがある。この焼入品質の低下が、比例微分制御によって回避される。
目標温度付近の第2の設定温度に達すると、それ以後はPID制御に切替えられる。すなわち、比例、積分、および微分の各動作を行う制御とされる。積分動作を加えることで、目標温度に対する定常偏差が改善され、正しく目標温度に制御できる。また、PID制御とするため、比例積分制御に比べて応答性に優れ、各種の変動要因に対して目標温度を精度良く維持することができる。
このように、比例制御(または開ループ制御)、比例微分制御、PID制御を、温度上昇に応じて切り換えることで、ワークの特性変化に追従した最適な制御が行え、焼入品質の向上、生産性の向上が図れる。
このように、比例制御(または開ループ制御)、比例微分制御、PID制御を、温度上昇に応じて切り換えることで、ワークの特性変化に追従した最適な制御が行え、焼入品質の向上、生産性の向上が図れる。
前記ワークは、リング状品、例えば転がり軸受の軌道輪であって良い。その場合、前記加熱コイルは単巻きのものとし、前記ワークは加熱コイルの内周または外周に配置されるものとする。
転がり軸受の軌道輪等の機械部品は、焼入品質が部品の寿命等に大きく影響するため、この発明の高周波焼入装置を用いることによる均一な焼入品質の効果が効果的に発揮される。
転がり軸受の軌道輪等の機械部品は、焼入品質が部品の寿命等に大きく影響するため、この発明の高周波焼入装置を用いることによる均一な焼入品質の効果が効果的に発揮される。
前記ワークがリング状品である場合、ワーク支持手段は、ワークの周方向複数箇所に接して支持するものとし、加熱時にワークを回転させるものとしても良い。前記温度測定手段は回転するワークを定位置で測定するものとする。この場合に、前記電源制御手段は、前記フィードバック制御を行うフィードバック制御部の前段に、ノッチフィルタを設けることが好ましい。
ワークがリング状品である場合、回転させながら加熱することが、均一な加熱のために好ましい。また、ワーク支持手段のワークと接触する部分は、温度が逃げないように局部的とすることが好ましく、リング状品の場合は周方向複数箇所でワークと接触するものとすることが、安定支持と温度低下防止のために好ましい。この場合に、回転するワークを定位置で温度測定する温度検出手段の測定値は、ワークのワーク支持手段と接する部位の温度が低いために、回転速度に同期した温度低下のリプルが乗る。フィードバック制御において、このリプルを反映させると、温度が不安定になる。そのため、ノッチフィルタを設け、リプルをエルミネートすることが好ましい。
ワークがリング状品である場合、回転させながら加熱することが、均一な加熱のために好ましい。また、ワーク支持手段のワークと接触する部分は、温度が逃げないように局部的とすることが好ましく、リング状品の場合は周方向複数箇所でワークと接触するものとすることが、安定支持と温度低下防止のために好ましい。この場合に、回転するワークを定位置で温度測定する温度検出手段の測定値は、ワークのワーク支持手段と接する部位の温度が低いために、回転速度に同期した温度低下のリプルが乗る。フィードバック制御において、このリプルを反映させると、温度が不安定になる。そのため、ノッチフィルタを設け、リプルをエルミネートすることが好ましい。
この発明の高周波焼入装置は、電源制御手段による加熱コイルの電力制御を、温度測定手段で測定される温度が、A1変態点付近に設定される第1の設定温度までは比例制御または開ループ制御とし、第1の設定温度に達した後、目標温度付近に設定される第2の設定温度に達するまでは比例微分制御とし、第2の設定温度に達した後は、PID制御を行うものとしたため、均一な焼入品質が得られ、かつ効率的な加熱を行うことができる。特にA1変態点付近の第1の設定温度から、目標温度T3の付近の第2の設定温度T2までは、比例微分制御とするため、PID制御に比べて応答性に優れ、確実なオーバーシュートの防止が行えて、オーステナイト粒の増大による靱性等の低下防止の効果に優れる。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。図1は高周波焼入装置のブロック図を示す。この高周波焼入装置は、加熱コイル1と、この加熱コイル1に高周波電流を供給する高周波電源2と、被熱処理品であるワークWを支持するワーク支持手段3と、焼入冷却液供給装置4と、焼入制御装置5とを備える。ワークWは、リング状品であり、例えば転がり軸受の軌道輪である。図示の例では、ワークWは玉軸受の内輪であり、外周に軌道溝Waを有している。高周波電源2は、交流商用電源等から受電盤6を介して得た電流を、所定周波数の高周波に変換して加熱コイル1に供給する手段であり、サイリスタインバータ式やトランジスタインバータ式等のものが使用される。高周波電源2と加熱コイル1との間には電流変成器(図示せず)を介在させる。
加熱コイル1は、円筒形の単巻きのものであって、内部に焼入冷却液の流路7を有し、かつ内径側へ焼入冷却液を吐出させる吐出孔8が内径側の壁面に設けられている。加熱コイル1の断面形状は、同図に示すように長方形ないし正方形状とされる。加熱コイル1の外周面における周方向の複数箇所に、焼入冷却液入口となるパイプ状の接続口9が設けられている。この接続口9に、焼入冷却液供給装置4から加熱コイル1の冷却およびワークWの冷却たのための焼入冷却液が、所定のタイミングで供給される。
加熱コイル1は、図2に斜視図で示すように、分割部分となる円周方向の両端に一対の端子板10を有し、2枚の端子板10の間に絶縁板11を挟み込んだものとされている。これら端子板10の間に、高周波電源2が前記電流変成器を介して接続される。
図1において、ワーク支持手段3は、ワークWを載せる下側支持部材13と、ワークWの上面を押える上側支持部材12とを有し、上下いずれかの支持部材12,13をモータ等の駆動源14で回転させることにより、ワークWを回転させる構成としてある。下側支持部材13および上側支持部材12は、加熱コイル1と同心位置で軸受(図示せず)等により回転自在に支持されている。上下の支持部材12,13は、ワークWとの接触面積ができるだけ少なくできるように、円周方向の複数箇所(例えば3箇所)に等配された突部12a,13aを介してワークWを支持するものとしてある。ワーク支持手段12,13の材質は、セラミックス等である。
上下の支持部材12,13は、いずれか一方または双方が昇降可能とされ、互いに上下に離れることにより、ワークWの出し入れが可能とされている。
なお、ワーク支持手段3に対してワークWを自動で出し入れするローディク装置(図示せず)を設けても良い。
なお、ワーク支持手段3に対してワークWを自動で出し入れするローディク装置(図示せず)を設けても良い。
焼入制御装置5は、高周波熱処理装置の全体を制御する装置であり、コンピュータ,電子回路等により構成される。焼入制御装置5は、高周波電源2を制御する電源制御手段21と、焼入冷却液供給装置4を制御する冷却液制御手段22と、ワーク支持手段3を制御するワーク支持系制御手段23とを備える。
電源制御手段21は、温度設定手段25に設定された目標温度まで加熱し、その温度を所定時間維持するように、高周波電源2の出力する電力を制御するものとされている。電源制御手段21は、フィードバック制御部24を有し、ワークWの温度を実測する温度測定手段28の測定温度に応じ、加熱コイル1の電力、つまり高周波電源2の出力する電力をフィードバック制御するものとされている。温度測定手段28には、放射温度計等が用いられる。温度測定手段28による温度検出は、連続的に行うようにしても、また所定のサンプリング周期で離散的に行うようにしても良い。サンプリング値は平均化してフィードバック制御部24に入力される。
フィードバック制御部24は、比例制御(P制御),比例微分制御(PD制御),およびPID制御を切り換えて可能のものとされ、温度測定手段28の測定温度に応じてその制御形式を切り換える制御形式切換手段26が設けられている。PID制御は、比例動作,積分動作,および微分動作を組み合わせた制御である。
制御形式切換手段26は、フィードバック制御部24による制御を、温度測定手段で測定される温度が、加熱開始から鋼材のA1変態点付近に設定される第1の設定温度T1に達するまでは比例制御とし、第1の設定温度T1に達した後、目標温度T3の付近に設定される第2の設定温度T2に達するまでは比例微分制御とし、第2の設定温度T2に達した後は、目標温度T3に維持されるようにPID制御を行うものとしてある。
なお、フィードバック制御部24による制御の目標値は、この例では上記目標温度T3であり、一定値であるが、この一定値に昇温させるまでの間につき、温度設定手段25により、所定の傾斜直線または曲線で目標値を与えるようにしてもよい。
なお、フィードバック制御部24による制御の目標値は、この例では上記目標温度T3であり、一定値であるが、この一定値に昇温させるまでの間につき、温度設定手段25により、所定の傾斜直線または曲線で目標値を与えるようにしてもよい。
目標温度T3は均一加熱温度とされる目標の最高加熱温度(オーステナイト化温度)であり、例えば850℃程度に設定される。第1の設定温度T1は、A1変態点(725〜730℃)の付近の数十度程度の範囲内であれば良く、その上下のいずれであって良い。第1の設定温度T1は、A2変態点(キュリー点)よりも高くても良い。第2の設定温度T2は、目標温度T3よりも低い値で、目標温度T3の付近の範囲(例えば目標温度T3に対して数度ないし数十度低い範囲)とされる。第2の設定温度T2は、目標温度T3と同じとしても良いが、比例制御の定常偏差が低い側に生じる場合を考慮すると、PID制御への確実な切り替わりのために、目標温度T3より低い値とすることが好ましい。
制御形式切換手段26は、例えば、PID制御を行うようにしたフィードバック制御部24に対して、各制御パラメータ、つまり比例制御のゲインKP ,積分時間TI ,および微分時間TD の値を切り換えることで、上記3種類の制御形式に切り換えるものとしても良い。各制御パラメータの値は、ワークWの形状,寸法,材質や、その他の各条件に応じて適宜調整する。
なお、制御形式切換手段26は、加熱開始から第1の設定温度T1までは、フィードバック制御部24による制御を行わずに、電源制御手段21に、例えば最大電力等による一定電力の開ループ制御を行わせ、第1の設定温度T1に達したときに、フィードバック制御部24による比例微分制御を開始させるものとしても良い。
なお、制御形式切換手段26は、加熱開始から第1の設定温度T1までは、フィードバック制御部24による制御を行わずに、電源制御手段21に、例えば最大電力等による一定電力の開ループ制御を行わせ、第1の設定温度T1に達したときに、フィードバック制御部24による比例微分制御を開始させるものとしても良い。
図4は、フィードバック制御部24のPID制御を行うブロック線図の一例を示す。同図において、SVは目標温度、PVは温度測定値、G(s)はプロセスの伝達関数、sはラプラス演算子である。
フィードバック制御部24には、例えば図5のような電流マイナーループ27を加えても良く、これより応答性,非線形性が改善される。
また、図6のように、フィードバック制御部24の前段にノッチフィルタ29を設けても良い。このノッチフィルタ29は、所定時間幅内の温度変動成分を除去するフィルタである。
また、図6のように、フィードバック制御部24の前段にノッチフィルタ29を設けても良い。このノッチフィルタ29は、所定時間幅内の温度変動成分を除去するフィルタである。
上記構成の高周波焼入装置による熱処理過程を説明する。加熱コイル1内に、ワーク支持手段3の上下の支持部材12,13で挟み込むようにワークWを設置し、支持部材12,13と共に駆動源14でワークWを回転させながら、加熱コイル1に高周波電源2から高周波電力を供給する。加熱コイル1に高周波電流が流れることにより、交番磁束が発生し、ワークWが誘導加熱される。すなわち、ワークWを通る磁束の変化によるヒステリシス損や渦電流損等により発熱現象が生じる。ワークWの温度が目標温度T3まで昇温すると、その温度T3を一定時間維持した後、加熱コイル1内に焼入冷却液を供給して吐出孔8から吐出させ、ワークWを急冷する。これによりワークWが焼入される。この焼入は、例えばワークWの表面部だけでなく芯まで全体に渡るように行う。
ワークWの加熱時は、電源制御手段21により次のように温度制御される。加熱開始からA1変態点付近の第1の設定温度T1に達するまでは、比例制御、または開ループ制御とされる。A1変態点までは、生産性向上等のために、早く昇温させる必要があり、またこの温度領域では品質に対する温度制御の必要性が少ないため、比例制御または開ループ制御とし、早く温度上昇させることが好ましい。
第1の設定温度に達すると、比例微分制御(PD制御)に切替えられ、目標温度付近の第2の設定温度T2になるまでは比例微分制御とされる。A1変態点まで加熱されると、共析変態のために温度が平衡状態となるが、潜熱として熱がワーク内に蓄えられることになる。そのため、比例制御に微分制御を加えることで応答性を高め、目標温度T3に達するときのオーバシュート、つまり図3に曲線bで示すような目標温度T3を超える温度になることを防ぐ。オーバシュートが生じると、目標温度T3よりも高い温度に加熱されることになって、部分的にオーステナイト粒の成長の進行により靱性等の焼入品質が低下することがある。この焼入品質の低下が比例微分制御によって回避される。なお、オーバシュードの防止のために、単なる比例制御やPID制御において、比例制御のゲインを小さくしたのでは、同図に曲線cで示すように、目標温度T3に到達するまでに時間がかかり、加熱の効率が低下する。
目標温度T3付近の第2の設定温度T2に達すると、それ以後はPID制御に切替えられる。すなわち、比例、積分、および微分の各動作を行う制御とされる。積分動作を加えることで、目標温度に対する定常偏差が改善され、正しく目標温度に制御できる。また、PID制御とするため、比例積分制御に比べて応答性に優れ、各種の変動要因に対して目標温度を精度良く維持することができる。
このように、比例制御(または開ループ制御)、比例微分制御、PID制御を、温度上昇に応じて切り換えることで、図3に温度変化曲線aで示すように、ワークの特性変化に追従した最適な制御が行え、焼入品質の向上、生産性の向上が図れる。特に、A1変態点付近の第1の設定温度から、目標温度T3の付近の第2の設定温度T2までは、比例微分制御とするため、PID制御に比べて応答性に優れ、確実なオーバーシュートの防止が行えて、オーステナイト粒の増大による靱性等の低下防止の効果に優れる。
また、リング状品のワークWは、回転させながら加熱し、また熱が逃げないようにワーク支持手段3は円周方向の複数箇所で局部的に接触するものとしたため、温度検出手段8の測定値は、ワークWのワーク支持手段3と接する部位の通過時に、検出値が低くなり、ワークWの回転速度(例えば数rpm)に同期した温度低下のリプルが乗る。このような局部的な温度低下部分に応答して加熱温度を制御すると、温度が不安定とする。そのため図6のノッチフィルイタ29により、このような局部的な温度低下成分は除去してフィードバック制御部24に温度測定値を入力するようにしており、これにより安定した温度制御が可能となる。
なお、上記実施形態は、ワークWを外周から加熱する場合につき説明したが、この発明の高周波焼入装置は、例えば図7に示すように、ワークWAに内周から加熱する装置としても良い。この場合のワークWAは、例えば転がり軸受の外輪である。加熱コイル1Aには、図8に示すように内側に端子部10Aが設けられた単巻きコイルを使用する。
また、この発明は、ワークWがリング状品の場合に限らず、鋼製の機械部品一般や、そ他の鋼材の焼入に適用することができる。
さらに、上記各実施形態は、加熱コイル1,1Aから焼入冷却液を吐出して一発焼入を行うようにしたが、加熱コイル1,1AではワークWの加熱だけを行い、焼入冷却液による冷却は加熱コイル1,1Aの外部で行うようにしても良い。
また、この発明は、ワークWがリング状品の場合に限らず、鋼製の機械部品一般や、そ他の鋼材の焼入に適用することができる。
さらに、上記各実施形態は、加熱コイル1,1Aから焼入冷却液を吐出して一発焼入を行うようにしたが、加熱コイル1,1AではワークWの加熱だけを行い、焼入冷却液による冷却は加熱コイル1,1Aの外部で行うようにしても良い。
1,1A…加熱コイル
2…高周波電源
3…ワーク支持手段
4…焼入冷却液供給装置
5…焼入制御装置
21…電源制御手段
24…フィードバック制御部
25…温度設定手段
26…制御形式切換手段
28…温度測定手段
T1…第1の設定温度
T2…第2の設定温度
T3…目標温度
W,WA…ワーク
2…高周波電源
3…ワーク支持手段
4…焼入冷却液供給装置
5…焼入制御装置
21…電源制御手段
24…フィードバック制御部
25…温度設定手段
26…制御形式切換手段
28…温度測定手段
T1…第1の設定温度
T2…第2の設定温度
T3…目標温度
W,WA…ワーク
Claims (4)
- 加熱コイルと、この加熱コイルに高周波電流を給電する高周波電源と、ワークを加熱コイルに対して支持するワーク支持手段と、加熱中のワークの温度を測定する温度測定手段と、この温度測定手段の測定値に応じて前記高周波電源により加熱コイルに給電する電力をフィードバック制御する電源制御手段とを備え、この電源制御手段は、加熱開始から、前記温度測定手段で測定される温度がA1変態点付近に設定される第1の設定温度に達するまでは比例制御または開ループ制御とし、第1の設定温度に達した後、目標温度付近に設定される第2の設定温度に達するまでは比例微分制御とし、第2の設定温度に達した後は目標温度に維持されるようにPID制御を行うものとしたことを特徴とする高周波焼入装置。
- 請求項1において、前記加熱コイルは単巻きのものであり、前記ワークが加熱コイルの内周または外周に配置されるリング状品である高周波焼入装置。
- 請求項2において、前記ワークが転がり軸受の軌道輪である高周波焼入装置。
- 請求項2または請求項3において、前記ワーク支持手段が、ワークの周方向複数箇所に局部的に接して支持するものであって、かつ加熱時にワークを回転させるものであり、前記温度測定手段は回転するワークを定位置で測定するものであり、前記電源制御手段は前記フィードバック制御を行うフィードバック制御部の前段に、ノッチフィルタを設けた高周波焼入装置。
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