WO2012137960A1 - 誘導加熱装置、誘導加熱設備、誘導加熱方法及び熱処理方法 - Google Patents

誘導加熱装置、誘導加熱設備、誘導加熱方法及び熱処理方法 Download PDF

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Abstract

 大型のワークであっても、ワークの被加熱領域全体を略均一に所定の高温まで容易に昇温でき、しかも加熱時にワークの不均一な変形が生じても均一に加熱し得る誘導加熱装置及び誘導加熱方法である。ワークWに一方向に延びて被加熱領域H1,H2が設定され、被加熱領域H1,H2が誘導加熱されたときに被加熱領域H1,H2の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なるワークWを誘導加熱する際、被加熱領域H1,H2の一部に対向する加熱コイル451と、ワークWと加熱コイル451とを一方向に沿って相対移動させる相対移動手段と、を備えており、加熱コイル451が加熱期間中の被加熱領域H1,H2に対応するように配置される。

Description

誘導加熱装置、誘導加熱設備、誘導加熱方法及び熱処理方法
 本発明は、ワークを誘導加熱する誘導加熱装置、誘導加熱設備、誘導加熱方法、及び熱処理方法に関する。
 一方向に延びる被加熱領域が設定されたワークを、加熱コイルにより誘導加熱することが行われている。例えば環形状を有する大きなワークを加熱する場合、ワークの一方向に延びる被加熱領域の一部に加熱コイルを対向させて、例えばワークを回転させることで、このワークの被加熱領域の全長を加熱する熱処理装置が提案されている。
 下記特許文献1では、大きな軸受軌道輪のようなリング状ワークを加熱可能な高周波熱処理装置が開示されている。この技術では、複数の馬蹄形の加熱コイルをリング状ワークの円周方向の複数箇所に配置し、リング状ワークを回転させながら複数の加熱コイルにより誘導加熱し、加熱後に各馬蹄形の加熱コイルから冷却液を吐出して急冷することで熱処理している。
 下記特許文献2では、環状部品全体に高周波熱処理を行う装置が開示されている。この技術では、環状部品の外径面又は内径面を位置決めローラで位置決めし、環状部品の内周面、外周面、側面等の一部にそれぞれ加熱コイルを配置し、環状部品を回転させつつ誘導加熱し、その後急冷することで熱処理している。
 誘導加熱装置においては、一般に、加熱コイルに電力を投入するための誘導加熱装置として次のようなものが使用されている。即ち、誘導加熱装置は、商用電力を一旦直流に変換しその後所定の周波数の交流電流に変換するインバータと、このインバータに接続される一次巻き線と二次巻き線により構成される変成器と、一次巻き線に対して並列に接続される整合器と、二次巻き線に対して並列接続される加熱コイルとを備え、加熱コイルとワークとを誘導結合し、インバータと加熱コイルとのマッチングをとっている。
 特許文献3に開示されている誘導加熱装置は、電源として自制式サイリスタインバータにキャパシタ、整合変圧器を接続し、その整合変圧器に、被加熱体の昇温加熱時における適正電圧、適正周波数選択用のタップ群及び被加熱体の均熱加熱時における適正電圧、適正周波数選択用のタップ群を接続し、それぞれのタップ群を切替スイッチを介して加熱コイルに接続して構成している。
特開2005-325409号公報 特開2009-287074号公報 特公昭63-42830号公報
 しかしながら、従来の誘導加熱による加熱装置では、大型のワークを焼入処理する場合に、被加熱領域を所望の加熱温度まで昇温させることが容易でなかった。大型のワークの場合、被加熱領域の全体に対向するように加熱コイルを配設することは、著しくコストが嵩んで実用的でない。そのため被加熱領域の一部に対向する加熱コイルを用いて加熱すると、被加熱領域に対する鋼材量が大きいため、長時間加熱することが必要となることに加え、経時的にワークの熱膨張による変形量が大きくなり、最適な加熱条件を保ち難い。
 特に、ワークの一方向に連続した被加熱領域の一方の縁側と他方の縁側とで加熱時の熱膨張による変形量が異なる場合、ワークが不均一に変形する。そのため大型のワークでは加熱コイルにより被加熱領域全体を均一に所定の高温まで昇温することが困難であった。
 そこで、本発明は、大型のワークであっても、ワークの被加熱領域全体を略均一に所定の高温まで容易に昇温でき、しかも加熱時にワークの不均一な変形が生じても均一に加熱し得る誘導加熱装置及び誘導加熱方法を提供することを第1の目的とする。
 また、半径が1m以上、例えば3mといった大きなワークを誘導加熱するために、ワークの加熱領域の一部を局部的に誘導加熱しつつワークそれ自体を回転することでワークの加熱領域全体を加熱する手法が採用されている。そのため、従来数秒といった加熱時間では加熱領域の温度が上がらず、例えば数分単位の加熱時間が必要となる。
 しかしながら、長時間加熱すると、インバータから見た出力インピーダンスが時間と共に変化し、インバータから整合器及び変成器を介在して加熱コイルに電力が投入され難くなり、ワークを所定の温度まで加熱することができなくなる。
 そこで、本発明では、比較的長時間でもワークを所定の温度まで誘導加熱することができる加熱装置、加熱設備及び加熱方法を提供することを第2の目的とする。
 また、環状に設けられた被加熱領域を熱処理するには、ワークの全面やワークの被加熱領域の全てを纏めて加熱し、全体を急冷することで熱処理していた。このような熱処理方法では、例えば環状の被加熱領域を複数有するワークを熱処理する場合、複数の被加熱領域を一度に加熱して冷却しているため、ワークの形状や大きさに応じた加熱コイルが多数種類必要となり、また加熱コイルの形状や構造、ワークの支持構造などが複雑になって、装置構成が複雑であった。
 しかも、複数の被加熱領域を一度に加熱して冷却する構造では、加熱コイルにより加熱する面積が広いため、その分大きな電力が必要となる。大きなワークの場合、十分な電力を給電しなければ、所望の温度まで被加熱領域を昇温することができない。十分な電力を給電するとすれば、ワークの大きさに応じた大電力が必要になり、電源設備が大型化していた。
 一方、環状の被加熱領域を複数有するワークに対して、被加熱領域毎に加熱するとすれば、一部の被加熱領域に熱処理を施すことで、他の部位と異なる組織がワークに無端環状に形成される。そのため歪みが生じ易く、熱処理後に焼割れや変形などの熱処理欠陥が生じる。特に、大型のワークの場合には、局部的な環状の領域にそのような変態組織が生じると変形や応力もワークの大きさに応じて大きくなるため、熱処理欠陥が生じ易いことが明らかになった。
 そこで、本発明は、ワークに設けた環状の複数の被加熱領域を簡素な構成で熱処理することが可能な熱処理方法を提供することを第3の目的とし、ワークに環状の被加熱領域を設けて熱処理領域毎に熱処理を施す際、熱処理欠陥の発生を防止できる熱処理方法を提供することを第4の目的とする。
 上記第1の目的を達成する本発明の誘導加熱装置は、ワークに一方向に延びて被加熱領域が設定され、加熱領域が誘導加熱されたときに被加熱領域の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なるワークを誘導加熱する加熱装置であって、被加熱領域の一部に対向する加熱コイルと、ワークと加熱コイルとを一方向に沿って相対移動させる相対移動手段と、を備え、加熱コイルが加熱期間中の被加熱領域に対応するように配置されている。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、好ましくは、加熱コイルの被加熱領域に対向する面が加熱期間中に被加熱領域に沿うように、加熱コイルを一方向に沿う軸周り変向する変位手段を備えている。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、変位手段には、好ましくは、変位手段の動作を制御して、加熱期間中に加熱コイルの被加熱領域に対向する面と被加熱領域との間の角度の差を小さく又は無くするように調整する姿勢制御部が設けられ、姿勢制御部は、ワークの加熱条件を入力する設定入力部と、被加熱領域の設定加熱状態における各加熱コイルの被加熱領域に対向する面と加熱領域との間の相対角度を演算する演算処理部と、被加熱領域の加熱状態が設定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部と、設定加熱状態に達したときに変位手段を駆動する駆動制御部と、を備えている。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、演算処理部は、予め設定されたシミュレーション処理により加熱条件に基づいて設定加熱状態における相対角度を演算して加熱コイルの被加熱領域に対向する面と被加熱領域との間の角度を演算するようにできる。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、加熱期間中にワークの被加熱領域以外の表面位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果に基づいてワークと加熱コイルとの相対位置を変位させる変位手段と、を備えていてよく、変位手段は、加熱期間中に検出結果から得られた測定位置を少なくともワーク形状に基づいて補正し、補正により得られた補正位置に対応するようにワークと加熱コイルとの相対位置を変位させる。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、測定位置は基準位置からの変位として測定され、補正位置は測定された変位を補正した補正変位であり、変位手段は、補正変位に対応するようにワークと加熱コイルとの相対位置を変化させるのがよい。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、変位手段には、好ましくは、その動作を制御する姿勢制御部が設けられ、姿勢制御部は、測定位置を少なくともワーク形状に対応した補正係数により補正して補正位置を得ると共に、補正位置に対応するように変位手段の動作を制御するのがよい。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、姿勢制御部は、ワークの加熱条件を入力する設定入力部と、被加熱領域の設定加熱状態における補正係数を記憶する記憶部と、被加熱領域の加熱状態が設定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部と、測定位置と補正係数から補正位置を演算する演算処理部と、補正位置に対応するように変位手段を駆動する駆動制御部と、を備えているのがよい。
 第1の目的を達成する誘導加熱装置において、演算処理部は、予め設定されたシミュレーション処理により加熱条件に基づいて設定加熱状態における補正係数を演算し、記憶部は演算部で得られた補正係数を設定加熱状態に対応させて記憶するのがよい。
 第1の目的を達成する誘導加熱方法は、ワークに一方向に延びて被加熱領域が設定され、加熱領域を誘導加熱したときに被加熱領域の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なるワークを誘導加熱する際、被加熱領域の一部に加熱コイルを対向させ、ワークと加熱コイルとを一方向に沿って相対移動させつつ加熱コイルによりワークを加熱する加熱工程を備え、加熱工程では加熱コイルを加熱期間中の被加熱領域に沿うように配置する。
 第1の目的を達成する誘導加熱方法では、加熱期間中に加熱コイルの被加熱領域に対向する面を被加熱領域に沿わせるのがよい。
 第1の目的を達成する誘導加熱方法では、加熱期間中にワークの被加熱領域以外の表面位置を検出し、検出結果から得られた測定位置を少なくともワーク形状に基づいて補正し、補正により得られた補正位置に対応するようにワークと加熱コイルとの相対位置を変位させるのがよい。
 第1の目的を達成する他の誘導加熱装置は、一方向に延びて被加熱領域が設定されたワークを誘導加熱する加熱装置であって、被加熱領域の一部に対向する複数の加熱コイルと、ワークと複数の加熱コイルとを一方向に沿って相対移動させる相対移動手段と、加熱コイルの位置を被加熱領域の幅方向に別々に変位させる変位手段と、を備え、変位手段により各加熱コイルを変位させることで、複数の加熱コイルと被加熱領域との対向面積が被加熱領域の幅方向に変化するように調整して、複数の加熱コイルにより被加熱領域を加熱する。
 第1の目的を達成する他の誘導加熱装置では、ワークは、加熱領域を誘導加熱したときに被加熱領域の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なるものであり、変位手段には変位手段の動作を制御する姿勢制御部が設けられ、姿勢制御部は、加熱期間中に被加熱領域と各加熱コイルとの間のギャップに対応させて各加熱コイルの位置を変位させるのがよい。
 第1の目的を達成する他の誘導加熱装置では、複数の加熱コイルに供給する高周波電力を別々に調整する電力調整手段を備え、変位手段により各加熱コイルの位置を調整すると共に、電力調整手段により各加熱コイルに給電する高周波電力を異ならせて、複数の加熱コイルにより被加熱領域を加熱するのがよい。
 第1の目的を達成する他の誘導加熱装置では、姿勢制御部は、好ましくは、ワークの加熱条件を入力する設定入力部と、被加熱領域の想定加熱状態における加熱領域と複数の加熱コイルとの間のギャップに対応した複数の加熱コイルの配置を決定する演算処理部と、被加熱領域の加熱状態が想定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部と、想定加熱状態に達したときに複数の加熱コイルの配置に基づいて変位手段を駆動する駆動制御部と、を備えている。
 第1の目的を達成する他の誘導加熱装置では、演算処理部は、予め設定されたシミュレーション処理により加熱条件に基づいて想定加熱状態におけるギャップを演算して複数の加熱コイルの配置を決定するようにしてもよい。
 第1の目的を達成する他の誘導加熱方法は、一方向に延びて被加熱領域が設定されたワークを誘導加熱する加熱方法であって、被加熱領域の一部に加熱コイルを対向させ、ワークと加熱コイルとを一方向に沿って相対移動させつつ加熱コイルによりワークを加熱する加熱工程を備え、加熱期間中に複数の加熱コイルを被加熱領域の幅方向に別々に変位させることで、複数の加熱コイルと被加熱領域との対向面積が被加熱領域の幅方向に変化するように調整する。
 上記第2の目的を達成する誘導加熱装置は、加熱コイルに並列接続される複数の変成器と、複数の変成器の何れかに接続される複数の整合器と、商用電圧を直流電圧に変換する順変換部、及び順変換部により変換された直流電圧を指定の周波数の電圧に変換する逆変換部を有するインバータと、順変換部を制御する順変換制御部、及び逆変換部を制御して各々指定された周波数の電圧に変換させる複数の逆変換制御部を有するインバータ制御部と、加熱コイルと複数の変成器の何れかとを接続し、複数の変成器の何れかと複数の整合器の何れかとを接続し、複数の整合器の何れかとインバータとを接続し、複数の逆変換制御部の何れかと逆変換部とを接続するスイッチ群と、誘導加熱時間を複数に区分して区分毎に、インバータから出力される電圧の周波数の設定情報と複数の整合器及び複数の変成器の選択による組み合わせで構成されるマッチング回路の選択情報とを誘導加熱条件として設定する設定部と、設定部で設定された誘導加熱条件に従って、区分毎に、複数の逆変換制御部の何れかを選択し逆変換部を制御して指定の周波数の電圧を出力すると共に、スイッチ群により一の整合器をインバータに接続し、この一の整合器を一の変成器に接続し、この一の変成器を加熱コイルに接続する切替制御部と、を備える。
 第2の目的を達成する誘導加熱装置では、インバータは、出力インピーダンスを計測するインピーダンス計測部を備え、切替制御部は、インピーダンス計測部から入力される計測結果が許容範囲を超えた場合には、設定部に設定されている誘導加熱条件のうち次の区分に関するものを参照することにより、複数の逆変換制御部の何れかを選択してインバータから出力される電圧の周波数を変化させ、かつスイッチ群を切り替えてインピーダンス整合をとるのがよい。
 上記第2の目的を達成する誘導加熱設備は、環状体でなるワークに沿って周状に間隔をおいて配備した複数の誘導加熱装置と、誘導加熱条件を設定する設定部と、切替制御部と、を備え、複数の誘導加熱装置が、それぞれ、ワークの加熱領域に対向するように配置される加熱コイルと、加熱コイルに並列接続される複数の変成器と、複数の変成器の何れかに接続される複数の整合器と、商用電圧を直流電圧に変換する順変換部、及び順変換部により変換された直流電圧を指定の周波数の電圧に変換する逆変換部を有するインバータと、順変換部を制御する順変換制御部、及び逆変換部を制御して各々指定された周波数の電圧に変換させる複数の逆変換制御部を有するインバータ制御部と、加熱コイルと複数の変成器の何れかとを接続し、複数の変成器の何れかと複数の整合器の何れかとを接続し、複数の整合器の何れかとインバータとを接続し、複数の逆変換制御部の何れかと逆変換部とを接続するスイッチ群と、を備え、設定部が、誘導加熱装置毎にかつ誘導加熱時間を複数に区分して区分毎に、インバータから出力される電圧の周波数の設定情報と、複数の整合器及び複数の変成器の選択による組み合わせで構成されるマッチング回路の選択情報と、を誘導加熱条件として設定し、切替制御部が、設定部で設定された誘導加熱条件に従って、誘導加熱装置毎にかつ区分毎に、複数の逆変換制御部の何れかを選択して逆変換部を制御して指定の周波数の電圧を出力すると共に、スイッチ群により一の整合器をインバータに接続し、この一の整合器を一の変成器に接続し、この一の変成器を加熱コイルに接続する。
 上記第2の目的を達成する誘導加熱方法は、ワークを移動させながらワークを誘導加熱する際、ワークの加熱温度又は加熱時間に応じてワークに流す誘導電流の周波数を異ならせ、周波数の変化に併せて整合器及び変成器の組み合わせを交換することで加熱する。
 上記第2の目的を達成する他の誘導加熱方法は、ワークに沿って複数の加熱コイルを配置し、ワークを移動しながら複数の加熱コイルにより誘導加熱をする際、ワークの加熱温度又は加熱時間に応じてワークに流す誘導電流の周波数を異ならせ、周波数の変化に併せて整合器及び変成器の組み合わせを交換することで加熱する。
 上記第3及び第4の目的を達成する本発明の熱処理方法は、環形状のワークに沿う環状の被加熱領域を複数設け、被加熱領域毎に順次熱処理を施す方法であって、第1被加熱領域を加熱する第1加熱工程と、加熱された第1被加熱領域を急冷する第1冷却工程と、第1冷却工程後に第1被加熱領域を加熱して冷却する焼戻工程と、焼戻工程後に第2被加熱領域を加熱する第2加熱工程とを備える。
 第3及び第4の目的を達成する熱処理方法では、ワークは、被加熱領域が加熱されたときに被加熱領域の一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異なるものであるのがよい。
 第3及び第4の目的を達成する熱処理方法において、第1加熱工程及び焼戻工程では、第1被加熱領域を同じ加熱コイルで誘導加熱する。
 第3及び第4の目的を達成する熱処理方法において、第1加熱工程及び第2加熱工程では、第1被加熱領域と第2被加熱領域とを同じ加熱コイルで誘導加熱するのがよい。
 第3及び第4の目的を達成する熱処理方法では、第1被加熱領域と第2被加熱領域とが面対称形状を有し、焼戻工程後にワークを反転させるのがよい。
 本発明の第1の目的を達成する誘導加熱装置及び誘導加熱方法によれば、加熱コイルを加熱期間中の被加熱領域に対応するように配置したり、幅方向における複数の加熱コイルの配置分布を調整したりするので、ワークが誘導加熱されたときに、被加熱領域の一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異なっても、被加熱領域全体を略均一に所定の温度まで昇温することができる。
 本発明の第2の目的を達成する誘導加熱装置、誘導加熱設備及び誘導加熱方法によれば、ワークの加熱温度又は加熱時間に応じて、インバータから出力される周波数を異ならせ、かつ、それに併せて整合器及び変成器の組み合わせを交換することにより、インピーダンス整合をとり、もってワークに十分な電力を供給して所望の温度まで昇温することができる。特に、ワークの加熱領域の昇温により透磁率に適合させインピーダンス整合がとれる。
 本発明の第3の目的を達成する熱処理方法によれば、環形状のワークの複数箇所にワーク形状に沿う環状の被加熱領域を設けて複数の被加熱領域を順次熱処理するので、ワークの大きさや形状にかかわりなく、被加熱領域の形状に応じた構成を有する加熱部により加熱することができる。そのためワークの大きさや形状に依存しない簡素な加熱部を用いて被加熱領域を加熱でき、簡素な構成の熱処理装置により熱処理できる熱処理方法を提供することができる。
 しかもこの熱処理方法によれば、環形状のワークの複数箇所にワーク形状に沿って局部的に設けた環状の被加熱領域を順次熱処理する際、第1被加熱領域を第1加熱工程及び第1冷却工程により熱処理した後、焼戻工程により第1被加熱領域を加熱及び冷却してから第2被加熱領域を加熱している。そのため第2被加熱領域を加熱するまでの間や加熱中などに、例えば変形や焼割れのような熱処理欠陥の発生を低減又は防止できる。
本発明の加熱対象のワークを示す部分断面図である。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の平面図である。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の側面図であり、手前側に設けられた加熱部を省略して示している。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の治具を搬送ローダに連結した状態を示すように一部を断面で表した側面図である。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の操作部におけるメインメニューの画面を示す図である。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の操作部における携帯端末器を示す図である。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の加熱セクションを示す概略平面図である。 (a)は実施形態の加熱セクションにおける加熱部及び変位手段の側面図、(b)は背面図、(c)は部分平面図である。 本発明の実施形態の加熱セクションにおける位置検出部の部分側面図である。 本発明の実施形態に係る冷却セクションの部分断面図である。 本発明の実施形態に係る熱処理装置の給電設備に関する回路図である。 給電設備の操作部の入出力画面に表示されるステップデータ設定画面を模式的に示す図である。 図12に示すステップデータ設定画面に続いて表示される回路設定条件の設定画面を模式的に示す図である。 図11とは異なる回路構成において、加熱の途中でインバータからの出力の周波数を変えないで比較的短時間で誘導加熱を行ったときのインバータの出力特性を模式的に示す図である。 ワークの不均一な変形を説明するための概略断面図であり、変形を誇張して示している。 本発明の実施形態に係る姿勢制御部を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る加熱工程を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る熱処理装置におけるワークの加熱状態を示す概略断面図であり、変形を誇張して示している。 本発明の実施形態に係る熱処理装置におけるコイルの配置を示す展開図である。 (a)は実施形態の熱処理装置における加熱コイルを示す正面図、(b)は変形例の加熱コイルにおけるワークとの対向部分の形状を示す部分正面図、(c)は変形例の加熱コイルにおけるワークとの対向部分の形状を示す部分正面図である。 本発明の実施形態に係る第1被加熱領域及び第2被加熱領域を熱処理する工程を示すフローチャートである。 (a)~(d)は本発明の実施形態に係る第1被加熱領域の熱処理手順を説明する図である。 (a)~(d)は本発明の実施形態に係る第2被加熱領域の熱処理手順を説明する図である。
 以下、本発明の実施の形態について図を用いて詳細に説明する。
 本実施形態では、大型の円環形状の加熱対象物を加熱及び冷却して熱処理する例を用いて説明する。
 ここで熱処理とは、ワークWに加熱と冷却とを組み合わせて各種の条件で施すことで、ワークWの組織を変化させて硬度や靱性のような性質を変化させる処理であり、例えば焼入処理が含まれる。
[第1実施形態]
[ワーク]
 まず本発明の加熱対象であるワークについて説明する。
 加熱対象のワークは、鋼材のような熱処理可能な材料からなり、表面側のみが加熱されるものであっても、内部まで加熱されるものであってもよい。ワークの表面の一部には加熱される面からなる被加熱領域が、一方向に略一定形状で延びて設定されている。特に被加熱領域の両側縁間の距離である幅に比べ、被加熱領域の全長が長いワーク形状のものに適用するのが好適である。ここで一方向とは、有端のワークの場合、両端間に延びる直線、波線、曲線等に沿う方向であり、環形状のワークの場合、環形状に沿う方向である。
 ワークの形状は任意であるが、被加熱領域が誘導加熱されたときに、被加熱領域の幅方向における一方の縁側と他方の縁側とで熱膨張による変形量が異なる形状のワークに適している。例えば被加熱領域と直交する断面形状において、被加熱領域の一方の縁側と他方の縁側とで大きく形状が異なるような場合には、被加熱領域の両縁側で誘導加熱されたときの熱膨張による変形量が異なる。
 本実施形態のワークWは、図1に示すように、環形状を有して表面に被加熱領域H1,H2が局部的に2カ所以上に設けられている。各被加熱領域H1,H2はそれぞれワークWの環形状に沿って環状に設けられている。
 このワークWは円環形状を有し、断面形状では基部W1と基部W1から内側に突出する突出部W2とを備え、突出部W2に内側に向けて逆方向に傾斜する傾斜面W3を有している。一方の傾斜面W3には第1被加熱領域H1が、他方の傾斜面W3には第2被加熱領域H2が、それぞれ環形状に沿って無端状に設けられている。第1及び第2被加熱領域H1,H2は、表面側のみが加熱される領域であっても、内部まで加熱される領域であってもよいが、ここでは表面側のみが加熱される領域となっている。
 このワークWは直径が1m以上、ここでは3m以上の円環形状を有した大型の旋回輪や大型の軸受などを構成する外輪の例である。
 このワークWでは、第1及び第2被加熱領域H1,H2はそれぞれ互いに略平行に略一定形状で延びている。第1被加熱領域H1と第2被加熱領域H2とは面対称形状を有し、ワークWの一方の端面と他方の端面を反転させることで、第1被加熱領域H1と第2被加熱領域H2とが同じ位置に配置される形状となっている。
 また被加熱領域H1,H2の一方又は双方が誘導加熱されると、被加熱領域H1,H2の幅方向における一方の縁側と他方の縁側とで熱膨張による変形量が異なる形状となっている。被加熱領域H1,H2と直交する断面形状において、被加熱領域H1,H2の一方の縁側と他方の縁側とで大きく形状が異なるため、被加熱領域H1,H2の両縁側で誘導加熱されたときの熱膨張による変形量が異なるからである。
[熱処理装置]
 次に、本実施形態の誘導加熱装置を用いた熱処理装置について説明する。なお本実施形態では、誘導加熱装置と誘導加熱条件を設定する設定部と切換部とを備えた誘導加熱設備についても、理解容易のために誘導加熱装置と称する。
 熱処理装置10は、図2乃至図4に示すように、ワークWを支持する治具100と、ワークWを搬入及び搬出する搬入搬出セクション300と、治具100を吊り下げて搬送する搬送機構200と、治具100に載置されたワークWを回転させつつ加熱する加熱セクション400と、加熱セクション400の下方に設けられた冷却セクション500と、搬入搬出セクション300とは反対側に設けられた部品交換セクション600と、各セクションを駆動するための電気設備と、を備える。
 治具100は、図4に示すように、ワークWを載置するワーク支持部110と、ワーク支持部110の中央に設けられた中央構造部130とを備える。ワーク支持部110は、放射方向に延びる複数の放射架台111の先端側に放射方向に沿って配置された相対移動手段としての回転ローラ112を備える。回転ローラ112は中央構造部130へ入力される駆動力で回転駆動可能である。ワークWは各回転ローラ112を回転させることで環形状に沿って移動可能である。
 搬入搬出セクション300は、図2及び図3に示すように、搬入搬出位置P1でワークWを治具100のワーク支持部110に載置し、吊り下げ位置P2へ移動させて治具100を吊り下げ位置P2に精度よく配置できる構造となっている。
 搬送機構200は、図2及び図3に示すように、各セクションの上方に配設された搬送レール210と、搬送レール210に沿って移動する搬送ローダ部220とを有する。搬送ローダ220は、図4に示すように治具100の中央構造部130に連結可能で、連結した状態で治具100を吊り下げて搬送する構造を有する。搬送ローダ220には回転駆動手段246が設けられている。搬送ローダ220を治具100の中央構造部130に連結することで、回転駆動手段246により治具100の各回転ローラ112が回転駆動可能となる。
 加熱セクション400は、図2及び図3に示すように、治具100を所定位置に配置した状態で、治具100に載置されたワークWを回転させつつ均一に加熱するように本発明を適用した構造となっている。詳細は後述する。
 冷却セクション500は、図3に示すように、加熱セクション400の下方に設けられ、治具100を下降して配置した状態で、ワークWを回転させつつ冷却ジャケット520か冷却液を供給して冷却する。
 部品交換セクション600は、図2及び図3に示すように、部品交換治具620に加熱セクション400や冷却セクション500の部品を支持させて搬送し、各セクションの部品を交換できる。
 電気設備は、全セクションに給電可能に構成されており、全セクションの各動作部位を制御及び操作するための操作部710が設けられている。操作部710は図5に示すようなタッチパネルが設けられ、各セクションのための情報を入力したり、動作を監視することが可能となっている。操作部710のメインメニューには、図5に示すように、各セクションのモニタ、機種選択、加熱条件設定、測定データ、パラメータを入力したり表示したりする画面が選択できる。
 この操作部710は、図6に示すように作業者が容易に持ち運びできる携帯端末器701を備える。この携帯端末器701は操作部710と同じ操作ができるように、各セクションのモニタ、機種選択、加熱条件設定、測定データ、パラメータを入力したり表示したりする画面が選択できる。この携帯端末器701は、熱処理装置10の周囲の複数位置に設けられた接続部にケーブル702を介して有線で接続することで使用する。
 ここでは熱処理装置10の複数の位置に接続部が設けられているため、作業者が熱処理装置10の様々な場所で操作部710の操作パネルまで移動せずに、各種の入力や操作を行うことができる。またケーブル702により有線で接続するため、高周波を用いて熱処理を行う装置であっても、通信障害を防止して正常に操作することができる。
[加熱セクションの全体構成]
 加熱セクション400は、図7に示すように、治具100の放射架台111を下から支持し周方向の移動を規制する治具保持機構410と、治具100に載置されたワークWを加熱する複数の加熱部450と、を備える。治具保持機構410及び加熱部450は、治具100の中心であるワークWの回転中心Cに対して周囲に複数設けられている。ここでは治具100の互いに隣接する放射架台111間にワークWの加熱位置P3が設けられており、各加熱部450は加熱位置P3に対応するように配設されている。
[加熱部]
 各加熱部450は、図7及び図8に示すように、ワークWの表面位置を検出する位置検出手段480と、各加熱位置P3で治具100上に載置されたワークWの被加熱領域H1,H2に対向配置される加熱コイル451と、を有する。さらに各加熱部450は、電気設備の一部からなり加熱部450の各部を制御すると共に加熱コイル451に高周波電力を給電するための給電設備700と、加熱コイル451を接続して支持する支持ボックス452と、変位手段460と、姿勢制御部490と、電力調整手段491と、補助冷却部440と、を備えている。変位手段460は、位置検出手段480の検出結果に基づいて支持ボックス452を変位及び変向させることでワークWに対する加熱コイル451の相対位置を変位させると共に相対角度を変向させる。姿勢制御部490は、変位手段460の動作を制御してワークWと加熱コイル451との相対位置及び相対角度を調整する。電力調整手段491は、給電設備700の一部からなり加熱コイル451に供給される高周波電力を調整する。補助冷却部440は、一方の被加熱領域H1,H2を加熱時に他の部位、特に他方の被加熱領域H1,H2を冷却するように該部位に冷却液を吹き付ける。
[位置検出手段]
 位置検出手段480は、加熱時にワーク表面の位置を検出するものであり、図7に示すように、各加熱位置P3の上流側に配置されている。本実施形態では2つの加熱位置P3毎に、その上流側に配置される治具100の放射架台111と対応する位置に配置されている。
 具体的には、各位置検出手段480は、図9に示すように、加熱冷却架台40の位置検出支柱43上に設けられた位置検出台44に装着されている。各位置検出手段480は、位置検出支柱43に第1進退機構481を介して装着された径方向位置検出具483と、第2進退機構482を介して装着された軸方向位置検出具484と、を備える。径方向位置検出具483と軸方向位置検出具484とは互いに直交方向に配設されている。
 第1及び第2進退機構481,482は、エアーシリンダ等からなる進退用駆動手段485と、進退用駆動手段485のロッド486と平行な複数のガイドロッド487と、を備える。各進退機構481,482は、ロッド486及びガイドロッド487により、各位置検出具483,484の検出方向に沿う倒れが防止されている。
 径方向位置検出具483及び軸方向位置検出具484は、それぞれワークWの表面に当接して転動可能な耐熱性の接触子488と、接触子488をワークW側に付勢しつつ接触子488の進退量を検出する変化量検出部489と、を備える。各変化量検出部489としては、例えばリニアセンサ付エアーシリンダを使用できる。
 加熱時に被加熱領域H1,H2の温度が高温となるため、加熱されている被加熱領域H1,H2以外の位置に接触子488を当接させて検出する。径方向位置検出具483では、接触子488をワークWの外周面の中間部位に当接させ、ワークWの回転中心Cから放射方向に沿うワークWの表面位置を検出する。軸方向位置検出具484では、接触子を治具100に載置されたワークWの上面の外側部位に当接させ、ワークWの回転中心Cの軸線に沿うワークの表面位置を検出する。
 加熱時には、各位置検出手段480では、径方向位置検出具483及び軸方向位置検出具484の接触子488をワークWに当接させる。ワークWが回転すると、表面に接した接触子488が転動しつつワークW表面の変位に応じて進退する。例えばワークWの周方向における任意の位置を基準位置とし、接触子488の進退量を測定することで、ワークWの周方向の各位置における基準位置からの変位量が検出される。ワークWが環状体であるため、ワークWが1回転することで元の位置にもどる。
 このように接触子488の変位量を変化量検出部489において検出することで、ワークW表面の上下方向の変位及び水平方向の変位が検出され、測定位置を示す信号が出力される。
[加熱コイル]
 加熱コイル451は、被加熱領域H1,H2の一方向に沿う全長のうちの一部に対向する大きさに形成され、ワークWの全周のうちの加熱位置P3に配置される部位に対向配置される。各加熱部450の加熱コイル451は互いに所定間隔を開けて、被加熱領域H1,H2の全長において均等に配置されている。
 加熱コイル451の形状は適宜選択可能であり、平面視においてワークWの加熱部位の弧形状に対応した形状であって、ワークWの縦断面形状に対応した縦断面形状となっている。ここでは複数の加熱コイル451、好ましくは全ての加熱コイル451が同じ形状を有する。
 例えば、各加熱コイル451は、ワークWの周方向の所定領域において、略一定断面のパイプ状、棒状或いは板状のコイル材料を上下に繰り返し蛇行させた形状としてもよい。具体的には、図20(a)に示すように、全長で中空部が連続するように角パイプを接合し、両端に冷却液の入口451b及び出口451cを設け、ワークWと対向する部位が複数の屈曲部451dで屈曲したジグザク形状であってもよい。図20(b)に示すように、ワークWに対向する部位が、断面丸形のパイプ状のコイル材料を複数の湾曲部451eで湾曲させたジグザグ形状であってもよい。
 被加熱領域H1,H2の内側と外側とで周長が異なるような場合には、加熱コイル451としては、図20(c)に示すようなものを使用してもよい。この加熱コイル451は、ワークWに対向する部位が角パイプからなってもよい。角パイプをワーク内側及び外側の複数の屈曲部451fと、屈曲部451f間に設けられた屈曲部451gとで屈曲させてジグザク形状に形成したものであってもよい。この加熱コイル451では、回転中心Cから遠い部位における周方向の長さが回転中心Wから近い部位における周方向の長さに比べて長く構成されていてもよい。
 このような加熱コイル451では、各被加熱領域H1,H2をより均一に加熱するためには、加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との間の間隙であるギャップが全体でなるべく均一となるのが望ましい。
 そのために被加熱領域H1,H2の形状と加熱コイル451の被加熱領域H1,H2と対向する面の形状とが、なるべく広い範囲で一致するのがよい。また加熱コイル451の被加熱領域H1,H2と対向する面の面積である対向面積が、被加熱領域H1,H2の幅方向においてなるべく均一になるのがよい。さらに被加熱領域H1,H2と直交する断面において、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2と対向する面と被加熱領域H1,H2との間の角度はなるべく小さくするのがよく、好ましくは0度となる。
 加熱コイル451の被加熱領域H1,H2と直交する方向の幅は被加熱領域H1,H2の幅と同等にするのがよい。加熱コイル451の幅が狭い場合、複数の加熱コイル451の配置を幅方向にずらすことで被加熱領域H1,H2の全幅により均一に加熱できる。
 この実施形態の加熱コイル451は、被加熱領域H1,H2と対向する面が被加熱領域H1,H2に対応した形状を有し、被加熱領域H1,H2と直交する幅が被加熱領域H1,H2の幅より若干狭く形成されている。
[給電設備]
 給電設備700を説明する前に、各種のワークに対して適用可能な誘導加熱装置の回路について説明する。
 図11は本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1の回路図である。本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1は、図11に示すように、加熱コイル2に対して並列に接続される複数の変成器12と、複数の変成器12の何れかに接続される複数の整合器13と、複数の整合器13の何れかに接続されるインバータ14と、インバータ14を制御するインバータ制御部15と、インバータ14と整合器13、整合器13と変成器12、変成器12と加熱コイル2をそれぞれ切り替えて接続するスイッチ群16と、切替制御部17と、設定部18とを含んで構成される。
 インバータ14は、商用電源19に接続されていて、商用電圧を直流電圧に変換する順変換部14Aと、順変換部14Aからの直流電圧を指定の周波数の交流電圧に変換する逆変換部14Bと、を備えている。
 インバータ制御部15は、順変換部14Aを制御する順変換制御部15Aと、逆変換部14Bを制御する複数の逆変換制御部15Bと、を備えている。各逆変換制御部15Bは、それぞれ逆変換部14Bを制御し、逆変換部14Bから互いに異なった周波数の電圧に変換して出力させるものである。
 複数の整合器13は、異なった容量を備える整合器13A,13B,13Cで構成される。整合器13A,13B,13Cは、コンデンサのほか、インダクタンスを含むようにしても構わない。
 複数の変成器12は、整合器13にスイッチ16B、16Cを介して接続される一次巻き線と、加熱コイル2にスイッチ16Aを介して接続される二次巻き線と、を含んで構成されており、各変成器12では一次巻き線と二次巻き線との比が異なっている。
 スイッチ群16は、加熱コイル2と複数の変成器12の何れかとを接続する例えば3つのスイッチ16Aと、複数の変成器12の何れかと複数の整合器13の何れかとを接続する3対のスイッチ16B,16C、複数の整合器13の何れかとインバータ14を接続する例えば3つのスイッチ16Dと、複数の逆変換制御部15Bの何れかと逆変換部14Bとを接続する例えば3つのスイッチ16Eと、を備える。
 設定部18は、誘導加熱時間を複数に区分して区分毎に、インバータ14から出力される電圧の周波数の設定情報と、複数の整合器13及び複数の変成器12の選択による組み合わせで構成されるマッチング回路(整合回路とも呼ぶ)の選択情報と、を誘導加熱条件として設定するためのものである。
 切替制御部17は、設定部18で設定された誘導加熱条件に従って、誘導加熱時間を区分した区分毎に、複数の逆変換制御部15Bの何れかを選択して逆変換部14Bを制御して指定の周波数の電圧を出力する。それと共に、切替制御部17は、スイッチ群16、即ちスイッチ16A,16B,16C及び16Dにより、一の整合器13をインバータ14に接続し、この一の整合器13を一の変成器12に接続し、この一の変成器12を加熱コイル2に接続する。
 設定部18には、インバータ14からの出力状況を示すモニタとして、各種の誘導加熱条件を設定するための入出力操作画面としてのタッチパネル部が設けられている。図12は図11に示す設定部18に表示されるステップデータ設定画面を示す図である。操作部18には、例えば図12に示すようなステップデータ設定画面が表示され、このステップデータ設定画面において、ステップ単位で、ステップの時間、ワーク回転速度、インバータ14からの出力条件として電力、電圧を設定することができる。このステップデータ設定画面により、インバータ14から出力される電力の周波数を設定してもよい。
 また、ある特定のステップにおいて、何れのインバータ14から電力が供給されない状態を設定するためインバータ14からの出力電力、電圧を例えばゼロや低い値に設定し、変成器12及び整合器13の組み合わせからなる整合回路の切り替えの選択をすることができる。図13は図11に示す設定部18に表示され、回路設定条件を設定するための画面を示す図である。図12に示す画面において「整合回路の切替」を選択すると、図13のような回路設定条件の画面が表示され、変成器12及び整合器13の種類を選択することができる。例えば図13に示されているように、加熱コイル2の番号毎に、変成器を選択するために巻き数を選択するための「MTr電圧選択」の選択肢と、整合器を選択するための「コンデンサ容量」の選択肢と、逆変換制御部の選択肢とが、回路設定条件選択画面として表示され、これらの選択肢を選んで設定される。図12及び図13に示す画面においては、インバータ14から出力される交流の周波数は、図13に示す回路設定条件において逆変換制御部の選択により行うようになっているが、図12に示すステップデータ設定画面において、例えば最も右側に新たに列を設け、各ステップにおいて出力される周波数を設定することができるようになっていてもよい。また、整合回路及び周波数の切替を行う場合には、インバータ14からの出力をゼロに設定する必要性は必ずしもなく、例えばインバータ14からの出力レベルを低下させておけばよい。
 本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1では、このような回路構成を採用していることで、設定部18により、誘導加熱時間を複数の区分に区分し、逆変換制御部15Bを選択してその選択の前後において異なった周波数の電圧を出力することができる。それに伴ってスイッチ16A~16Dの組み合わせを選択することにより、整合器13と変成器12との組み合わせを換えることができる。よって、誘導加熱によりワークWを昇温する途中で、インバータ14の出力周波数を変化させ整合器13及び変成器12の組み合わせを交換することにより、ワークWの透磁率が変化してもインバータ14から出力された電力をワークWの誘導加熱に使用させることができる。なお、逆変換制御部15Bの選択は同一のワークWを加熱する際に必ず変えねばならないというものではない。
 図11に示す誘導加熱装置1を用いて、比較的長時間誘導加熱をしてワークを所望の温度まで昇温する場合を説明する。図14は、本発明の実施形態に係る誘導加熱方法により比較的長時間誘導加熱することができることを説明するための説明図であり、図11に示す装置とは異なり、加熱の途中でインバータ14からの出力の周波数を変えないで比較的短時間で行ったときのワークの温度、インバータ14の出力インピーダンスと、インバータ14の出力を直流電圧で評価したときのグラフである。図14から、時間の経過に伴ってインバータ14からの出力インピーダンスが一旦低下して極小値をとったのち、ワークWの温度が約700℃~800℃前後で出力インピーダンスが一定となる。その出力インピーダンスが上昇しなくなったときインバータ14の出力電圧がピークとなり、その後低下する。よって、それ以降では、インバータ14からの出力がワークに投入されなくなる。
 しかしながら、本発明の実施形態では、加熱時間の経過に伴い、加熱温度に応じて、インピーダンス14の出力周波数を変化させ、かつ、その出力周波数の値と整合器及び変成器を選択することが出来るようにしている。そのため、加熱の途中で、ワークWの素材、特に透磁率などの物性値が変化してもワークWに誘導電流を流すことができ、ワークを所望の温度まで上昇させることができる。
 図11に示す誘導加熱装置1の変形例について説明する。図11において、インバータ14に出力インピーダンスを計測するインピーダンス計測部を備えていてもよい。インバータ計測部は、逆変換部14Bから出力される電流、電圧及びそれらの位相差を計測する。その測定結果がインバータ14から切替制御部17に出力される。いま、例えば図12に示すように設定部18のステップデータ設定画面において、ステップ4の「整合回路の切替」が「有」となっているとする。切替制御部17では、絶えずインバータ計測部から入力される計測結果をモニタリングしている。ここで、現在のインピーダンスの許容範囲を超えた場合であって、次のステップにおいて整合回路の切り替えを行うことになっているような場合には、現在のステップで指定された時間が経過しなくても強制的に次のステップに移行する。即ち、切替制御部17は、インピーダンス計測部から入力された計測結果がインピーダンスの許容範囲を超えたとき、設定部18に設定されている誘導加熱条件のうち次の区分に関するものを参照した上で整合回路の切替の有無を判断する。そして整合回路を切り替えることになっている場合には、強制的に、次のステップで設定されている逆変換制御部15Bを選択してインバータ14から出力される電圧の周波数を変化させ、かつスイッチ群16を切り替える。これにより、インバータ14から出力される電圧の周波数を変え、かつ整合回路を切り替えてインピーダンス整合をとる。
 次に、図11に示す誘導加熱装置1の設計思想を適用し、この第1実施形態における誘導加熱装置である加熱部450を構成した例について説明する。
 ここでは図11に示す誘導加熱装置1が加熱部450における給電設備700に適用されている。各加熱部450では、図11で示したように、加熱コイル451と、複数の変成器12と、複数の整合器13と、順変換部14A及び逆変換部14Bを有するインバータ14と、順変換部14Aを制御する順変換制御部15A及び逆変換部14Bを制御して各々指定された周波数の電圧に変換させる複数の逆変換制御部15Bを有するインバータ制御部15と、スイッチ群16と、を備える。
 熱処理装置10は、図2に示すように、各加熱部450を統括的に誘導加熱条件を設定するための設定部31と、その設定部31により各加熱部450のスイッチ群16を切り替え制御する切替制御部32と、を備える。
 設定部31では、加熱部450毎に、かつ誘導加熱時間を複数に区分して区分毎に、各インバータ14から出力される電圧の周波数の設定情報と、複数の整合器13及び複数の変成器12の選択による組み合わせで構成されるマッチング回路(整合回路)の選択情報と、が誘導加熱条件として設定される。
 そのため、切替制御部32は、加熱部450毎に、設定部31で設定された誘導加熱条件に従って、区分毎に、複数の逆変換制御部15Bの何れかを選択することにより逆変換部14Bを制御して指定の周波数の電圧を出力する。さらに、切替制御部32は、スイッチ群16により一の整合器13をインバータ14に接続し、この一の整合器13を一の変成器12に接続し、この一の変成器12を加熱コイル451に接続する。
 その結果、加熱部450毎に、設定部31により誘導加熱条件を設定することができ、誘導加熱開始から時間単位で、インバータ14からの出力状態を設定したり整合回路を選択したりすることができる。これにより、切替制御部32は、誘導加熱開始の信号の入力を受けると、設定部31に設定されている誘導加熱条件に基いて、加熱部450毎に、誘導加熱開始からの経過時間に伴い、インバータ制御部15の順変換制御部15Aと選択された逆変換制御部15Bによりインバータ14が制御され、指定された周波数の電圧がインバータ14から出力される。さらに、選択された整合器13及び変成器12の組み合わせでその周波数に見合うインピーダンスと整合する。よって、ワークが誘導加熱により組織変形して透磁率等の物性値が変化しても、設定部31により設定された回路設定条件に従って切替制御部32により各スイッチ群16が切り替えられる。
 特に、図2及び図3に示す熱処理装置10においては、直径が1m以上の大型の旋回輪や大型の軸受などを構成する外輪のような大きなワークWを走行させながら誘導加熱する際、全体の誘導加熱時間が長時間とならざるを得ない。すると、ワークWが昇温することで組織変形したことで、インピーダンスの整合がとれずに、インバータ14から加熱コイル451に電力が投入され難くなるという問題を解決することもできる。ワークWが大型であっても十分誘導加熱して所望の温度まで上昇させることができる。また、図2及び図3に示す熱処理装置10においては、ワークの焼入れ条件に応じて、各加熱部450毎に異なったタイミングで周波数を変えてもよいし、加熱部450の全てを同じタイミングで周波数を変えるようにしてもよい。
 なお、このような誘導加熱装置1の回路は本発明の範囲において適宜変更して実施することができる。例えば、ワークWの近辺に非接触式の温度センサを配置し、その温度センサの検出値を基準に誘導加熱条件を設定して、周波数、整合回路の組み合わせを変えてもよい。
[変位手段]
 変位手段460は、ワークWと加熱コイル451との相対位置を変位させ、且つ、相対角度を変向するものである。
 変位手段460は、図8に示すように、支持ボックス452を上下に変位させる上下変位部462と、支持ボックス452をワークWの回転中心Cからの放射方向に沿って水平方向に変位させる水平変位部463と、支持ボックス452の傾斜を調整する角度変向部492と、を備える。
 上下変位部462は、加熱冷却架台40上に固定された変位架台42と、変位架台42上に配置された下架台464と、変位架台42に対して下架台464を上下動させる上下駆動機構465とを備える。
 上下駆動機構465は、下架台464に固定されて上下方向に配置された変位ガイドロッド466及び縦変位ネジ軸467と、変位架台42に固定されて変位ガイドロッド466を上下動可能に支持する変位軸受468と、変位架台42に固定されたサーボモータ等からなる上下駆動モータ469と、変位架台42に設けられて上下駆動モータ469の回転により縦変位ネジ軸467を上下動させる連結体471と、を備える。
 水平変位部463は、下架台464上にワークWの放射方向に対して略直交方向に配設された第1変位レール472と、第1変位レール472上を移動可能な上架台473と、上架台473を第1変位レール472に沿って移動させる第1変位駆動機構474と、上架台473上にワークWの放射方向に沿って配設された第2変位レール475とを備え、第2変位レール475上に移動可能に支持された支持ボックス452を第2変位レール475に沿って移動させる第2変位駆動機構476とを備える。
 第1及び第2変位駆動機構474,476は、それぞれサーボモータ等からなる変位駆動モータ477と、変位駆動モータ477と連結されて第1又は第2変位レール41475に沿って配設され回転駆動される横変位ネジ軸478と、上架台473又は支持ボックス452に設けられて横変位ネジ軸478と螺合した変位突部479とを備える。ワークWの放射方向に対して略直交方向に加熱コイル451を予め位置合わせ可能であれば、第1変位駆動機構474を設けなくてもよい。
 角度変向部492は、支持ボックス452に設けられており、例えば第1又は第2変位レール41475に支持された支持ボックス452の下部に対し、支持ボックス452の上部を前側と後側とで異なる高さに上昇又は下降させることで、支持ボックス452の傾斜を変化するようになっている。詳細な図示は省略しているが、支持ボックス452の各位置を上昇又は下降するために、上部及び下部にステップモータにより回動する雄ネジ部を設け、他方に雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を設けている。
 角度変向部492により、支持ボックス452のワークW側とその反対側とで高さを異ならせることで、加熱コイル451を被加熱領域H1,H2の長手方向の一方向に沿う軸周りに変向させることができる。ここで一方向に沿う軸とは、ワークWが直線的な場合、ワークWと平行な軸であり、ワークWが環形状の場合、環形状の接線に平行な軸である。
[姿勢制御部]
 変位手段460には、位置検出手段480の検出結果に基づいて変位手段460の動作を制御することで、ワークWと加熱コイル451との相対位置及び相対角度を調整する姿勢制御部490が設けられている。この姿勢制御部490は、図8に示すように、電気設備の操作部710内に組み込まれた状態で設けられており、変位手段460の各駆動機器を制御するように構成されている。
 この姿勢制御部490では、各位置検出具483,484で測定されたワークWの測定位置を示す信号により、ワークWの変位量と回転駆動モータ255の回転速度に基づいて、各検出位置を通過したワークW表面の各部位が、直後の下流で各加熱部450を通過するタイミングとその位置とが得られる。そのため、各部位が加熱位置P3を通過する際、変位手段460によりその位置に対応するように加熱コイル451を変位させることで、加熱コイル451の位置をワークWに追従させることが可能となる。
 ところで、本実施形態のようなワークWの被加熱領域H1,H2を、被加熱領域H1,H2に対して所定ギャップで対向する加熱コイル451により誘電加熱すると、被加熱領域H1,H2の一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異なるため、ワークWが不均一に変形する。
 図15に実線で示すような常温状態のワークWを回転させつつ、加熱コイル451によりワークWの内周面のc1-d1間の被加熱領域H1,H2を、図中破線で示す内周面の下側を冷却液で冷却しつつ加熱する。すると、被加熱領域H1,H2の昇温と共に、図中に仮想線で示すようにワークWが不均一に熱膨張し、被加熱領域H1,H2の一方の縁側と他方の縁側とで異なる変形量となる。その結果、被加熱領域H1,H2はc2-d2間の位置となる。なお、理解容易のために図では変形を誇張して記載している。
 このとき、径方向位置検出具483の接触子488は低温時にはワークWの外周面におけるa1を測定し、ワークWが変形することで昇温後にはa2を測定することになる。また軸方向位置検出具484の接触子488は、低温時にはワークWの側周面におけるb1を測定し、昇温後にはb2を測定することになる。そのため、位置検出手段480ではa1,b1として測定されていた測定位置が、昇温後にはa2,b2として測定される。その場合、低温時の測定位置から高温時の測定位置までの変化に対応して、加熱コイル451を変位させて加熱することになる。
 ところが、ワークWが不均一に変形しているため、実際の被加熱領域H1,H2はc1-d1の位置からc2-d2の位置に変化している。ここでは図からも明らかな通り、a1とa2との間の変化量やb1とb2との間の変化量に比べ、c1とc2との間の変化量やd1とd2との間の変化量は大きい。
 従って、単に位置検出手段480で測定された測定位置だけに基づいて、各加熱コイル451でワークWを加熱するとすれば、測定位置にそのまま対応させた図中の仮想線で示すような位置に加熱コイル451が配置され、高温で加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との相対位置が不均一にずれた状態で加熱されることになる。しかも、加熱コイル451との距離が遠い側の被加熱領域H1,H2の上側の縁側は、ワークWの体積が下側の縁側に比べて大きく熱容量が大きい。その結果、被加熱領域H1,H2の下側の縁側では、所望の温度に昇温できたときに上側の縁側では所望の温度まで昇温できないなど、被加熱領域H1,H2を均一に加熱することができなくなる。
 そこで、本実施形態の熱処理装置10では、このような被加熱領域H1,H2の不均一な昇温を防止するために、ワークWの加熱条件及び加熱期間中の加熱状態に基づいて、加熱コイル451の位置及び傾き角度を調整することで、均一な加熱ができるようにする機能が設けられている。
 ここで加熱条件とは、例えばワークWの形状、大きさ、材質、加熱コイル451の形状、対向面積、ワークWの移動速度、加熱コイル451に供給する高周波電力の電圧、電流、周波数、加熱時のワークWの冷却位置、冷却液温度などである。また加熱状態とは、被加熱領域H1,H2の表面温度、加熱経過時間などである。
 この姿勢制御部490では、予め設定された加熱条件で加熱コイル451により誘導加熱を開始してから、適宜な加熱状態で、好ましくは予め設定された設定加熱状態で、加熱コイル451の位置及び傾き角度を調整する。これにより被加熱領域H1,H2の全体を出来るだけ均一に加熱することが可能となり、ギャップのずれなどに起因した供給電力に対する加熱効率を向上することができる。
 具体的には、次のような機能を備えている。
 まず、加熱時に各位置検出手段480の検出結果、即ち、被加熱領域H1,H2以外の部分で測定された検出結果から得られた測定位置を、少なくともワーク形状に基づいて補正し、補正により得られた補正位置に対応するように変位手段460の動作を制御する機能を有する。
 基準位置は、加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との間のギャップが加熱コイル451全体で均一な場合、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面と被加熱領域H1,H2の表面との間の距離が所定値となる位置であるのがよい。加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との間のギャップが不均一となる場合には、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面の適宜な地点と被加熱領域H1,H2の地点に対向する地点との間の距離が所定値となる位置とすることができる。
 本実施形態では、位置検出手段480において、径方向位置検出手段483と軸方向位置検出手段484とでそれぞれ検出された測定位置は基準位置からの変位であり、補正位置は測定された変位を補正した補正変位である。この姿勢制御部490では、補正変位に対応するように変位手段460の動作を制御している。
 測定位置を補正するためには、補正係数を用いて測定位置のデータを補正することができ、例えば測定位置を示す信号を補正係数倍することで補正位置を求めることができる。この補正係数は少なくともワーク形状に対応した値となっており、より多くの加熱条件に対応した補正係数とすることで、被加熱領域H1,H2に対してより的確に加熱コイル451を配置することができる。
 このような補正係数は経験上で得られたものであってもよい。また加熱条件、設定加熱状態等に基づいて加熱時の設定加熱状態におけるワークWの変形を演算し、位置検出手段480の径方向位置検出手段483及び軸方向位置検出手段484において測定される部位の変形量と、演算により求められる被加熱領域H1,H2の変位量とから補正係数を求めてもよい。さらに姿勢制御部490に予め補正係数を求めるシミュレーション処理のステップを設定しておき、このシミュレーション処理により補正係数を求めてもよい。
 このような補正係数は加熱時又は加熱前に入力してもよく、姿勢制御部490に記憶してもよい。
 この補正係数は低温時と高温時とで異ならせるのがよく、設定加熱状態に達したとき、例えば被加熱領域H1,H2の温度が700度~800度のような所定温度範囲に到達したとき、或いは加熱開始後所定時間経過したときに、手動又は自動で変更することができる。
 次に、この実施形態の姿勢制御部490では、加熱期間中に複数の加熱コイル451の一部又は全部の位置を変位させる機能を有する。
 姿勢制御部490により制御して変位手段460により各加熱コイル451を変位させることで、複数の加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との対向面積を、被加熱領域の幅方向に変化するように調整する。例えば加熱期間開始時点ではワークWの被加熱領域H1,H2の幅方向において各加熱コイル451を略同じ位置に配置しておき、所定の加熱状態に達した時点で各加熱コイル451を被加熱領域H1,H2の幅方向における位置を個々に、又は複数組み合わせて変位させる。全ての加熱コイル451を変位させてもよい。
 複数の加熱コイルの配置や変位量は、経験に基づいて決定してもよい。また被加熱領域H1,H2と各加熱コイル451との間のギャップや加熱期間中のギャップの変化に対応させるように決定してもよい。また、加熱条件、設定加熱状態等に基づいて加熱時の設定加熱状態におけるワークWの変形を演算して演算結果に対応するように決定してもよい。被加熱領域H1,H2の幅方向における温度分布に対応させて、低温側に加熱コイル451のより多くの面積を配置するように決定してもよい。さらに姿勢制御部490に予め複数の加熱コイル451の配置を決定するシミュレーション処理のステップを設定しておき、このシミュレーション処理により決定することも可能である。ここではシミュレーション処理により被加熱領域H1,H2の幅方向における変形量を求めて、この変形量に対応させるように面積を調整したり、配置に関する蓄積データから選択してもよい。
 加熱コイル451を加熱期間中に変位させるには、全加熱コイル451のうちの一部の加熱コイル451を縁側にずらして配置してもよい。また予め変位させる配置を設定加熱条件に対応して記憶させ、設定加熱条件に達した段階で手動又は自動で変位させてもよい。
 なお、各加熱コイル451の配置を変位させた状態では、互いに異なる加熱コイル451の一部が被加熱領域H1,H2の幅方向における同じ位置に配置され、被加熱領域H1,H2の幅方向における同じ位置を重畳的に加熱する配置とすることも可能である。
 これにより、被加熱領域H1,H2の幅方向における複数の加熱コイル451の配置分布を加熱コイル451の変位前と変位後とで異ならせて調整し、誘導加熱の際の発熱量を適切に調整することができる。
 次に、本実施形態の姿勢制御部490は、支持ボックス452の姿勢を変化させることで、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対する相対角度である姿勢を調整し、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面が加熱期間中の被加熱領域H1,H2に沿うように配置させる機能を有する。ここでは加熱期間中に、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面と被加熱領域H1,H2との間の角度の差を小さく又は無くすように調整する。加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面と被加熱領域H1,H2との形状が同じ形状でない場合、姿勢を調整することで、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面と被加熱領域H1,H2との間の角度の差をできるだけ小さくするのがよい。
 加熱コイル451の姿勢の調整量は、経験に基づいて決定してもよい。また被加熱領域H1,H2と各加熱コイル451との間のギャップや加熱期間中のギャップの変化に対応させたり、加熱条件、設定加熱状態等に基づいて、加熱時の設定加熱状態におけるワークWの変形を演算して演算結果に対応するように決定してもよい。被加熱領域H1,H2の幅方向における温度分布に対応させて、低温側で加熱コイル451をより近づけるように決定してもよい。
 さらに姿勢制御部490に予め複数の加熱コイル451の姿勢を決定するためのシミュレーション処理のステップを設定しておき、このシミュレーション処理により決定することも可能である。ここではシミュレーション処理により被加熱領域H1,H2の幅方向における変形量を求め、この変形量に対応させるように姿勢の調整量を決定してもよい。
 加熱コイル451を加熱期間中に変向して姿勢を調整するには、経験に基づいて加熱期間中に姿勢制御部490を操作して行ってもよい。また予め姿勢を設定加熱条件に対応して記憶させ、設定加熱条件に達した段階で手動又は自動で変向させてもよい。
 本実施形態の姿勢制御部490は、図16に示すように、ワークWの加熱条件及び設定加熱状態を入力する設定入力部493と、ワークWの加熱条件及び設定加熱状態などに基づいて変位手段の制御量を演算する演算処理部494と、設定入力部493に入力された各種設定値や演算処理部で得られた演算結果を記憶する記憶部495と、被加熱領域H1,H2の加熱状態が設定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部496と、設定加熱状態に達したときに変位手段460を駆動する駆動制御部497と、を備えている。
 ここでは加熱状態として加熱経過時間を用いるが、加熱状態として被加熱領域H1,H2の温度を用いることも可能である。その場合、図16に破線で示すように、被加熱領域H1,H2の温度を非接触式の温度センサにより検出し、加熱状態判定部496により検出温度が予め設定した温度に到達したことで設定加熱状態を判定してもよい。
 記憶部495には、加熱開始後に位置検出手段480からの信号に基づき加熱位置P3でのワークWの位置に加熱コイル451を追従させて変位させるためのステップが記憶されている。また加熱条件と、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対する相対位置及び相対角度を調整するための情報が設定加熱状態と組み合わせて記憶されている。これらは設定入力部493で入力されたものであっても、演算により求めたものでもよい。
 さらに記憶部495には、シミュレーション処理のための処理ステップ情報が記憶されている。
 シミュレーション処理のステップは、加熱条件下で被加熱領域H1,H2が設定加熱状態に達した際の変形状態を演算するためのものであり、その手法は特に限定されるものではない。例えば二次元FEM(Finite Element Method)解析モデルにより熱変形を求めるシミュレーション処理などを採用してもよい。
[電力調整手段]
 電力調整手段491は、給電設備700の操作部710の一部として設定されている。この電力調整手段491では、複数の加熱コイル451に供給する高周波電力を加熱コイル451毎に別々に調整する。高周波電力の調整は予め設定された設定加熱状態に到達した時点及びそれ以後に、設定加熱状態に対応して設定されている高周波電力に調整してもよい。
 この電力調整手段491では、姿勢制御部490により各加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との間の相対位置及び相対角度を調整することと組み合わせて、各加熱コイル451に給電する高周波電力を異ならせることで、複数の加熱コイル451により被加熱領域H1,H2を加熱する。
[冷却セクション]
 冷却セクション500は、図10に示すように、加熱セクション400の下方に設けられた水槽510と、水槽510内に配置された冷却部としての複数の冷却ジャケット520とを備え、治具100の放射架台111を安定して支持可能となっている。
 水槽510は、冷却液の飛散を防止するように治具100及びワークWを囲んで設けられている。複数の冷却ジャケット520は、ワークWに対して大量の冷却液を吐出してワークWに接触させるようにワークWに対向してワークWの周方向の複数位置に略均等に配設されている。
[熱処理方法]
 次に、このような熱処理装置10を用いてワークWを熱処理する方法について説明する。
 本実施形態の熱処理方法では、ワークWに応じて各部を設定する準備工程と、ワークWを搬入して治具100に載置する搬入工程と、ワークWを載置した治具100を搬送する搬送工程を行った後、被加熱領域H1,H2の一方の熱処理を行う。熱処理は治具100上のワークWを誘導加熱する加熱工程と、治具100上のワークWを冷却する冷却工程と、により行う。その後、搬出工程において、熱処理されたワークWを搬出する。
 準備工程では、加熱処理対象のワークWの大きさや形状に応じて各部の設定を行う。加熱コイル451のような加熱部450の構成部品を加熱部450に装着するには、図2及び図3に示す部品交換セクション600及び部品交換治具620を利用して行うことができる。
 搬入工程では、図2及び図3に示す搬入搬出セクション300で加熱処理対象のワークWを搬入し、治具100に載置して搬送可能な状態にする。
 搬入搬出セクション300の搬入搬出位置P1において、治具100にワークWを支持させる。図4に示すように、ワークWは治具100の複数の回転ローラ112上に、中央構造部130を囲むと共に、一方の端面を下向きにして載置する。その後、ワークWが載置された治具100を吊り下げ位置P2に移動して停止させる。
 搬送工程では、図3及び図4に示すように、ワークWが載置された治具100を搬送機構200の搬送ローダ部220に接続し、吊り下げて加熱セクション400に搬送する。
 加熱工程では、図2及び図8に示す加熱セクション400で治具100を所定位置に配置し、治具100を上下方向及び周方向の移動を規制して配置することで、治具100上に載置されたワークWを各加熱位置P3に配置し、被加熱領域H1,H2の一方を加熱する。被加熱領域H1,H2はどちらであってもよい。
 加熱工程では、図17に示すような加熱処理ステップが実行される。
 まず加熱処理開始前、入力工程S1にて、設定入力部493から前述のような加熱条件を入力する。この入力は操作部710のタッチパネルや携帯端末器701から入力可能であり、図5に示すようなメインメニューからそれぞれの項目を選択し、入力可能画面において各種の加熱条件を入力する。このとき予め、ワークWの不均一な変形が大きくなることで、位置検出手段480により測定される測定位置と実際に加熱されたワークWの被加熱領域H1,H2の位置とのずれが大きくなることが予測される単数又は複数の設定加熱状態が設定される。
 シミュレーション工程S2にて、入力された加熱条件に基づき、演算処理部494で記憶部495に記憶されたシミュレーション処理のステップに基づいてシミュレーション処理を行う。この処理では、各設定加熱状態における補正係数、被加熱領域H1,H2の幅方向における複数の加熱コイル451のそれぞれの配置、各加熱コイル451の傾きを演算し、得られた各演算結果をそれぞれ設定加熱状態に対応させた状態で記憶部495に記憶する。
 シミュレーション工程S2を行った後、処理開始工程S3にて、ワークWが各加熱位置P3に配置された状態で、回転ローラ112を回転させてワークWを環形状に沿って回転させ、回転駆動部30によりワークWの周速を一定に保つ。図9に示すように、位置検出具483,484の接触子488をワークWの外周面の中腹と上面とに当接させて測定位置の測定を行う。図8に示すように、加熱される被加熱領域H1,H2に隣接する下部側に、補助冷却部440から冷却液を噴射して冷却を開始する。
 姿勢制御部490により制御して変位手段460を動作させて加熱コイル451を変位させ、ワークWの被加熱領域H1,H2に所定のギャップとなるように加熱コイル451を対向配置する。このとき加熱開始時点では、ワークWの変形と位置検出手段480により測定される測定位置と略一致するため補正係数は1とすることができる。また加熱コイル451が予め被加熱領域H1,H2の幅方向の傾斜に対応する傾斜となるように支持ボックス452に支持されているため、変位手段460の支持ボックス452は略水平状態となっており、加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との相対角度の差はない。さらに、複数の加熱コイル451の配置は全てが被加熱領域H1,H2の幅方向の中心線を中心に配置しておいてもよい。
 この状態で誘導加熱処理工程S4を開始する。誘導加熱処理工程S4では、ワークWの回転、冷却、測定位置の測定を継続しつつ、加熱コイル451に高周波電力を給電し、被加熱領域H1,H2を誘導加熱する。
 各位置検出手段480の径方向位置検出具483及び軸方向位置検出具484の接触子488の変位量を変化量検出部489で検出することで、各加熱位置P3における被加熱領域H1,H2の測定位置が測定されている。そのため各加熱コイル451をワークWに追従させつつ加熱することができる。例えばワークWが治具100の中心から偏心した状態で配置されるなどにより、ワークWが回動する際に径方向に変位しながら旋回するような場合であっても、加熱コイル451をワークWに追従させて加熱することができる。
 この誘導加熱処理工程S4では、加熱開始後から加熱状態を継続的に検出しており、加熱開始後からの加熱経過時間を加熱状態として検出している。
 ワークWが大型であり、周方向に間隔を開けて配置された複数の加熱コイル451により加熱するため、誘導加熱処理工程S4の加熱期間が数分間に及ぶこともある。この加熱期間中には加熱状態やワークWの位置が監視されており、操作部710や携帯端末器701においてモニタ画面等で作業者が確認できる。
 このような誘導加熱処理が継続されることで、被加熱領域H1,H2及びワークWが昇温される。それと同時にワークWが熱膨張により徐々に不均一に変形する。
 そして加熱状態判定部496において、加熱状態が設定加熱状態に到達したことが判定されると、演算処理部494では記憶部495に記憶されている設定加熱状態における補正係数に変更される。この補正係数を用いて、位置検出手段480により測定された測定位置が補正されて補正位置が演算される。これにより、設定加熱条件以後の高温状態では、次の設定加熱条件に到達するまでの間、各加熱位置P3における被加熱領域H1,H2の位置を補正位置と見なして追従動作が行われる。即ち、姿勢制御部490により補正位置の変化に対応するように変位手段460の動作が制御されて、加熱コイル451と被加熱領域との相対位置が安定に維持される。
 また、加熱状態が設定加熱状態に到達したことが判定されると、演算処理部494では、記憶部495に記憶されている設定加熱状態における各加熱コイル451の傾きとなるように、姿勢制御部490により変位手段460の動作が制御される。ここでは、角度変向部492において、支持ボックス452の上部を前側と後側とで異なる高さに上昇又は下降させることで、加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面の傾斜角度を設定加熱状態における各加熱コイル451の傾きの角度に調整される。
 例えば図18に示すように、設定加熱状態に到達するまでの間は各加熱コイル451が図中に実線で示すような傾きで配置されている。設定加熱状態に到達した後は、ワークWの不均等な変形により被加熱領域H1,H2の傾斜が変化するため、この変化に対応するように、図中の仮想線で示すように角度θで傾斜を変化させ、各加熱コイル451と被加熱領域H1,H2との間のギャップをより均一にする。
 そして設定加熱条件以後の高温状態では、次の設定加熱条件に到達するまでの間、この角度が維持される。
 さらに加熱状態が設定加熱状態に到達したことが判定されると、演算処理部494では、記憶部495に記憶されている複数の加熱コイル451の配置となるように、姿勢制御部490により変位手段460の動作が制御される。ここでは、被加熱領域の幅方向の縁側、特に上部の縁側が例えばワークWの不均等な変形により各加熱コイル451から離間する方向に変位するため、誘導加熱による発熱量が中間部分等に比べて低下し易いなどの理由により、被加熱領域H1,H2の表面温度にむらが生じて中間部分よりも温度が低くなり易い。
 そのため、図19に実線で示すように、設定加熱状態に到達する前には被加熱領域H1,H2の幅方向における複数の加熱コイル451の位置が同等に配置されていたところを、図中の仮想線で示すように、一部の加熱コイル451の位置を被加熱領域H1,H2の縁側にずらして配置する。必要により、複数の加熱コイル451の全部を縁側にすらして配置してもよい。これにより、被加熱領域H1,H2の幅方向における加熱コイル451の対向面積の分布を調整し、被加熱領域H1,H2の低温側がより多い対向面積となるように各加熱コイル451を配置し、低温側の発熱量をより大きくする。
 そして、設定加熱条件以後の高温状態では、次の設定加熱条件に到達するまでの間この角度が維持される。
 このような制御を1回又は複数回繰り返すことで、加熱完了状態まで誘導加熱処理工程S4を行い、被加熱領域H1,H2の全体を均一に加熱する。被加熱領域H1,H2の温度が所望の温度に到達したとき、或いは、所定の加熱時間が終了したとき、誘導加熱処理工程S4を終了する。
 誘導加熱処理工程S4が終了した後、冷却工程では、搬送ローダ部220により治具100を下降させ、冷却セクション500に治具100上のワークWを配置し、ワークWを回転させながら、複数位置に設けられた冷却ジャケット520からワークWに多量の冷却液を噴射し、ワークW全体を冷却する。ここでは、加熱セクション400の下方に冷却セクション500が設けられているため、加熱後短時間の間に冷却が開始される。これによりワークWの所望の熱処理が行われる。
 ワークWの被加熱領域H1,H2の温度が十分に低下した段階で冷却工程を終了する。これにより被加熱領域H1,H2のいずれか一方の熱処理が終了する。
 その後、熱処理されたワークWは治具100と共に搬送ローダ部220に吊り下げられ、搬入搬出セクション300に搬送されて、ワークWの熱処理が完了する。
[実施形態における作用効果]
 以上のような熱処理装置10及びその加熱方法によれば、ワークWが誘導加熱されたときに、加熱領域Hの一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異なり、これにより位置検出手段480により検出される測定位置の誤差が大きくなっても、測定位置を少なくともワーク形状に基づいて補正して、ワークWと加熱コイル451との相対位置を調整する。従って、被加熱領域H1,H2全体を均一に所望の温度まで昇温することができる。
 ここでは姿勢制御部490が、測定位置と補正係数から補正位置を演算する演算処理部494を備え、演算処理部494において、予め設定されたシミュレーション処理により、ワークWを実施予定の加熱条件で加熱処理した場合の補正係数を求めている。そのため補正係数を決定する準備が不要であり、ワークWを加熱するための準備の装置や手間を簡略化できる。
 測定位置は基準位置からの変位として測定され、補正位置は測定された変位を補正した補正変位であり、姿勢制御部490は、補正変位をなくすように変位手段460の動作を制御している。そのため測定位置及び補正位置を示すデータを簡素化でき、位置検出手段480により測定位置を測定する構成や変位手段460により加熱コイル451を補正位置に移動させる構成を簡素化できる。また処理速度も向上でき、加熱コイル451をより短い時間で適切な位置に配置して効率よく被加熱領域H1,H2を加熱できる。
 補正位置は、測定位置を少なくともワーク形状に対応した補正係数により補正した位置となっている。そのため補正位置を容易に演算できる。
 姿勢制御部490は、加熱期間中に被加熱領域H1,H2が予め定めた設定加熱状態に達したときに補正係数を変更する。これにより昇温するほどワークWの不均一な変形量が大きくなるものであっても、加熱コイル451を適切な位置に配置できる。
 上述のような熱処理装置10及びその加熱方法によれば、ワークWが誘導加熱されたときに、被加熱領域Hの一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なっても、昇温前の被加熱領域Hではなくて加熱時の被加熱領域Hに沿うように加熱コイル451を配置しているため、加熱コイル451が適切な位置に配置される。そのため高温となった被加熱領域Hを加熱コイル451により十分に加熱することが可能で、被加熱領域H全体を均一に所定の温度まで昇温することができる。
 ここでは被加熱領域Hの設定加熱状態における各加熱コイル451の被加熱領域Hに対向する面と加熱領域との間の相対角度を演算する演算処理部494を備えている。そのため、検出結果などから相対角度を自動で得ることができる。
 しかも予め設定されたシミュレーション処理によりこの相対角度を演算しているため、事前に相対角度を求める準備が不要であり、加熱処理の手間を簡素化できる。
  加熱コイル451の被加熱領域Hに対向する面の被加熱領域Hに対する相対角度を、一方向に沿う軸周り変向する変位手段460を備えている。つまり加熱時に被加熱領域Hが変形する方向に沿って加熱コイル451を容易に変向させることが可能である。そのため加熱コイル451の被加熱領域Hに対向する面とワークWの被加熱領域Hとの間のギャップを均一にし易い。
 変位手段460の動作を制御する姿勢制御部490を備え、姿勢制御部490により加熱期間中に加熱コイル451の被加熱領域Hに対向する面と被加熱領域Hとの間の角度の差を無くすように調整している。そのため加熱コイル451を変向させることが容易である。
 上述のような熱処理装置10及び加熱方法によれば、複数の加熱コイル451の位置を被加熱領域Hの幅方向に別々に変位させる変位手段460を備え、この変位手段460により各加熱コイル451の位置を変位させることで、被加熱領域Hの幅方向における複数の加熱コイル451の配置分布を調整する。従って、誘導加熱による発熱部位を加熱コイル451毎に調整することができる。そのため、被加熱領域Hの幅方向における発熱量分布を調整でき、被加熱領域Hの温度が被加熱領域Hの幅方向で不均一になることを防止でき、被加熱領域H全体を均一に所定の温度まで昇温することができる。
 ここでは各加熱コイル451に供給する高周波電力を別々調整する電力調整手段491を備え、各加熱コイル451の位置を調整すると共に、電力調整手段491により各加熱コイル451に給電する高周波電力を異ならせて被加熱領域Hを加熱している。そのため被加熱領域Hの幅方向における発熱量分布をより適切に調整でき、被加熱領域H全体を均一に所定の温度まで昇温することが容易である。
 複数のコイルが同じ形状を有しているので、複数の加熱コイル451を作製することが容易であり、補正係数をより安価に製造できる。
 各変位手段460の動作を制御する姿勢制御部490を備え、姿勢制御部490により被加熱領域Hと各加熱コイル451との間のギャップに対応させて各加熱コイル451の位置を変位させている。そのため、ワークWが昇温することで不均一に変形した場合に、加熱コイル451の向きを調整する手間を簡略化したり無くしたりすることができる。
 姿勢制御部490により加熱期間中に複数の加熱コイル451の位置を変位させている。そのため高温状態でワークWがより大きく変形しても、被加熱領域Hの幅全体を均一に加熱することが可能である。
 なお、上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。
 例えば、上記では位置検出手段480により検出される測定位置を補正すると共に、被加熱領域H1,H2の幅方向における複数の加熱コイル451の配置分布を調整したり、加熱時の被加熱領域H1,H2に沿うように加熱コイル451の角度を調整して配置している。しかし、加熱コイル451の配置分布や角度の調整をせずに、位置検出手段480により検出される測定位置をより適切に補正することで、被加熱領域の不均一な加熱状態のむらを小さくして均一化を図ることは可能である。また測定位置を補正したり加熱コイル451の配置分布を調整することなく、加熱時の被加熱領域H1,H2に沿うように加熱コイル451の角度を調整して配置することで、被加熱領域の不均一な加熱状態のむらを小さくして均一化を図ることが可能である。さらに測定位置の補正や加熱コイル451の角度を調整することなく、被加熱領域H1,H2の幅方向における複数の加熱コイル451の配置分布をより適切に調整することで、被加熱領域の不均一な加熱状態のむらを小さくして均一化を図ることが可能である。
 上記では加熱コイル451に対してワークWを回転させることで加熱コイル451とワークWとを相対移動させる例について説明したが、加熱コイル451を回転させることで相対移動させることも可能である。
 上記では加熱コイル451の角度を加熱期間中に調整する例について説明したが、予め加熱コイル451の被加熱領域H1,H2に対向する面を加熱期間中の被加熱領域H1,H2に沿うように固定的に配置しておくことも可能である。
 上記では変位手段460により全ての加熱コイル451を別々に変位した例を説明したが、加熱コイル451を複数個、例えば2個づつ組み合わせて変位できるようにしてもよい。
 複数の加熱コイル451の配置は、ギャップが変位することや被加熱領域H1,H2の温度分布にむらが生じることを予め見越し、これに対応して予め配置を調整することで均一に加熱できるようにしてもよい。
 ワークWとしては、加熱領域を誘導加熱したときに被加熱領域H1,H2の一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異ならないものであっても本発明を適用することが可能である。即ち、加熱時に被加熱領域H1,H2の温度分布が不均一なときに本発明を適用して、各加熱コイル451の配置を調整することで加熱状態のむらを小さくして均一に加熱できる。
 上記では、被加熱領域H1,H2の幅と加熱コイル451の幅とが近似する例について説明したが、被加熱領域H1,H2の幅より狭い幅を有する複数の加熱コイル451で加熱する場合にも本発明を適用できる。その場合、被加熱領域H1,H2の全長を幅方向に並ぶ帯状の区画に区分けしたときの各区画の長さが異なるワークWを、被加熱領域H1,H2の幅より狭い幅の複数の加熱コイル451で加熱する場合には、複数の加熱コイル451を帯状の区画の長さに応じて、複数の加熱コイル451の対向面積を設定するように配置してもよい。例えば同じ形状の加熱コイル451を長い区画では短い区画より多く配置することもできる。
[第2実施形態]
 第2実施形態では、第1実施形態と同じ熱処理装置を用いてワークWの被熱処理領域H1,H2の両方の熱処理する例である。
 この第2実施形態の熱処理方法では、準備工程と搬入工程と搬送工程とを行い、ワークWが加熱セクション400に搬送された後、各被熱処理領域H1,H2の熱処理を行う。この熱処理では被熱処理領域H1,H2毎に順次熱処理を施す。
 具体的には図21に示すように、治具100上に載置されたワークWの第1被熱処理領域H1を加熱する第1加熱工程S11と、加熱された第1被熱処理領域H1を急冷する第1冷却工程S12と、第1冷却工程S12の後に第1被熱処理領域H1を加熱して徐冷する第1焼戻工程S13とを行い、次いで、第1焼戻工程S13の後でワークWを反転させて治具100上に載置する反転工程S14を行う。その後、反転されたワークWの第2被熱処理領域H2を加熱する第2加熱工程S15と、加熱された第2被熱処理領域H2を急冷する第2冷却工程S16と、第2冷却工程S16の後に第2被熱処理領域H2を加熱して徐冷する第2焼戻工程S17とを行う。
 第1加熱工程S11では、図8(a)及び図22(b)に示すように、加熱セクション400で治具100を所定位置に配置し、治具100を上下方向及び周方向の移動を規制して配置することで、治具100上に載置されたワークWの第1被熱処理領域H1を各加熱位置P3に配置し加熱する。
 ワークWの回転及び冷却を継続して行うと共に、加熱コイル451をワークWの表面に追従させ、加熱コイル451に高周波電力を給電し、第1被熱処理領域H1を誘導加熱する。
 各位置検出手段480によりワークWの径方向位置及び軸方向位置を検出することで、各加熱位置P3における第1被熱処理領域H1の位置が算出される。そのため変位手段460を動作させ、各加熱コイル451をワークWに追従させつつ加熱する。例えばワークWが治具100の中心から偏心した状態で配置されるなどにより、ワークWが回動する際に径方向に変位しながら旋回するような場合であっても、加熱コイル451をワークWに追従させて加熱することができる。
 誘導加熱を継続することで、第1被熱処理領域H1が昇温される。加熱中には補助冷却部440からワークWに冷却液を継続的に吹き付け、第1被熱処理領域H1以外の部位、特に第2被熱処理領域H2が熱処理温度に昇温することを防止する。
 所定の加熱完了状態まで加熱を継続し、被熱処理領域H1の全体を均一に加熱する。例えば第1被熱処理領域H1の温度が所望の温度、例えばA3変態点やA1変態点以上の温度に到達して所定の加熱時間が終了したとき、第1加熱工程S11を終了する。
 第1冷却工程S12では、図10及び図22(b)に示すように、第1加熱工程S11が終了した後、搬送ローダ部220により治具100を下降させ、冷却セクション500に治具100上のワークWを配置し、ワークWを回転させながら、複数位置に設けられた冷却ジャケット520からワークWに多量の冷却液を噴射し、ワークWの第1被熱処理領域H1全体を急冷する。これにより第1被熱処理領域H1に焼入処理を施す。ここでは、加熱セクション400の下方に冷却セクション500が設けられているため、加熱後短時間の間に冷却が開始される。これによりワークWの所望の焼入処理が行われる。
 ワークWの第1被熱処理領域H1の温度が十分に低下した段階で冷却工程を終了する。
 第1冷却工程S12の後、図8(a)及び図22(c)に示すように、第1被熱処理領域H1を加熱して徐冷する第1焼戻工程S13を行う。
 この第1焼戻工程S13では、搬送ローダ部220により図8(a)に示す治具100を上昇させて、加熱セクション400で治具100の上下方向及び周方向の移動を規制して配置することで、治具100上に載置されたワークWの第1被熱処理領域H1を各加熱位置P3に配置し加熱する。加熱時には、第1加熱工程S11で使用したものと同じ加熱コイル451の全部又は一部を用いる。ワークWの回転及び冷却を行うと共に加熱コイル451をワークWの表面に追従させつつ、加熱コイル451に電力を給電して誘導加熱を行い、第1被熱処理領域の表面温度を例えば170℃~200℃に加熱する。所定時間経過後、例えば大気中で冷却する。これによりワークWに低温焼戻処理を施し、第1加熱工程S11及び第1冷却工程S12により形成された硬く脆い組織を焼戻組織にすることで、例えば靱性が向上する。
 次いで、図10及び図22(d)に示すように、搬送ローダ部220により図8(a)に示す治具100を再び下降させ、冷却セクション500に治具100上のワークWを配置し、ワークWを回転させながら、複数位置に設けられた冷却ジャケット520からワークWに多量の冷却液を噴射し、ワークW全体を冷却して十分に低温にする。
 第1焼戻工程S13が終了した後、ワークWの上下を反転させて、図8(a)に示す治具100上に載置する反転工程S14を行う。反転工程S14ではワークWの両端面の向きを反転させる。これにより第1被熱処理領域H1が下方に配置され、第2被熱処理領域H2が上方に配置される。
 次いで、ワークWが載置された図8(a)に示す治具100を移動して、ワークWの第2被熱処理領域H2を各加熱位置P3に配置する。
 反転工程S14の終了後、ワークWの第2被熱処理領域H2を加熱する第2加熱工程S15を行う。本実施形態のワークWでは、第1被熱処理領域H1と第2被熱処理領域H2とが面対称形状で、ワークWを反転させることで第2被熱処理領域H2を反転前の第1被熱処理領域H1と同等に配置できるため、第2加熱工程S15では、第1加熱工程S11で用いたものと同じ加熱コイル451を用いる。
 第2加熱工程S15では、図8(a)及び図23(a)に示すように、第1加熱工程S11と同様にして治具100上に載置されたワークWの第2被熱処理領域H2を加熱する。第2被熱処理領域H2の加熱中には、補助冷却部440から第2被熱処理領域H2に冷却液を継続的に吹き付け、第2被熱処理領域H2が例えばA1、A3変態点以上のような熱処理温度まで昇温することを確実に防止する。
 第2加熱工程S15が終了した後で第2冷却工程S16を行う。第2冷却工程S16では、図10及び図23(b)に示すように加熱された第2被熱処理領域H2を第1冷却工程S12と同様にして冷却セクション500に直ちに移動させて急冷する。これにより第2被熱処理領域H2に焼入処理を施す。
 本実施形態では、第2冷却工程S16後に第2焼戻工程S17を行う。第2焼戻工程S17では、図8(a)及び図23(c)に示すように、第1焼戻工程S13と同様に行う。即ち、治具100を上昇させて、治具100上に載置されたワークWの第2被熱処理領域H2を各加熱位置P3に配置し、第2加熱工程S15で使用した加熱コイル451の全部又は一部を用いて例えば170℃~200℃に加熱し、大気中で冷却する。これによりワークWに低温焼戻処理を施し、第2加熱工程S15及び第2冷却工程S16により形成された硬く脆い組織を焼戻組織にすることで、例えば靱性を向上する。
 次いで、図10及び図23(d)に示すように、搬送ローダ部220により図8(a)に示す治具100を再び下降させ、冷却セクション500に治具100上のワークWを配置し、ワークWを回転させながら、複数位置に設けられた冷却ジャケット520からワークWに多量の冷却液を噴射し、ワークW全体を冷却する。
 その後、焼入されたワークWは治具100と共に搬送ローダ部220に吊り下げられ、図3に示す搬入搬出セクション300に搬送されて、ワークWの全被熱処理領域H1,H2の熱処理が完了する。
 以上のような熱処理方法によれば、環形状のワークWの複数箇所にワーク形状に沿う環状の被熱処理領域H1,H2を設け、複数の被熱処理領域H1,H2を順次熱処理するので、ワークWの大きさや形状にかかわりなく、被熱処理領域H1,H2の形状だけに応じた加熱部450により加熱することができる。そのため、加熱部450をワークWの大きさやワークW自体の形状に依存しない簡素な構成にできる。
 また、ワークWの全ての被熱処理領域H1,H2を同時に加熱する場合に比べて、加熱時に同時に必要な電力を抑えられる。そのため給電設備を簡素に構成できる。
 しかもこの熱処理方法によれば、環形状のワークWの複数箇所にワーク形状に沿って局部的に設けた環状の被熱処理領域H1,H2を順次熱処理する際、第1被熱処理領域H1を第1加熱工程S11及び第1冷却工程S12により熱処理した後、第1焼戻工程S13により第1被熱処理領域H1を加熱及び冷却することで焼戻しを施してから、第2被熱処理領域H2を加熱している。そのため第2被熱処理領域H2を加熱するまでの間や加熱中などに、例えば変形や焼割れのような熱処理欠陥の発生を低減又は防止できる。
 ここではワークWが第2被熱処理領域H2を加熱したときに第2被熱処理領域H2の一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異なるものとなっている。このようなワークWでは、被熱処理領域H2が加熱されるとワークWが不均一に変形するため、第1被熱処理領域H1には変形や焼割れのような熱処理欠陥が生じ易くなるが、この実施形態では焼戻しを施すことで熱処理欠陥を有効に防止できる。
 この実施形態の熱処理方法では、第1加熱工程S11と第1焼戻工程S13とで同じ加熱コイル451により誘導加熱している。そのため加熱コイル451を別々に設ける必要がなく、熱処理装置10の構成を簡素化できる。
 また第1加熱工程S11と第2加熱工程S15とで、第1被熱処理領域H1と第2被熱処理領域H2とを同じ加熱コイル451で誘導加熱している。そのため加熱コイル451を別々に設ける必要がなく、熱処理装置10の構成をより簡素化できる。
する、
 しかも第1被熱処理領域H1と第2被熱処理領域H2とが面対称形状を有しており、第1焼戻工程S13後にワークWを反転させて誘導加熱している。そのため、加熱コイル451を共通に使用できることに加え、加熱コイル451の位置調整等を簡略化でき、被熱処理領域H1,H2を複数有するワークWであっても容易に熱処理を行える。
 上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば上記では第1被加熱領域H1と第2被加熱領域H2との2箇所の被加熱領域を有するワークWを熱処理する例について説明したが、被加熱領域の数は複数であれば何ら限定されるものではない。3箇所以上に環状の被加熱領域が設けられている場合には、被加熱領域毎に順次加熱する際、各被加熱領域の焼入処理が終了する毎に焼戻工程を実施すれば、次の被加熱領域を熱処理する際に焼割れや変形のような熱処理欠陥の発生を抑制できる。
 上記では第1被加熱領域H1と第2被加熱領域H2とが面対称形状の場合について説明したが、ワークWを反転させた際、第2被加熱領域H2が第1被加熱領域H1と傾斜や幅等が異なる場合であっても、複数の加熱コイル451の配置や向きを調整することで、同じ加熱コイル451を用いて第2加熱工程S15を行うことができる。
 また第1被加熱領域H1と第2被加熱領域H2との形状が全く異なるような場合には、第1加熱工程S11と第2加熱工程S15とで加熱コイル451を交換して加熱することで、本発明を同様に適用することが可能である。
 上記では、円環形状のワークWの例について説明したが、ワークWは、例えば板状、棒状、塊状等、他の形状であってもよく、複数の被加熱領域H1,H2が環状に設けるものであれば適用可能である。
 上記では、第1焼戻工程S13及び第2焼戻工程S17では170℃~200℃に加熱して大気中で冷却したが、他の方法により行うことも可能である。
W ワーク
W1 基部
W2 突出部
W3 傾斜面
H1,H2 被加熱領域
C 回転中心
P1 搬入搬出位置
P2 吊り下げ位置
P3 加熱位置
10 熱処理装置(加熱装置)
12,12A,12B,12C 変成器
13,13A,13B,13C 整合器
14 インバータ
14A 順変換部
14B 逆変換部
15 インバータ制御部
15A 順変換制御部
15B 逆変換制御部
16 スイッチ群
16A,16B,16C,16D,16E スイッチ
17 切り替え制御部
18 設定部
19 商用電源
40 加熱冷却架台
42 変位架台
43 位置検出支柱
44 位置検出台
100 治具
110 ワーク支持部
111 放射架台
112 回転ローラ(相対移動手段)
130 中央構造部
200 搬送機構
210 搬送レール
220 搬送ローダ部
246 回転駆動手段
255 回転駆動モータ
300 搬入搬出セクション
400 加熱セクション
410 治具保持機構
440 補助冷却部
450 加熱部
451 加熱コイル
452 支持ボックス
460 変位手段
461 位置調整ハンドル
462 上下変位部
463 水平変位部
464 下架台
465 上下駆動機構
466 変位ガイドロッド
467 縦変位ネジ軸
468 変位軸受
469 上下駆動モータ
471 連結体
472 第1変位レール
473 上架台
474 第1変位駆動機構
475 第2変位レール
476 第2変位駆動機構
477 変位駆動モータ
478 横変位ネジ軸
479 変位突部
480 位置検出手段
481 第1進退機構
482 第2進退機構
483 径方向位置検出具
484 軸方向位置検出具
485 進退用駆動手段
486 ロッド
487 ガイドロッド
488 接触子
489 変化量検出部
490 姿勢制御部
491 電力調整手段
492 角度変向部
493 設定入力部
494 演算処理部
495 記憶部
496 加熱状態判定部
497 駆動制御部
500 冷却セクション
520 冷却ジャケット
600 部品交換セクション
700 給電設備
701 携帯端末器
702 ケーブル
710 操作部
711 入出力画面

Claims (28)

  1.  ワークに一方向に延びて被加熱領域が設定され、該被加熱領域が誘導加熱されたときに該被加熱領域の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なるワークを誘導加熱する加熱装置であって、
     上記被加熱領域の一部に対向する加熱コイルと、上記ワークと上記加熱コイルとを上記一方向に沿って相対移動させる相対移動手段と、を備え、
     上記加熱コイルが加熱期間中の上記被加熱領域に対応するように配置される、誘導加熱装置。
  2.  前記加熱コイルの前記被加熱領域に対向する面が加熱期間中に上記被加熱領域に沿うように、該加熱コイルを前記一方向に沿う軸周り変向する変位手段を備えた、請求項1に記載の誘導加熱装置。
  3.  前記変位手段には、前記変位手段の動作を制御して、加熱期間中に前記加熱コイルの前記被加熱領域に対向する面と該被加熱領域との間の角度の差を小さく又は無くするように調整する姿勢制御部が設けられ、
     前記姿勢制御部は、前記ワークの加熱条件を入力する設定入力部と、前記被加熱領域の設定加熱状態における前記各加熱コイルの上記被加熱領域に対向する面と上記加熱領域との間の相対角度を演算する演算処理部と、上記被加熱領域の加熱状態が上記設定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部と、上記設定加熱状態に達したときに前記変位手段を駆動する駆動制御部と、を備えている、請求項2に記載の誘導加熱装置。
  4.  前記演算処理部は、予め設定されたシミュレーション処理により前記加熱条件に基づいて前記設定加熱状態における前記相対角度を演算して前記加熱コイルの前記被加熱領域に対向する面と該被加熱領域との間の角度を演算する、請求項3に記載の誘導加熱装置。
  5.  加熱期間中に前記ワークの前記被加熱領域以外の表面位置を検出する位置検出手段と、
     上記位置検出手段の検出結果に基づいて上記ワークと前記加熱コイルとの相対位置を変位させる変位手段と、を備え、
     前記変位手段は、上記加熱期間中に上記検出結果から得られた測定位置を少なくともワーク形状に基づいて補正し、補正により得られた補正位置に対応するように上記ワークと上記加熱コイルとの相対位置を変位させる、請求項1に記載の誘導加熱装置。
  6.  前記測定位置は基準位置からの変位として測定され、前記補正位置は測定された上記変位を補正した補正変位である、請求項5に記載の誘導加熱装置。
  7.  前記変位手段には、該変位手段の動作を制御する姿勢制御部が設けられ、
     該姿勢制御部は、前記測定位置を少なくともワーク形状に対応した補正係数により補正して前記補正位置を得ると共に、該補正位置に対応するように上記変位手段の動作を制御する、請求項5に記載の誘導加熱装置。
  8.  前記姿勢制御部は、前記ワークの加熱条件を入力する設定入力部と、前記被加熱領域の設定加熱状態における前記補正係数を記憶する記憶部と、前記被加熱領域の加熱状態が上記設定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部と、前記測定位置と前記補正係数から前記補正位置を演算する演算処理部と、上記補正位置に対応するように前記変位手段を駆動する駆動制御部と、を備えている、請求項7に記載の誘導加熱装置。
  9.  前記演算処理部は、予め設定されたシミュレーション処理により上記加熱条件に基づいて上記設定加熱状態における前記補正係数を演算し、前記記憶部は上記演算部で得られた上記補正係数を上記設定加熱状態に対応させて記憶する、請求項8に記載の誘導加熱装置。
  10.  ワークに一方向に延びて被加熱領域が設定され、該加熱領域を誘導加熱したときに上記被加熱領域の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なる上記ワークを誘導加熱する加熱方法であって、
     上記被加熱領域の一部に加熱コイルを対向させ、上記ワークと上記加熱コイルとを上記一方向に沿って相対移動させつつ上記加熱コイルにより上記ワークを加熱する加熱工程を備え、
     該加熱工程では上記加熱コイルを加熱期間中の上記被加熱領域に沿うように配置する、誘導加熱方法。
  11.  加熱期間中に前記加熱コイルの上記被加熱領域に対向する面を上記被加熱領域に沿わせる、請求項10に記載の誘導加熱方法。
  12.  加熱期間中に上記ワークの上記被加熱領域以外の表面位置を検出し、検出結果から得られた測定位置を少なくともワーク形状に基づいて補正し、補正により得られた補正位置に対応するように上記ワークと上記加熱コイルとの相対位置を変位させる、請求項10に記載の誘導加熱方法。
  13.  一方向に延びて被加熱領域が設定されたワークを誘導加熱する加熱装置であって、
     上記被加熱領域の一部に対向する複数の加熱コイルと、上記ワークと上記複数の加熱コイルとを上記一方向に沿って相対移動させる相対移動手段と、上記加熱コイルの位置を上記被加熱領域の幅方向に別々に変位させる変位手段と、を備え、
     上記変位手段により上記各加熱コイルを変位させることで、上記複数の加熱コイルと上記被加熱領域との対向面積が上記被加熱領域の幅方向に変化するように調整して、上記複数の加熱コイルにより上記被加熱領域を加熱する、誘導加熱装置。
  14.  前記ワークは、被加熱領域を誘導加熱したときに上記被加熱領域の一方の側縁側と他方の側縁側とで変形量が異なるものであり、
     前記変位手段には該変位手段の動作を制御する姿勢制御部が設けられ、
     該姿勢制御部は、加熱期間中に前記被加熱領域と前記各加熱コイルとの間のギャップに対応させて上記各加熱コイルの位置を変位させる、請求項13に記載の誘導加熱装置。
  15.  前記複数の加熱コイルに供給する高周波電力を別々に調整する電力調整手段を備え、
     前記変位手段により上記各加熱コイルの位置を調整すると共に、上記電力調整手段により上記各加熱コイルに給電する高周波電力を異ならせて、上記複数の加熱コイルにより上記被加熱領域を加熱する、請求項13に記載の誘導加熱装置。
  16.  前記姿勢制御部は、前記ワークの加熱条件を入力する設定入力部と、前記被加熱領域の想定加熱状態における上記被加熱領域と前記複数の加熱コイルとの間のギャップに対応した該複数の加熱コイルの配置を決定する演算処理部と、上記被加熱領域の加熱状態が上記想定加熱状態に達したことを判定する加熱状態判定部と、上記想定加熱状態に達したときに上記複数の加熱コイルの配置に基づいて前記変位手段を駆動する駆動制御部と、を備えている、請求項13に記載の誘導加熱装置。
  17.  上記演算処理部は、予め設定されたシミュレーション処理により上記加熱条件に基づいて上記想定加熱状態における上記ギャップを演算して上記複数の加熱コイルの配置を決定する、請求項16に記載の誘導加熱装置。
  18.  一方向に延びて被加熱領域が設定されたワークを誘導加熱する加熱方法であって、
     上記被加熱領域の一部に加熱コイルを対向させ、上記ワークと上記加熱コイルとを上記一方向に沿って相対移動させつつ上記加熱コイルにより上記ワークを加熱する加熱工程を備え、
     加熱期間中に上記複数の加熱コイルを上記被加熱領域の幅方向に別々に変位させることで、上記複数の加熱コイルと上記被加熱領域との対向面積が上記被加熱領域の幅方向に変化するように調整する、誘導加熱方法。
  19.  加熱コイルに並列接続される複数の変成器と、
     上記複数の変成器の何れかに接続される複数の整合器と、
     商用電圧を直流電圧に変換する順変換部、及び該順変換部により変換された直流電圧を指定の周波数の電圧に変換する逆変換部を有するインバータと、
     上記順変換部を制御する順変換制御部、及び上記逆変換部を制御して各々指定された周波数の電圧に変換させる複数の逆変換制御部を有するインバータ制御部と、
     上記加熱コイルと上記複数の変成器の何れかとを接続し、上記複数の変成器の何れかと上記複数の整合器の何れかとを接続し、上記複数の整合器の何れかと上記インバータとを接続し、上記複数の逆変換制御部の何れかと上記逆変換部とを接続するスイッチ群と、
     誘導加熱時間を複数に区分して区分毎に、上記インバータから出力される電圧の周波数の設定情報と上記複数の整合器及び上記複数の変成器の選択による組み合わせで構成されるマッチング回路の選択情報とを誘導加熱条件として設定する設定部と、
     上記設定部で設定された誘導加熱条件に従って、区分毎に、上記複数の逆変換制御部の何れかを選択し上記逆変換部を制御して指定の周波数の電圧を出力すると共に、上記スイッチ群により一の整合器を上記インバータに接続し、この一の整合器を一の変成器に接続し、この一の変成器を上記加熱コイルに接続する切替制御部と、
     を備える、誘導加熱装置。
  20.  前記インバータは、出力インピーダンスを計測するインピーダンス計測部を備え、
     前記切替制御部は、上記インピーダンス計測部から入力される計測結果が許容範囲を超えた場合には、前記設定部に設定されている誘導加熱条件のうち次の区分に関するものを参照することにより、前記複数の逆変換制御部の何れかを選択して上記インバータから出力される電圧の周波数を変化させ、かつ上記スイッチ群を切り替えてインピーダンス整合をとる、請求項19に記載の誘導加熱装置。
  21.  環状体でなるワークに沿って周状に間隔をおいて配備した複数の誘導加熱装置と、誘導加熱条件を設定する設定部と、切替制御部と、を備え、
     上記複数の誘導加熱装置が、それぞれ、上記ワークの被加熱領域に対向するように配置される加熱コイルと、該加熱コイルに並列接続される複数の変成器と、該複数の変成器の何れかに接続される複数の整合器と、商用電圧を直流電圧に変換する順変換部、及び該順変換部により変換された直流電圧を指定の周波数の電圧に変換する逆変換部を有するインバータと、上記順変換部を制御する順変換制御部、及び上記逆変換部を制御して各々指定された周波数の電圧に変換させる複数の逆変換制御部を有するインバータ制御部と、上記加熱コイルと上記複数の変成器の何れかとを接続し、上記複数の変成器の何れかと上記複数の整合器の何れかとを接続し、上記複数の整合器の何れかと上記インバータとを接続し、複数の逆変換制御部の何れかと逆変換部とを接続するスイッチ群と、を備え、
     上記設定部が、上記誘導加熱装置毎にかつ誘導加熱時間を複数に区分して区分毎に、上記インバータから出力される電圧の周波数の設定情報と、上記複数の整合器及び上記複数の変成器の選択による組み合わせで構成されるマッチング回路の選択情報と、を誘導加熱条件として設定し、
     上記切替制御部が、上記設定部で設定された誘導加熱条件に従って、上記誘導加熱装置毎にかつ区分毎に、上記複数の逆変換制御部の何れかを選択して上記逆変換部を制御して指定の周波数の電圧を出力すると共に、上記スイッチ群により一の整合器を上記インバータに接続し、この一の整合器を一の変成器に接続し、この一の変成器を上記加熱コイルに接続する、誘導加熱設備。
  22.  ワークを移動させながらワークを誘導加熱する際、ワークの加熱温度又は加熱時間に応じてワークに流す誘導電流の周波数を異ならせ、周波数の変化に併せて整合器及び変成器の組み合わせを交換する、誘導加熱方法。
  23.  ワークに沿って複数の加熱コイルを配置し、ワークを移動しながら複数の加熱コイルにより誘導加熱をする際、ワークの加熱温度又は加熱時間に応じてワークに流す誘導電流の周波数を異ならせ、周波数の変化に併せて整合器及び変成器の組み合わせを交換する、誘導加熱方法。
  24.  環形状のワークに沿う環状の被加熱領域を複数設け、該被加熱領域毎に順次熱処理を施す方法であって、
     第1被加熱領域を加熱する第1加熱工程と、
     加熱された該第1被加熱領域を急冷する第1冷却工程と、
     該第1冷却工程後に上記第1被加熱領域を加熱して冷却する焼戻工程と、
     該焼戻工程後に第2被加熱領域を加熱する第2加熱工程とを備える、熱処理方法。
  25.  前記ワークは、前記被加熱領域が加熱されたときに該被加熱領域の一方の縁側と他方の縁側とで変形量が異なるものである、請求項24に記載の熱処理方法。
  26.  前記第1加熱工程及び前記焼戻工程では、前記第1被加熱領域を同じ加熱コイルで誘導加熱する、請求項24に記載の熱処理方法。
  27.  前記第1加熱工程及び前記第2加熱工程では、前記第1被加熱領域と前記第2被加熱領域とを同じ加熱コイルで誘導加熱する、請求項24に記載の熱処理方法。
  28.  前記第1被加熱領域と前記第2被加熱領域とが面対称形状を有し、前記焼戻工程後に前記ワークを反転させる、請求項27に記載の熱処理方法。
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