本発明は、大型機械の旋回部に使用する大径金属旋回輪の転動接触面を焼入れするための方法および装置に関する。旋回部を有する大型機械としては、パワーショベルや,ブルドーザー,大型クレーンといった建設機械・土木機械が典型的であるが、大型の風車なども挙げられる。
なお、本明細書でいう「金属旋回輪」は、転がり軸受の軌道輪(ベアリングース)の内の、外径が1m以上の大径のものを指しており、大径であるが故に特殊な製法で製造されている。
すなわち、汎用的な軸受に用いられる外径が1m未満の軌道輪であれば、上記焼入れが、例えばガス炉や浸炭炉等で全体加熱し、小物の場合には複数体を纏めて加熱するなどして量産的に行われるのに対し、大径の金属旋回輪では、設備の経済性,加熱不要部を含めたスケールアップに伴う無駄なエネルギー消費の増大,大型化による難ハンドリング性(特に、変形しやすい加熱時)などが相まって全体加熱には適さないので、耐摩耗性の向上が必要な転動接触面の而も表層部のみを対象として、誘導加熱を利用した一品的な焼入れ処理が行われる。そして、上記大径由来の諸々の特徴は、誘導加熱方式の焼入れ処理に対しても種々の技術的課題をもたらしてきた。
大型機械の旋回部に使用する金属旋回輪には外径が3mを超える大径のものもあることから、金属旋回輪の転動接触面の焼入れには、良く知られた周方向移動焼入方式が多用されている。この周方向移動焼入方式は(図15参照)、金属旋回輪10の転動接触面11(図の例では内周面)の周方向の一部区間を占める小領域を誘導加熱する比較的小さな誘導子12を転動接触面に対向させて、転動接触面と誘導子12とを相対的に周方向へ移動させながら行うものであり、建設機械や土木機械などの旋回部に使用される金属旋回輪に関しては、満足のいく効果を挙げている。
周方向移動焼入方式では、転動接触面11の一箇所から焼入れを開始し、環状の転動接触面11のほぼ全周を焼入れした後、焼入れを終了するが、その際に焼入れのスタート部13とストップ部14とが重なると焼割れが生じることがあるため、スタート部(焼入れ開始点)とストップ部(焼入れ終了点)との間に、非焼入部であるソフトゾーン15が入れられる(例えば特許文献1参照)。
[発明が解決しようとする基本的な課題]
上記ソフトゾーンは焼入れされた部分に比べて摩耗しやすいが、パワーショベルやブルドーザー等には旋回角度・旋回範囲を360゜未満に制限する死点があることから、この死点に転動接触面のソフトゾーンを合わせて金属旋回輪を使用すれば、ソフトゾーンへの力学的負荷を軽減できるので、転動に伴うソフトゾーンの摩耗によって金属旋回輪の寿命が不都合に縮まるといった問題は実質的に無い。また、これらの機械は、間欠運転が常態であって稼働時間が短いため、ソフトゾーンに対する摩耗や載荷の機会が少ないことも、金属旋回輪の寿命に幸いしている。
一方、風力発電所の風車等の旋回部には、そのような死点が無く、間欠運転も望めない。風力発電用風車は旋回角度・旋回範囲の制限がなく自由に而も長時間回転するが、このような機械・装置の旋回部に、ソフトゾーンを有する金属旋回輪を使用すると、転動接触面の摩耗については、当然ながら、焼入れしてないソフトゾーン部分が、焼入れ済みの他の部分に比較して、はやく摩耗する。そのため、金属旋回輪の寿命がソフトゾーンの摩耗に支配され、焼入れされた転動接触面が殆ど正常なままであるにもかかわらず金属旋回輪が使用不能になる、といった極めて不所望な事態に至る。
このようなソフトゾーンの摩耗に対しては、ソフトゾーンを斜めに形成してソフトゾーンの集中的な摩耗を緩和する(例えば特許文献1参照)等のことで、かなりの程度まで、事態を改善することができる。
しかしながら、近年、風車の大形化が進んできて、転動接触面に掛かる負荷が増大してきたため、上記ソフトゾーンの影響緩和程度の施策では足りず、転動接触面からソフトゾーンそのものを無くすことが要請されることとなった。かかる要請に応えるには、従来より多用されてきた周方向移動焼入方式を諦めて、他の焼入方式の採用を考えなければならない。もっとも、外径が1mを超えるような大径の金属旋回輪の場合、汎用的なベアリングレースのような全体加熱は難しいので、表面だけ而もその一部を選択して加熱することができる誘導加熱の手法を改良して、転動接触面を焼入れしてもソフトゾーンが形成されないようにすることが課題となる。
[基本的な課題を解決するための手段]
本発明の請求項1記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法は、このような基本的課題を解決するために創案されたものであり、誘導加熱を利用して金属旋回輪の転動接触面を焼入れする金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法において、前記転動接触面に対向させて環状の誘導子を配置しこの誘導子に高周波通電して大円加熱することで前記転動接触面にその全周に亘って隈なく連なる加熱部を形成してからその加熱部を冷却手段にて冷却することを特徴とする。
すなわち、金属旋回輪の転動接触面に焼入れ処理を施すに際して誘導加熱を行う金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法において、前記転動接触面に環状の誘導子を対向させ、前記誘導子に高周波通電を行うことで、前記転動接触面の総て又は一部たとえば前記金属旋回輪の外周面,内周面,端面などを大円加熱し、それから、その加熱部位を冷却手段(第1冷却手段とする)にて冷却する、というものである。なお、前記誘導子には、誘導加熱に適した適宜な幅のものが用いられ、それを前記転動接触面に対向させるときには、誘導加熱に適した適宜な間隙がとられる。
ここで、上記の「大円加熱」とは、環状の転動接触面を、その全周を閉ループ電路として周回(以下、大円周回という)する誘導電流を生じさせて全周同時に誘導加熱することを指しており、転動接触面の全幅が対象であってもよいし、一部の幅が対象であってもよい。具体的には、転動接触面の全域(全周全幅)の同時加熱は、大円加熱に該当する。転動接触面のうち金属旋回輪の外周面部分の全域や,内周面部分の全域,両端面の何れか一方または双方の全域を同時に加熱するのも、大円加熱に該当する。転動接触面を輪切り状に区割りした小幅環状領域のうち何れかについて周方向の全域を同時に加熱するのも、大円加熱に該当する。これに対し、転動接触面の周方向の一部分を局所加熱するような誘導加熱は、主としてその局所を周回する(即ち、前記大円周回ではない)誘導電流が生じることになるので本発明での大円加熱には該当しない。
次いで、本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の一つの形態として創案されたものであって、前記金属旋回輪の、円筒状に形成されている転動接触面を対象として、当該転動接触面の幅方向の一部を占める小幅環状領域に前記大円加熱により加熱部を形成してからその加熱部を冷却する操作を、この操作の適用部位を当該転動接触面の幅方向に順次移動させながら進めて前記転動接触面の焼入れを行うことを特徴とする、というものである。
即ち、内周面や外周面は円筒状であって等断面形状で連なっていることを活かして小幅の大円加熱を幅方向移動形式で適用する構成としたものである。ここで、「転動接触面の幅方向」は、転動接触面を帯状面とみなしたときの幅方向を意味し、金属旋回輪の軸線と平行なので、「転動接触面の幅方向に移動」は、金属旋回輪の軸線方向に移動と同義である。また、「この操作の適用部位の移動」は、誘導子や第1冷却手段と金属旋回輪との何れか一方または双方を移動させる相対移動を意味する。
[基本的な発明の効果]
これらの本発明の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法にあっては、誘導加熱時に誘導子によって転動接触面に電流が誘導されるが、誘導子が大円加熱の可能な環状になっているので、転動接触面の全周を周回する誘導電流が生じて、転動接触面の処理対象部は全周一様に隈なく加熱され、次いでその加熱部が冷却される。
これにより、転動接触面には周方向に切れ目のない形で全周一様に焼入れが施されることになり、そのため、ソフトゾーンは生じ得ない。
因に、請求項2記載の発明について補足するならば、この発明における焼入れ対象部の移動は、幅方向の一端側から進入して他端側へ退出する形式のものであるため、従来の周方向移動形式のように焼入れ開始点と終了点が出合う問題はなく、上記大円加熱の利点のみが活かされるのである。なお、請求項2記載の発明は、本発明の更なる課題の解決手段としても奏功するが、これについては後述する。
したがって、これらの発明によれば、転動接触面にソフトゾーンの無い焼入れの施された金属旋回輪を提供することができる。
[発明が解決しようとする更なる課題]
このような大円加熱の手法で実際に金属旋回輪の転動接触面の焼入れを行ってみると、外径が1mや2mの金属旋回輪では満足できる結果が得られたが、金属旋回輪の外径が3m前後に及ぶ超大径のものとなると、技術的に解決すべき更なる課題が幾つか生じた。
具体的には、(a)誘導加熱中の金属旋回輪外径変化が無視できないレベルに達して、硬度不足や硬度むらが生じやすくなったという問題の解消、(b)複数列の転動接触面を有する金属旋回輪の場合、或る転動接触面の焼入れ中に他の焼入れ済の転動接触面までが不所望に温度上昇して硬度が低下してしまうという問題の解消、(c)上記課題(a),(b)の解決を、作業者に重大な感電リスクが及ばないような誘導子への通電条件と両立させて実現する技術の提供、の3点である。
上記課題について補足説明する。先ず(a)について云えば、上記外径変化は熱膨張起因のものであり、その内訳は外径寸法増とそれに伴う非真円化歪(素材に内在する微妙な異方性などに起因)とである。そして、上記外径変化が超大径に比例して高位に達する結果、外径寸法増が誘導子との間隙の平均寸法の変化(外周面では減少、内周面では増加)につながって主として内周面の硬度不足をもたらし、また、非真円化歪が間隙寸法のばらつきにつながって硬度斑をもたらすというものである。即ち、加熱時には必至の熱膨張という現象が、外径が1〜2mの金属旋回輪では大した障害とはならず、外径3m前後の超大径金属旋回輪では由々しい障害になるという寸法効果の問題であり、これを解決するためには、転動接触面の焼入れ温度への加熱を、熱膨張を抑制しながら行う技術の提供が課題となる。
次に(b)は、加熱中の転動接触面から加熱対象外の他の転動接触面への伝熱の問題であるから、これを解決するためには、転動接触面の焼入れ温度への加熱を、伝熱による周囲の昇温が不都合なレベルに達しない短時間で行う技術の提供が課題となる。
また、(c)は、前記通電条件が特大の径と大円加熱に伴う総入熱量増の要請も同時に満たすことを要件とするものであることから、難度の高い課題である。
[更なる課題を解決するための手段]
本発明の請求項3記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法は、請求項1又は請求項2記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法であって、上記更なる課題の(a),(b)を解決するために、更に、前記金属旋回輪における前記誘導子との対向面の反対面を冷却装置にて冷却しながら前記転動接触面の焼入れを行うことを特徴とする。すなわち、前記転動接触面の焼入れを行うに際して、前記転動接触面のうち前記誘導子と対向する面を対向面としたとき前記金属旋回輪において前記対向面の反対側に位置して言わば反対面となる面を冷却装置(第2冷却手段)にて冷却する、というものである。なお、反対面の冷却は、反対面を中心に行われれば非加熱面内で反対面の外まで広がっていても良い。
また、本発明の請求項4記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載された金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法であって、同じく上記更なる課題の(a),(b)を解決するために、更に、前記転動接触面の表面電力密度を200W/cm2以上にして前記転動接触面の焼入れを行うことを特徴とする。すなわち、前記転動接触面を焼入れするために前記転動接触面の誘導加熱を行うに際して、前記転動接触面に誘導される表面電力密度が200W/cm2以上に達するような条件の下で、前記誘導子への高周波通電を行う、というものである。
これらの発明に至った経緯は次の通りである。加熱に有効利用される加熱電力の誘導子に印加される供給電力との比が伝送効率といわれるが、伝送効率は、誘導子と転動接触面との結合状態により異なる。大円加熱の誘導加熱に好適な一巻きの環状誘導子の場合、SCM445等の鋼材を誘導加熱して焼入れした幾多の経験によれば、次のようになっている。
すなわち、伝送効率は、外周面の加熱では、75%程度であり、
内周面の加熱では、45%程度であり、
端面の加熱では、45%程度である。
また、例えば、金属旋回輪が外径3mの鉄鋼製品であり、それを大円加熱方式で焼入れする場合、加熱終了時点の金属旋回輪の平均温度をパラメータに採ると、そのときの金属旋回輪の外径(直径)変化は次のようになる。
すなわち、平均温度が200℃のとき、外径が 8mm程度広がり、
平均温度が300℃のとき、外径が12mm程度広がり、
平均温度が400℃のとき、外径が16mm程度広がる。なお、平均温度は加熱部だけでなく非加熱部も含む全域で平均をとった温度である。
金属旋回輪の直径が熱膨張で広がると、その半分だけ金属旋回輪の半径が変化し、転動接触面が変位する。転動接触面が金属旋回輪の外周面である場合、転動接触面の変位によって誘導子と転動接触面との間隙は狭くなる。これは伝送効率・加熱効率を良くする方向の変位であり、誘導子と転動接触面との間隙を当初に広く設定しておくことで容易に対処できるので、大した問題では無い。これに対し、転動接触面が内周面の場合、転動接触面の変位は誘導子と転動接触面との間隙を広げる。これは伝送効率・加熱効率の低下を招くので、当初の誘導子と転動接触面との間隙を極力狭くしておくことが必要になる。
しかしながら、金属旋回輪の外径が3m程度やそれを超える大径となると、外径の増大に伴う加熱時の非真円化歪量の増大によって上記間隙のばらつきも増大するので、それが加熱斑につながらないよう、誘導子と転動接触面との空隙・間隙には10mm程度かそれ以上が必要であり、焼入れ条件の設定を漫然と行ったのでは、加熱効率の低下に伴う加熱時間の延長は否めず、加熱時間を延長すると金属旋回輪の平均温度の上昇を来たし、それによる大きな変位から逃れるために誘導子と転動接触面との空隙・間隙を更に広げる、といった悪循環を繰り返すこととなってしまう。内周面の加熱においては、上記諸々の不利によって特に然りである。
そこで、誘導子と転動接触面との空隙・間隙が不所望に拡大するのを防止するために、金属旋回輪の平均温度の上昇を抑制するべく、以下の着想に至ったのである。
先ず、焼入れ中(誘導加熱中)の転動接触面を残して金属旋回輪を冷却することである。
また、転動接触面の表面電力密度を高くして、焼入れ硬化させたい表層部を焼入れ温度に到達させるための加熱時間を短縮することにより金属旋回輪の平均温度を下げることである。特に、外形3m程度の鋼製旋回輪の場合、上述した外形変化状況より、金属旋回輪の平均温度を300℃以下に下げることが望まれる。
そして、そのためには、表面電力密度を200W/cm2以上にすれば良いであろうことを経験と計算等に基づいて予測し、そうすると良いことを実験で確認した。大径の金属旋回輪は、機械的な強度を確保するために軸方向も経方向も例えば数十mm〜数百mmと極めて厚いことから、SCM445等の鋼材からなるものであれば、表面電力密度を200W/cm2以上で誘導加熱することによって、金属旋回輪の径や断面積などの具体的な形状やその他の焼入れ条件とは殆ど無関係に焼入れ時間の短縮が適う。
更なる課題(a)の解決手段として、前記基本的な課題の解決手段の一つとなっている請求項2記載の発明が、ここでも有用なものとなる。即ち、上記発明にあっては、大円加熱の加熱幅を転動接触面の幅よりも小さくして幅方向移動形式で誘導加熱を行うことから、(1)刻々の体積当り入熱密度を全幅同時大円加熱の数分の一にでき、しかも、この加熱に追随させて前記第1冷却手段による冷却を間を置かずに行うため、入熱部以外の部分への伝熱の時間が少なくて、平均温度の上昇が抑えられるほか、(2)刻々の入熱面積が小さいため前記200W/cm2以上の表面電力密度の確保が、小さめの電源設備によって容易に行えるということである。
なお、これらの熱変形の増大に対する対策、すなわち焼入れ中の転動接触面を残して金属旋回輪を冷却することや,表面電力密度を200W/cm2以上にして金属旋回輪の平均温度を300℃以下に下げること,更には、請求項2記載の方法の採用といった対策は、そのまま、(b)複数列の転動接触面を有する金属旋回輪の或る転動接触面を焼入れするときに、他の焼入れ済み転動接触面の硬度を低下させてしまうのを回避するのにも役立つ。
次に本発明の請求項5記載の金属旋回輪転動面の焼入れ方法は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載された金属旋回輪転動面の焼入れ方法であって、前記更なる課題の(c)を解決するために、更に、前記誘導子に高周波通電する周波数の選定を、金属旋回輪の直径とこの金属旋回輪の転動接触面の表面電力密度とこの転動接触面における誘導加熱の加熱幅の、この誘導子への高周波通電の周波数との関係を近似する所定の実験式に基づいて行う、というものである。ここで「所定の実験式」は、金属旋回輪の転動接触面直径Dとこの転動接触面の表面電力密度Pとこの転動接触面における誘導加熱の加熱幅Wとこの誘導子への高周波通電の周波数fとの関係を近似するものであり、それら四つの物性値D,P,W,fのうち幾つかを適宜範囲で変更して残りの物性値を測定した実験結果に基づいて得られる。具体的には、式[D=B×P−1/2×(δ+α×W)×W−β×f−γ]であり、式中の定数B,δ,α,β,γは、その式に実験値を代入して最尤推定法の演算を行う等のことにより、予め決められている。
また、本発明の請求項6記載の金属旋回輪転動面の焼入れ方法は、請求項5記載の金属旋回輪転動面の焼入れ方法に基づき前記高周波通電の周波数を1000〜10000Hzの範囲に選定することにより、前記誘導子の両端電圧を600V以下に制限した状況の下で前記表面電力密度200[W/cm2]以上を実現する、というものである。
更に、本発明の請求項7記載の金属旋回輪転動面の焼入れ方法は、請求項5又は請求項6記載の金属旋回輪転動面の焼入れ方法において、前記高周波通電を絶縁トランスを介して行う、というものである。
これらの発明に至った経緯は次の通りである。焼入れ中(誘導加熱中)の誘導子の両端電圧をあまり高くすると、作業者に感電等の危険を及ぼすおそれが生じる。また、誘導子が絶縁破壊を起こす可能性も出てくる。
詳述すると、金属旋回輪の転動接触面が所望の表面電力密度となる電力を誘導子に供給して大径の金属旋回輪の転動接触面を大円加熱方式で焼入れするには、誘導子の両端電圧は、従来の周方向移動焼入方式のときより当然高くしなければならない。しかし、誘導子の両端電圧をあまり高くすると、上述したように感電のおそれが生じることも考えられるので、それに関する安全対策を施さなければならず、また、誘導子の絶縁破壊が発生すると正常な焼入れが行えないことにもなる。
これに関しては、誘導子の耐電圧を上げて電気的に対応することも考えられるが、水冷ジャケット(第1冷却手段)一体型の誘導子の場合、冷媒を絶縁性の高いもの例えば純水や油等にしなければならないので、不経済であり、採用し難い。しかし、水冷ジャケット一体型の誘導子は、構造,動作性の両面で理に適ったものなので、大円加熱でも、採用の可能性が高い。また、大仰な安全対策を施こすのも、コストアップを招くので、できれば避けたい。
そこで、作業者の安全を図るとともに冷媒を安価な水道水等で済ませられるよう、供給電圧すなわち誘導子の両端電圧を電気設備基準第3条に定義された電気区分の600V以下の低圧に保つこととした。もっとも、そのためには、供給電圧が600V以下でも適切な焼入れがなされるよう、金属旋回輪の外径の増大・変化に対応して焼入れ条件を調整することが必要になる。そして、その調整対象として、誘導子への高周波通電の周波数と、転動接触面における加熱幅とを選出し、これらの通電周波数と加熱幅を調整すれば金属旋回輪の外径の増大・変化に対応できるであろうと予測した。
さらに、そのような調整が有効であることを確認するとともに調整の仕方等を具体的に把握するために、誘導子の両端電圧と金属旋回輪の転動接触面の直径などとの関係を明らかにするテストを実施した。
具体例を挙げると、SCM445からなる外径1mの金属旋回輪を対象に、その外周面を表面電力密度200W/cm2の供給電力で誘導加熱するときに生じる誘導子の両端電圧Vcと転動接触面における加熱幅Wと高周波通電の周波数fの相互関係は次の表1のようであった。
そして、このようなテストを金属旋回輪の外径1m〜3mの範囲で行い、それに基づいて誘導子の両端電圧Vcを600Vに制限する金属旋回輪の転動接触面の直径Dの、加熱幅Wと周波数fとの関係を表す近似式を定めた。
具体的には、関係式を式1[D=A×(δ+α×W)×W−β×f−γ]と仮定したうえで、その式1に実験値を代入して最小自乗法(最尤推定法)の演算を行うことで、式中の定数A,δ,α,β,γを決定した。
その結果、 A=716.783、 δ=0.983、 α=0.0005566、 β=0.1818、 γ=0.6061 が得られた。
また、他の実験例を挙げると、やはりSCM445からなる外径1mの金属旋回輪を対象に、その外周面を加熱幅W=30mmの大円加熱で誘導加熱するときに生じる誘導子の両端電圧Vcと表面電力密度Pと周波数fの相互関係は次の表2のようであった。
そして、このようなテストを金属旋回輪の外径1m〜3mの範囲で行い、それに基づいてやはり誘導子の両端電圧Vcを600Vに制限する転動接触面直径Dと加熱幅Wと周波数fと表面電力密度Pとの関係を表す近似式を定めた。
具体的には、関係式を式2[D=B×P−1/2×(δ+α×W)×W−β×f−γ]と仮定したうえで、その式2に実験値を代入して最尤推定法の演算を行うことで、式中の定数Bを決定した。なお、δ=0.983、α=0.0005566、β=0.1818、γ=0.6061は式1の値と同じである。そして、B=10136.836が得られた。
これらの式1,式2の精度を確認するために実証試験を行ったところ、転動接触面直径D=1〜3m,加熱幅W=30〜120mm,周波数f=1000〜10000Hz,表面電力密度P=100〜700W/cm2の範囲で、誤差は概ね±5%以内に収まっていた。
式中の定数A,B,δ,α,β,γの精度も同程度と思われる。
更には、本発明の請求項8記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法は、請求項1〜請求項7の何れかに記載された金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法であって更に、前記金属旋回輪を前記誘導子に対して相対的に周方向へ回転させながら前記転動接触面の焼入れを行うことを特徴とする。すなわち、前記転動接触面を焼入れするために前記転動接触面の誘導加熱を行うに際して、前記転動接触面と前記誘導子との対向関係を維持した状態で、前記金属旋回輪をその軸線の周りに回転させて又はそれに代えて若しくはそれに加えて前記誘導子を上記軸線の周りに回転させて、前記転動接触面と前記誘導子とを相対的に回転させる、というものである。
次いで、本発明の請求項9記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置は、誘導加熱を利用して金属旋回輪の転動接触面を焼入れするために、前記金属旋回輪を例えば略水平に支持する架台と、前記転動接触面を誘導加熱する誘導子と、その加熱部位を冷却する第1冷却手段と、前記誘導子に高周波通電する高周波電源とを備えた金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置において、前記誘導子が、前記転動接触面を大円周回する誘導電流を生じさせる大円環状のものであり、前記第1冷却手段が、大円環状の加熱部を冷却する大円環状のものであり、前記誘導子への供給路を電源電路から絶縁する絶縁変圧器が前記高周波電源から前記誘導子に至る電路に介挿されていて、前記誘導子の両端に印加する供給電圧(両端電圧Vc,二次電圧)の伝導を担う二次側電路と電源電圧(一次電圧)の伝導を担う電源電路(一次側電路、前記高周波電源側の電路)とが30kHzを超えない通電周波数に関しては絶縁状態になっている、というものである。
また、本発明の請求項10記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置は、請求項9記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置であって更に、前記誘導子による加熱部位と前記冷却手段による冷却部位とを前記転動接触面の幅方向に移動させる移動装置を設けたことを特徴とする。すなわち、転動接触面を帯状面とみなしたときの幅方向へ誘導子と金属旋回輪との何れか一方または双方を移動させることで両者の相対位置を移動させる移動装置が設けられている。
また、本発明の請求項11記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置は、請求項9又は請求項11に記載された金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置であって更に、前記金属旋回輪を前記誘導子に対して相対的に周方向へ回転させる回転機構を設けたことを特徴とする。すなわち、前記架台と前記誘導子の保持部との何れか一方または双方に対して回転機構が付設され、この回転機構によって前記金属旋回輪がその軸線を中心に回転させられると又はそれに代えて若しくはそれに加えて前記誘導子がその軸線を中心に回転させられると、前記転動接触面と前記誘導子とが両者の対向関係を維持した状態で相対的な回転を行うようになっている、というものである。
また、本発明の請求項12記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置は、請求項9乃至請求項11の何れかに記載された金属旋回輪転動接触面の焼入れ装置であって更に、前記金属旋回輪を周方向同時に冷却する冷却装置を、前記誘導子とは反対側から前記金属旋回輪を臨むところに、設けたことを特徴とする。すなわち、前記誘導子とは反対側から前記金属旋回輪を臨むようにして冷却装置(第2冷却手段)が設けられており、これによって、前記転動接触面の焼入れ時に、前記転動接触面のうち前記誘導子と対向する面を対向面としたとき前記金属旋回輪において前記対向面の反対側に位置して言わば反対面となる面について、周方向にほぼ一巡する範囲に亘って同時に冷却が行われるようになっている、というものである。
[発明の更なる効果]
本発明の請求項3記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法及び請求項12記載の金属旋回輪転動面の焼入れ装置にあっては、大径の金属旋回輪を大円加熱するに際して反対側は冷やすようにしたことにより、全入熱量が多くても金属旋回輪の平均温度の上昇は抑制されるので、金属旋回輪の変形量が小さくなる。焼入れ済み部位の硬度低下の防止にも役立つ。
また、本発明の請求項4記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法にあっては、大径の金属旋回輪を大円加熱するに際して表面電力密度が200W/cm2以上になるようにしたことにより、加熱面が急速に昇温するため、焼入れに必要な加熱が短時間で済むことから、全入熱量は少なくなるので、金属旋回輪の平均温度の上昇が抑制されて、金属旋回輪の変形量が小さくなる。焼入れ済み部位の硬度低下の防止にも役立つ。
さらに、本発明の請求項2記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法及び請求項10記載の金属旋回輪転動面の焼入れ装置にあっては、大径の金属旋回輪を大円加熱するに際して幅方向移動も行うようにしたことにより、単位時間当たりの供給電力および入熱量が少なくなることから、金属旋回輪の平均温度の上昇が抑制されるので、金属旋回輪の変形量が小さくなる。高周波電源のパワー不足も回避でき、焼入れ済み部位の硬度低下の防止にも役立つ。
また、本発明の請求項7記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法及び請求項9記載の金属旋回輪転動面の焼入れ装置にあっては、大径の金属旋回輪を大円加熱するに際して誘導子が高周波電源から、30kHzを超えない通電周波数に関しては絶縁されるようにしたことにより、作業者が誤って誘導子に触れたような場合でも、作業者に印加される電圧は誘導子の両端電圧を超えないので、誘導子への供給電圧を制限することで確実に感電対策を履行することができる。さらに、本発明の請求項6記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法にあっては、誘導子への供給電圧を制限して誘導子の両端電圧Vcが600V程度かそれ以下になるようにもしたことにより、規格に則って安全に大円加熱を行うことができる。
また、本発明の請求項5記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法にあっては、供給電圧600Vの条件や表面電力密度200W/cm2の条件を満たす焼入れ条件で大径の金属旋回輪を大円加熱するときの焼入れ条件を決定するに際し、所定の実験式に基づいて周波数や加熱幅を決定するようにしたことにより、迅速かつ的確に焼入れ条件を決めることができる。
また、本発明の請求項8記載の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法及び請求項11記載の金属旋回輪転動面の焼入れ装置にあっては、大径の金属旋回輪を大円加熱するに際して金属旋回輪と誘導子とを相対回転させるようにしたことにより、金属旋回輪が熱膨張で変形や変位しても、その影響が周方向に平均化されるので、焼入れ状態が均一化して、焼むら等の発現が抑制される。
本発明の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法及び装置の一実施形態を、図面を引用して説明する。先ず図1,図2を参照して焼入れ対象の金属旋回輪20を説明し、次に図3〜図6を参照して焼入れ装置40の構造を説明する。そのうち図3は端面加熱用の誘導子30の構造を示し、図4は焼入れ装置40の全体構造を示し、図5は高周波電源50,60の構成を示し、図6は第1,第2冷却手段を示している。
先ず、図1,図2に具体例を示した金属旋回輪20を説明する。図1は、(a)及び(b)が組み上がった状態、(c)及び(d)が展開状態を示し、(a)が金属旋回輪20の斜視図、(b)がその一部の断面拡大図、(c)がリングの展開斜視図、(d)がその一部の断面拡大図である。図2は、(a)がリテイニングとその転動接触面を示す一部断面拡大図、(b)がノーズリングとその転動接触面を示す一部断面拡大図、(c)がサポートリングとその転動接触面を示す一部断面拡大図である。
金属旋回輪20は(図1参照)、外輪の上半分をなすリテイニング21と、内輪をなすノーズリング22と、外輪の下半分をなすサポートリング23と、リテイニング21とノーズリング22とに介在して転動する多数のローラ24と、ノーズリング22とサポートリング23とに介在して転動する多数のローラ25,26とを具えている。各リング21〜23にはローラ24〜26の転動する転動接触面があり、それを焼入れにて強化するために、リング21〜23はSCMやSNCM等の鉄鋼やその他の焼入れ可能な金属で作られる。
転動接触面は、円環状に連続した帯状面であり、端面のものと内周面のものと外周面のものとに大別される。具体的には、リテイニング21の下向き端面のうちローラ24と接触する部分が転動接触面21aであり(図2(a)参照)、ノーズリング22の外周面は全部がローラ26と接触する転動接触面22aであり(図2(b)参照)、ノーズリング22の上下端面のうちローラ24,25と接触する部分が転動接触面22bであり(図2(b)参照)、サポートリング23の上向き端面のうちローラ25と接触する部分が転動接触面23aであり(図2(c)参照)、サポートリング23の内周面のうちローラ26と接触する部分が転動接触面23bである(図2(c)参照)。なお、下向き端面は、焼入れ時にリングを上下反転することで、上向き端面と同様に処理することができる(図2(a)二点鎖線を参照)。
図3に具体例を示した端面加熱用の誘導子30の構造を説明する。図3は、(a)がサポートリング23とその上向き端面に位置する転動接触面23aに対応した誘導子30との斜視図であり、(b)がその誘導子30の一部断面拡大図、(c)が対向状態の誘導子30とサポートリング23との縦断面図、(d)がその一部拡大図である。
誘導子30は、高周波通電のため銅等の良導体からなる一巻きのコイルであり、通電端31,32のところは別として、その他のところは連続している。
誘導子30は、転動接触面23aを一発加熱するために、転動接触面23aとほぼ同じ大径の環状体に形成されていて転動接触面23aのほぼ全周に対して対峙しうるようになっている。また、誘導子30の下面は、各部が転動接触面23aのほぼ全周に亘って等距離で対向するよう、平らになっている。さらに、この誘導子30は、後述の第1冷却手段の作用部を兼ねているので、冷却用の通水を担うために中空の管体からなり、転動接触面23a対向面である下面には、多数の噴射口34が貫通して穿孔されている。
図4に正面図と左側面図を示した焼入れ装置40は、誘導子30を保持するために基台部41と昇降機構42と位置調整機構43と吊持機構44とを具え、焼入れ対象の金属旋回輪たとえばサポートリング23を支持するために架台45を具えている。
架台45の頭頂部の円板46は、水平に設けられ、上面には適宜な留め具たとえば突起等が付設されていて、転動接触面23aを上に向けてサポートリング23を乗せるとそれを横たえた状態で安定支持するようになっている。
そのサポートリング23の転動接触面23aに誘導子30の下面を対向させるために、誘導子30を円板46の上方に吊り下げる吊持機構44は、位置調整機構43と昇降機構42とを介して、基台部41に連結され支持されている。基台部41は干渉しない程度に架台45から離れたところに設置されており、昇降機構42は位置調整機構43を鉛直方向に昇降させるものであり、位置調整機構43は吊持機構44を水平方向すなわち前後左右に移動させるものであり、吊持機構44は軽量なリンク機構からなり誘導子30を水平に吊持するための長さ調整用ねじ等も組み込まれている。図示は割愛したが、後述の高周波電源(60)から誘導子30の通電端31,32に至る高周波ケーブル(二次側電路56)や、誘導子30への給水管(第1冷却手段)も、吊持機構44を利用してサポートリング23と干渉しないように配線,配管されている。
図5(a)にブロック図を示した高周波電源50は非絶縁タイプの典型例であり、図5(b)にブロック図を示した高周波電源60は絶縁タイプのものであって更に周波数も可変設定できるものである。高周波電源50は対比のため示したにすぎず、この実施形態では高周波電源60を用いる。
高周波電源50,60は、交流源51から供給された既定周波数の交流電力を整流部52で直流にし、それをインバータ53,63で所望周波数の高周波に変換して出力するものであり、その出力ラインである一対の電源電路54(一次側電路)と、誘導子30の通電端31,32に接続される一対の二次側電路56との間に、変圧器55,65が介挿接続されている。
非絶縁変圧器55を有する高周波電源50は、誘導子30の対地電圧が、高いところではインバータ53の出力電圧に等しくなるか、非絶縁変圧器55の巻き数比によってはインバータ53の出力電圧より高くなる。二次側電路56は絶縁ケーブル等で隠蔽されるが、誘導子30は露出しているので、作業者の安全のためには、誘導子30の対地電圧が高くならないようにすることが望ましい。その点、電源電路54と二次側電路56とを30kHzを超えない通電周波数に関しては絶縁する絶縁変圧器65を有する高周波電源60では、誘導子30が大地から電気的に浮いた状態になるので、焼入れのための誘導加熱に多用される上記低周波寄りの周波数であれば対地電圧はさしてかからない。
そのため、例え作業者が誤って誘導子30に接触しても大した感電にはならないので、比較的安全であるから、この実施形態では高周波電源50は用いないで高周波電源60を用いる。
また、高周波電源60のインバータ63は、制御装置61(コントローラ)によって高周波通電の開始や停止が制御される他、その高周波の周波数も可変制御されるようになっている。すなわち、高周波電源60は、作業者が制御装置61に所望の時間と周波数とを指定・設定すると、その周波数の高周波を誘導子30に指定時間だけ供給するようになっている。
さらに、高周波電源60は、誘導子の両端電圧Vcすなわち二次側電路56を介して誘導子30の31,32に印加する供給電圧を600V以下にするため、誘導子30の両端電圧Vcを測定している。両端電圧Vcを測定するには絶縁変圧器65の二次電圧を高周波電圧計57で測るのが正確で良い。又、高周波電源60の出力電圧を絶縁変圧器65の巻き数比で割った値を用いても良い。インピーダンス降下分だけ誘導子30の両端電圧Vcは低くなるが安全側なので問題ない。
図6(a)に断面構造を示した第1冷却手段は、作動部が誘導子30と一体化されたものであり、加熱面を冷却するために、誘導子30の中空に供給された冷却水35(冷媒)を噴射口34から加熱後の転動接触面23aに吹き付けるようになっている。
図6(b)に断面構造を示した冷却装置70(第2冷却手段)は、作動部が円板46と一体化されたものであり、サポートリング23において加熱対象の転動接触面23aと反対側に位置する反対面を冷却するために、サポートリング23の下面を支承する円板46の上面のうち上記反対面が当たるところに通水溝46aが彫り込み形成され、そこに給水管71から冷却水72を供給して通水するようになっている。誘導子の両端電圧Vcが600V以下なので、冷却水35,72には安価な水道水が使われる。
このような焼入れ装置40を使用してサポートリング23の転動接触面23aを焼入れする方法を、図面を引用して説明する。図7は、端面に位置する転動接触面を焼入れするときの手順を示すフローチャートである。
金属旋回輪の端面の焼入れに先だって、先ず、所定の実験式を利用して誘導加熱用高周波の周波数fを決定する(ステップS11)。具体的には、発明が解決しようとする更なる課題の欄で既述した式1[D=A×(δ+α×W)×W−β×f−γ]又は式2を用い、これに転動接触面直径Dと加熱幅Wとを代入して周波数fを算出する。ここで、転動接触面直径Dは転動接触面23aの平均直径、加熱幅Wは転動接触面23aの幅または誘導子30の幅であり、何れも金属旋回輪20の仕様によって与えられる。誘導子の両端電圧Vcが600Vで表面電力密度Pが200W/cm2のとき定数A,δ,α,β,γは既述した通りである。例えば、転動接触面直径Dが1.948mで加熱幅Wが30mmのとき周波数fは6000Hzになり、転動接触面直径Dが3.015mで加熱幅Wが30mmのとき周波数fは3000Hzになる。
また、転動接触面23aの面積に表面電力密度200W/cm2を掛け更に加熱部位対応の伝送効率すなわち端面の伝送効率η(=0.45)で割って一発加熱に必要な高周波電源60の容量を決定する(ステップS11)。
例えば、転動接触面直径Dが3mで加熱幅Wが30mmの端面を一発加熱するのに必要な供給電力は、式[π×D×W×P/η]を演算して、約1256kWとなる。
次いで、その容量を有する高周波電源60の選定を試みる(ステップS12)。高周波電源60の選定条件には、上記容量のことだけでなく、600Vに絶縁変圧器65の巻き数比を掛けた電圧を二次側電路56に出力できること、インバータ63が上記周波数fの高周波を出力しうることも、加わる。最後の条件は、インバータ63が周波数可変なので、制御装置61に周波数fを設定すれば足りる。
そして、高周波電源60を選定できたときには(ステップS13)、一発加熱にて転動接触面23aの焼入れを行う。具体的には、上述した焼入れ装置40にやはり上述の誘導子30を装着し、その通電端31,32に選定済み高周波電源60の二次側電路56を接続し、サポートリング23を架台45の円板46に載置し、焼入れ装置40の昇降機構42及び位置調整機構43を作動させて誘導子30を転動接触面23aに適切な空隙たとえば15mmで対向させる。それから、高周波電源60を作動させて上記周波数fの高周波を上記出力電圧で出力させる。
そして、焼入れ条件に対応して予め決定しておいた所定時間、又は加熱面すなわち転動接触面23aの温度を測定しながらその温度が焼入れ条件の所定温度に到達するまでの時間、誘導子30に高周波通電して誘導加熱を行い、その後、高周波通電を停止する。それから、冷却水35を噴射口34から吹き出させて転動接触面23aの冷却を行う。なお、この場合、焼入れ装置40の冷却手段は、誘導子30に冷却水35を供給する第1冷却手段で足り、第2冷却手段の冷却装置70はあっても良いが必須ではない。昇降機構42や位置調整機構43も、誘導子30の位置決めを他の手段で行えれば無くても良い。
そして、直ぐに所望容量の高周波電源60を選定することができなかったときには(ステップS14)、必要な容量を下げて高周波電源60の再選定を行う。具体的には、使用可能な高周波電源60の最大出力を所望容量で割り、この比率を200W/cm2に掛けて表面電力密度Pとする。この値が50W/cm2に満たないときには加熱時間が長くなりすぎてサポートリング23の平均温度が上がりすぎるので一発加熱を諦めざるを得ないが、そうでなければ、その高周波電源60を選定するとともに、周波数fの決定を遣り直す。
具体的には、発明が解決しようとする更なる課題の欄で既述した式であって表面電力密度Pも含む式2[D=B×P−1/2×(δ+α×W)×W−β×f−γ]を用い、これに表面電力密度Pと転動接触面直径Dと加熱幅Wとを代入して周波数fを算出する。ここでも、転動接触面直径Dは転動接触面23aの平均直径、加熱幅Wは転動接触面23aの幅または誘導子30の幅であり、何れも金属旋回輪20の仕様によって与えられる。表面電力密度Pは選定可能な高周波電源60の容量に合わせて算出された値であり、誘導子の両端電圧Vcが600Vのとき定数B,δ,α,β,γは既述した通りである。
この場合は焼入れ装置40に条件が追加され、第1冷却手段だけでなく冷却装置70等の第2冷却手段も必要となる。そして、このような焼入れ装置40と高周波電源60との都合がついたら、転動接触面23aの反対面を冷却しながら一発加熱にて転動接触面23aの焼入れを行う(ステップS15)。具体的には、焼入れ装置40に誘導子30を装着し、誘導子30に高周波電源60を接続し、サポートリング23を架台45の円板46に載置して、誘導子30と転動接触面23aとを対向させる。それから、高周波電源60を作動させて上記周波数fの高周波を上記出力電圧で出力させるとともに、冷却装置70も作動させて円板46の通水溝46aに冷却水72を流してサポートリング23を転動接触面23aの反対側から冷却する。
そして、焼入れ条件に対応して予め決定しておいた所定時間、又は加熱面すなわち転動接触面23aの温度を測定しながらその温度が焼入れ条件の所定温度に到達するまでの時間、反対面の冷却を行いながら転動接触面23aの誘導加熱を行い、その後、高周波通電を停止する。それから、冷却水35を噴射口34から吹き出させて転動接触面23aすなわち加熱面の冷却を行う。
最後に、サポートリング23が冷えたら冷却水35,72の供給を止めて、サポートリング23を架台45から外す。
こうして、この実施形態にあっては、サポートリング23が大径であっても、大抵の場合に大円加熱が行なえて、転動接触面23aを大きく一巡する誘導電流によって転動接触面23aは適切かつ十分に加熱されるとともに、サポートリング23の平均温度は不所望な変形を招くことのないよう適度に抑えられるので、ソフトゾーンの無い焼入れを行うことができる。なお、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、リテイニング21の端面に位置する転動接触面21aや、ノーズリング22の両端面に位置する転動接触面22bについても、同様にして同様の焼入れを行うことができる。
本発明の金属旋回輪転動接触面の焼入れ方法及び装置の他の実施形態について、その構成を、図面を引用して説明する。図8〜図10を参照して周面の誘導加熱に適した誘導子30の構造を説明する。なお、誘導子には同じ符号「30」を付して図示したが、図8の誘導子30はサポートリング23の内周面に位置する転動接触面23bの一発加熱に適したものであり、図9の誘導子30はノーズリング22の外周面に位置する転動接触面22aの一発加熱に適したものであり、図10の誘導子30はノーズリング22の外周面の転動接触面22aの移動加熱に適したものである。
図8に具体例を示した内周面加熱用の誘導子30の構造を説明する。図8は、(a)がサポートリング23とその内周面に位置する転動接触面23bに対応した誘導子30との斜視図であり、(b)がその誘導子30の一部断面拡大図、(c)が対向状態の誘導子30とサポートリング23との縦断面図、(d)がその一部拡大図である。
この誘導子30も、高周波通電のため銅等の良導体からなる一巻きのコイルであり、通電端31,32のところは別として、その他のところは連続している。
この誘導子30は、転動接触面23bを内側から一発加熱するために、転動接触面23bより少し小径であるがそれに近い大径の環状体に形成されていて転動接触面23bのほぼ全周に対して対峙しうるようになっている。また、誘導子30の外周面は、各部が転動接触面23bのほぼ全周に亘って等距離で対向するよう、平らになっている。さらに、この誘導子30は、やはり第1冷却手段の作用部を兼ねているので、冷却用の通水を担うために中空の管体からなり、転動接触面23b対向面である外周面には、多数の噴射口34が貫通して穿孔されている。
図9に具体例を示した外周面加熱用の誘導子30の構造を説明する。図9は、(a)がノーズリング22とその外周面に位置する転動接触面22aに対応した誘導子30との斜視図、(b)がその誘導子30の一部断面拡大図、(c)が対向状態の誘導子30とノーズリング22との縦断面図、(d)がその一部拡大図である。
この誘導子30も、高周波通電のため銅等の良導体からなる一巻きのコイルであり、通電端31,32のところは別として、その他のところは連続している。
この誘導子30は、転動接触面22aを外側から一発加熱するために、転動接触面22aより少し大径であるがそれに近い大径の環状体に形成されていて転動接触面22aのほぼ全周に対して対峙しうるようになっている。また、誘導子30の内周面は、各部が転動接触面22aのほぼ全周に亘って等距離で対向するよう、平らになっている。さらに、この誘導子30は、やはり第1冷却手段の作用部を兼ねているので、冷却用の通水を担うために中空の管体からなり、転動接触面22a対向面である内周面には、多数の噴射口34が貫通して穿孔されている。
図10に具体例を示した外周面移動加熱用の誘導子30の構造を説明する。図10は、(a)がノーズリング22の外周面に位置する転動接触面22aに対応した誘導子の一部断面拡大図、(b)が対向状態の誘導子30とノーズリング22との一部断面拡大図である。
この誘導子30も、高周波通電のため銅等の良導体からなる一巻きのコイルであり、通電端31,32のところは別として、その他のところは連続している。
この誘導子30は、転動接触面22aを外側から加熱するが一発加熱ではなく移動加熱を行うためのものなので、幅(図では上下方向の厚さ)がノーズリング22の幅よりも狭くなっている。ただし、径に関しては転動接触面22aより少し大径であり、やはり大径の環状体に形成されていて転動接触面22aの全幅ではないがほぼ全周に亘って対峙しうるようになっている。また、誘導子30の内周面は、各部が転動接触面22aのほぼ全周に亘って等距離で対向するよう、平らになっている。この誘導子30は、第1冷却手段と別になっているので、噴射口34が無い。
加熱面である転動接触面22aを冷却するための第1冷却手段の作用部には、転動接触面22aの直径より内径が少し大きい給水管80が採用されている。給水管80には多数の噴射口81が内向きに形成されており、給水管80は誘導子30の直下に付設されている。なお、図10(c)に一部断面拡大図を示した他の誘導子30は、誘導子30と噴射口81との上下方向距離が異なるだけである。その距離と誘導子30の移動速度とで加熱から冷却までの時間が決まるものとなっている。
このような誘導子30と焼入れ装置40と高周波電源60とを使用してノーズリング22の外周面に位置する転動接触面22aを焼入れする方法を、図面を引用して説明する。図11は、周面(内周面,外周面)に位置する転動接触面を焼入れするときの手順を示すフローチャートである。
金属旋回輪の端面の焼入れに先だって、先ず、上述した(ステップS11)と同じく、既述の式1を利用して誘導加熱用高周波の周波数fを決定し(ステップS21)、さらに、転動接触面22aの面積に表面電力密度200W/cm2を掛け更に加熱部位対応の伝送効率すなわち外周面の伝送効率η(=0.75)で割って一発加熱に必要な高周波電源60の容量を決定する(ステップS21)。例えば、転動接触面直径Dが3mで加熱幅Wが45mmの外周面を一発加熱するのに必要な供給電力は、式[π×D×W×P/η]を演算して、約1130kWとなる。
次いで、その容量を有する高周波電源60の選定を試みる(ステップS22)。高周波電源60の選定条件は、上述した(ステップS12)と同じく、容量と供給電圧と周波数fである。そして、高周波電源60を選定できたときには(ステップS23)、一発加熱にて転動接触面22aの焼入れを行う。この場合、誘導子30には、図9の一発加熱用のものが採用される。また、焼入れ装置40の冷却手段は第1冷却手段で足り、昇降機構42は必須でない。具体的には、上述した(ステップS13)と同様、ノーズリング22の転動接触面22aに誘導子30を対向させ(図12(a)参照)、その状態で誘導子30に高周波通電して転動接触面22aを誘導加熱し(図12(b)参照)、その後、冷却水35を誘導子30の噴射口34からノーズリング22の外周面に吹き付けて転動接触面22aを冷却する(図12(c)参照)。
そして、直ぐに所望容量の高周波電源60を選定することができなかったときには、必要な容量を下げて高周波電源60の再選定を行うことになるが、その前に(ステップS24)、図9の誘導子30を用いる一発加熱を優先的に試行するか、図10の誘導子30を用いる移動加熱を優先的に行うか、何れかを選択する。
一発加熱なら既存の誘導子30が使えるが移動加熱ではそうはいかない等のため一発加熱を優先的に試行する場合(ステップS25)、上述した(ステップS14)と同じく、必要な容量を下げて高周波電源60の再選定を行い(ステップS25)、既述の式2を用いて周波数fを再算出する。そして、転動接触面22aの反対面22cを冷却しながら一発加熱にて転動接触面22aの焼入れを行う(ステップS26)。
具体的には、上述した(ステップS15)と同様、ノーズリング22の転動接触面22aに誘導子30を対向させるとともに反対面22cに冷却装置70の給水管73を対向させる(図13(a)参照)。その状態で、冷却水72を給水管73の噴射口74からノーズリング22の内周面に吹き付けて反対面22cを冷却しながら、誘導子30に高周波通電して転動接触面22aを誘導加熱する(図13(b)参照)。その後、冷却水35を誘導子30の噴射口34からノーズリング22に吹き付けて転動接触面22aを冷却する(図13(c)参照)。この場合、誘導子30にはやはり図9の一発加熱用のものが採用され、昇降機構42も必須でないが、焼入れ装置40は、第1冷却手段だけでなく第2冷却手段(冷却装置70)も具備していることが必要である。
優先試行の選択で一発加熱でなく移動加熱を選択したときや(ステップS24,No)、一発加熱を試行したが高周波電源60を選定できなかったときには(ステップS25,No)、とりあえず容量の条件を外して高周波電源60を選定する(ステップS27)。そして(ステップS28)、その高周波電源60の容量と一発加熱時の必要容量との比を転動接触面22aの幅に掛けて加熱幅上限値を算出し、この値か又はこれより小さい適宜な値を加熱幅Wとし、転動接触面22aに対向する面の幅が加熱幅Wに等しい移動加熱用誘導子30を採択または制作する(図10参照)。
例えば、上述の具体例(図11,ステップS21)では転動接触面直径Dが3mで加熱幅Wが45mmの外周面を一発加熱するのに必要な供給電力が約1130kWであったが、この場合(ステップS28)、加熱幅Wを1/3の15mmにすると、供給電力が約337kWで足りるので、高周波電源60を容易に選定することができる。
加熱幅Wを決定したら、上述した(ステップS21)と同じく、既述の式1又は式2を利用して誘導加熱用高周波の周波数fを算定しなおす(ステップS28)。
さらに、焼入れ装置40には、誘導加熱を行っている最中に定速送りが行える昇降機構42(移動装置)を具備したものが選定される。
それから、誘導子30を移動させながら誘導加熱にて転動接触面22aの焼入れを行う(ステップS29)。具体的には、上述した定速送り可能な焼入れ装置40に上述の移動加熱用誘導子30を装着し、その通電端31,32に選定済み高周波電源60の二次側電路56を接続し、ノーズリング22を架台45の円板46に載置し、焼入れ装置40の昇降機構42及び位置調整機構43を作動させて誘導子30を転動接触面22aとの正対位置の直下に位置させる(図14(a)参照)。
その状態で、高周波電源60を作動させて、上記周波数fの高周波を上記出力電圧で出力させる。そして、焼入れ条件に対応して決まっている一定速度で、通電中の誘導子30を上昇させて、転動接触面22aを移動加熱する(図14(b)参照)。誘導子30に随伴して給水管80も上昇するので、給水管80が転動接触面22aのところへ来たら又はその前から、冷却水82を給水管80から吹き出させる(図14(b)参照)。これにより、転動接触面22aが順に加熱されるとともに一定時間遅れで冷却されて(図14(c)参照)、転動接触面22aの焼入れが完了する。なお、この移動加熱の場合、焼入れ装置40の冷却手段は、給水管80の第1冷却手段で足り、第2冷却手段はあっても良いが必須ではない。
こうして、この実施形態にあっても、ノーズリング22が大径であろうと、確実に大円加熱が行なえて、転動接触面22aを大きく一巡する誘導電流によって転動接触面22aは適切かつ十分に加熱されるとともに、ノーズリング22の平均温度は不所望な変形を招くことのないよう適度に抑えられるので、ソフトゾーンの無い焼入れを行うことができる。なお、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、サポートリング23の内周面に位置する転動接触面23bについても、同様にして同様の焼入れを行うことができる。
[その他]
上述の実施形態1,2において焼入れ装置40を確保する際、その架台45に、円板46を軸回転させる回転機構が組み込まれているものを採用して、誘導加熱時に回転機構を作動させて円板46上の金属旋回輪を回転させるようにしても良い。あるいは、吊持機構44等を改造して誘導子30を回転させるようにしても良い。対向状態を維持しながら環状の誘導子30と金属旋回輪とを相対回転させることにより、熱変形等に起因する対向距離の局所変動などの不所望な影響が周方向に平均化される。
上述の実施形態2では、移動加熱を行う際に、昇降機構42にて誘導子30を移動させたが、例えば架台45の円板46を昇降させて、金属旋回輪と誘導子30とを相対移動させるようにしても良い。金属旋回輪の幅方向に相対移動できれば、昇降に限らず、水平移動や斜め移動でも良い。
本発明の一実施形態について、金属旋回輪の具体例を示し、(a)が金属旋回輪の斜視図、(b)がその一部の断面拡大図、(c)がリングの展開斜視図、(d)がその一部の断面拡大図である。
(a)がリテイニングとその転動接触面を示す一部断面拡大図、(b)がノーズリングとその転動接触面を示す一部断面拡大図、(c)がサポートリングとその転動接触面を示す一部断面拡大図である。
(a)がサポートリングの端面に位置する転動接触面に対応した誘導子の斜視図、(b)がその誘導子の一部断面拡大図、(c)が対向状態の誘導子とサポートリングとの縦断面図、(d)がその一部拡大図である。
焼入れ装置の構造を示し、(a)が正面図、(b)が左側面図である。
(a)が非絶縁タイプの高周波電源のブロック図、(b)が絶縁タイプの高周波電源のブロック図である。
(a)は加熱面の冷却手段の構成例を示す断面図、(b)は反対面の冷却装置の構成例を示す断面図である。
端面に位置する転動接触面を焼入れするときの手順を示すフローチャートである。
本発明の他の実施形態について、(a)がサポートリングの内周面に位置する転動接触面に対応した誘導子の斜視図、(b)がその誘導子の一部断面拡大図、(c)が対向状態の誘導子とサポートリングとの縦断面図、(d)がその一部拡大図である。
(a)がノーズリングの外周面に位置する転動接触面に対応した誘導子の斜視図、(b)がその誘導子の一部断面拡大図、(c)が対向状態の誘導子とノーズリングとの縦断面図、(d)がその一部拡大図である。
(a)がノーズリングの外周面に位置する転動接触面に対応した誘導子の一部断面拡大図、(b)が対向状態の誘導子とノーズリングとの一部断面拡大図、(c)が他の誘導子の一部断面拡大図である。
周面に位置する転動接触面を焼入れするときの手順を示すフローチャートである。
一発加熱での焼入れを時系列で示す一部断面拡大図である。
反対面冷却付き一発加熱での焼入れを時系列で示す一部断面拡大図である。
幅方向移動加熱での焼入れを時系列で示す一部断面拡大図である。
従来の幅方向移動加熱での焼入れを示す斜視図である。
符号の説明
10…金属旋回輪、15…ソフトゾーン、
20…金属旋回輪、21…リテイニング(外輪)、21a…転動接触面(端面)、
22…ノーズリング(内輪)、22a…転動接触面(外周面)、
22b…転動接触面(端面)、22c…反対面、23…サポートリング(外輪)、
23a…転動接触面(端面)、23b…転動接触面(内周面)、
24,25,26…ローラ(ころ)、
30…誘導子(加熱コイル)、31,32…通電端、
34…噴射口(第1冷却手段)、35…冷却水(冷媒)、
40…焼入れ装置、41…基台部、42…昇降機構(移動装置)、
43…位置調整機構、44…吊持機構、45…架台(回転機構)、
46…円板(回転体)、46a…通水溝(第2冷却手段)、
50…高周波電源、51…交流源、52…整流部、53…インバータ(直交変換部)、
54…電源電路(一次側電路)、55…非絶縁変圧器、56…二次側電路、
60…高周波電源、
61…制御装置、63…インバータ(直交変換部)、65…絶縁変圧器、
70…冷却装置(第2冷却手段)、
71…給水管、72…冷却水(冷媒)、73…給水管、74…噴射口、
80…給水管(第1冷却手段)、81…噴射口、82…冷却水(冷媒)