JP2006283043A - 固相変態を有しない金属材料の表面改質法および表面改質された固相変態を有しない金属材料 - Google Patents

固相変態を有しない金属材料の表面改質法および表面改質された固相変態を有しない金属材料 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶粒を微細化することができる固相変態を有しない金属材料の表面改質法および表面改質された固相変態を有しない金属材料を提供する。
【解決手段】表面改質された固相変態を有しない金属材料は、少なくとも表面付近の結晶粒の平均結晶粒径が15μm以下である。表面改質は、固相変態を有しない金属材料の表面に予めひずみを付与し、ついで急速加熱し、ついで急速冷却することにより行う。このとき、急速加熱および急速冷却は、1回行い、または複数回繰り返す。好ましくは、付与するひずみ量は、5%以上であり、ショットピーニングなどによってひずみを付与することもできる。また、好ましくは、レーザ照射によって加熱する。また、好ましくは、固相変態を有しない金属材料は被加工部品である。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面硬度、耐疲労強度、耐磨耗性、耐食性あるいは靭性等を高度に求められる固相変態を有しない金属材料の表面改質法および表面改質された固相変態を有しない金属材料に関する。
構造用金属材料について、強度、靭性及び耐食性を向上させるため結晶粒径を1μm以下まで超微細化する研究が盛んに行われている。
例えば、オーステナイト結晶粒を微細化し、次に、フェライトとパーライトの変態組織を微細化する方法によりフェライト粒径が10μm程度の微細粒を持った鋼が製造可能である。
この鉄鋼材料の細粒化に関して、本発明者等は、鉄基合金材料に材料表面が溶融しない条件下で1回乃至20回レーザを照射して急速加熱および急速冷却を施す微細化方法を提案している(特許文献1参照。)。
この方法は、具体的には、炭素量が0.1%の低炭素鋼を対象として500〜800℃の範囲を急速加熱した後、急速冷却するものであり、オーステナイトとフェライト組織間の変態点(Ac3)を超える温度まで加熱した後、冷却することで、低炭素鋼の素材はもとより溶接金属および熱影響部のフェライト組織の細粒化を図るものである。これにより、鉄基合金の溶接継手部等所望の局部領域の結晶組織を数μmオーダまで微細化することができ、疲労強度を高くすることができる。
特開2002−256335号公報
しかしながら、上記した結晶粒微細化によって、強度と疲労特性の改善を図る手法は、固相変態を有する鋼には適用できるが、オーステナイト系ステンレス鋼については、固相変態を有しないため、これを適用することができない。このことは、オーステナイト系ステンレス鋼に限らず、固相変態を有しない他の金属材料、例えばアルミニウム等の非鉄金属材料についても同様である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、結晶粒を微細化することができる固相変態を有しない金属材料の表面改質法および表面改質された固相変態を有しない金属材料を提供することを目的とする。
本発明に係る固相変態を有しない金属材料の表面改質法は、
固相変態を有しない金属材料の表面に予めひずみを付与するひずみ付与工程と、
ひずみを付与した該金属材料を急速加熱する急速加熱工程と、
急速加熱した該金属材料を急速冷却する急速冷却工程と、
を有し、
該急速加熱工程および該急速冷却工程を、1回行い、または複数回繰り返すことを特徴とする。
また、本発明に係る固相変態を有しない金属材料の表面改質法は、前記ひずみ付与工程において、付与するひずみ量が5%以上であることを特徴とする。
また、本発明に係る固相変態を有しない金属材料の表面改質法は、前記ひずみ付与工程において、ショットピーニングによってひずみを付与することを特徴とする。
また、本発明に係る固相変態を有しない金属材料の表面改質法は、前記急速加熱工程において、レーザ照射によって加熱することを特徴とする。
また、本発明に係る固相変態を有しない金属材料の表面改質法は、前記固相変態を有しない金属材料が被加工部品であることを特徴とする。
また、本発明に係る表面改質された固相変態を有しない金属材料は、少なくとも表面付近の結晶粒の平均結晶粒径が15μm以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る表面改質された固相変態を有しない金属材料は、被加工部品であることを特徴とする。
本発明の固相変態を有しない金属材料の表面改質法は、固相変態を有しない金属材料の表面に予めひずみを付与した後、急速加熱および急速冷却するため、結晶粒を微細化することができ、結晶粒微細化による表面改質効果を得ることができる。また、これにより、強度と疲労特性の改善を図ることができる。
また、従来の鉄鋼等の結晶粒調整法のなかには、熱処理が行われる前に一旦塑性変形を与えることが行われる例があるが、この塑性変形を与える冷間加工あるいは熱間加工は、素材に対してのみ適用可能であり、被加工部品に対しては適用できない。これに対して、本発明によれば、ひずみを付与する方法を適宜選択することで、被加工部品に対しても適用可能である。
また、本発明の表面改質された固相変態を有しない金属材料は、少なくとも表面付近の結晶粒の平均結晶粒径が15μm以下であるため、結晶粒微細化による表面改質効果を得ることができ、強度と疲労特性に優れる。
本発明の実施の形態について、固相変態を有しない金属材料としてオーステナイト系ステンレス鋼を例にとり、以下に説明する。
一般に、熱処理を施したときの再結晶化のメカニズムについては、以下のことが知られている。
すなわち、再結晶はすぐに開始されるものではなく、潜伏期が存在し、この潜伏期は加熱温度が低いほど、またひずみが小さいほど長い。また、再結晶は核生成し、その核から成長するものであり、その核はひずみが大きいほど発生しやすい。
しかしながら、熱処理技術は、鋼種によって適用条件および作用効果が異なると考えるのが一般的である。また、先に説明したように、オーステナイト系ステンレス鋼は、固相変態を有しないため、熱処理を行っただけでは、結晶粒を微細化することができない。
本発明者等は、上記の知見を手がかりに、オーステナイト系ステンレス鋼の熱処理を行うに先立ち、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に予めひずみを付与することで、熱処理後のオーステナイト系ステンレス鋼の結晶粒を微細化することができることを見出した。
すなわち、本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼の表面改質法は、オーステナイト系ステンレス鋼の表面に予めひずみを付与するひずみ付与工程と、ひずみを付与したオーステナイト系ステンレス鋼を急速加熱する急速加熱工程と、急速加熱したオーステナイト系ステンレス鋼を急速冷却する急速冷却工程と、を有し、急速加熱工程および急速冷却工程を、1回行い、または複数回繰り返す。
ここで、ひずみを付与する方法は、特に限定するものではなく、本発明の効果を奏する限り、例えば、一般的な冷間加工や熱間加工を採用することができ、また、引張り応力を加える方法等を用いてもよいが、より好適には、ショットピーニング等の表面加工法を用いる。これにより、オーステナイト系ステンレス鋼の素材だけでなく、オーステナイト系ステンレス鋼を材料とする部品や製品(以下、これらを被加工部品という。)に対しても容易にひずみを付与することができる。
本発明において、ひずみ付与工程で付与するひずみ量は、特に限定するものではないが、好ましくは、5%以上、より好ましくは、15%以上とする。また、ひずみ量の上限は、製品の表面形状を変化させない観点からは例えば30%程度以下とするのが適当である。
発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼の表面改質法において、急速加熱する方法および急速冷却する方法は、特に限定するものではないが、簡易かつ能率的に、急速加熱および急速冷却の双方を実現する観点からは、レーザ照射、高周波照射、火炎焼入れ、電解焼入れおよび電子ビーム焼入れ等を好適に採用することができ、このうち、レーザ照射が特に好ましい。
また、本発明に係る表面改質されたオーステナイト系ステンレス鋼は、少なくとも表面付近の結晶粒の平均結晶粒径が15μm以下である。また、オーステナイト系ステンレス鋼は、好ましくは、被加工部分である。
本発明に係る表面改質されたオーステナイト系ステンレス鋼は、結晶粒が微細化しているため、結晶粒微細化による表面改質効果を得ることができ、強度と疲労特性に優れる。
以上説明した本実施の形態に関わらず、本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼と同様に、固相変態を有しないアルミニウム等の他の非鉄金属材料にも適用できる。
また、結晶粒が粗大化する熱影響部の強度低下が金属材料全般において問題となるが、本発明によれば、結晶粒を素材のそれよりも更に微細にすることができ、これにより、熱影響部の強度低下を改善することができる。
実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
(使用材料)
使用材料として、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304のJIS品(受け入れ材)を用いた。材料の寸法は、後述するショットピーニングを行わないものについては、原寸法が、板厚2mm、長さ300×幅80mmであり、ショットピーニングを行うものについては、一連の処理工程を通じて板厚6mm、長さ200×幅100mmである。
なお、各実施例および各比較例の全ての使用材料について、予め、1000℃×30minの条件で溶体化処理した。これは、受け入れ材は、圧延加工のままの状態であり、既にひずみが入っている可能性が考えられるため、このひずみを除去することを目的としたものである。
(実施例A:溶体化処理/引張り応力付与/レーザ照射)
溶体化処理した材料から、図1に示すように台形状の試験片を加工し、万能引張試験機で引張り、長さ200mmの台形状部のひずみが10〜40%に連続して変化するようにひずみを与えた(導入した。)。なお、ひずみを測定するために、けがき線を描いた。
この試料表面をエメリー紙♯400〜♯2000で研磨し表面状態を均一に仕上げ、アセトンにより表面洗浄を行った。
上記の試料をレーザ照射により熱処理した。レーザ照射を行う装置として、YAGレーザ加工機を用いた。照射条件はレーザ出力1.5kW、焦点外し距離fd=60mm、照射回数N=1、シールドガスとしてアルゴンを用い 30リットル/minの条件下で実験を行った。また、移動速度は、250、300、350、400、450(単位:mm/min)の5水準とした。
得られた、表面改質された試料の表面から0.1mm位置の結晶粒径の結果および処理条件等を、代表的な例について、まとめて表1に示した。
(実施例B:溶体化処理/ショットピーニング/レーザ照射)
溶体化処理した材料を、図2に示すように、ショットピーニング処理した。
上記の試料のショットピーニング処理箇所をレーザ照射により熱処理した(図2参照。)。レーザ照射条件は、移動速度を150(単位:mm/min)の1水準とした以外は実施例Aと同様である。なお、レーザ移動速度を実施例Aよりも遅くしたのは、本実施例の試料の板厚が6mmであり実施例Aの試料板厚の2mmよりも厚いため、十分な入熱を確保するためである。
得られた、表面改質された試料の表面から0.05mm位置の結晶粒径の結果および処理条件等を、代表的な例について、まとめて表1に示した。
なお、表1中、実施例Bのひずみ量は、換算値(推定値)である。換算値は、実施例Aの各処理条件で処理した試料について、ひずみ量とビッカース硬さの相関関係を求めておき、実施例Bの各処理条件で処理した試料について求めたビッカース硬さから、上記の相関関係に基づいて求めた。
(比較例A:溶体化処理のみ)
比較例として、溶体化処理した後、引張り応力付与やレーザ照射等の処理を行わない試料について、切断法により平均結晶粒径を測定した。結晶粒径の結果および処理条件等をまとめて表1に示した。
(比較例B:溶体化処理/引張り応力付与)
最終的にレーザ照射を行わなかったことを除き、実施例Aと同様の条件で処理して得た試料について、表面から0.1mm位置の結晶粒径の結果および処理条件等をまとめて表1に示した。
(結晶粒径測定方法)
比較例A以外については、結晶方位解析装置(OIM)を用いて結晶粒径を測定した。
Figure 2006283043
実施例Aで引張り応力付与してひずみを与える方法を説明するための試料の外形図である。 実施例Bでショットピーニング処理およびレーザ照射を行う方法を説明するための試料の外形図である。

Claims (7)

  1. 固相変態を有しない金属材料の表面に予めひずみを付与するひずみ付与工程と、
    ひずみを付与した該金属材料を急速加熱する急速加熱工程と、
    急速加熱した該金属材料を急速冷却する急速冷却工程と、
    を有し、
    該急速加熱工程および該急速冷却工程を、1回行い、または複数回繰り返すことを特徴とする固相変態を有しない金属材料の表面改質法。
  2. 前記ひずみ付与工程において、付与するひずみ量が5%以上であることを特徴とする請求項1記載の固相変態を有しない金属材料の表面改質法。
  3. 前記ひずみ付与工程において、ショットピーニングによってひずみを付与することを特徴とする請求項1または2記載の固相変態を有しない金属材料の表面改質法。
  4. 前記急速加熱工程において、レーザ照射によって加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固相変態を有しない金属材料の表面改質法。
  5. 前記固相変態を有しない金属材料が被加工部品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固相変態を有しない金属材料の表面改質法。
  6. 少なくとも表面付近の結晶粒の平均結晶粒径が15μm以下であることを特徴とする表面改質された固相変態を有しない金属材料。
  7. 被加工部品であることを特徴とする請求項6記載の表面改質された固相変態を有しない金属材料。
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