JP5183373B2 - Vリブドベルトの寿命予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトの寿命予測方法に関する。
一般に、コグドVベルトとは、プーリ部から与えられる繰り返し曲げ応力に耐えられるように、内周側の圧縮ゴム層に、または、内周側の圧縮ゴム層と外周側の伸張ゴム層の両方に、ベルト幅方向に伸延したコグ山とコグ谷とがベルト長手方向について交互に形成され、かつ、長手方向に伸延した心線が埋設されたものである。近年、コグドVベルトにかかる負荷条件が益々過酷になってきており、それに伴ってコグドVベルトの寿命を正確に予測することが強く望まれている。このため、コグドVベルトのゴク谷における亀裂進展を起因とする寿命を予測する方法が知られている(特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のコグドVベルトの寿命予測方法は、ある特定使用条件の元で、コグドVベルトの形状および材料物性に基づいてコグドVベルトの有限要素モデルを所定の曲率に強制変位させて応力を解析し、この解析で得られる圧縮ゴム層のコグ谷の最小主応力(最大圧縮応力)と、別途行われた直線走行部に沿った応力解析による圧縮ゴム層のコグ谷の最大主応力(最大引張応力)との組み合わせによる繰り返し曲げ応力の変動幅を計算によって求める。その一方で、特定使用条件の元で応力変動幅をストレスをSとし、寿命時間またはこれと等価な繰り返しサイクル数をNとするS−N曲線を予め実験により求めておく。そして、ある使用条件の元で有限要素解析プログラムを用いて算出された応力変動幅から、予め求められた応力変動幅と等価寿命値との関係を示す実験データに基づいてコグドVベルトの寿命を予測する方法である。
ここで、接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトを用いた伝動システムにおいて、Vリブドベルト端部に露出した心線が、一定時間走行後にVリブドベルト本体から脱落する、いわゆる心線ポップアウトという現象がある。この心線ポップアウトはVリブドベルトの寿命に直結するため、それに至るまでの時間(ポップアウト寿命)を予測することが重要な課題となっている。
特開2002−107237号公報
しかしながら、特許文献1に記載の寿命予測方法をポップアウト寿命の予測に適用しようとしても、心線周囲のゴムの応力はポップアウト寿命とは相関がなく、ポップアウト寿命を予測することができない。また、特許文献1に記載の寿命予測方法は、有限要素解析法を用いる方法であるが、この方法は、露出した心線がプーリに当接するコグドVベルトの寿命予測に適用されるものであって、コグドVベルトの応力変動幅をストレスとしたS−N寿命曲線からその寿命を予測する方法である。そのため、特許文献1に記載の寿命予測方法では、露出した心線がプーリと当接しないVリブドベルトとは事情が異なるため、Vリブドベルトのポップアウト寿命を予測することができない。その結果、ポップアウト寿命に起因したVリブドベルトの寿命を正確に予測することができない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポップアウト寿命に起因したVリブドベルトの寿命を正確に予測することができるVリブドベルトの寿命予測方法を提供することである。
本発明は、接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトの寿命予測方法に関するものである。そして、本発明に係るVリブドベルトの寿命予測方法は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明のVリブドベルトの寿命予測方法は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
前記課題を解決するための本発明に係るVリブドベルトの寿命予測方法の第1の特徴は、接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトの寿命予測方法であって、前記Vリブドベルトが特定使用条件で使用されるときに、前記Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値とポップアウト寿命との関係を示すデータを得る走行実験ステップと、前記Vリブドベルトの幾何データおよび物性データに基づいて、前記Vリブドベルトが前記特定使用条件で使用されるときに、前記Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する相当ひずみを算出し、前記Vリブドベルトに作用する前記張り側最大張力値と前記相当ひずみとの関係を示すデータを得るひずみ算出ステップと、前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみに基づいて、前記走行実験ステップで得られた前記ポップアウト寿命と前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみとの相関を示すデータを用いて前記Vリブドベルトの寿命値を導出する寿命値導出ステップと、を備えたことである。
この構成によると、Vリブドベルトが特定使用条件で使用される場合において、Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値に対応したポップアウト寿命を走行実験により求める。一方で、Vリブドベルトが上記特定使用条件で使用される場合において、Vリブドベルトの形状および材料物性に基づいて、Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値に対応したVリブドベルトの接触部に発生する相当ひずみを算出する。そして、算出された相当ひずみと走行実験により求めたポップアウト寿命との間に相関を得ることが本発明者により確認された。これにより、Vリブドベルトの接触部に発生する相当ひずみを算出することでVリブドベルトのポップアウト寿命を予測することができる。その結果、当該Vリブドベルトがポップアウト寿命に至ることに起因したVリブドベルトの寿命を正確に予測することができる。
また、本発明に係るVリブドベルトの寿命予測方法の第2の特徴は、接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトの寿命予測方法であって、前記Vリブドベルトの幾何データおよび物性データに基づいて、前記Vリブドベルトが特定使用条件で使用されるときに、前記Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する相当ひずみを算出し、前記Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値と前記相当ひずみとの関係を示すデータを得るひずみ算出ステップと、前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみに基づいて、前記Vリブドベルトが前記特定使用条件で使用されたときのポップアウト寿命と前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみとの相関を示すデータを用いて前記Vリブドベルトの寿命値を導出する寿命値導出ステップと、を備えたことである。
この構成によると、Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値と相当ひずみの関係を求める走行実験を随時行ってから計算処理を行うというものに限られない。つまり、本発明によると、Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値と相当ひずみとの関係を求める走行実験を多くの使用条件について予め行って、Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値と相当ひずみとの関係をデータ化しておけば、Vリブドベルトの幾何データおよび物性データを入力するだけで、一連の処理をすべてコンピュータを用いて自動的に行うことも可能となる。これにより、設計段階において、Vリブドベルトの形状および材質選定を適切且つ迅速に行うことが可能になる。
また、本発明に係るVリブドベルトの寿命予測方法の第3の特徴は、前記ひずみ算出ステップにおいて、前記Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する前記相当ひずみを算出するために有限要素解析法が使用されることである。
この構成によると、有限要素解析法を使用することで、Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する前記相当ひずみを正確に算出できる。そのため、より精度の高い寿命予測が可能となる。
また、本発明に係るVリブドベルトの寿命予測方法の第4の特徴は、前記物性データが前記Vリブドベルトの弾性係数およびポアソン比を含んでおり、前記特定使用条件は前記Vリブドベルトが巻き付けられるプーリの径および回転数、ベルト張力、屈曲径を含んでいることである。
この構成によると、物性データおよび特定使用条件として上記の物理量を用いることで、実際の使用状況に合致した精度の高い寿命予測が可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実形態に係るVリブドベルト1の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係るVリブドベルト1は、最も内側に配され且つプーリ等の動力伝達部材に圧接される圧縮ゴム層2と、圧縮ゴム層2に接してなる接着ゴム層4と、接着ゴム層4に接してなるゴム引き帆布5とが積層されて構成されている。当該圧縮ゴム層2には、Vリブドベルト1の幅方向に複数条のリブ3が形成されている。尚、本実施形態では、3本のリブ3が設けられている。そして、当該接着ゴム層4には、Vリブドベルト1の幅方向に一定の間隔で配置され、Vリブドベルト1の長手方向に伸延した複数本の心線6が埋設されている。
圧縮ゴム層2及び接着ゴム層4に用いられる材料としては、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBR、エチレン‐アルファ‐オレフィンエラストマー等が用いられる。エチレン‐アルファ‐オレフィンエラストマーとしてはEPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー)が代表的であり、ジエンモノマーとしては、例えばジシクロペンタジエン、メチレンノルポルネン、エチリデンノルポルネン、1,4‐ヘキサジエン、シクロオクタジエン等が挙げられる。また、心線6としては、アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等を使用することができる。
次に、ベルト背面に積層される帆布5の材料としては、綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、また、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアミド等の有機繊維等から構成される糸を用い、平織、綾織、朱子織等に製織した布や編布等を用いることができる。
ここで、上記のような構成のVリブドベルト1の製造方法について説明する。先ず、円筒状の成形ドラムの周面に、ベルト背面になる帆布5と接着ゴム層4とを順に巻き付け、その後接着ゴム層4の上から心体を螺旋状にスピニングし、更にその上に、接着ゴム層4、圧縮ゴム層2を順次巻き付けて積層体とし、この積層体を架橋して架橋スリーブを得る。そしてその架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールとに掛架して所定の張力下で走行させ、回転させた研削ホイールを走行中の架橋スリーブに当接するように移動させ、架橋スリーブの圧縮ゴム層2表面に、研磨によって3〜100個の複数の略三角形溝部を一度に形成させる。このようにして得られた架橋スリーブを駆動ロール及び従動ロールから取り外し、別の駆動ロールと従動ロールとに掛架して走行させ、カッターによって所定の幅に切断して、個々のVリブドベルト1に仕上げられる。
図1に示すように、上記の方法で仕上げられたVリブドベルト1は、カッターによって所定の幅に切断する段階で、長手方向にカットされた心線6の切断面がベルト端部と面一になっている状態(以下露出した心線6と呼ぶ)で露出している。尚、本実施形態では、ベルト端部に心線6の半部が露出した状態(半円柱状心線7)を対象としているが、これに限らず、本発明に係るVリブドベルト1の寿命予測方法は様々な心線6の露出状態に対して適用することができる方法である。尚、後述する有限要素解析法(FEM解析)により、図1に示す露出した心線6と接着ゴム層4が接触する部分である半円柱状空洞部分8(接触部)において、要素単位の相当ひずみの最大値を、張り側最大張力に対する相当ひずみとして算出する。
次に、本実施形態に係るVリブドベルト1の寿命予測方法を備えた寿命予測装置16について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係るVリブドベルト1の寿命予測装置16のブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係るVリブドベルト1の寿命予測装置16は、記憶部9、相当ひずみ算出部10、ポップアウト寿命導出部11を備えている。図2に示されている寿命予測装置16の各部9〜11は、例えばCPU、ROM、RAM、ハードディスク、FDやCDの駆動装置等のハードウェアを収納した汎用のパーソナルコンピュータによって構成されている。かかるパーソナルコンピュータに収納されているハードディスクには、寿命予測プログラムを含む各種のソフトウェアが記憶されており、これらのハードウェア及びソフトウェアが組み合わされることによって、寿命予測装置16の各部9〜11が構築されている。なお、寿命予測プログラムは、CD−ROMやFD、MOなどのリムーバブルな記録媒体に記録しておくことにより、様々なコンピュータにインストールできる。本実施形態において、相当ひずみ算出部10は、市販の有限要素解析法プログラムが記憶されたものから構成されている。尚、有限要素解析法プログラムとして、米国MSC社製汎用非線形FEMプログラム“Marc”を使用した。また、寿命予測装置16の各部9〜11におけるデータは、図示しないディスプレイに表示されたり、プリンタで印刷されたりすることで、寿命予測装置16の操作者に通知される
次に、本実施形態のVリブドベルト1の寿命予測方法について、図3を参照して説明する。図3は、Vリブドベルト1の寿命予測方法の段階を順に示したフローチャートである。
まず、ステップ1では、Vリブドベルト1の寿命を予測するために必要なデータ(ベルトの幾何データ、物性データ、およびベルトの使用条件)を、キーボードなどを用いて入力する。ここで、ベルトの幾何(形状)データとしては、Vリブドベルト1のリブ3形状(リブ3の幅、高さ、両側面がなす角度、湾曲部曲率半径)、接着ゴム層4厚み、帆布5厚み等のVリブドベルト1形状を特定するための様々なデータが入力される。また、物性データとしては、Vリブドベルト1の圧縮ゴム層2、接着ゴム層4、帆布5および心線6の弾性係数およびポアソン比が入力される。
また、本実施形態のベルトの使用条件としては、図4に示すような動力伝達レイアウトでVリブドベルト1が使用される場合におけるベルトの使用条件が入力される。即ち、Vリブドベルト1が巻き付けられるプーリの径及び回転数、ベルト張力、屈曲径が入力される。尚、ベルト張力等の計算値は、別途用意されたベルト張力の計算プログラムをサブルーチン化して使用することもできる。そして、入力されたデータは、記憶部9に記憶される。
次に、ステップ2(走行実験ステップ)では、Vリブドベルト1に作用する張り側最大張力値に対応したポップアウト寿命を走行実験により実測する。尚、本実施形態における走行実験は、図4に示すようなVリブドベルト1がプーリに巻き付けられた動力伝達レイアウトで行った。当該動力伝達レイアウトは、例えば車両用エンジンに設けられ、駆動プーリ12と従動プーリ13とアイドラープーリ14とテンションプーリ15と、Vリブドベルト1とを有して構成されている。
そして、駆動プーリ12と従動プーリ13との外周側には図1に示すVリブドベルト1が巻き付けられる。そして、外部からの動力により駆動プーリ12が回転させられることによって、駆動プーリ12と従動プーリ13とに巻き付けられた無端のVリブドベルト1が周回走行する。Vリブドベルト1が周回走行することにより従動プーリ13が回転し、駆動プーリ12に与えられた外部からの動力が従動プーリ13に伝達されることになる。従動プーリ13と駆動プーリ12の間には、Vリブドベルト1の張力を付与するためのテンションプーリ15が設けられる。そして、Vリブドベルト1の張力は、テンションプーリ15により図4に示す矢印A方向に所定の荷重を加えることで調整することができる。また、駆動プーリ12とVリブドベルト1及び従動プーリ13とVリブドベルト1とが接触している円弧に対する中心角を示すいわゆる巻付け角を増やすためにアイドラープーリ14が設けられている。当該アイドラープーリ14を設けることでVリブドベルト1の滑りを抑制することができる。このような走行実験条件で、上述した張り側最大張力値がVリブドベルト1に作用する状態で走行実験を行った。具体的には、Vリブドベルト1に作用する張り側最大張力値を350N/rib、320N/rib、260N/ribの3つの値とした。そして、これらの張り側最大張力値に対応したポップアウト寿命を実測する。尚、本実施形態では、心線6がVリブドベルト1本体から50mm以上脱落した時点でポップアウト寿命とした。
次に、ステップ3(ひずみ算出ステップ)では、相当ひずみ算出部10が、半円柱状空洞部分8において、要素単位の相当ひずみの最大値を各張り側最大張力に対する相当ひずみとして算出する。
ここで、相当ひずみの算出には、有限要素解析法を使用する。本実施形態で行われる有限要素解析法とは、解析を実施するVリブドベルト1に対して幾何データに基づいて3次元の有限要素モデルを作成し、指定された特定使用条件において有限要素モデルに作用する境界条件及び外力条件を設定した後、物性データに基づいて有限要素モデルを強制変位させることにより応力解析を行う方法である。以上のように有限要素解析プログラムを実行することにより、指定された特定使用条件において、半円柱状空洞部分8に発生する相当ひずみが求められる。
次に、ステップ4(寿命値導出ステップ)では、相当ひずみ算出部10が半円柱状空洞部分8において算出した相当ひずみに基づいて、ポップアウト寿命導出部11がVリブドベルト1から心線6が脱落するまでの時間(ポップアウト寿命)を、図5に示す相当ひずみとポップアウト寿命との関係を示すグラフを用いて導出する。尚、相当ひずみとポップアウト寿命との関係を示すデータは記憶部9に予め記憶しておく。
ここで、図5に示すようなひずみとポップアウト寿命の関係を示すグラフを得るための手順について説明する。まず、ステップ2において、表1に示すように張り側最大張力値とポップアウト寿命との関係を示すデータを得る。次に、ステップ3において、表2に示すように張り側最大張力値と相当ひずみとの関係を示すデータを得る。そして、これらのデータを用いて各張り側最大張力値に対応した相当ひずみとポップアウト寿命とを相当ひずみ−ポップアウト寿命グラフ上にそれぞれプロットしたのが図5に示すグラフである。そして、図5に示すように、相当ひずみとポップアウト寿命との間に相関があるグラフを得ることができた。
そして、図4に示すような動力伝達レイアウトでVリブドベルト1が使用される場合において、相当ひずみ算出部10が半円柱状空洞部分8において算出した相当ひずみを図5に示す相当ひずみ−ポップアウト寿命グラフに当てはめることにより、Vリブドベルト1のポップアウト寿命を予測することができる。
次に、ステップ5では、ステップ4においてポップアウト寿命導出部11によって導出されたポップアウト寿命および/またはポップアウト寿命に基づいて算出されたVリブドベルト1の寿命に関連した数値が寿命予測装置16から出力される。
尚、本実施形態に係るVリブドベルト1の寿命予測方法は、張り側最大張力とポップアウト寿命との関係データを得るステップ2を随時行ってから計算処理を行うというものに限られない。即ち、張り側最大張力とポップアウト寿命との関係を求めるステップ2を多くの使用条件について予め行っておいてもよい。これにより、張り側最大張力とポップアウト寿命との関係をデータ化し、記憶部9に記憶しておけば、Vリブドベルト1の幾何データおよび物性データを入力するだけで、一連の処理をすべてコンピュータを用いて自動的に行うことが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係るVリブドベルト1の寿命予測方法によると、Vリブドベルト1端部に露出した心線6がVリブドベルト1本体から脱落するまでの時間、いわゆるポップアウト寿命を正確に予測することができる。その結果、ポップアウト寿命を起因としたVリブドベルト1の寿命を正確に予測することができる。
[実施例]
次に、下記の通りに、ある特定使用条件で使用されるVリブドベルト1の寿命予測方法の実施例を示す。
(相当ひずみの算出)
a.Vリブドベルト1の有限要素モデルの幾何データを設定する。
幾何データとして、Vリブドベルト1のリブ3の形状(幅を3.56mm、高さを2.5mm、リブ3の両側面がなす角度を40°、湾曲部曲率半径を0.5mm)と入力した。また、接着ゴム層4の厚みを1.35mm、帆布5の厚みを0.35mmと入力した。
b.Vリブドベルト1の有限要素モデルの物性データを設定する。
物性データとして、弾性係数およびポアソン比を入力した。尚、圧縮ゴム層2の弾性係数を25MPa、ポアソン比を0.49とし、接着ゴム層4の弾性係数を5MPa、ポアソン比を0.49とし、帆布5の弾性係数を30MPa、ポアソン比を0.49とし、心線6(ソリッド要素)の弾性係数を1500MPa、ポアソン比を0.49とし、心線6(トラス要素)の弾性係数を5000MPa、ポアソン比を0.3とした。
c.Vリブドベルト1の使用条件を設定する。
Vリブドベルト1の屈曲径は、図4に示す動力伝達レイアウトにおける最小プーリであるφ45のテンションプーリ15に巻き付けられた状態での曲率半径とした。ベルト張力は、張り側最大張力値として350N/rib、320N/rib、260N/ribの3値とした。
d.Vリブドベルト1の有限要素モデルを設定する。
圧縮ゴム層2、接着ゴム層4、帆布5、心線6それぞれについて、8節点1次ソリッド要素とした。心線6については、さらに中心部に2節点のトラス要素を設定した。
e.弾性解析プログラムを実行する。
弾性解析プログラムとして、米国MSC社製汎用非線形FEMプログラム“Marc”を使用して、接着ゴム層4の半円柱状空洞部分8に発生する相当ひずみを算出した。相当ひずみ(εeq)は、直交座標系におけるX、Y、Z各方向のひずみ成分(計算値)を用いて下記に示す計算式により計算される。尚、露出した心線6が接着ゴム層4と接触する半円柱状空洞部分8において、要素単位の相当ひずみの最大値を上述した各張り側最大張力値に対する相当ひずみとして採用した。以下その結果を表1に示す。
[数1]
Figure 0005183373
[表1]
Figure 0005183373
(ポップアウト寿命の実測)
a.走行実験により、張り側最大張力値とポップアウト寿命との相関を示す参照データを得る。
走行実験は、図4に示すようなVリブドベルト1がプーリに巻き付けられた動力伝達レイアウトで行った。Vリブドベルト1の接着ゴム層4および圧縮ゴム層2を形成するゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)を用いた。心線6としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。また、Vリブドベルト1のサイズは3PK1100を用いた。走行実験条件としては、駆動プーリ12の直径を120mm、従動プーリ13直径を120mm、アイドラープーリ14の直径を85mm、テンションプーリ15の直径を45mmとした。また、駆動プーリ12の回転数を4900rpm、従動プーリ13負荷8.8kW、雰囲気温度120℃とした。また、図3に示す矢印A方向に加える荷重を変更することにより、張り側最大張力値を350N/rib、320N/rib、260N/ribに設定した。そして、各張り側最大張力値におけるポップアウト寿命を実測した。以下その結果を表2に示す。
[表2]
Figure 0005183373
(ポップアウト寿命の導出)
a.表1に示す有限要素解析法による計算値と表2に示す走行実験による実験値とを比較することにより、ポップアウト寿命を予測する。
以下表3に、張り側最大張力値に対応した有限要素解析法による相当ひずみと走行実験によるポップアウト寿命を示す。
[表3]
Figure 0005183373
表3によるデータに基づいて、相当ひずみとポップアウト寿命とを相当ひずみ−ポップアウト寿命グラフ上にそれぞれプロットしたものを図5に示す。図5に示すように、相当ひずみとポップアウト寿命との間に相関が得られた。そして、図4に示すような動力伝達レイアウトでVリブドベルト1が使用される場合において、相当ひずみ算出部10が有限要素解析法により算出した相当ひずみを図5に示すグラフに当てはめることにより、Vリブドベルト1のポップアウト寿命が予測可能になる。これにより、Vリブドベルトのポップアウト寿命に起因したVリブドベルトの寿命を正確に予測することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
Vリブドベルトの一部破断斜視図である。 本発明の実施形態に係るVリブドベルトの寿命予測装置のブロック図である。 本発明の実施形態に係るVリブドベルトの寿命予測方法の段階を順に示したフローチャートである。 Vリブドベルトのポップアウト寿命を実測するための動力伝達レイアウトである。 有限要素解析法により算出された相当ひずみと走行実験により実測されたポップアウト寿命との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 Vリブドベルト
2 圧縮ゴム層
3 リブ
4 接着ゴム層
5 帆布
6 心線
7 半円柱状心線
8 半円柱状空洞部分
9 記憶部
10 相当ひずみ算出部
11 ポップアウト寿命導出部
12 駆動プーリ
13 従動プーリ
14 アイドラープーリ
15 テンションプーリ
16 寿命予測装置

Claims (4)

  1. 接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトの寿命予測方法であって、
    前記Vリブドベルトが特定使用条件で使用されるときに、前記Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値とポップアウト寿命との関係を示すデータを得る走行実験ステップと、
    前記Vリブドベルトの幾何データおよび物性データに基づいて、前記Vリブドベルトが前記特定使用条件で使用されるときに、前記Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する相当ひずみを算出し、前記Vリブドベルトに作用する前記張り側最大張力値と前記相当ひずみとの関係を示すデータを得るひずみ算出ステップと、
    前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみに基づいて、前記走行実験ステップで得られた前記ポップアウト寿命と前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみとの相関を示すデータを用いて前記Vリブドベルトの寿命値を導出する寿命値導出ステップと、
    を備えたことを特徴とするVリブドベルトの寿命予測方法。
  2. 接着ゴム層にVリブドベルトの長手方向に伸延した複数の心線が埋設されたVリブドベルトの寿命予測方法であって、
    前記Vリブドベルトの幾何データおよび物性データに基づいて、前記Vリブドベルトが特定使用条件で使用されるときに、前記Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する相当ひずみを算出し、前記Vリブドベルトに作用する張り側最大張力値と前記相当ひずみとの関係を示すデータを得るひずみ算出ステップと、
    前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみに基づいて、前記Vリブドベルトが前記特定使用条件で使用されたときのポップアウト寿命と前記ひずみ算出ステップで算出された前記相当ひずみとの相関を示すデータを用いて前記Vリブドベルトの寿命値を導出する寿命値導出ステップと、
    を備えたことを特徴とするVリブドベルトの寿命予測方法。
  3. 前記ひずみ算出ステップにおいて、前記Vリブドベルトの端部に露出した前記心線が接触する前記接着ゴム層の接触部に発生する前記相当ひずみを算出するために有限要素解析法が使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のVリブドベルトの寿命予測方法。
  4. 前記物性データが前記Vリブドベルトの弾性係数およびポアソン比を含んでおり、前記特定使用条件は前記Vリブドベルトが巻き付けられるプーリの径および回転数、ベルト張力、屈曲径を含んでいることを特徴とする請求項1〜3に記載のVリブドベルトの寿命予測方法。
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