JP5183108B2 - 振動波駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電気/機械エネルギー変換素子を駆動源とする振動子を有する振動波モータ等の振動波駆動装置の制御装置に関する。
一般に、振動波モータ等の振動波駆動装置は、駆動振動を形成する振動子と、前記振動子に加圧接触する回転体とを有し、前記振動子と前記回転体とを前記駆動振動により相対的に移動させるようにしたものである。
従来、リングタイプの振動子を有する多自由度駆動可能な振動波モータ等の振動波駆動装置の例としては、例えば特許文献1に開示されるものがあった。この多自由度振動波モータは、図16(a),(b)に示すような面外振動と面内振動を組み合せて、単一の振動子を励振することにより、多軸方向の駆動を可能としている。
特開2003−116289号公報
振動子上の接触部と回転体とが常に安定した接触状態を維持するためには、球面を有する被駆動体である回転体との振動子上の接触部の数が3点であり、かつ略均等な接触面圧となるように接触部が等間隔で配置されることが好ましいことが知られている。しかしながら、従来の振動子では、稼動範囲が制限されるといった課題があることから接触部の数は4点以上となっていた。
4点接触部の場合、各接触部の磨耗進行速度の差などにより各接触部と回転体の当たり方が時々刻々と変化してしまい、長期に渡って常に安定した接触状態を維持することが困難である。そして、時刻暦の接触状態ごとのモータ制御パラメータが大きく異なるため、制御上も高耐久化を図る上で不利である。
また、従来の振動波駆動装置においては、振動子上の接触部は駆動に用いられる面外振動或いは面内振動の腹の位置に精度良く配置される必要があった。これは、腹の位置からずれることで接触部先端に振動子周方向への変位が発生し、不要な送り運動が発生するからである。さらに、振動子を製造する上で不可避的に生じる振動子の周方向の剛性ムラによって駆動に使用する面外振動と面内振動の腹の空間的位置位相がずれ、不要な送り運動が発生する場合もあり、期待通りの振動子の製作は困難であった。将来的な量産性も考慮し、このような不具合が生じても問題のない振動波駆動装置と制御装置が求められる。
本発明は上記従来の問題点に鑑み、次のような振動波駆動装置の制御装置を提供することを目的とする。即ち、接触部と回転体との接触が長期に渡って常に安定した状態を維持することができ、また、不要な送り運動の発生を阻止して振動子の製作を簡単化することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の振動波駆動装置の制御装置は、第1の定在波を、回転体との接触部を複数有する振動子に発生させるための第1の駆動信号を、振動子の電気/機械エネルギー変換素子に供給する第1の信号発生部と2つの定在波から合成される第2の定在波を、前記振動子に発生させるための第2の駆動信号及び第3の駆動信号を、前記振動子の前記電気/機械エネルギー変換素子にそれぞれ供給する、第2の信号発生部及び第3の信号発生部と、前記第1の定在波と合成されて前記振動子に進行波を発生させる、第3の定在波を発生させるための第4の駆動信号を、振動子の電気/機械エネルギー変換素子に供給する第4の信号発生部と、を備え、前記第2の定在波は前記第2の駆動信号及び前記第3の駆動信号により、腹の空間的位置位相が制御され、前記第1及び第3の定在波は面内振動定在波かつ前記第2の定在波は面外振動定在波、または前記第1及び第3の定在波は面外振動定在波かつ前記第2の定在波は面内振動定在波であり、前記進行波は、前記第1の定在波に対し、第3の定在波が時間的位相をずらして励起されることで生成され、前記進行波により、前記振動子の中心軸を回転軸とする水平方向の回転の送り運動を発生させることを特徴とする。
本発明によれば、接触部と回転体との接触が長期に渡って常に安定した状態を維持することが可能になる。これにより、振動波モータの駆動制御も簡単化され、高耐久化を図る上で有利となる。
また、不要な送り運動の発生を阻止して振動子の製作を簡単化することが可能になり、生産性を高めることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1の実施の形態]
<振動子の構成>
まず、本実施の形態に係る振動波モータの振動子について説明する。
図1は、本実施の形態に使用する振動波モータのリングタイプ振動子を示す斜視図である。
このリングタイプ振動子4は、電気/機械エネルギー変換素子としての圧電素子2を有している。圧電素子2の上部には、金属材料等から成る弾性体1が固着されている。弾性体1の表面上には、突起部を有する3カ所の接触部3a,3b,3cが形成されている。
接触面である球面部を有する回転体(不図示)は、図1中のZ軸方向から接触部3a,3b,3cと加圧接触される。接触部3a,3b,3cの先端に形成される楕円運動は、加圧接触による摩擦力によって駆動力が回転体に伝達される。
<駆動原理>
(A)接触部先端に楕円運動が形成される原理
次に、接触部3a,3b,3cの先端に楕円運動が形成される原理について、図2等を参照して説明する。図2は、任意軸回りの駆動における回転軸の説明図である。
図1中の圧電素子2に交流電圧を印加すると該素子2は周方向に伸縮し、振動子全体が図16(a)或いは(b)に示すような奇数次或いは偶数次の駆動振動を励起する。このとき、交流電圧の周波数を振動子4の固有振動数に近づけることで、振動の変位を拡大することができる。振動の腹と接触部3a,3b,3cの空間的位置位相を一致させた場合、例えば図16(a)の振動により接触部3a,3b,3cの先端は振動子4の面外方向、つまり図1のZ軸方向の変位を発生する。
また、図16(b)の振動により、接触部3a,3b,3cの先端は振動子4の面内方向、つまり図1のリングにおいて径方向の変位を発生する。そして、該振動子4における両駆動振動の固有振動数を略一致させておけば、同一周波数により両駆動振動を同時に発生させることができる。さらに、両駆動振動に時間的な位相差を持たせることで、接触部3a,3b,3cの先端に楕円運動を発生させることができる。
ここで、任意軸回りに駆動可能な多自由度駆動において、回転体の回転軸によって傾斜回転と水平回転という2つの言葉を定義する。回転体を図2のように球体とすると、回転体の回転中心を含みかつ振動子4の中心軸を法線ベクトルとする平面内に回転軸を有する傾斜方向の回転、つまり図2においてφ=0度(θ=0〜360度)のときを傾斜回転とする。
また、振動子4の中心軸を回転軸とする水平方向の回転、つまりφ=±90度のときを水平回転とする。そして、図2のようにφ≠0かつφ≠±90である任意軸回りの駆動の場合は、傾斜回転成分と水平回転成分が合成された回転と考える。水平回転については後述するため、続く説明ではまず傾斜回転についてのみ説明する。
(B)回転体が駆動される原理
次に、図16(a)、(b)の駆動振動の組み合せにより、接触部3a,3b,3cの先端に楕円運動が形成され回転体が駆動される原理について、図3及び図4等を参照して説明する。
図3は、振動子4に発生させる駆動振動の次数(波数)及びその空間的位置位相を示す模式図である。図4(a),(b)は、駆動力伝達の説明図である。
図3中の、放射方向に延びる実線部9a〜9e及び破線部10a〜10eは振動の腹を示し、実線部9a〜9eと破線部10a〜10eで振動位相は逆である。
図3において、符号5で示す外側の円は3波の面外振動、符号6で示す内側の円は2波の面内振動について示したものである。また、判りやすく内側の円6の内周側に面内振動による振動子4の変形を楕円11で示した。さらに、接触部3a〜3cは、図3中の黒丸で示す位置に等間隔(120度間隔)で3カ所存在する。
接触部3a〜3cは、面外振動の腹位置(実線9a〜9c)に存在し、位相は同じである。一方、面内振動に対しては接触部3aが腹(実線9a、9e)の位置で、接触部3b、3cは腹(破線10d、10e)から30度ずれた位置に存在する。そして、接触部3aと3b、3cの面内振動における位相関係は逆であるから変位発生方向が逆である。
このとき、面内振動と面外振動の間に位相差(ここでは仮に面内振動を90度遅らせる)を与えて両振動を励振すると、接触部3aは、図4(a)の矢印W1が示す楕円運動を生成する。また、接触部3b及び3cは、図4(b)の矢印W2が示す楕円運動を生成する。但し、図4(a),(b)は図3中の視点A、B、Cの方向から観察したものである。 その結果、接触部3aは、回転体13を持ち上げるような送り運動を発生し、回転体13には、図4(a)中の矢印W3の方向に駆動力が伝達される。接触部の送り運動による回転軸は、それぞれ接触部とリング中心を結ぶ直線と直角を成す直線になるから、この送り運動により回転体13には図3のX軸を回転軸とする回転が発生する。また、接触部3b、3cは、図4(b)の矢印W4に示すように回転体13を繰り込むような送り運動を発生し、接触部3b、3cはそれぞれ、図3中の直線7、8を回転軸とする駆動力を回転体13に対して伝達する。
接触部3bと3cは面内振動の腹から等しい角度離れた位置にあるから、面内振動による径方向振幅が等しく、駆動力は略一致していると考えてよい。そのため、両駆動力を足し合わせて相殺される成分を除くと、残存する駆動力は直線7、8が成す角度の2等分線に相当する図3のX軸を回転軸とする駆動力となる。したがって、3つの接触部3a〜3cの送り運動は、総合するとX軸を回転軸とする傾斜回転を実現する送り運動となる。
本実施の形態は原理的に、偶数次数の面内方向と奇数次数の面外方向の駆動振動、又は奇数次数の面内方向と偶数次数の面外方向の駆動振動、のいずれの如何なる次数の振動モードの組み合せでも成立する。そのため、図16(a)の面外3次振動と図16(b)の面内2次振動の組み合せに限られるものではない。具体的な一例として図16(a),(b)の組み合せを以降の説明においても使用する。
<第1実施の形態に係る制御装置>
以上の基本的な駆動原理を踏まえて、以下では、本発明の第1の実施の形態に係る、傾斜回転駆動の制御装置について詳述する。
(A)圧電素子と振動
まず、振動子4に使用する圧電素子2と、圧電素子2により発生される振動について、図5及び図6等を参照して説明する。
図5は、振動子4の接触部3a〜3cとは反対側の面から見たときの圧電素子2の電極パターン図である。また、図6は、回転定在波を変形した例を示す図である。
図5に示すように、圧電素子2は、同心円状に電極が2列配置され、本実施の形態では内周側が面内振動用、外周側が面外振動用の電極群である。内周側と外周側の電極群の位置位相関係は特に決められた関係ではなく任意である。なお、圧電素子2における、弾性体1と固着される面(図5の裏側)は共通電極となっている。このとき、電極の+記号と−記号は、同一のアルファベット記号の電極群に同位相の入力信号を印加して駆動する場合の分極方向を示している。例えばF電極群すべてに同位相の正弦波入力信号を入力すると、F+電極とF−電極の領域の圧電素子は逆位相の変形を生じるため、振動子4には面外3波の振動が励起されF+電極が山であればF−電極は谷となる。そして、F電極群による面外3次振動の定在波を以降は固定定在波(一方の振動駆動による第1の定在波)と呼ぶ。
また、3つの接触部3a〜3cの位置は、図5に示すように、固定定在波を生成するF電極群の位置と重なるように配置されている。R1電極群とR2電極群は、空間的位置位相で45度周方向にずれた位置に交互に配置されており、F電極群と同様にそれぞれ電極位置に腹を有する面内2次振動の定在波を励振する。このとき、ある時間におけるR1電極群およびR2電極群に生じる振動波形を式で示すと以下である。但し、θは図5参照、Ar1、Ar2はR1電極群、R2電極群におけるそれぞれの定在波振幅で振幅≠0である。
fr1(θ)=Ar1・cos2θ
fr2(θ)=Ar2・cos2(θ−45°)
このとき、2つの定在波を同位相で加振すると足し合わされた新たな合成定在波を生成する。そして、その腹は2つの定在波における元の腹位置とは異なる位置位相となる。例えば、2つの面内2次振動の振幅比が1:1のときは、図6の破線31の変形(腹の位置θm=22.5度)、振幅比は同じで位相を逆にして合成すると図6の点線32の変形(腹の位置θm=67.5度)となる。なお、θmは面内2次振動の山の位置位相である。
合成された定在波の波形は以下の式で示される。
f(θ)=fr1(θ)+fr2(θ)
R1定在波とR2定在波の振幅比をAr=Ar2/Ar1とすると、
f’(θ)=−2Ar1(sin2θ+Ar・sin2(θ−45°))
かつf’(θ)=0より、合成定在波の腹の位置位相は、
θm=1/2・arctanAr(但し、2つの定在波が同位相で0<θm<45°の場合)となる。
上の式より、腹の位置位相θmは合成定在波を構成する両定在波の振幅比Arによって決定される。したがって、合成定在波(面内振動)の空間的位置位相(腹の位置)が指令値として与えられると、振幅比Ar=Ar2/Ar1が一意に決定される。さらに、振幅比Arが決まると合成定在波の腹位置の振幅f(θm)はAr1の関数として表せるから、合成定在波振幅指令値をもとに両定在波振幅Ar1及びAr2が決まる。なお、45°<θm<90°の場合はR1定在波の位相を反転させて足し合わせることで合成定在波を生成する。
以上より、任意の空間的位置位相に腹を有することが可能な面内2次振動の定在波を生ぜしめることが可能である。そして、この合成定在波を以降は回転定在波(他方の振動駆動による第2の定在波)と呼ぶ。
<第1実施の形態に係る制御装置の構成>
図7は、本発明の第1実施の形態に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
この制御装置は、振動波モータ130(振動波駆動装置)の動作を制御する装置であって、回転定在波発生部110と固定定在波発生部120を備えている。
傾斜回転の目標値として、回転軸、回転数が与えられると、事前に得られている振動波モータ130の特性から固定定在波(面外振動)と回転定在波(面内振動)の振幅・位相差、そして回転定在波(面内振動)の空間的位置位相が決定される。これらの指令値が回転定在波発生部110及び固定定在波発生部120へ送られる。
回転定在波発生部110の機能を説明する。まず、与えられた回転定在波の空間的位置位相の指令値から、回転定在波を構成する2つの面内振動定在波の位相が同じであるか逆であるかを選択し、振幅比を振幅比率計算機111で算出する。そして、振幅指令値に合せて両電圧振幅を電圧振幅決定部112で決定し、R1電極群用の入力電圧振幅Avr1及びR2電極群用の入力電圧振幅Avr2を、信号発生部113と信号発生部114へそれぞれ送信する。そして、両信号発生部113、114は得られた指令に従い駆動信号を生成し、固定定在波との位相差指令に従って発信を行う。
なお、回転定在波を構成する定在波の数は本実施の形態のように2つに限られるものではない。振動発生効率を向上するために3つ以上の回転定在波用電極群を配置した場合でも、同様の考え方で信号を入力すればよい。
一方、固定定在波発生部120では、電圧振幅決定部121で固定定在波の振幅指令値から入力電圧振幅を決定し、F電極群用の信号発生部122で駆動信号の生成と発信が行われる。
このようにして、信号発生部113、114、122では、各定在波の発生用駆動信号が生成される。信号発生部113、114、122からの駆動信号は、給電手段を介して、それぞれ振動波モータ130におけるR1電極群、R2電極群、F電極群(図5参照)へ供給され、傾斜回転が駆動される。
<傾斜回転の回転軸の変化>
次に、回転定在波の空間的位置位相が変化することによって傾斜回転の回転軸が変化することについて、図8及び図9等を参照して説明する。
図8(a),(b),(c)は、駆動振動による接触部3a〜3cの動きを説明する振動子駆動状態図である。図9は、回転定在波による周方向変位を説明する振動子駆動状態図である。
図8において、等間隔に3つ複数配置される複数の接触部3a〜3cは、面外3次振動である固定定在波により同位相で面外方向(紙面垂直方向)に変位を発生する。固定定在波に対して、ある位相差を持たせて励振される回転定在波(面内2次振動)の変形を実線の楕円31〜33で示している。また、面内変形による3つの接触部3a〜3cの変位方向(特にここでは径方向のみ、周方向については後述する)を矢印3a−1〜3c−1で示す。このとき、面内振動が面外振動に対して例えば90度位相が遅れているとすると、3つの接触部3a〜3cは個々に楕円軌道を描き回転体に駆動力を伝達する。
上で説明した内容と同じことであるが、接触部3a〜3cの送り運動による回転軸は、それぞれ接触部とリング中心を結ぶ直線と直角を成す直線になるから、図8(a)中の接触部3a〜3cの送り運動による回転軸はそれぞれ直線20、21、22である。接触部3aと接触部3bの位置は、共に回転定在波の腹の位置から30度ずれた位置である。そのため、発生する駆動力は略一致すると考えてよく、2つの駆動力による回転軸は直線20と21の2等分線である直線22となり、総合すると直線22を回転軸とする傾斜回転を発生する。
図9は、図8(a)に示される接触部3a〜3cの径方向変位3a−1〜3c−1に加えて、実際に発生している周方向の変位を矢印3a−1、3b−2で追加したものである。上の説明では、傾斜回転の駆動力に影響を及ぼす径方向の変位のみを考慮したが、実際には面内2次振動により径方向と周方向の両方の変位が同時に発生しており、合成したベクトルの方向に接触部3a〜3cの先端は振動している。
このとき、回転定在波の腹と空間的位置位相が一致している接触部3cにおいて周方向の変位は発生しない。それ以外の位置にある2つの接触部3a、3bは、図9のように面内2次振動の山の頂点に向かう方向に変位3a−1、3b−2を発生している。面内2次振動の腹と一つの接触部の空間的位置位相が一致している場合、残り2つの接触部の位置は共に同じ山の頂点から60度ずれた位置であるから、接触部の周方向の変位量は等しくなる。そのため、この周方向変位量による駆動力は相殺され無視することができる。
図8(b)、(c)のように回転定在波の腹が、図8(a)から30度ずつ回転した位置に存在する場合、図8(a)と同じ考えにより、回転軸はそれぞれ直線20、21となる。よって、図8(c)の矢印W5、W6が示すように、面内2次振動である回転定在波の腹の位置が60度回転すると、傾斜回転の回転軸は120度移動(図8(c)の矢印W7)する。さらに、回転定在波は180度回転することができる。即ち、上で図5により説明したように回転定在波は0〜90度回転させることができ、かつ90度〜180度に関しては固定定在波との位相差の関係で設定できる。これにより、傾斜回転の回転軸は360度可変である。
以上より、回転定在波の空間的位置位相が平面内で回転することによって、傾斜回転の回転軸の位置を制御することが可能である。
<本実施の形態に係る利点>
本実施の形態に係る制御装置を使用することにより、等間隔に配置された3点の接触部による駆動が可能であるから、常に略均等な接触面圧となる安定した接触状態を長期に渡って維持することが可能となる。これにより、振動波モータの多自由度駆動制御も簡単化され、高耐久化を図る上で有利である。
また、本実施の形態の方式では、メカ的な原因により発生する不要な送り運動を制御装置からの電気的な駆動信号によってキャンセルすることが可能となるため、振動子製作が簡単になって生産性を高めることができる。これにより、各部品の加工精度や組み立て精度などを落とした設計が可能となり、量産性の向上及びコスト削減を図ることができる。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、面内2次振動の腹と一つの接触部の空間的位置位相が一致している場合のみ考慮した。ところが、不要な周方向変位を説明する図10に示すように、図8(a)と図8(b)の中間地点に腹を有する回転定在波の位置位相では、周方向の変位の向きと大きさのバランスが崩れるから、打ち消し合った結果として残存するどちらか一方の方向の水平回転が発生する。水平回転成分は傾斜回転において不要であるため、この水平回転方向の送り運動成分を打ち消す必要がある。
また、図11(a),(b)は、固定定在波による接触部の挙動の説明図であり、固定定在波である面外振動による接触部3a〜3cの挙動を水平方向(リング側面の法線方向)から見たものである。実振幅はミクロンオーダであるため、振幅を拡大し可視化したものである。固定定在波の腹と接触部との空間的位置位相が完全に一致すれば、図11(a)のように周方向変位は発生しない。しかし、加工精度や組み立て精度などメカ的な原因などにより完全な一致は有り得ないため、接触部3a〜3cの先端は図11(b)が示すように周方向の変位が発生する。これを踏まえ、以下、第2の実施形態について詳述する。
<第2実施の形態に係る制御装置の構成及び動作>
図12は、本発明の第2実施の形態に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図であり、図7と共通の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態における制御装置は、図7に示した構成において、付加定在波発生部140を追加した構成となっている。傾斜回転の目標値として、回転軸、回転数が与えられると、固定定在波と空間的位置位相が90度ずれた位置の面外3次振動の定在波(付加定在波:第3の定在波)の振幅・位相差(対固定定在波)が決定される。この指令値は、付加定在波発生部140へ送られる。そして、信号発生部142では付加定在波発生用の駆動信号が生成されて振動波モータ130に供給され、傾斜回転が駆動される。
付加定在波を発生する電極群は、図5のAで示される。A電極群はF電極群と位置位相が90度ずれた位置に交互に配置されており、固定定在波と時間的に90度位相差を持たせて付加定在波を励振させることにより面外3次振動の進行波を生成することができる。付加定在波の振幅は、固定定在波による接触部の面外方向の変位量に影響を与えないから、固定定在波と回転定在波の組み合せによる傾斜方向の送り運動とは関係ないものとして考えることができる。そのため、付加定在波の振幅、つまり進行波による送り運動を独立して制御することができる。
付加定在波の振幅値によって、2つの定在波による進行波の振幅分布は、図13のようになる。図13は、2つの定在波による進行波の振幅分布を示すグラフである。同図の縦軸は進行波振幅、横軸はリングタイプ振動子4の空間的位置位相であり、図中のX1、X2、X3位置にそれぞれ接触部が配置されている。このとき、3つの接触部のX1、X2、X3位置(60度、180度、300度)と固定定在波の腹の位置は一致しており、この位置での進行波振幅は固定定在波の振幅指令値で決定される。
また、隣り合う接触部の中間地点である0度、120度、240度の位置も固定定在波の腹の位置であるから、進行波振幅は接触部と同じである。なお、接触部位置と固定定在波の山が理想的に一致していれば、固定定在波のみによる接触部先端の周方向変位は0である。そして、A電極群とF電極群の位置位相は90度ずれているから、隣り合う固定定在波の腹の中間地点での振幅が付加定在波の振幅指令値である。即ち、図13では、固定定在波の振幅1に対して「0.2」、「0.8」、「1.5」としたときの進行波振幅分布を示している。
本実施の形態の制御装置は、上に挙げた2例のように不要な水平回転方向の送り運動が発生する場合にこの成分をキャンセルする方向に進行波を生成している。付加定在波と固定定在波の位相差により進行波の移動方向が決まり、付加定在波の振幅により進行波による接触部先端の周方向振幅が決定される。
以上より、進行波を形成する固定定在波と付加定在波間の位相差と付加定在波の振幅を制御することにより、自在に周方向の送り運動を制御することが可能であり、不要な水平回転方向の送り運動成分を打ち消すことが可能となる。
なお、第1及び第2の実施の形態では、図5のように固定定材波を励振するF+電極群の位置に固定定材波の1波長間隔で接触部を配置しているが、F−電極群の位置に配置しても同じことである。また、1/2波長ステップでF電極群すべての位置に配置しても本駆動原理は成立する。さらに、F+電極が6個、つまり固定定材波が面外6次振動のときは、2波長間隔にして3つの接触部を設けるようなことも可能である。なお、3つの接触部は必ずしも等間隔である必要はなく、駆動力のバランスで回転軸の位置が可変であることを確認して接触部を配置すればよい。
[第3の実施の形態]
<第3実施の形態の制御装置の構成>
図14は、本発明の第3実施の形態に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
与えられる任意軸回転の目標値としての回転軸、回転数から、傾斜回転成分と水平回転成分を計算する。これに合せて事前に得られている振動波モータ130の特性から固定定在波(面外振動)と回転定在波(面内振動)の振幅・位相差、そして回転定在波(面内振動)の空間的位置位相が決定される。さらに、付加定在波(面外振動)の振幅・位相差(対固定定在波)も決定される。これらの指令値が各定在波発生部110、120、140に送られ、それぞれの信号発生部113、114、121、142では、各定在波の発生用駆動信号が生成されるとともに、振動波モータ130に入力され傾斜回転が駆動される。
本実施の形態では、第2実施の形態で示した図12の各定在波発生部110、120、140の構成をそのまま使用し、また、不要な水平回転方向の送り運動成分を相殺する制御機能を残している。さらに積極的に水平回転を発生すべく、付加定在波の振幅及び位相差が設定される構成となっている。したがって、水平回転方向の送り運動成分と前記傾斜回転方向の送り運動成分の比率を任意に定めることで任意軸回りの駆動を実現することが可能である。
即ち、本実施の形態の構成では、回転体の回転軸と回転数を測定する検出手段が配置されるセンサ部150を設けている。センサ部150の検出データからは傾斜回転成分151と水平回転成分152が算出され、各成分データのフィードバックによって各定在波指令値が制御される。
図15は、本発明の第3実施の形態の変形例に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
この制御装置の構成は、図15のように、回転体の絶対位置を測定或いは計算する検出手段をセンサ部153に設けている。このセンサ部153によって得られる現在位置から目標位置への理想的な軌道を修正回転軸計算部154で再計算させ、新たな修正回転軸指令値を左上の任意軸設定に返して制御する構成である。もちろん、これらセンサ部153は組み合せて使用することもできるし、第1及び第2の実施の形態の制御装置にも設置することも可能である。
なお、本第3の実施の形態に係るシステムでは、例えば、長時間駆動や駆動環境により接触状態(主に摩擦係数)が変化する場合や振動波モータの特性が事前に得られていない場合を想定する。そのため、センサ部150、153からのデータと入力信号の関係から制御パラメータが自動調整され逐次パラメータが更新されることが望ましい。これは、任意軸回りの回転が可能な振動波モータでは、使用頻度の高い回転軸によって各接触部の劣化の進行状況に差が生じ、初期の制御パラメータからの変化が大きくなりやすい。また、仮に初期モータ特性が同じものが2つあったとしても、その後の使用状況によって大きく特性が異なるものになりやすいからである。
なお、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。又は、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行う場合である。
実施の形態に使用する振動波モータのリングタイプ振動子を示す斜視図である。 任意軸回りの駆動における回転軸の説明図である。 振動子に発生させる駆動振動の次数及びその空間的位置位相を示す模式図である。 駆動力伝達の説明図である。 圧電素子の電極パターン図である。 回転定在波を変形した例を示す図である。 第1実施の形態に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。 駆動振動による接触部の動きを説明する振動子駆動状態図である。 回転定在波による周方向変位を説明する振動子駆動状態図である。 不要な周方向変位を説明する説明図である。 固定定在波による接触部の挙動の説明図である。 第2実施の形態に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。 2つの定在波による進行波の振幅分布を示すグラフである。 第3実施の形態に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。 第3実施の形態の変形例に係る、振動波駆動装置の制御装置の構成を示すブロック図である。 面外振動と面内振動の一例を示す図である。
符号の説明
2 圧電素子
3a〜3c 接触部
4 振動子
13 回転体
110 回転定在波発生部
120 固定定在波発生部
130 振動波モータ
140 付加定在波発生部

Claims (8)

  1. 第1の定在波を、回転体との接触部を複数有する振動子に発生させるための第1の駆動信号を、振動子の電気/機械エネルギー変換素子に供給する第1の信号発生部と、
    2つの定在波から合成される第2の定在波を、前記振動子に発生させるための第2の駆動信号及び第3の駆動信号を、前記振動子の前記電気/機械エネルギー変換素子にそれぞれ供給する、第2の信号発生部及び第3の信号発生部と、
    前記第1の定在波と合成されて前記振動子に進行波を発生させる、第3の定在波を発生させるための第4の駆動信号を、振動子の電気/機械エネルギー変換素子に供給する第4の信号発生部と、
    を備え、
    前記第2の定在波は前記第2の駆動信号及び前記第3の駆動信号により、腹の空間的位置位相が制御され、
    前記第1及び第3の定在波は面内振動定在波かつ前記第2の定在波は面外振動定在波、または前記第1及び第3の定在波は面外振動定在波かつ前記第2の定在波は面内振動定在波であり、
    前記進行波は、前記第1の定在波に対し、第3の定在波が時間的位相をずらして励起されることで生成され、前記進行波により、前記振動子の中心軸を回転軸とする水平方向の回転の送り運動を発生させることを特徴とする振動波駆動装置の制御装置。
  2. 前記回転体の回転中心を含みかつ前記振動子の中心軸を法線ベクトルとする平面内に回転軸を有する傾斜方向の回転において、前記第2の定在波の腹の空間的位置位相によって、前記傾斜方向の回転の回転軸の位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置の制御装置。
  3. 前記第2の定在波を構成する2つ以上の定在波の振幅比によって、前記第2の定在波の腹の空間的位置位相を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の振動波駆動装置の制御装置。
  4. 前記進行波は、前記複数の接触部に励起される送り運動の総和における、不要な水平方向の回転の送り運動を打ち消す方向に生成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
  5. 前記水平方向の回転の送り運動は、前記進行波を形成する前記第1の定在波と前記第3の定在波の間の位相差と、前記第3の定在波の振幅とにより制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
  6. 前記水平方向の回転の送り運動成分と前記傾斜方向の回転の送り運動成分との比率により、前記回転体の回転の回転軸を定めることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
  7. 前記進行波を形成する前記第1の定在波と前記第3の定在波の間の時間的な位相差は90度であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
  8. 前記第1の定在波は偶数次数の駆動振動であり、かつ前記第2の定在波は奇数次数の駆動振動である、または、前記第1の定在波は奇数次数の駆動振動であり、かつ前記第2の定在波は偶数次数の駆動振動である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の振動波駆動装置の制御装置。
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