以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。ここで、実施の形態では、車両挙動制御装置が車両の回転方向、すなわちヨー方向、ロール方向、ピッチ方向のうち、ロール方向における挙動の制御を行う場合について説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
[実施の形態]
図1は、本発明にかかる車両挙動制御装置の構成例を示す図である。図2は、制御装置の構成例を示す図である。図1に示すように、車両挙動制御装置1は、車両100に搭載されている。
ここで、車両100は、左右の前輪101R,101Lがドライブシャフト103に回転自在に連結されており、左右の後輪102R,102Lがドライブシャフト104に回転自在に連結されている。ドライブシャフト103,104の少なくともいずれか一方には、図示しない内燃機関や電動機などの駆動源からの駆動力が伝達される。従って、駆動源からの駆動力は、ドライブシャフト103,104の少なくともいずれか一方を介して左右の前輪101R,101Lあるいは左右の後輪102R,102Lに伝達され、路面で伝達される。これにより、車両100は、車長方向に前進あるいは後進することができる。また、車両100は、左右の前輪101R,101Lの操舵を行う操舵装置105が搭載されている。操舵装置105は、運転者がステアリングホイール105aを回転操作することで、ステアリングホイール105aの回転操作に連動して左右の前輪101R,101Lの操舵を行うものである。
車両挙動制御装置1は、車両100の挙動に基づいてジャイロモーメントMを発生するものである。車両挙動制御装置1は、ジャイロ2と、ジンバル3と、車速センサ4と、操舵角センサ5と、回転体センサ6と、ジャイロセンサ7と、制御装置8と、ジャイロドライバ9と、ジンバルドライバ10と、バッテリ11とにより構成されている。
ジャイロ2は、回転体21と、回転軸22と、ケーシング23とにより構成されている。
回転体21は、回転軸22によりケーシング23に対して回転可能に支持されている。ケーシング23は、ジンバル3を介して車両100と連結している。従って、回転体21は、車両100に対して回転軸22周りに回転可能に支持されている。なお、回転体21の半径および質量は、車両100の挙動制御に要求されるジャイロモーメントMに基づいて予め設定される。なお、回転軸22は、基本的に車幅方向に平行に配置されている。従って、回転体21は、基本的にピッチ方向に回転することができる。
回転体21は、回転子としての機能を有する。また、ケーシング23は、回転する回転体21に対して静止するものであり、固定子としての機能を有する。従って、ジャイロ2は、固定子と、回転子と、回転軸22とにより構成される1つのジャイロモータジェネレータである。ジャイロ2は、ジャイロドライバ9を介して、制御装置8に接続されており、制御装置8によりジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの駆動制御が行われる。また、ジャイロ2は、ジャイロドライバ9を介して、バッテリ11に接続されている。ここで、ジャイロ2の制御装置8による駆動制御には、ジャイロドライバ9によりバッテリ11から電力が供給されることで回転体21を回転するモータとして制御する回転駆動制御と、ジャイロドライバ9により回転体21に回転方向と反対方向の制動力を与えることで発電するジェネレータとして制御する発電駆動制御がある。つまり、ジャイロ2は、モータジェネレータであり、回転体回転手段であり、制動力付与手段でもある。
ジンバル3は、クラッチ装置31と、ダンパ装置32と、回転軸33と、ジンバルモータ34とにより構成されている。
クラッチ装置31は、伝達率変更手段であり、ジンバルモータ34によるジャイロ2を回転させるジャイロ回転力のジャイロ2への伝達率を変更するものである。クラッチ装置31は、ジャイロ2とジンバルモータ34と間に配置されている。クラッチ装置31は、ジャイロ2とジンバルモータ34とを連結するクラッチONと、ジャイロ2とジンバルモータ34との連結を解放するクラッチOFFとを切り替えるものである。クラッチ装置31は、制御装置8と接続されており、制御装置8によりON/OFF制御が行われることで、ジャイロ2とジンバルモータ34との連結、連結の解放を切り替え、ジャイロ2に伝達されるジンバルモータ34のジャイロ回転力の伝達率を変更する。
ダンパ装置32は、伝達率変更手段であり、ジンバルモータ34によるジャイロ2を回転させるジャイロ回転力のジャイロ2への伝達率を変更するものである。ダンパ装置32は、ジャイロ2とジンバルモータ34との間に配置されている。ダンパ装置32は、ジャイロ2に伝達されるジンバルモータ34のジャイロ回転力の伝達率を少なくするものであり、例えば弾性体などで構成されている。
回転軸33は、ジャイロ回転支持手段である。回転軸22と直交して配置されている。回転軸33は、一方の端部がケーシング23と連結され、他方の端部がジンバルモータ34と連結されている。つまり、回転軸33は、ジャイロ2のケーシング23に連結されることで、ジャイロ2を回転体21の回転軸22と直交する回転軸33回りに回転可能に支持するものである。なお、回転軸33は、車高方向に平行に配置されている。従って、回転軸33は、ヨー方向に回転することができる。つまり、ジャイロ2は、ヨー方向に回転することができる。
ジンバルモータ34は、ジャイロ回転手段であり、ジャイロ2を回転させるものである。ジンバルモータ34は、車両100に固定されており、クラッチ装置31およびダンパ装置32が途中に配置された回転軸33を回転するものである。つまり、ジンバルモータ34は、回転軸33を介して、ケーシング23を回転軸33周りに回転させることで、ジャイロ2を回転させる。ジンバルモータ34は、ジンバルドライバ10を介して、制御装置8に接続されており、制御装置8により駆動制御が行われる。ここで、ジンバルモータ34の制御装置8による駆動制御は、ジンバルドライバ10によりバッテリ11から電力が供給されることでジャイロ2を回転するモータとして制御する。
車速センサ4は、車速検出手段であり、車両100の車速を検出するものである。車速センサ4は、制御装置8に接続されており、検出された車両100の車速Vが制御装置8に出力される。ここで、車速センサ4は、例えばドライブシャフト103に対向して配置され、ドライブシャフト103の軸周りの変位量を光学的あるいは力学的に検出するものである。また、車速センサ4は、各車輪に設けられた車輪速センサであっても良い。この場合は、制御装置8が各車輪に設けられた車速センサ4である車輪速センサからの各車輪の速度に基づいて、車両100の車速Vを算出する。
操舵角センサ5は、操舵量検出手段であり、車両100の操舵量を検出するものである。操舵角センサ5は、実施の形態では、車両100の操舵量として、操舵角を検出するものである。操舵角センサ5は、制御装置8に接続されており、検出された車両100の操舵量である車両100の操舵角θが制御装置8に出力される。ここで、操舵角センサ5は、例えば操舵装置105のステアリングアームに対向して配置され、ステアリングアームの軸周りの変位量を光学的あるいは力学的に検出するものである。
回転体センサ6は、回転体回転速度検出手段であり、回転体21の回転体回転速度を検出するものである。回転体センサ6は、制御装置8に接続されており、検出された回転体21の回転体回転速度ωが制御装置8に出力される。ここで、回転体センサ6は、例えば回転軸22に対向して配置され、回転軸22周りの変位量を光学的あるいは力学的に検出するものである。
ジャイロセンサ7は、ジャイロ回転速度検出手段であり、ジャイロ2のジャイロ回転速度を検出するものである。ジャイロセンサ7は、制御装置8に接続されており、検出されたジャイロ2のジャイロ回転速度が制御装置8に出力される。ここで、ジャイロセンサ7は、例えば回転軸33に対向して配置され、回転軸33周りの変位量を光学的あるいは力学的に検出するものである。
制御装置8は、車両挙動制御装置1を制御するものであり、特に回転体21の回転体回転速度およびジャイロ2のジャイロ回転速度を制御するものである。制御装置8は、図2に示すように、車両挙動制御装置1が搭載された車両100の各所に取り付けられたセンサから、各種入力信号が入力される。入力信号としては、例えば、車速センサ4により検出された車両100の車速、操舵角センサ5により検出された車両100の操舵角、回転体センサ6により検出された回転体21の回転体回転速度、ジャイロセンサ7により検出されたジャイロ2の回転体回転速度などがある。
制御装置8は、これら入力信号と、記憶部83に格納されている車速および回転体21の回転体回転速度に基づいた第1回転体回転速度マップおよび操舵角θおよび回転体21の回転体回転速度ωに基づいた第2回転体回転速度マップとに基づいて各種出力信号を出力する。出力信号としては、例えば、ジャイロドライバ9を介したジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの駆動制御を行うジャイロ駆動制御信号、クラッチ装置31のON/OFF制御を行うON/OFF信号、ジンバルドライバ10を介したジンバルモータ34の駆動制御を行うジンバル駆動制御信号などがある。
また、制御装置8は、上記入力信号や出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)81と、処理部82と、第1回転体回転速度マップおよび第2回転体回転速度マップなどの各種マップなどを格納する記憶部83とにより構成されている。処理部82は、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部82は、少なくとも回転体回転速度算出部84と、要求ジャイロモーメント算出部85と、ジャイロ回転速度算出部86と、回転体回転制御部87と、ジャイロ回転制御部88とを有している。処理部82は、車両挙動制御装置1による車両挙動制御方法などに基づくプログラムをメモリにロードして実行することにより、車両挙動制御装置1による車両挙動制御方法などを実現させるものであっても良い。また、記憶部83は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
回転体回転速度算出部84は、回転体21の回転体回転速度を算出するものである。回転体回転速度算出部84は、検出された車両100の車速および操舵角と、第1回転体回転速度マップおよび第2回転体回転速度マップとに基づいて、回転体回転速度を算出する。
要求ジャイロモーメント算出部85は、車両挙動制御装置1が車両100の挙動の制御、すなわち車両100の回転方向であるヨー方向、ロール方向、ピッチ方向における挙動制御を行う際に、発生させるジャイロモーメント、すなわち要求されるジャイロモーメントを算出するものである。実施の形態にかかる車両挙動制御装置1では、車両100のロール方向における挙動制御を行う際に、ロール方向に発生させるジャイロモーメントを要求されるジャイロモーメントとして算出する。要求ジャイロモーメントは、車速センサ4により検出された車速、操舵角センサ5により検出された操舵角、図示しない加速度センサにより検出された車両100のロール方向における加速度などに基づいて算出される。
ここで、回転体21の遠心力Fは、回転体21の慣性モーメントIであり、回転体21が薄い円板であるとすると、半径rと質量Mと回転体回転速度ωとの式であるF=I=1/2(MR2)ωにより求められる。従って、車両挙動制御装置1が発生するジャイロモーメントMは、回転体21の遠心力Fとジャイロ回転速度Ωとの式であるM=F×Ω=1/2(MR2)ωΩにより求められる。つまり、ジャイロモーメントMは、遠心力Fとジャイロ回転速度Ωとの積であり、回転体回転速度ωとジャイロ回転速度Ωとの積に比例する。従って、一定のジャイロモーメントMを発生するために、回転体回転速度ωを大きくすれば、ジャイロ回転速度Ωを小さくすることができる。
ジャイロ回転速度算出部86は、ジャイロ2のジャイロ回転速度Ωを算出するものである。ジャイロ回転速度算出部86は、回転体回転速度算出部84により算出された回転体21の回転体回転速度ωと、要求ジャイロモーメント算出部85により算出された要求ジャイロモーメントMdとに基づいて算出される。ジャイロ回転速度Ωは、ジャイロモーメントMが回転体回転速度ωとジャイロ回転速度Ωとの積に比例するので、回転体回転速度ωとジャイロ回転速度Ωと要求ジャイロモーメントMdと、関係式であるΩ=Md/ωにより求められる。なお、実施の形態では、ジンバル3がダンパ装置32を備えているので、ジャイロ回転力の伝達率を考慮して、要求されるジャイロモーメントMdに対するジャイロ回転速度Ωを算出することが好ましい。
回転体回転制御部87は、上記回転体回転速度算出部84により算出された回転体回転速度ωにより回転体21を駆動制御するものである。回転体回転制御部87は、ジャイロドライバ9を介して、算出された回転体回転速度ωと回転体センサ6により検出された現在の回転体回転速度ωrとに基づいてジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの回転駆動制御あるいは発電駆動制御のいずれかを行う。
ジャイロ回転制御部88は、上記ジャイロ回転速度算出部86により算出されたジャイロ回転速度Ωによりジャイロ2を駆動制御するものである。ジャイロ回転制御部88は、ジンバルドライバ10を介して、算出されたジャイロ回転速度Ωとジャイロセンサ7により検出された現在のジャイロ回転速度Ωrとに基づいてジンバルモータ34の駆動制御を行う。
ジャイロドライバ9は、ジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの駆動を行うものである。ジャイロドライバ9は、ジャイロ2と、制御装置8と、バッテリ11とに接続されている。ジャイロドライバ9は、ジャイロ2とバッテリ11との接続状態を制御装置8の駆動制御により切り替えるものである。ジャイロドライバ9は、制御装置8によりジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの回転駆動制御が行われる場合は、バッテリ11からジャイロ2へ電力を供給することで、ジャイロ2に回転体21を回転させ、モータとして駆動する。一方、ジャイロドライバ9は、制御装置8によりジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの発電駆動制御が行われる場合は、ジャイロ2に回転体21に回転方向と反対方向の制動力を与えることで発電させ、発電した電力をバッテリ11に蓄電し、ジェネレータとして駆動する。
ジンバルドライバ10は、ジンバルモータ34の駆動を行うものである。ジンバルドライバ10は、ジンバルモータ34と、制御装置8と、バッテリ11とに接続されている。ジンバルドライバ10は、制御装置8によりジンバルモータ34の駆動制御が行われる場合は、バッテリ11からジンバルモータ34へ電力を供給することで、ジンバルモータ34に回転軸33を介してジャイロ2を回転させ、駆動する。
バッテリ11は、車両100に搭載されるものである。バッテリ11は、車両100に駆動源として電動機が搭載されている場合に、電動機に電力を供給するバッテリであっても良い。なお、クラッチ装置31は、バッテリ11と接続されており、クラッチ装置31のON/OFF制御をバッテリ11から供給される電力により行っても良い。
次に、車両挙動制御装置1の車両挙動制御方法について説明する。図3は、車両挙動制御装置による車両挙動制御方法のフローを示す図である。図4は、回転体回転制御のフローを示す図である。図5は、第1回転体回転速度マップの一例を示す図である。図6は、第2回転体回転速度マップの一例を示す図である。図7は、回転体回転速度とジャイロ回転速度との積と、車速との関係を示す図である。なお、車両挙動制御装置1による車両挙動制御方法は、車両挙動制御装置1の制御周期ごとに行われる。以下では、車両挙動制御装置1による挙動制御の一例として、図1に示すように、車両100が左旋回Rすることで、車両100のロール方向うち、旋回方向と反対方向(時計回り)に車両100がロールし、車両100のロール方向おける挙動が変化するとする。この場合、車両100がロールする方向と反対方向(反時計回り)にジャイロモーメントMを発生して、車両挙動制御装置1による挙動制御を行う場合について説明する。
まず、図3に示すように、制御装置8の処理部82の回転体回転速度算出部84は、車速V、操舵角θを取得する(ステップST1)。ここでは、回転体回転速度算出部84は、車速センサ4により検出された車速Vおよび操舵角センサ5により検出された操舵角θを取得する。
次に、回転体回転速度算出部84は、回転体回転速度ωを算出する(ステップST2)。ここでは、回転体回転速度算出部84は、上記取得された車両100の車速Vおよび操舵角θと、記憶部83に格納されている車速Vおよび回転体21の回転体回転速度ωに基づいた第1回転体回転速度マップおよび操舵角θと回転体21の回転体回転速度ωに基づいた第1回転体回転速度マップおよび第2回転体回転速度マップとに基づいて、回転体回転速度ωを算出する。
第1回転体回転速度マップは、図5に示すように、車速Vの増加に伴い回転体回転速度ωが増加して算出されるように設定されている。つまり、第1回転体回転速度マップは、車速Vの増加に伴い回転体21の遠心力Fが増加するように設定されている。従って、回転体回転速度算出部84は、取得された車速Vが高い、すなわち車両100の高速領域では、低速領域において算出される回転体回転速度ωよりも大きな回転体回転速度ωが算出される。ここで、実施の形態にかかる第1回転体回転速度マップでは、車速Vが0から所定値V1までは、回転体回転速度ωの増加変化量が一定であり、所定値V1を超えると回転体回転速度ωの増加変化量が増加するように設定されている。
また、第2回転体回転速度マップは、図6に示すように、操舵角θ、ここでは操舵角θの絶対値(|θ|)の増加に伴い回転体回転速度ωが増加して算出されるように設定されている。つまり、第2回転体回転速度マップは、車両100の操舵量(操舵量の絶対値)の増加に伴い回転体21の遠心力Fが増加するように設定されている。従って、回転体回転速度算出部84は、取得された操舵角|θ|が多い、すなわち車両100の急旋回時には、大きな回転体回転速度ωが算出される。これにより、操舵量である操舵角θの増加に伴って、予め回転体回転速度ωを増加することで回転体21に発生する遠心力Fを増加しておく。つまり、車両100が急旋回などをして車両100のロール方向における挙動が急変しても、小さいジャイロ回転速度Ωで、要求されるジャイロモーメントMdを発生することができる。これにより、車両挙動制御装置1は、車両100の急旋回時の車両100のロール方向における挙動に対する制御応答性を向上することができる。
ここで、実施の形態にかかる第1回転体回転速度マップは、車速Vの増加に伴い回転体回転速度ωの増加変化量が一定に設定されていても良いし、所定値V1を超えると回転体回転速度ωの増加変化量が減少するように設定されていても良い。また、実施の形態にかかる第2回転体回転速度マップでは、車速Vの増加に伴い回転体回転速度ωの増加変化量が一定となるように設定されている。なお、第1回転体回転速度マップは、車速Vの所定値を超えると回転体回転速度ωの増加変化量が増加するように設定されていても良いし、所定値を超えると回転体回転速度ωの増加変化量が減少するように設定されていても良い。
次に、回転体回転制御部87は、上記回転体回転速度算出部84により算出された回転体回転速度ωに基づいて回転体21の回転制御を行う(ステップST3)。
まず、回転体回転制御部87は、図4に示すように、現在の回転体回転速度ωrを取得する(ステップST301)。ここでは、回転体回転速度算出部84は、回転体センサ6により検出され、制御装置8に出力された回転体21の現在の回転体回転速度ωrを取得する。
次に、回転体回転制御部87は、取得された現在の回転体回転速度ωrと、算出された回転体回転速度ωとを比較する(ステップST302)。ここでは、取得された現在の回転体回転速度ωrから算出された回転体回転速度ωを減算した値が0、プラス、マイナスのいずれかであるかを判断する。
次に、回転体回転制御部87は、現在の回転体回転速度ωrから回転体回転速度ωを減算した値が0であると判定すると(ステップST302「0」)、ステップST4に移行する。
次に、回転体回転制御部87は、現在の回転体回転速度ωrから回転体回転速度ωを減算した値がプラスであると判定すると(ステップST302「+」)、ジャイロ2をバッテリ駆動する(ステップSST303)。ここでは、回転体回転制御部87は、ジャイロドライバ9を介して、ジャイロ2であるジャイロモータジェネレータのバッテリ駆動、すなわち回転駆動制御を行う。つまり、回転体回転制御部87は、ジャイロドライバ9を介して、ジャイロ2であるジャイロモータジェネレータに、取得された現在の回転体回転速度ωrが算出された回転体回転速度ωとなるように、バッテリ11の電力を供給する。従って、回転体21は、ジャイロ2により算出された回転体回転速度ωとなるまで増速される。なお、現在の回転体回転速度ωrが算出された回転体回転速度ωとなると、現在の回転体回転速度ωrから回転体回転速度ωを減算した値が0となるので、ステップST4に移行する。
次に、回転体回転制御部87は、現在の回転体回転速度ωrから回転体回転速度ωを減算した値がマイナスであると判定すると(ステップST302「−」)、ジャイロ2に回生ブレーキをさせる(ステップSST304)。ここでは、回転体回転制御部87は、ジャイロドライバ9を介して、ジャイロ2であるジャイロモータジェネレータの回生ブレーキ、すなわち発電駆動制御を行う。つまり、回転体回転制御部87は、ジャイロドライバ9を介して、ジャイロ2であるジャイロモータジェネレータに、取得された現在の回転体回転速度ωrが算出された回転体回転速度ωとなるように、ジャイロ2に回転体21に回転方向と反対方向の制動力を与えることで発電させる。そして、発電した電力をジャイロドライバ9を介して、バッテリ11に蓄電する。従って、回転体21は、ジャイロ2により算出された回転体回転速度ωとなるまで減速される。なお、現在の回転体回転速度ωrが算出された回転体回転速度ωとなると、現在の回転体回転速度ωrから回転体回転速度ωを減算した値が0となるので、ステップST4に移行する。
以上により、回転体21は、回転体回転速度ωで回転する。例えば、回転体21の回転方向となる車両100のピッチ方向のうち矢印A方向に回転する。これにより、回転体21には、遠心力Fが発生する。従って、発生する回転体21の遠心力Fは、車速Vあるいは操舵量である操舵角θに基づいて変化する。ここでは、発生する回転体21の遠心力Fは、車速Vの増加に伴いあるいは操舵量である操舵角θの増加に伴い増加する。つまり、回転体21は、取得された車速Vが高い、すなわち車両100の高速領域では、低速領域において発生する遠心力Fよりも高い遠心力Fを発生する。また、回転体21は、取得された操舵角|θ|が多い、すなわち車両100の急旋回時にも、高い遠心力Fを発生する。
また、ジャイロ2がジャイロモータジェネレータであるので、回転体21を減速させる際にジャイロ2をジェネレータとして機能させることで、例えば回転体21に回転方向と反対方向の制動力を与え、回転体21を減速することができるとともに、発電をすることができる。従って、発電された電力をバッテリ11に蓄電することで、回転体21の減速時におけるエネルギーを効率良く利用することができる。
また、ジャイロ2がジャイロモータジェネレータであるので、回転体21を減速させる際に、回転体21に回転方向と反対方向の制動力を与えることができる。従って、回転体21に発生する遠心力Fを素早く減少させることができ、発生することができるジャイロモーメントMを素早く減少させることができる。これにより、ジャイロモーメントMによる挙動制御の制御性を向上することができる。
次に、制御装置8は、挙動制御を実行するか否かを判断する(ステップST4)。ここでは、制御装置8は、現在の車両100のロール方向における挙動が車両挙動制御装置1により挙動制御が必要であるか否かを判断する。制御装置8は、例えば、操舵角センサ5により検出された車両100の操舵角θや、図示しない加速度センサにより検出された車両100のロール方向の加速度などの、車両100のロール方向の挙動が変化する要因に基づいて車両挙動制御装置1により挙動制御が必要であるか否かを判断する。なお、車両挙動制御装置1により挙動制御が必要であるか否かの判断には、上記2つの要因に車速センサ4により検出された車速Vを加えても良い。これは、車両100の車速Vによっては、同一操舵角θであっても、車両100の各回転方向うちロール方向における挙動が急変する場合、例えば路面に対して前輪101R,Lあるいは後輪102R、Lの少なくともいずれか一方がスリップする場合などがあるからである。
次に、要求ジャイロモーメント算出部85は、制御装置8により挙動制御を実行すると判断されると(ステップST4肯定)、要求ジャイロモーメントMdを算出する(ステップST5)。ここでは、要求ジャイロモーメント算出部85は、現在の車両100のロール方向における挙動に対して、ロール方向に発生させるジャイロモーメントMである要求ジャイロモーメントMdを算出する。要求ジャイロモーメント算出部85は、車速センサ4により検出された車速V、操舵角センサ5により検出された操舵角θ、図示しない加速度センサにより検出された車両100のロール方向における加速度などに基づいて要求ジャイロモーメントMdを算出する。例えば、要求ジャイロモーメント算出部85は、車両100が左旋回Rすることで、車両100のロール方向おける挙動が変化している場合、車両100がロールする方向と反対方向にジャイロモーメントMが発生するように、要求ジャイロモーメントMdを算出する。
ここで、要求ジャイロモーメント算出部85は、要求ジャイロモーメントMdを車速センサ4により検出された車速Vの増加に伴い増加しないように算出する。つまり、車両100の各回転方向のうちロール方向のジャイロモーメントMを車速センサ4により検出された車速Vの増加に伴い増加しないように算出する。要求ジャイロモーメント算出部85は、例えば、図7に示すように、ジャイロモーメントMに比例する回転体回転速度ωとジャイロ回転速度Ωとの積が検出された車速Vが0から所定値V2となるまでは一定となり、所定値V2を超えると減少するように、要求ジャイロモーメントMdを算出する。つまり、要求ジャイロモーメント算出部85は、発生するジャイロモーメントが検出された車速Vの増加に拘わらず一定、あるいは検出された車速Vの増加に伴い小さくなるように、要求ジャイロモーメントMdを算出する。従って、車速Vが増加しても、車両挙動制御装置1が発生するジャイロモーメントMは、大きくならない。これにより、車両100の各回転方向のうちロール方向における挙動が急変し、例えば急変前よりも急変後に要求されるジャイロモーメントMdが極端に減少しても、発生するジャイロモーメントMが大きくならなく、要求されるジャイロモーメントMdを発生させるための制御量に対するジャイロモーメントMの発生量が小さくなるので、制御精度を高めることができる。
次に、ジャイロ回転速度算出部86は、ジャイロ回転速度Ωを算出する(ステップST6)。ここでは、ジャイロ回転速度算出部86は、上記算出された回転体回転速度ωと、上記算出された要求ジャイロモーメントMdとに基づいて、ジャイロ回転速度Ωを算出する。ジャイロ回転速度算出部86は、上述のように、算出された回転体回転速度ωと、算出された要求ジャイロモーメントMdと、関係式Ω=Md/ωとにより、ジャイロ回転速度Ωを算出する。例えば、ジャイロ回転速度算出部86は、図1に示すように、車両100が左旋回Rすることで、車両100のロール方向おける挙動が変化している場合で、回転体21がピッチ方向のうち矢印A方向に回転している場合、車両100が左旋回Rすることでロールする方向と反対方向にジャイロモーメントMを発生するために、回転体21の回転方向であるヨー方向のうち矢印B方向に回転するように、ジャイロ回転速度Ωを算出する。
次に、図3に示すように、ジャイロ回転制御部88は、上記ジャイロ回転速度算出部86により算出されたジャイロ回転速度Ωに基づいてジャイロ2の回転制御を行う(ステップST7)。ここでは、まず制御装置8は、クラッチ装置31のON/OFF制御を行いクラッチON状態とする。これにより、ジンバルモータ34とジャイロ2とが連結し、ジンバルモータ34が発生したジャイロ回転力をジャイロ2に伝達できる状態とする。次に、ジャイロ回転制御部88は、ジンバルドライバ10を介して、ジンバルモータ34、例えばジャイロセンサ7により検出され、制御装置8に出力された現在のジャイロ回転速度Ωr(通常、Ωr=0)が算出されたジャイロ回転速度Ωとなるように、バッテリ11の電力を供給する。従って、ジャイロ2には、ジンバルモータ34が発生したジャイロ回転力がダンパ装置32およびクラッチ装置31を介して伝達される。これにより、ジャイロ2は、算出されたジャイロ回転速度Ωとなる。
以上により、例えば、ジャイロ回転速度算出部86は、図1に示すように、車両100が左旋回Rすることで、車両100のロール方向おける挙動が変化している場合は、回転体21がピッチ方向のうち矢印A方向に回転体回転速度ωで回転し、ジャイロ2がヨー方向のうち矢印B方向にジャイロ回転速度Ωで回転することで、算出された要求ジャイロモーメントMdが車両100がロールする方向と反対方向にジャイロモーメントMとして発生し、車両100に作用する。従って、車両挙動制御装置1が挙動制御を行うことで、例えば過度なロールを抑制することができる。
また、制御装置8は、挙動制御を実行しないと判断すると(ステップST4否定)、クラッチ装置31のON/OFF制御を行いクラッチOFF状態とする(ステップST8)。つまり、ジンバルモータ34とジャイロ2との連結が解放され、ジンバルモータ34が発生したジャイロ回転力をジャイロ2に伝達しない状態とする。従って、伝達率が0となり、回転体21が回転し、ジャイロ2が回転しても、ジャイロモーメントMの発生を停止することができる。これにより、実施の形態にかかる車両挙動制御装置1では、クラッチ装置31およびダンパ装置32により、ジャイロ2に伝達するジャイロ回転力の伝達率を変更するので、発生するジャイロモーメントMを制御することができる。従って、実施の形態にかかる車両挙動制御装置1は、ジャイロモーメントMによる挙動制御の制御性を向上することができる。
以上のように、車速Vが増加すると、すなわち車両100の高速領域では、回転体21の回転体回転速度ωを増加して、遠心力Fを増加しておく、すなわち車速Vに応じて予め回転体21の遠心力Fを変化させておく。従って、車両100の高速領域では、要求されるジャイロモーメントMdを発生するために、要求されるジャイロモーメントMdの大きさに応じて回転体21の回転体回転速度ωを増加することなく、要求されるジャイロモーメントMdであるジャイロモーメントMを発生することができる。これにより、実施の形態にかかる車両挙動制御装置1は車両100の高速領域では、ジャイロモーメントMによる車両100のロール方向における挙動の制御である挙動制御の制御応答性を向上することができる。
また、以上のように、車速Vが増加すると、すなわち車両100の高速領域では、予め回転体21の遠心力Fを低速領域よりも大きくしておくので、ジャイロ2のジャイロ回転速度Ωが小さくても十分なジャイロモーメントMを発生することができる。つまり、車両100の高速領域において要求されるジャイロモーメントMdに対してジャイロ2を回転させるためのジャイロ回転速度Ωを小さくすることができる。従って、車両100の高速領域において要求されるジャイロモーメントMdを発生するためのジンバルモータ34の駆動量を小さくすることができので、車両100のロール方向における挙動が例えば路面に対して前輪101R,Lあるいは後輪102R、Lの少なくともいずれか一方がスリップするなどして急変しても、挙動が急変することで急変する要求されるジャイロモーメントMdに追従してジャイロモーメントMを発生することができる。これにより、実施の形態にかかる車両挙動制御装置1は、ジャイロモーメントMによる挙動制御の制御応答性を向上することができる。
また、回転体21の回転体回転速度ωは、車速Vの増加に伴い増加するので、車両100の低速領域における回転体回転速度ωは、高速領域における回転体回転速度ωよりも小さくなる。従って、車両100の低速領域に発生する回転体21の回転に伴う音を抑制することができる。これにより、実施の形態にかかる車両挙動制御装置1は、回転体21の回転に伴う音による騒音を抑制することができる。
なお、上記実施の形態にかかる車両挙動制御装置1による車両挙動制御方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、車両挙動制御装置1による挙動制御として、図1に示すように、車両100が左旋回Rすることで、車両100のロール方向うち、旋回方向と反対方向(時計回り)に車両100がロールし、車両100のロール方向おける挙動が変化するとする。この場合、車両100がロールする方向と同一方向(反時計回り)に、ジャイロモーメントMを発生しても良い。この場合は、車両100が左旋回Rする際のロール方向に積極的にジャイロモーメントMを発生させるので、右前輪101Rおよび右後輪102Rの接地圧を増加することができ、旋回性を向上することができる。また、車両挙動制御装置1は、例えば回転軸22を車長方向と平行に配置し、回転体21を基本的にロール方向に回転させ、回転軸33を車高方向と平行に配置し、ジャイロ2に基本的にヨー方向のジャイロ回転速度を与えることで、車両100のピッチ方向における挙動制御を行うことができる。また、車両挙動制御装置1は、例えば回転軸22を車幅方向と平行に配置し、回転体21を基本的にピッチ方向に回転させ、回転軸33を車長方向と平行に配置し、ジャイロ2に基本的にロール方向のジャイロ回転速度を与えることで、車両100のヨー方向における挙動制御を行うことができる。
また、上記実施の形態にかかる車両挙動制御装置1では、クラッチ装置31がON/OFF制御、すなわちジンバルモータ34が発生するジャイロ回転力をジャイロ2に伝達するか否か(伝達率が1か0か)の制御のみであるがこれに限定されるものではなく、伝達率を任意に制御できるようにしても良い。なお、クラッチ装置31は、直流モータであっても良く、この場合は電力を通電させないことで、伝達率を小さくすることができる。
また、上記実施の形態にかかる車両挙動制御装置1では、制動力付与手段としてジャイロ2であるジャイロモータジェネレータを用いたがこれに限定されるものではなく、電磁ブレーキや油圧ブレーキなどのブレーキ装置であっても良い。
また、上記実施の形態にかかる車両挙動制御装置1では、ジンバル3がクラッチ装置31およびダンパ装置32を備えるがこれに限定されるものではなく、いずれも備えていなくても良い。
また、上記実施の形態にかかる車両挙動制御装置1では、操舵量検出手段として操舵角センサ5を備えるがこれに限定されるものではなく、車両100の操舵角ではなく操舵速度を検出する操舵速度センサであっても良い。
また、上記実施の形態にかかる車両挙動制御装置1においては、車両100が回生ブレーキ装置を備えていても良い。回生ブレーキ装置により回生ブレーキが行われると、回生ブレーキ装置が発電し、回生電力を蓄電する図示しないバッテリ、例えば駆動源である電動機を駆動するバッテリに蓄電される。ここで、バッテリが完全に充電されると回生ブレーキ装置は、回生電力を消費することができないため、回生ブレーキを行うことができない。そこで、回生ブレーキ装置をジャイロドライバ9を介してジャイロ2と接続し、回生ブレーキ装置が発電した回生電力の少なくとも一部を駆動源として用いても良い。この場合は、回生電力を蓄電するバッテリが完全に充電された状態でも、回生ブレーキ装置が発電した回生電力をジャイロ2により消費することができるので、回生ブレーキ装置により回生ブレーキを行うことができる。従って、回生ブレーキ時に、バッテリが完全に充電された状態であっても、車両の制動性能を向上することができる。