JP5179803B2 - 二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、高速時の操縦安定性能を高めた二輪車用空気入りタイヤに関し、更に詳細には、特に自動2輪車に最適で、車両を大きく倒す深いコーナリング時のトラクション性能も向上させた二輪車用空気入りタイヤに関する。
高性能の二輪車用空気入りタイヤでは、タイヤの回転速度が高速となるので遠心力の影響が大きく、タイヤのトレッド部分がタイヤ径方向外側に膨張してしまって操縦安定性能を害する場合がある。これを防止するために、タイヤのトレッド部分に、有機繊維やスチールの補強部材(スパイラル部材)を、タイヤ赤道面(タイヤセンター)と概略平行になるように、ぐるぐると巻きつけるタイヤ構造が開発されている。タイヤ赤道面に沿ってスパイラル状に巻きつける補強部材としては、ナイロン繊維(「ナイロン」はデュポン社の登録商標)や芳香族ポリアミド(ケブラー)、スチールなどを用いている。中でも、芳香族ポリアミド(ケブラー)やスチールは、高温時においても伸張せずにトレッド部分の膨張を抑制することができるため、注目されつつある。
これらの部材をタイヤのクラウン部分にまきつけた場合に、いわゆる「たが」効果(風呂桶のたがのようにタイヤのクラウン部を押さえつけて、高速でタイヤが回転した場合でもタイヤが遠心力で膨らむことなく、高い操縦安定性能や耐久性を示す効果)を高めることが出来るので、スパイラルコードをタイヤのクラウン部に配置することが多数提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
これらのスパイラル部材を巻きつけた二輪車用空気入りタイヤにおいては、高速時の操縦安定性能が優れ、トラクション性能が非常に高いことが知られている。
しかし、二輪車用空気入りタイヤを装着した車両(例えばバイク)を大きく倒したときの操縦安定性能(特に旋回性能)については、補強部材(スパイラル部材)を巻きつけたからといって飛躍的に向上するわけではない。ライダーなどからは、バイクを大きく倒した時のグリップ性の向上を要望されることもある。
特開2004−067059号公報 特開2004−067058号公報 特開2003−011614号公報 特開2002−316512号公報 特開平09−226319号公報
本発明は、上記事実を考慮して、特に旋回時における操縦安定性能を更に高めた二輪車用空気入りタイヤを提供することを課題とする。
本発明者は、本発明を完成するにあたり、以下の検討を行った。
二輪車用空気入りタイヤでは、2輪車が車体を傾けて旋回することから、直進時と旋回時とでは、トレッド部が地面と接する場所が異なる。つまり、直進時にはトレッド部の中央部分を使い、旋回時にはトレッド部の端部を使う特徴がある。そのためにタイヤの形状が乗用車用のタイヤに比べて非常に丸い。この丸いクラウン形状(タイヤのトレッド部分の形状)によって、特に旋回中は次のような独特な特性が見られる。
二輪車用空気入りタイヤでは、特に車体を大きく倒した場合の旋回性能については、タイヤのトレッドの片側の端部が接地してグリップ力を発生させている。車体を大きく倒して旋回する場合、図4に示すような接地状態となる。このときの接地形状について考察すると、図4のように、接地形状のセンター寄りと、接地形状のトレッド端部寄りとでトレッド部の変形状態が異なる。トレッド部108のタイヤの回転方向(タイヤ周方向、またはタイヤ前後方向とも呼ばれる)の変形を見てみると、センター寄りのトレッド部分108Cではドライビング状態であり、トレッド端部寄りのトレッド部分108Eではブレーキング状態である。
ここで、ドライビングとは、タイヤを赤道方向にそって輪切りにした場合に、そのトレッド部分の変形が、トレッド下面(タイヤ内部の骨格部材に接している面)がタイヤ進行方向後方にせん断される力を受け、路面に接地しているトレッド表面がタイヤ進行方向前方に変形しているせん断状態のことであり、ちょうどタイヤに駆動力をかけたときに起こる変形である。一方、ブレーキングはドライビングの逆であり、ブレーキングでは、トレッドの変形はタイヤ内部側(ベルト)が前方にせん断される力を受け、路面に接地しているトレッド表面が後方に変形しているせん断状態となっており、制動したときのタイヤの動きとなる。図4のように、キャンバ角45度のように大きな角度で傾いて旋回するときには、タイヤに駆動力や制動力が加わっていない状態での回転でも、トレッドセンター寄りの接地領域にドライビング状態が現れ、トレッド端部寄りにブレーキング状態が現れる。これは、タイヤのベルト部の半径の差(径差)による。二輪車用空気入りタイヤでは、タイヤのクラウン部が大きな丸みを帯びているため、回転軸からベルトまでの距離がトレッドセンター部とトレッド端部とで大きく異なる。図4の場合では、接地部分のセンター寄りの位置での半径R1は、接地部分のトレッド端部寄りの位置での半径R2よりも明らかに大きい。タイヤが回転する角速度は同じであるので、ベルト部の速度(タイヤが路面に接触している場合では、路面に沿ったタイヤ周方向の速度をいう。ベルト半径にタイヤ角速度をかけたもの)は、半径の大きいR1の部分の方が速い。タイヤのトレッド表面は、路面に接触した瞬間では前後方向にせん断される力を受けていないが、路面に接触したままタイヤ回転にあわせて進み、路面から離れるときには前後方向のせん断変形を受けている。このとき、ベルトの速度が速いタイヤセンター寄りのトレッド部分108Cではドライビング状態のせん断変形が生じており、タイヤのトレッド端部側(トレッド端部寄りのトレッド部分108E)ではベルトの速度が遅いのでブレーキング変形が生じている。これが、トレッド部108の前後方向の変形形態である。
このような旋回中の余計な変形によって、タイヤショルダー部では偏摩耗を起こしやすい。また、トレッドが前方や後方の逆の剪断変形を起こすことから、無駄な挙動を含み、旋回時のタイヤグリップ力に無駄が生じる。理想的には接地しているトレッド部分の変形が全て同じ挙動であればグリップ力が最大になるが、先のような余計な変形が発生して接地している場所によってはグリップ力が発生しない場合がある。例えば、タイヤが傾いたままタイヤに駆動力を加えて加速するときでは、すでにドライビング状態にあるセンター寄りのトレッド部分108Cでは駆動力がタイヤに加わるとすぐに駆動グリップ力が発揮されるが、すでにブレーキング状態にあるトレッド端寄りのトレッド部分108Eでは、一度ブレーキング変形がニュートラルに戻り、それから駆動側の変形へとシフトするため、なかなか駆動力に寄与できない。トレッド端寄りのトレッド部分108Eをドライビング状態にするためには、大きなトラクション力が必要であり、このようなトラクション力を加えるためにアクセルを開いてタイヤに駆動力を加えると、もともとドライビング状態にあるタイヤセンター側のトレッドが滑って空転状態に陥りやすい。
このような問題に対して、もともとブレーキング側にあるタイヤショルダー部のトレッド変形を、少しでもドライビング側にしておけば、トレッド端部でもトラクション力を大きく発揮できると考えられる。このためには、トレッド端部でのベルトの速度を速めることが解決方法の1つであるが、このベルトの速度は先に述べたようにベルト半径によって決まっており、ベルト半径を大きくし過ぎると二輪車用空気入りタイヤとして用いることができなくなる。
そこで、トレッド端部については、接地してからタイヤ周方向にベルトが伸びやすい構造にすることで、ベルト速度を速めることが考えられる。すなわち、大キャンバ角度が付く旋回時(以下、大キャンバ時という)において、接地部分のうちセンター側半部はベルトがタイヤ周方向(赤道方向)に伸びない構造で、トレッド端側の半部はベルトがタイヤ周方向に伸び得る構造とすれば、接地してからトレッド端側のベルトが伸びることでトレッド端側のベルト速度が増し、トレッド端側のブレーキング変形を少なくすることができる。その結果、大キャンバ時のトラクション性能(バイクを大きく傾けた旋回からの加速性能)が向上する。
従来の技術では、スパイラルベルト層をトレッドの全領域に巻きつけることが普通である。このようなタイヤであるとトレッドのショルダー部のベルトを赤道方向に伸ばすことはできない。そこで、スパイラルベルトをトレッド端部付近に巻かずに、センター側だけの配置とすれば、大キャンバ時にトレッド端部のべルト速度が増して、トラクション性能を向上させることができる。また、大キャンバ時にトレッドショルダー部のベルトの速度が増すということは、トレッドセンター側のベルトの速度に近づくことであり、これによって、接地しているトレッド部分の余計な動きが抑制される。つまり、これまで逆方向の剪断力を受けるトレッドが、同じ方向の剪断力を受けることになり、無駄な動きが排除されて、偏摩耗の発生を抑制することができる。またトレッドセンター部にはスパイラルベルト層が配置されているため、高速走行時(速度が速いので、二輪車用空気入りタイヤを装着している車両(バイクなど)が直立している時)でのタイヤの遠心力による膨張を抑制することができ、結果として高速時の操縦安定性能が、全幅のスパイラルベルト層を持つタイヤ並みに維持される。
本発明者は、以上のような検討を行うとともに実験を重ねて更に検討を加え、本発明を完成するに至った。
請求項1に記載の発明は、一枚以上のカーカスプライで形成されたカーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルト層とトレッド部とを順次備え、前記ベルト層は、単線または並列した複数本のコードを被覆ゴム中に埋設してなる帯状のゴム被覆コード層をタイヤ周方向に対して0〜5度の範囲内のコード角度をなすようにスパイラル状に巻回してなるスパイラルベルト層を少なくとも1枚有する二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層を構成するカーカスプライのコード角度はタイヤ周方向に対して30〜90度の範囲内とされ、タイヤセンターからトレッド端までのトレッド表面距離をLとした場合に、タイヤセンターから0.65L〜0.85Lの位置までの範囲内にのみ前記スパイラルベルト層が存在し、前記カーカス層と前記スパイラルベルト層との間にベルト部材が存在せず、タイヤ径方向において、最外側の前記スパイラルベルト層よりも外側かつ前記トレッド部よりも内側に、タイヤ周方向に対するコード角度が85〜90度の範囲内とされた有機繊維コードを含むベルト補強層を、トレッド全幅2Lの90%以上の幅で配置したこと、を特徴とする。
タイヤ周方向に対して0〜5度の範囲内としたのは、製造上の誤差を考慮したからである。
また、請求項1に記載の発明では、スパイラルベルト層の幅を規定しており、トレッド半分のトレッド表面の幅をLとしている。つまり、タイヤセンターからタイヤの表面に沿ってトレッド端までの距離をLとしている。このとき、スパイラルベルト層の幅をタイヤセンターから0.65L〜0.85Lの位置までの範囲と規定している。つまり、何れのトレッド端側であってもトレッド端から幅0.35L〜0.15Lの範囲にはスパイラルベルト層は存在しない。
スパイラルベルト層の幅を0.65L〜0.85Lとした根拠は、バイクが最も大きく倒れるときであるキャンバ角50度付近での接地部分を考慮したことに基づく。キャンバ角50度の旋回時には、トレッド全幅2Lのうちの0.4〜0.5Lの幅部分のみが接地している。請求項1に記載の発明では、上記のように、トレッドセンター部にスパイラルベルト層を形成して大キャンバ時には骨格部材が接地範囲において周方向に伸びることを防止し、逆にトレッド端部側ではスパイラルベルト層を形成せずに骨格部材をタイヤ周方向に積極的に伸ばすことができる構成とする。接地部の半分は0.2〜0.25Lだけトレッド端から離れた位置であり、この付近にスパイラルベルト層の端部を配置するのが好ましい。ただし、厳密に接地の半分にするのではなく、接地部分のトレッドショルダー側にスパイラルベルトが巻かれていなければ、効果は認められる。それゆえ、0.65L〜0.85Lの位置までの範囲としている。
スパイラルベルト層の幅が0.65L未満だと、大キャンバ時における接地面のタイヤセンター側でもスパイラルベルト層が伸びてしまい、センター側のベルト速度も増してしまって効果が得られにくくなる。スパイラルベルト層の幅が0.85Lを超えると大キャンバ時における接地面のショルダー側(トレッド端側)でベルトが伸びにくくなってしまい、ショルダー側のベルト速度を速めることができず、効果が得られにくい。
スパイラルベルト層の幅は、好ましくは、0.7L〜0.8Lの範囲内であり、更に好ましくは0.75L〜0.8Lの範囲内である。
なお、スパイラルベルト層を構成するコードの材質については、スチールでも有機繊維でもかまわない。これは、スパイラルベルト層は交錯していないため、必要以上にベルトの面外曲げ剛性を高める心配がないからである。ショルダー部のベルトのように交錯させる場合は、スチールコードの使用は避けるべきである。交錯ベルト層の材質としては、芳香族ポリアミドのように、引っ張り剛性が高く熱にも強い繊維が好ましい。
また、請求項1に記載の発明では、カーカス層とスパイラルベルト層との間に交錯ベルト層が存在しない。これにより、タイヤ構成を簡素にすることができるとともに、製造工程にかかる時間を短縮することができる。
また、カーカスプライ(ボディプライ)は1層以上としている。1層の場合ではタイヤ周方向に対して90度をなす方向、つまりラジアル方向に配置することが殆どである。2層の場合では、ラジアル方向に2枚重ねても良いし、タイヤ周方向に対して70度のように角度をつけて互いに交錯させて配置しても良い。また、カーカスプライのビード部での係止方法は、ビードコアに巻きまわして折り返す形で係止しても良いし、ビード先端でカーカスプライを切断し、そのコード端部の両側にビードワイヤーを配置してビードワイヤーでカーカスプライを挟み込む形で係止しても良い。
カーカス層のコードをタイヤ周方向(タイヤ赤道方向)に対して交錯させる場合は、30度以上の角度で交錯させることが好ましい。タイヤ周方向に対するカーカス層のコード角度が30度未満になると、これはスパイラルベル卜層のコード角度に近づく方向であり、タイヤ周方向にベルトが伸び難くなってくる。こうなると、ショルダー部の骨格部材を接地領域で赤道方向に伸ばし難くなる。このため、ショルダー部の速度が増さずに、ショルダー部のトレッドがブレーキング変形のままであり、トラクショングリップを得にくい他、偏摩耗を発生しやすい。
カーカス層のコードは有機繊維コードであることが好ましい。スチールコードのようにコードの圧縮方向にも剛性を持つコードをカーカスに用いると、骨格部材が面外に曲がり難くなり、接地面積が小さくなってグリップ力が低下し易い。有機繊維コードであれば、コード方向の圧縮については大きな剛性を持たずに、骨格部材の面外剛性を低下させて接地面積を大きくすることができ、かつ、コードの引っ張り方向には非常に強い剛性をもつため、効果的に面内剛性を高めることができる。カーカス層のコード材質としては、ナイロンや芳香族ポリアミド(商品名は例えばケブラー)が好ましい。
なお、スパイラルベルト層のコードについては、スチールコードでも有機繊維コードでもかまわない。スパイラルベルト層のコードがタイヤ周方向に対してなす角度は0〜5°の範囲内とされているので、スパイラルベルト層にスチールコードを配置しても、必要以上にベルトの面外曲げ剛性を高めるおそれがないからである。
また、請求項1に記載の発明では、スパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向(赤道方向)に対して85〜90度以内の角度をなす有機繊維部材を配置することを規定している。これは、トレッド部で、スパイラルベルト層が存在する部分とスパイラルベルト層が存在しない部分とがあるため、その両者の境界でタイヤの骨格部材の剛性が急激に変わり、この部分を接地端が乗り越すとき(すなわち、タイヤをどんどん傾けて旋回するときに接地部分が移動してこの境界を乗り越えるとき)に、ライダーがタイヤの段差を感じて、違和感を感じることを防止するためである。トレッドゴムに比べて内部のベルト等のコードでは剛性が非常に大きい。そのため、内部の骨格部材に不連続な部分があるとその段差をライダーが感じる。そこで、請求項3のように、最外層のベルトがタイヤセンターからタイヤショルダーまで連続することでライダーがこの段差を感じにくくなっている。ライダーにこの段差を最も効果的に感じさせなくするには、タイヤ幅方向に沿って(すなわちタイヤ周方向に対して90度をなす方向に)コードを配置することが好ましい。請求項1に記載の発明でタイヤ周方向(赤道方向)に対して85〜90度以内としたのは、製造上の誤差を考慮したからである。
また、ベルト補強層の幅についてはトレッド全幅2Lの90%以上としている。ベルト補強層を設けた目的は、上記の段差を感じさせなくすること、つまりスパイラルベルト層の端部をベルト補強層で覆って最外層のベルトが分断されないようにすることである。そのため、ベルト補強層の幅を広くしてトレッド部の全領域を覆う配置がより好ましいが、90%以上であれば、充分にスパイラルベルト層の段差を覆うことができるからである。なお、上限については請求項3には規定していないが、トレッド全幅を超えてサイドウォール部に達してもかまわない。つまり、110%となってもかまわない。好ましくは、サイドウォール部の最大幅に達しない程度である110%が上限であり、更に好ましくは105%である。
ここで、トレッド全幅とは、トレッド部のペリフェリ方向幅のことである。トレッド部のペリフェリ方向幅とは、トレッド部の外周に沿った略円弧方向の幅のことであり、走行時にあらゆるキャンバ角(CA)で接地する領域の幅のことである。
また、二輪車用空気入りタイヤでは断面形状がとても丸い。このため、幅方向でコードの圧縮側に剛性を有するスチールコードを用いたベルト補強層を配置してしまうと、タイヤが撓みにくくなり、接地面積が減少し易い。従って、請求項1に記載のようにベルト補強層が有機繊維コードを含むと、このようなことが回避可能となる。
なお、ベルト補強層によってスパイラルベルト層の端部の段差が解消される。従って、コード径が細すぎてはあまり効果がない。また、コード径が太すぎると、有機繊維コードであっても圧縮側に剛性を持ってしまう。従って、ベルト補強層のコード径は0.4mmφ以上1.2mmφ以下であることが好ましい。
請求項2に記載の発明は、前記カーカス層には2枚以上のカーカスプライが設けられ、
少なくとも2枚のカーカスプライがタイヤ周方向に対して交錯していることを特徴とする。
スパイラルベルト層が形成されていない部分では、トレッド端部の骨格部材はタイヤ周方向(タイヤ赤道方向)に伸びる。カーカス層のコード角度(カーカス層を構成するコードがタイヤ周方向に対してなす角度)が90度の場合、即ちカーカスプライがラジアルプライである場合が最もタイヤ周方向に伸びやすい。ラジアルプライの場合ではプライ(カーカス)枚数を1枚とするタイヤ構成にし易い。
一方、スパイラルベルトが巻かれていないトレッドショルダー部において、カーカス層は、交錯することで骨格部材としての面内剪断剛性を高めることができ、SAが付いたときの横力を大きくできる特性がある。交錯させるときはカーカスプライを2枚以上とする。
カーカスプライに角度を付けて交錯させた場合でも、スパイラルベルトを形成しなければ周方向に伸びることができる。カーカスプライを赤道方向に対して90度とする場合が最も周方向に伸びやすくなるが、これに比べると、交錯させて配置した場合は周方向の伸び量は小さくなるものの、スパイラルベルトを配置している部分よりは明確に伸びるため、ショルダー側の骨格部材の周方向速度が上がって、ショルダー側のブレーキング変形、センター側のドライビング変形を緩和できる。そのため、トレッドの滑りが減少し、グリップ性能、耐摩耗性能が良くなる。更に、カーカスプライを交錯させることで、骨格部材の面内せん断剛性を高めることができるため、横力を大きくできる特性があり、旋回時の横方向のグリップ性能を向上させることができる。
カーカスプライを交錯させて配置させる場合は、交錯角度は赤道方向に対して、30度以上85度以下が良い。85度よりも大きいと、すなわちこれは90度に近いラジアル構造となり、骨格部材の面内せん断剛性を高める必要が少なくなる。30度未満であると、赤道方向に対して交錯したカーカスプライが伸びにくくなり、ショルダー側のブレーキング変形、センター側のドライビング変形を緩和する効果が少なくなる。好ましくは45度以上85度未満が良い。
請求項3に記載の発明は、前記ベルト補強層(有機繊維部材)の半径方向内側(スパイラルベルト層側)のコーティングゴムの厚みを0.3mm以上1.0mm以下とすることを特徴としている。
スパイラルベルト層に直接的にベルト補強層の有機繊維コードが接触するよりも、両者の間にゴム層を介して接触した方が、ゴム層がクッションの役割を担って、スパイラルベルト層が存在する部分と存在しない部分との段差をさらに感じさせなくすることができる。通常のコーティングゴムの厚みは0.2mm以下であるが、前記85度〜90度以内の角度をなす有機繊維部材のスパイラルベルト層側のコーティングゴムの厚みを0.3mm〜1.0mmのように厚くすると更に好ましい。また、コーティングゴムではなく、別の種類のゴムを厚さ0.3mm〜1.0mmでスパイラルベルト層と85〜90度以内の角度をなす有機繊維部材の間に配置しても構わない。
本発明によれば、特に旋回時における操縦安定性能を更に高めた二輪車用空気入りタイヤを実現させることができる。
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。なお、第2実施形態以下では、既に説明した構成要素と同様のものには同じ符号を付して、その説明を省略する。また、以下の説明では、ベルト等の幅はペリフェリ方向幅のことである。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤ10は、左右一対のビード部12と、ビード部12からトロイド状に延びるカーカス層14と、を備えている。
カーカス層14は、ビード部12のビードコア11にトロイド状に跨っている。カーカス層14を構成するカーカスプライ(ボディプライ)は一層であっても複数層であってもよい。カーカス層14が2枚のカーカスプライ15A、15Bで構成される場合には、カーカスプライ15A、15Bを構成するコードの方向がラジアル方向(タイヤ周方向に対する角度が90度である方向)であっても良いが、タイヤ周方向に対するコード角度が30度〜85度の範囲のプライを互いに交錯させて使用するバイアス構造としても良い。
カーカスプライ15A、15Bの端部はビードコア11で係止され、両側からビードワイヤー13が挟みこんでいる。なお、カーカスプライ15A、15Bの端部がビードコア11を折り返すように巻き上げられていても良い。
また、二輪車用空気入りタイヤ10は、カーカス層14のクラウン部14Cのタイヤ径方向外側に、ベルト層として配置されたスパイラルベルト層20と、溝を配置したトレッド部18とを順次備えている。なお、トレッド部18には溝を配置しなくてもよい。
このスパイラルベルト層20は、単線または並列した複数本のコードを被覆ゴム中に埋設してなる帯状のゴム被覆コード層21をタイヤ周方向に対して0〜5度の範囲内のコード角度をなすようにスパイラル状に巻回してなるものである。タイヤセンターCLからトレッド端Tまでのトレッド表面距離(すなわち、トレッド部18のペリフェリ方向幅の1/2)をLとした場合に、タイヤセンターCLから0.65L〜0.85Lの位置までの範囲内にのみこのスパイラルベルト層20が存在する。
各カーカスプライ15A、15Bでは、ナイロン繊維を撚ってナイロンコードとしたものが所定間隔で配列されている。
このように、本実施形態では、スパイラルベルト層20がタイヤセンターCLから0.65L〜0.85Lの位置までの範囲内にのみ存在するようにスパイラルベルト層20の幅を規定している。
ここで、大キャンバ時となる旋回時には、トレッド端部付近のトレッド部分が接地部となっている。従って、スパイラルベルト層20が形成されていないトレッド部分では骨格部材をタイヤ周方向に積極的に伸ばすことができる構成となっているとともに、スパイラルベルト層20が形成されているトレッド部分では骨格部材が接地範囲においてタイヤ周方向に伸びることを防止している。
これにより、高速走行時の操縦安定性能を高く維持し、車体を大きく倒した旋回時の操縦安定性能(トラクション性能)を向上させた二輪車用空気入りタイヤ10とすることができる。また、ショルダー部の摩耗を抑制することができる。
また、二輪車用空気入りタイヤ10では、カーカス層14のタイヤ径方向外側にスパイラルベルト層20が隣接しており、カーカス層14とスパイラルベルト層20との間に交錯ベルト層などのベルト部材が存在しない。
これにより、二輪車用空気入りタイヤ10のタイヤ構成を簡素にすることができ、製造工程にかかる時間を短縮することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図2に示すように、本実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤ26は、第1実施形態に比べ、スパイラルベルト層20の半径方向外側に、すなわちスパイラルベルト層20とトレッド部18との間に、タイヤ周方向に対する角度が90度とされた補強ベルト22を、トレッド全幅2Lの90%以上の幅で1枚追加した構造である。
この構造により、タイヤをどんどん傾けて旋回する際、接地部分が移動してこの境界を乗り越えるときスパイラルベルト層20が存在する部分とスパイラルベルト層20が存在しない部分(トレッドショルダー部TS)との境界Bを接地端が乗り越しても、ライダーがタイヤの段差による違和感を感じることが防止される。
なお、補強ベルト22の幅がトレッド全幅2Lの90%以上としているので、充分にスパイラルベルト層20の段差を覆うことができる。
<試験例>
本発明の効果を確かめるために、本発明者は、本発明に係る二輪車用空気入りタイヤの6例(以下、実施例1〜7という)、比較のための二輪車用空気入りタイヤの三例(以下、比較例1〜3という)、及び、従来例の二輪車用空気入りタイヤの一例(以下、従来例という)について、性能試験を行って性能を評価した。
タイヤサイズは全て190/50ZR17である。また、各タイヤでは、カーカス層には2枚のカーカスプライが配置されている。また、各タイヤでは、トレッド部に溝を配置していない。
(従来例)
従来例は、図5に示す構造にされたタイヤであり、カーカス層82と、そのタイヤ径方向外側にスパイラルベルト層80とトレッド部88とを順次備えている。
スパイラルベルト層80の幅はトレッド全幅(2L)と同じで240mmである。カーカス層82を構成するカーカスプライのコード角度は、タイヤ周方向に対して45度で交錯する角度である。
(実施例1)
実施例1は、第1実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤ10の一例であり、図1に示す構造にされた二輪車用空気入りタイヤである。スパイラルベルト層20の幅はトレッド全幅2L(240mm)の0.75倍とされていて180mm(タイヤセンター(タイヤ赤道面)CLからの片側の幅は90mm)である。なお、本実施例ではトレッドショルダー部TSではスパイラルベルト層20が巻かれていない。また、トレッド部18の厚みは7mmである。
カーカスプライ15A、15Bのコード材質はナイロンである。本実施例では、ナイロン繊維を撚って0.6mmφのコードとした。トレッドショルダー部TSでは、ナイロンコードを60本/50mmで打ち込んでいる。
また、このナイロンコードのコード角度は、トレッドショルダー部TSにおいてタイヤ赤道方向に対し45度である。通常、二輪車のタイヤではトレッド部の形状が丸いため、トレッドセンター部とトレッドショルダー部で、コード角度および単位長さあたりの打ち込み本数が異なる。これは地球儀に紙を貼り付ける場合と同様であり、外径の大きいトレッドセンター部の方がコードの打ち込みが疎となる。タイヤの製造上、トレッドセンター部の方がトレッドショルダー部に比べてタイヤ赤道方向に対するコード角度が小さくなる傾向にある。本実施例ではトレッドショルダー部TSでのコード角度で規定しており、カーカスプライ15A、15Bのコード角度を、トレッド端Tからタイヤセンター側に0.1Lの距離の位置で測定した。
スパイラルベルト層20のコードは、芳香族ポリアミド(商品名はケブラー)を撚って0.7mmφのコードとし、打ち込み間隔60本/50mmでスパイラル状に巻き付けて形成している。その際、2本の並列したコードを被覆ゴム中に埋設した帯状体を、略タイヤ赤道方向(略タイヤ周方向)に沿って螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻きつけた。なお、2本ではなく1本のまま巻きつけても良い。なお、スパイラルベルト層20のコードとしてスチールコードを用いてもよい。例えば直径0.18mmのスチール単線を1×3タイプで撚ったスチールコードを打ら込み間隔60本/50mmでスパイラル状に巻きつけて形成してもよい。
(実施例2)
実施例2は第2実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤの一例である。実施例2は、実施例1に比べ、スパイラルベルト層20のタイヤ径方向外側に最外層ベルトとして補強ベルト22を1枚追加した構造である。補強ベルト22の幅は240mmで、タイヤセンターCLからの片側の幅は120mmである。
補強ベルト22のタイヤ周方向に対するコード角度は90°であり、コード材質は芳香族ポリアミド(商品名はケブラー)である。ケブラー繊維を0.7mmφに撚ってコードとし、コードの打ち込み本数を30本/50mmとした。
また、コードを覆うコーティングゴムの厚みは両側ともに0.1mmであった。ここで、コーティングゴムの厚みとは、コードの表面からシート状部材のゴムの表面までの厚みを意味する。すなわち、0.7mmφのコードの両側に0.1mmのコーティングゴムが存在するため、シートの厚みは0.9mmとなる。
なお、スパイラルベルト層20の幅は180mmで実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例3は、実施例2に比べ、幅が異なるスパイラルベルト層を備えている。このスパイラルベルト層の幅は160mmで、タイヤセンターCLからの片側の幅は80mmであり、L(タイヤセンターCLからトレッド端Tまでのトレッド表面距離)の0.667倍である。
(実施例4)
実施例4は、実施例2に比べ、幅が異なるスパイラルベルト層を備えている。このスパイラルベルト層の幅は200mmで、タイヤセンターCLからの片側の幅は100mmであり、Lの0.833倍である。
(比較例1)
比較例1は、実施例2に比べ、幅が異なるスパイラルベルト層を備えている。このスパイラルベルト層の幅は140mmで、タイヤセンターからの片側の幅は70mmであり、Lの0.583倍である。
(比較例2)
比較例2は、実施例2に比べ、幅が異なるスパイラルベルト層を備えている。このスパイラルベルト層の幅は210mmで、タイヤセンターからの片側の幅は105mmであり、Lの0.875倍である。
(実施例5)
実施例5は、実施例2に比べ、コード角度(タイヤ周方向に対してなすコードの角度)が異なるカーカス層を備えている。このカーカス層を構成する2枚のカーカスプライのコード角度は80度である。
(実施例6)
実施例6は、実施例2に比べ、コード角度が異なるカーカス層を備えている。このカーカス層を構成する2枚のカーカスプライのコード角度は90度である。すなわち、実施例6はラジアル構造のタイヤである。
なお、実施例6のようにラジアル構造のタイヤとした場合、カーカスプライを1枚にしてもよい。
(比較例3)
比較例3は、実施例2に比べ、コード角度が異なるカーカス層を備えている。このカーカス層を構成する2枚のカーカスプライのコード角度は25度である。
(実施例7)
実施例7は、実施例2に比べて、補強ベルトのコーティングゴムの厚みを、スパイラルベルトに接する側について0.7mmにしたものである。補強ベルトのコーティングゴムは半径方向外側で0.1mm、半径方向内側で0.7mmである。半径方向内側のコーティングゴムは補強ベルトの全幅にわたって厚くなっている。
(試験方法、及び、評価結果)
本試験例では、まず狙いの車体を傾けたときのトラクション性能がどれだけ向上しているかを評価するためにドラムを用いて以下のようにして規定の試験を行った。
本試験例では、全てのタイヤについて、標準リムに組み込み後、タイヤ内圧240kPaとした。ここで、標準リムとは、JATMAが発行する2006年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズにおける標準リムを指す。
試験機としては、直径3mのドラムに紙やすりを貼り付け、紙やすりを路面に見立てる。そして、ドラムを100km/hで転動させ、ドラム上側から、タイヤをキャンバ角50度で荷重150kgfで紙やすりに押し付ける。本試験例では、タイヤには回転軸に動力を伝えるチェーンを掛けており、駆動力を掛けることが可能になっている。本試験例ではモーターを用いて駆動力を加えた。
本試験例では、タイヤを100km/hで回転させておき、駆動力を加えてタイヤを120km/hまで、3秒の時間で線形に加速させる。そのとき、ドラムは100km/hで転動しているため、タイヤに駆動力が掛かった状態となり、車体が傾いた状態におけるトラクションを測定できる。タイヤに働く力を、タイヤのホイール中心に設置した力センサーで読み取る。
読み取ったこの力を、横軸にFx(タイヤ進行方向に平行な方向に作用する力)、縦軸にFy(タイヤ進行方向に垂直な方向に作用する力)として描くと、図3に示すような波形P、Qが得られる。この波形P、Qは摩擦楕円と呼ばれるが、Fx=0においてのFyの切片は駆動力0での純粋な横力を示し、これがキャンバースラストと呼ばれる力である。本試験例では、タイヤに駆動力を加えてタイヤの回転を速くする事でトラクション状態のタイヤのグリップ性能を評価している。時間と共に、グラフの波形はFxが正の方向に移動する。Fxの最大値がトラクショングリップの指標といえる。
本試験例では、従来例のFxの最大値を指数100として、他のタイヤの性能(トラクション性能)を相対評価となる指数で評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0005179803
次に、実車を用いた操縦性能比較試験を行った。上記各タイヤ(実施例1〜7、比較例1〜3、及び、従来例)はリア用のタイヤであったため、フロントのタイヤを常に従来どおりとし、リアのみのタイヤを交換して実車試験を行った。試験方法、評価方法を次に記す。
上記の供試タイヤ(実施例1〜7、比較例1〜3、及び、従来例)を、1000ccのスポーツタイプの二輪車に装着して、テストコースで実車走行させ、操縦安定性(コーナリング性能)を、テストライダーのフィーリングによる10点法で総合評価した。コースでは自動二輪車レースを意識した激しい走行を行い、最高速度は220km/hに達した。
評価項目は以下の4つである。評価結果を表1に併せて示す。
1)低速コーナーでのトラクション性能(速度70km/hで大きく車体を倒した状態からの加速性能)
2)低速コーナーでの旋回性能(速度70km/hで大きく車体を倒した状態での横力グリップ性)
3)旋回時のバイクを倒しこむときの連続性(倒しこみ時に異常な挙動をしないことの性能)
また、テストコースを10周走った時のタイヤショルダー部の偏摩耗状態を確認した。すなわち、タイヤショルダー部の摩耗量を測定し、従来例のタイヤの摩耗量を指数10としたときの他のタイヤの摩耗量を相対評価となる指数で求めた。この指数を表1に併せて示す。摩耗量については指数が小さいほど摩耗が少なくて良好であることを示す。
以上の評価結果から本発明者は以下の考察を行った。
実施例1ではベルト層の最外層に、タイヤ周方向に対するコード角度が90度の補強ベルト34(図2参照)がないため、スパイラルベルト層20の端部の段差をライダーが感じて評点が低めとなった。他の実施例(実施例2〜6)では、ベルト層の最外層に、コード角度90度の補強ベルトが配置されているため、段差はあるものの気にならないレベルになった。実施例2〜4、比較例1、2により、スパイラルベルト層の幅の好ましい範囲が判る。
実施例2、5、6と比較例3から、カーカスプライの交錯角度の影響がわかる。実施例6はラジアル構造であり、すなわちカーカスプライが交錯していない。そのため、カーカスプライの面内剪断剛性が足りず、特に大きく車体を倒す低速コーナーで横方向のグリップ力が不足気味である。しかし、コード角度90度であるこのカーカスプライはタイヤ周方向に伸びやすいので、トラクション指数は最も高く、効果がある。横力とトラクションとのバランスを考えた場合、カーカスプライのコード角度は、45度〜80度が好ましい。
一方、比較例3はカーカスプライのコード角度が25度と小さく、カーカスプライがタイヤ周方向に伸び難いため、トラクション指数が低い。そのため摩耗量も実施例1〜7に比べて多く、耐摩耗性は実施例1〜7よりも悪い。
実施例2と実施例7とから、補強ベルトのコーティングゴムの厚みの効果がわかる。実施例7のようにスパイラルベルト層に接する側のコーティングゴムを厚くすることで、倒し込んだ時のスパイラルベルトが存在する部分と存在しない部分との境界での段差は全く感じられなくなった。
摩耗量については、実施例1〜7では従来例の摩耗量のほぼ半分であり、トレッドショルダー部の摩耗量を抑制できていることがわかる。なお比較例1や2でも効果はあるが、実施例1〜5に比べると効果は少ない。比較例3では摩耗量低減の効果は殆ど無かった。実施例で摩耗量が少ないのは、先に述べたようにトレッド端部で骨格部材が伸びやすく、トレッド端部でのベルトの速度が速まって、タイヤセンター側の速度とトレッド端側の速度との差が縮まり、トラクションをかけたときにトレッドセンター側から先に滑ってしまうことが抑制されているからであると考えられる。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
第1実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤのタイヤ径方向断面図である。 第2実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤのタイヤ径方向断面図である。 試験例で測定した力を説明する説明図である。 二輪車用空気入りタイヤの接地状態を示す説明図である。 従来例の二輪車用空気入りタイヤのタイヤ径方向断面図である。
符号の説明
10 二輪車用空気入りタイヤ
14 カーカス層
14C クラウン部
15A カーカスプライ
15B カーカスプライ
18 トレッド部
20 スパイラルベルト層(ベルト層、スパイラルベルト層)
21 ゴム被覆コード層
22 補強ベルト
26 二輪車用空気入りタイヤ
CL タイヤセンター
T トレッド端
TS トレッドショルダー部

Claims (3)

  1. 一枚以上のカーカスプライで形成されたカーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルト層とトレッド部とを順次備え、
    前記ベルト層は、単線または並列した複数本のコードを被覆ゴム中に埋設してなる帯状のゴム被覆コード層をタイヤ周方向に対して0〜5度の範囲内のコード角度をなすようにスパイラル状に巻回してなるスパイラルベルト層を少なくとも1枚有する二輪車用空気入りタイヤにおいて、
    前記カーカス層を構成するカーカスプライのコード角度はタイヤ周方向に対して30〜90度の範囲内とされ、
    タイヤセンターからトレッド端までのトレッド表面距離をLとした場合に、タイヤセンターから0.65L〜0.85Lの位置までの範囲内にのみ前記スパイラルベルト層が存在し、
    前記カーカス層と前記スパイラルベルト層との間にベルト部材が存在せず、
    タイヤ径方向において、最外側の前記スパイラルベルト層よりも外側かつ前記トレッド部よりも内側に、タイヤ周方向に対するコード角度が85〜90度の範囲内とされた有機繊維コードを含むベルト補強層を、トレッド全幅2Lの90%以上の幅で配置したこと、を特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 前記カーカス層には2枚以上のカーカスプライが設けられ、
    少なくとも2枚のカーカスプライがタイヤ周方向に対して交錯していることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  3. 前記ベルト補強層の半径方向内側のコーティングゴム層の厚みを0.3mm以上1.0mm以下とすることを特徴とする請求項2に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
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