以下、実施の形態に係るスイッチング電源について説明する。なお、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、第1実施形態に係るスイッチング電源100の斜視図であり、図2はチョークコイルのコア材Uの断面構成を示す図である。
スイッチング電源100は、複数のインバータ回路INV1,INV2により駆動される1次側コイルをそれぞれ有する複数のトランスと、複数のトランスの2次側コイルに接続された複数の整流回路RCと、複数の整流回路RCの後段に接続された平滑回路SCとを備えている。すなわち、スイッチング電源100は、複数のインバータ回路INV1,INV2の出力端子X1,X2間、Y1,Y2間にそれぞれ接続された複数の1次側コイル1,2を備えている。インバータ回路INV1,INV2のそれぞれの入力端子間には、直流電源Vが介在しており、直流電源Vに対して並列にキャパシタC2が接続されている。
インバータ回路INV1,INV2をスイッチングすることによって、出力端子X1,X2間に交流電流を流し、出力端子Y1,Y2間に交流電流を流す。これらの出力電流は同相であって、ある期間には出力端子X1(Y1)からX2(Y2)に電流が流れ、次の期間には出力端子X2(Y2)からX1(Y1)に電流が流れる。同図では、巻き始めの端子である出力端子X2(Y2)から巻き終わりの端子である出力端子X1(Y1)に向けて電流P1(P11)が流れている様子を示している。電流P1とは逆方向の電流をP2(P12)とする。
1次側コイル1は、磁芯1Cを介して2次側コイル10A,10Bに磁気的に結合し、第1トランスを構成している。1次側コイル2は、磁芯2Cを介して2次側コイル20A,2Bに磁気的に結合し、第2トランスを構成している。このように、スイッチング電源100は、複数の1次側コイル1,2にそれぞれ磁気的に結合した複数の2次側コイル10A,10B、20A,20Bを備えている。
第1トランスの後段には第1チョークコイルA及び第3チョークコイルDが配置されており、第2トランスの後段には第2チョークコイルC及び第4チョークコイルBが配置されている。各チョークコイルの巻き方は、図面の上から見ると以下の通りである。
・第1チョークコイル(A):接続点Xからチョークコイルに流れ込む電流が左回り。
・第2チョークコイル(C):接続点Yからチョークコイルに流れ込む電流が左回り。
・第3チョークコイル(D):接続点Xに向けてチョークコイルから流れ出す電流が左回り。
・第4チョークコイル(B):接続点Yに向けてチョークコイルから流れ出す電流が左回り。
2次側コイル10A及び10Bは接続点Xに接続されている。2次側コイル10A,10Bの接続点Xに、ダイオードD1,D2のカソードからの電流S1,S2がインバータ回路INV1の駆動に同期して交互に流れ込むように、2次側コイル10A,10B及びダイオードD1,D2が接続されており、ダイオードD1,D2は、ある期間においては、一方のダイオードのみに電流が流れるセンタータップ型全波整流回路を構成している。
また、2次側コイル20A及び20Bは接続点Yに接続されている。2次側コイル20A,20Bの接続点Yに、ダイオードD11,D12のカソードからの電流S11,S12がインバータ回路INV2の駆動に同期して交互に流れ込むように、2次側コイル20A,20B及びダイオードD11,D12が接続されており、ダイオードD11,D12は、ある期間においては、一方のダイオードのみに電流が流れるセンタータップ型全波整流回路を構成している。このように、複数の整流回路RCが、第1及び第2トランスの2次側コイルに接続されている。
接続点Xは、第1チョークコイルAに接続されており、2次側コイル10A,10Bからなるコイルの両端は、それぞれダイオードD1,D2を介して第3チョークコイルDに接続されており、第3チョークコイルDはキャパシタC1の一方の端子Qに接続されている。
第1チョークコイルAと第2チョークコイルCは、キャパシタC1の一方の端子Pに接続され、第3チョークコイルDと第4チョークコイルBは、キャパシタC1の他方の端子Qに接続されている。キャパシタC1の両端間には負荷Zが接続されている。
接続点Yは、第2チョークコイルCに接続されており、2次側コイル20A,20Bからなるコイルの両端は、それぞれダイオードD11,D12を介して第4チョークコイルBに接続されており、第4チョークコイルBもキャパシタC1の一方の端子Qに接続されている。
第1チョークコイルA及び第3チョーコイルDは、第1磁芯UC1,DC1の周囲に巻かれて配置されており、これらを同時に流れる電流によって同一方向の磁束(図2:第1環状磁路B1)が発生する。なお、同時とは、実質的に一緒にという意味であって、厳密な同時性を意味するものではなく、別々の期間ではないということを意味する。
第2チョークコイルC及び第4チョーコイルBは、第2磁芯UC2,DC2の周囲に巻かれて配置されており、これらを同時に流れる電流によって同一方向の磁束(図2:第2環状磁路B2)が発生する。すなわち、ある期間において、電流S1,S11が同時に流れている場合には、チョークコイルA〜Dに同時に電流が流れ、次の期間において、電流S2,S12が同時に流れている場合にも、チョークコイルA〜Dに同時に電流が流れる。
コア材Uは、E−Eコア又はE−Iコアなどのように2つの環状磁路を有するものであり、第1磁芯UC1,DC1及び第2磁芯UC2,DC2を有している。本例では、E−Eコアを示しており、コア材Uは、上部E型コアUCと、下部E型コアDCを有している。上部E型コアUCは、ベースコアUCBを備えており、ベースコアUCBから3本の脚部である中央磁芯(共通磁芯)UCC、第1磁芯UC1、及び第2磁芯UC2が延びている。下部E型コアDCは、ベースコアDCBを備えており、ベースコアDCBから3本の脚部である中央磁芯(共通磁芯)DCC、第1磁芯DC1、及び第2磁芯DC2が延びている。
なお、上下の中央磁芯UCC、DCC間に、ギャップを設けることとしてもよい。また、第1磁芯UC1、DC1間と、第2磁芯UC2、DC2間に、ギャップを設けることとしてもよい。また、中央磁芯UCC、DCC間と、第1磁芯UC1、DC1間と、第2磁芯UC2、DC2間に、ギャップを設けることとしてもよい。
図2に示すように、コア材Uは、中央磁芯UCC,DCCから一方側の第1磁芯UC1,DC1を介して中央磁芯UCC,DCCに戻る第1環状磁路B1と、中央磁芯UCC,DCCから他方側の第2磁芯UC2,DC2を介して中央磁芯UCC,DCCに戻る第2環状磁路B2とを有している。中央磁芯UCC,DCCにおける第1環状磁路B1の磁束の向きは、第2環状磁路B2の磁束の向きと同一である。
1次側コイル1,2にインバータ回路INV1,INV2を介して交流電流を流すと、2次側コイル10A,10B,20A,20Bに誘起電圧が発生する。2次側コイル10A,10B,20A,20Bはセンタータップ型の接続をしており、2次側コイル10A,10B(20A,20B)の接続点X(Y)が、別々の磁芯に巻かれたチョークコイルA(C)に接続され、ダイオードのアノード側が、別々の磁芯に巻かれたチョークコイルD(B)に接続されている。2次側コイルを流れる電流S1、S11(S2,S12)は、チョークコイルA〜DのインダクタンスとキャパシタC1の容量によって平滑化される。接続点X(Y)には、ダイオードD1,D2(D11,D12)からの電流が流れ込むように2次側コイル10A,10B(20A,20B)は接続されている。
本例では、2次側コイル10A,10B(20A,20B)と1次側コイル1(2)との相対関係が同一極性である。したがって、それぞれのトランスにおいて、ある期間においては、一方のダイオードが電流を阻止し、2次側コイル10A,10B(20A,20B)の一方のみに電流が流れ、この電流は平滑回路SCによって平滑化される。
ここで、中央磁芯UCC,DCCを介して2つの環状磁路B1,B2を有するE−Eコア、E−Iコアや、U−Iコアなどのコア材を使用し、第1磁芯と第2磁芯にチョークコイルを巻いた場合、共通磁芯のみに巻いた場合に比べ、第1磁芯と共通磁芯の間隔及び第2磁芯と共通磁芯の間隔に制限されることなく、第1磁芯と第2磁芯の外側に水平方向の面積が増大させることができ、チョークコイルの放熱面積を増大させることができ、放熱特性が改善する。したがって、チョークコイルの安定した動作が可能となる。
また、この構造の場合、各チョークコイルの発生する磁束は、それぞれの環状磁路B1,B2ごとに同一であって、また、中央磁芯UCC,DCCおいては第1環状磁路B1と第2環状磁路B2の磁束の向きは同一であるため、磁束外脚となる第1磁芯UC1,DC1及び第2磁芯UC2,DC2を循環する磁束は見かけ上発生しない。
すなわち、第1チョークコイルA及び第3チョークコイルDと、第2チョークコイルC及び第4チョークコイルBとは、磁気的には結合していないため、放熱面積を増大させる上述の構造を採用した場合においても、第1及び第3チョークコイル対A,Dと、第2及び第4チョークコイル対C,Bが、互いに影響を与えることなく、互いの損失に反比例するように、均衡状態を保持するため、出力が安定化する。したがって、スイッチング電源の出力、すなわち、整流平滑化されたキャパシタC1の両端P,Q間の出力が安定化する。換言すれば、平滑時には、複数のトランスから出力された電流が、別々の磁芯に対応する複数のチョークコイルを同時期に介してキャパシタに同時に流れるため、チョークコイルの特性差を補償することができ、出力が更に安定する。
なお、1次側コイル1は、その半分のコイル1Aと残りの半分のコイル1Bとが直列に接続されたものと考えることができる。また、1次側コイル2も、その半分のコイル2Aと残りの半分のコイル2Bとが直列に接続されたものと考えることができる。すなわち、1次側コイル1,2は、インバータ回路INV1,INV2の駆動時の交流抵抗が交互に高くなるものを直列に接続してなる。
2次側コイル10A,10B(20A、20B)には、ある期間においては、一方にのみ電流S1又はS2(S11又はS12)が流れる。互いに逆方向の電流が1次側コイル及び2次側コイルに流れる場合、表皮効果及び近接効果の影響が低減され、交流抵抗が低くなる。逆向きの電流P1(P11)と電流S1(S11)の組み合わせの場合にはコイル1A(2A)の交流抵抗が低くなり、コイル1B(2B)の交流抵抗が相対的に高くなる。逆向きの電流P2(P12)と電流S2(S12)の組み合わせの場合にはコイル1B(2B)の交流抵抗が低くなり、コイル1A(2A)の交流抵抗が相対的に高くなる。
すなわち、直列接続された1次側コイルの他方の交流抵抗は、低減された方の交流抵抗よりも相対的に高くなる。この場合、高い交流抵抗の1次側コイルが発振成分を吸収するため、出力のリンギングを抑制することができる。
図3は、インバータ回路INV1の回路図(a)、インバータ回路INV2の回路図(b)、スイッチQ1〜Q4の1つを代表して示すスイッチQXの回路図(c)である。
インバータ回路INV1においては、高電位ラインHL1と低電位ラインLL1との間に、スイッチQ1,Q2が直列に接続されており、これらの接続点に出力端子X1が接続されている。また、高電位ラインHL1と低電位ラインLL1との間に、スイッチQ3,Q4が直列に接続されており、これらの接続点に、共振用インダクタLRを介して出力端子X2が接続されている。共振用インダクタLRと出力端子X2との接続点は、ダイオードDAとダイオードDBの接続点に接続されていてもよい。なお、ダイオードDAとダイオードDBは高電位ラインHL1と低電位ラインLL1との間において逆バイアスが印加された状態で直列に接続されており、それぞれのダイオードDA,DBのアノードとカソードとの間には、必要に応じて或いは寄生素子としてのキャパシタCA,CBが並列に接続されている。
スイッチQ2,Q3がOFFの状態で、スイッチQ1,Q4がONの状態のとき、出力端子X1から電流が出力され、出力端子X2に電流が帰還する。一方、スイッチQ1,Q4がOFFの状態で、スイッチQ2,Q3がONの状態のとき、出力端子X2から電流が出力され、出力端子X1に電流が帰還する。これらのスイッチ対は、交互にスイッチングされるため、出力端子X1,X2間には交流電流が流れることになる。
インバータ回路INV2の構造は、インバータ回路INV1の構造と同一であり、上述の説明において、出力端子X1,X2を、出力端子Y1,Y2に読み替えたものである。
スイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、図3(c)のスイッチQXとして代表して示すように、それぞれ電界効果トランジスタから構成することができるが、そのドレインとソース間には、ダイオードとキャパシタからなる寄生素子が並列に挿入されているが、これらのダイオード及びキャパシタはトランジスタとは別の素子としてもよい。
電流の流れ方について補足説明を行う。
図4は、図1に示したスイッチング電源100の回路図である。
ある期間において、電流P1が第1インバータ回路INV1から1次側コイル1に供給され、電流P11が第2インバータ回路INV2から1次側コイル2に供給されると、2次側コイルにおいて、これとは逆向きの電流S1、S11が流れる。電流S1、S11は、ダイオードD1,D11の順方向電流の向きと一致しており、チョークコイルD,BからダイオードD1,D11に流れ込んだ電流は、それぞれ接続点X、Yを介して、チョークコイルA,Cにそれぞれ流れ込む。これらの電流は端子Pを介してキャパシタC1に流れる。
次の期間において、電流P2が第1インバータ回路INV1から1次側コイル1に供給され、電流P12が第2インバータ回路INV2から1次側コイル2に供給されると、2次側コイルにおいて、これとは逆向きの電流S2、S12が流れる。電流S2、S12は、ダイオードD2,D12の順方向電流の向きと一致しており、チョークコイルD,BからダイオードD2,D12に流れ込んだ電流は、それぞれ接続点X、Yを介して、チョークコイルA,Cにそれぞれ流れ込む。これらの電流は端子Pを介してキャパシタC1に流れる。
なお、チョークコイルは、自身への電流供給が停止すると、自身が電流源として暫く機能し、電流を流し続けようとする。すなわち、スイッチングの切り替わり期間においても、2次側コイルを流れる電流は急激に途切れることなく継続している。
キャパシタC1の両端間に電流が流れると、チョークコイルとキャパシタC1の協働による平滑化作用によって、負荷Zに直流出力電圧が現れる。
上述のスイッチング電源100では、複数の整流回路RCに含まれる第1整流回路は、第1トランスの2次側コイル10A,10Bに接続されたセンタータップ型全波整流回路であり、第2整流回路は、第2トランスの2次側コイル20A,20Bに接続されたセンタータップ型全波整流回路であり、第1チョークコイルAは、この第1整流回路の電流流出側に接続され、第3チョークコイルDは、この第1整流回路の電流流入側に接続され、第2チョークコイルCは、この第2整流回路の電流流出側に接続され、第4チョークコイルBは、この第2整流回路の電流流入側に接続されている。この接続関係の場合、整流回路と磁芯とは一対一に対応しており、接続が容易であるという利点がある。
図5は、1次側のコイル1,2を明確に2つのコイル1A,1B及び2A,2Bによって構成した場合のスイッチング電源100の回路図である。1次側コイルを平面コイルとして、積層することにより、全体の寸法を縮小することも可能である。すなわち、1つのトランスにおいて、2次側コイル10A(20A)、1次側コイル1A(2A)、1次側コイル1B(2B)、2次側コイル10B(20B)の順番に積層することができる。なお、この積層の順番は、1次側コイル1A(2A)、2次側コイル10A(20A)、2次側コイル10B(20B)、1次側コイル1B(2B)とすることもできる。
1次側コイル1Aは、2次側コイル10Aに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル1Bは、2次側コイル10Bに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル1Aと1次側コイル1Bとは、直列接続されているため、一方の交流抵抗が他方に対して相対的に大きくなった場合には、第1トランスにおけるリンギングを抑制することができる。
1次側コイル2Aは、2次側コイル20Aに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル2Bは、2次側コイル20Bに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル2Aと1次側コイル2Bとは、直列接続されているため、一方の交流抵抗が他方に対して相対的に大きくなった場合には、第2トランスけるリンギングを抑制することができる。
1次側コイル1に電流P1が流れる入力電圧が入力されると、1次側コイル1を構成する1次側コイル1A、1Bに電流P1が流れる。ここで、1次側コイル1Aは電流S1の流れている2次側コイル10Aにより近く配置されているので、2次側コイル10Aと相対的に密に磁気結合する。このとき、1次側コイル1Aと2次側コイル10Aとはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイル1Aでは、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイル1Bは電流S1の流れている2次側コイル10Aにより遠く配置されているので、2次側コイル10Aと相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイル10Bにより近く配置されているので、1次側コイル1Bでは、1次側コイル1Aと比べて、近接効果により交流抵抗が高くなる。本実施の形態では、1次側コイル1A及び1次側コイル1Bは互いに直列に接続されているので、1次側コイル1A及び1次側コイル1Bには互いに等しい電流が流れる。
また、1次側コイル1に逆向きの電流P2が流れる入力電圧が入力されると、1次側コイル1を構成する1次側コイル1A、1Bに電流P2が流れる。ここで、1次側コイル1Bは電流S2の流れている2次側コイル10Bにより近く配置されているので、2次側コイル10Bと相対的に密に磁気結合する。このとき、1次側コイル1Bと2次側コイル10Bとはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイル1Bでは、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイル1Aは電流S2の流れている2次側コイル10Bにより遠く配置されているので、2次側コイル10Bと相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイル10Aにより近く配置されているので、1次側コイル1Aでは、1次側コイル1Bと比べて、近接効果により交流抵抗が高くなる。本実施の形態では、1次側コイル1A及び1次側コイル1Bは互いに直列に接続されているので、1次側コイル1A及び1次側コイル1Bには互いに等しい電流が流れる。
1次側コイル2に電流P11が流れる入力電圧が入力されると、1次側コイル2を構成する1次側コイル2A、2Bに電流P11が流れる。ここで、1次側コイル2Aは電流S11の流れている2次側コイル20Aにより近く配置されているので、2次側コイル20Aと相対的に密に磁気結合する。このとき、1次側コイル2Aと2次側コイル20Aとはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイル2Aでは、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイル2Bは電流S11の流れている2次側コイル20Aにより遠く配置されているので、2次側コイル20Aと相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイル20Bにより近く配置されているので、1次側コイル2Bでは、1次側コイル2Aと比べて、近接効果により交流抵抗が高くなる。本実施の形態では、1次側コイル2A及び1次側コイル2Bは互いに直列に接続されているので、1次側コイル2A及び1次側コイル2Bには互いに等しい電流が流れる。
また、1次側コイル2に逆向きの電流P12が流れる入力電圧が入力されると、1次側コイル2を構成する1次側コイル2A、2Bに電流P12が流れる。ここで、1次側コイル2Bは電流S12の流れている2次側コイル20Bにより近く配置されているので、2次側コイル20Bと相対的に密に磁気結合する。このとき、1次側コイル2Bと2次側コイル20Bとはトランスの原理上、電流の流れる向きが互いに逆向きになるので、1次側コイル2Bでは、近接効果により交流抵抗が低くなる。
一方、1次側コイル2Aは電流S12の流れている2次側コイル20Bにより遠く配置されているので、2次側コイル20Bと相対的に疎に磁気結合する。このとき、電流が流れていない2次側コイル20Aにより近く配置されているので、1次側コイル2Aでは、1次側コイル2Bと比べて、近接効果により交流抵抗が高くなる。本実施の形態では、1次側コイル2A及び1次側コイル2Bは互いに直列に接続されているので、1次側コイル2A及び1次側コイル2Bには互いに等しい電流が流れる。
このように、本実施の形態では、1次側コイル1A,1B(2A,2B)が互いに直列に接続されているので、交流抵抗の大きなコイルにも電流が流れることとなる。そのため、トランスの線間容量と、トランスの励磁インダクタンスと、トランスの漏洩インダクタンスとによるLC共振によって生じる、トランスの入出力の電圧電流に発生するリンギングを、交流抵抗によって減衰させることができる。その結果、減衰しないままリンギングが発生し続ける場合に比べ、トランスにおけるコアロスやトランスの交流抵抗による発熱量が低下し、効率が向上する。
なお、2次側の動作は上述の実施形態の動作と同一である。
次に、インバータ回路の位相シフト駆動について説明する。
なお、図3に示したダイオードDA,DB及びキャパシタCA,CBは、サージ電圧抑止回路を構成しており、このサージ電圧抑止回路は高電位ラインHL1と低電位ラインLL1との間に介在している。このサージ電圧抑止回路は、最終的には整流回路RC内のダイオードD1,D2,D11,D12に加わるサージ電圧を抑止する。
図1に示したインバータ回路INV1、INV2は、それぞれ図3に示したスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を有しており、幾つかの期間T1〜T10からなるスイッチングのタイミングが、順次実行され、インバータ回路が駆動される。また、双方のインバータ回路INV1,INV2は同相で駆動されるため、それぞれのインバータ回路INV1,INV2におけるスイッチQ1〜Q4のスイッチングのタイミングは同一である。期間T1〜T5までが半周期の動作を示し、期間T6〜T10までが残りの半周期の動作を示し、期間T1〜T10までがスイッチング制御の1周期に相当する。
また、スイッチQ1〜Q4は、2つのスイッチ対に区分される。具体的には、スイッチQ3,Q4はいずれも時間軸上における固定タイミングでONするように制御され、「固定側スイッチ」と称される。また、スイッチQ1,Q2はいずれも時間軸上における可変タイミングでONするように制御され、「シフト側スイッチ」と称される。
スイッチQ1〜Q4は、直流入力電圧Vが印加される高電位ラインHL1と低電位ラインLL1が、スイッチQ1〜Q4を介して、電気的に直接短絡されないタイミングで駆動される。具体的には、スイッチQ1,Q2は、同時にONとなることはなく、また、スイッチQ3,Q4も、同時にONとなることはない。なお、これらのスイッチ対Q1,Q2又はQ3,Q4が同時にONとなるのを回避するためにとられる時間的間隔はデッドタイムと称され、以下の期間T2、T4、T7、T9において設定される。
また、スイッチQ2,Q3は同時にONとなる期間(T1,T10)を有し、この同時にONとなる期間において、各トランスの1次側コイル1,2(図1参照)が励磁される。スイッチQ2(シフト側スイッチ)は、スイッチQ3(固定側スイッチ)のスイッチングタイミングを基準として、スイッチング位相差φをなすようにスイッチングされる。このスイッチング位相差φが制御されると、スイッチQ2及びスイッチQ3が同時にONになっている時間が変化する。これにより、トランスの1次側コイル1,2に印加される入力交流電圧のデューティ比が変化し、負荷Zに印加される直流出力電圧が安定化する。
同様に、スイッチQ1,Q4は同時にONとなる期間(T5,T6)を有し、この同時にONとなる期間において、各トランスの1次側コイル1,2が、上記の場合とは逆方向に励磁される。スイッチQ1(シフト側スイッチ)は、スイッチQ4(固定側スイッチ)のスイッチングタイミングを基準として、スイッチング位相差φをなすようにスイッチングされる。このスイッチング位相差φが制御されると、スイッチQ1及びスイッチQ4が同時にONになっている時間が変化する。これにより、トランスの1次側コイル1,2に印加される入力交流電圧のデューティ比が変化し、負荷Zに印加される直流出力電圧が安定化する。
以下、詳説する。
(期間T1:スイッチQ3とQ2がON)
まず、スイッチQ3とスイッチQ2がON状態であり、残りのスイッチQ1とスイッチQ4がOFF状態であるとする。また、スイッチQ3とQ4との間の節点X3(Y3)の電位が入力電圧(=Vとする)であり、端子X1(Y1)の電位が0Vである。共振用インダクタLRのインダクタンスは、トランスの1次側コイル1(2)のインダクタンスと比べて非常に小さいので、インダクタLRの後段の端子X2(Y2)の電位はほぼ入力電圧(=V)となる。また、端子X1(Y1)と端子X2(Y2)との電位も、ほぼ入力電圧(=V)である。
このとき、インバータ回路INV1(INV2)内では、高電位ラインHL1から、スイッチQ3、節点X3(Y3)、共振用インダクタLR、端子X2(Y2)、1次側コイル1(2)、端子X1(Y1)、スイッチQ2、低電位ラインLL1を順次通る電流P1(P11)が流れ、各共振用インダクタLRが励磁されると共に、トランスの1次側から2次側へ電力伝送が行われる。これにより、トランスの2次側には、チョークコイルD、ダイオードD1及びチョークコイルAを介するループ電流S1と、チョークコイルB、ダイオードD11及びチョークコイルCを介するループ電流S11が流れ、負荷Zが駆動される。なお、この期間では、2次側のダイオードD1,D11には順方向電圧が印加され、ダイオードD11,D12には、逆方向電圧が印加されている。
(期間T2:スイッチQ3のみがON)
次に、スイッチQ2がOFF状態となり、スイッチQ3のみがON状態となる。すると、スイッチQ1、Q2の寄生キャパシタ(図3(c)参照)と、共振用インダクタLRとが協働して、LC直列共振回路が構成され、共振動作が行われる。なお、本実施形態では、トランジスタに付随する寄生素子でキャパシタ及びダイオードが構成されているが、これらはトランジスタとは別体の素子とすることもできる。
この共振動作では、2つの電流ループが形成される。
1つ目の電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、1次側コイル1(2)、端子X1(Y1)、スイッチQ2の寄生キャパシタ、低電位ラインLL1、入力電源間のキャパシタC2(図1参照)、スイッチQ3、節点X3(Y3)を順次介して、端子X2(Y2)に帰還する電流ループである。
もう1つの電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、1次側コイル1(2)、端子X1(Y1)、スイッチQ1の寄生キャパシタ、高電位ラインHL1、スイッチQ3、節点X3(Y3)を順次介して、端子X2(Y2)に帰還する電流ループである。
この場合、スイッチQ1の寄生キャパシタが放電される一方で、スイッチQ2の寄生キャパシタは充電されるので、端子X1(Y1)の電位が徐々に上昇していき、端子X1(Y1)の電位が入力電圧(=V)となる。また、このとき、2次側のダイオードD2,D12の逆方向電圧は徐々に下降していき最終的に0Vになる。
(期間T3:スイッチQ3とQ1がON)
次に、端子X1(Y1)の電位が入力電圧(=V)になると、スイッチQ1の両端間電圧がゼロボルトになり、スイッチQ1に寄生するダイオード(図3(c)参照)が、容易に導通するようになる。この後のタイミングにおいて、スイッチQ1がON状態となることで、ゼロボルトスイッチング(ZVS;Zero Volt Switching)動作がなされ、その結果、スイッチQ1における短絡損失が抑制される。
また、端子X1(Y1)の電位が入力電圧(=V)になってから期間T3の終期までは、期間T1内において、共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーが、共振用インダクタLRの両端に接続された回路において、電流として循環しようとする。具体的には、2つの電流ループが存在する。
1つ目の電流ループは、共振用インダクタLRの一端である端子X2(Y2)から、1次側コイル1(2)、端子X1及びスイッチQ1を介して高電位ラインHL1に至り、スイッチQ3及び共振用インダクタLRを介して、端子X2に帰還するものである。
もう1つの電流ループは、共振用インダクタLRの一端である端子X2(Y2)から、ダイオードDAを介して高電位ラインHL1に至り、スイッチQ3及び共振用インダクタLRを介して、端子X2に帰還するものである。
このように、2つの電流ループが形成されると、1次側コイル1(2)を流れていた電流の一部がダイオードDAを流れるようになるので、1次側コイル1(2)を流れる電流の絶対値が減少する。さらに、このトランスでのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランスの2次側コイルをそれぞれ流れる電流の和が、チョークコイルを流れる電流に等しくなるように、ダイオードD1(D11)を流れるループ電流と、ダイオードD2(D12)を流れるループ電流とに分流する。
なお、これらの電流ループの経路においては、端子X2と高電位ラインHL1との間の電位差は、トランスの1次側コイル1(2)の両端間の電圧と、スイッチQ1の両端間の電圧との和になる。また、トランスの1次側コイル1(2)の両端間の電圧は、トランスの1次側コイルと2次側コイルとの巻数比をnとすると、2次側コイルの電圧を巻き数比nで割ったものである。
(期間T4:スイッチQ1のみがON)
次に、スイッチQ3がOFF状態となる。すると、スイッチQ3,Q4の寄生キャパシタと共振用インダクタLRとが協働してLC直列共振回路が構成され、共振動作が行われる。したがって、4つの電流ループが形成される。
第1の電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、1次側コイル1(2)、端子X1(Y1)、スイッチQ1を通り、高電位ラインHL1、入力電源側のキャパシタC2(図1参照)、低電位ラインLL1、スイッチQ4の寄生ダイオード(図3(c)参照)、節点X3(Y3)、共振用インダクタLRを順次介して、端子X2(Y2)に帰還するものである。
第2の電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、1次側コイル1(2)、端子X1(Y1)、スイッチQ1を通り、高電位ラインHL1、スイッチQ3の寄生キャパシタ(図3(c)参照)、節点X3(Y3)、共振用インダクタLRを順次介して、端子X2(Y2)に帰還するものである。
第3の電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、ダイオードDA、高電位ラインHL1、スイッチQ3の寄生ダイオード(図3(c)参照)、節点X3(Y3)、共振用インダクタLRを順次介して、端子X2(Y2)に帰還するものである。
第4の電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、ダイオードDA、高電位ラインHL1、入力電源側のキャパシタC2(図1参照)、低電位ラインLL1、スイッチQ4の寄生キャパシタ(図3(c)参照)、節点X3(Y3)、共振用インダクタLRを順次介して、端子X2(Y2)に帰還するものである。
この場合、スイッチQ4の寄生キャパシタが放電される一方で、スイッチQ3の寄生キャパシタは充電されるので、節点X3(Y3)の電位が徐々に下降していき、最終的には0Vとなる。
(期間T5:スイッチQ4とQ1がON)
節点X3(Y3)の電位が0Vとなると、このとき端子X2(Y2)の電位は入力電圧(=V)であって、節点X3(Y3)の電位から端子X2(Y2)の電位を引くと−Vとなることから、スイッチQ4の寄生ダイオードが容易に導通するようになる。このようにスイッチQ4の両端間電圧がゼロボルトとなった後に、スイッチQ4がON状態となることで、ZVS動作がなされ、その結果、スイッチQ4における短絡損失が抑制される。
共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーは、スイッチQ3,Q4の寄生キャパシタにおける充放電が終了した後も、2つの電流ループを構成して、入力電源側のキャパシタC2を介して循環する。
この時の1つの電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、1次側コイル1(2)、端子X1(Y1)、スイッチQ1を通り、高電位ラインHL1、入力電源側のキャパシタC2(図1参照)、低電位ラインLL1、スイッチQ4、節点X3(Y3)、共振用インダクタLRを順次介して、端子X2(Y2)に帰還するものである。
もう1つの電流ループは、共振用インダクタLRの出力側の端子X2(Y2)から、ダイオードDA、高電位ラインHL1、入力電源側のキャパシタC2(図1参照)、低電位ラインLL1、スイッチQ4、節点X3(Y3)、共振用インダクタLRを順次介して、端子X2(Y2)に帰還するものである。
入力電源側のキャパシタC2を電流が流れるに従って、共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーは減少し、それに伴ってインダクタLRを流れる電流の絶対値、及びトランスの1次側コイル1(2)を流れる電流の絶対値も減少していく。このため、トランスでのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランスの2次側コイルをそれぞれ流れる電流の和が、チョークコイルを流れる電流に等しくなるように、2次側の電流は、ダイオードD1(D11)を流れるループ電流と、ダイオードD2(D12)を流れるループ電流とに分流する。
また、この期間では、上記の如く共振用インダクタLRを通る電流ループが2つ形成されているが、ダイオードDAを流れる電流が次第に減少することで、共振用インダクタLRを流れる電流の絶対値と、トランスの1次側コイル1(2)を流れる電流の絶対値とが等しくなる。
次に、共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーがすべて放出されると、共振用インダクタLRを流れる電流=トランスの1次側コイル1(2)を流れる電流=0Aとなり、整流用のダイオードD1(D11)を流れる電流=整流ダイオードD2(12)を流れる電流となる。そして、このタイミングから、共振用インダクタLRは、これまでとは逆方向のエネルギーの蓄積を開始する。
すなわち、共振用インダクタLR及びトランスの1次側コイル1(2)には、これまでとは反対方向に流れる電流による新たな電流ループが形成される。なお、この電流は、入力電圧(=V)を共振用インダクタLRのインダクタンスで除算した割合で増加していく。この電流ループは、共振用インダクタLRの一方端側の節点X3(Y3)から、スイッチQ4、低電位ラインLL1、入力電源側のキャパシタC2、高電位ラインHL1、スイッチQ1、端子X1(Y1)、1次側コイル1(2)、端子X2、共振用インダクタLRを介して、節点X3(Y3)に帰還する。
この逆方向に1次側コイル1(2)を流れる電流の増加に伴って、2次側コイルに接続された一方の整流用ダイオードD1(D11)を流れる電流S1(S11)は減少し、他方の整流用のダイオードD2(D12)を流れる電流S2(S12)が徐々に増加する。そして、電流S1(S11)が0Aとなり、トランスの2次側コイル10B,20Bを流れる電流S2(S12)が、全てチョークコイルA,Cを流れる電流に等しくなったとき、このトランスでのアンペア・ターンはこれ以上増加しないことから、1次側コイル1(2)を流れる電流の増加が妨げられようとするが、ダイオードDA,DBを含んでなるサージ電圧抑止回路のキャパシタCA,CBと、インダクタLRとが協働して、LC直列共振回路が構成され、共振動作が開始される。
この共振動作によって、キャパシタCA,CBを通る2つの電流ループが形成される。1つ目の電流ループは、節点X3(Y3)からスイッチQ4、低電位ラインLL1、入力電源側のキャパシタC2、高電位ラインHL1、キャパシタCA、共振用インダクタLRを介して、節点X3(Y3)に帰還するものである。もう1つの電流ループは、節点X3(Y3)から、スイッチQ4、低電位ラインLL1、キャパシタCB、共振用インダクタLRを介して、節点X3(Y3)に帰還するものである。
これにより、キャパシタCBが放電される一方で、キャパシタCAは充電されるので、この共振動作に伴って、端子X2(Y2)の電位が緩やかに下降していく。これに伴い、トランスの1次側コイル1(2)の両端間の電圧の絶対値が増加すると共に、2次側コイルにも電圧が発生する。更に、キャパシタCA,CBと共振用インダクタLRとによる共振動作は継続されようとするが、端子X2(Y2)の電位は0Vになることから、キャパシタCB及びダイオードDBの両端間電圧は0Vとなり、キャパシタCBを流れる電流も0Aになると共に、ダイオードDBが容易に導通する。
このように、ダイオードDBが導通すること、及びスイッチQ1がON状態であることから、トランスの1次側コイル1(2)の両端間電圧が入力電圧(=V)にクランプされ、これにより、トランスの2次側コイル10B,20Bの両端の電圧が、V/n(n;トランスの1次側コイルと2次側コイルとの巻数比)にクランプされる。このため、整流用のダイオードD1(D11)に加わる逆方向電圧は、各整流回路RCがセンタータップ型の構成であることから、2×V/nよりも大きくなることはない。言い換えると、この整流用のダイオードD1(D11)に加わる逆方向電圧は、最大でも2×V/n以下となり、サージ電圧の上昇が抑制される。
また、この期間では、上記のようにダイオードDBが導通することから、共振用インダクタLRを流れる電流=トランスの1次側コイル1(2)を流れる電流+ダイオードDBを流れる電流となり、この共振動作による共振電流は、節点X3(Y3)から、スイッチQ4、低電位ラインLL1、ダイオードDB、共振用インダクタLRを介して節点X3(Y3)に帰還するループ電流となる。
また、このとき、トランスの2次側コイル10B,20Bの両端間電圧によってチョークコイルD,A,B,Cが励磁されるのに伴い、これらのチョークコイルD,A,B,Cを流れる電流が増加し、1次側コイルを流れる電流=電流S1(S11)+電流S2(S12)=電流S2(S12)=各チョークコイルA,Cを流れる電流であることから、1次側コイルの電流も増加していく。
さらに、共振用コイルLRを流れる電流=1次側コイルを流れる電流+ダイオードDBを流れる電流であり、共振用コイルLRを流れる電流は一定であることから、1次側コイルを流れる電流の増加により、ダイオードDBを流れる電流が減少し、期間T5の終期において0Aとなる。以上で、最初の半周期分の動作が終了する。
次に、残りの半周期分(期間T6〜T10)の動作について説明する。この半周期分の動作も、基本的には期間T1〜T5で説明した半周期分の動作と同様である。
(期間T6:スイッチQ4とQ1がON)
期間T6では、スイッチQ4,Q1がON状態となっており、スイッチQ3,Q2はOFF状態となっている。また、節点X3(Y3)の電位=0Vであり、端子X1(Y1)の電位=入力電圧(=V)である。また、共振用インダクタLRのインダクタンスは、トランスの1次側コイル1(2)のインダクタンスと比べて非常に小さいことから、端子X2(Y2)の電位≒0Vとなり、節点X3(Y3)と端子X2(Y2)との電位差もほぼ0Vと等しくなっている。
したがって、インバータ回路INV1,INV2内に電流が流れると、共振用インダクタLRが励磁されると共に、トランスの1次側から2次側へ電力伝送が行われる。よって、トランスの2次側には、チョークコイルD(B)、整流用のダイオードD2(D12)及びチョークコイルA(C)を介するループ電流S2(S12)が流れ、負荷Zが駆動される。なお、この期間では、整流用のダイオードD2(D12)には順方向電圧が印加され、整流用のダイオードD1(D11)には、逆方向電圧が印加されている。
(期間T7:スイッチQ4のみがON)
次に、期間T7になると、最初にスイッチQ1がOFF状態となる。すると、スイッチQ1,Q2の寄生キャパシタ(図3(c)参照)と共振用インダクタLRとが協働して、LC直列共振回路が構成され、共振動作が行われる。この共振動作によって、スイッチQ1の寄生キャパシタが充電される一方、スイッチQ2の寄生キャパシタは放電されるので、端子X1(Y1)の電位が徐々に下降していき0Vとなる。また、このとき整流用のダイオードD1(D11)の逆方向電圧が徐々に下降していき最終的に0Vとなる。
(期間T8:スイッチQ4とQ2がON)
端子X1(Y1)の電位が0Vとなると、スイッチQ2の寄生ダイオードが容易に導通するようになる。スイッチQ2の寄生ダイオードが導通した後に、期間T8の初期において、スイッチQ2がON状態となることで、ZVS動作がなされ、その結果、スイッチQ2における短絡損失が抑制される。
また、端子X1(Y1)の電位が0VになってからスイッチQ4がOFF状態となるまでの期間では、前述のように、期間T6において共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーが、共振用インダクタLRの両端に接続された回路において電流として循環しようとし、インバータ回路内においてトランスの1次側コイル1(2)を通らない電流も流れるため、トランスの1次側コイル1(2)を流れる電流の絶対値が減少する。また、このトランスでのアンペア・ターンが等しくなると共に、整流用のダイオードD1(D11)を流れるループ電流と、整流用のダイオードD2(D12)を流れるループ電流とが分流して、チョークコイルA(C)に流れ込む。
(期間T9:スイッチQ2のみがON)
次に、期間T9になると、スイッチQ4がOFF状態となる。すると、スイッチQ3,Q4の寄生キャパシタ(図3(c)参照)と共振用インダクタLRとが協働して、LC直列共振回路が構成され、共振動作が行われる。この場合には、スイッチQ4の寄生キャパシタが充電される一方、スイッチQ3の寄生キャパシタは放電されるので、節点X3(Y3)の電位が徐々に上昇していき、節点X3(Y3)の電位が入力電圧(=V)となる。
節点X3(Y3)の電位が入力電圧(=V)となると、このとき端子X2(Y2)の電位は0Vであり、端子X2と節点X3の間の電位差は入力電圧(=V)であることから、スイッチQ3の寄生ダイオードの両端間電圧が0Vとなり、容易に導通するようになる。
(期間T10:スイッチQ3とQ2がON)
スイッチQ3の寄生ダイオードが導通した後に、期間T10の初期において、スイッチQ3がON状態となることで、ZVS動作がなされ、その結果、スイッチQ3における短絡損失が抑制される。
次に、期間T10の初期の期間内においては、共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーが、スイッチQ3,Q4の寄生キャパシタにおける充放電が終了した後も、入力電源側のキャパシタC2(図1参照)に流れる。そして、キャパシタC2へ回生されるに従って、共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーは減少し、それに伴って共振用インダクタLRを流れる電流の絶対値、及びトランスの1次側コイル1(2)を流れる電流の絶対値も減少していく。このため、トランスでのアンペア・ターンが等しくなると共に、2次側では、整流用のダイオードD1(D11)を流れるループ電流と、整流用のダイオードD2(D12)を流れるループ電流とに分流して流れ、トランスの2次側コイル10A,10B(20A,20B)をそれぞれ流れる電流の和が、それぞれのチョークコイルA(C)に流れ込む。
また、この期間では、ダイオードDBが非導通となることで、共振用インダクタLRを流れる電流の絶対値とトランスの1次側コイル1(2)を流れる電流の絶対値とが等しくなる。
次に、共振用インダクタLRに蓄えられたエネルギーがすべて回生されると、共振用インダクタLRを流れる電流=トランスの1次側コイル1(2)を流れる電流=0Aとなり、整流用のダイオードD1(D11)を流れる電流=整流用のダイオードD2(D12)を流れる電流となる。
そして、このタイミングから、共振用のインダクタLRはこれまでと逆方向のエネルギーを蓄えるようになり、共振用インダクタLR及びトランスの1次側コイル1(2)には、これまでとは、反対方向のループ電流が流れるようになる。なお、共振用インダクタLRを流れる電流はV/L(L;インダクタLRのインダクタンス)の割合で増加していく。
このため、トランスでのアンペア・ターンが等しくなると共に、トランスの2次側コイルD1(D11)、D2(D12)をそれぞれ流れる電流の和が、チョークコイルA,C内に流れ込む。整流用のダイオードD1(D11)を流れるループ電流と、整流用のダイオードD2(D12)を流れるループ電流が、チョークコイルA,Cに流れ込む。ただし、整流ダイオードD2(D12)を流れる電流は徐々に減少していく一方、整流ダイオードD1(D11)を流れる電流は徐々に増加していく。
そして、ダイオードD2(D12)を流れる電流が0Aとなり、トランスの2次側コイル10A(20A)を流れる電流がチョークコイルA,Cを流れる電流と等しくなったとき、このトランスでのアンペア・ターンはこれ以上増加しないことから、1次側コイルを流れる電流の増加が妨げられようとするが、ダイオードDA,DBを含んでなるサージ電圧抑止回路のキャパシタCA,CBと共振用インダクタLRとが協働してLC直列共振回路が構成され、共振動作が開始される。
次に、この共振動作によって、キャパシタCBが充電される一方、キャパシタCAは放電されるので、この共振動作に伴って、端子X2(Y2)の電位が緩やかに上昇していき、入力電圧(=V)となる。これに伴い、トランスの1次側コイル1(2)の両端間の電圧が増加すると共に、2次側コイル10A、10B(20A,20B)にもそれぞれ電圧が発生する。
キャパシタCA、CBと共振用インダクタLRとによる共振動作は継続されようとするが、端子X2(Y2)の電位は入力電圧(=V)であることから、キャパシタCA及びダイオードDAの両端間電圧は0Vとなり、キャパシタCAを流れる電流が0Aになると共に、ダイオードDAが容易に導通する。
よって、ダイオードDAが導通し、スイッチQ2がON状態であることから、トランスの1次側コイル1(2)の両端間電圧が入力電圧(=V)にクランプされ、これによりトランスの2次側コイル10A(20A)の両端間電圧がV/nにクランプされる。このため、整流用のダイオードD2(D12)に加わる逆方向電圧は、整流回路RCがセンタータップ型の構成であることから、2×V/nよりも大きくなることはない。言い換えると、この整流用のダイオードD2(D12)に加わる逆方向電圧は、最大でも2×V/n以下となり、サージ電圧の上昇が抑制される。
また、上記のようにダイオードDAが導通すると共振用コイルLRを流れる電流は一定となる。また、トランスの2次側コイル10A,20Aの両端間電圧によってチョークコイルD,A,B,Cが励磁されるのに伴い、これらのチョークコイルを流れる電流が増加し、1次側コイルを流れる電流も増加していく。さらに、共振用コイルLRを流れる電流=1次側コイルを流れる電流+ダイオードDAを流れる電流であり、共振用コイルLRを流れる電流が一定であることから、1次側コイルを流れる電流の増加によりダイオードDAを流れる電流が減少する。ダイオードDAを流れる電流が0Aとなると、後半の半周期分の動作が終了し、期間T1の初期状態に戻る。
図6は、第2実施形態に係るスイッチング電源100の回路図である。本実施形態では、1次側のコイル1A,1B,2A,2Bの2次側コイルとの関係を入れ替えてある。
1次側コイル1Aは、2次側コイル10Aに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル1Bは、2次側コイル20Bに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル1Aと1次側コイル1Bとは、直列接続されているため、一方の交流抵抗が他方に対して相対的に大きくなった場合には、これらを流れる電流のリンギングを抑制することができる。
1次側コイル2Aは、2次側コイル10Bに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル2Bは、2次側コイル20Aに磁気的に結合しており、同一の極性を有する。1次側コイル2Aと1次側コイル2Bとは、直列接続されているため、一方の交流抵抗が他方に対して相対的に大きくなった場合には、これらを流れる電流のリンギングを抑制することができる。
電流P1,P11が流れている場合には、電流S1,S11が流れる2次側コイル10A,20Aに対向する1次側コイル1A,2Bの交流抵抗が小さくなり、これらに直列接続された残りの1次側コイル1B,2Aの交流抵抗が相対的に高くなる。
電流P2,P12が流れている場合には、電流S2,S12が流れる2次側コイル10B,20Bに対向する1次側コイル2A,1Bの交流抵抗が小さくなり、これらに直列接続された残りの1次側コイル1A,2Bの交流抵抗が相対的に高くなる。
また、トランスの2次側の動作は上記と同一である。
図7は、第3実施形態に係るスイッチング電源100の回路図である。本実施形態では、図6に示した2次側コイル10A,10B,20A,20Bの接続点X,Yに接続されるチョークコイルA,Cを入れ替えてある。
本例では、接続点XにチョークコイルCが接続され、接続点YにチョークコイルAが接続されている。チョークコイルA,Cの他方の端子は、共にキャパシタC1の一方の端子Pに接続されている。本例の場合も、チョークコイルA,Dと、チョークコイルB,Cとは磁気的には結合していない。
接続点Xから流れる電流は、チョークコイルCを介して、端子Pに流れ、同様に、接続点Yから流れる電流は、チョークコイルAを介して、端子Pに流れる。
なお、本実施形態においては、複数の整流回路RCに含まれる第1整流回路は、磁芯1Cを含む第1トランスの2次側コイル10A,10Bに接続されたセンタータップ型全波整流回路であり、第2整流回路は、磁芯2Cを含む第2トランスの2次側コイル20A,20Bに接続されたセンタータップ型全波整流回路である。ここで、第1チョークコイルAは、この第2整流回路の電流流出側に接続されており、第3チョークコイルDは、この第1整流回路の電流流入側に接続されており、第2チョークコイルCは、この第1整流回路の電流流出側に接続されており、第4チョークコイルBは、第2整流回路の電流流入側に接続されている。
この場合、整流回路とチョークコイルの磁芯の関係は、図6のものと比較して、一部が入れ替えられている。すなわち、整流回路とチョークコイルA〜Dの特性差をより均等にさせることができるという利点がある。
その他の動作は上述のものと同一である。
なお、チョークコイルBとAの間、チョークコイルDとCの間に電位差がある場合には、オンデューティの場合にこれらに電流が流れている場合、この電位差を各チョークコイルが負担している。オフデューティの場合には、チョークコイルにかかる電位差は出力電圧となるので、チョークコイルBとチョークコイルAの直列接続と、チョークコイルDとチョークコイルCの直列接続とは等しく電圧を負担している。なお、2次側コイル側におけるチョークコイルBとチョークコイルAの電位差の和V1が、2次側コイル側におけるチョークコイルDとチョークコイルCの電位差の和V2よりも大きい場合、V1−V2の電圧源がチョークコイルC,Dの電流ループに直列に挿入されているのと等価であり、この仮想的な電圧源はオフデューティにおいては消滅する。チョークコイルへの印加電圧には、上記差分が、印加電圧が小さい方のチョークコイルの両端に現れる。
なお、チョークコイルAとチョークコイルDを流れる電流は巻き数に応じて釣り合うおうとし、これらを流れる1ターンあたりの電流が等しくなる。チョークコイルBとチョークコイルCを流れる電流も巻き数に応じて釣り合うおうとし、これらを流れる1ターンあたりの電流が等しくなる。
インバータ回路、トランス、チョークコイルのハンドリングパワーは、損失に反比例して均衡し、温度に対する変化に対しても均衡する傾向が強くなる。本例では、出力が自動的に均衡して安定化するため、均衡のための部品が不要となる。したがって、コストを削減することができる。また、従来のコンバータは、配線抵抗や半導体素子のオン抵抗や順方向電圧降下による損失とは無関係に第1のコンバータと第2のコンバータの入力電流や出力電流を検出し、それが等しくなる様にパルス幅変調を制御していたため、素子ばらつきにより損失の大きいコンバータの温度の上昇が大きくなってしまっていた。ばらつきの最悪条件で温度成立すべく許容損失に余裕を持たせる必要があったが、一方、本例の場合には、構造的に出力がバランスして安定化するため、かかる制御をする必要がないという利点がある。
図8は、第4実施形態に係るスイッチング電源100の回路図である。本実施形態では、図7に示したスイッチング電源の2次側コイル10Bと20Bの配列を入れ替えてある。
2次側コイル10Aと10Bは、接続点Xを介して接続されており、接続点XはチョークコイルCを介してキャパシタC1の一端Pに接続されている。
2次側コイル20Aと20Bは、接続点Yを介して接続されており、接続点YはチョークコイルAを介してキャパシタC1の一端Pに接続されている。
本例では、2次側コイル10Aと10Bが、互いに別のトランスの磁芯1C,2Cを介して1次側コイル1A,1Bに磁気的に結合している。また、2次側コイル20Aと20Bが、互いに別のトランスの磁芯2C,1Cを介して1次側コイル2B,2Aに磁気的に結合している。
本実施形態では、複数の前記整流回路RCは、第1及び第2トランスの2次側コイルに接続された第1及び第2整流回路を有しているが、この第1整流回路は、磁芯1Cを含む第1トランスの一方の2次側コイル10Aと、磁芯2Cを含む第2トランスの他方の2次側コイル10Bとに接続されたセンタータップ型全波整流回路であり、この第2整流回路は、磁芯1Cを含む第1トランスの他方の2次側コイル20Bと、磁芯2Cを含む第2トランスの一方の2次側コイル20Aとに接続されたセンタータップ型全波整流回路である。第1チョークコイルAは、この第2整流回路の電流流出側の接続点Yに接続されており、第3チョークコイルDは、この第1整流回路の電流流入側のダイオードD1のアノードに接続されており、第2チョークコイルCは、第1整流回路の電流流出側の接続点Xに接続され、第4チョークコイルBは、第2整流回路の電流流入側のダイオードD11のアノードに接続されている。
このような構造であっても、図7に示したスイッチング電源と同様に機能する。また、センタータップ接続された2次側コイル対が、別々のトランスに接続されているので、トランスの特性差を補償し、安定した出力を得ることができる。
図9は、第5実施形態に係るスイッチング電源100の斜視図であり、図10は図9に示したスイッチング電源100の回路図である。
本実施形態のスイッチング電源100は、第1実施形態のスイッチング電源において、単一のインバータ回路INV1によって駆動される単一の1次側コイル1を、単一の磁芯1Cを介して、複数の2次側コイル10A,10B,20A,20Bに磁気的に結合させたものであり、その他の構成は第1実施形態のものと同一である。このスイッチング電源は、単数のトランスを備え、トランスの1次側コイルは、単数又は複数のインバータ回路により駆動され、トランスの2次側コイルは、複数の整流回路に接続されている。
この構成の場合も、第1実施形態と同様に、平滑時には、トランスの2次側コイルから出力された電流が、別々の磁芯に対応する複数のチョークコイルA〜Dを同時期に介してキャパシタC1に同時に流れ、第1及び第3チョークコイル対A,Dと、第2及び第4チョークコイル対C,Bが、互いに影響を与えることなく、互いの損失に反比例するように、均衡状態を保持するため、出力が安定化すると共に、低コスト化が可能である。その他の作用は、第1実施形態と同様であり、コイルの接続関係は、第2〜第4実施形態のスイッチング電源の構成に準じて変更することができる。
なお、上述のスイッチング電源は、DC−DCコンバータであるが、入力信号が例えば、50Hz程度の低周波を全波整流して入力してもよく、またスイッチングパルス信号のデューティ比を適当に調整することにより、AC成分を出力することも可能である。
なお、各実施形態において、平滑回路のキャパシタC1の数は全体で1つとしてあるが、各チョークコイル毎に対応づけてそれぞれキャパシタを設けてもよい。
なお、上述の回路においては、直流電源V側からインバータ回路を介して、負荷Zに電力電送を行ったが、これは逆に負荷Zを第2の電源に置換し、この第2の電源Zから直流電源V側へ電力伝送を行うことも可能である。すなわち、上述のスイッチング電源は、双方向の電力伝送を行うことが可能である。このような双方向の電力伝送技術は、ハイブリッド自動車や電気自動車における要素技術として有用である。
特に、双方向の電力伝送を行うことが可能なスイッチング電源は、2系統の二次電池を備えた電子機器において、一方の系統の二次電池において、充電の必要性が生じた場合に、他方の系統の二次電池から電力を供給する電力制御などに適用することが可能である。
図11は、Zを第2の電源とした場合における逆方向電力伝送を説明するためのスイッチング電源の回路図である。
このスイッチング電源では、図5において示した整流回路RCのダイオードD1,D2,D11,D12を、それぞれトランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12で置換してある。なお、ここでは、Zを負荷とした場合における、直流電源Vから負荷Zへの電力伝送を順方向電力伝送とし、負荷Zを第2の電源に置換した場合における、第2の電源Zから直流電源Vへの電力伝送を逆方向電力伝送というものとする。順方向電力伝送では、キャパシタC2からキャパシタC1へ電力が伝送され、逆方向電力伝送では、キャパシタC1からキャパシタC2へ電力が伝送される。
トランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12は、電界効果トランジスタ(FET)からなるが、これらは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)から構成することもできる。
順方向電力伝送の場合、トランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12を通常のFETから構成する場合には、これらがダイオードと等価な機能を奏するように、図5に示したダイオードD1,D2,D11,D12に順方向電流が流れる期間のみ、それぞれのトランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12のゲート電圧を閾値以上に増加させればよい。或いは、トランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12を通常のFETから構成する場合において、導電型の異なるソース領域と半導体基板からなるPN接合を、ダイオードD1、D2,D11,D12と等価な機能を奏するものとして利用することもできる。なお、トランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12をIGBTから構成する場合には、それぞれのバイポーラトランジスタのエミッタにアノードが、コレクタにカソードとなるように並列接続されたダイオードを利用して、トランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12のそれぞれに対して並列接続されたダイオードを、図5に示したダイオードD1,D2,D11,D12として機能させることができる。
順方向電力伝送におけるその他の作用は、上述の実施形態のものと同一である。
一方、逆方向電力伝送の場合には、トランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12をスイッチング素子として機能させる。電力伝送に関しては、1次側コイルと2次側コイルの機能が入れ替わり、整流回路とスイッチング回路の機能が入れ替わることになる。端子Qから端子Pに電流が流れる場合、この電流はチョークコイルA,Cに一旦蓄積された後、コイル10A,10B,20A,20Bに流入する。コイル10A,10B,20A,20Bから出力された電流は、チョークコイルD,Cに一旦蓄積された後、端子Qへと帰還する。
トランジスタQs1及びコイル10Aを電流S1’が流れる場合、これに磁気的に結合したコイル1A,1Bに電流P1’が流れ、続いて、トランジスタQs2及びコイル10Bを電流S2’が流れる場合、これに磁気的に結合したコイル1A,1Bに電流P2’が流れる。なお、電流P1’と電流P2’の向きは逆である。
同様に、トランジスタQs11及びコイル20Aを電流S11’が流れる場合、これに磁気的に結合したコイル2A,2Bに電流P11’が流れ、続いて、トランジスタQs12及びコイル20Bを電流S12’が流れる場合、これに磁気的に結合したコイル2A,2Bに電流P12’が流れる。なお、電流P11’と電流P12’の向きは逆である。
なお、電流S1’と電流S11’は同相で同期しており、電流S2’と電流S12’も同相で同期している。逆方向電力伝送に関して、図3に示したスイッチQ1,Q2,Q3,Q4は、整流ダイオードとして機能させる。すなわち、スイッチQ1,Q2,Q3,Q4は通常のEFT又はIGBTとそれに並列接続されたダイオードからなるが、これらはダイオードとして機能させる。
図11の右側のコイル10A,20Aにおいて電流S1’と電流S11’が流れ、左側のコイル1,2に電流P1’,P11’が流れた場合、図3(a)、図3(b)における端子X2(Y2)の電位は端子X1(Y1)の電位より高くなる。このため電流は、端子X2(Y2)からダイオードDAを経てキャパシタC2若しくは直流電源Vへ、更にスイッチQ2を介して端子X1(Y1)に流れる。
一方、図11の右側のコイル10B,20Bにおいて電流S2’と電流S12’が流れ、左側のコイル1,2に電流P2’,P12’が流れた場合、図3(a)、図3(b)における端子X1(Y1)の電位は端子X2(Y2)の電位より高くなる。このため電流は、端子X1(Y1)からスイッチQ1を経てキャパシタC2若しくは直流電源Vへ、更にダイオードDBを介して端子X1(Y1)に流れる。
なお、逆方向電力伝送の場合においても、トランジスタQs1、Qs2,Q11,Qs12からなるインバータ回路においては、原則的には、期間T1において、トランジスタQs1とQs11とは同相でONとし、トランジスタQs2とQs12とは同相でOFFとし、期間T1後の期間T2においては、トランジスタQs1とQs11とは同相でOFFとし、トランジスタQs2とQ12とは同相でONとする。但し、これらのON/OFFの期間T1,T2を一部分重複させたり、完全に分離させるなどの変形を行うことは可能である。
また、インバータ回路を構成していたスイッチQ1〜Q4を整流回路として機能させる場合、それぞれを構成するトランジスタの寄生ダイオード(ボディダイオード)を、整流素子として用いることもできる。すなわち、逆方向電力伝送の場合、スイッチQ1〜Q4を通常のFETから構成する場合には、これらが整流用のダイオードと等価な機能を奏するように、スイッチングする、或いは、スイッチQ1〜Q4のFETに付属の寄生ダイオード(ボディダイオード)を整流ダイオードとして機能させる。
ダイオードDA及びDBが存在しない場合、もちろん、存在してもよいが、この場合において、逆方向電力伝送の場合にスイッチQ2,Q3に整流作用を奏させる場合、端子X2から共振用インダクタLRに向けて流れた電流は、スイッチQ3を介してキャパシタC2若しくは直流電源Vに至り、続いて、スイッチQ2を通って端子X1に帰還する。この端子X2から電流が流出する期間のみ、スイッチQ3とQ2のゲート電圧を閾値以上として、これらをONさせるか、これらの寄生ダイオード内を順方向に電流が流れるようにする。この期間、スイッチQ1とQ4はOFFである。なお、ダイオードDAが存在している場合には、これに端子X2から順方向電流が流れるので、スイッチQ3はOFFした状態でも構わない。
また、これとは逆に、逆方向電力伝送の場合にスイッチQ1,Q4に整流作用を奏させる場合、端子X1からスイッチQ1に向けて流れ出した電流は、キャパシタC2若しくは直流電源Vに至り、続いて、スイッチQ4を通って端子X2に帰還する。この端子X1から電流が流出する期間のみ、スイッチQ1とQ4のゲート電圧を閾値以上として、これらをONさせるか、これらの寄生ダイオード内を順方向に電流が流れるようにする。また、この期間、スイッチQ2とQ3はOFFである。なお、ダイオードDBが存在している場合には、これに順方向電流が流れて端子X2に至るので、スイッチQ4はOFFした状態でも構わない。
また、逆方向電力伝送の場合の整流作用時において、トランジスタQ1〜Q4をIGBTから構成する場合には、それぞれのバイポーラトランジスタのエミッタにアノードが、コレクタにカソードとなるように並列接続されたダイオードを利用して、トランジスタQ1〜Q4のそれぞれに対して並列接続されたダイオードを、上記と同様に電流が整流されて流れるように機能させることもできる。
以上のように、逆方向電力伝送においては、インバータ回路INV1,INV2を整流回路として機能させ、その出力電流をキャパシタC2に転送し、直流電源Vを充電することが可能となる。
以上のように、図11に示した例では、整流回路RCを構成する整流素子(ダイオード)はトランジスタQs1,Qs2,Qs11,Qs12からなり、トランジスタをスイッチング駆動することで整流回路RCを、同期整流動作を行わせるインバータ回路として機能させ、整流回路RCの後段に設けられる電源Zから整流回路RCを介して逆方向に電力伝送を行うこともできる。これにより、双方向電力伝送が可能となる。また、逆方向電力伝送の場合において、直流電源Vを負荷に置換することもできる。また、双方向電力伝送の構成は他の実施形態のスイッチング電源にも適用することができる。
1,2・・・コイル、1A,1B,2A,2B・・・1次側コイル、10A,10B,20A,20B・・・2次側コイル、100・・・コンバータ、A、B,C,D・・・チョークコイル、B1,B2・・・環状磁路、C1・・・キャパシタ、C2・・・キャパシタ、D1,D2,D11,D12・・・ダイオード、INV1,INV2・・・インバータ回路、LR・・・共振用インダクタ、Q1,Q2,Q3,Q4・・・スイッチ、X,Y・・・接続点、Z・・・負荷。