本発明の実施形態(第1実施形態)に係る排気ガス浄化用触媒材について説明する。
図1は、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材10を模式的に示す拡大断面図である。第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材10は、図1に示すように、アルミナ粒子13と、酸素吸蔵放出能を有するCeZr系複合酸化物粒子12と、Pd11とを含有し、前記Pd11が、前記CeZr系複合酸化物粒子12にドープされて固定されており、前記CeZr系複合酸化物粒子12が、前記アルミナ粒子13の表面に分散担持されている。前記Pd11がドープされて固定されている前記CeZr系複合酸化物粒子12は、前記CeZr系複合酸化物粒子12の表面に一部露出するように前記Pd11が固定されていると考えられる。すなわち、前記排気ガス浄化用触媒材10は、このような前記Pd11の一部が埋設された状態で固定されたCeZr系複合酸化物粒子12が、アルミナ粒子13の表面に分散担持されている。また、前記Pd11が、前記アルミナ粒子13に実質的に担持されていないものである。
前記CeZr系複合酸化物粒子12は、後述の実施例で示すように、Pdを後担持することによって表面上に担持した場合より酸素吸蔵放出性能が高まる。このようにCeZr系複合酸化物粒子の酸素吸蔵放出性能が高まると、酸素吸蔵放出能を有するCeZr系複合酸化物粒子による排気ガスの浄化性能を高める作用が充分に発揮される。
すなわち、Pd11は、酸化触媒として有用であることは従来から知られており、特にPd11が酸化された状態にあるとき、その酸化触媒機能が高くなる。しかしながら、排気ガスの空燃比がリッチになると、排気ガス中のHCやCOを酸化するための酸素濃度が低下する。さらに、Pd11が金属状態に還元される傾向がある。よって、前記Pd11の酸化触媒機能が低下する傾向がある。そこで、上記のようにCeZr系複合酸化物粒子12の酸素吸蔵放出性能が高まると、空燃比がリッチになったときでも、Pd11は、CeZr系複合酸化物粒子12から放出される酸素によって、酸化触媒機能が高い酸化状態をより維持しやすくなる。
また、前記CeZr系複合酸化物粒子12は、高温の排気ガスに晒されても、Pd11のシンタリングが抑制され、耐熱性が向上する。また、前記排気ガス浄化用触媒材10においては、前記アルミナ粒子13が立体障害となって前記CeZr系複合酸化物粒子12同士のシンタリングも抑制される。
以上より、前記排気ガス浄化用触媒材10は、浄化性能に優れ、かつ、高温の排気ガスに晒されても浄化性能を維持できる。
上記の酸素吸蔵放出性能の向上やPdのシンタリングの抑制は、以下のことによると考えられる。図2は、前記CeZr系複合酸化物粒子12の表面付近をさらに拡大して示す断面図であり、Pdを後担持したCeZr系複合酸化物粒子12も併せて示した。なお、図2(a)は、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材10における前記CeZr系複合酸化物粒子12の表面付近を示し、図2(b)は、Pdを後担持したCeZr系複合酸化物粒子12の表面付近を示す。
前記CeZr系複合酸化物粒子12の酸素吸蔵放出性能が向上するのは、CeZr系複合酸化物粒子12による酸素の吸蔵放出が、Pdとの接触している部分14で優先的に行われることによると考えられる。前記CeZr系複合酸化物粒子12は、図2(a)に示すように、Pd11がCeZr系複合酸化物粒子12に一部埋設されていると考えられ、Pd11とCeZr系複合酸化物粒子12とが接触している部分14の面積が、Pdを後担持した場合より広いので、酸素吸蔵放出性能が高まると考えられる。これに対して、Pd11を後担持したCeZr系複合酸化物粒子12は、図2(b)に示すように、Pd11がCeZr系複合酸化物粒子12の表面上に担持され、Pd11とCeZr系複合酸化物粒子12とが接触する部分15の面積が、上記の場合と比較して狭いので、Pd11がCeZr系複合酸化物粒子12にドープされて固定された場合のように、酸素吸蔵放出能が高まらないと考えられる。
また、Pdのシンタリングが抑制されるのは、図2(a)に示すように、Pd11がCeZr系複合酸化物粒子12に一部埋設されていると考えられるので、CeZr系複合酸化物粒子12の表面上をPd11が転動しにくいことによると考えられる。このようにPd11が転動しにくいと、高温の排気ガスに晒されても、Pd11のシンタリングが抑制されると考えられる。これに対して、Pd11を後担持したCeZr系複合酸化物粒子12は、図2(b)に示すように、Pd11がCeZr系複合酸化物粒子12の表面上に担持されているので、高温の排気ガスに晒されると、Pd11がCeZr系複合酸化物粒子12の表面上を転動して、シンタリングしやすいと考えられる。
前記アルミナ粒子13は、複数の細孔を有する粒子状のアルミナであれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、BET比表面積50〜300m2/g、細孔容積0.5〜2cm3/gの活性アルミナ粒子等が挙げられる。
また、前記CeZr系複合酸化物粒子12としては、CeとZrとを含み、酸素吸蔵放出能を有するものであれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、金属としてCe及びZrのみを含むCeZr系複合酸化物からなる粒子や、Ceと、Zrと、Ceを除く希土類金属又はアルカリ土類金属とを含むCeZr系複合酸化物からなる粒子等が挙げられる。このCeZr系複合酸化物粒子に含まれる希土類金属としては、3価で安定な金属であることが好ましく、例えば、セリウム(Ce)を除く、スカンジウム(Sc),イットリウム(Y),ランタン(La),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリウム(Gd),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),ツリウム(Tm),イッテルビウム(Yb),ルテチウム(Lu)等が挙げられる。これらの中でもLa、及びNdから選択される少なくとも1種の金属であることが好ましい。また、このCeZr系複合酸化物粒子に含まれるアルカリ土類金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましい。
また、前記CeZr系複合酸化物粒子12としては、CeO2とZrO2との総質量に対してZrO2が10質量%以上90質量%以下含有されていることが好ましく、40質量%以上85質量%以下含有されていることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下含有されていることがさらに好ましい。このような範囲であると、後述の実施例でも示すように、高温の排気ガスに晒した後であっても、より高い浄化性能を維持できる。ZrO2の量が少なすぎる場合、前記CeZr系複合酸化物粒子12の耐熱性が低下する傾向がある。また、ZrO2の量が多すぎる場合、CeO2の量が少なくなりすぎ、前記CeZr系複合酸化物粒子12の酸素吸蔵放出性能が低下し、高い浄化性能が発揮できない傾向がある。また、前記CeZr系複合酸化物粒子12と前記アルミナ粒子13との含有比が、質量比で5:95〜70:30であることが好ましい。
前記Pd11は、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化させるとともに、窒素酸化物(NOx)を還元することができる触媒貴金属である。前記Pd11の担持量は、前記CeZr系複合酸化物粒子12と前記アルミナ粒子13との合計質量に対して、0.03〜5質量%であることが好ましい。また、前記Pd11は、粒子状であっても、粉末状であってもよいが、その粒子径が、0.1〜30nmであることが好ましい。
また、前記排気ガス浄化用触媒材10には、Pd以外の触媒貴金属、例えば、白金(Pt)、及びロジウム(Rh)等を含有していてもよい。
次に、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材の製造方法を示す工程図である。
まず、Ce、Zr及びPdを含む酸性溶液を調製する(ステップA1)。具体的には、例えば、各金属の硝酸塩の水溶液を混合して調製することができる。酸性溶液の各成分の含有量は、前記CeZr系複合酸化物粒子のCeO2含有率やZrO2含有率、Pdの担持量に対応する量である。
次に、前記Ce、Zr及びPdを含む酸性溶液に塩基性溶液を添加して混合する共沈工程を行う(ステップA2)。そうすることによって、前記酸性溶液に含有される各構成金属(Ce、Zr、及びPd)を含有する第1水酸化物を複合酸化物前駆体として得られる。この際、前記第1水酸化物を分散させた第1分散液の状態で得られる。この工程は、具体的には、例えば、前記酸性溶液に、過剰のアンモニア水を添加して混合するアンモニア共沈法等が挙げられる。また、前記塩基性溶液としては、例えば、アンモニア水以外にも、水酸化ナトリウム水溶液等を使用することができる。なお、ステップA1及びステップA2は、第1共沈工程に相当する。
また、Alを含む酸性溶液を調製する(ステップA3)。具体的には、例えば、Alの硝酸塩の水溶液を調製する。次に、前記Alを含む酸性溶液に塩基性溶液を添加して混合する共沈工程を行う(ステップA4)。そうすることによって、Alを含有する第2水酸化物を複合酸化物前駆体として得られる。この際、前記第2水酸化物を分散させた第2分散液の状態で得られる。この工程は、具体的には、例えば、前記酸性溶液に、過剰のアンモニア水を添加して混合するアンモニア共沈法等が挙げられる。また、前記塩基性溶液としては、例えば、アンモニア水以外にも、水酸化ナトリウム水溶液等を使用することができる。なお、ステップA3及びステップA4は、第2共沈工程に相当し、前記第1共沈工程とは別に行うが、同時に行ってもよい。
そして、前記第1分散液と前記第2分散液とを混合する(ステップA5)。具体的には、前記ステップA2で得られた前記第1水酸化物を含む分散液と前記ステップA4で得られた前記第2水酸化物を含む分散液とを攪拌して混合する。
次に、前記混合した分散液から、混合された水酸化物を沈殿分離して、水洗し、乾燥させる(ステップA6)。具体的には、前記混合した分散液を含む液を一昼夜放置し、その上澄み液を除去して得られたケーキを遠心分離器にかけ、その後、水洗する。そして、上記水洗したケーキを加熱して乾燥させる。そのときの乾燥条件は、焼成温度より低い温度で、充分に乾燥できればよいが、例えば、100〜200℃で、1〜20時間程度が好ましい。
次に、得られたケーキを焼成する焼成工程を行う(ステップA7)。焼成条件としては、例えば、400〜600℃で、1〜20時間程度が好ましい。具体的には、例えば、乾燥したケーキを大気雰囲気において、例えば、500℃の温度に10時間保持することにより行う。
以上の製造方法によって、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材を製造することができる。すなわち、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材は、Pdを含有させた状態で製造したCeZr系複合酸化物粒子、いわゆるPdをドープしたCeZr系複合酸化物粒子を含有するものである。そうすることによって、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒材を製造することができる。このことは、CeZr系複合酸化物粒子にPdをドープすると、PdがCeZr系複合酸化物粒子の表面張力等によって、CeZr系複合酸化物粒子の表面に集まり、一部が露出した状態で固定されるためであると考えられる。これに対して、Pdを蒸発乾固したCeZr系複合酸化物粒子、いわゆるPdを後担持したCeZr系複合酸化物粒子は、PdがCeZr系複合酸化物粒子にほとんど埋設されずに、PdがCeZr系複合酸化物粒子の表面に担持されるだけである。
また、第2共沈工程で得られた水酸化物の代わりに、別途用意した水酸化アルミニウムを用いても、第1実施形態に係る排気ガス浄化用触媒を製造することができる。
次に、本発明の他の実施形態(第2実施形態)である排気ガス浄化用触媒について説明する。
図4は、第2実施形態に係る排気ガス浄化用触媒を備えた触媒コンバータ20を模式的に示す断面図である。触媒コンバータ20は、エンジンに接続される排気通路に配置され、この触媒コンバータ20において排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)が浄化されて排出されるように構成されている。この触媒コンバータ20は、耐熱容器21の中に浄化触媒(排気ガス浄化用触媒)22が内蔵されることにより構成されている。なお、図示を省略しているが、耐熱容器21には、浄化触媒22の温度を検出する温度センサが設けられていてもよい。
図5は、前記浄化触媒22の一部を拡大して示す断面図である。前記浄化触媒22は、隔壁で区画した多数のセルを有する略円柱状のハニカム状担体のセル壁31表面に触媒層32が形成されることにより構成され、排気ガスは上流側から下流側に向かってセルを通過する間にそのセル表面に形成された触媒層32中に拡散して、触媒層32に含まれる触媒貴金属と接触することにより有害成分(HC,CO,NOx)を浄化させるようになっている。
前記浄化触媒22は、そのハニカム状担体として、例えば、コージェライト製のセラミック担体、又はステンレス鋼製のメタル担体を用いることができる。また、浄化触媒22の触媒層32は、前記排気ガス浄化用触媒材を含有していればよく、他の材料を含有していてもよい。前記触媒層32に含まれる他の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記排気ガス浄化用触媒材以外のものであって、従来から触媒材料として用いられているもの、例えば、アルミナ、硫黄(S)成分による被毒の抑制のためのニッケル(Ni)、及びリン(P)成分による被毒の抑制のためのバリウム(Ba)等が挙げられる。
また、前記触媒層32は、前記排気ガス浄化用触媒材を含有していればよく、前記排気ガス浄化用触媒材を含有する層に、それ以外の層が積層されたものであってもよい。具体的には、例えば、前記排気ガス浄化用触媒材を含有する第1触媒層と、Rh担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第2触媒層との少なくとも2つの層が積層されたものであり、前記第1触媒層が前記第2触媒層より前記セル壁に近い位置に存在するもの等が挙げられる。
このようにRh担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第2触媒層を排気ガス通路側に配置することによって、浄化性能をさらに向上させることができる。また、触媒貴金属としてRhを、前記排気ガス浄化用触媒材を含有する層に含有させると、PdとRhとが合金化して、触媒活性を低下させるおそれがあるが、前記第1触媒層と前記第2触媒層とを積層することによって、PdとRhとの合金化を抑制でき、この両触媒金属が触媒活性の高い状態を保ち、排気ガスの浄化に有利になる。さらに、第2触媒層を排気ガス通路側に配置することによって、第1触媒層に含有されるPdの熱劣化及び被毒の問題が軽減される。
なお、前記Rh担持CeZr系複合酸化物粒子としては、例えば、Rhを後担持したCeZr系複合酸化物粒子、及びRhをドープしたCeZr系複合酸化物粒子等が挙げられる。
また、前記触媒層32が、Pd担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第3触媒層をさらに積層したものであり、前記第3触媒層が前記第2触媒層より前記セル壁から遠い位置に存在するもの等が挙げられる。
このようにPd担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第3触媒層をさらに排気ガス通路側に配置することによって、浄化性能をさらに向上させることができる。また、上記の場合と同様、PdとRhとの合金化を抑制でき、この両触媒金属が触媒活性の高い状態を保ち、排気ガスの浄化に有利になる。さらに、第3触媒層をさらに排気ガス通路側に配置することによって、第2触媒層に含有されるRh及び第1触媒層に含有されるPdの熱劣化及び被毒の問題が軽減される。
なお、前記第3触媒層に含有されるPd担持CeZr系複合酸化物粒子としては、Pdを後担持したCeZr系複合酸化物粒子、及びPdをドープしたCeZr系複合酸化物粒子等が挙げられ、PdをドープしたCeZr系複合酸化物粒子が好ましい。PdをドープしたCeZr系複合酸化物粒子は、CeZr系複合酸化物粒子の表面にPdが一部露出するように固定されているものと考えられ、前記排気ガス浄化用触媒材に含有されるCeZr系複合酸化物粒子と同様のものである。
前記触媒層32は、例えば、以下のようにして調製される。
まず、前記排気ガス浄化用触媒材、水及びバインダ原料とを混合してスラリーを生成する。そして、このスラリーにハニカム状担体を浸漬させて、スラリーをコーティングする。そして、エアブローにより余分なスラリーを除去した後、乾燥、焼成する。また、バインダ原料としては、例えば、硝酸ジルコニルやアルミナゾル等を用いることができ、焼成条件としては、450〜550℃の温度で、大気中にて1〜3時間程度保持するのが好ましい。なお、複数層の触媒層を形成する場合は、上記の操作を繰り返すことによって作製することができる。
以下に、本発明の実施形態である排気ガス浄化用触媒材及び排気ガス浄化用触媒の実施例について説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例A]
まず、排気ガス浄化用触媒材の酸素吸蔵放出能について検討した。
(実施例1)
実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、図3に示す製造工程に従い、以下のように製造した。
まず、Ce、Zr及び触媒貴金属であるPdの各金属の硝酸塩の水溶液を混合して、Ce、Zr及びPdを含む酸性溶液を調製し(ステップA1)、その酸性溶液にアンモニア水溶液を添加し、混合した(ステップA2)。そうすることによって、Ce、Zr及びPdを含む水酸化物が分散された分散液が得られた。次に、Alの硝酸塩の水溶液を調製した(ステップA3)。その水溶液にアンモニア水溶液を添加し、混合した(ステップA4)。そうすることによって、Alの水酸化物が分散された分散液が得られた。なお、酸性溶液の各成分の量は、製造するCeZr系複合酸化物粒子のCeO2含有率が60質量%となり、ZrO2含有率が40質量%となるように調整した量である。また、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、80:20となるように調整した量である。さらに、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との合計質量に対して、Pd担持量が0.5質量%となるように調整した量である。
そして、Ce、Zr及びPdを含む水酸化物が分散された分散液とAlの水酸化物が分散された分散液とを混合させた(ステップA5)。この混合物を、一昼夜放置し、その上澄み液を除去して得られたケーキを遠心分離器にかけ、その後、水洗した。そして、上記水洗したケーキを150℃で、10時間程度加熱して乾燥させた(ステップA6)。次に、得られたケーキを、大気雰囲気において、500℃の温度に10時間程度保持することによって、焼成した(ステップA7)。
以上の工程によって、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材が得られた。すなわち、PdがドープされたCeZr系複合酸化物粒子が、アルミナ粒子に分散担持された排気ガス浄化用触媒材が得られた。
(比較例1)
比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、図6に示す製造工程に従い、以下のように製造した。なお、図6は、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材の製造方法を示す工程図である。
まず、Ce、Zr及びAlの各金属の硝酸塩の水溶液を混合して、Ce、Zr及びAlを含む酸性溶液を調製し(ステップB1)、その酸性溶液に塩基性溶液であるアンモニア水溶液を添加し、混合した(ステップB2)。そうすることによって、Ce、Zr及びAlを含む水酸化物が分散された分散液が得られた。そして、Ce、Zr及びAlを含む水酸化物が分散された分散液を、一昼夜放置し、その上澄み液を除去して得られたケーキを遠心分離器にかけ、その後、水洗した。そして、上記水洗したケーキを150℃で、10時間程度加熱して乾燥させた(ステップB3)。次に、得られたケーキを、大気雰囲気において、500℃の温度に10時間程度保持することによって、焼成した(ステップB4)。
次に、Pdの硝酸塩の水溶液を調製した(ステップB5)。そして、その水溶液を、上記ステップB4で得られた焼成物に添加し、混合し(ステップB6)、蒸発乾固した(ステップB7)。なお、各金属の含有量は、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材と同様になるように調整した。
以上の工程によって、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材が得られた。すなわち、Pdが後担持されたCeZr系複合酸化物粒子と、アルミナ粒子とを含有する排気ガス浄化用触媒材が得られた。なお、前記特許文献1及び特許文献2に記載のものに相当する。
(比較例2)
比較例2に係る排気ガス浄化用触媒材は、図7に示す製造工程に従い、以下のように製造した。なお、図7は、比較例2に係る排気ガス浄化用触媒材の製造方法を示す工程図である。
まず、Ce、Zr、Al及びPdの各金属の硝酸塩の水溶液を混合して、Ce、Zr、Al及びPdを含む酸性溶液を調製し(ステップC1)、その酸性溶液に塩基性溶液であるアンモニア水溶液を添加し、混合した(ステップC2)。そうすることによって、Ce、Zr、Al及びPdを含む水酸化物が分散された分散液が得られた。そして、Ce、Zr、Al及びPdを含む水酸化物が分散された分散液を、一昼夜放置し、その上澄み液を除去して得られたケーキを遠心分離器にかけ、その後、水洗した。そして、上記水洗したケーキを150℃で、10時間程度加熱して乾燥させた(ステップC3)。次に、得られたケーキを、大気雰囲気において、500℃の温度に10時間程度保持することによって、焼成した(ステップC4)。なお、各金属の含有量は、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材と同様になるように調整した。
以上の工程によって、比較例2に係る排気ガス浄化用触媒材が得られた。すなわち、アルミナ粒子中に、Ce、Zrの各酸化物及び/又はCeZr系複合酸化物が分散し、かつPdがこれらの各酸化物中に固溶した排気ガス浄化用触媒材が得られた。なお、前記特許文献3に記載のものに相当する。
(比較例3)
比較例3に係る排気ガス浄化用触媒材は、図8に示す製造工程に従い、以下のように製造した。なお、図8は、比較例3に係る排気ガス浄化用触媒材の製造方法を示す工程図である。
まず、Ce、Zr及びPdの各金属の硝酸塩の水溶液を混合して、Ce、Zr及びPdを含む酸性溶液を調製し(ステップD1)、その酸性溶液に塩基性溶液であるアンモニア水溶液を添加し、混合した(ステップD2)。そうすることによって、Ce、Zr及びPdを含む水酸化物が分散された分散液が得られた。そして、Ce、Zr及びPdを含む水酸化物が分散された分散液を、一昼夜放置し、その上澄み液を除去して得られたケーキを遠心分離器にかけ、その後、水洗した。そして、上記水洗したケーキを150℃で、10時間程度加熱して乾燥させた(ステップD3)。次に、得られたケーキを、大気雰囲気において、500℃の温度に10時間程度保持することによって、焼成した(ステップD4)。
次に、アルミナ粉末を水に分散させて水分散液を調製した(ステップD5)。そして、その水分散液と、上記ステップD4で得られた焼成物とを混合し(ステップD6)、乾燥させ、焼成した(ステップD7)。なお、各金属の含有量は、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材と同様になるように調整した。
以上の工程によって、比較例3に係る排気ガス浄化用触媒材が得られた。すなわち、PdがドープされたCeZr系複合酸化物粒子とアルミナ粒子とを物理混合させた排気ガス浄化用触媒材が得られた。
前記実施例1及び比較例1〜3に係る各排気ガス浄化用触媒材の酸素吸蔵放出能を、昇温還元法を用いて評価した。
まず、得られた各排気ガス浄化用触媒材に、2体積%のO2、10体積%のH2O、及び残部N2の気体雰囲気下で、1000℃24時間、エージング処理を施した。
このエージング処理を施した各排気ガス浄化用触媒材に、酸素を飽和状態まで吸着させた後、1体積%のCO、残部Heの気体を流通させ、昇温速度10℃/秒で、室温から600℃まで昇温させたときに生成したCO2の量を測定した。このCO2生成量から、酸素放出量を算出した。その結果を図9に示す。なお、図9は、排気ガス浄化用触媒材の酸素吸蔵放出能について検討した結果を示すグラフであり、縦軸は、実施例1での酸素放出量を100としたときの相対酸素放出量を示す。
図9からわかるように、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、比較例1〜3に係る排気ガス浄化用触媒材より、酸素放出量が多い。このことから、CeZr系複合酸化物粒子による酸素の吸蔵放出が、Pdとの接触している部分で優先的に行われ、CeZr系複合酸化物粒子とPdとの接触面積が大きく寄与していることがわかる。そして、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、PdがCeZr系複合酸化物粒子の表面に一部露出するように固定されていると考えられ、PdとCeZr系複合酸化物粒子との接触面積が広いことがわかる。
また、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、Pdを後担持しているので、CeZr系複合酸化物粒子だけではなく、アルミナ粒子にも担持されている。このことから、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材とPd含有量が同じであるにもかかわらず、アルミナ粒子にもPdが担持されているので、CeZr系複合酸化物粒子に担持されているPd量が減り、酸素放出量が劣ると考えられる。そして、PdとCeZr系複合酸化物粒子との接触面積が、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材より狭い。このことからも、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材より酸素放出量が劣ると考えられる。また、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材は、Pdが後担持されているので、Pdをドープして固定した場合より、Pdのシンタリングを抑制する効果が低く、エージング処理によって、Pdがシンタリングを起こしていると考えられる。
比較例2に係る排気ガス浄化用触媒材は、アルミナ粒子中Ce、Zrの各酸化物及び/又はCeZr系複合酸化物が分散し、かつPdがこれらの各酸化物中に固溶している。このことから、比較例2に係る排気ガス浄化用触媒材は、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒材とPd含有量が同じであるにもかかわらず、アルミナ粒子にもPdが固溶しているので、CeZr系複合酸化物粒子に固溶しているPd量が減り、酸素放出量が劣ると考えられる。なお、Pdは、CeZr系複合酸化物粒子に固溶しているので、Pdを後担持した場合より、PdとCeZr系複合酸化物粒子との接触面積が広くなる。よって、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒材よりは、酸素放出量が向上すると考えられる。
比較例3に係る排気ガス浄化用触媒材では、他の排気ガス浄化用触媒材と比較して、アルミナ粒子がCeZr系複合酸化物粒子のシンタリングを抑制する効果が低く、エージング処理によって、CeZr系複合酸化物粒子がシンタリングを起こし、酸素吸蔵放出能を低下させていると考えられる。
次に、アルミナ粒子の量を変化させた場合について、さらに検討した。
(実施例2)
アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、65:35となるように調整したこと以外、実施例1と同様にして作製した。
(比較例4)
アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、65:35となるように調整したこと以外、比較例1と同様にして作製した。
前記実施例1,2及び比較例1,4に係る各排気ガス浄化用触媒材の酸素吸蔵放出能を、前記昇温還元法と同様の方法を用いて評価した。その結果を図10に示す。なお、図10も、図9と同様、排気ガス浄化用触媒材の酸素吸蔵放出能について検討した結果を示すグラフである。ただし、図10は、図9の場合と異なり、CeZr系複合酸化物粒子の量が異なるので、図10の縦軸は、実施例1でのCe1モルあたりの酸素放出量を100としたときの相対酸素放出量を示す。
図10からわかるように、PdをCeZr系複合酸化物粒子にドープし、そのCeZr系複合酸化物粒子の量が少ない実施例1が最もCe1モルあたりの酸素放出量が多いことがわかる。このことから、CeZr系複合酸化物粒子の量が少なくても、Pdが有効にCeZr系複合酸化物粒子に担持されており、さらにPdとCeZr系複合酸化物粒子との接触面積が広いことがわかる。また、比較例1と比較例4とを比較することによって、Pdを後担持した場合であっても、CeZr系複合酸化物粒子の量が多い比較例4では、PdがCeZr系複合酸化物粒子の酸素吸蔵放出能を高めることができることがわかる。
[実施例B]
次に、本発明の実施形態である排気ガス浄化用触媒の浄化性能に対する、CeO2とZrO2との質量比の影響を検討した。
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、65:35となるように調整したこと以外、実施例1と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。その際、CeO2とZrO2との質量比を変化させて、複数の排気ガス浄化用触媒材を調製した。
そして、CeO2とZrO2とNd2O3との質量比が10:80:10の複合酸化物粒子にRhを後担持したRh担持CeZr系複合酸化物粒子を調製した。
次に、セル壁4mil、セル数400cpsi(1平方インチあたりのセル数が400)のコージェライト製のハニカム担体に、前記各排気ガス浄化用触媒材を、バインダ原料である硝酸ジルコニルとともにウォッシュコートし、乾燥して、焼成した。さらに、前記Rh担持CeZr系複合酸化物粒子を、バインダ原料である硝酸ジルコニルとともにウォッシュコートし、乾燥して、焼成した。そうすることによって、排気ガス浄化用触媒が得られた。なお、Pdの担持量が、0.4g/Lとなるように調整し、Rhの担持量が、0.1g/Lとなるように調整した。
そして、得られた排気ガス浄化用触媒の浄化性能を、以下の方法によりライトオフ温度を測定することにより評価した。
まず、得られた排気ガス浄化用触媒を触媒ケース内に収納することによって、触媒コンバータを作製した。この触媒コンバータをエンジン排気量2Lのエンジンと上流側パイプを介して接続し、触媒温度を900℃に加熱し、排気ガスを60時間流通させて、エージング処理を施した。なお、排気ガスは、A/F=14.7の排気ガスを40秒間、A/F=13.5の排気ガスを10秒間、A/F=16の排気ガスを10秒間、流通させるサイクルに従って、流通させた。
そして、エージング処理を施した後、一旦、冷却させた。この触媒から、φ25.4mm×長さ50mmのミニサンプルをコアドリルにて抜き出した。このミニサンプルをガソリンエンジンの排出ガスを模擬したモデル排気ガスにて浄化性能を評価した。このときの排気ガスは、A/F=14.7、パータペーションが±0.9になるように調製した。空間速度(SV)は、60,000/hとした。このモデル排気ガスを流通させながら、30℃/分の割合で昇温させ、触媒の出口部直後におけるHC、CO及びNOx濃度が50%となった時点での触媒の入口側のモデル排気ガスの温度(ライトオフ温度T50)を測定した。その結果を図11に示す。なお、図11は、排気ガス浄化用触媒の浄化性能に対する、CeZr系複合酸化物粒子の組成の影響について検討した結果を示すグラフである。また、ライトオフ温度T50は、触媒活性及び排気ガス浄化性能を評価するための指標であり、ライトオフ温度T50が低いものほど低温時における触媒活性及び排気ガス浄化性能が高いということになる。
図11からわかるように、CeZr系複合酸化物粒子としては、CeとZrとを含んだ複合酸化物からなるものでることが好ましい。そして、その含有量としては、以下の範囲であることが好ましいことがわかる。CeO2とZrO2との総質量に対してZrO2が10質量%以上90質量%以下含有されていることが好ましく、40質量%以上85質量%以下含有されていることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下含有されていることがさらに好ましい。
[実施例C]
次に、本発明の実施形態である排気ガス浄化用触媒の浄化性能に対する、層構造の影響を検討した。層構造の違いとしては、触媒層として、排気ガス浄化用触媒材を含有する層の1層からなるものや、排気ガス浄化用触媒材を含有する層とそれ以外の層とを積層したものについて検討した。
触媒層として、排気ガス浄化用触媒材を含有する層の1層からなる排気ガス浄化用触媒を作製し、その浄化性能を評価した。
(実施例1−1)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、50:50となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、実施例1と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。
次に、セル壁4mil、セル数400cpsi(1平方インチあたりのセル数が400)のコージェライト製のハニカム担体に、得られた排気ガス浄化用触媒材を、バインダ原料である硝酸ジルコニルとともにウォッシュコートし、乾燥して、焼成した。そうすることによって、排気ガス浄化用触媒が得られた。なお、排気ガス浄化用触媒材の担持量が、80g/Lとなるように調整した。
(比較例1−1)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、50:50となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、比較例1と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。
得られた排気ガス浄化用触媒材を用いて、実施例1−1と同様の方法により、排気ガス浄化用触媒を作製した。
(比較例2−1)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、50:50となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、比較例2と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。
得られた排気ガス浄化用触媒材を用いて、実施例1−1と同様の方法により、排気ガス浄化用触媒を作製した。
(比較例3−1)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、50:50となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、比較例3と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。
得られた排気ガス浄化用触媒材を用いて、実施例1−1と同様の方法により、排気ガス浄化用触媒を作製した。
そして、得られた各排気ガス浄化用触媒に、実施例Bと同様のエージング処理を施し、実施例Bと同様の方法によりライトオフ温度T50を測定することにより評価した。その結果を図12に示す。
図12からわかるように、酸素吸蔵放出能が最も高いPdをドープしたCeZr系複合酸化物粒子を含む排気ガス浄化用触媒材を用いて作製された排気ガス浄化用触媒(実施例1−1)が、他の排気ガス浄化用触媒材を用いて作製された排気ガス浄化用触媒(比較例1−1〜比較例3−1)より、HC、CO及びNOxに対するライトオフ温度T50が全て、低いことがわかる。このことから、本発明に係る排気ガス浄化用触媒材を用いると、浄化性能の高い排気ガス浄化用触媒が得られることがわかる。
次に、触媒層として、排気ガス浄化用触媒材を含有する第1触媒層と、Rh担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第2触媒層との2つの層が積層されたものであり、前記第1触媒層が前記第2触媒層より前記セル壁に近い位置に存在する排気ガス浄化用触媒を作製し、その浄化性能を評価した。
(実施例1−2)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、40:60となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、実施例1と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。
そして、CeO2とZrO2とNd2O3との質量比が10:80:10の複合酸化物粒子にRhを後担持したRh担持CeZr系複合酸化物粒子を調製した。
次に、セル壁4mil、セル数400cpsi(1平方インチあたりのセル数が400)のコージェライト製のハニカム担体に、前記排気ガス浄化用触媒材を、バインダ原料である硝酸ジルコニルとともにウォッシュコートし、乾燥して、焼成した。さらに、前記Rh後担持触媒材を、バインダ原料である硝酸ジルコニルとともにウォッシュコートし、乾燥して、焼成した。そうすることによって、排気ガス浄化用触媒が得られた。なお、排気ガス浄化用触媒材の担持量が、60g/Lとなるように調整し、Rh後担持触媒材の担持量が、40g/Lとなるように調整した。
(比較例1−2)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、40:60となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、比較例1と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。この得られた排気ガス浄化用触媒材を用いること以外、実施例1−2と同様の方法により、排気ガス浄化用触媒を作製した。
(比較例2−2)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、40:60となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、比較例2と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。この得られた排気ガス浄化用触媒材を用いること以外、実施例1−2と同様の方法により、排気ガス浄化用触媒を作製した。
(比較例3−2)
まず、アルミナとCeZr系複合酸化物粒子との質量比が、40:60となるように調整し、CeO2とZrO2との質量比が60:40となるように調整したこと以外、比較例3と同様にして、排気ガス浄化用触媒材を作製した。この得られた排気ガス浄化用触媒材を用いること以外、実施例1−2と同様の方法により、排気ガス浄化用触媒を作製した。
そして、得られた各排気ガス浄化用触媒に、実施例Bと同様のエージング処理を施し、実施例Bと同様の方法によりライトオフ温度T50を測定することにより評価した。その結果を図13に示す。
図13からわかるように、酸素吸蔵放出能が最も高いPdをドープしたCeZr系複合酸化物粒子を含む排気ガス浄化用触媒材を用いて作製された排気ガス浄化用触媒(実施例1−2)が、他の排気ガス浄化用触媒材を用いて作製された排気ガス浄化用触媒(比較例1−2〜比較例3−2)より、HC、CO及びNOxに対するライトオフ温度T50が全て、低いことがわかる。このことから、本発明に係る排気ガス浄化用触媒材を用いると、浄化性能の高い排気ガス浄化用触媒が得られることがわかる。また、排気ガスが流通する側に、Rh担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第2触媒層を備えることによって、図12に示す単層の場合より、浄化性能が高いことがわかった。
次に、触媒層として、排気ガス浄化用触媒材を含有する第1触媒層(下層)と、Rh担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第2触媒層(中層)と、Pd担持CeZr系複合酸化物粒子を含有する第3触媒層(上層)との3つの層が積層されたものであり、前記第1触媒層が前記第2触媒層より前記セル壁に近い位置に存在し、前記第3触媒層が前記第2触媒層より前記セル壁から遠い位置に存在する排気ガス浄化用触媒を作製し、その浄化性能を評価した。
ここでの排気ガス浄化用触媒は、表1に示す担持量となるように、前記実施例Bと同様の方法で作製した。
なお、表1中の各成分は、以下のようなものである。上層におけるPdドープ型CeZrNd複合酸化物は、CeO2とZrO2とNd2O3との質量比が35:55:10のCeZrNd複合酸化物にPdを0.01質量%となるようにドープさせたものである。上層におけるPdドープ型CeZrY複合酸化物含有アルミナは、CeO2とZrO2とY2O3とLa2O3とAl2O3との質量比が8:25:2:1:64のCeZrY複合酸化物含有アルミナにPdを0.01質量%となるようにドープさせたものである。
上層におけるPd担持CeZrNd複合酸化物は、CeO2とZrO2とNd2O3との質量比が35:55:10のCeZrNd複合酸化物にPdを0.01質量%となるように乾固担持(後担持)させたものである。上層におけるPd担持CeZrY複合酸化物含有アルミナは、CeO2とZrO2とY2O3とLa2O3とAl2O3との質量比が8:25:2:1:64のCeZrY複合酸化物含有アルミナにPdを0.01質量%となるように乾固担持(後担持)させたものである。
また、中層におけるRh担持CeZrNd複合酸化物は、CeO2とZrO2とNd2O3との質量比が10:80:10のCeZrNd複合酸化物にRhを表1に示す担持量となるように乾固担持(後担持)させたものである。中層におけるRh担持ZrLa複合酸化物含有アルミナは、ZrO2とLa2O3とAl2O3との質量比が30:5:65のCeZrY複合酸化物含有アルミナにRhを表1に示す担持量となるように乾固担持(後担持)させたものである。中層におけるLa含有アルミナは、La2O3が5質量%、Al2O3が95質量%含有されるように調整したものである。
また、下層におけるPdドープ型CeZr複合酸化物含有アルミナは、本発明に係る排気ガス浄化用触媒材であって、CeO2とZrO2とAl2O3との質量比が10:30:60のCeZr複合酸化物含有アルミナにPdを0.5質量%となるようにドープさせたものである。下層におけるPd担持La含有アルミナは、La2O3が5質量%、Al2O3が95質量%含有されるように調整したLa含有アルミナに、Pdを表1に示す担持量となるように乾固担持(後担持)させたものである。なお、このPdの担持量は、排気ガス浄化用触媒に含有される全Pd量が、実施例1−3〜実施例1−7で全て同じ量となるように調整されている。また、バインダであるZrO2は、排気ガス浄化用触媒を作製する際には、バインダ原料である硝酸ジルコニルを表1の担持量となるように含有させる。
そして、得られた排気ガス浄化用触媒の浄化性能を、以下の方法によりライトオフ温度を測定することにより評価した。
まず、得られた排気ガス浄化用触媒を触媒ケース内に収納することによって、触媒コンバータを作製した。この触媒コンバータをエンジン排気量2Lのエンジンと上流側パイプを介して接続し、触媒温度を900℃に加熱し、排気ガスを100時間流通させて、エージング処理を施した。なお、排気ガスは、A/F=14.7の排気ガスを40秒間、A/F=13.5の排気ガスを10秒間、A/F=16の排気ガスを10秒間、流通させるサイクルに従って、流通させる。また、エンジンのインテークマニホールドからエンジンオイルを添加量0.5mL/分で排気ガスに添加した。
そして、エージング処理を施した後、一旦、冷却させた。この触媒から、φ25.4mm×長さ50mmのミニサンプルをコアドリルにて抜き出した。このミニサンプルをガソリンエンジンの排出ガスを模擬したモデル排気ガスにて浄化性能を評価した。このときの排気ガスは、A/F=14.7、パータペーションが±0.9になるように調製した。空間速度(SV)は、60,000/hとした。このモデル排気ガスを流通させながら、30℃/分の割合で昇温させ、触媒の出口部直後におけるHC、CO及びNOx濃度が50%となった時点での触媒の入口側のモデル排気ガスの温度(ライトオフ温度T50)を測定した。その結果を図14に示す。
図14からわかるように、触媒層が3層である場合(実施例1−4〜実施例1−7)では、触媒層が2層である場合(実施例1−3)よりライトオフ温度T50が低く、より浄化性能が高まったことがわかる。また、排気ガスにオイルを添加し、排気ガス浄化用触媒の被毒が促進させる状況での測定であったにもかかわらず、触媒層が3層である場合(実施例1−4〜実施例1−7)には、高い浄化性能を示した。このことから、上層にさらに別の触媒層を備えることによって、浄化性能が高まるだけではなく、触媒の被毒も抑制される。