JP5173240B2 - 顎歯模型用軟質再現歯牙 - Google Patents
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しかし、エポキシ樹脂、メラミン樹脂では切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。具体的には、天然歯は硬いために思った様に切削できない傾向にあり、更にデンチン部分は硬いが、エナメル部分は更に硬い構造となっている為、エポキシ樹脂、メラミン樹脂は軟らかく切削を多くしてしまう傾向にある。その結果、強く削ってしまい、上手く形体を作れないことも発生する可能性がある。
しかし、天然歯と切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。また、無機物粉末体の開示のみである。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−216395には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型及びその製造方法を提供することが紹介されている。歯牙模型の主要構成成分として、気孔率が40〜80%のヒドロキシアパタイト粉末と、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを、重量比で20%対80%乃至50%対50%の割合で含有しているものである。
従来の歯牙模型は、切削性において満足できる状況にない。従って、天然歯と切削性において類似する歯牙模型の開発が望まれていることが示されているものの、十分な切削感を示すものではなかった。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
本文中に「歯牙模型の作製法及び経済的な観点から如何なる硬度の素材、例えば金属、セラミクス、樹脂で形成されていてもよく、更には空洞であってもよい。」との記載があるが、切削感の観点から解決されていない。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−241498、特開平5−241499、特開平5−241500には、無機充填材の記載やハイドロキシアパタイト充填材の記載があるがいずれも樹脂を母材とするものであり、切削感の解決には至っていない。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、エナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
明細書中には、「本発明の模型歯の歯冠部表面を構成する材料としては、一般的に公知のものを用いることが可能であり、例えば、セラミックス等の磁器あるいはアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂材料や、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、フェノール、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料、さらには、これらの主原料にガラス繊維、カーボン繊維、パルプ、合成樹脂繊維等の有機、無機の各種強化繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の各種充填材、顔料や染料等の着色剤、あるいは耐候剤や帯電防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いることが出来る。」との記載があるが、好ましい材質の記載がなく、切削感を解決するものでは無かった。
天然歯牙を用いずに歯牙の切削感を体験する方法が求められれていた。特に天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があり、また、歯牙のエナメル部分からデンチン部分の切削感が変るところが求められており、当然にして、エナメル部分はエナメル質の切削感、デンチン部分はデンチン質の切削感が求められていたが、それを解決する方法は見つかっていなかった。
研究の結果、天然歯牙の切削感を出す為には無機系の焼成体を用いることが必要であり、それだけでは十分な切削感が得られない為に新たな工夫が必要であった。天然歯独特の粘り気を有する歯牙を求める要望があった。
通常天然歯牙を切削すると生体を切削する時の独特の切削感が得られる。従来の顎歯模型用歯牙ではデンチン層では顕著に現れるが歯牙の象牙細管中に含まれる有機成分がバーに纏わり付く感覚や切削を阻害する感覚は注水しながらで有ってもこのような感覚を得られることは無かった。エナメル質で有っても同様な現象から無機材料の切削感よりも粘性を感じる切削感覚が求められている。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されており、セラミックス焼成体の空隙部分に水溶性材料が含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されたデンチン部分とエナメル部分からなる顎歯模型用歯牙において、デンチン部分のセラミックス焼成体の空隙部分にワックスが含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されたデンチン部分とエナメル部分からなる顎歯模型用歯牙において、デンチン部分のセラミックス焼成体の空隙部分にタンパク系が含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体からなることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、デンチン部分とエナメル部分からなり、デンチン部分とエナメル部分を作製した後に、デンチン部分とエナメル部分を接着することを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明の接着剤が有機性樹脂組成物であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
抜去歯は生体からの材料であり衛生上の問題があるため、感染予防等の処置を取らなくても安全に用いることができ、抜去歯の様な体感ができる歯牙が求められていた。また、衛生管理も特に必要なく、腐敗の恐れもない材料が求められていた。
本顎歯模型用歯牙は人体の中で最も硬い天然歯牙の代用物質で、通常の材料では切削時に軟らかく感じてしまうのに対し、天然歯牙と同様な切削感を得ることができる。口腔内での400000回転/分という高速回転するダイヤモンド研削材(エアータービン使用)を用いた切削と同じような切削体験ができる。
更に、歯牙模型の歯冠の形状も重要であり、支台歯形成や窩洞形成の目標となり隆起部分や窩、咬頭などが正確に表現されていることが重要であり、CIMでの成形が適している。 本発明の歯牙は歯質と同じように白色、アイボリー色、乳白色、半透明色とすることができるため、よりリアルな切削体験をすることができる。好ましくは白色、アイボリー色、乳白色である。
歯牙切削時に飛散する粉塵を軽減する効果があり、模型などの粉塵による汚れを押さえることができた。勿論、練習している学生の粉塵の吸い込みも軽減することができた。天然歯牙の様に粘りけのある切削感があり、生体歯牙を切削時に発生するダイヤモンドバーへの纏わり付きの感覚を再現できた。
エナメル部分とデンチン部分の硬さの調整には、粒度を荒くする、空隙を多くする、材質を変えるなどの方法、焼成温度を変える、係留時間を変える等々の方法があるが、最も適した方法は、同一組成で粒度を変えることである。
デンチン部分の平均粒子径に対して、エナメル部分の平均粒子径を10倍以上にすることが好ましい。エナメル部分の平均粒子径が0.1〜0.5μmである場合は、デンチン部分の平均粒子径は1.0〜10.0μmに設定することが好ましい。
焼成温度に関しては組成によって異なるが、シリカ等のガラス成分が多い場合は焼成温度が800〜1200℃、アルミナの場合は1200〜1600℃の焼成温度、好ましくは1400〜1550℃の焼成温度となる。
CIM技術を用いて、エナメル部分とデンチン部分とを射出成形し、脱脂、焼成の工程を経て、焼成されたエナメル部分とデンチン部分に界面に熱硬化性樹脂や化学重合性樹脂を用いて接着することも好ましい。
本発明の空間部分に含浸させる水溶性材料は、多糖類、タンパク系の内少なくとも一つ以上であることが好ましい。水溶性材料は注水や水を予め含浸させることにより効果を発揮する事ができる。好ましくはたんぱく質である。
本発明の空間部分に含浸させる熱溶解性材料しては、ワックス系を用いる事ができる。熱溶解性材料切削時に発生する摩擦熱で効果を発揮する事ができる。
タンパク系としては約20種類の L -α-アミノ酸からなるポリペプチドを主体とする高分子化合物であればよい。組成の上から、アミノ酸だけからなる単純タンパク質と、核酸・リン酸・脂質・糖・金属などを含む複合タンパク質を用いることが好ましい。更に好ましいのはゼラチン、寒天系、コラーゲンとエラスチンである。また更に好ましくはゼラチン、寒天系である。水にどんどん溶けるのでなく、焼成体の空隙部分で形状を保つ必要があるからである。
界面活性剤は水溶性材料として用いることもできる。
界面活性剤は陰イオン系、非イオン系、陽イオン系、両性イオン系など適宜用いることができる。好ましくは陰イオン系、非イオン系である。
陰イオン系としては、脂肪酸塩(セッケン) C11H23COONa、アルファスルホ脂肪酸エステル塩(α-SFE) C10H21-CH(SO33Na)COOCH3、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS) C12H25-(C6H4)SO3Na、アルキル硫酸塩(AS)[高級アルコール系] C12H25-OSO3Na、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES) C12H25-O(CH2CH2O)3SO3Na、アルキル硫酸トリエタノールアミン
C12H25-OSO3-・+NH(CH2CH2OH)3等が用いれる。
非イオン系としては、脂肪酸ジエタノールアミド C11H23-CON(CH2CH2OH)2、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE) C12H25-O(CH2CH2O)8H、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE) C9H19-(C6H4)O(CH2CH2O)8H等が用いれる。
陽イオン系としてはアルキルトリメチルアンモニウム塩 C12H25-N+(CH3)3・Cl-、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド C12H25-N+(C8H17)(CH3)2・Cl-、アルキルピリジニウムクロリド C12H25-(N+C5H5)・Cl-等が用いれる。
両性イオン系としては、アルキルカルボキシベタイン[ベタイン系] C12H25-N+(CH3)2・CH2COO-等が用いれる。
含浸させる水溶性材料または熱溶解性材料をビーカーに入れ、適当な温度になるように加温して、粘度を下げる。適度の界面活性剤を入れる。粘度が下がった所で、セラミックス焼成体を投入し、真空デシケータ中に設置する。真空デシケータ中の空気を抜いていき、セラミックス焼成体中の空気を外へ出していく、減圧が進むにつれて、焼成体表面に空気に泡が出てきて内部の空気が抜けた事が分かる。様子を見て、空気が出たところでデシケータに空気を静かに戻すことで含浸する。
歯牙形体の形状を射出成形できる金型を作製した。歯牙の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が26%、SiO2が44%、平均粒径3.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製された歯牙部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1300℃、係留時間10分)として焼成体1を得た。
(エナメル部分とデンチン部分の焼成体作製)
歯牙形体のエナメル部分とデンチン部分のメス型の形状を射出成形できる金型を作製した。エナメル部分もデンチン部分も成型後、脱脂、焼成により収縮が発生する為、その部分を事前に大きく計算して金型を作製した。材料ごとに金型を調整して実施した。
エナメル部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたエナメル部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1550℃、係留時間10分)として焼成体2−1を得た。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径5.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたデンチン部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1400℃、係留時間15分)として焼成体2−2を得た。
得られた焼成体1、2−1、2−2を以下の各浸漬材料中に包埋し、真空容器に入れ、真空にすることで焼成体の空隙部分に十分に含浸したことを確認し、焼成体2−1、2−2は接合し、エポキシ樹脂の接着材で接着させた。
作製された歯牙の切削感を確認した。焼成体はそれぞれ30個作製し試験を行なった。
パラフィンワックス(日本精株式会社、パラフィンワックス
標準品):浸漬前に十分に加熱し、液化していることを確認した。
蜜蝋(みざらし密ロウワックス):浸漬前に十分に加熱し、液化していることを確認した。
セルロース(信越化学工業株式会社、SM-8000):触媒を添加したシリコン樹脂を用いた。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
コンニャクマンナン(伊那食品工業):適当な硬さになるようにお湯で溶かし、加熱した。デシケータに入れる前に凝固剤を投入した。
寒天(伊那食品工業):適当な硬さになるようにお湯で溶かし、加熱した。
ゼラチン(新田ゼラチン):適当な硬さになるようにお湯で溶かし、加熱した。
比較例1,2は含浸させていない焼成体を用いた。
○(切削感):デンチンとエナメルとが十分に表現できていなかった。エナメル部分が柔らかかったが、天然歯と同様な粘りけを感じた。
○(切削ネバさ):粘りけというより、若干の弾性感があった。
△(切削ネバさ):天然歯に比べ、粘りけが軟かく感じた。
◎(生体的ウエット感):天然歯同様に生体のウエット感があり、肉質を感じるウエット感がある。良好な結果であった。
○(生体的ウエット感):天然歯同様に生体のウエット感があったが、肉質感はあるものの◎に比べてやや劣る。
△(生体的ウエット感):天然歯に比べ、生体のウエット感が異なる様に感じた。
×:切削時の粘りが感じられず、粉塵が大きく飛散した。
実施例3、9は比較例1、2と比べて粘りが感じられ天然歯牙に近い切削感が得られた。注水によりセルロースの溶出が見られたが、問題なく試験を終えた。切削された粉塵も比較例1と比べて少なく、飛散も少なかった。しかし、生体のウエット感が異なる様に感じた。
実施例4、5、6、10、11,12は実施例3、9と比べて粘りが感じられ天然歯牙と同様な切削感が得られた。象牙細管からの体液の感じも近似していた。切削された粉塵も比較例1と比べて少なく、飛散も少なかった。注水下でも、容易に切削体験が行なえた。注水下という実際の臨床使用環境にて容易に歯牙切削練習をできることを確認した。また、天然歯同様に生体のウエット感があり、良好な結果であった。
(実施例13)
浸漬材料として、ヘット(牛脂)を用いて焼成体1,2に浸漬して歯牙を作製した。浸漬前に十分に加熱し、液化していることを確認した。24時間冷却後、切削した結果、切削感や切削ネバさ、生体っぽいウエット感も良かった。特に生体っぽいウエット感については他の材料に比べて優れていた。切削時の滑る感じや強く切削し過ぎた場合の臭いまでも近かった。
Claims (5)
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されており、セラミックス焼成体の空隙部分にワックスまたは油脂が含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙。
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されたデンチン部分とエナメル部分からなる顎歯模型用歯牙において、デンチン部分のセラミックス焼成体の空隙部分にワックスまたは油脂が含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙。
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されており、セラミックス焼成体の空隙部分に水溶性材料が含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙。
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙がセラミックス焼成体から作製されたデンチン部分とエナメル部分からなる顎歯模型用歯牙において、デンチン部分のセラミックス焼成体の空隙部分に水溶性材料が含浸していることを特徴とする顎歯模型用歯牙。
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体からなることを特徴とする請求項1〜4記載の顎歯模型用歯牙。
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