JP2008003568A - 無機粉末多結晶焼成体のエナメル層を有する顎歯模型用歯牙及びその製造方法及びその応用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙のエナメル部分が無機粉末多結晶焼成体から作製され、デンチン部分が樹脂またはコンポジットから作製され、無機粉末多結晶焼成体の組成がAl2O3粉末焼成体からなり、歯牙デンチン部分の組成がアクリル系、エポキシ系、メラミン系の何れかからなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.1〜1.0μmμmのAl2O3粉末焼成体からなり、エナメルの焼成温度が1300〜1600℃であることを特徴とする顎歯模型用歯牙とした。
【選択図】なし
Description
しかし、エポキシ樹脂、メラミン樹脂では切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。具体的には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂は軟らかく切削を多くしてしまう傾向にあり、天然歯は硬いために思った様に切削できない傾向にあった。その結果、強く削ってしまい、上手く形態を作れないことも発生する可能性がある。
しかしながら、エナメル質層が金雲母結晶やリチア・アルミナ・シリカ系結晶にて構成されたものでは天然歯に比べ、切削感が硬すぎるため使用に耐える物ではなく、更に象牙質認識層は接着性レジンで形成されている為、接着剤の切削感が柔らかすぎる為、使用に耐える物ではなかった。
またこれらのガラス質の歯牙ではチッピング等が発生し、歯科治療練習用の歯牙としては十分に満足のできるものではなかった。
しかし、天然歯と切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。また、無機物粉末体の開示のみである。
特開平5−216395には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型及びその製造方法を提供することが紹介されている。歯牙模型の主要構成成分として、気孔率が40〜80%のヒドロキシアパタイト粉末と、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを、重量比で20%対80%乃至50%対50%の割合で含有しているものである。
従来の歯牙模型は、切削性において満足できる状況にない。従って、天然歯と切削性において類似する歯牙模型の開発が望まれていることが示されているものの、十分な切削感を示すものではなかった。
本文中に「歯牙模型の作製法及び経済的な観点から如何なる硬度の素材、例えば金属、セラミクス、樹脂で形成されていてもよく、更には空洞であってもよい。」との記載があるが、切削感の観点から解決されていない。
特開平5−241498、特開平5−241499、特開平5−241500には、無機充填材の記載やハイドロキシアパタイト充填材の記載があるがいずれも樹脂を母材とするものであり、切削感の解決には至っていない。
明細書中には、「本発明の模型歯の歯冠部表面を構成する材料としては、一般的に公知のものを用いることが可能であり、例えば、セラミックス等の磁器あるいはアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂材料や、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、フェノール、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料、さらには、これらの主原料にガラス繊維、カーボン繊維、パルプ、合成樹脂繊維等の有機、無機の各種強化繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の各種充填材、顔料や染料等の着色剤、あるいは耐候剤や帯電防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いることが出来る。」との記載があるが、好ましい材質の記載がなく、切削感を解決するものでは無かった。
顎歯模型はこれらの課題を抱えているにも関わらず、研究報告されているものは殆ど見当たらない。
天然歯の切削感を体験するために、抜去歯を切削するなどの工夫は見られた。抜去歯は生体からの材料であり衛生上の問題があり、感染予防を十分に行なわなければならなかった。また、衛生管理も十分に行なわないと、腐敗の問題があり、保存にも十分な注意が必要であった。
天然歯牙を用いずに歯牙の切削感を体験する方法が求められ、天然歯と同じような切削感を得られる顎歯模型用の歯牙が求められている。
歯牙のエナメル部分が無機粉末多結晶焼成体から作製され、デンチン部分が樹脂から作製されることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙のエナメル組成がアルミナから作製され、デンチン組成が樹脂から作製されることを特徴とする顎歯模型用歯牙である事が好ましい。
歯牙デンチン部分の組成が樹脂からなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径2〜5μmのAl2O3粉末焼成体からなることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
歯牙デンチン部分の組成がアクリル系、エポキシ系、メラミン系の何れかからなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.1〜1.0μmμmのAl2O3粉末焼成体からなり、エナメルの焼成温度が1300〜1600℃であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
歯牙エナメル部分の組成がAl2O3粉末であって、バインダーと混練し成型機で成形し焼成しエナメル焼成体する工程、焼成したエナメル焼成体を金型内に保持して樹脂を射出してデンチンを成型する歯牙形態作製工程を含むことを特徴とするの顎歯模型用歯牙の製造方法である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、エナメル部分が無機粉末焼成体からることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、エナメル部分がアルミナから作製されることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用のエナメル歯牙であって、組成が一次粒子径0.1〜1.0μmの無機粉末焼成体からなることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、エナメル部分の組成が一次粒子径0.2〜0.5μmのAl2O3粉末焼成体からなることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、エナメル部分の組成が一次粒子径0.2〜0.5μmのAl2O3粉末焼成体からなり、エナメルの焼成温度が1300〜1600℃であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙エナメル部分のビッカース硬度が300〜1000であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
このエナメル材料で歯牙全体を作製してもよい。
本顎歯模型用歯牙は人体の中で最も硬い天然歯牙の代用物質で、通常の材料では切削時に軟らかく感じてしまうのに対し、天然歯牙と同様な切削感を得ることができる。口腔内での400000回転/分という高速回転するダイヤモンド研削材(エアータービン使用)を用いた切削と同じような切削体験ができる。
更に、歯牙模型の歯冠の形状も重要であり、支台歯形成や窩洞形成の目標となり隆起部分や窩、咬頭などが正確に表現されていることが重要であり、CIMでの成形が適している。
本発明の歯牙は無機系顔料を用いることによって、歯質と同じように白色、アイボリー色、乳白色とすることができ、よりリアルな切削体験をすることができる。
エナメル質の硬さを容易に再現でき、デンチン質とエナメル質の硬さの違いを容易に再現することができる。
本発明のエナメル組成に用いられる無機粉末多結晶焼成体はアルミナ系、ジルコニア系、シリカ系、窒化アルミ、窒化ケイ素などのセラミックスから作製される事が好ましい。また、アルミナ系、ジルコニア系で作製されることは好ましい。アルミナ系、ジルコニア系とはアルミナまたはジルコニアが焼成体組成の60%〜100%、好ましくは80%〜100%、更に好ましくは95%〜100%であることである。特にアルミナの組成が50%〜100%、好ましくは70%〜100%、更に好ましくは90%〜100%であることである。歯牙の組成がアルミナ粉末から成形されるアルミナ焼成体であることが好ましい。
歯牙組成にアルミナ焼成体の切削感を損なわない程度にシリカを代表とする金属酸化物を添加することは妨げない。歯牙デンチン部分と歯牙エナメル部分とのアルミナ一次粒子径を変えることで、切削感の違いを表すことが可能である。
エナメル部分の好ましい焼成温度は1400〜1600℃である。焼成温度は切削感と密接な関係があり、粒度や原材料ロットによって、調整しなければならない。同様に焼成温度での係留時間も切削感と密接な関係があり、粒度や原材料ロットによって、調整しなければならない。
歯牙デンチン部分および歯牙エナメル部分のビッカース硬度が300〜1000である。
CIMとは、次の工程で製造される成型技術である。
(1)アルミナを熱可塑性樹脂やワックスなどの樹脂(600℃ぐらいまでに熱で分解するもの)で練和し、ペレットを作製する。
(2)射出成形用の金型を作製し、(1)で作製したペレットを射出成型する。
(3)成型後、樹脂を脱脂(温度を上げて、樹脂成分を分解すること)する。
(4)次に、残った無機粉末体を焼成し、形体付与ができるまで焼き上げ成形する。
本技術を用いて、歯牙を作製することは、成形性などを鑑み、最も適した方法である。
本発明のデンチン部分に用いられる樹脂組成は、従来から用いられている樹脂を利用することができ、この樹脂に無機粉末を混合して用いる事ができる。
無機粉末多結晶体として石英、無定形シリカ、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリンの0.2〜3μmを利用して、エナメル形状の無機粉末多結晶焼成体も作製できた。
熱可塑性樹脂とは、熱を加えることにより成形できる程度の熱可塑性を得ることの出来る樹脂のことを指し、熱硬化性樹脂とは熱を加えることにより架橋が進み硬化する樹脂を指します。具体的にはアクリル系、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリアセタール系、飽和ポリエステル系、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなど適宜使用できる。
特に、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、ポリアミド系樹脂が好ましい。
これらの熱可塑性樹脂に架橋材を混合することにより、熱硬化性樹脂の様に好ましい態様となる。即ち、切削時に発生する熱により溶解しないで、歯牙切削の練習をすることができる。
無機粉末とは、セラミック、ガラスを中心とした平均粒子径1.0〜100μmのものであり、特に組成は限定されない。好ましい平均粒径は0.1〜3.0μmである。また、微粒子フィラーを混合することができる。
具体的な無機粉末は石英、無定形シリカ、クレー、酸化アルミニウム、タルク、雲母、カオリン、ガラス、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等の無機物、具体的な有機粉末はポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロン等の高分子またはオリゴマー等の有機物;および有機−無機の複合物等が好適に使用できる。
これらの粉末は単独または2種以上を使用しても何等問題はない。またこれらの粉末は、公知として用いられているチタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤やシランカップリング剤で表面処理したものを使用するのがより好ましい。混合割合は、必要に応じて適宜選択でき、例えば1〜95%の割合となる範囲から選べばよい。好ましくは60〜90%である。
デンチン部分にX線造影性を付与することは好ましい、X線造影性はSrO、BaO、ZnO、ZrO2、La2O3および他の重金属元素酸化物を含有させることにより達成することができる。
デンチン部分にX線造影性を持たせることにより、X線撮影で窩洞形状の状態を後で確認することができる。切削後の評価に良いものである。エナメル部分とデンチン部分のX線造影力を配合金属により変えることにより、エナメル及びデンチンを切削した折に切削状況を掴むことができる。
これら無機粉末、有機粉末の平均粒子径は、0.1〜30μm、好ましくは1.0〜10μm、更に好ましくは1.0〜5.0μmである。
一次粒子径3.0μmのAl2O3粉末700gとステアリン酸300g(30%)を加温混練し、エナメル形状の金型に射出した。射出した成形体を600℃3時間にて脱脂し、1500℃で焼成した。焼成温度での係留時間は15分とした。自然放冷した結果、エナメル部分が完成した。
完成したエナメル部分を歯牙形状の金型に納め、残りのデンチン部分にエポキシ樹脂を射出して完成とした。試験結果を表2に示す。試験には歯科用ダイヤモンドバーを用いた。
実施例1に倣い、実施例2〜6、比較例1〜5を行なった。実施例1と異なる点を表1に示し、試験結果を表2に示す。
各評価は歯牙模型の切削において、支台歯成形や窩洞成形が天然歯のような切削感があるかどうかで確認した。天然歯牙の様にエナメル質と象牙質との間で、の切削感覚が変わることや造形時の切削感が天然歯牙と近似しているかどうかで評価した。
◎は天然歯牙と近似している場合の評価であり、×は、天然歯牙と掛け離れており、硬すぎるかまたは軟かすぎる場合に評価し、市販の樹脂歯牙程度の使用感である場合の評価とした。〇はその中間あたりの評価とした。
デンチンエナメル移行性とは、デンチン層とエナメル層の界面を研削材は移行する折に切削感が天然歯に近似しているかどうかを確認した。
比較例1はエナメルの焼成温度が低い為に十分な焼成が行なわれず、全体として柔らかな切削感となった。
比較例2はエナメルの焼成温度が高い為に過剰な焼成が行なわれ、全体として硬い切削感となった。切削時に小さなチッピング(割れ)が見られた。
比較例3はエナメル層が軟かくなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
比較例4はエナメル層が硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
比較例5はエナメル層が比較例4よりも遥かに硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
エナメル部分を実施例2〜6、比較例1〜5と同一組成で実施し、デンチン部分にアルミナ粉末75%、エポキシ樹脂25%を混合したコンポジットを用いた実施例および比較例を以下で示す。成形方法は実施例1に従い実施した。金型は歯牙の金型を用いた。試験結果を表3に示す。
実施例7〜10は成形性、切削性、支台歯形成性、窩洞形成性、共に良好に作製できた。デンチンエナメル移行性については一体成形であるため見られないが、口腔内の治療の練習として十分に耐え得るものであった。デンチンの切削性が実施例1〜6に比べて良くなった。比較例6は焼成温度が低い為に十分な焼成が行なわれず、全体として柔らかな切削感となった。比較例7はエナメル層が焼成温度が高い為に過剰な焼成が行なわれ、全体として硬い切削感となった。切削時に小さなチッピング(割れ)が見られた。比較例8はエナメル層が軟かくなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。比較例9はエナメル層が硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。比較例10は比較例9よりもエナメル層が遥かに硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
デンチン部分がアルミナのコンポジットとなったことから、デンチンの切削性は向上したと共に。エナメル質からデンチン質への移行性も向上した。
エナメル部分を実施例1と同一組成で実施し、デンチン部分にアルミナ粉末55%、酸化亜鉛20%、エポキシ樹脂25%を混合したコンポジットを用いた実施例を作製した。成形方法は実施例1に従い実施した。金型は歯牙の金型を用いた。試験として、窩洞形成し、歯牙模型を歯科用レントゲンで撮影したところ、デンチン形状が容易に撮影することができた。
(実施例13)
一次粒子径3.0μmのジルコニア(ZrO2)粉末500g、シリカ(SiO2)粉末200gとステアリン酸300g(30%)を加温混練し、エナメル形状の金型に射出した。射出した成形体を600℃3時間にて脱脂し、1300℃で焼成した。焼成温度での係留時間は2時間とした。自然放冷した結果、エナメル部分が完成した。他は実施例1と同様に歯牙を作製した。
アルミナを主成分とする歯牙に比べると、切削感が劣る部分もある。しかし、樹脂やコンポジットのエナメル歯牙に比べると、容易に削れ過ぎることも無く、軟かくなく、天然歯牙に近い切削感であった。また、ガラス質に比べると、チッピングを起こすことも無く、天然歯牙に近い切削感であった。デンチンへの移行部分も今までの歯牙模型には無い、エナメル質と象牙質の移行感覚であり、天然歯牙を利用しなくても治療の練習をすることができた。
Claims (4)
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙のエナメル部分が無機粉末多結晶焼成体から作製され、デンチン部分が樹脂またはコンポジットから作製されることを特徴とする顎歯模型用歯牙。 - 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
無機粉末多結晶焼成体の組成がAl2O3粉末焼成体からなることを特徴とする請求項1記載の顎歯模型用歯牙。 - 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙デンチン部分の組成がアクリル系、エポキシ系、メラミン系の何れかからなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.1〜1.0μmμmのAl2O3粉末焼成体からなり、エナメルの焼成温度が1300〜1600℃であることを特徴とする請求項2記載の顎歯模型用歯牙。 - 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙エナメル部分の組成がAl2O3粉末であって、バインダーと混練し成型機で成形し焼成しエナメル焼成体する工程、焼成したエナメル焼成体を金型内に保持して樹脂を射出してデンチンを成型する歯牙形態作製工程を含むことを特徴とするの顎歯模型用歯牙の製造方法。
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