JP5236203B2 - 顎歯模型用の歯牙 - Google Patents
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Description
しかし、エポキシ樹脂、メラミン樹脂では切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。具体的には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂は軟らかく切削を多くしてしまう傾向にあり、天然歯は硬いために思った様に切削できない傾向にあった。その結果、強く削ってしまい、上手く形態を作れないことも発生する可能性がある。
しかしながら、エナメル質層が金雲母結晶やリチア・アルミナ・シリカ系結晶にて構成されたものでは天然歯に比べ、切削感が硬すぎるため使用に耐える物ではなく、更に象牙質層は接着性レジンで形成されている為、接着剤の切削感が柔らかすぎる為、使用に耐える物ではなかった。
しかし、天然歯と切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。また、無機物粉体の開示のみである。
特開平5−216395には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型及びその製造方法を提供することが紹介されている。歯牙模型の主要構成成分として、気孔率が40〜80%のヒドロキシアパタイト粉末と、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを、重量比で20%対80%乃至50%対50%の割合で含有しているものである。
従来の歯牙模型は、切削性において満足できる状況にない。従って、天然歯と切削性において類似する歯牙模型の開発が望まれていることが示されているものの、十分な切削感を示すものではなかった。
本文中に「歯牙模型の作製法及び経済的な観点から如何なる硬度の素材、例えば金属、セラミクス、樹脂で形成されていてもよく、更には空洞であってもよい。」との記載があるが、切削感の観点から解決されていない。
特開平5−241498、特開平5−241499、特開平5−241500には、無機充填材の記載やハイドロキシアパタイト充填材の記載があるがいずれも樹脂を母材とするものであり、切削感の解決には至っていない。
明細書中には、「本発明の模型歯の歯冠部表面を構成する材料としては、一般的に公知のものを用いることが可能であり、例えば、セラミックス等の磁器あるいはアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂材料や、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、フェノール、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料、さらには、これらの主原料にガラス繊維、カーボン繊維、パルプ、合成樹脂繊維等の有機、無機の各種強化繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の各種充填材、顔料や染料等の着色剤、あるいは耐候剤や帯電防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いることが出来る。」との記載があるが、好ましい材質の記載がなく、切削感を解決するものでは無かった。
顎歯模型はこれらの課題を抱えているにも関わらず、研究報告されているものは殆ど見当たらない。
天然歯の切削感を体験するために、抜去歯を切削するなどの工夫は見られた。抜去歯は生体からの材料であり衛生上の問題があり、感染予防を十分に行なわなければならなかった。また、衛生管理も十分に行なわないと、腐敗の問題があり、保存にも十分な注意が必要であった。
天然歯牙を用いずに歯牙の切削感を体験する方法が求められ、天然歯と同じような切削感を得られる顎歯模型用の歯牙が求められている。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径1.0〜8μmのAl2O3粉末焼成体からなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.1〜1.0μmのAl2O3粉末焼成体からなることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径2〜5μmのAl2O3粉末焼成体からなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.2〜0.5μmのAl2O3粉末焼成体からなることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径2〜5μmのAl2O3粉末焼成体からなり、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.2〜0.5μmのAl2O3粉末焼成体からなり、エナメルデンチン共に焼成温度が1300〜1600℃であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙デンチン部分および歯牙エナメル部分のビッカース硬度が300〜1000であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径2〜5μmのAl2O3粉末をバインダーで混練し、成型器で成形し焼成する工程、歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.2〜0.5μmのAl2O3粉末をバインダーで混練し、成型器で成形し焼成する工程を含むことを特徴とするの顎歯模型用歯牙である。
本顎歯模型は人体の中で最も硬い天然歯牙の代用物質で、通常の材料では切削時に軟らかく感じてしまうのに対し、天然歯牙と同様な切削感を得ることができる。口腔内での400000回転/分という高速回転するダイヤモンド研削材(エアータービン使用)を用いた切削と同じような体験ができる。
更に、歯牙模型の歯冠の形状も重要であり、支台歯形成や窩洞形成の目標となり隆起部分や窩、咬頭などが正確に表現されていることが重要であり、CIMでの成形が適している。
本発明の歯牙は歯質と同じように無機系顔料を用いることによって、白色、アイボリー色、乳白色とすることができ、よりリアルな切削体験をすることができる。
歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径1.0〜8.0μmのAl2O3粉末から焼成することであり、好ましくは一次粒子径2.0〜5.0μmのAl2O3粉末から焼成することであり、より好ましくは一次粒子径2.0〜3.0μmのAl2O3粉末から焼成することである。
歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径に比べ、歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径が、3倍〜20倍程度大きいことが好ましい。
エナメルデンチン共に1300〜1600℃の焼成温度で焼成する。
エナメル部分の好ましい焼成温度は1400〜1600℃であり、デンチン部分の好ましい焼成温度は1300〜1500℃である。焼成温度は切削感と密接な関係があり、粒度や原材料ロットによって、調整しなければならない。同様に焼成温度での係留時間も切削感と密接な関係があり、粒度や原材料ロットによって、調整しなければならない。
歯牙デンチン部分および歯牙エナメル部分のビッカース硬度が300〜600である。
本発明をCIM技術で作成することが好ましい。
CIMとは、次の工程で製造される成型技術である。
(1)アルミナを熱可塑性樹脂やワックスなどの樹脂(1000℃ぐらいまでに熱で分解するもの)で練和し、ペレットを作製する。
(2)一定の形状の射出成形用の金型を作製し、(1)で作製したペレットを射出成型する。
(3)成型後、樹脂を脱脂(温度を上げて、樹脂成分を分解すること)する。
(4)次に、その脱脂体を所定温度で焼成し、所望の焼成体を得る。
本技術を用いて、歯牙を作製することは、成形性などを鑑み、最も適した方法である。
一次粒子径3.0μmのAl2O3粉末700gとステアリン酸300g(30%)を加温混練し、デンチン形状の金型に射出した。射出した成形体を600℃3時間にて脱脂し、1400℃で焼成した。焼成温度での係留時間は15分とした。自然放冷した結果、デンチン部分が完成した。
一次粒子径0.3μmのAl2O3粉末700gとステアリン酸300g(30%)を加温混練し、エナメル形状の金型に射出した。射出した成形体を600℃3時間にて脱脂し、1500℃で焼成した。焼成温度での係留時間は15分とした。自然放冷した結果、エナメル部分が完成した。
完成したエナメルとデンチンをエポキシ樹脂で接着して完成とした。試験結果を表2に示す。試験には歯科用ダイヤモンドバーを用いた。
実施例1に倣い、実施例2〜6、比較例1〜6を行なった。実施例と異なる点を表1に示し、試験結果を表2に示す。
デンチンエナメル移行性とは、デンチン層とエナメル層の界面を研削材は移行する折に切削感が天然歯に近似しているかどうかを確認した。
比較例1は焼成温度が低い為に十分な焼成が行なわれず、全体として柔らかな切削感となった。特にデンチンエナメル移行性は感じられなかった。
比較例2は焼成温度が高い為に過剰な焼成が行なわれ、全体として硬い切削感となった。切削時に小さなチッピング(割れ)が見られた。
比較例3はエナメル層が軟かく、デンチン層が硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
比較例4はエナメル層デンチン層共に硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
比較例5はエナメル層デンチン層共に比較例4よりも遥かに硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
デンチン部分およびエナメル部分を同一組成で実施した実施例および比較例を以下で示す。成形方法は実施例1に従い表3の条件で実施した。金型は歯牙の金型を用いた。試験結果を表4に示す。
実施例7〜11は成形性、切削性、支台歯形成性、窩洞形成性、共に良好に作製できた。デンチンエナメル移行性については一体成形であるため見られないが、口腔内の治療の練習として十分に耐え得るものであった。
比較例6は焼成温度が低い為に十分な焼成が行なわれず、全体として柔らかな切削感となった。
比較例7は焼成温度が高い為に過剰な焼成が行なわれ、全体として硬い切削感となった。切削時に小さなチッピング(割れ)が見られた。
比較例8は軟かくなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
比較例9は硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
比較例10は比較例9よりも遥かに硬くなった。天然歯の切削感と大きくかけ離れた。
Claims (1)
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、
歯牙デンチン部分の組成が一次粒子径2.0〜5.0μmのAl2O3粉末焼成体からなり、
歯牙エナメル部分の組成が一次粒子径0.1〜0.8μmのAl2O3粉末焼成体からなり、
前記歯牙エナメル部分及び前記歯牙デンチン部分は共に焼成温度が1300〜1600℃であり、
前記歯牙エナメル部分の組成の一次粒子径と、前記歯牙デンチン部分の組成の一次粒子径との比が、1:4乃至1:20の範囲にあり、
前記歯牙デンチン部分及び前記歯牙エナメル部分のビッカース硬度が300〜600であることを特徴とする顎歯模型用の歯牙。
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