JP5236202B2 - 顎歯模型用の歯牙 - Google Patents
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しかし、エポキシ樹脂、メラミン樹脂では切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。具体的には、エポキシ樹脂、メラミン樹脂は軟らかく切削を多くしてしまう傾向にあり、天然歯は硬いために思った様に切削できない傾向にあった。硬い天然歯でも、デンチン部分は硬いが、エナメル部分は更に硬い構造となっている。その結果、強く削ってしまい、上手く形体を作れないことも発生する可能性がある。
しかし、天然歯と切削感が異なることから支台歯形成や窩洞形成の練習をしても実際の口腔内での作業をした場合では異なる切削感、作業性から当惑する事が多かった。また、無機物粉末体の開示のみである。特にエナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−216395には、天然歯と極めて類似した切削性を有し、歯科教育切削実習用として好適な歯牙模型及びその製造方法を提供することが紹介されている。歯牙模型の主要構成成分として、気孔率が40〜80%のヒドロキシアパタイト粉末と、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂とを、重量比で20%対80%乃至50%対50%の割合で含有しているものである。
従来の歯牙模型は、切削性において満足できる状況にない。従って、天然歯と切削性において類似する歯牙模型の開発が望まれていることが示されているものの、十分な切削感を示すものではなかった。特にエナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
本文中に「歯牙模型の作製法及び経済的な観点から如何なる硬度の素材、例えば金属、セラミクス、樹脂で形成されていてもよく、更には空洞であってもよい。」との記載があるが、切削感の観点から解決されていない。特にエナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
特開平5−241498、特開平5−241499、特開平5−241500には、無機充填材の記載やハイドロキシアパタイト充填材の記載があるがいずれも樹脂を母材とするものであり、切削感の解決には至っていない。特にエナメル部分とデンチン部分の切削性の違いを示せる歯牙模型ではなかった。
明細書中には、「本発明の模型歯の歯冠部表面を構成する材料としては、一般的に公知のものを用いることが可能であり、例えば、セラミックス等の磁器あるいはアクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルスチレンブタジエン共重合体(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂材料や、メラミン、ユリア、不飽和ポリエステル、フェノール、エポキシ等の熱硬化性樹脂材料、さらには、これらの主原料にガラス繊維、カーボン繊維、パルプ、合成樹脂繊維等の有機、無機の各種強化繊維、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ等の各種充填材、顔料や染料等の着色剤、あるいは耐候剤や帯電防止剤等の各種添加剤を添加したものを用いることが出来る。」との記載があるが、好ましい材質の記載がなく、切削感を解決するものでは無かった。
顎歯模型はこれらの課題を抱えているにも関わらず、研究報告されているものは見当たらない。
天然歯牙を用いずに歯牙の切削感を体験する方法が求められれていた。特に歯牙のエナメル部分からデンチン部分の切削感が変るところが求められており、当然にして、エナメル部分はエナメル質の切削感、デンチン部分はデンチン質の切削感が求められていたが、それを解決する方法は見つかっていなかった。
研究の結果、天然歯牙の切削感を出す為には無機系の焼成体を用いることが必要であるが無機系の材料の硬さを制御することは難しいためにこれらを制御しながら、エナメル部分およびデンチン部分を製造することは難しかった。
エナメル部分とデンチン部分を接着する接着層が厚いと異なる切削感を感じる。その結果、天然歯牙と大きく掛け離れた歯牙模型となる。
本発明の接着材が有機性樹脂組成物であることを特徴とする顎歯模型用歯牙である。
本発明は治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、デンチン部分およびエナメル部分が無機粉末焼成体からなることを特徴とするの顎歯模型用歯牙である。
更に接着材の厚みを1〜500μにすることが好ましい。更に好ましくは1〜300μmであり、更に、1〜200μmにすることが好ましい。また更に、1〜100μmにすることが好ましい。
接着厚みを薄くすることで、無機粉末焼成体のデンチン部分に容易に切削が移り、天然歯牙との切削感が近似する。
抜去歯は生体からの材料であり衛生上の問題があるため、感染予防等の処置を取らなくても安全に用いることができ、抜去歯の様な体感ができる歯牙が求められていた。また、衛生管理も特に必要なく、腐敗の恐れもない材料が求められていた。
本発明の歯牙を用いて支台歯形成、窩洞形成をすることによって、一早く天然歯牙と同様な切削感を体験でき、形成体験が容易に行える。また、これらの形成技術を早く取得することができる。
本顎歯模型用歯牙は人体の中で最も硬い天然歯牙の代用物質で、通常の材料では切削時に軟らかく感じてしまうのに対し、天然歯牙と同様な切削感を得ることができる。口腔内での400000回転/分という高速回転するダイヤモンド研削材(エアータービン使用)を用いた切削と同じような切削体験ができる。
更に、歯牙模型の歯冠の形状も重要であり、支台歯形成や窩洞形成の目標となり隆起部分や窩、咬頭などが正確に表現されていることが重要であり、CIMでの成形が適している。
本発明の歯牙は歯質と同じように白色、アイボリー色、乳白色、半透明色とすることができるため、よりリアルな切削体験をすることができる。好ましくは白色、アイボリー色、乳白色である。
接着材の軟質な感覚を味わうことなく天然歯牙模型の切削を体験できる。スムーズなエナメル部分からデンチン部分への切削を体感できる。
本発明の接着に用いられる樹脂は熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、化学重合性樹脂を用いることができ、その中で、熱硬化性樹脂、化学重合性樹脂が好ましい。更に、セラミック接着材、エポキシ樹脂が好ましい。
本発明に求められる接着は、エナメル部分とデンチン部分が全体が接着していることで、一部でも接着していない部分があったり、切削感に影響を与えるような大きな気泡があることは好ましくない。
エナメル部分とデンチン部分共に、無機粉末焼成体であることが好ましい。
エナメル部分とデンチン部分の硬さの調整には、粒度を荒くする、空隙を多くする、材質を変えるなどの方法、焼成温度を変える、係留時間を変える等々の方法があるが、最も適した方法は、同一組成で粒度を変えることである。
デンチン部分の平均粒子径に対して、エナメル部分の平均粒子径を10倍以上にすることが好ましい。エナメル部分の平均粒子径が1.0〜10.0μmである場合は、デンチン部分の平均粒子径は0.1〜0.5μmに設定することが好ましい。
焼成温度に関しては組成によって異なるが、シリカ等のガラス成分が多い場合は焼成温度が800〜1200℃、アルミナの場合は1200〜1600℃の焼成温度、好ましくは1400〜1550℃の焼成温度となる。
CIM技術を用いて、エナメル部分とデンチン部分とを射出成形し、脱脂、焼成の工程を経て、焼成されたエナメル部分とデンチン部分に界面に熱硬化性樹脂や化学重合性樹脂を用いて接着することも好ましい。
また、ポリスルホン系、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなども適宜使用できる。特に、アクリル系、が好ましい。
接着材に用いる樹脂は熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、化学重合性樹脂の中で、熱硬化性樹脂、化学重合性樹脂が好ましい。
エナメル部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が26%、SiO2が44%、平均粒径0.25μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたエナメル部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1300度、係留時間10分)として焼結体1−1を得た。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が26%、SiO2が44%、平均粒径3.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたデンチン部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1000度、係留時間10分)として焼結体1−2を得た。
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたエナメル部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1550度、係留時間10分)として焼結体2−1を得た。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径5.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製されたデンチン部分の形をした射出体を、脱脂、焼成(1400度、係留時間15分)として焼結体2−2を得た。
(エポキシ樹脂)
触媒を添加したエポキシ樹脂を作製したエナメル部分とデンチン部分の界面に塗り接着した。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
(セラミック接着材)
セラミック接着材を作製したエナメル部分とデンチン部分の界面に塗り接着した。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
(セメント材料)
粉液混練タイプのセメントで、イオン性ポリマーとガラスを反応させて硬化するタイプのセメント材料を用いた。エナメル部分とデンチン部分の界面に塗り接着した。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
(α-シアノアクリレートモノマー系接着材)(略称:α接着材)
通称アロンアルファーとして売られている接着材で、エナメル部分とデンチン部分の界面に塗り接着した。72時間放置後、ダイヤモンドバーで切削感を確認した。
○:十分に接着していることは確認できたが、一部チッピングが発生した。
切削に関しては両者良好な状況であった。セメント材料やα接着剤はチッピングが見られたものの、天然歯牙と同様な切削感を得られた。
歯牙形体のエナメル部分とデンチン部分のメス型の金型を掘出し、目的形状を作製した。比較例では2層構造にできる射出成形金型を作製し、デンチン部分とエナメル部分を成形した成形体を得られる様にした。
エナメル部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が26%、SiO2が44%、平均粒径0.25μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成形した。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が26%、SiO2が44%、平均粒径3.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、エナメル部分に続いて歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製された歯牙の形をした射出体を、脱脂、焼成(1100度、係留時間10分)として焼結体3を得た。焼成体は30個作製し試験を行なった。
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径0.3μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、歯牙形体の金型に、射出成型した。
デンチン部分の原料としてのCIM用アルミナ
ペレット(Al2O3が68%、SiO2が2%、平均粒径5.0μm、ステアリン酸30%)1kgを用いて、エナメル部分に続いて歯牙形体の金型に、射出成形し射出体を得た。
作製された歯牙の形をした射出体を、脱脂、焼成(1500度、係留時間15分)として焼結体4を得た。焼成体は30個作製し試験を行なった。
(実施例3)
実施例1、2と同じ様に作製して得られた焼結体1−1,1−2,2−1,2−2のエナメル部分とデンチン部分を低融点ガラス粉末を用いて焼成して接合して切削感を確認した。
ガラス粉末にヘラウス社製のIP9021(低融点ガラス、575℃焼成)を用いた場合を焼成体5、IP9049(低融点ガラス、610℃焼成)を用いた場合を焼成体6とした。
焼結体5、6は焼成により、ガラス質が溶け、デンチン部分とエナメル部分が接着されたが、切削時に界面のガラス部分に亀裂が入り、ガラス質の接着層から剥離やチッピングが発生した。
実施例1、2の様に接着性やチッピングなどに課題を残すものの、切削感については多大な効果があった。
実施例1、2と同じ様に作製して得られた焼結体1−1,1−2,2−1,2−2のエナメル部分とデンチン部分をエポキシ樹脂、セラミック接着材、セメント材料、α接着材用いて接合して切削感を確認した。但し、膜厚を制御する為に700μm、400μm、350μm、250μm、150μm、50μm、20μmのアルミナ粉末を各接着剤3%混合してエナメル部分とデンチン部分膜厚を制限した。
接着材層の厚みを規定した歯牙を作製した後、切断して接着剤層を顕微鏡で測定した。各接着材層の厚みの規定の為の用いたアルミナ粉末よりも数十ミクロン厚く作製されていることを確認した。
○:十分に接着していることは確認できたが、一部チッピングが発生した。
◎:天然歯同様に良好な結果であった。
◎+:極めて、天然歯同様に良好な結果であった。
Claims (2)
- 治療練習用の顎歯模型用の歯牙であって、デンチン部分とエナメル部分からなり、デンチン部分とエナメル部分を作製した後に、デンチン部分とエナメル部分が有機性樹脂組成物からなる接着層により接着されており、
前記接着層には、前記接着層の厚みを均一に規制する20〜50μmの均一な粒径のアルミナ粉末が混合されており、
前記接着層は、前記アルミナ粉末の粒径より厚み寸法が大きく且つ100μm以下の均一な厚みを有していることを特徴とする顎歯模型用の歯牙。 - 前記デンチン部分および前記エナメル部分が無機粉末焼成体からなることを特徴とする請求項1記載の顎歯模型用の歯牙。
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