JP5172480B2 - 光電変換装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、光電変換装置およびその製造方法に関する。
太陽電池などの光電変換装置の製造工程の1つである電極形成の方法としては、蒸着法、メッキ法、印刷法およびノズル法などが挙げられる。現在では、太陽電池の低コスト化と大量生産の観点から、スクリーン印刷法が多く用いられている。
このスクリーン印刷法によれば、n+p型の太陽電池セルに対しては、受光面(n+面)電極の形成時に、Ag粉末、ガラス粉末および有機樹脂を溶媒と共に混合して作製したAg導電性ペーストを、マスクを用いて受光面に印刷する。その後、乾燥および焼成することにより、複数のフィンガー電極(幅50μm〜200μm程度)と、フィンガー電極に垂直に接するバスバー電極(幅1mm〜2mm程度)とを含む受光面電極を形成する。従来、フィンガー電極やバスバー電極のアスペクト比(高さ/線幅)は、0.1〜0.2程度であり、フィンガー電極の単位長さ当たりの抵抗値は、おおよそ0.15Ω/cm〜0.70Ω/cmである。
また、太陽電池セルの裏面電極の形成時には、Al粉末、ガラス粉末および有機樹脂を溶媒と共に混合して作製したAl導電性ペーストを、裏面全面に印刷する。その後、乾燥および焼成することにより、裏面電極を形成する。この裏面電極の形成時には、開放電圧(Voc)を向上させ、かつ、短絡電流(Isc)を向上させるための裏面電界(BSF:Back Surface Field)層も同時に形成している。
スクリーン印刷による微細電極の形成方法としては、エッチングにより略樽形状の断面を有する開口部が形成されたメタルマスクを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、略樽形状の断面を有する開口部が形成されたメタルマスクを用いて、半田ペースト(導電性ペースト)をスクリーン印刷することによって、メタルマスクに対する半田ペーストの版離れを改善している。これにより、半田ペーストが転写されなかったり、印刷後の半田ペーストの幅が小さくなり焼成後の微細電極が剥離しやすくなるのをある程度抑制することが可能である。
特開2004−6927号公報
太陽電池を高効率化するためには、電極形成の際に半導体層上の受光面電極の面積を低減することにより、受光面電極の表面での反射損失を少なくして半導体層(発電層)に入射する光の量を多くすることが必要である。また、接触抵抗値や受光面電極の長さ方向の線抵抗値などの電流導出方向の抵抗値を小さくすることにより、発生したキャリアを、抵抗損失なく取り出すことも必要である。
受光面電極の線幅を微細化することは、入射する光の量を多くすることができるので非常に有効である一方、受光面電極の線抵抗値が増大する。このため、受光面電極の線抵抗値が増大するのを抑制するために、受光面電極の高さ(厚み)を大きくする必要がある。
50μm以下の幅の微細な電極を形成する方法としては、フォトリソグラフィーを用いる方法が知られているが、この方法を太陽電池セルの製造に用いるには、非常に複雑な工程を要し、高コストであるので、大規模量産の技術には向いていない。
現在のスクリーン印刷技術を用いた電極形成方法では、実用可能な電極の線幅は、おおよそ100μm程度である。
現在のスクリーン印刷法では、一般的にメッシュマスクや、メタルマスクが用いられている。
メッシュマスクを用いて受光面電極となる導電性ペーストのパターンの線幅を小さく(微細化)する場合、導電性ペーストのメッシュマスクに対する抜け性を良くするために、メッシュの数を増やすとともに、メッシュの線径を小さくするのが好ましい。しかしながら、メッシュの線径を小さくした場合、紗厚が小さくなるので、印刷時の導電性ペーストの吐出量が減少し、形成される受光面電極の高さ(厚み)が小さくなるという不都合がある。また、印刷後の導電性ペーストがだれないように、高粘度の導電性ペーストを用いた場合、受光面電極の高さ(厚み)が均一になりにくく、受光面電極の線抵抗値が増大するという不都合がある。
一方、メタルマスクを用いた場合、メッシュマスクを用いる場合に比べて、導電性ペーストの抜け性は良くなる。しかしながら、受光面電極の高さ(厚み)を大きくするためにメタルマスクの厚みを大きくした場合、メタルマスクの開口部の端部では、転写された導電性ペーストがメタルマスクの開口部の壁面3辺から抵抗を受けるので、メタルマスクに対する導電性ペーストの版離れが悪くなる。これにより、導電性ペーストが転写されなかったり、印刷後の導電性ペーストの幅が小さくなり焼成後の受光面電極の端部が剥離しやすくなるという不都合がある。このように受光面電極の一部が形成されなかったり剥離した場合、Jsc(電流密度)やFF(曲線因子)が低下しやすくなるという不都合が生じる。また、高粘度の導電性ペーストを用いる場合、メタルマスクの開口部の壁面3辺から受ける抵抗が大きくなるので、メタルマスクに対する導電性ペーストの版離れが、より悪くなるという不都合がある。
上記特許文献1では、メタルマスクの開口部の断面を略樽形状に形成しているので、開口部内に残留した導電性ペーストを除去しにくい。すなわち、メタルマスクを、洗浄しにくい。また、メタルマスクの開口部の断面を略樽形状に形成しているので、高粘度の導電性ペーストを用いた場合、開口部に導電性ペーストが十分に充填されにくくなる。これにより、導電性ペーストが良好に転写されにくくなるので、受光面電極が断線したり剥離する場合がある。その結果、光電変換装置の変換効率が低下する場合があるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、変換効率を向上させることが可能な光電変換装置およびその製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による光電変換装置は、半導体層と、半導体層の受光面側に設けられ、第1の方向に延びる複数のフィンガー電極を含む受光面電極とを備え、フィンガー電極の少なくとも一方の端部側の部分には、フィンガー電極の端部から所定の距離を隔てて、幅広領域が形成されており、フィンガー電極の幅広領域の第1の方向に直交する第2の方向の幅は、フィンガー電極の中央部側の部分の第2の方向の幅よりも大きい。
この第1の局面による光電変換装置では、上記のように、フィンガー電極の少なくとも一方の端部側の部分に幅広領域を形成し、フィンガー電極の幅広領域の第2の方向の幅を、フィンガー電極の中央部側の部分の第2の方向の幅よりも大きくしている。これにより、例えば、印刷用マスクを用いて導電性ペーストを印刷することにより、導電性ペースト(フィンガー電極)を高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成する場合にも、印刷用マスクの高さ(厚み)が導電性ペースト(フィンガー電極)の幅広領域の第2の方向の幅よりも大きくなるのを抑制することができる。すなわち、幅広領域に対応する印刷用マスクの開口部の部分のアスペクト比(厚み/開口幅)が大きくなるのを抑制することができる。これにより、導電性ペーストの端部側の部分(幅広領域)においても、印刷用マスクに対して版離れが悪くなるのを抑制することができるので、導電性ペーストの端部側の部分(幅広領域)が転写されなかったり、端部側の部分(幅広領域)の第2の方向の幅が小さくなり焼成後のフィンガー電極が剥離しやすくなるのを抑制することができる。その結果、光電変換装置の変換効率が低下するのを抑制することができる。
また、第1の局面による光電変換装置では、上記のように、印刷用マスクに対する導電性ペーストの版離れが悪くなるのを抑制しながら、フィンガー電極を高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成することができるので、フィンガー電極の線抵抗値が大きくなるのを抑制することができる。その結果、光電変換装置の変換効率が低下するのをより抑制することができる。
また、第1の局面による光電変換装置では、上記のように、幅広領域を、フィンガー電極の端部から所定の距離を隔てて形成することによって、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離した場合にも、フィンガー電極の幅広領域から内側の部分が剥離するのを抑制することができる。また、フィンガー電極が剥離する場合、通常、端部から剥離するので、幅広領域をフィンガー電極の端部に形成する場合に比べて、幅広領域が剥離するのを抑制することができる。また、フィンガー電極の幅広領域が、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離しても電流の損失がない位置に配置されていれば、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離した場合にも、光電変換装置の変換効率が低下することがない。
上記第1の局面による光電変換装置において、好ましくは、複数のフィンガー電極は、第2の方向に所定のピッチで配置されており、フィンガー電極の幅広領域は、半導体層の端部から所定のピッチの半分よりも小さい長さだけ隔てて配置されている。このように構成すれば、フィンガー電極の幅広領域を、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離しても電流の損失がない位置に配置することができるので、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離した場合にも、光電変換装置の変換効率が低下するのを抑制することができる。なお、フィンガー電極の第2の方向のピッチは、通常、電子が流れる距離に基づいて設定されており、電子が流れる距離の約2倍がフィンガー電極の第2の方向のピッチ(所定のピッチ)となる。このため、フィンガー電極の幅広領域を、半導体層の端部から所定のピッチの半分の長さよりも小さい長さだけ隔てて配置すれば、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離した場合にも電流の損失がない。
上記第1の局面による光電変換装置において、好ましくは、フィンガー電極の両端部側の部分には、フィンガー電極の両端部からそれぞれ所定の距離を隔てて、幅広領域が形成されている。このように構成すれば、フィンガー電極の両端部側において、フィンガー電極が剥離するのを抑制することができるので、光電変換装置の変換効率が低下するのをより抑制することができる。
上記第1の局面による光電変換装置において、好ましくは、受光面電極は、複数のフィンガー電極を接続するとともに第2の方向に延びるバスバー電極を含み、バスバー電極は、フィンガー電極の幅広領域の少なくとも一部を覆うように配置されている。このように構成すれば、フィンガー電極に幅広領域を設けた場合にも、受光面電極の表面での反射損失が増加するのを抑制することができるので、光電変換装置の変換効率が低下するのをより抑制することができる。
上記バスバー電極がフィンガー電極の幅広領域の少なくとも一部を覆うように配置されている光電変換装置において、好ましくは、フィンガー電極のバスバー電極が接続される側とは反対側の部分にも、幅広領域が形成されており、フィンガー電極のバスバー電極が接続される幅広領域の第2の方向の幅は、フィンガー電極のバスバー電極が接続される側とは反対側の幅広領域の第2の方向の幅以上の大きさである。このように構成すれば、バスバー電極とフィンガー電極との接触面積を、容易に大きくすることができるので、バスバー電極が、フィンガー電極から剥離するのを、容易に抑制することができる。
上記第1の局面による光電変換装置において、好ましくは、フィンガー電極は、印刷用マスクを用いて印刷された導電性ペーストを焼成することにより形成されており、フィンガー電極の幅広領域の第2の方向の幅は、印刷用マスクの厚み以上の大きさである。このように構成すれば、導電性ペーストの端部側の部分(幅広領域)においても、印刷用マスクに対して版離れが悪くなるのを容易に抑制することができる。
上記第1の局面による光電変換装置において、好ましくは、受光面電極は、複数のフィンガー電極を接続するとともに第2の方向に延びるバスバー電極を含み、バスバー電極は、ガラスフリットを含有せず、フィンガー電極は、ガラスフリットを含有する。このように構成すれば、半導体層上に絶縁膜を形成した後、絶縁膜上に、ガラスフリットを含有した導電性ペースト、および、ガラスフリットを含有しない導電性ペーストを印刷し、焼成することによりフィンガー電極およびバスバー電極を形成する場合、ガラスフリットを含有したフィンガー電極を、半導体層に接触させるとともに、ガラスフリットを含有しないバスバー電極を、半導体層に接触しないように形成することができる。これにより、フィンガー電極およびバスバー電極の両方が半導体層に接触する場合に比べて、パッシベーション効果を向上させることができるので、Voc(開放電圧)を大きくすることができる。
上記第1の局面による光電変換装置において、好ましくは、受光面電極は、複数のフィンガー電極を接続するとともに第2の方向に延びるバスバー電極を含み、フィンガー電極およびバスバー電極は、それぞれ、第1導電性ペーストおよび第2導電性ペーストを焼成することにより形成されており、第1導電性ペーストは、第2導電性ペーストよりも粘度が大きい。このように構成すれば、第1導電性ペーストがだれるのを、容易に抑制することができるので、フィンガー電極を、容易に高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成することができる。
この発明の第2の局面による光電変換装置の製造方法は、半導体層の受光面側に、導電性ペーストを配置する工程と、導電性ペーストを焼成することにより、第1の方向に延びる複数のフィンガー電極を含む受光面電極を形成する工程とを備え、導電性ペーストを配置する工程は、導電性ペーストの少なくとも一方の端部側の部分に、導電性ペーストの端部から所定の距離を隔てて、幅広領域が形成され、かつ、導電性ペーストの幅広領域の第1の方向に直交する第2の方向の幅が、導電性ペーストの中央部側の部分の第2の方向の幅よりも大きくなるように、導電性ペーストを配置する工程を含む。
この第2の局面による光電変換装置の製造方法では、上記のように、導電性ペーストの少なくとも一方の端部側の部分に幅広領域が形成され、かつ、導電性ペーストの幅広領域の第2の方向の幅が、導電性ペーストの中央部側の部分の第2の方向の幅よりも大きくなるように、導電性ペーストを配置する。これにより、例えば、印刷用マスクを用いて導電性ペーストを印刷することにより、導電性ペースト(フィンガー電極)を高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成する場合にも、印刷用マスクの高さ(厚み)が導電性ペースト(フィンガー電極)の幅広領域の第2の方向の幅よりも大きくなるのを抑制することができる。すなわち、幅広領域に対応する印刷用マスクの開口部の部分のアスペクト比(厚み/開口幅)が大きくなるのを抑制することができる。これにより、導電性ペーストの端部側の部分(幅広領域)においても、印刷用マスクに対して版離れが悪くなるのを抑制することができるので、導電性ペーストの端部側の部分(幅広領域)が転写されなかったり、端部側の部分(幅広領域)の第2の方向の幅が小さくなり焼成後のフィンガー電極が剥離しやすくなるのを抑制することができる。その結果、光電変換装置の変換効率が低下するのを抑制することができる。
また、第2の局面による光電変換装置の製造方法では、上記のように、印刷用マスクに対する導電性ペーストの版離れが悪くなるのを抑制しながら、フィンガー電極(導電性ペースト)を高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成することができるので、フィンガー電極の線抵抗値が大きくなるのを抑制することができる。その結果、光電変換装置の変換効率が低下するのをより抑制することができる。
また、第2の局面による光電変換装置の製造方法では、上記のように、幅広領域を、導電性ペースト(フィンガー電極)の端部から所定の距離を隔てて形成することによって、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離した場合にも、フィンガー電極の幅広領域から内側の部分が剥離するのを抑制することができる。また、フィンガー電極が剥離する場合、通常、端部から剥離するので、幅広領域を導電性ペースト(フィンガー電極)の端部に形成する場合に比べて、幅広領域が剥離するのを抑制することができる。また、フィンガー電極の幅広領域が、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離しても電流の損失がない位置に配置されていれば、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分が剥離した場合にも、光電変換装置の変換効率が低下することがない。
上記第2の局面による光電変換装置の製造方法において、好ましくは、導電性ペーストを配置する工程は、印刷用マスクを用いて、導電性ペーストを印刷する工程を含み、導電性ペーストの幅広領域の第2の方向の幅は、印刷用マスクの厚み以上の大きさである。このように構成すれば、導電性ペーストの端部側の部分(幅広領域)においても、印刷用マスクに対して版離れが悪くなるのを容易に抑制することができる。
上記第2の局面による光電変換装置の製造方法において、好ましくは、導電性ペーストを配置する工程は、第1導電性ペーストおよび第2導電性ペーストを配置する工程を含み、導電性ペーストを焼成することにより、第1の方向に延びる複数のフィンガー電極を含む受光面電極を形成する工程は、第1導電性ペーストを焼成することにより、第1の方向に延びる複数のフィンガー電極を形成する工程と、第2導電性ペーストを焼成することにより、複数のフィンガー電極を接続するとともに第2の方向に延びるバスバー電極を形成する工程とを含み、第1導電性ペーストは、第2導電性ペーストよりも粘度が大きい。このように構成すれば、第1導電性ペーストがだれるのを、容易に抑制することができるので、フィンガー電極を、容易に高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成することができる。
以上のように、本発明によれば、変換効率を向上させることが可能な光電変換装置を容易に得ることができる。
図1は、本発明の一実施形態による太陽電池セルの構造を示した平面図である。図2は、図1の100−100線に沿った断面図である。図3は、図1の200−200線に沿った断面図である。図4は、図1に示した一実施形態による太陽電池セルの受光面電極の詳細構造を示した平面図である。まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態による太陽電池セル1の構造について説明する。
本発明の一実施形態による太陽電池セル1は、図2および図3に示すように、p型の半導体基板2と、半導体基板2の受光面側に設けられた絶縁膜3および受光面電極4と、半導体基板2の裏面上の略全面に設けられた裏面電極5とを含んでいる。なお、太陽電池セル1は、本発明の「光電変換装置」の一例であり、半導体基板2は、本発明の「半導体層」の一例である。
半導体基板2は、キャスト法により作製されたシリコンインゴットをマルチワイヤー法によりスライスしたp型のシリコン基板や、CZ法やFZ法により作製されたシリコンインゴットをスライスしたp型の単結晶シリコン基板などからなる。
また、半導体基板2の受光面には、凹凸構造(テクスチャ構造)が形成されている。これにより、太陽光が半導体基板2の表面で反射するのを抑制することが可能である。
また、半導体基板2には、p型導電領域2aと、半導体基板2の受光面側の全面に設けられたn+型導電領域2bと、半導体基板2の裏面側の全面に設けられたp+型導電領域2cとが形成されている。そして、p型導電領域2aとn+型導電領域2bとによって、pn接合が形成されている。
+型導電領域2cは、裏面電極5に電気的に接続されている。なお、p+型導電領域2cは、裏面電界(BSF)効果が得られるように構成することも可能である。また、半導体基板2の裏面側に、内部反射を高めるために裏面反射層(Back Surface Reflector)を形成したり、表面再結合を防止するために酸化膜や窒化膜を形成してもよい。
絶縁膜3は、反射防止膜としての機能を有する。なお、絶縁膜3(反射防止膜)や裏面反射膜としては、各種酸化膜などを用いることが可能である。
また、絶縁膜3は、半導体基板2の受光面上に設けられている。また、絶縁膜3は、図2および図3に示すように、受光面電極4の後述するバスバー電極41(図2参照)と半導体基板2との間に配置されている一方、受光面電極4の後述するフィンガー電極40(図3参照)と半導体基板2との間には配置されていない。
受光面電極4は、図1に示すように、複数のフィンガー電極40と、フィンガー電極40に電気的に接続されるバスバー電極41とによって構成されている。図2および図3に示すように、フィンガー電極40(図3参照)は、半導体基板2(n+型導電領域2b)に接触している一方、バスバー電極41(図2参照)は、半導体基板2(n+型導電領域2b)に接触していない。また、フィンガー電極40は、半導体基板2の内部で発生した電気を収集するために設けられており、バスバー電極41は、収集した電気を外部に取り出すために設けられている。
複数のフィンガー電極40は、図4に示すように、A方向に延びるように形成されているとともに、A方向と直交するB方向に、例えば、約2mmのピッチ(=P1)で配置されている。なお、A方向は、本発明の「第1の方向」の一例であり、B方向は、本発明の「第2の方向」の一例である。
ここで、本実施形態では、フィンガー電極40のA方向の両端部側の部分には、フィンガー電極40の両端部からそれぞれ所定の距離(例えば、約0.5mm)を隔てて、幅広領域40aおよび40bが形成されている。
また、本実施形態では、幅広領域40aは、半導体基板2(絶縁膜3)の端部(端面)から所定の距離(=L1)だけ隔てて形成されている。具体的には、この所定の距離(=L1)は、フィンガー電極40のB方向のピッチ(=P1)の半分よりも小さい長さであり、好ましくは、B方向に隣接するフィンガー電極40の幅広領域40aおよび40b以外の領域間の距離(=L2)の半分以下の長さである。
ここで、フィンガー電極40のB方向のピッチ(=P1)は、電子が流れる距離に基づいて設定されており、電子が流れる距離の約2倍がフィンガー電極40のB方向のピッチ(=P1)となっている。このため、所定の距離(=L1)は、フィンガー電極40のB方向のピッチ(=P1)の半分よりも小さい長さであるので、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bよりも外側の部分が剥離したとしても、電流の損失がない。
また、本実施形態では、A方向に隣接する幅広領域40b(または、A方向に隣接する幅広領域40a)は、互いに所定の距離(=L3)を隔てて形成されている。この所定の距離(=L3)は、上記と同様の理由により、フィンガー電極40のB方向のピッチ(=P1)よりも小さい長さであり、好ましくは、距離(=L2)以下の長さである。
また、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40b以外の領域(フィンガー電極40の中央部および外側の部分)は、例えば、約40μm〜約45μmのB方向の幅(線幅)(=W1)を有する。
また、フィンガー電極40の幅広領域40aは、例えば、約60μm〜約65μmのB方向の幅(=W2)を有する。また、フィンガー電極40の幅広領域40bは、幅広領域40a以上のB方向の幅(=W3)を有する。なお、フィンガー電極40の幅広領域40bのB方向の幅(=W3)は、幅広領域40aのB方向の幅(=W2)よりも大きくするのが好ましい。
また、フィンガー電極40は、例えば、約40μmの厚みを有する。すなわち、フィンガー電極40は、アスペクト比(高さ/線幅)が0.5以上である。なお、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40b以外の領域(フィンガー電極40の中央部および外側の部分)のB方向の幅(=W1)が約40μm〜約45μmである場合、線抵抗値が増大するのを抑制するためには、フィンガー電極40は、40μm程度の厚みが必要である。
また、フィンガー電極40は、ガラスフリットを含有している。すなわち、フィンガー電極40は、ガラスフリットを含有する導電性ペーストを焼成することにより形成されている。
バスバー電極41は、フィンガー電極40に対して直交するB方向に延びるように形成されている。また、バスバー電極41は、A方向に、例えば約2mmの幅(=W11)を有しており、A方向に隣接する2つのフィンガー電極40に跨るように配置されている。また、バスバー電極41は、フィンガー電極40の幅広領域40bの上面全面を覆うように配置されている。
また、バスバー電極41は、ガラスフリットを含有していない。すなわち、バスバー電極41は、ガラスフリットを含有していない導電性ペーストを焼成することにより形成されている。なお、バスバー電極41は、ガラスフリットを含有していてもよい。
裏面電極5(図2参照)は、インターコネクタ(図示せず)を介して、隣接する他の太陽電池セル1の受光面電極4のバスバー電極41に電気的に接続されている。なお、裏面電極5は、裏面での内部反射を向上させるための裏面反射層として構成することも可能である。
図5は、図1に示した一実施形態による太陽電池セルの製造プロセスを説明するための平面図である。図6は、図1に示した一実施形態による太陽電池セルの製造プロセスに用いるメタルマスクの構造を示した平面図である。図7は、図1に示した一実施形態による太陽電池セルの製造プロセスを説明するための平面図である。次に、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による太陽電池セル1の製造プロセスについて説明する。
まず、キャスト法、CZ法またはFZ法などにより作製されたシリコンインゴットをマルチワイヤー法によりスライスして、p型の半導体基板2(図2および図3参照)を準備する。
そして、酸性またはアルカリ性の溶液や、反応性プラズマなどを用いて、半導体基板2の表面をエッチングすることによって、半導体基板2の少なくとも受光面側の表面に凹凸構造(テクスチャ構造)を形成する。
その後、図2および図3に示すように、半導体基板2の受光面側にn型の不純物を導入することにより、n+型導電領域2bを形成する。
そして、半導体基板2の受光面上の全面に、絶縁膜3を形成する。
次に、半導体基板2の裏面上にAlなどのp型の不純物を含むペースト材料を印刷し、焼成することにより裏面電極5を形成する。このとき、p型の不純物が半導体基板2内に熱拡散し、半導体基板2の裏面側にp+型導電領域2cが形成される。
そして、絶縁膜3の所定領域上に、受光面電極4を形成する。
以上で述べた製造プロセスは、現在、多結晶シリコン太陽電池などで一般的に用いられるプロセスであるが、その順序を変えることや、真空にするプロセスを部分的に用いることも可能である。
以下、本発明の太陽電池セル1の受光面電極4の形成方法について、詳細に説明する。
絶縁膜3の所定領域上に、図5に示すように、メタルマスク10(図6参照)を用いて、ガラスフリットを約2wt%〜約5wt%含有する導電性ペースト40cをスクリーン印刷する。なお、導電性ペースト40cは、後の工程において焼成されることにより、フィンガー電極40となる。また、導電性ペースト40cは、微細電極印刷時でも断線しない程度の高粘度のペーストを使用する。なお、メタルマスク10は、本発明の「印刷用マスク」の一例であり、導電性ペースト40cは、本発明の「第1導電性ペースト」の一例である。
このとき用いるメタルマスク10には、図6に示すように、A方向に延びる複数の開口部11が設けられている。また、開口部11の両端部側の部分には、開口部11の両端部からそれぞれ所定の距離(例えば、約0.5mm)を隔てて、幅広領域11aおよび11bが形成されている。
また、開口部11の幅広領域11aおよび11b以外の領域(開口部11の中央部および外側の部分)は、例えば、約40μmのB方向の幅(開口幅)(=W41)を有する。また、開口部11の幅広領域11aは、例えば、約60μmのB方向の幅(開口幅)(=W42)を有する。また、開口部11の幅広領域11bは、幅広領域11a以上のB方向の幅(開口幅)(=W43)を有する。
これにより、図5に示すように、スクリーン印刷後の導電性ペースト40cのA方向の両端部側の部分には、導電性ペースト40cの両端部からそれぞれ所定の距離(例えば、約0.5mm)を隔てて、幅広領域40dおよび40eが形成される。なお、導電性ペースト40cの幅広領域40dおよび40eは、後の工程において焼成されることにより、それぞれ、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bとなる。
また、導電性ペースト40cの幅広領域40dおよび40e以外の領域(導電性ペースト40cの中央部および外側の部分)は、例えば、約40μm〜約45μmのB方向の幅(=W21)を有するように形成される。また、導電性ペースト40cの幅広領域40dは、例えば、約60μm〜約65μmのB方向の幅(=W22)を有するように形成される。また、導電性ペースト40cの幅広領域40eは、幅広領域40d以上のB方向の幅(=W23)を有するように形成される。
また、メタルマスク10は、例えば、約50μmの厚みを有しており、導電性ペースト40cを焼成した後のフィンガー電極40の厚みは、約40μmになる。
次に、図7に示すように、絶縁膜3の所定領域上、および、導電性ペースト40cの所定領域上に、メッシュマスク(図示せず)を用いて、ガラスフリットを含有しない導電性ペースト41aをスクリーン印刷する。なお、導電性ペースト41aは、後の工程において焼成されることにより、バスバー電極41となる。また、導電性ペースト41aは、導電性ペースト40cと同様に、ガラスフリットを含有していてもよい。なお、導電性ペースト41aは、本発明の「第2導電性ペースト」の一例である。
また、導電性ペースト41aは、導電性ペースト40cよりも小さい粘度を有する。なお、導電性ペースト41aは、導電性ペースト40cと同程度の粘度を有していてもよい。
導電性ペースト41aは、A方向に、例えば約2mmの幅(=W31)を有しており、A方向に隣接する2つの導電性ペースト40cに跨がるように配置されている。また、導電性ペースト41aは、導電性ペースト40cの幅広領域40eの上面全面を覆うように配置される。
その後、導電性ペースト40cおよび41aを焼成することにより、図1および図4に示すように、フィンガー電極40およびバスバー電極41からなる受光面電極4が形成される。このとき、導電性ペースト40c(フィンガー電極40)にはガラスフリットが含有されているので、図3に示すように、焼成する際に、導電性ペースト40c(フィンガー電極40)が絶縁膜3を貫通し、半導体基板2のn+型導電領域2bと電気的に接続される。その一方、導電性ペースト41a(バスバー電極41)にはガラスフリットが含有されていないので、図2に示すように、焼成した場合にも、導電性ペースト41a(バスバー電極41)は絶縁膜3を貫通しない。
以上のようにして、図1に示した一実施形態による太陽電池セル1が製造される。
本実施形態では、上記のように、フィンガー電極40の両端部側の部分に幅広領域40aおよび40bを形成し、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bのB方向の幅(=W2およびW3)を、フィンガー電極40の中央部および外側の部分のB方向の幅(=W1)よりも大きくしている。これにより、導電性ペースト40c(フィンガー電極40)を高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成する場合にも、メタルマスク10の高さ(厚み)(約50μm)が導電性ペースト40cの幅広領域40dおよび40eのB方向の幅(約60μm)よりも大きくなるのを抑制することができる。すなわち、メタルマスク10の開口部11の幅広領域11aおよび11bのアスペクト比(厚み/開口幅)が大きくなるのを抑制することができる。これにより、導電性ペースト40cの端部側の部分(幅広領域40dおよび40e)においても、メタルマスク10に対して版離れが悪くなるのを抑制することができるので、導電性ペースト40cの端部側の部分(幅広領域40dおよび40e)が転写されなかったり、端部側の部分(幅広領域40dおよび40e)のB方向の幅が小さくなり焼成後のフィンガー電極40が剥離しやすくなるのを抑制することができる。その結果、太陽電池セル1の変換効率が低下するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、メタルマスク10に対する導電性ペースト40cの版離れが悪くなるのを抑制しながら、フィンガー電極40を高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成することができるので、フィンガー電極40の線抵抗値が大きくなるのを抑制することができる。その結果、太陽電池セル1の変換効率が低下するのをより抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、幅広領域40aおよび40bを、フィンガー電極40の両端部からそれぞれ所定の距離を隔てて形成することによって、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bよりも外側の部分が剥離した場合にも、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bから内側の部分が剥離するのを抑制することができる。また、フィンガー電極40が剥離する場合、通常、端部から剥離するので、幅広領域40dおよび40eをフィンガー電極40の端部に形成する場合に比べて、幅広領域40dおよび40eが剥離するのを抑制することができる。また、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bを、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bよりも外側の部分が剥離しても電流の損失がない位置に配置しているので、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bよりも外側の部分が剥離した場合にも、太陽電池セル1の変換効率が低下することがない。
また、本実施形態では、上記のように、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bを、半導体基板2(絶縁膜3)の端部から所定のピッチ(=P1)の半分よりも小さい長さ(=L1)だけ隔てて配置することによって、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bを、容易に、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bよりも外側の部分が剥離しても電流の損失がない位置に配置することができる。
また、本実施形態では、上記のように、バスバー電極41を、フィンガー電極40の幅広領域40bの上面全面を覆うように配置することによって、フィンガー電極40に幅広領域40bを設けた場合にも、受光面電極4の表面での反射損失が増加するのを抑制することができるので、太陽電池セル1の変換効率が低下するのをより抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、フィンガー電極40のバスバー電極41が接続される幅広領域40bのB方向の幅(=W3)を、フィンガー電極40の幅広領域40aのB方向の幅(=W2)以上の大きさにすることによって、バスバー電極41とフィンガー電極40との接触面積を、容易に大きくすることができる。これにより、ガラスフリットを含有するフィンガー電極40(導電性ペースト40c)と、ガラスフリットを含有しないバスバー電極41(導電性ペースト41a)との接着強度が弱い場合にも、バスバー電極41が、フィンガー電極40から剥離するのを、容易に抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、フィンガー電極40を、ガラスフリットを含有する導電性ペースト40cにより形成し、バスバー電極41を、ガラスフリットを含有しない導電性ペースト41aにより形成することによって、ガラスフリットを含有するフィンガー電極40を、半導体基板2に接触させるとともに、ガラスフリットを含有しないバスバー電極41を、半導体基板2に接触しないように形成することができる。これにより、フィンガー電極40およびバスバー電極41の両方が半導体基板2に接触する場合に比べて、パッシベーション効果を向上させることができるので、Voc(開放電圧)を大きくすることができる。
また、本実施形態では、上記のように、フィンガー電極40を、導電性ペースト41aよりも粘度の大きい導電性ペースト40cを用いて形成している。これにより、導電性ペースト40cがだれるのを、容易に抑制することができるので、フィンガー電極40を、容易に高いアスペクト比(高さ/線幅)に形成することができる。
また、本実施形態では、上記のように、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40b以外の領域(中央部および外側の部分)のアスペクト比(高さ/線幅)を、約1(0.5以上)にすることによって、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40b以外の領域(中央部および外側の部分)のB方向の幅(=W1)を小さくした場合(フィンガー電極40を微細化した場合)にも、フィンガー電極40の線抵抗値が増大するのを容易に抑制することができる。
次に、上記した本発明の一実施形態による太陽電池セル1の効果を確認するために行った比較実験について説明する。この比較実験では、上記実施形態に対応する実施例1による太陽電池セルと、上記実施例1とは異なりフィンガー電極に幅広領域が形成されていない比較例1〜3による太陽電池セルとを作製した。そして、実施例1および比較例1〜3による太陽電池セルについて、Jsc(電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(曲線因子)およびEff(変換効率)と、剥離したフィンガー電極の数、および、剥離長さとを測定した。以下、詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1による太陽電池セル1は、以下のように作製した。まず、シリコンインゴットをマルチワイヤー法によりスライスすることによって、約10cm×約10cmの外形と、約0.3mmの厚みと、約1.5Ωcmの比抵抗とを有するp型の多結晶シリコン基板(半導体基板2)を準備した。
そして、5%NaOHアルカリ水溶液に対して7%アルコールを加えた溶液中で、約80℃の温度で約10分間、半導体基板2をエッチングすることにより、破砕層の除去と凹凸構造(テクスチャ構造)の形成とを同時に行った。
その後、POCl3(オキシ塩化リン)を含む約840℃の雰囲気の電気炉中の治具に半導体基板2を載置して、約20分間リン拡散(熱拡散)を行うことによって、半導体基板2の受光面側にn+型導電領域2bを形成した。そして、HF水溶液中で、PSG(リンガラス)層などを除去した後、洗浄および乾燥を行った。これにより、約70Ω/□のシート抵抗と、約0.3μmの深さ(接合深さ)と、表面付近に約1020cm-2のドーパント濃度とを有するn+型導電領域2bを形成した。
その後、半導体基板2の受光面上に、プラズマCVD法を用いて、約72nmの厚みと反射防止機能とを有するSiN層からなる絶縁膜3を形成した。このとき、ガス種として、シランおよびアンモニアを用いた。
そして、半導体基板2の裏面上に、Al粉末を含有する導電性ペーストを印刷し、乾燥させた。その後、近赤外線炉中で焼成することにより、p+型導電領域2cおよび裏面電極5を形成した。
次に、メタルマスク10を用いて、絶縁膜3の所定領域上に導電性ペースト40cをスクリーン印刷した。
具体的には、メタルマスク10の厚みは、約50μmであった。また、メタルマスク10の開口部11のA方向の長さは、約24mmであった。また、開口部11の幅広領域11aおよび11b以外の領域(開口部11の中央部および外側の部分)のB方向の幅(=W41)は、約40μmであった。また、開口部11の幅広領域11aおよび11bは、約60μm×約60μmの正方形状であった。また、開口部11の幅広領域11aおよび11bは、開口部11の両端部からそれぞれ約0.5mm隔てた位置に形成されていた。また、開口部11のB方向のピッチは、約2.0mmであった。
また、導電性ペースト40cは、銀、ガラスフリット、有機樹脂および溶媒を適宜混合して調整したものを用いた。また、導電性ペースト40cの粘度は、約500Pa・sであった。
その後、メッシュマスクを用いて、絶縁膜3の所定領域上、および、導電性ペースト40cの所定領域上に、導電性ペースト41aをスクリーン印刷した。導電性ペースト41aは、ガラスフリットを用いずに、銀、有機樹脂および溶媒を適宜混合して調整したものを用いた。また、導電性ペースト41aの粘度は、約100Pa・sであった。
その後、導電性ペースト40cおよび41aを焼成することにより、フィンガー電極40およびバスバー電極41からなる受光面電極4を形成した。
このときのフィンガー電極40の単位長さ当たりの抵抗値は、約0.11Ω/cmであった。また、フィンガー電極40の厚みは、約40μmであり、フィンガー電極40の幅広領域40dおよび40e以外の領域の幅(=W1)は、約42μmであった。また、バスバー電極41のA方向の幅(=W11)は、約2mmであった。なお、実施例1による太陽電池セル1のその他の構造および製造方法は、上記実施形態と同様である。
(比較例1)
比較例1による太陽電池セルは、上記実施例1と異なり、幅広領域が形成されていない開口部を有するメタルマスクを用いてフィンガー電極を形成した。すなわち、約40μmの均一なB方向の幅を有する開口部が設けられたメタルマスクを用いてフィンガー電極を形成した。なお、比較例1による太陽電池セルのその他の製造プロセス、および、メタルマスクの構造は、上記実施例1と同様とした。また、焼成後のフィンガー電極の厚みおよびB方向の幅は、それぞれ、約40μmおよび約42μmであった。
(比較例2)
比較例2による太陽電池セルは、上記比較例1と同様、幅広領域が形成されていない開口部を有するメタルマスクを用いてフィンガー電極を形成した。この比較例2では、上記比較例1と異なり、約30μmの厚みを有するメタルマスクを用いてフィンガー電極を形成した。なお、比較例2による太陽電池セルのその他の製造プロセス、および、メタルマスクの構造は、上記比較例1と同様とした。また、焼成後のフィンガー電極の厚みおよびB方向の幅は、それぞれ、約20μmおよび約42μmであった。
(比較例3)
比較例3による太陽電池セルは、上記比較例1および2と同様、幅広領域が形成されていない開口部を有するメタルマスクを用いてフィンガー電極を形成した。この比較例3では、上記比較例1と異なり、約60μmの均一なB方向の幅を有する開口部が設けられたメタルマスクを用いてフィンガー電極を形成した。なお、比較例3による太陽電池セルのその他の製造プロセス、および、メタルマスクの構造は、上記比較例1と同様とした。また、焼成後のフィンガー電極の厚みおよびB方向の幅は、それぞれ、約40μmおよび約63μmであった。
上記のように作製した実施例1および比較例1〜3による太陽電池セルについて、Jsc(電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(曲線因子)およびEff(変換効率)と、剥離したフィンガー電極の数、および、剥離長さとを測定した。なお、Jsc(電流密度)、Voc(開放電圧)、FF(曲線因子)およびEff(変換効率)の測定は、照射強度100mW/cm2の擬似太陽光(JIS標準光AM1.5G)下で行った。また、各太陽電池セルについて、80本のフィンガー電極を目視で観察することにより、フィンガー電極の剥離の有無を確認した。その結果を、以下の表1に示す。なお、フィンガー電極の幅広領域よりも外側の部分に対応する領域(フィンガー電極の端部から約0.5mmまでの領域)に剥離が発生しても、電流の損失がないので、約0.5mm以下の剥離についてはカウントしていない。
Figure 0005172480
上記表1に示すように、実施例1では、フィンガー電極40の剥離が確認されなかった。その一方、比較例1では、42本のフィンガー電極において、約3mm〜約10mmの剥離が確認された。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、実施例1では、メタルマスク10の厚み(約50μm)がメタルマスク10の開口部11の幅広領域11aおよび11bのB方向の幅(=W42およびW43)(約60μm)よりも小さいために、導電性ペースト40cの幅広領域40dおよび40eが開口部11の壁面から受ける抵抗が小さくなり、メタルマスク10に対する導電性ペースト40cの幅広領域40dおよび40eの版離れが良くなった。これにより、フィンガー電極40の幅広領域40aおよび40bから内側(中央部側)の部分では、剥離が発生しなかったと考えられる。その一方、比較例1では、メタルマスクの厚み(約50μm)がメタルマスクの開口部のB方向の幅(約40μm)よりも大きいために、導電性ペーストが開口部の壁面から受ける抵抗が大きくなり、メタルマスクに対する導電性ペーストの版離れが悪くなるとともに、フィンガー電極の端部が剥離しやすくなったと考えられる。
また、実施例1では、比較例1に比べて、Jsc(電流密度)およびFF(曲線因子)が共に大きく、高いEff(変換効率)を得ることができた。具体的には、実施例1のJsc(電流密度)、FF(曲線因子)およびEff(変換効率)は、それぞれ、34.0mA/cm2、0.775および16.2%であった。また、比較例1のJsc(電流密度)、FF(曲線因子)およびEff(変換効率)は、それぞれ、33.5mA/cm2、0.745および15.3%であった。実施例1が比較例1に比べて、Jsc(電流密度)およびFF(曲線因子)が共に大きくなったのは、比較例1では、フィンガー電極に剥離が発生した一方、実施例1では、フィンガー電極に剥離が発生しなかったためであると考えられる。
比較例2では、比較例1と異なり、フィンガー電極の剥離が確認されなかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、比較例2で用いたメタルマスクは、比較例1と異なり、メタルマスクの厚み(約30μm)がメタルマスクの開口部のB方向の幅(約40μm)よりも小さいために、導電性ペーストが開口部の壁面から受ける抵抗が小さくなり、メタルマスクに対する導電性ペーストの版離れが良くなったためであると考えられる。
また、比較例2では、実施例1に比べて、FF(曲線因子)が小さくなった。具体的には、比較例2のFF(曲線因子)は、0.740であった。これは、比較例2では、実施例1に比べて厚みの小さいメタルマスクを用いているので、フィンガー電極の厚みが小さくなり、フィンガー電極自体の抵抗値が高くなったためであると考えられる。
比較例3では、比較例1と異なり、フィンガー電極の剥離が確認されなかった。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、比較例3で用いたメタルマスクは、比較例1と異なり、メタルマスクの厚み(約50μm)がメタルマスクの開口部のB方向の幅(約60μm)よりも小さいために、導電性ペーストが開口部の壁面から受ける抵抗が小さくなり、メタルマスクに対する導電性ペーストの版離れが良くなったためであると考えられる。
また、比較例3では、実施例1に比べて、Jsc(電流密度)が小さくなった。具体的には、比較例3のJsc(電流密度)は、33.4mA/cm2であった。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、比較例3では、実施例1に比べて開口部のB方向の幅の大きいメタルマスクを用いているので、フィンガー電極の面積が大きくなる。これにより、フィンガー電極の表面での反射損失が増加し、半導体基板に入射する光の量が減少したので、Jsc(電流密度)が小さくなったと考えられる。
なお、上記実施例1とは異なりガラスフリットを含有する導電性ペーストを用いてバスバー電極を形成した別の実施例では、実施例1に比べて、Voc(開放電圧)が小さくなった。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、上記別の実施例では、ガラスフリットを含有する導電性ペーストを用いてバスバー電極を形成するので、導電性ペーストを焼成してバスバー電極を形成する際に、バスバー電極が、フィンガー電極と同様、絶縁膜3を貫通して、n+型導電領域2bと電気的に接続される。これにより、パッシベーション効果が低下し、Voc(開放電圧)が小さくなったと考えられる。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、光電変換装置として太陽電池(太陽電池セル)を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、太陽電池(太陽電池セル)以外の光電変換装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では、半導体層としてシリコン基板を用いた太陽電池セルについて示したが、本発明はこれに限らず、薄膜のシリコン層を用いた太陽電池セルに適用してもよい。また、シリコンゲルマニウム基板またはガリウム砒素基板などの化合物半導体基板や、有機半導体などのシリコン以外の半導体層を用いた太陽電池セルにも適用可能である。
また、上記実施形態では、p型の半導体基板を用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、n型の半導体基板を用いてもよい。この場合、半導体基板の受光面側に、p型、または、p+型の導電領域を設ければよい。
また、上記実施形態では、半導体基板の受光面側にn+型導電領域を設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体基板の受光面側にn型導電領域を設けてもよい。
また、上記実施形態では、幅広領域をフィンガー電極の両端部側の部分に設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、幅広領域をフィンガー電極の一方の端部側の部分に設けてもよい。
また、上記実施形態では、フィンガー電極の幅広領域を正方形状に形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、フィンガー電極の幅広領域を正方形状以外の多角形状や、円形状または楕円形状などに形成してもよい。
また、上記実施形態では、フィンガー電極の形成にメタルマスクを用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、フィンガー電極の形成にメッシュマスクを用いてもよい。
また、上記実施形態では、バスバー電極の形成にメッシュマスクを用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、バスバー電極の形成にメタルマスクを用いてもよい。
また、上記実施形態では、半導体基板の受光面上の全面に絶縁膜を形成し、絶縁膜の所定領域上に導電性ペーストを印刷した後、焼成することにより、導電性ペースト(フィンガー電極)が絶縁膜を貫通して、フィンガー電極が半導体基板と電気的に接続する例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体基板の受光面上の、フィンガー電極を形成する予定の領域を除く領域のみに絶縁膜を形成し、半導体基板の受光面上の絶縁膜が形成されていない領域に導電性ペーストを印刷することによりフィンガー電極を形成してもよい。
また、上記実施形態では、半導体基板のn+型導電領域およびp+型導電領域を、熱拡散により形成した例について示したが、イオンインプランテーション法などにより形成してもよい。
また、上記実施形態では、半導体基板の受光面上に、反射防止膜としての機能を有する絶縁膜を形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、絶縁膜上に、別途、反射防止膜を形成してもよい。
また、上記実施形態では、半導体基板の受光面に、凹凸構造(テクスチャ構造)を形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体基板の受光面に、凹凸構造(テクスチャ構造)を形成しなくてもよい。
また、上記実施形態では、半導体基板の表面(受光面)に凹凸構造(テクスチャ構造)を形成した後に、受光面電極を形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、半導体基板の表面(受光面)に陽極酸化などにより、鋭く微細な凹凸構造を形成し、その上に受光面電極を形成した後に、半導体基板の表面に凹凸構造(テクスチャ構造)を形成してもよい。このように構成すれば、受光面電極と半導体基板との接着強度をより大きくすることができるので、受光面電極が剥離するのをより抑制することができる。
また、上記実施形態では、受光面電極をフィンガー電極およびバスバー電極により構成した太陽電池セルについて示したが、本発明はこれに限らず、バスバー電極を設けず、受光面電極をフィンガー電極のみにより構成したMWT(メタルラップスルー)構造の太陽電池セルにも適用可能である。
また、上記実施形態では、バスバー電極を、A方向に隣接する2つのフィンガー電極に跨るように配置した例について示したが、本発明はこれに限らず、バスバー電極を、A方向に隣接する2つのフィンガー電極に跨らないように配置してもよい。すなわち、A方向に隣接するフィンガー電極の数だけバスバー電極を設けてもよい。
本発明の一実施形態による太陽電池セルの構造を示した平面図である。 図1の100−100線に沿った断面図である。 図1の200−200線に沿った断面図である。 図1に示した一実施形態による太陽電池セルの受光面電極の詳細構造を示した平面図である。 図1に示した一実施形態による太陽電池セルの製造プロセスを説明するための平面図である。 図1に示した一実施形態による太陽電池セルの製造プロセスに用いるメタルマスクの構造を示した平面図である。 図1に示した一実施形態による太陽電池セルの製造プロセスを説明するための平面図である。
符号の説明
1 太陽電池セル(光電変換装置)
2 半導体基板(半導体層)
4 受光面電極
10 メタルマスク(印刷用マスク)
40 フィンガー電極
40a、40b 幅広領域
40c 導電性ペースト(第1導電性ペースト)
40d、40e 幅広領域
41 バスバー電極
41a 導電性ペースト(第2導電性ペースト)

Claims (8)

  1. 半導体層と、
    前記半導体層の受光面側に設けられ、第1の方向に延びる複数のフィンガー電極を含む受光面電極とを備え、
    前記複数のフィンガー電極は、前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のピッチで配置されており
    前記受光面電極は、前記複数のフィンガー電極を接続するとともに前記第2の方向に延びるバスバー電極を含み、
    前記フィンガー電極の一方の端部側の部分には、前記フィンガー電極の一方の端部から所定の距離を隔てて、第1幅広領域が形成されるとともに、前記フィンガー電極の他方の端部側の部分には、前記フィンガー電極の他方の端部から所定の距離を隔てて、第2幅広領域が形成され、
    第1幅広領域は、前記半導体層の端部から前記所定のピッチの半分よりも小さい長さだけ隔てて配置され、
    第1幅広領域の前記第2の方向の幅は、前記フィンガー電極の中央部側の部分の前記第2の方向の幅よりも大きいとともに、
    第1幅広領域から前記フィンガー電極の中央部側とは反対側に向かって延びる前記フィンガー電極の部分の前記第2の方向の幅は、前記フィンガー電極の中央部側の部分の前記第2の方向の幅と同じになっており、
    前記バスバー電極は第2幅広領域の少なくとも一部を覆うように配置されることを特徴とする光電変換装置。
  2. 第2幅広領域の前記第2の方向の幅は、第1幅広領域の前記第2の方向の幅以上の大きさであることを特徴とする請求項に記載の光電変換装置。
  3. 前記フィンガー電極は、印刷用マスクを用いて印刷された導電性ペーストを焼成することにより形成されており、
    第1、第2幅広領域の前記第2の方向の幅は、前記印刷用マスクの厚み以上の大きさであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換装置。
  4. 記バスバー電極は、ガラスフリットを含有せず、
    前記フィンガー電極は、ガラスフリットを含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換装置。
  5. 記フィンガー電極および前記バスバー電極は、それぞれ、第1導電性ペーストおよび第2導電性ペーストを焼成することにより形成されており、
    前記第1導電性ペーストは、前記第2導電性ペーストよりも粘度が大きいことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換装置。
  6. 半導体層の受光面側に、導電性ペーストを配置する第1工程と、
    前記導電性ペーストを焼成することにより、第1の方向に延びる複数のフィンガー電極を含む受光面電極を形成する第2工程とを備え、
    第1工程は、前記導電性ペーストの一方の端部側の部分に、前記導電性ペーストの一方の端部から所定の距離を隔てて、第1幅広領域が形成され、前記導電性ペーストの他方の端部側の部分に、前記導電性ペーストの他方の端部から所定の距離を隔てて、第2幅広領域が形成され、かつ、第1幅広領域の前記第1の方向に直交する第2の方向の幅が、前記導電性ペーストの中央部側の部分の前記第2の方向の幅よりも大きくなるように、前記導電性ペーストを前記第2の方向に所定のピッチで配置する工程を含み
    第2工程は、前記複数のフィンガー電極を接続するとともに前記第2の方向に延びるバスバー電極を形成する工程を含み、
    第1幅広領域は、前記半導体層の端部から前記所定のピッチの半分よりも小さい長さだけ隔てて配置され、
    第1幅広領域から前記導電性ペーストの中央部側とは反対側に向かって延びる前記導電性ペーストの部分の前記第2の方向の幅は、前記導電性ペーストの中央部側の部分の前記第2の方向の幅と同じになっており、
    前記バスバー電極は第2幅広領域の少なくとも一部を覆うように配置されることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  7. 第1工程は、印刷用マスクを用いて、前記導電性ペーストを印刷する工程を含み、
    第1、第2幅広領域の前記第2の方向の幅は、前記印刷用マスクの厚み以上の大きさであることを特徴とする請求項に記載の光電変換装置の製造方法。
  8. 第1工程は、第1導電性ペーストおよび第2導電性ペーストを配置する工程を含み、
    第2工程は、前記第1導電性ペーストを焼成することにより、前記複数のフィンガー電極を形成する工程と、前記第2導電性ペーストを焼成することにより、前記バスバー電極を形成する工程とを含み、
    前記第1導電性ペーストは、前記第2導電性ペーストよりも粘度が大きいことを特徴とする請求項またはに記載の光電変換装置の製造方法。
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