JP5168900B2 - 高分子電解質膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子電解質膜とその製造方法に関するものである。
高分子電解質膜は、カルボン酸基(−COOX、X:Li,H、Na、K)やスルホン酸基(−SOX、X:Li,H、Na、K)、等のイオン性官能基が導入されたポリマーからなるイオン交換膜であって、溶媒の存在下、イオン伝導性を有する特徴を持つと同時に、液体電解質と異なり、隔壁として機能する。その特徴故に高分子電解質膜の用途としては、海水から食料塩を製造する際の電気透析用途、水電解による水素製造用途、食塩水溶液の電気分解による水酸化ナトリウムや塩素の製造用途、燃料電池用途、などイオン伝導性と共に隔離性が必要な用途で実用化が進んできている。この用途での高分子電解質膜としては、イオン伝導性が高いなどの電気化学的特性が重要であることに加え、隔壁としてのバリヤー性も重要であるが、高分子電解質膜は、高分子電解質の溶媒が使用環境下に存在すると、膨潤変形する。このため、電解槽等への装着時や運転時などに高分子電解質膜の破損や変形が起こりやすい問題があり、これらの欠点が少ないハンドリング性に優れた高分子電解質膜が求められている。
従来より、高分子電解質膜として、スルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜があり、パーフルオロ化されていることによって、化学的安定性に優れるという特徴がある。しかし、欠点は隔壁としてのバリヤー性が悪い点であり、例えばガス透過性が高いため、水電解により精製するガスが膜を透過しやすく電解効率が低下する欠点がある。
また、炭化水素系の高分子電解質膜も開発されており、イオン性官能基を導入したスチレン−ジビニルベンゼン系ポリマーやアクリル系ポリマーが使用されてきている。しかしながら、膜の膨潤変形が大きくハンドリング性が問題であるとともに、本質的に化学的安定性に劣るため改善が望まれている。
そのような状況下、近年芳香族炭化水素ポリマーにスルホン酸基等のイオン性官能基を導入する検討が盛んである。これら芳香族炭化水素系の高分子電解質膜は、従来型の炭化水素系高分子電解質膜に比べて化学的安定性が高い特徴があり、イオン伝導性に優れ、かつ低ガス透過性や隔離性にも優れるため有望視されている。
芳香族炭化水素系のポリマー骨格としては、芳香族ポリアリーレンエーテルケトン類や芳香族ポリアリーレンエーテルスルホン類などの、芳香族構造を含むポリマーが有望視でき、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリアリーレンエーテルなどが有望な構造として報告されている(例えば、非特許文献1、特許文献1など)。
Journal of Membrane Science, 197,p231(2002) 特開2004−149779号公報
しかしながら、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜においても、従来型の炭化水素系高分子電解質膜と同様に、膜の膨潤変形が大きい問題は残っている。この理由としては、スルホン酸基の酸解離定数が低く、かつ水との相互作用が強いために、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー膜と同程度のイオン伝導性を発現させるためには、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーの約2倍量のイオン性官能基を導入する必要がある。このため、イオン性官能基量が多くなると、これに起因して、膜が水分や電解液を含みやすくなり、その結果、膜の膨潤変形が大きくなり、電解槽等への膜の装着時や運転時に、膜の破損や変形が起こりやすくなっており、その改善が求められている。
本発明は、このような事情によりなされたもので、電解槽等での膜の破損や変形が起こりにくい、寸法安定性に優れる芳香族炭化水素系の高分子電解質膜を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の結果、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜の線膨張係数を特定の範囲に制御すると、膜に水や溶媒等の液体が吸脱着する環境下においても、膜の変形が少なく、上記課題を解決することができることを見出すに至ったのである。本発明の具体的内容を以下に示す。
(1)芳香族炭化水素系の高分子電解質膜であって、熱機械分析装置を用い窒素気流下25℃で30分間乾燥した後、5℃/分の速度で350℃まで加熱したときの寸法変化率曲線において、150〜200℃における傾きで表される線膨張係数が−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲であることを特徴とする高分子電解質膜である。
(2)線膨張係数が、−50〜10μm・m−1・℃−1の範囲である(1)に記載の高分子電解質膜である。
(3)高分子電解質が、ポリアリーレンエーテル構造を含む高分子電解質である(1)又は(2)に記載の高分子電解質膜である。
(4)(A)基材上に高分子電解質の膜を形成する工程、(B)基材上に形成された膜を、基材から剥離することなく酸性水溶液に接触させる工程、(C)酸処理された膜中の過剰の酸を、膜を基材から剥離することなく水洗除去する工程、(D)水洗された膜を基材から剥離することなく水分を除去する工程、の4つの工程を含む(1)に記載の高分子電解質膜の製造方法である。
(5)前記(A)工程が、高分子電解質を溶媒に溶解した溶液を基材上にキャスティングする工程と、キャスティングされた高分子電解質の膜に残留する溶媒を除去する工程とを含む(4)に記載の高分子電解質膜の製造方法である。
本発明の芳香族炭化水素系の高分子電解質膜は、高分子電解質が特有の配列状態で、線膨張係数が特定の範囲であるため、水分、溶媒等の液体成分の吸脱着による変形が抑制でき、電解槽などで使用しても、膜の変形や膜の破損が少なく、従来になくハンドリング性に優れる特徴を発現する。
一般的に、熱機械分析装置で測定される熱膨張係数は、温度の上昇によって物体の長さあるいは体積が変化する割合を1℃当たりで示したものであり、特に線膨張係数とは物体の長さ方向について求められる熱膨張係数である。
本発明者らは、有機物において線膨張係数は、主として原子間の結合の強さや分子間力に起因して決まる値であるが、物質の温度上昇に伴って発生する分子運動の活発化の程度を示す尺度にもなることに鑑みて、膜の線膨張係数に着目して検討した結果、膜の温度上昇に伴う分子運動の活発化のみならず、電解槽における場合のように、水分、溶媒、その他外的要因による分子運動の活発化により発生する膜の応力緩和の程度を示すことができ、ひいては、高分子電解質膜の分子配列状態、潜在ひずみを有する状態を示す指標として捉えることができることを見出したのである。
すなわち、線膨張係数の値によって、高分子電解質膜の分子配列状態、潜在ひずみを有する状態など、膜の加工状態を把握でき、どのような状態にある時、最も変形を小さく抑えることが可能かを検討し、膜の線膨張係数の値を特定の範囲に制御することで、膜の変形を抑制できることを見出したのである。
本発明における高分子電解質膜の線膨張係数の値は、熱機械分析装置を用い窒素気流下25℃で30分間乾燥した後、5℃/分の速度で350℃まで加熱したときの寸法変化率曲線において、150〜200℃における傾きで表されるものであり、膜のタテ(MD)方向とヨコ(TD)方向の平均値である。
本発明においては、高分子電解質膜が、−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲であることが必要である。この範囲の線膨張係数を有する高分子電解質膜は、膜に液体成分の吸脱着が起こって変形が発生する環境下においても、膜面積の変化が小さく、皺等の歪みが発生しにくい。このため、膜の電解槽等への装着時や電解槽の運転時に、膜の破損や変形を抑制できることになる。
線膨張係数の値が−55μm・m−1・℃−1よりも小さいと、高分子電解質膜が乾燥する過程において、収縮が発生しやすく、50μm・m−1・℃−1よりも大きいと、乾燥状態から液体成分の多い状況となる際、膜の変形が大きい傾向がある。より好ましくは、線膨張係数が−50〜10μm・m−1・℃−1の範囲であり、この範囲に線膨張係数がある時、変形が少なく、良好に取扱うことができる。更に好ましくは、−40〜0μm・m−1・℃−1の範囲である。
タテ(MD)方向とヨコ(TD)方向との、線膨張係数の差は、0〜25μm・m−1・℃−1の範囲であることが好ましい。より好ましくは、0〜15μm・m−1・℃−1である。線膨張係数の差が大きくなると、面積方向における高分子電解質膜の変形挙動に差があるため、好ましくない傾向がある。
高分子電解質膜の加工方法により、線膨張係数に異方性が生じる場合、面内で、方向によらず−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲にあることが特に好ましい。高分子電解質膜を加工する際においては、MD方向とTD方向で物性に差が生じやすいので、MDあるいはTD方向が明確な場合、両方向の違いを確認することで、異方性を確認することができる。MDあるいはTD方向が不明瞭な場合、いくつかの異なる方向で測定することが好ましい。線膨張係数の異方性が大きく、−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲から線膨張係数がはずれる場合、特定の方向に皺等の変形が起こりやすい。
線膨張係数を制御する方法としては、特に限定されるものではないが、ポリマーの配列状態に依存して値が変化するため、ポリマーの配列状態を制御できる方法を採用する。例えば、特定条件で熱処理するなどの熱的な方法により、又は加圧、減圧や延伸などの物理的な力により、あるいは、水を含む溶媒で湿潤させるなどの溶媒を使った処理により、さらには、湿潤させた後、熱により乾燥処理するなどの方法があるが、特にこれらに限定されるものではなく、これらの方法を組み合わせることができる。
線膨張係数の値は、高分子電解質膜を製造するプロセスの組み合わせの結果として表れる配列状態の指標であり、特定のプロセスに限定されるものではない。結果として、線膨張係数が−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲の高分子電解質膜とすることが重要である。
線膨張係数が−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲の高分子電解質膜を得る具体的な製造方法としては、以下の方法が好ましい。
すなわち、(A)基材上に高分子電解質の膜を形成する工程、(B)基材上に形成された膜を、基材から剥離することなく酸性水溶液に接触させる工程、(C)酸処理された膜中の過剰の酸を、膜を基材から剥離することなく水洗除去する工程、(D)水洗された膜を基材から剥離することなく水分を除去する工程、の4つの工程を含む製造方法である。この製造方法により、膜の異方性が少なく均一な物性を有する膜を製造でき、線膨張係数を最適化することができる。
(A)基材上に高分子電解質の膜を形成する工程においては、高分子電解質を溶媒に溶解した溶液を基材上にキャスティングした後、溶媒を除去する工程が、面方向に異方性の少ないフィルムを形成しやすい点で好ましい。溶融製膜などによる延伸工程を経る方法では、異方性の高い膜となる傾向がある。
次いで、(B)基材上に形成された膜を、基材から剥離することなく酸性水溶液に接触させる工程により、膜が基材に付着した状態で酸処理されるので、処理される際の膨潤などによる膜の形態変化は、膜厚方向のみに限定されることになるため、液体に接触される工程であっても、膜の変形を抑えて処理することができる。
さらに、(C)酸処理された膜中の過剰の酸を、膜を基材から剥離することなく除去することで、同様に基材に接着された状態で処理されるため、環境変化による膜の変形が少ない。
さらに(D)水洗された膜を基材から剥離することなく水分を除去する工程により、水分除去により膜が収縮により変形が発生しやすい工程においても、変形を抑制できるので、均一性に優れる膜を提供できる。基材から剥離した状態で(A)、(B),(C),(D)いずれかの工程を行うと、高分子電解質膜に面内で異方性が発生するため、線膨張係数を一定の範囲に保つことが難しくなる傾向にある。
本発明の高分子電解質膜としては、芳香族炭化水素系の高分子電解質膜に関して最適化したので、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸膜などでは最適値が違うことが推定でき、適用することはできない。また特にポリアリーレンエーテル構造あるいは/及びポリアリーレンスルフィド構造を含む高分子電解質膜に適した数値である。
高分子電解質膜として、ポリアリーレンエーテル構造あるいは/及びポリアリーレンスルフィド構造を含むポリマーは、化学的、あるいは物理的耐久性が優れているために特に高分子電解質膜として好ましく、本発明に適したポリマーである。
また、特に一般式(1)で表される構成単位を含むポリマーにおいて、好適に適用することができる。一般式(1)の構成単位に、さらに異なる構成単位を含んでいてもよい。
(ただし、Arは2価の芳香族基、ZはO原子又はS原子である。)
一般式(1)のZは、O原子であることが靭性に優れるためより好ましい。
さらに、上記一般式(1)で示される構成単位は、下記一般式(2)で示される構成単位であることが好ましい。
(ただし、Arは2価の芳香族基、ZはO原子又はS原子である。)
一般式(1)のZは、O原子であることが靭性に優れるために好ましい。
一般式(1)あるいは(2)で表されるポリアリーレンエーテル構造を含むポリマーは、下記一般式(3)で表される化合物と、芳香族ジオールあるいは/及び芳香族ジチオールを原料として用いた、芳香族求核置換反応により重合することができる。
一般式(3)の具体的な化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリル及び2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好な高分子電解質膜とすることができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている
(ただし、Wは塩素又はフッ素を示す。)
芳香族求核置換反応において、上記一般式(3)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
上述の一般式(1)乃至(2)で表される構成成分は、上述の一般式(3)で表される化合物とともに、芳香族ジオールあるいはアルキルジオールや芳香族ジチオールあるいはアルキルジチオールをモノマーとして用いて、芳香族求核置換反応をすることでより得ることができる。モノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、末端ヒドロキシル基含有ポリフェニレンエーテルオリゴマー、4,4’−チオビスベンゼンチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、4,4’−ビフェニルジチオール、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−1,4−ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3−ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、1,5−ビス(ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,6−ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種ジオールあるいはジチオールを使用することができる。
また、これらのジオールあるいはジチオールには、炭素数1〜30の範囲のアルキル基、フェニル基などの芳香族系の置換基、ハロゲン、シアノ基、スルホン酸基及びその塩化合物などの置換基が結合していても良い。アルキル基や芳香族系の置換基にハロゲン、シアノ基、スルホン酸基などの置換基が結合していても良い。置換基の種類は特に限定されることはなく、芳香族ジオールあるいはジチオールにおいては芳香環あたり0〜2個であることが好ましい。これらジオールあるいはジチオールは、単独で使用することができるが、複数併用することも可能である。
また、イオン性官能基を有する構造を導入することにより良好な高分子電解質膜として機能する。イオン性官能基を導入する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族系炭化水素系ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号公報に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、重合に用いるモノマーの一つとして、一般式(3)のモノマーやジオール、ジチオールに加えて、少なくとも1種以上のイオン性官能基を含むモノマーを、原料として使用し、合成することもできる。イオン性官能基はモノマーの主鎖に結合していても、側鎖に結合していても良い。例えばスルホン酸基を導入する場合、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基あるいはスルホン酸基の前駆体を含有する芳香族ジハライドやスルホン酸基含有ジオール、ジチオールを用いることで合成することができる。この際、スルホン酸基含有ジオール、ジチオールを用いるよりも、スルホン酸基あるいはスルホン酸基の前駆体を含有するジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。スルホン酸基を含有するジハライドモノマー中のジハライドの置換位置により主鎖あるいは側鎖にスルホン酸基を結合させるなどスルホン酸基の部位を制御することもできる。
スルホン酸基あるいはスルホン酸基の前駆体を含有するジハライドとしては、特に限定されるものではないが、一般式(4)の構造のモノマー、例として、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、及びそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの、等を有効な例として挙げることができる。一般式(4)の構造のモノマーにおいては、重合度を上げることが容易である。なお、スルホン酸前駆体を含有するジハライドを用いる場合は、重合後スルホン酸基に変える処理を行うことが好ましい。例えばスルホン酸基に変えて、スルホン酸のアルキルエーテルを使用する場合、重合後、例えば酸性水溶液中で加水分解することによって、スルホン酸基の形に変換することができる。
(ただし、Yはスルホン基又はカルボニル基、Xは1価のカチオン種又はアルキル基等の置換基、Wは塩素又はフッ素を示す。)
また、本発明のポリアリーレンエーテル構造を含むポリマーにおいては、別種ポリマーとブレンドされていても良いし、イミド構造などの他の構造が含まれていても良い。このとき、上記一般式(1)あるいは(2)の構成単位を含むポリマー以外のポリマーとブレンドする際は、構成成分の50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、本発明のポリアリーレンエーテル構造を含むポリマーの特性を活かした高分子電解質膜とすることができる。
さらに上記ポリマーには架橋を可能とする成分が含まれていても良く、任意の段階で架橋することも可能である。架橋方法としては、熱架橋、ラジカル架橋、放射線架橋など公知の方法を取ることもできる。また酸化防止剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、熱安定剤、静電気防止剤、消泡剤、抗菌剤、粘度調整剤、重合禁止剤、分散剤、ラジカル防止剤、シリカ粒子やアルミナ粒子やチタニア粒子やホスホタングステン酸粒子、リン酸ジルコニウム粒子やそれらの誘導体などの無機化合物、無機−有機のハイブリッド化合物、イオン性液体などの各種添加剤を含んでいても良い。
高分子電解質膜としては、イオン性官能基含有量が0.8〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.8meq/gよりも少ない場合には、十分なイオン伝導性を示さない傾向がある。また、元来特別な線膨張係数に設定せずとも変形が小さい。3.5meq/gよりも大きい場合にはポリマーの膨潤が大きくなりすぎて本発明の線膨張係数の範囲に抑えたとしても使用に適さなくなる傾向がある。より好ましくは1.2〜2.8meq/gである。なお、イオン性官能基量はポリマー組成より計算することができし、実測も可能である。
本発明のポリアリーレンエーテル構造を含むポリマーを芳香族求核置換反応により重合する方法は特に限定されるものではないが、例えば、活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/又はジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。
重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。
反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にし得るものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、反応温度、ポリマー濃度、反応時間などを制御することで得られるポリマーの分子量を調整できる。反応温度としては、前記にあるように50℃〜250℃の範囲にあることが特に好ましく、温度が高いほど分子量の増加速度が速くなる傾向にあるので生産性に優れている。ポリマー濃度としては、モノマー濃度として2〜50質量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。2質量%よりも少ない場合は、分子量が上がりにくい傾向がある。一方、50質量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。反応時間は、0.2〜300時間、好ましくは2〜80時間である。反応時間が0.2時間より短いと系の温度が一定とならないため均一に反応させるのは困難な傾向にあり、300時間を超すと生産性の面から好ましくない。分子量としては反応時間が長いほど高くなる傾向にある。
また分子量を制御する手法として、ポリマーの末端を封鎖することで、重合反応が必要以上に進むことを抑制することも可能である。例えば、反応活性な部位が一カ所であるモノマーを添加する方法を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
ポリアリーレンエーテル構造あるいは/及びポリアリーレンスルフィド構造を含む高分子電解質膜は、例えば上記ポリマーから、押し出し、圧延又はキャスティングなど任意の方法でフィルム状に成形することによって得ることができる。場合によっては、イオン性官能基がNa塩やK塩になったもの、あるいはアルキル基等の置換基型になったものを用いて成形することもできる。
本発明において高分子電解質膜に成形する方法としては、特に適当な溶媒に高分子電解質を溶解した溶液から基材上にキャスト後、溶媒を除去する方法が好ましい。溶解した溶液を基材にキャストした後、溶媒を除去することによって、基材に高分子電解質膜を密着させることができる。そのため、高分子電解質膜の処理を行う際の、変形等の問題を抑制することができる。また基材上にキャスト製膜することによって、延伸する場合とは異なり、均質性の高い高分子電解質膜とすることができる。
基材としては特に限定されるものでは無いが、ハンドリング性、耐薬品性、耐熱性の面から適宜選択できる。例としては、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、などが好適な例として挙げられると共に、スチールベルトを用いることもできる。
基材の厚みとしては25μmから250μmの範囲にあることが好ましい。基材の厚みが25μmよりも薄いと高分子電解質膜をサポートするのに不十分であり基材ごと変形する、一方250μmを越えると基材が厚すぎてハンドリング性が困難となる。
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。
これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50質量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1質量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50質量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。
キャスティングする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1100μmであることが好ましい。より好ましくは50〜500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとフィルムとしての形態を保てなくなる傾向にあり、1100μmよりも厚いと不均一なフィルムができやすくなる傾向にある。溶液のキャスティング厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにすることができる。溶液の粘度が高い場合には、基材や溶液を加熱して高温でキャスティングすると溶液の粘度が低下して容易にキャスティングすることができる。
基材上にキャスティングした溶液から、溶媒を除去することによって、基材上に高分子電解質膜を形成することができる。溶媒の除去は、ポリマーの貧溶媒に浸積する方法や、乾燥する方法を取り入れることができるが、均一性を保つためには、乾燥による方法を取り入れることが特に好ましい。具体的には、基材上に溶液をキャスティングした後、乾燥処理によってポリマー成分に対して溶媒量が40質量%以下となるまで除去することによって、基材上に高分子電解質膜を密着させることが好ましい。さらに好ましくは30質量%以下である。乾燥後の状態において、ポリマー成分に対する溶媒量が40質量%よりも多い場合、基材との密着性を保つことが難しい傾向にある。また高分子電解質膜としての形態を良好に維持することが難しい傾向もある。
乾燥温度として好ましくは、40〜200℃の範囲であり、特に好ましくは60〜180℃の範囲である。乾燥温度が40℃未満の場合、溶媒の除去速度が遅く生産に適さない傾向にあり、200℃を越える場合、乾燥速度が速いことにより、高分子電解質溶液は一様に乾燥されず、変形が起こりやすくなる傾向にある。
乾燥はポリマーや溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶媒の乾燥除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。
次いで、高分子電解質膜を基材上に形成する工程の後に、高分子電解質膜に残留する溶媒を除去する工程を含むことが好ましい。残留する溶媒の除去を行わないと、高分子電解質膜とした際に強度を維持できない傾向にある。好ましくは、水を主成分とする溶媒で洗浄する工程を経ることが好ましい。水とキャスティング時の溶媒を含む洗浄槽に浸積する工程は好ましい例であるし、シャワー洗浄も好ましい例である。それら洗浄手法を組み合わせても良いし、複数回実施することによって、フィルムに存在する溶媒を段階的に減らしていくことも可能である。洗浄に用いる水を主成分とする溶媒の温度は特に限定されるものではないが、1〜120℃の範囲が適正である。特に好ましくは20〜100℃の範囲である。100℃以上の温度で洗浄する場合は加圧下で処理することもできる。1℃以下の場合、洗浄効率が悪いため好ましくなく、120℃を越える場合、高分子電解質膜が大きく膨潤しようとするため基材から剥離しやすい傾向にある。
高分子電解質膜の形成工程において、高分子電解質膜は基材上に形成されており、かつ大部分の溶媒が除去されているため、変形等が発生しにくく、残留溶媒を効率よく除去することができる。また、工程中に膜は基材に密着されて処理されるので、水洗時に膨潤が起こったり、変形する等の問題がなくなり、本発明の高分子電解質膜を得るために優れた手法である。
次いで、スルホン酸基が塩あるいはアルキル基等の置換基であるポリマーから得られた膜中のスルホン酸基は、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することができる。この場合、硫酸、塩酸等の水溶液中に、得られた膜を浸漬処理することが効果的である。酸処理により、スルホン酸ナトリウム塩やスルホン酸カリウム塩といった形のイオン性官能基がスルホン酸基に変換される。またアルキル基等でスルホン酸基の前駆体として存在する場合、加水分解処理によって、フリーのスルホン酸に変換することができる。
酸処理を行った場合においては、酸を含む溶液等に接触させるので、過剰な酸を含むことがあるので、酸処理膜は、洗浄することが好ましい。一方スルホン化反応を用いてスルホン酸基を結合させた高分子電解質膜においては、スルホン化反応時の過剰な酸性分が存在するので洗浄することが好ましい。洗浄用溶媒としては、水を主成分とする溶媒が好ましい。洗浄後は必要に応じて乾燥することが好ましい。
この工程においても膜の処理は基材上で行うことが特に好ましい。その理由としては膜の膨潤収縮等の変形を防ぎ、高分子電解質膜の均質性を保つためである。洗浄に用いる水を主成分とする溶媒の温度は特に限定されるものではないが、1〜110℃の範囲が適正である。特に好ましくは20〜90℃の範囲である。1℃未満の場合、洗浄効率が悪く、110℃を越える場合高分子電解質膜が基材から剥離しやすい傾向がある。乾燥温度は1〜200℃の範囲で行うことができるが、特に好ましくは20〜150℃である。1℃未満の場合、乾燥速度が遅く、200℃を越える場合、高分子電解質膜と基材の密着性が強くなりすぎる傾向にあるため好ましくない。
乾燥後は、高分子電解質膜を基材から剥離することができる。剥離工程前まで基材上で処理することによって均質な優れた高分子電解質膜を得ることが可能である。その結果、特に良好に線膨張係数を−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲となるよう制御することができる。線膨張係数をこの範囲に制御することによって、電池や電解質槽内で高分子電解質膜が変形し、性能を低下させたり、電池や電解槽に取り付ける際のハンドリングが困難化するなどの問題を効果的に抑制することができる。
高分子電解質膜としては、高分子電解質膜とした際のイオン伝導性の面からできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜200μmであることが好ましく、5〜120μmであることがさらに好ましく、20〜90μmであることが最も好ましい。5μmより薄いと取扱いが困難となり、短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いと電気抵抗値が高くなり高分子電解質膜の電気化学的特性が低下する傾向にある。
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<膜厚測定>
高分子電解質膜の厚みは、PEACOCK DIGITAL GAUGE MODELD−10SとDIGITAL COUNTERを組み合わせて測定することにより求めた。室温が20℃で湿度が40±5RH%にコントロールされた測定室内で24時間以上静置した高分子電解質膜を5×5cmの大きさに切断したサンプルに対して、20箇所の厚みを測定し、その平均値を膜厚とした。
<イオン交換容量>
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらに乾燥窒素ガスで満たしたグローブボックスで30分間放置冷却した後、乾燥質量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/Lの濃度の塩化ナトリウム−超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
<イオン伝導性測定>
平坦なテフロン(登録商標)板上に、幅10mmで長さ5cmの短冊状に切った高分子電解質膜サンプルを置いた。次いでサンプル表面に、4本の白金線(直径:0.2mm)を、サンプルの幅方向と平行となるように10mm間隔で押し当て、さらに上からテフロン(登録商標)板を重ねた。その後、サンプルと白金線が動かないよう治具を用いてテフロン(登録商標)板を外側から固定した。次いで80℃95%RHに設定した恒温・恒湿オーブン内で(株式会社ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)同セットアップを24時間静置した。
同環境下において、外側に配置した白金線の1本を基準とし、極間距離を変えて白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。測定し、電極間距離とコールコールプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配(最小二乗法近似)から、以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルしたイオン導電率を算出した。なお最小二乗法近似により勾配を求める際の決定係数として、0.99以上であることを確認した。0.99未満である場合は再試験を行った。
イオン導電率[S/cm]=1/(膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm])
<線膨張係数測定>
高分子電解質膜について、充分に乾燥したシリカゲルを充填したデシケータ中に3時間放置した後、下記条件にて、150〜200℃の間の伸縮率/温度を測定し、線膨張係数を算出した。測定は、MD、TD方向で実施し、その平均値を求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 250℃
昇温速度 ; 5℃/min
(25℃で30分間窒素気流下放置後、昇温開始)
雰囲気 ; 乾燥窒素
<ハンドリング試験>
40%Pt/Ir触媒担持カーボンとナフィオン(登録商標)(EW1100)とポリテトラフルオロエチレンを、質量比で10:4:1となるように、40%Pt/Ir触媒担持カーボン(Pt:Ir=1:1)にデュポン社製20%ナフィオン溶液及びポリテトラフルオロエチレン(Aldrich Chemical Company,Inc製 )60質量%溶液を加えることで調整した。次いで、均一となるまで撹拌混合することでアノード用触媒ペーストを調製した。また、Pt/Ir触媒担持カーボンの代わりに40%Pt触媒担持カーボンを用いて、同様の手法により、カソード用触媒ペーストを調整した。次いで電極作製工程として、前記触媒ペーストを、スクリーン印刷により、カーボンペーパー(東レ社製 TGPH−060)に塗布乾燥して、アノード及びカソード電極をそれぞれ作製した。
上記2種類の電極間にイオン交換膜を、電極触媒層が膜試料の中心に来るよう挟み、180℃にて3分間、加圧・加熱することにより、電極とイオン交換膜を接合した。この際、高分子電解質膜としては、25×25cmのサイズとし、電極としては、22×22cmとした。
作製した膜電極接合体を20℃、湿度40±5%に調湿した環境に24時間放置後、膜電極接合体の様子を観察した。さらにこの接合体を、ガスケットと共に、水あるいはガス流路を有する2枚の集電体で挟み込んだ構造の水電解用セルに組み込んだ。アノード側より超純水を流しながら両電極間に電圧を徐々に印加し、水の電気分解を行った。セルの組み立て圧としては、0.5MPaとなるよう設定した。
(実施例1)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)、4,4’−ビフェノール(略号:BP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(略号:BPS)、1,6−ヘキサンジチオール(略号:HDT)をモル比で、38:62:56:42:2となるように配合した混合物30gと、炭酸カリウム2.4モル、乾燥したモレキュラーシーブ3−A41gを1000ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。500mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)を入れて、150℃で1時間撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約9時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。
次いで、乾燥ポリマーを濃度20質量%となるようにNMPに溶解し、濾過した。その後、流延法によって、(1)平滑なポリイミドフィルムの上に、ポリマー溶液をキャスティングし、次いで、80℃で30分間、150℃で1時間乾燥させることでフィルム上にポリマー薄膜を形成させた。(2)ポリマー薄膜をフィルムから剥がすことなく30℃イオン交換水に4時間浸積した後、28℃で乾燥処理を行い、さらに室温の2mol/Lの濃度の硫酸水溶液へ2.5時間浸積処理を行った。(3)そのままさらに31℃水洗処理、(4)27℃乾燥処理を連続的に行うことによって、実施例1の高分子電解質膜を得た。
(実施例2)
実施例1において、膜作製方法として、(1)平滑なポリイミドフィルムの上に、ポリマー溶液をキャスティングし、次いで80℃で40分間、180℃で1時間乾燥させることでフィルム上にポリマー薄膜を形成させた。(2)ポリマー薄膜をフィルムから剥がすことなく45℃イオン交換水に3時間浸積した後、40℃で乾燥処理を行い、さらに室温の2mol/Lの濃度の硫酸水溶液へ2.5時間浸積処理を行った。(3)そのままさらに41℃水洗処理、(4)39℃で乾燥処理を連続的に行うことによって実施例2の高分子電解質膜を得た。
(比較例1)
実施例1において、膜作製方法として、(1)平滑なポリイミドフィルムの上に、ポリマー溶液をキャスティングし、次いで80℃で30分、150℃で1時間乾燥させることでフィルム上にポリマー薄膜を形成させた。(2)ポリマー薄膜をフィルムから剥がした後、28℃イオン交換水に4時間浸積した後、27℃で乾燥処理を行い、さらに室温の2mol/Lの濃度の硫酸水溶液へ2.5時間浸積処理を行った。(3)さらに30℃水洗処理、(4)ろ紙に挟んだ状態で28℃で乾燥して比較例1の高分子電解質膜を得た。
(比較例2)
実施例1において、膜作製方法として、(1)平滑なポリイミドフィルムの上に、ポリマー溶液をキャスティングし、次いで80℃で30分間、150℃で1時間乾燥させることでフィルム上にポリマー薄膜を形成させた。(2)ポリマー薄膜をフィルムから剥がした後、60℃イオン交換水に4時間浸積した後、28℃で乾燥処理を行い、さらに室温の2mol/Lの濃度の硫酸水溶液へ2.5時間浸積処理を行った。(3)さらに80℃水洗処理を行った後(4)膨潤した膜を金属製の金枠に固定し、次いで28℃乾燥処理を行うことによって、比較例2の高分子電解質膜を得た。
実施例1、2及び比較例1、2の高分子電解質膜の物性評価結果を表1に示す。
同じ構造のポリマーを用いて評価した結果、高分子電解質膜の製造方法は異なるが、イオン交換容量及びイオン導電性はよく似た値を示すことを確認できた。しかしながら、製造法の違いにより、線膨張係数の値は大きく異なっていた。
次いで、実施例1、2及び比較例1、2に電極を貼り付け、ハンドリング製を確認した。電極と接合後、恒温恒湿条件で放置し、高分子電解質膜に発生する歪みの状態を確認した。
比較例1、2の高分子電解質膜を使用した接合体において、歪みが顕著であった。比較例1においては電極の一部が剥がれていた。
次いで、水電解用セルに組み込み水を流したが、比較例1、2においてはセルから水漏れが発生し、上手く組み込むことが難しかった。
以上のことから、膜のイオン交換容量やイオン導電性は類似であっても、高分子電解質膜の線膨張係数は異なっており、ハンドリング性に影響することを確認でき、本発明の線膨張係数を−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲に規定した高分子電解質膜においては、ハンドリング性が良好であることが確認できた。
(実施例3、4)
原料モノマーの組み合わせがS−DCDPS、DCBN、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(組成1)で、実施例1と同様にして組成1ポリマーを得た。次いで、組成1ポリマーを用いて実施例1と同様にして実施例3の高分子電解質膜を得た。また、組成1ポリマーを用いて実施例2と同様にして実施例4の高分子電解質膜を得た。
得られた実施例3、4の膜の評価結果を表2に示す。
(実施例5)
原料モノマーの組み合わせがS−DCDPS、DCBN、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(組成2)で、実施例1と同様にして、組成2ポリマーを得た。次いで、組成2ポリマーを用いて実施例1と同様にして実施例5の高分子電解質膜を得た。
得られた実施例5の膜の評価結果を表2に示す。
(比較例3、4)
上記の組成1ポリマーを用いて比較例1と同様にして比較例3の高分子電解質膜を得た。また、組成2ポリマーを用いて比較例と同様にして比較例4の高分子電解質膜を得た。
得られた比較例3、4の膜の評価結果を表2に示す。
実施例1、2と同様、実施例3〜5においてはハンドリング性が良好であったが、比較例3、4の高分子電解質膜は、上手くハンドリングすることができなかった。
本発明の芳香族炭化水素系の高分子電解質膜は、電解槽などで使用しても、膜の変形や膜の破損が少なく、従来になくハンドリング性に優れる特徴を有し、イオン伝導性と共に隔離性が必要な用途の高分子電解質膜として有用である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表されるポリアリーレンエーテル構造及び/又はポリアリーレンスルフィド構造を含む芳香族炭化水素系の高分子電解質膜であって、熱機械分析装置を用い窒素気流下25℃で30分間乾燥した後、5℃/分の速度で350℃まで加熱したときの寸法変化率曲線において、150〜200℃における傾きで表される線膨張係数が−55〜50μm・m−1・℃−1の範囲であることを特徴とする高分子電解質膜。

    (ただし、Arは2価の芳香族基、ZはO原子又はS原子である。)
  2. 線膨張係数が、−50〜10μm・m−1・℃−1の範囲である請求項1に記載の高分子電解質膜。
  3. (A)基材上に高分子電解質の膜を形成する工程、(B)基材上に形成された膜を、基材から剥離することなく酸性水溶液で処理する工程、(C)酸処理された膜中の過剰の酸を、膜を基材から剥離することなく水洗除去する工程、(D)水洗された膜を基材から剥離することなく水分を除去する工程、の4つの工程を含む請求項1に記載の高分子電解質膜の製造方法。
  4. 前記(A)工程が、高分子電解質を溶媒に溶解した溶液を基材上にキャスティングする工程と、キャスティングされた高分子電解質の膜に残留する溶媒を除去する工程とを含む請求項に記載の高分子電解質膜の製造方法。
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