JP5239277B2 - 高分子電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Description
特に、高分子電解質の溶媒溶液を支持体上に流延後、脱溶媒して製膜する、いわゆる溶液製膜で製造される高分子固体電解質膜は、膜形状の安定化のみならず、膜の形態安定性、膜特性の安定性などの向上が求められている。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1] イオン性基含有高分子電解質溶液を支持体上に流延して流延膜とする流延工程(A1)、前記流延膜から溶媒を蒸発させる乾燥工程(A2)及び前記乾燥膜を前記イオン性基含有高分子電解質の溶媒と混和する液体で溶媒を抽出する脱溶媒工程(A3)からなり、工程(A2)及び工程(A3)を、膜を支持体から剥離することなく実施する高分子電解質膜の形成方法において、乾燥工程(A2)における高分子電解質溶液の塗工厚み係数Tと乾燥速度R1(g/m2・分)との関係が、下記式(I)の範囲で溶媒含有率15〜30質量%の自己支持性膜となるまで乾燥することを特徴とする高分子電解質膜の形成方法。
2≦R1・T≦56 (I)
(ただし、R1:乾燥速度(g/m2・分)、
T:高分子電解質溶液の塗工厚み(μm)/300(μm) )
[2] 脱溶媒工程(A3)における脱溶媒速度R2(g/m2・分)を、1〜20g/m2・分にして、溶媒含有率8質量%未満まで脱溶媒する[1]に記載の高分子電解質膜の形成方法。
[3] 前記[1]又は[2]で形成された高分子電解質膜を支持体に付着させたまま、無機酸含有酸性液に接触させてイオン性基を酸型に変換する酸処理工程(B)、前記酸処理膜中の遊離の酸を除去する酸除去工程(C)及び前記酸除去膜を乾燥する乾燥工程(D)を有する高分子電解質膜の製造方法であって、前記(B)から(D)までの工程を、高分子電解質膜を支持体から剥離することなく処理することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。に記載の高分子電解質膜の製造方法。
[4] 前記[3]で得られた高分子電解質膜中のDSC法による平均細孔径が、0.1〜10nmである高分子電解質膜の製造方法。
[5] イオン性基含有高分子電解質が、一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリアリーレンエーテル系化合物である[1]〜[4]のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
また、膜厚が160μm以下の極薄の高分子電解質膜であっても、膜全面で厚みムラが小さく、シワ及び凹凸が少ない、均一で形態安定性に優れた高分子電解質膜を製造することができる。さらに、膜内部の細孔径を制御できることから、膜特性、特に透過性能が安定した高分子電解質膜を製造することができる。特に、軟化温度が90℃以上、好ましくは140〜250℃の高分子電解質の場合に有効である。
さらに、乾燥工程(A2)における高分子電解質溶液の塗工厚み係数Tと後述する方法により測定した乾燥速度R1(g/m2・分)との関係が、下記式(I)の範囲で溶媒含有率15〜30質量%の自己支持性膜となるまで乾燥することが特徴である。
2≦R1・T≦56 (I)
(ただし、R1:乾燥速度(g/m2・分)、
T:高分子電解質溶液の塗工厚み(μm)/300(μm) )
R1・Tの好ましい範囲は、10〜50であり、この範囲であると、乾燥による発泡の発生や膜表面の急激な乾燥や荒れを回避でき、品位に優れた高分子電解質膜を提供でき、また、膜の品位と生産性とのバランスの点でも好ましい。
R1・Tの範囲が、2〜30であると、高分子電解質膜中の平均細孔径(DSC法による)が、0.1〜10nmの範囲内で、細孔径のバラツキが小さくなり、膜の形態安定性以外にも、イオン伝導性を維持した状態でメタノール透過抑止性を向上させるといった膜特性がさらに良好になりやすい。
例えば、温度としては、用いる溶媒の種類にもよるが、用いる溶媒の沸点の100℃以下の温度で膜の溶媒含有率が15〜30質量%となるまで乾燥させて自己支持性を得たり、支持体側の膜の溶媒含有率が15〜30質量%となった時点で、用いる溶媒の沸点の70℃以下までの温度でさらに溶媒を除去させて、自己支持性を得られるまで乾燥するといった方法が適用できる。
風速としては、塗膜に対して垂直流であれば、0.5m/分や1.0m/分といった比較的緩やかな風速であることが、膜表面の均一性が得られ易い点で好ましい。平行流であれば、塗膜表面への物理的な衝突はないため、10m/分や20m/分といった風速でも発泡の生じない乾燥速度であれば適用可能である。
溶液のキャスティング厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャスティングした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温で行い、後に昇温させる方法がある
。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。
また、溶液の粘度が高い場合には、支持体や溶液を加熱して高温でキャスティングすると溶液の粘度が低下して容易にキャスティングすることができる。
イオン性基含有高分子電解質の溶媒と混和する液体とは、溶媒と混和し、脱溶媒できるものであれば特に限定されないが、水が好ましい。
その結果、膜を支持体から剥離することなく酸性水溶液に接触させることが可能となり、膜全面が支持体で固定され、膜平面方向の膨潤が抑制され、厚みムラやシワの発生を低減することができる。
酸処理膜中の過剰な酸を、膜を支持体から剥離することなく除去する工程は、水に接触させることが好ましい。水に接触させる方法としては、シャワーなどの流水に接触させる方法、水に浸漬する方法など特に限定されない。また、水との接触を繰り返し行っても構わない。この際、接触に用いる水に塩が含まれていると酸性基が金属塩に再度変換される可能性があるので、少なくとも、イオン交換水のようなイオン除去処理を行った水を使用することが望ましい。
乾燥工程(D)を終えたあとの膜中の残存溶媒含有率は、1質量%未満であることが好ましく、より好ましくは、そのままではNMRでは検出できない程度の残存溶媒含有率である。
が好ましく、5〜150μmであることがさらに好ましく、特に好ましくは5〜100μmである。高分子電解質膜の厚みが3μmより薄いと高分子電解質膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いと高分子電解質膜が頑丈となりすぎ、ハンドリングが難しくなる傾向にある。
例えば、芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーとしては、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合及びケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有する構造を持つ非フッ素系のイオン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、及びそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。
なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのイオン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
すなわち、一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリアリーレンエーテル系化合物である。
一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位のポリマー中の比率(モル比)は、ポリマー組成より計算することができるスルホン酸基含有量で示すと、0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン伝導膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きい場合にはイオン伝導膜を高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。より好ましくは0.6〜3.0meq/gである。
1は1以上の整数を表す。]
さらに高めたり、電解質膜に光架橋性を付与したりすることができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。Z5はO原子であるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。Z5がSであると耐酸化性が向上するため好ましい。
0.05≦(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)≦0.7・・・(数式2)
0.01≦(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)≦0.95・・・(数式3)
(上記数式中、n3は一般式9で表される繰り返し単位のモル%を、n4は一般式3で表される繰り返し単位のモル%を、n5は一般式10で表される繰り返し単位のモル%を、n6は一般式4で表される繰り返し単位のモル%を、n7はその他の繰り返し単位のモル%を、それぞれ表す。)
一般式11で表される化合物のうち、スルホン酸基が塩になっている化合物の例としては、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンなどを挙げることができる。
<ポリマーの溶液粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dLの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
<ポリマーの軟化温度>
5mm幅の酸型の膜を、チャック幅10mmで、50℃から250℃まで2℃/分で加熱しながら、10Hzの動歪を与えて動的粘弾性を、Rheogel E−4000(東機産業社製)を用いて測定した。E’が大きく低下する変曲点の温度を軟化温度とした。
支持体上の流延膜を各種乾燥条件で乾燥して得られた各種乾燥膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、各溶液をH−NMRにより積算回数128回の条件でNMRスペクトル分析して溶媒量を求め、ポリマー質量に対する残溶媒量から、単位時間・単位面積当りの蒸発量を算出し、乾燥速度を算出した。またここで言う乾燥速度は、熱による材料予熱期間及び構造形成に寄与する減率乾燥期間以外の定率的な乾燥が進んでいる状態での速度を意味する。
支持体上の乾燥膜を各種脱溶媒条件で脱溶媒して得られた各種脱溶媒膜を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、各溶液をH−NMRにより積算回数128回の条件でNMRスペクトル分析して溶媒量を求め、ポリマー質量に対する溶媒含有量から、単位時間・単位面積辺りの含有溶媒の減少量を算出し、脱溶媒速度を算出した。またここで言う脱溶媒速度は、前記イオン性基含有高分子電解質の溶媒と混和する液体と乾燥工程後に含まれる前記イオン性基含有高分子電解質膜中の溶媒とが、定率的に変換し合っている状態での速度を意味する。
高分子電解質膜の厚みは、支持体から剥離した後、市販のマイクロメーター(Mitutoyo製マイクロメーター、0.001mm)を用いて測定した。室温が20℃で湿度が30±5%RHにコントロールされた測定室内で24時間以上静置した高分子電解質膜を5×5cmの大きさに切断したサンプルに対して、20箇所の厚みを測定し、その平均値を厚みとし、標準偏差値にて厚みムラの程度を示した。
高分子電解質膜の凹凸の測定は、市販の三次元非接触表面形状計測装置(菱化システム
マイクロマップ)を用いて測定した。室温が20℃で湿度が30±5%RHにコントロールされた測定室内で24時間以上静置した高分子電解質膜を3×3cmの大きさに切断し、その両面について形状を観察、最大凸部と最大凹部の高さの差R3を測定した。
イオン交換膜を20℃の水に2日間浸漬して膨潤させた後、30〜50mgをサンプリングし、密閉型の示差走査熱量分析(DSC)用のアルミパンに詰め、クリンプした。その際、表面に付着した水をキムワイプで拭き取って除去した。
DSCの温度プログラムとしては、まず室温から−100℃まで50℃/分の速度で冷却し、−100℃で10分間保持した。その後、2.5℃/分の速度で15℃まで昇温し、昇温時に現れたバルク水の融解温度と、凝固点降下を起こした水の融点の差を求め、これをΔTとした。求めたΔTから細孔理論に従って以下の式で細孔径を求め、10サンプルの最大径と最小径の差R4を測定した。
細孔径r(Å)=164/ΔT
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5cm×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケーター中で30分間放置冷却した後、乾燥質量を測定した(Ws)。次いで、200mLの密閉型のガラス瓶に、200mLの1M(モル/リットル)塩化ナトリウム−超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、溶液30mLを取り出し、10mM(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:mL、Wsの単位:g)
イオン伝導性σは次のようにして測定した。
自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン樹脂製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、25℃の水中に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。極間距離は、25℃の水中では1.5cmに、80℃、
95%RHでは1cmにそれぞれ設定した。
イオン伝導性[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
また、上記分析を10サンプルに対し行い、最大と最小の差R5を測定した。
プロトン交換膜のメタノール透過速度及びメタノール透過係数は、以下の方法で測定した。
25℃に調整した5M(モル/リットル)の濃度のメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用)に24時間浸漬したプロトン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mLの5モルの濃度のメタノール水溶液を、他方のセルに100mLの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、プロトン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフにより測定することで算出した(プロトン交換膜の面積は、2.0cm2)。すなわち、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m2/s]
=(Ct[mmol/L/s]× 0.1[L])/2×10−4[m2]
メタノール透過係数[mmol/m2/s]
=メタノール透過速度[mmol/m2/s]×膜厚[m]
また、上記分析を10サンプルに対し行い、最大と最小の差R6を測定した。
3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩579.1g、2,6−ジクロロベンゾニトリル675.4g、4,4'−ビフェノール941.9g、炭酸カリウム803.2g、N−メチル−2−ピロリドンを5438.9g入れて、窒素雰囲気下にて150℃で1時間撹拌した後、反応温度を200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた。放冷の後、水中にストランド状に沈殿させ、得られたポリマーを水中で40時間洗浄した後、乾燥した。このポリマーの対数粘度は1.11dL/g、軟化温度は245℃であった。
次いで、このポリマーを、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として用い、ポリマー濃度が27質量%となるようにポリマー溶液を調整した。調整した溶液を、支持体のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ブレードコーターにてポリマー溶液の塗工厚みを300μm、450μm、600μmになるよう温度25℃で連続的に流延し、表1〜3に示す乾燥条件で乾燥させ、自己支持性を示すようになった膜の状態を調べた。また、乾燥膜を採取して、それぞれの膜中の溶媒含有量を測定した。
残存溶媒量をもとに膜のR1:乾燥速度(g/m2・分)を求め、R1・Tを算出した。
得られた結果を表1〜3に示す。
なお、乾燥工程(A2)後の製膜状態(膜の外観、表面品位)は、以下の3段階で評価した。
○:発泡やうねりが無く、表面形態が良好。
△:発泡やうねりは無いが、厚みムラが認められる。
×:発泡やうねりが有り、表面形態・厚みムラ共に不良。
得られた高分子電解質膜(実施例及び比較例の一部)についての評価結果を表5〜7に示す。
なお、乾燥工程(D)後の膜の外観、表面品位は、以下の3段階で評価した。
○:水滴痕やうねり、シワが無く、表面形態が良好。
△:水滴痕やうねり、シワは無いが、厚みムラが認められる。
×:水滴痕やうねり、シワが有り、表面形態・厚みムラ共に不良。
結合水を取り除いた3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(略号:S−DCDPS)38.8g、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)53.5g、4,4’−ビフェノール(略号:BP) 18.2g、4,4’−チオビスフェノール(略号:BPS) 64.0g、炭酸カリウム 59.4g、N−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP) 375.3gを原料とする以外は、実施例1と同様にして対数粘度1.37l/g、軟化温度250℃のポリマーを得た。
さらに、ポリマー濃度が26質量%となるようにポリマー溶液を調整し、以降は実施例1と同様にして塗工厚みが300μmにおける高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜の評価結果を表8及び表9に示す。
乾燥したS−DCDPS 81.0g、DCBN 72.9g、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(大日本インキ化学工業社製SPECIANOL DPE−PL;化学式15においてnが1〜8の成分を含む混合物でnの平均値は5である構造であるもの)(略号:DPE) 191.6g、炭酸カリウム89.5g、NMP 1116.1gを用い、反応時間を8時間にした他は、実施例1と同様にして対数粘度0.63dL/g、軟化温度182℃のポリマーを得た。
さらに、ポリマー濃度が30質量%となるようにポリマー溶液を調整し、以降は実施例1と同様にして塗工厚みが300μmにおける高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜の評価結果を表10及び表11に示す。
実施例1において、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩579.1gのかわりに3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン2ナトリウム塩536gを用いて同様にポリマーを合成した。得られたポリマーの対数粘度は0.87dL/gであった。
さらに、ポリマー濃度が28質量%となるようにポリマー溶液を調整し、以降は実施例1と同様にして塗工厚みが300μmにおける高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜の品位に関する評価結果を表12及び表13に示す。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン0.60g、ビスフェノールS1.00g、ジフルオロジフェニルスルホン1.45g、炭酸カルシウム0.91gを50ml四つ口フラスコに計り取り、窒素気流下で20mlのNMPを入れて、反応温度を175℃付近に設定して5時間程度反応を続けた。放冷の後、約100mlのメタノール中に再沈殿させ、ミキサーを用いて3回水洗処理をしてポリマーを得た。得られたポリマーの対数粘度は、0.61dL/gであった。ポリマー試料を濃硫酸(98%)とともに室温でマグネティックスターラーにより撹拌することで、スルホン化反応を行い、反応後、硫酸溶液を過剰の氷水中に投入して反応を止め、生じた沈殿を濾取、水洗して、スルホン酸基含有ポリマーを得た。
さらに、ポリマー濃度が30質量%となるようにポリマー溶液を調整し、以降は実施例1と同様にして塗工厚みが300μmにおける高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜の品位に関する評価結果を表14及び表15に示す。
3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン15g、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム14g、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)205g、五酸化リン164gを重合容器に量り取る。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温 した。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温 して1時間、200℃に昇温 して4時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いて3回水洗を繰り返した後の水浸漬ポリマーに炭酸ナトリウムを加えて中和し、更に水洗を繰り返して洗液のpHが中性となり変化しないことを確認した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.92dL/gを示し、軟化温度は250℃以下には存在しなかった。
さらに、ポリマー濃度が20質量%となるようにポリマー溶液を調整し、以降は実施例1と同様にして塗工厚みが300μmにおける高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜の品位に関する評価結果を表16及び表17に示す。
3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン1.83g、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム0.53g、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸1.13g、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)25g、五酸化リン20gを重合容器に量り取り、窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温 した。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温 して1時間、200℃に昇温 して6時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いて3回水洗を繰り返した後の水浸漬ポリマーに炭酸ナトリウムを加えて中和し、更に水洗を繰り返して洗液のpHが中性となり変化しないことを確認した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.18dL/gを示し、軟化温度は250℃以下には存在しなかった。
さらに、ポリマー濃度が27質量%となるようにポリマー溶液を調整し、以降は実施例1と同様にして塗工厚みが300μmにおける高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜の品位に関する評価結果を表18及び表19に示す。
Claims (6)
- イオン性基含有高分子電解質溶液を支持体上に流延して流延膜とする流延工程(A1)、前記流延膜から溶媒を蒸発させる乾燥工程(A2)及び前記乾燥膜を前記イオン性基含有高分子電解質の溶媒と混和する液体で溶媒を抽出する脱溶媒工程(A3)からなり、工程(A2)及び工程(A3)を、膜を支持体から剥離することなく実施する高分子電解質膜の形成方法において、乾燥工程(A2)における高分子電解質溶液の塗工厚み係数Tと乾燥速度R1(g/m2・分)との関係が、下記式(I)の範囲で溶媒含有率15〜30質量%の自己支持性膜となるまで乾燥することを特徴とする高分子電解質膜の形成方法。
13.8≦R1・T≦56 (I)
(ただし、R1:乾燥速度(g/m2・分)、
T:高分子電解質溶液の塗工厚み(μm)/300(μm) ) - 脱溶媒工程(A3)における脱溶媒速度R2(g/m2・分)を、1〜20g/m2・分にして、溶媒含有率8質量%未満まで脱溶媒する請求項1に記載の高分子電解質膜の形成方法。
- 請求項1又は2で形成された高分子電解質膜を支持体に付着させたまま、無機酸含有酸性液に接触させてイオン性基を酸型に変換する酸処理工程(B)、前記酸処理膜中の遊離の酸を除去する酸除去工程(C)及び前記酸除去膜を乾燥する乾燥工程(D)を有する高分子電解質膜の製造方法であって、前記(B)から(D)までの工程を、高分子電解質膜を支持体から剥離することなく処理することを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項3で得られた高分子電解質膜中のDSC法による平均細孔径が、0.1〜10nmである高分子電解質膜の製造方法。
- 溶媒がN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミドから選ばれる少なくとも1種であり、溶媒と混和する液体が水である請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- イオン性基含有高分子電解質が、一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリアリーレンエーテル系化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
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