JP5444959B2 - 高分子電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Description
本工程で用いる溶剤としては、高分子電解質前駆体を均一に溶解または分散し得るものであれば特に限定されるものではなく、高分子電解質前駆体の構造に応じて適宜選択すればよいが、極性溶剤であることが好ましく、非プロトン性極性溶剤であることがさらに好ましい。非プロトン性極性溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−モルフォリン−N−オキシド、ヘキサメチレンホスホンアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、ジフェニルスルホンなどが挙げられる。特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドが好ましい。これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の沸点は100〜300℃の範囲であることが好ましい。100℃未満であると、製膜の際に形態が悪化する場合があり好ましくない。300℃を超えると、高分子電解質膜の製造に多大なエネルギーが必要となったり、高分子電解質前駆体膜中の溶剤含有量を適切な範囲に制御することが困難になる場合がある。
本工程において、高分子電解質前駆体の流延膜から前記溶剤を除去する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、流延膜を加熱して溶剤を蒸発させる方法が挙げられる。流延膜を加熱して得られる前駆体膜における溶剤の含有率は、10〜50質量%(より好ましくは15〜30質量%)であることが好ましい。10質量%未満であると、製膜過程で高分子電解質膜、あるいは支持体のへき開が起って高分子電解質膜の形態が悪くなる場合がある。50質量%よりも多いと、高分子電解質膜の膨潤性が大きくなる場合がある。
本工程では、3以下のpKaを有する酸性成分の溶液(以下、単に「酸性溶液」と称する場合がある。)を用いて、溶剤の含有量が低減された高分子電解質前駆体が有する酸性基の塩をプロトンに変換し、高分子電解質膜を得る。
本発明では、高分子電解質前駆体が有する酸性基の塩をプロトンに変換して得られる高分子電解質膜を、所定の湿度雰囲気に曝す工程を含んでもよい。これによって、高分子電解質膜に微小な変形が生じることを効果的に防ぐことができる。
本発明では、上記工程を経て得られた高分子電解質膜に残存する酸性成分を除去するために、高分子電解質膜を洗浄する工程を含む。具体的には、例えば、酸性成分を溶解し得る高分子電解質膜の貧溶媒を、高分子電解質膜に接触させて行う方法が挙げられる。用いる貧溶媒としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、低分子炭化水素、含ハロゲン溶剤などが挙げられる。酸性成分が水に溶解する場合には、水を用いることが好ましい。
酸性成分量の含有率(質量%)=水中の酸性成分量(mg/L)×50÷1000÷00.1×100
本発明では、酸性溶液の溶媒および/または高分子電解質膜の貧溶媒が水であり、この水が、高分子電解質膜中に、当該電解質膜を使用する温湿度雰囲気における平衡水分率を大幅に上回って残存している場合、高分子電解質膜を乾燥する工程を含んでもよい。これにより、高分子電解質膜の水分率が下がるため、後述する水分率調整工程において、高分子電解質膜の水分率を平衡水分率に近づけることが容易になる。高分子電解質膜の乾燥方法については特に限定されるものではなく、適切な温度での風乾、赤外線や遠赤外線による加熱、減圧による留去などが挙げられる。乾燥温度は特に限定されるものではないが、例えば20〜50℃で行うことができる。
本発明では、上記工程を経て得られた高分子電解質膜を巻き取った後、その水分率を調整する工程を含む。これにより、例えば、高分子電解質膜を用いて膜電極接合体を作製する場合、その製造後から接合工程までの間に、高分子電解質膜に微小な変形が発生するのを効果的に抑制することができる。
具体的には、上記製膜工程を経て得た高分子電解質膜を巻き取ってなる高分子電解質膜ロールを、所望の温湿度に調整した雰囲気(恒温恒湿雰囲気)下に置いた巻返し機に移して、当該雰囲気中で高分子電解質膜を巻き取りロールに巻き直す(巻き返す)方法が挙げられる。当該高分子電解質膜には支持体が積層されていてもよい。
具体的には、上記製膜工程を経て得た高分子電解質膜を巻き取る際に、同時に他のロールから多孔性材料を巻き出して高分子電解質膜に重ね合わせ、この多孔性材料と共に巻き取り(共巻き)し、得られた多孔性材料付き高分子電解質膜ロールを、恒温恒湿雰囲気中で保存する方法が挙げられる。
具体的には、上記製膜工程を経て得た高分子電解質膜を巻き取った高分子電解質膜ロールから、シート状の高分子電解質膜を切り出し、少なくとも膜の片面が恒温恒湿雰囲気に直接曝されるようにして、高分子電解質膜を当該雰囲気中で保存する方法が挙げられる。本方法によって、複数のシート状高分子電解質膜を処理する場合には、例えば、これらが互いに重ならないように配置すればよい。また、高分子電解質膜が支持体で支持されている場合には、例えば、支持体が下側になるように配置すればよい。
具体的には、上記製膜工程を経て得た高分子電解質膜を巻き取った高分子電解質膜ロールから、複数のシート状の高分子電解質膜を切り出してこれらを積層する際に、高分子電解質膜上に多孔性材料が配されるようにする。そして、こうして得られた積層体を、恒温恒湿雰囲気中で保存する。したがって、高分子電解質膜が支持体で支持されている場合には、上記積層体は支持体−高分子電解質膜−多孔性材料の順に交互に重ね合わされて積層されている。また、高分子電解質膜が支持体から剥離されている場合には、高分子電解質膜−多孔性材料の順に交互に重ね合わされて積層されている。
本発明の製造方法では、前駆体膜を得る工程の後や、高分子電解質膜を得る工程の後、あるいは洗浄する工程の後などに、前駆体膜や高分子電解質膜を支持体から剥離して、その後の工程(前高分子電解質膜を得る工程や洗浄工程など)を行ってもよいが、流延膜を得る工程から洗浄する工程までの間(乾燥工程を含む場合は乾燥工程までの間)は、支持体で膜(前駆体膜や高分子電解質膜など)を支持した状態で行う(換言すれば、当該膜を支持体から剥離せずに行う)ことが好ましい。上記工程中において、支持体から膜を剥離した場合、製造後の高分子電解質膜にシワや凹凸が発生するなど、高分子電解質膜の形態が低下する場合がある。
本発明の製造方法によれば、たとえ膜厚が小さく、製膜が困難な芳香族炭化水素系ポリマーからなる高分子電解質膜であっても、製膜工程時のみならず、製造後から接合工程までの間にも発生する微小な変形を抑制できる。具体的には、膜厚が50μm以下(より薄くは40μm以下、さらに薄くは35μm以下、さらにより薄くは30μm以下)の芳香族炭化水素系高分子電解質膜であっても、形態が良好な高分子電解質膜を得ることができる。高分子電解質膜の膜厚が50μmよりも厚いと、特性、品位、生産性のバランスを得ることが困難になる傾向にある。本発明の製造方法で対象となる高分子電解質膜の膜厚の下限については特に限定されるものではなく、プロトン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましいが、3μmであることが好ましく、5μmであることがより好ましい。高分子電解質膜の厚みが3μmより薄いと高分子電解質膜の取扱が困難となり、燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる場合がある。
本発明で用いる高分子電解質前駆体は、酸性基を有している芳香族炭化水素系ポリマーからなり、かつ酸性基の少なくとも一部が塩を形成しているものである。
本発明で用いる高分子電解質前駆体(その一部が塩を形成している酸性基を有する芳香族炭化水素系ポリマー)は、いずれの方法によって製造されてもよい。例えば、芳香族炭化水素系ポリマーに酸性基を導入した後にこの酸性基を塩に変換する方法や、酸性基を有するモノマー成分を重合して酸性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーを得た後、この酸性基を塩に変換する方法などが挙げられる。酸性基を塩に変換する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、カチオンを含む水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
本発明で用いる高分子電解質前駆体は、一般式1で表される繰り返し単位を有する芳香族炭化水素系ポリマーであることが特に好ましい。
0.9≦(n3+n4+n5+n6)/(n3+n4+n5+n6+n7)
≦1.0 (数式1)
0.05≦(n3+n4)/(n3+n4+n5+n6)
≦0.7 (数式2)
0.01≦(n4+n6)/(n3+n4+n5+n6)
≦0.95 (数式3)
上記一般式1等で表される繰り返し単位を有する芳香族炭化水素系ポリマーは、下記一般式9〜11で表されるモノマー(例えば、(活性化)ジハロゲン芳香族化合物、芳香族ジオール類、芳香族ジチオール類、ジニトロ芳香族化合物など)用いて、公知の方法(例えば、塩基性化合物の存在下、公知の芳香族求核置換反応による重合反応)で製造することができる。また、一般式12で表されるモノマーをさらに用いると、膜の形態安定性など物理的な特性が向上するため好ましい。
高分子電解質前駆体を、0.5g/dLの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶剤のみの落下秒数、cは試料溶液のポリマー濃度[単位:g/dL])。
測定しようとする高分子電解質前駆体膜の水分をろ紙でふき取り、23℃、50%RHの室内で1時間放置した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、Varian社製 Varian 400−MRを用いて、積算回数128回、25℃で1H−NMRスペクトルを測定した。予め帰属しておいた、高分子電解質前駆体、及び溶剤に対するピークの積分値から、高分子電解質前駆体に対する残留溶剤量を算出した。なお、高分子電解質前駆体が、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解しない場合には、ソックスレー抽出器を用いて高分子電解質前駆体から溶剤を水で抽出し、水中の溶剤濃度をガスクロマトグラフィー法で定量することで残留溶剤量を算出した。
誘導結合プラズマ発光分析法により、高分子電解質(前駆体)中のNa、及びKの定量を行った。上記の1H−NMR分析によって求められた、高分子電解質(前駆体)の酸性基量と、Na量及びK量から、カチオン置換率を求めた。
カチオン置換率(モル%)
={(CNa/23.0+CK/39.1)÷1000}÷CI×100
CNaは、Na含有量(mg/kg)を、CKはK含有量(mg/kg)を、CIは酸性基量(mmol/g)を、それぞれ表す。
高分子電解質膜を得る工程(酸性溶液で塩をプロトンに変換する工程)の後に所定の雰囲気下に高分子電解質膜を置く工程、及び水分率を調整する工程において、膜から5cm以内の高さ位置に温湿度測定装置の測定プローブを配置して、温度及び相対湿度を測定した。
製造後の高分子電解質膜から、10cm四方のサンプルを5枚用意し、乾燥前質量を0.1mgまで測れる精密天秤で測定した。次にサンプルを120℃に設定した乾燥機内に入れ、30分放置後、速やかに乾燥質量を測定した。
水分率(%)=(乾燥前質量−乾燥質量)/乾燥質量×100
製造後の高分子電解質膜から、15cm四方のサンプルを5枚用意し、測定する雰囲気下に24時間放置した。その後、サンプルより10cm四方のサンプルを切り出し、水分率測定法により測定算出した。
製造後の高分子電解質膜から、高分子電解質膜を使用する温湿度雰囲気下における平衡水分率に高分子電解質膜の水分率を調整する工程における恒温恒湿雰囲気下で、高分子電解質膜に支持体が付いていない場合はそのまま、支持体が付いている場合は支持体を剥離した後、10.0cm×10.0cmのサイズのサンプルをランダムに100個、速やかに採取した。得られたサンプルを、高分子電解質膜を使用する温湿度雰囲気下に移して5分間経過した後、当該雰囲気下で正確に10.0cm×10.0cmの内寸を持つ高さ5cmの金枠に、それぞれ速やかに嵌めて、その状態を目視で観察した。寸法が合わず金枠に嵌らないもの、明確にすきまができるものを微小変形として計数した。
◎:微小変形を有するサンプルが10個以下であったもの。
○:微小変形を有するサンプルが11〜20個であったもの。
△:微小変形を有するサンプルが21〜30個であったもの。
×:微小変形を有するサンプルが31個以上であったもの。
<高分子電解質前駆体の製造>
反応器に、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(S−DCDPS)778部、2,6−ジクロロベンゾニトリル(DCBN)553部、4,4’−ビフェノール(BP)893部、炭酸カリウム763部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)5631部を入れて、窒素雰囲気下、200℃で10時間反応させた。放冷の後、水中にストランド状に沈殿させ、得られたポリマーを10Lの水で5回洗浄した後、乾燥し、高分子電解質前駆体を得た。この高分子電解質前駆体の対数粘度は1.21dL/gであった。
NMPを溶剤として用い、固形分濃度が24質量%の前駆体溶液を調製した。次いで、支持体としての非粘着ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ブレードコーターにて厚みが200μmになるように温度25℃で連続的に前駆体溶液を流延しつつ、90℃で60分間乾燥して、NMPの残留量が21質量%の高分子電解質前駆体膜1を製造した。
得られた高分子電解質前駆体膜2を、支持体から剥離することなく30℃、20質量%硫酸水溶液(pKa=−3.0)に25分間浸漬して、高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について、25℃、60%RHの雰囲気を通過させた後、膜を剥がすことなく30℃の純水に20分間浸漬し、続いて新たな30℃の純水に20分間浸漬した。高分子電解質膜が上記雰囲気を通過する時間は3分であった。
さらに、高分子電解質膜を支持体から剥がすことなく、25℃、60%RHの雰囲気を15分間通過させつつ巻き取って、支持体と積層された厚さ30μmの高分子電解質膜ロールを得た(高分子電解質膜の水分率;16.0%)。
実施例1の水分調整工程において、高分子電解質膜の上記恒温恒湿雰囲気下での滞在時間を20分とした以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜を得た。このときの高分子電解質膜の水分率は11.3%であった。
実施例1の水分率調整工程において、高分子電解質ロールを巻き返す際の恒温恒湿雰囲気を23℃、48%RHとした以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜を得た。このときの高分子電解質膜の水分率は12.4%であった。
実施例2の水分率調整工程において、高分子電解質膜ロールを巻き出す際に、支持体から膜を剥離した以外は実施例2と同様にして、高分子電解質膜を得た。このときの高分子電解質膜の水分率は10.6%であった。
実施例1の水分率調整工程において、洗浄後の高分子電解質膜を巻き取る際、同時に、汎用のコピー用紙ロールからコピー用紙を巻き出して高分子電解質膜に重ねながら巻き取って(共巻きして)、支持体、高分子電解質膜、コピー用紙がこの順で積層された高分子電解質膜ロールを得、その後、23℃、50%RHの雰囲気下に1週間置いて高分子電解質膜の水分率調整処理を行って、高分子電解質膜を得た以外は実施例1と同様にした。このときの高分子電解質膜の水分率は11.3%であった。
実施例1の水分率調整工程において、洗浄後の高分子電解質膜を巻き取る際、高分子電解質膜を支持体から剥がしつつ、同時に、汎用のコピー用紙ロールからコピー用紙を巻き出して高分子電解質膜に重ねて巻き取って(共巻きして)、高分子電解質膜、コピー用紙がこの順で積層された高分子電解質膜ロールを得、その後、23℃、50%RHの雰囲気下に1週間置いて高分子電解質膜の水分率調整処理を行って、高分子電解質膜を得た以外は実施例1と同様にした。このときの高分子電解質膜の水分率は10.4%であった。
実施例1の水分率調整工程において、巻き取った高分子電解質膜ロールから15cm×15cmのサンプルを5枚切り出し、互いに重ならないように、かつ高分子電解質膜を上側にして23℃、50%RHの雰囲気下で5時間置いて高分子電解質膜の水分率調整処理を行って、高分子電解質膜を得た以外は実施例1と同様にした。このときの高分子電解質膜の水分率は10.4%であった。
実施例1の水分率調整工程において、巻き取った高分子電解質膜ロールから15cm×15cmのサンプルを5枚切り出した後、支持体を剥がして、互いに重ならないようにして23℃、50%RHの雰囲気下で5時間置いて高分子電解質膜の水分率調整処理を行って、高分子電解質膜を得た以外は実施例1と同様にした。このときの高分子電解質膜の水分率は10.3%であった。
実施例1の水分調整工程において、巻き取った高分子電解質膜ロールから15cm×15cmのサンプルを5枚切り出し、サンプル間にコピー用紙を挟みながら積み重ねて、支持体、高分子電解質膜、コピー用紙がこの順で交互に積層した積層体を得た。次に、積層体の上下に、15cm×15cmの厚さ3mmの鉄板を、コピー用紙を介して乗せて重しとし、23℃、50%RHの雰囲気下で1週間置いて、高分子電解質膜の水分率調整処理を行って、高分子電解質膜を得た以外は実施例1と同様にした。このときの高分子電解質膜の水分率は10.8%であった。
実施例1の水分調整工程において、巻き取った高分子電解質膜ロールから15cm×15cmのサンプルを5枚切り出し、支持体を剥がした後、サンプル間にコピー用紙を挟みながら積み重ねて、高分子電解質膜、コピー用紙がこの順で交互に積層した積層体を得た。次に、積層体の上下に、15cm×15cmの厚さ3mmの鉄板を、コピー用紙を介して乗せて重しとし、23℃、50%RHの雰囲気下で1週間置いて、高分子電解質膜の水分率調整処理を行って、高分子電解質膜を得た以外は実施例1と同様にした。このときの高分子電解質膜の水分率は10.5%であった。
高分子電解質前駆体の製造において、S−DCDPS800.0部、DCBN356.5部、BP600.5部、4,4’−チオビスフェノール(BPS)96.9部、炭酸カリウム562.7部、NMP4624.3部を原料として得た対数粘度1.28dL/gの高分子電解質前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜(水分率;13.5%)を得た。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は13.2%であった。
高分子電解質前駆体の製造において、乾燥したS−DCDPS310.1部、DCBN253.3部、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(DIC社製SPECIANOL DPE−PL;一般式13においてnが1〜8の成分を含む混合物でnの平均値は5である構造であるもの)(DPE)1156.5部、炭酸カリウム319.0部、NMP5165.3部を用い、反応時間を8時間にして得た対数粘度0.85dL/gの高分子電解質前駆体を用い、かつ、高分子電解質前駆体膜1の製造において、溶液濃度を31質量%とした以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜(水分率;6.4%)を得た。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は5.8%であった。
実施例1において、S−DCDPS778部に代えて3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン2ナトリウム塩721部を用いて得られた対数粘度が1.43dL/gである高分子電解質前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜(23℃、55%RHの雰囲気下での水分率;10.9%)を得た。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、55%RHの雰囲気下での平衡水分率は11.1%であった。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1.20部、ビスフェノールS2.00部、ジフルオロジフェニルスルホン2.90部、炭酸カリウム1.82部を100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素気流下で40mlのNMPを加え、反応温度を175℃付近に設定して7時間反応させた。放冷の後、約300mlのメタノール中に再沈殿させ、ミキサーを用いて5回水洗処理をして、ポリマーを得た。得られたポリマーの対数粘度は、0.61dL/gであった。ポリマー試料を濃硫酸(98%)とともにマグネティックスターラーにより室温で撹拌することで、スルホン化反応を行った。反応終了後、硫酸溶液を過剰の氷水中に投入して反応を止め、生じた沈殿を濾取し、水洗して、高分子電解質前駆体を得た。この高分子電解質前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜(水分率;14.2%)を得た。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は14.6%であった。
3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン45部、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム42部、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)615部、五酸化リン500部を重合容器に計り取り、窒素を流し、オイルバス中でゆっくり撹拌しながら120℃まで昇温し、1時間保持した後、200℃に昇温して6時間反応させた。その後、放冷し、水を加えてポリマーを取り出し、家庭用ミキサーを用いて5回水洗を繰り返した後、この水浸漬ポリマーに炭酸ナトリウムを加えて中和し、さらに水洗を繰り返して洗液のpHが中性となり変化しないことを確認して、対数粘度が1.55dL/gの高分子電解質前駆体を得た。この前駆体を用い、かつ高分子電解質前駆体膜1の製造において、溶剤を170℃に加熱して前駆体を溶解させて溶液を得た以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜(水分率;8.1%)を得た。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は7.3%であった。
3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン18.3部、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム5.30部、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸11.3部、ポリリン酸(五酸化リン含量5%)250部、五酸化リン200部を重合容器に計り取り、実施例13と同様にして、対数粘度が1.51dL/gの高分子電解質前駆体を得た。この高分子電解質前駆体を用いた以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜(水分率;8.9%)を得た。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は7.8%であった。
<製造例1:疎水性オリゴマー>
DCBN49.97g(290.5mmol)、BP54.99g(295.3mmol)、炭酸カリウム46.94g(339.6mmol)、NMP750mL、トルエン150mLを、窒素導入管、撹拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で撹拌しつつ窒素気流下で加熱した。トルエンとの共沸による脱水を140℃で行った後、トルエンをすべて留去した。その後、200℃に昇温し、15時間加熱した。窒素導入管、撹拌翼、還流冷却管、温度計を取り付けた別の1000mL枝付きフラスコに、NMP200mLとパーフルオロビフェニル4.85gを入れ、窒素気流下、撹拌しながら、オイルバス中で110℃に加熱した。そこに、DCBNとBPの反応溶液を、滴下漏斗を用いて2時間かけて撹拌しながら投入し、投入完了後、さらに2時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、3000mLの純水に注ぎオリゴマーを固化させ、さらに純水で3回洗浄して、NMP及び無機塩を除去した。水洗したオリゴマーは、濾別した後、100℃で2時間乾燥させ、さらに室温まで冷却し、その後3000mLのアセトンで2回洗浄し、過剰のパーフルオロビフェニルを除去した。再びオリゴマーを濾別し、120℃で16時間減圧乾燥して疎水性オリゴマーを得た。1H−NMR測定による数平均分子量は13910だった。疎水性オリゴマーの化学構造を以下に示す。
S−DCDPS250.0g(508.9mmol)、BP97.04g(520.7mmol)、炭酸ナトリウム66.23g(624.9mmol)、NMP650mL、トルエン150mLを、窒素導入管、撹拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた2000mL枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で撹拌しつつ窒素気流下で加熱した。トルエンとの共沸による脱水を140℃で行った後、トルエンをすべて留去した。その後、200℃に昇温し、16時間加熱した。続いて、NMP500mLを投入し、撹拌しながら室温まで冷却した。得られた溶液を、25G2ガラスフィルターで吸引濾過したところ、黄色の透明な溶液が得られた。得られた溶液を3Lのアセトンに滴下してオリゴマーを固化させた。オリゴマーをさらにアセトンで3回洗浄した後、濾別して減圧乾燥し親水性オリゴマーを得た。1H−NMR測定による数平均分子量は25610であった。親水性オリゴマーの化学構造を以下に示す。
親水性オリゴマー45.00部、疎水性オリゴマー24.61部、炭酸ナトリウム0.28部、NMP400mLを、窒素導入管、撹拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた1000mL枝付きフラスコに入れ、窒素気流下50℃のオイルバス中で撹拌し溶解させた。その後、110℃まで加熱し、10時間反応させた。その後、室温まで冷却し、3Lの純水中に滴下してポリマーを固化させた。純水で3回洗浄した後、純水に浸漬したまま80℃で16時間処理し、その後純水を除いて熱水洗浄を行った。その後、熱水洗浄をもう一度繰り返した。さらに水を除去したポリマーを、1000mLのイソプロパノールと500mLの水との混合溶剤に室温で16時間浸漬し、ポリマーを取り出し洗浄を行った。同じ操作をもう一度行った。その後、濾過でポリマーを濾別し、120℃で12時間減圧乾燥して、スルホン酸塩基含有セグメント化ブロックポリマーからなる、対数粘度が2.6dL/gの高分子電解質前駆体を得た。
高分子電解質前駆体膜1の製造において、高分子電解質前駆体溶液の流延厚みを130μmとした以外は実施例1と同様にして、厚さ20μmの高分子電解質膜を得た(水分率;10.2%)。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は10.5%であった。
高分子電解質前駆体膜1の製造において、高分子電解質前駆体溶液の流延厚みを150μmとした以外は実施例1と同様にして、厚さ25μmの高分子電解質膜を得た(水分率;10.3%)。なお、得られた高分子電解質膜の23℃、50%RHの雰囲気下での平衡水分率は10.4%であった。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例1と同様にして、高分子電解質膜を得た(水分率;13.3%)。
高分子電解質膜の製造において、コピー用紙を重ねながら巻かない(共巻きしない)以外は実施例5と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;17.8%)。
高分子電解質膜の製造において、コピー用紙を重ねながら巻かない(共巻きしない)以外は実施例6と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;17.4%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例7と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;14.3%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例8と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;14.1%)。
高分子電解質膜の製造において、コピー用紙を挟まない以外は実施例9と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;13.2%)。
高分子電解質膜の製造において、コピー用紙を挟まない以外は実施例10と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;13.1%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例11と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;19.3%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例12と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;9.8%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例13と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;15.9%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例14と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;20.3%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例15と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;12.5%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例16と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;12.7%)。
高分子電解質膜の製造において、水分率調整処理を行わない以外は実施例17と同様にして高分子電解質膜を得た(水分率;17.8%)。
Claims (9)
- 少なくとも一部が塩を形成している酸性基を有する芳香族炭化水素系高分子電解質前駆体が溶剤に溶解してなる溶液を、支持体上に流延して、前記高分子電解質前駆体の流延膜を得る工程と、
前記流延膜から前記溶剤を除去して、高分子電解質前駆体膜を得る工程と、
3以下のpKaを有する酸性成分の溶液で、前記高分子電解質前駆体が有する前記塩をプロトンに変換して高分子電解質膜を得る工程と、
高分子電解質膜を、温度が20〜50℃、相対湿度が60%以上である湿度雰囲気に曝す工程と、
前記酸性成分を溶解し得る前記高分子電解質膜の貧溶媒で、前記高分子電解質膜を洗浄する工程と、
洗浄後の高分子電解質膜を巻き取った後、高分子電解質膜の水分率を調整する工程と
をこの順で含み、前記流延膜を得る工程から洗浄する工程までの間を、前記支持体で膜を支持した状態で行う
ことを特徴とする、膜厚が3〜40μmの芳香族炭化水素系高分子電解質膜の製造方法。 - 前記水分率を調整する工程を、巻取り後の高分子電解質膜を恒温恒湿雰囲気下で巻き返して行う請求項1に記載の製造方法。
- 洗浄後の高分子電解質膜を巻き取った後、高分子電解質膜の水分率を調整する工程に代えて、前記洗浄後の高分子電解質膜に多孔性材料を重ねながら巻き取った後、巻取り後の高分子電解質膜を恒温恒湿雰囲気下に置いて高分子電解質膜の水分率を調整する工程とする請求項1に記載の製造方法。
- 洗浄後の高分子電解質膜を巻き取った後、高分子電解質膜の水分率を調整する工程に代えて、前記洗浄後の高分子電解質膜を巻き取った後、巻取り後の高分子電解質膜からシート状の高分子電解質膜を得て、そのシート状の高分子電解質膜の表面を開放した状態で恒温恒湿雰囲気下に置いて高分子電解質膜の水分率を調整する工程とする請求項1に記載の製造方法。
- 洗浄後の高分子電解質膜を巻き取った後、高分子電解質膜の水分率を調整する工程に代えて、前記洗浄後の高分子電解質膜を巻き取った後、巻取り後の高分子電解質膜から複数のシート状の高分子電解質膜を得て、そのシート状の高分子電解質膜と多孔性材料とを、他部材を介して、または介さずに交互に重ねて積層した状態で、恒温恒湿雰囲気下に置いて高分子電解質膜の水分率を調整する工程とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記水分率を調整する工程を経て得られる高分子電解質膜の水分率が、高分子電解質膜を使用する際の温湿度雰囲気下での平衡水分率の±2%以内である請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記流延膜を得る工程において、前記酸性基の80モル%以上が塩を形成しており、かつ、前記高分子電解質膜を得る工程において、前記塩の90モル%以上がプロトンに変換される請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記酸性基が、少なくともスルホン酸基を含む請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記洗浄する工程を経て得られる洗浄後の高分子電解質膜を乾燥する工程を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法。
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