JP5614641B2 - 高分子電解質膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子形燃料電池などに用いられる高分子電解質膜の製造方法に関するものである。
近年、地球温暖化等の環境問題等の観点から、燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素ガスやメタノール等の燃料と酸素等の酸化剤をそれぞれ電解質で隔てられた電極に供給し、一方で燃料の酸化を、他方で酸化剤の還元を行い、直接発電するものである。
上述した燃料電池の材料のなかで、最も重要な部材の一つが電解質である。その電解質からなる燃料と酸化剤とを隔てる電解質膜としては、これまで様々なものが開発されているが、近年、特にスルホン酸基などのプロトン伝導性官能基を含有する高分子化合物から構成される高分子電解質の開発が盛んである。
このような背景の中で、高分子電解質膜の製法については、一般に押し出し成型やキャスト法が知られている。特にキャスト法は、高分子電解質に熱履歴がかかりにくい、異物除去が容易、などの利点があり好ましい。しかし、この方法は溶媒を用いることから、高分子電解質膜中の酸基が溶媒の分解物などの汚染物質との塩を形成している可能性があり、改めて酸水溶液等で洗浄する必要があるだけでなく、溶媒の完全な除去のための純水等による洗浄が必要である。従来の方法では、特許文献1、特許文献2にあるように、キャスト後高分子電解質膜を基材(支持体)から剥離し、加熱乾燥を行ったり、先述の酸水溶液や純水による洗浄などを行ったりしていたが、この工程は煩雑であった。また特許文献3のように加熱水蒸気中で処理を行う方法も提案されているが、特殊な装置が必要であり、従来一般的な設備では製造できなかった。
特開2005−232240号公報 特開2009−146883号公報 特開2009−245934号公報
本発明の課題は、固体高分子形燃料電池などに用いられる高分子電解質膜の優れた製法を提供することである。つまり、キャスト法による高分子電解質膜の製法であって、簡便でかつ平面性などの特性に優れた高分子電解質膜の製法を提供することである。
本発明は、A)高分子電解質の有機溶液を基材上にキャストする工程、B)A)工程で基材上にキャストされた高分子電解質有機溶液中の、有機溶媒を気化して基材上に高分子電解質膜を作製する工程、C)B)工程で作製された、基材上の高分子電解質膜を、基材から剥離しない状態で上記有機溶媒が可溶な液体に浸漬する工程、および、D)C)工程の後、上記有機溶媒が可溶な液体を高分子電解質膜から気化する工程を含むことを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法に関する。
上記有機溶媒が可溶な液体が水又は酸の水溶液であることが好ましい。
上記有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、及び、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
B)工程において、上記有機溶媒の残存量を上記高分子電解質に対し50重量%以下とすることが好ましい。
C)工程により、上記有機溶媒の残存量を上記高分子電解質に対し3重量%以下とすることが好ましい。
A)〜D)工程を連続で行うことが好ましい。
上記高分子電解質が、主鎖に芳香族基を含むことが好ましい。
上記高分子電解質が、スルホン酸基及び/又はスルホン酸基の塩を含むことが好ましい。
上記高分子電解質が、スルホン酸基を含むブロックと、スルホン酸基を含まないブロックとからなる構造を有することが好ましい。
また、本発明は、本発明の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜に関する。
また、本発明は、本発明の高分子電解質膜を含む膜−電極接合体に関する。
また、本発明は、本発明の高分子電解質膜を含む固体高分子形燃料電池に関する。
本発明の製法によれば、簡便な方法で、平面性などの特性に優れた高分子電解質膜を得ることができる。
また、この高分子電解質膜の製造方法を用いることによって、低コストで高性能な燃料電池を提供することができる。
本発明における基材付高分子電解質膜の製造方法の簡略図である。 従来の基材付高分子電解質膜の製造方法の簡略図である。 本発明の製造方法による高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池の断面略図である。
本発明の一実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
<1.高分子電解質>
本発明の高分子電解質膜には、従来一般的な高分子電解質を用いることができる。高分子電解質は、いわゆるナフィオン(登録商標)などのいわゆるパーフルオロスルホン酸電解質や、炭化水素系電解質と呼ばれる、フッ素を含まない主鎖、特にエンジニアリングプラスチックと呼ばれる熱的化学的耐久性の高い主鎖構造を持ったものがある。このような高分子電解質は、「固体高分子型燃料電池用イオン交換膜の開発」(2000年、株式会社シーエムシー)などに詳しく例示されている。
このような中で、本発明の製造方法は、主鎖に芳香族基を含む高分子電解質に対し好適に用いられる。このような高分子電解質は、いわゆるエンジニアリングプラスチックの構造を持つ高分子電解質として広く知られるものであり、ポリイミド、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホンケトン、ポリイミドエーテルなど、又は、このような構造を主鎖中に部分的に持つブロック型、グラフト型共重合体などにイオン交換基、特にスルホン酸基の様なカチオン交換基が導入されたものが挙げられる。これらは、主鎖中にフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などの芳香族基を持つことから高い耐熱性や化学的耐久性を持ち、これにより得られる高分子電解質膜は高い性能を持つ。
本発明に用いられる高分子電解質はイオン交換基が導入されてなるものであるが、イオン交換基としては4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、3級スルホニウム塩、4級ボロニウム塩などの陰イオン交換基や、スルホン酸基、スルホンイミド基、カルボン酸基、リン酸基、あるいはこれらの塩などの陽イオン交換基が挙げられる。中でも、一般的な固体高分子形燃料電池に用いられる陽イオン交換基としては、そのプロトン伝導度の優れている点においてスルホン酸基またはこの塩が好ましい。
本発明に用いられる高分子電解質は、スルホン酸基を含むブロックと、スルホン酸基を含まないブロックとからなる構造を持つことも好ましい。このような構造を持つ高分子電解質は、スルホン酸基が集まったいわゆる親水部と、疎水部に相分離し、高いプロトン伝導度と機械強度を両立しうるので好ましい。
本発明に用いられる高分子電解質の分子量は、数平均分子量で10,000〜300,000[g/mol]の範囲が合成の容易さと溶媒への溶解度のバランスから好ましい。また、30,000〜150,000[g/mol]の範囲がさらに好ましい。機械強度や水分に対する膨潤の抑制のために、架橋の導入などの化学的変性も本発明の範疇である。
また、本発明に用いられる高分子電解質のイオン交換容量(以下IECと略すことがある)は、0.8〜3.5[meq./g]の範囲がイオン交換樹脂としての性能を持ち好ましく、1.0〜3.0[meq./g]の範囲が機械的強度とのバランスに優れさらに好ましい。特に燃料電池用電解質膜として用いる際は、1.5〜2.5[meq./g]の範囲が特に好ましいと言える。
本発明に用いられる高分子電解質は従来公知の方法で作製することができるが、高分子の重合方法については、重縮合反応が簡便であり好適に適応しうる。重縮合反応については、従来公知の一般的な方法(「新高分子実験学3 高分子の合成法・反応(2)縮合系高分子の合成」p.7−57、p.399−401、(1996)共立出版株式会社)、(J.Am.Chem.Soc.,129,,3879−3887(2007))、(Eur.Polym.J.,44,4054−4062(2008))に示されるように、例えばジハロゲン化化合物とジオール化合物を塩基性化合物の存在下で反応させる方法がある。
重縮合反応は、極性非プロトン溶媒中で行われる。好ましい極性非プロトン性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ピリジン、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等である。N,N−ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドが特に好ましい。2種類またはそれ以上の極性非プロトン溶媒を、混合物として使用してもよい。
非極性、脂肪族、脂環式または好ましくは芳香族溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはo−ジクロロベンゼン、などと極性非プロトン性溶媒の混合物も使用できる。この場合、極性非プロトン性溶媒の体積比は、50%以上が好ましい。
重縮合反応は、塩基性化合物を添加してもよい。好ましい塩基性化合物は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、などの炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などの金属水酸化物;リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、などのリン酸塩、である。特に、炭酸カリウムが好ましい。
塩基性化合物の量は、反応されるジヒドロキシ芳香族化合物の量に依存する。炭酸塩化合物の場合、反応混合物中に存在する水酸基の量と同量以上が好ましく、より好ましくは1.2倍過剰以上の化合物が使用される。
適切な反応温度は50〜300℃であり、特に、100〜200℃が反応性と簡便な反応設備の観点から好ましい。
上記例のほか、重縮合の例としては、ジハロゲン化化合物同士をニッケルなどの触媒中でカップリングする方法が挙げられる。
スルホン酸基の導入方法としては特に限定されず、例えばスルホン酸基を有しない重合体、あるいは重合体を形成するオリゴマーを無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、硫酸、アセチル硫酸などのスルホン化剤を用いてスルホン化させる方法を用いることができるほか、スルホン酸基あるいはその誘導体を有するモノマーを用いて重合体を作製する方法もとり得る。
<2.高分子電解質膜>
本発明の高分子電解質膜は、上記の高分子電解質を本発明の製造方法で製膜したものである。本発明の製造方法は、キャスト法に適応しうる。キャスト法は、高分子電解質の有機溶液を、ダイコータ、コンマコータ等により、硝子板などの平板上に、または高分子フィルムや金属フィルムなどの基材に塗布し、何らかの方法で有機溶剤を除去する方法である。ベルト状の高分子フィルムや金属フィルムに、コータやダイスを用いて連続的に製造することも可能であり、これらは従来公知の方法を適応しうる。
本発明の製造方法は、A)高分子電解質の有機溶液を基材上にキャストする工程、B)A)工程で基材上にキャストされた高分子電解質有機溶液中の、有機溶媒を気化して基材上に高分子電解質膜を作製する工程、C)B)工程で作製された、基材上の高分子電解質膜を、基材から剥離しない状態で上記有機溶媒が可溶な液体に浸漬する工程、および、D)C)工程の後、上記有機溶媒が可溶な液体を高分子電解質膜から気化する工程を含むことを特徴とする。
ここで、A)工程について、高分子電解質については上記で説明のとおりである。
有機溶液を調製するための有機溶媒は、高分子電解質を溶解させるものであれば適応しうるが、特に、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)、及び、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)のいずれか一つを含む単溶媒、混合溶媒が、高分子電解質の溶解性や取り扱いの容易さから好ましい。
基材には、用いる高分子電解質や有機溶媒に対して不活性、非溶解性であり、平面性を保ち、その後の工程においても変形などの問題が無く、最終的に電解質膜の剥離が可能なものが用いられる。ガラス、金属、プラスチックなどが適応でき、特に連続工程であればロール状のアルミ金属箔やPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、PI(ポリイミド)フィルムなどが適応しうる。厚さは取り扱いのしやすさやコストにより設定すればよいが、先述のロール状基材であれば10μm〜1mm程度が好ましい。なお、本発明における基材は、支持体、支持基材などと表現されることもある。
キャストとは、高分子電解質溶液を基材上に一定に塗布する工程であり、これは上記従来公知の方法が適応しうる。
有機溶液中の高分子電解質の濃度は、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。5重量%未満であると、キャスト時の塗膜厚が厚くなり成形性が悪くなるおそれがある。また、濃度は、45重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましい。45重量%を超えると、溶液の粘度が高くなり、取り扱いが難しく、膜中に気泡が残るなど外観が悪くなるおそれがある。
B)工程について、有機溶媒を気化させる方法としては、オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が簡単であり好ましい。雰囲気としては室温、あるいは高温とした空気、不活性ガス、真空状態などが挙げられる。ここで有機溶媒の気化については、有機溶媒の残存量が高分子電解質(すなわち溶液中の溶質)に対し50重量%以下となるように条件設定されることが好ましい。残存量が50重量%を超えると、その後の工程に問題の出る可能性がある。また優れた外観の膜を取得する点から、さらに好ましくは有機溶媒の残存量が40重量%以下となるように条件設定されることが好ましい。なお、有機溶媒の残存量は、プロトンNMRにより測定することができる。なお、この工程は高分子電解質溶液が基材上に塗布(キャスト)された状況で行われなければならない。
C)工程について、B)工程によって得られた基材上の高分子電解質膜(ただし有機溶媒は50重量%以上気化している)を、前記有機溶媒が可溶な液体に浸漬する。従来、B)の工程の後、一旦基材より高分子電解質膜を剥離した後、前記有機溶媒が可溶な液体に浸漬するが、本発明の方法により、電解質膜の外観や平面性がすぐれた材料が得られる。
有機溶媒が可溶な液体として、水、酸の水溶液、アンモニウム塩の水溶液等を用いることができる。有機溶媒が可溶な液体の中でも、取り扱いの容易さの観点から、水又は酸の水溶液を用いることが好ましい。
C)工程では、残存している有機溶媒の除去に加え、高分子電解質膜中のスルホン酸基などのイオン交換基の対イオンを調製することができる。たとえば、スルホン酸基を持った高分子電解質膜の場合、酸水溶液(塩酸水溶液や硫酸水溶液)に浸漬することにより、有機溶媒の除去と完全なプロトンフォームへの変換(例えば塩化物イオンなどの塩になっている状態から、スルホン酸基(−SOH)への変換)が可能である。他にも、スルホン酸基がネオペンチル基で保護されている高分子電解質に対して、4級アンモニウム塩の水溶液で処理することにより、保護基を除去しスルホン酸基(−SOH)への変換を行うことなども例示できる。また、スルホン酸基の塩は、何らかの方法で酸と接触させることで調製することができるが、通常は上記のように酸水溶液に浸漬する方法が容易である。対イオンの調製は、必ずしもC)工程で行われる必要はなく、例えば燃料電池用の膜として用いられる場合は、膜−電極接合体(MEA)を形成する直前や直後でも構わず、また、燃料電池に組み込んでから、運転前のコンディショニングとして行われてもよい。
また、浸漬する時間は特に限定されないが、十分な変換が行われるために、1分以上が好ましく、5分以上がさらに好ましい。1分未満であると膜の内部で十分な変換が行われない可能性がある。
有機溶媒が可溶な液体の温度は特に限定されないが、室温から100℃程度が、特別な装置を必要とせず好ましい。室温より低いと塩の変換が十分進まない可能性があり、100℃を超えると膜の劣化を早める可能性がある。
この工程で上記有機溶媒は、高分子電解質の3重量%以下となるように条件設定されることが望ましく、2.5重量%以下であることがさらに望ましい。3重量%を超えて有機溶媒が残存すると、その後の工程で耐久性の低下などの問題が生じる可能性がある。この工程は、他の工程と同様バッチ工程にも連続工程にも適応しうる。
C)工程では、基材上の高分子電解質膜を基材から剥離しない状態で有機溶媒が可溶な液体に浸漬するので、この際に高分子電解質膜が剥離しないような基材の材質、温度、時間を設定する必要がある。
また、C)工程は、複数の繰り返し、例えば酸水溶液の洗浄の後純水で洗浄する、といった方法も適応し得る。
D)工程は、C)工程で用いた有機溶媒の除去に用いた液体を気化させる工程である。ここでの気化も、先述のように一般的な方法を用いればよく、容易に気化する液体、例えば水であれば、放置することにより乾燥させることもこの方法に含まれる。ここでの気化は、実質的にこの後の使用、取り扱いに問題が無い程度に行われればよいが、有機溶媒が可溶な液体の残存量は、高分子電解質に対し40重量%以下となることが好ましく、30重量%以下がより好ましい。40重量%を超えて液体が残存すると、その後の工程で膜が伸びやすくなりしわがよる、膜同士が接着してしまう、膜−電極接合体(MEA)を形成する際に接合性が低下する、などの問題が生じる可能性がある。また、有機溶媒が可溶な液体を完全に除去すると、膜の種類によってはもろくなるおそれがある。この場合、高分子電解質に対し5重量%以下で有機溶媒が可溶な液体を残留させることが好ましい。5重量%を超えると、高分子電解質膜の取り扱いが困難になるおそれがある。なおこの工程は、高分子電解質膜を基材から剥離して行ってもかまわないし、剥離せずに行ってもかまわない。
上記A)〜D)の工程は連続で行うことが生産性、品質の安定性の観点から好ましい。
高分子電解質膜には様々な用途があるが、本発明の高分子電解質膜は燃料電池の電解質膜として好適に用いられる。この場合、後述のように高分子電解質膜はその片面あるいは両面に電極(触媒層と示されることも多い)が形成される。その方法はシート状に形成した電極をプレスし貼り付ける、ペースト状の電極を塗布する、などの方法があるが、いずれにしろ高分子電解質膜にある程度の強度、いわゆるコシが必要とされる。特に100μm以下の薄膜となると、高分子電解質膜のみでは取り扱いが難しいことから、基材に貼り付けられた状態で電極形成の工程が施される場合がある。このような理由から、高分子電解質膜は基材付でその後の使用に供与されることが多い。本発明においては、このような基材付の高分子電解質膜の製法も発明の範疇である。本発明の製造方法では、この基材付の高分子電解質膜を製造する際、従来に比較し簡便であり、また高分子電解質膜を改めて基材に貼り付ける必要が無いために平面性などの外観に優れた基材付の高分子電解質膜を製造することができる。図1に本発明における基材付高分子電解質膜の製造方法、図2に従来の製造方法を示す。これらの図では最終形態を基材付高分子電解質膜として例示しているが、上記のとおり必ずしも基材付である必要はない。
さらに、本発明の製造方法により電解質膜を得た後に、分子配向などを制御するため二軸延伸などの処理を施したり、結晶化度や残存応力を制御するための熱処理を施しても構わない。さらに、フィルムの機械強度を上げるために各種フィラーを添加したり、ガラス不織布などの補強剤と複合化させることも本発明の範囲である。また、製膜時に適当な化学的処理を施してもよい。例えば、膜の強度を上げるための架橋、伝導性を挙げるためのプロトン性化合物の添加、微量の多価金属イオンの添加などである。いずれにしても、本発明にかかる高分子電解質膜の製造方法を用いて、従来公知の技術と組み合わせる高分子電解質膜の製造方法は、本発明の範疇である。
本発明の製造方法による高分子電解質膜の厚さは、用途に応じて任意の厚さを選択することができる。例えば、高分子電解質膜の抵抗を低減することを考慮した場合、高分子フィルムの厚みは薄い程よい。一方、高分子電解質膜のガス遮断性やハンドリング性、電極との接合時の耐破れ性などを考慮すると、高分子電解質膜の厚みは薄すぎると好ましくない場合がある。これらを考慮すると、高分子電解質膜の厚みは、1.2μm以上350μm以下が好ましい。上記高分子電解質膜の厚さがこの範囲内であれば、製造が容易となり、かつ加工時や乾燥時にもシワが発生しにくい。厚みは、5μm以上200μm以下がさらに好ましい。また、破損が生じ難いなどハンドリング性が向上する。
本発明の製造方法による高分子電解質膜のIECは、高分子電解質のIECにより調整すればよい。高分子電解質膜として、たとえば電解質以外の材料を含む場合は、それによって膜としてのIECは低下するので、例えば電解質のIECは高めに設定するなど、適宜調整しうる。なお、膜としての好ましいイオン交換容量は、0.5〜3.0[meq./g]であり、さらに好ましくは1.0〜2.5[meq./g]である。0.5[meq./g]よりイオン交換容量が小さいと、好ましいプロトン伝導性が発現しなくなる可能性があり、3.0[meq./g]より大きいと、機械強度が低下し、十分な強度を持てない可能性がある。この高分子電解質膜は、本発明の高分子電解質を単独で用いるほか、その他の高分子電解質等と混合して用いてもよい。
<3.燃料電池>
本発明にかかる燃料電池は、本発明の製造方法による高分子電解質膜を含んでなる燃料電池である。
本発明の製造方法による高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池の一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、固体高分子形燃料電池を例に挙げて説明するが、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池についても、固体高分子形燃料電池と同様に実施可能である。
図3は、本発明の製造方法による高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池の要部断面の構造を模式的に示す図である。同図に示すように、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池10は、高分子電解質膜1、触媒層2、拡散層3、セパレーター4を備えている。
高分子電解質膜1は、固体高分子形燃料電池10のセルの略中心部に位置している。触媒層2は、高分子電解質膜1に接触するように設けられている。拡散層3は、触媒層2に隣接して設けられており、さらにその外側にセパレーター4が配置されている。セパレーター4には、燃料ガス若しくは液体(メタノール水溶液など)、並びに、酸化剤を送り込むための流路5が形成されている。これらの部材は、固体高分子形燃料電池10のセルとして構成されていると換言できる。
一般的に、高分子電解質膜1に触媒層2を接合したものや、高分子電解質膜1に触媒層2と拡散層3を接合したものは、MEA(膜−電極接合体)といわれ、固体高分子形燃料電池(又は直接液体形燃料電池や直接メタノール形燃料電池)の基本部材として使用される。
MEAを作製する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜やその他の炭化水素系高分子電解質膜(例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなど)で行われる公知の方法が適用可能である。
MEAの具体的作製方法の一例を下記に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
触媒層2の形成は、高分子電解質の溶液あるいは分散液に、金属担持触媒を分散させて、触媒層形成用の分散溶液を調合する。この分散溶液をポリテトラフルオロエチレンなどの離型フィルム上にスプレーで塗布して分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、離型フィルム上に所定の触媒層2を形成させる。この離型フィルム上に形成した触媒層2を高分子電解質膜1の両面に配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスし、高分子電解質膜1と触媒層2を接合し、離型フィルムをはがすことによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2が形成されたMEAが作製できる。
また、上記分散溶液を、コータなどを用いて拡散層3上に塗工して、分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、拡散層3上に触媒層2が形成された触媒担持ガス拡散電極を作製し、高分子電解質膜1の両側にその触媒担持ガス拡散電極の触媒層2側を配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスすることによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2と拡散層3とが形成されたMEAが製造できる。なお、上記触媒担持ガス拡散電極には、市販のガス拡散電極(米国E−TEK社製、など)を使用しても構わない。
上記高分子電解質の溶液としては、パーフルオロカーボンスルホン酸高分子化合物のアルコール溶液(アルドリッチ社製ナフィオン(登録商標)溶液など)やスルホン化された芳香族高分子化合物(例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなど)の有機溶媒溶液などが使用できる。上記金属担持触媒としては、高比表面積の導電性粒子が担体として使用可能であり、例えば、活性炭、カーボンブラック、ケッチェンブラック、バルカン、カーボンナノホーン、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素材料が例示できる。
金属触媒としては、燃料の酸化反応および酸素の還元反応を促進するものであれば使用可能であり、燃料極と酸化剤極で同じであっても異なっていても構わない。例えば、白金、ルテニウムなどの貴金属あるいはそれらの合金などが例示でき、それらの触媒活性の促進や、反応副生物による被毒を抑制するための助触媒を添加しても構わない。
上記触媒層形成用の分散溶液は、スプレーで塗布したり、コータで塗工したりしやすい粘度に調整するため、水や有機溶媒で適宜希釈しても構わない。また、必要に応じて触媒層2に撥水性を付与するため、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系化合物を混合してもよい。
上記拡散層3としては、カーボンクロスやカーボンペーパーなどの多孔質の導電性材料が使用可能である。これらは燃料や酸化剤の拡散性や反応副生物や未反応物質の排出性を促進するため、ポリテトラフルオロエチレンなどで被覆して撥水性を付与したものを使用するのが好ましい。また、高分子電解質膜1と触媒層2との間に必要に応じて前述したような高分子電解質からなる接着層を設けてもよい。
高分子電解質膜1と触媒層2を加熱・加圧条件下でホットプレスする条件は、使用する高分子電解質膜1や触媒層2に含まれる高分子電解質の種類に応じて適宜設定する必要がある。上記条件としては、一般的に高分子電解質膜1や触媒層2に含まれる高分子電解質の熱劣化や熱分解温度以下であって、高分子電解質膜1あるいは触媒層2に含まれる高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度条件下であることが好ましい。
加圧条件としては、概ね0.1MPa以上20MPa以下の範囲であることが、高分子電解質膜1と触媒層2が充分に接触するとともに、使用材料の著しい変形にともなう特性低下がなく好ましい。特にMEAが高分子電解質膜1と触媒層2とからのみ形成される場合は、拡散層3を触媒層2の外側に配置して特に接合することなく接触させるのみで使用しても構わない。
上記のような方法で得られたMEAを、燃料ガス若しくは液体、並びに、酸化剤を送り込む流路5が形成された一対のセパレーター4などの間に挿入することにより、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池10が得られる。
上記セパレーター4としてはカーボングラファイトやステンレス鋼の導電性材料のものが使用できる。特にステンレス鋼などの金属製材料を使用する場合は、耐腐食性の処理を施していることが好ましい。
上記の固体高分子形燃料電池10に対して、燃料ガスまたは液体として、水素を主たる成分とするガスや、メタノールを主たる成分とするガスまたは液体を、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)を、それぞれ別個の流路5より、拡散層3を経由して触媒層2に供給することにより、固体高分子形燃料電池は発電する。このとき燃料として、例えば、含水素液体を使用する場合には直接液体形燃料電池となるし、メタノールを使用する場合には直接メタノール形燃料電池となる。つまり、固体高分子形燃料電池10について例示した上記実施形態は、そのまま直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池についても適用可能といえる。
なお、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池10を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成し使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
なお、上述した例以外にも、本発明にかかる高分子電解質膜は、特開2000−90944号公報、特開2001−313046号公報、特開2001−313047号公報、特開2001−93551号公報、特開2001−93558号公報、特開2001−93561号公報、特開2001−102069号公報、特開2001−102070号公報、特開2001−283888号公報、特開2000−268835号公報、特開2000−268836号公報、特開2001−283892号公報等で公知になっている固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の電解質膜として、使用可能である。これらの公知文献に基づけば、当業者であれば、本発明の高分子電解質膜を用いて容易に固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池を構成することができる。
本発明の高分子電解質膜は、平面性に優れるので、これを用いて燃料電池を構成することにより、セパレーターとのシール性が高く、触媒層との密着性に優れることから、高い出力密度や耐久性を持つことなどを特徴とする燃料電池が得られる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1)
(高分子電解質の製造)
窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(4.00g、11.42mmol、東京化成工業社製)と、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.58g、10.15mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(3.16g、22.83mmol、関東化学社製)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)とを加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明な均一溶液を得た。この溶液を140℃で3時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で12時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、1000mLの純水中に反応溶液をゆっくりと滴下した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収し、80℃の純水で3時間洗浄した後メタノールで洗浄し、60℃で15時間真空乾燥するとスルホン化可能な部位を含むオリゴマーを白色繊維状にて得た。
別途、窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコにビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.00g、7.86mmol、東京化成工業社製)と、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(1.63g、7.61mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(2.17g、15.72mmol、関東化学社製)と、炭酸カルシウム(15.73g、157.20mmol)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)を加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明均一溶液を得た。この溶液を140℃で1.5時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で1.5時間加熱することによって、ポリエーテルを含む溶液を得た。ここに、先に得たスルホン化可能な部位を含むオリゴマー(1.20g)を添加した後、165℃で更に3時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、塩酸水溶液(1000mL、10mLの濃塩酸/1000mL純水)中に反応溶液をゆっくりと滴下した。この作業もう一度繰り返し、メタノールで洗浄した後に、60℃で15時間真空乾燥することによって、スルホン化可能な構造を有する高分子化合物を得た。
次に、上記スルホン化可能な構造を有する高分子化合物1gを50mlのジクロロメタンに溶解し1.5重量%の溶液とした。この溶液を、クロロスルホン酸2mlを含むジクロロメタン(50ml)へ滴下し、室温下にて、磁性体の攪拌子を加え、磁力によって攪拌した。15時間後、スルホン化高分子化合物を含む混合物を水へ注ぎ反応を停止し、目的物を白色固体として析出させた。析出したスルホン化高分子化合物(スルホン化ポリアリールエーテルスルホンケトン、下記式(1)の構造を持つ)(分子量Mn=95,000g/mol、Mw=210,000g/mol、収量1.2g、p=8、n=30)を洗浄水が中性になるまで洗浄し、真空オーブンにて100℃で2時間乾燥、以下実施例の高分子電解質を得た。
Figure 0005614641
(式中、nとpはそれぞれの繰り返し単位数を示す)
(高分子電解質膜の製造)
上記高分子電解質を溶質、DMAcを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これをガラス基板上に固定した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、クリアランス250μmのドクターブレードを用いキャストした。45℃にセットしたホットプレート上で約2時間処理することにより、溶媒の大半を気化させた。DMAcの残存量は高分子電解質に対し約15重量%であった。ガラス基板より高分子電解質がキャストされたPETフィルムを取り外し、このまま十分量の1N硫酸に30分間浸漬し、その後十分量の純水に30分間浸漬することを2回繰り返すことにより、溶媒の除去とスルホン酸基のプロトン型への完全な変換を行った。このときDMAcの残存量は、高分子電解質に対し2.3重量%であった。60℃のオーブンで30分乾燥することにより、水分を除去した。電解質膜を基材から剥離することにより、実施例1の高分子電解質膜を得た。膜の厚さは約30μmであった。
(実施例2)
(高分子電解質膜の製造)
実施例1と同様の高分子電解質を溶質、DMAcを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これを簡易型連続キャスト装置(サンクメタル社製小型精密塗布装置)を用い、以下の条件で連続製膜を行った。基材:厚さ100μmPETフィルム、塗工厚み:250μm、塗工速度:23cm/min、乾燥炉温度:100℃、乾燥炉風量:0.5m/min。
これにより得た、高分子電解質膜がキャストされたPETフィルムを適当に切り出し、実施例1と同様の方法で浸漬(溶媒の除去)とスルホン酸基のプロトン型への完全な変換を行った。有機溶媒の残存量は高分子電解質に対し1.5重量%であった。60℃のオーブンで30分乾燥することにより、水分を除去した。電解質膜を基材から剥離することにより、実施例2の高分子電解質膜を得た。
(実施例3)
(基材付高分子電解質膜の製造)
実施例1の最終の工程において、電解質膜を基材から剥離しないことで、実施例3の基材付高分子電解質膜を得た。
(比較例1)
(高分子電解質膜の製造)
実施例1と同様の高分子電解質を用いた。この高分子電解質を溶質、DMAcを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これをガラス基板上に固定した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、クリアランス250μmのドクターブレードを用いキャストした。45℃にセットしたホットプレート上で約2時間処理することにより、溶媒の大半を気化させ、有機溶媒の残存量を高分子電解質に対し約15重量%とした。ガラス基板より高分子電解質がキャストされたPETフィルムを取り外し、高分子電解質膜をPETフィルムより剥離した。この剥離した高分子電解質膜をテフロン(登録商標)製パンチングシートで挟み込んで固定し、十分量の1N硫酸に30分間浸漬し、その後十分量の純粋に30分間浸漬することを2回繰り返すことにより、溶媒の除去とスルホン酸基のプロトン型への完全な変換を行った。有機溶媒の残存量は高分子電解質に対し2.0重量%であった。60℃のオーブンで30分乾燥することにより、水分を除去した。これにより比較例1の高分子電解質膜を得た。
(比較例2)
(基材付高分子電解質膜の製造)
比較例1で得た高分子電解質膜を、簡易型連続プレス装置(日本GBC株式会社製ラミネーターGL835PRO)を用い、以下の条件で粘着剤付PETフィルム(パナック社製耐熱一般再剥離粘着フィルムCTタイプ)と接合した。温度:25℃、接合速度:60cm/min。これにより比較例2の基材付高分子電解質膜を得た。
上記実施例と比較例の高分子電解質膜について、特性を評価した。方法は以下のとおりである。
(イオン交換容量の測定)
各試験試料(約50mg:十分に乾燥)を25℃での塩化ナトリウム飽和水溶液(20mL)に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間イオン交換反応させた。25℃まで冷却し、次いで膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収した。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、イオン交換容量を算出した。
(プロトン伝導度の測定)
各試験試料を、10mm×40mmの大きさに裁断し、4端子法により交流インピーダンスを測定した。測定は、温度80℃、湿度40%RHの条件で2時間放置、電流値として0.005mAの定電流、掃引周波数は10〜20000Hzとした。得られたインピーダンスと膜端子間距離(10mm)と膜厚(マイクロメーターで測定)からプロトン伝導度を算出した。
(溶媒残存率の測定)
真空乾燥により水分を除去し、正確に重量を確認した電解質膜を、DMSOに溶解した。これに内部標準としてジメトキシベンゼンを電解質膜の約半分量、正確に重量を測定し加えた。この溶液のプロトンNMR測定を行い、内部標準のジメトキシベンゼンと残留溶媒であるDMAcのそれぞれのメチル基由来のピーク比よりモル比を計算した。電解質膜とジメトキシベンゼンの重量比より電解質膜と残存溶媒の比を算出、これを換算して溶媒残存率を計算した。
(平面性の評価)
完成した電解質膜を平面ガラス板の上に置いた際、ほぼガラス板に沿う程度の平面性を◎、部分的に波うちが見られガラス板から浮く部分がある場合を△として目視で評価した。
表1に、実施例1、2と比較例1で示した高分子電解質膜の評価結果を示す。本発明の製法で作製した実施例の電解質膜と、比較例の電解質膜は、イオン交換容量、プロトン伝導度、溶媒残存率には差が見られなかったが、平面性は実施例のほうが優れていた。
表2に、実施例3と比較例2で示した基材付高分子電解質膜製造の工程と、それの外観を示す。実施例3と比較例2の高分子電解質膜の特性は、それぞれ実施例1と比較例1と同様であるので差はないが、工程は実施例のほうが簡便であり、また外観も優れることが分かる。
Figure 0005614641
Figure 0005614641
1 高分子電解質膜
2 触媒層
3 拡散層
4 セパレーター
5 流路
10 固体高分子形燃料電池

Claims (11)

  1. A)高分子電解質の有機溶液を基材上にキャストする工程、
    B)A)工程で基材上にキャストされた高分子電解質有機溶液中の、有機溶媒を気化して基材上に高分子電解質膜を作製する工程、
    C)B)工程で作製された、基材上の高分子電解質膜を、基材から剥離しない状態で前記有機溶媒が可溶な液体に浸漬する工程、および、
    D)C)工程の後、前記有機溶媒が可溶な液体を高分子電解質膜から気化する工程
    を含むことを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法であって、
    前記高分子電解質が、スルホン酸基を含むブロックと、スルホン酸基を含まないブロックとからなる構造を有し、スルホン酸基を有するブロックにフルオレン骨格を有することを特徴とする製造方法
  2. 前記有機溶媒が可溶な液体が水又は酸の水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜の製造方法。
  3. 前記有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、及び、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の高分子電解質膜の製造方法。
  4. B)工程において、前記有機溶媒の残存量を高分子電解質に対し50重量%以下とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
  5. C)工程により、前記有機溶媒の残存量を高分子電解質に対し3重量%以下とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
  6. A)〜D)工程を連続で行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
  7. 前記高分子電解質が、主鎖に芳香族基を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
  8. 前記高分子電解質が、スルホン酸基及び/又はスルホン酸基の塩を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜を含むことを特徴とする、膜−電極接合体。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
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