JP5614641B2 - 高分子電解質膜の製造方法 - Google Patents
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Description
また、この高分子電解質膜の製造方法を用いることによって、低コストで高性能な燃料電池を提供することができる。
本発明の高分子電解質膜には、従来一般的な高分子電解質を用いることができる。高分子電解質は、いわゆるナフィオン(登録商標)などのいわゆるパーフルオロスルホン酸電解質や、炭化水素系電解質と呼ばれる、フッ素を含まない主鎖、特にエンジニアリングプラスチックと呼ばれる熱的化学的耐久性の高い主鎖構造を持ったものがある。このような高分子電解質は、「固体高分子型燃料電池用イオン交換膜の開発」(2000年、株式会社シーエムシー)などに詳しく例示されている。
非極性、脂肪族、脂環式または好ましくは芳香族溶媒、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはo−ジクロロベンゼン、などと極性非プロトン性溶媒の混合物も使用できる。この場合、極性非プロトン性溶媒の体積比は、50%以上が好ましい。
本発明の高分子電解質膜は、上記の高分子電解質を本発明の製造方法で製膜したものである。本発明の製造方法は、キャスト法に適応しうる。キャスト法は、高分子電解質の有機溶液を、ダイコータ、コンマコータ等により、硝子板などの平板上に、または高分子フィルムや金属フィルムなどの基材に塗布し、何らかの方法で有機溶剤を除去する方法である。ベルト状の高分子フィルムや金属フィルムに、コータやダイスを用いて連続的に製造することも可能であり、これらは従来公知の方法を適応しうる。
また、C)工程は、複数の繰り返し、例えば酸水溶液の洗浄の後純水で洗浄する、といった方法も適応し得る。
本発明にかかる燃料電池は、本発明の製造方法による高分子電解質膜を含んでなる燃料電池である。
MEAを作製する方法は、従来検討されている、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜やその他の炭化水素系高分子電解質膜(例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなど)で行われる公知の方法が適用可能である。
触媒層2の形成は、高分子電解質の溶液あるいは分散液に、金属担持触媒を分散させて、触媒層形成用の分散溶液を調合する。この分散溶液をポリテトラフルオロエチレンなどの離型フィルム上にスプレーで塗布して分散溶液中の溶媒を乾燥・除去し、離型フィルム上に所定の触媒層2を形成させる。この離型フィルム上に形成した触媒層2を高分子電解質膜1の両面に配置し、所定の加熱・加圧条件下でホットプレスし、高分子電解質膜1と触媒層2を接合し、離型フィルムをはがすことによって、高分子電解質膜1の両面に触媒層2が形成されたMEAが作製できる。
加圧条件としては、概ね0.1MPa以上20MPa以下の範囲であることが、高分子電解質膜1と触媒層2が充分に接触するとともに、使用材料の著しい変形にともなう特性低下がなく好ましい。特にMEAが高分子電解質膜1と触媒層2とからのみ形成される場合は、拡散層3を触媒層2の外側に配置して特に接合することなく接触させるのみで使用しても構わない。
上記セパレーター4としてはカーボングラファイトやステンレス鋼の導電性材料のものが使用できる。特にステンレス鋼などの金属製材料を使用する場合は、耐腐食性の処理を施していることが好ましい。
(高分子電解質の製造)
窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(4.00g、11.42mmol、東京化成工業社製)と、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(2.58g、10.15mmol、東京化成工業社製)と、炭酸カリウム(3.16g、22.83mmol、関東化学社製)と、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、20mL、関東化学社製)と、脱水トルエン(10mL、関東化学社製)とを加えた。三つ口フラスコにDean−Starkトラップを設置し、この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明な均一溶液を得た。この溶液を140℃で3時間加熱した後、Dean−Starkトラップを除去し、165℃で12時間加熱した。反応終了後、DMAc(20mL)を加えてから常温まで冷却し、1000mLの純水中に反応溶液をゆっくりと滴下した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収し、80℃の純水で3時間洗浄した後メタノールで洗浄し、60℃で15時間真空乾燥するとスルホン化可能な部位を含むオリゴマーを白色繊維状にて得た。
上記高分子電解質を溶質、DMAcを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これをガラス基板上に固定した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、クリアランス250μmのドクターブレードを用いキャストした。45℃にセットしたホットプレート上で約2時間処理することにより、溶媒の大半を気化させた。DMAcの残存量は高分子電解質に対し約15重量%であった。ガラス基板より高分子電解質がキャストされたPETフィルムを取り外し、このまま十分量の1N硫酸に30分間浸漬し、その後十分量の純水に30分間浸漬することを2回繰り返すことにより、溶媒の除去とスルホン酸基のプロトン型への完全な変換を行った。このときDMAcの残存量は、高分子電解質に対し2.3重量%であった。60℃のオーブンで30分乾燥することにより、水分を除去した。電解質膜を基材から剥離することにより、実施例1の高分子電解質膜を得た。膜の厚さは約30μmであった。
(高分子電解質膜の製造)
実施例1と同様の高分子電解質を溶質、DMAcを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これを簡易型連続キャスト装置(サンクメタル社製小型精密塗布装置)を用い、以下の条件で連続製膜を行った。基材:厚さ100μmPETフィルム、塗工厚み:250μm、塗工速度:23cm/min、乾燥炉温度:100℃、乾燥炉風量:0.5m3/min。
(基材付高分子電解質膜の製造)
実施例1の最終の工程において、電解質膜を基材から剥離しないことで、実施例3の基材付高分子電解質膜を得た。
(高分子電解質膜の製造)
実施例1と同様の高分子電解質を用いた。この高分子電解質を溶質、DMAcを溶媒として20重量%の溶液を作製した。これをガラス基板上に固定した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、クリアランス250μmのドクターブレードを用いキャストした。45℃にセットしたホットプレート上で約2時間処理することにより、溶媒の大半を気化させ、有機溶媒の残存量を高分子電解質に対し約15重量%とした。ガラス基板より高分子電解質がキャストされたPETフィルムを取り外し、高分子電解質膜をPETフィルムより剥離した。この剥離した高分子電解質膜をテフロン(登録商標)製パンチングシートで挟み込んで固定し、十分量の1N硫酸に30分間浸漬し、その後十分量の純粋に30分間浸漬することを2回繰り返すことにより、溶媒の除去とスルホン酸基のプロトン型への完全な変換を行った。有機溶媒の残存量は高分子電解質に対し2.0重量%であった。60℃のオーブンで30分乾燥することにより、水分を除去した。これにより比較例1の高分子電解質膜を得た。
(基材付高分子電解質膜の製造)
比較例1で得た高分子電解質膜を、簡易型連続プレス装置(日本GBC株式会社製ラミネーターGL835PRO)を用い、以下の条件で粘着剤付PETフィルム(パナック社製耐熱一般再剥離粘着フィルムCTタイプ)と接合した。温度:25℃、接合速度:60cm/min。これにより比較例2の基材付高分子電解質膜を得た。
(イオン交換容量の測定)
各試験試料(約50mg:十分に乾燥)を25℃での塩化ナトリウム飽和水溶液(20mL)に浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間イオン交換反応させた。25℃まで冷却し、次いで膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収した。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加え、0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、イオン交換容量を算出した。
各試験試料を、10mm×40mmの大きさに裁断し、4端子法により交流インピーダンスを測定した。測定は、温度80℃、湿度40%RHの条件で2時間放置、電流値として0.005mAの定電流、掃引周波数は10〜20000Hzとした。得られたインピーダンスと膜端子間距離(10mm)と膜厚(マイクロメーターで測定)からプロトン伝導度を算出した。
真空乾燥により水分を除去し、正確に重量を確認した電解質膜を、DMSOに溶解した。これに内部標準としてジメトキシベンゼンを電解質膜の約半分量、正確に重量を測定し加えた。この溶液のプロトンNMR測定を行い、内部標準のジメトキシベンゼンと残留溶媒であるDMAcのそれぞれのメチル基由来のピーク比よりモル比を計算した。電解質膜とジメトキシベンゼンの重量比より電解質膜と残存溶媒の比を算出、これを換算して溶媒残存率を計算した。
完成した電解質膜を平面ガラス板の上に置いた際、ほぼガラス板に沿う程度の平面性を◎、部分的に波うちが見られガラス板から浮く部分がある場合を△として目視で評価した。
表2に、実施例3と比較例2で示した基材付高分子電解質膜製造の工程と、それの外観を示す。実施例3と比較例2の高分子電解質膜の特性は、それぞれ実施例1と比較例1と同様であるので差はないが、工程は実施例のほうが簡便であり、また外観も優れることが分かる。
2 触媒層
3 拡散層
4 セパレーター
5 流路
10 固体高分子形燃料電池
Claims (11)
- A)高分子電解質の有機溶液を基材上にキャストする工程、
B)A)工程で基材上にキャストされた高分子電解質有機溶液中の、有機溶媒を気化して基材上に高分子電解質膜を作製する工程、
C)B)工程で作製された、基材上の高分子電解質膜を、基材から剥離しない状態で前記有機溶媒が可溶な液体に浸漬する工程、および、
D)C)工程の後、前記有機溶媒が可溶な液体を高分子電解質膜から気化する工程
を含むことを特徴とする、高分子電解質膜の製造方法であって、
前記高分子電解質が、スルホン酸基を含むブロックと、スルホン酸基を含まないブロックとからなる構造を有し、スルホン酸基を有するブロックにフルオレン骨格を有することを特徴とする製造方法。 - 前記有機溶媒が可溶な液体が水又は酸の水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、及び、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の高分子電解質膜の製造方法。
- B)工程において、前記有機溶媒の残存量を高分子電解質に対し50重量%以下とすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- C)工程により、前記有機溶媒の残存量を高分子電解質に対し3重量%以下とすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- A)〜D)工程を連続で行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記高分子電解質が、主鎖に芳香族基を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 前記高分子電解質が、スルホン酸基及び/又はスルホン酸基の塩を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜を含むことを特徴とする、膜−電極接合体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質膜の製造方法によって製造された、高分子電解質膜を含むことを特徴とする、固体高分子形燃料電池。
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