JP5168075B2 - 耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料およびその製造方法 - Google Patents

耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料に関する。
亜鉛系めっき鋼板等の金属材料は、自動車、建材および家電などの幅広い分野で使用されている。しかし、これらの亜鉛系めっき鋼板は、環境中で腐食して白錆と言われる腐食生成物が生成し、外観が低下するという欠点を有しており、特に家電分野において問題となることが多い。さらに、近年ますます発展するデジタル家電、精密機器、OA機器、白物家電等の家電分野で金属材料を使用する際には耐食性に加え、溶接性や電磁波シールド性の観点から導電性、耐熱性、耐指紋性および加工時耐黒カス性などの性能も要求される。また、自動車分野でも、プレス成形性、溶接性、塗装密着性等の諸特性に加え、さらに高い耐食性を有することが要求されている。
これらに対し、さらに高い耐食性を有する表面処理鋼板の開発が行われ、Zn−Mn、Zn−Crなどの従来とは異なる合金元素を添加しためっき鋼板や、シリカやアルミナなどの酸化物粒子を分散共析させる複合めっきも検討されている。例えば、特許文献1には、Znめっき層に2〜15%のシリカを含む分散めっき鋼板が純Znめっき鋼板に比べ、1.5〜3倍優れた耐食性が得られたと記載されている。また、特許文献2にはZn−シリカ複合めっきを製造するために100nm以下の粒径のシリカ粒子と硝酸イオンを添加しためっき浴を用いる方法が開示されており、シリカをおよそ5%以上含有するめっき層が、Zn−13%Niめっき層の約3倍の耐食性を示すことが記載されている。さらに、特許文献3には、シリカの最適な形態を特定し、平均一次粒径が10〜40nmであるシリカ粒子が連鎖状に結合してなる、平均長さ60〜300nmの鎖状シリカによる高耐食性Zn−Ni−シリカめっき鋼板が記載されている。しかし、これらはいずれも、シリカを数%以上の量でめっき層に分散させないと有効な耐食性向上効果が得られず、大量のシリカをめっき中に導入するためにめっき浴の安定性や、操業上の効率などを犠牲にしており、コスト上不利であるだけでなく、めっき層にも表面粗度や加工割れなどの問題がある。
また、本発明者らは、特許文献4においてCaとSiとを共存させた高耐食めっき鋼材が、CaやSiの量が微量でもめっきの耐食性が大きく向上するため、操業上のコストアップや効率低下を伴わずに、従来に比べより高耐食性の電気亜鉛めっき鋼材が得られることを提案した。しかし、このままではデジタル家電、精密機器、OA機器、白物家電等の家電分野で使用する際の耐食性としては不十分で、上塗り塗装密着性や耐指紋性の点で課題が依然としてあった。
一方、一般的に金属材料表面に耐食性や塗装密着性などを付与する金属めっき以外の技術として、金属材料表面に、クロム酸、重クロム酸、さらにそれらの塩を主成分として含有する処理液によるクロメート処理、リン酸塩処理、シランカップリング剤単体による処理、有機樹脂皮膜処理を施す方法、などが知られており、そのいくつかの技術は実用化されている。近年では特に、RoHSやELV指令に代表されるように環境負荷物質である六価クロムの使用規制に端を発し、クロメート表面処理を施された金属材料からクロメートフリー表面処理を施された金属材料へと急速に転換が進みつつある。
上記クロメートフリー表面処理の中で無機成分を用いる技術として、特許文献5には耐食性、塗装密着性を改善するために、希薄な水ガラス溶液やケイ酸ナトリウム溶液、乃至それらの混合液に、特定量の有機シランカップリング剤を添加した処理液を鋼材に塗布乾燥する方法が記載されている。また、特許文献6には、バナジウム化合物と、ジルコニウム、チタニウム、モリブデン、タングステン、マンガン及びセリウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属化合物とを含有する金属表面処理剤が挙げられている。
特にシランカップリング剤を利用する技術としては、特許文献7に、低濃度の有機官能シランおよび架橋剤を含有する水溶液による金属板の処理が記載されている。架橋剤が有機官能シランを架橋することによって、緻密なシロキサン・フィルムを形成する。特許文献8には、特定の樹脂化合物と、第1〜3アミノ基及び第4アンモニウム塩基から選ばれる少なくとも1種のカチオン性官能基を有するカチオン性ウレタン樹脂、特定の反応性官能基を有する1種以上のシランカップリング剤と、特定の酸化合物とを含有し、且つカチオン性ウレタン樹脂及びシランカップリング剤の含有量が所定の範囲内である表面処理剤を用いて、耐食性に優れ、さらに耐指紋性、耐黒変性および塗装密着性に優れたノンクロム系表面処理鋼板及びその製造方法が開示されている。また特許文献9には、亜鉛系めっきまたはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、有機樹脂とシリカの表面に有機化合物を解してCaやMgなど価数が2以上のイオンを結合させた防錆添加剤を含有する有機無機複合皮膜が記載されている。しかしながら、これらの技術は耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性および加工時の耐黒カス性の全てを満足するものではなく、さらなる性能向上が強く求められている。
そこで本発明者らは、特許文献10で、特定のシランカップリング剤2種類を特定の固形分質量比で配合して得られる、分子内に特定の官能基を2個以上と、特定の親水性官能基を1個以上含有する有機ケイ素化合物と、フルオロ化合物と、りん酸と、バナジウム化合物からなる水系金属表面処理剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成することで、耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性、上塗り塗装密着性および加工時の耐黒カス性を満足するクロメートフリー表面処理金属材が得られることを見出した。
このように、従来の技術で、耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性、上塗り塗装密着性および加工時の耐黒カス性を満足する表面処理金属材が得られることはわかっているが、従来家電などの一般的な用途で求められてきたような耐食性ではなく、さらに長期にわたる耐食性が要求されるような、例えば、屋外使用されるような使用環境が厳しい特殊な家電用途、耐穴あき腐食性など非常に高い耐食性を要求される自動車用途、屋外使用される建材用途などの分野において、つまり亜鉛めっきの腐食による白錆発生に加え、鉄の腐食による赤錆発生の抑制も求められるような分野において、より一層の耐食性向上を、大幅なコストアップを伴わずに実現することが求められている。
特公昭56−49999号公報 特公平5−5911号公報 特開平8−260199号公報 特開2003−277994号公報 特開昭58−15541号公報 特開2002−30460号公報 米国特許第5292549号明細書 特開2003−105562号公報 特開2007−216107号公報 特開2007−51365号公報
本発明は、従来技術の有する前記課題を解決して、長期耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性、上塗り塗装密着性および加工時の耐黒カス性を満足する表面処理金属材を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記従来技術の有する課題を解決するために、微量のCaをシリカに吸着させた状態で、特定の構造をもつ界面活性剤との共存下で、亜鉛めっき層に効率的に導入しためっき皮膜と、更にその上に、特定のシランカップリング剤2種類を特定の固形分質量比で配合して得られる、分子内に特定の官能基を2個以上と、特定の親水性官能基を1個以上含有する有機ケイ素化合物(W)と、フルオロ化合物(X)と、りん酸(Y)と、バナジウム化合物(Z)からなる水系金属表面処理剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成することで、格段の長期耐食性向上効果が得られ、そのため上記複合皮膜の薄膜化も可能となり、導電性に加え、耐熱性、耐指紋性、上塗り塗装密着性、加工時の耐黒カス性も同時に得ることができるクロメートフリー表面処理金属材料が得られることを見出した。
すなわち、本発明は第1層として、質量%で、Ca:0.01〜1%、Si:0.01〜5%を含有し、残部が亜鉛および不可避不純物からなり、平均分子量が3000以上であるポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤をCの質量%で0.0001〜0.1%含有し、片面あたりの皮膜量が1.0〜20.0g/mで、GDSによるめっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)の比、〔I(1/2厚みSi)/I(全体厚みSi)〕が0.75以上である電気めっき層を形成し、第二層として分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分質量比〔(A)/(B)〕で0.5〜1.7の割合で配合して得られる、分子内に式−SiR123(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基を表す)で表される官能基(a)を2個以上と、水酸基(官能基(a)に含まれ得るものとは別個のもの)およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基(b)を1個以上含有し、平均の分子量が1000〜10000である有機ケイ素化合物(W)と、チタン弗化水素酸またはジルコニウム弗化水素酸から選ばれる少なくとも1種のフルオロ化合物(X)と、りん酸(Y)と、バナジウム化合物(Z)からなる水系金属表面処理剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成し、且つ、その複合皮膜の各成分において、有機ケイ素化合物(W)とフルオロ化合物(X)の固形分質量比〔(X)/(W)〕が0.02〜0.07であり、有機ケイ素化合物(W)とりん酸(Y)の固形分質量比〔(Y)/(W)〕が0.03〜0.12であり、有機ケイ素化合物(W)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(W)〕が0.05〜0.17であり、且つ、フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(X)〕が1.3〜6.0であることを特徴とする表面処理金属材にある。
上記水系金属表面処理剤は、さらに成分(C)として、第2層の皮膜中に硫酸コバルト、硝酸コバルトおよび炭酸コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種のコバルト化合物を、前記有機ケイ素化合物(W)とコバルト化合物(C)の固形分質量比〔(C)/(W)〕が0.01〜0.1の割合で含有することが好ましい。
上記表面処理金属材料は、金属材料の表面に、上記水系金属表面処理剤を塗布し、60℃より高く250℃未満の到達温度で乾燥を行い、乾燥後の皮膜重量が0.1〜1.5g/m2であることが好ましい。
上記金属材料は電気亜鉛めっき鋼板であることが好ましい。
上記表面処理金属材料の製造において、電気めっき浴を、Caを吸着させたシリカ粒子を平均分子量が3000以上であるポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤と共に分散させた酸性めっき浴とするとすることが好ましい。
本発明の表面処理金属材料は、長期耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性、上塗り塗装密着性および加工時の耐黒カス性を満足することから実用上価値のある技術である。
以下本発明の内容について詳細に説明する。
本発明の表面処理金属材料は、耐食性を大きく向上させる微量のCaをシリカに吸着させた状態で、特定の構造をもつ界面活性剤との共存下で、亜鉛めっき層中の上半分の層に効率的に導入しためっき皮膜と、上記水系金属表面処理剤の複合皮膜を併用することで、格段の長期耐食性向上効果が得られる。
まず、本発明の表面処理金属材料の成分に関する限定理由について説明する。なお、以下%は、質量%を意味するものとする。Caはそもそも、水の安定な電位範囲では電析しないため、電気めっきにより亜鉛めっき層に導入するのは非常に困難な元素である。しかし、Caが特にSiと共存して存在すると、Znの腐食を著しく抑制することを見出し、これを導入する方法を研究した結果、Caを吸着したシリカをめっき浴中に分散させることでCaをSiと共にめっき浴中に導入可能なことを見出した。
Caは0.01%の微量含有量であっても耐食性向上には有効であり、0.1%以上に量が増えればさらに耐食性向上に寄与する。その効果はSi:0.1%以上との共存下でさらに向上する。1%以上Caを導入することは現実的には現状難しいため、上限を1%とした。
一方、SiはCaを導入するためにシリカに吸着して導入する場合には、同時にめっき層に0.01%以上導入されるが、Caを導入するためだけの働きではなく、Caと協調してZnの耐食性向上に寄与する。Caを0.01%以上Znめっき層に含有する場合、Siは0.1%以上で十分な上記協調耐食効果を示すので、0.1%以上の添加が好ましい。5%を超えて含有する場合、加工性などの他の性能が劣ってくるので、上限を5%とした。
この性能の発現機構については定かではないが、推定されうる発現機構について説明する。ただし、本発明はこれに縛られるものではない。
まず、微量のCaをシリカに吸着させた状態で、特定の構造をもつ界面活性剤との共存下で、亜鉛めっき層中の上半分の層に効率的に導入しためっき皮膜の上に水系金属表面処理剤を塗布し、焼き付けを行う際に、Znめっき皮膜中に導入される微量のCaを吸着したシリカに含まれる−OH基と水系金属表面処理剤の塗布複合皮膜上のSi−OHが脱水縮合により安定したSi−O−Si結合(シロキサン結合)を形成する。これにより、従来は第一層のめっき皮膜と第二層の水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜との間の界面における密着性を確保してきた。この部分の密着性には、界面への水、塩分等の腐食因子の侵入抑制が腐食抑制に大きく寄与しているものと考えられる。加えて、水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜自体の腐食因子抑制効果や、水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜中に含まれるSi以外の無機塩、有機化合物の官能基がめっき表面の−O、−OH基と水素結合を介して架橋構造を形成していることも腐食因子の侵入を抑制すると考えられることから、表面処理金属材料としての腐食開始を遅延することに大きく寄与していると考えられる。
さらに、微量のCaをシリカに吸着させた状態で亜鉛めっき層中に導入することにより、Caがアルカリ性環境で皮膜的強固な皮膜を形成して耐食性向上に寄与すると共に、シリカが酸性環境で沈殿して耐食性向上に寄与すると考えられる。すなわち、両性で溶解性のあるZnめっき層をCaとシリカが協調して防食する機能を付与できるためと考えられる。
また、水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜はSi−有機官能基を含む有機物の配列が規則的であり、また有機鎖が比較的短いことから、皮膜中の極めて微小な区域に、規則的かつ緻密にSi含有部と有機物部、すなわち無機物と有機物が配列しており、そのため、無機系皮膜が通常有する耐熱性および加工性時耐黒カス性、有機系皮膜が通常有する耐指紋性や塗装性などを併せ持つと考えられる。
(第1層Ca吸着Si電気めっきの説明)
さらに前述の亜鉛めっきの腐食による白錆発生に加え、鉄の腐食による赤錆発生をも抑制する必要がある場合のような、長期にわたる耐食性の要求から、発明者らはめっき層内のSi濃度分布と特定の構造をもつ界面活性剤に着目することで耐食性の向上を達成した。即ち、図1のようにGDSによるめっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)の比、〔I(1/2厚みSi)/I(全体厚みSi)〕が0.75以上とすることが好ましい。これは、めっき皮膜の上に水系金属表面処理剤を塗布し、焼き付けを行う際に、Znめっき皮膜中に導入される微量のCaを吸着したシリカに含まれる−OH基と水系金属表面処理剤の塗布複合皮膜上のSi−OHが脱水縮合により安定したSi−O−Si結合(シロキサン結合)を効率的に形成するためである。これにより、第一層のめっき皮膜と第二層の水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜との間の界面において強固な密着が起こり、界面への腐食因子の侵入を抑制できるため、腐食抑制効果が得られる。そのためにも、めっきの表層部分にCaを吸着したシリカを分散することが重要となる。尚、耐食性評価は後述の塩水噴霧平面部長期耐赤錆性試験(JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を360時間行い、赤錆発生面積で評価)によるものである。
なお、ここでいうGDSによるめっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とは、リガク製GDS(高周波グロー放電発光分析装置)GDA750を用い、分析径2.5mmでめっき層深さ方向の元素分布を測定した際の、Siの強度を積分した値である。また、めっき層全体厚みとはGDSによる測定でZnの強度が低下し変化しなくなった深さまでと定義する。また、めっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)とはめっき層全体厚みの上半分の厚みの中に存在するSiの強度を積分した値である。
GDSによるめっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)の比、〔I(1/2厚みSi)/I(全体厚みSi)〕を0.75以上とするためには、Caを吸着したシリカを利用し、かつ、特定の構造をもつ界面活性剤との共存下、すなわち、ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤と共に分散させた酸性めっき浴を用いることが好ましいことを見出した。これにより、効率や作業性を通常のZnめっきと同等に保ったまま本発明の表面処理金属材料を製造することが出来る。さらに、ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤の平均分子量は3000以上であることが好ましく、電気めっき層にCの質量%で0.0001〜0.1%含有することが好ましい。
他構造を有する界面活性剤と微量のCaを吸着したシリカの併用の場合は、Ca吸着シリカが亜鉛めっき層中にほとんど導入されないか、あるいは、Ca吸着シリカが亜鉛めっき層中に導入される場合でも、界面活性剤が地鉄と亜鉛めっき層の界面付近に主に存在する。そのため、第一層のめっき皮膜と第二層の水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜との間の界面において密着向上効果が低く、界面への水、塩分等の腐食因子侵入抑制効果すなわち腐食抑制効果が不十分となると考えられる。
一方、ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤は、微量のCaを吸着したシリカを亜鉛めっき層中の上半分の層に効率的に導入することができる。そのため、第一層のめっき皮膜と第二層の水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜との間の界面において強固な密着が起こり、界面への水、塩分等の腐食因子の侵入を抑制できるため、腐食抑制効果が発現すると考えられる。加えて、水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜自体の腐食因子抑制効果や、水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜中に含まれるSi以外の無機塩、有機化合物の官能基がめっき表面の−O、−OH基と水素結合を介して架橋構造を形成していることも腐食因子の侵入を抑制すると考えられることから、表面処理金属材料としての腐食開始を大きく遅延することが可能と考えられる。併せて、微量のCaをシリカに吸着させた状態で亜鉛めっき層中に導入することにより、Caがアルカリ性環境で皮膜的強固な皮膜を形成して耐食性向上に寄与すると共に、シリカが酸性環境で沈殿して耐食性向上に寄与する効果も考えられる。
ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤とCaを吸着したシリカの併用でなぜこのような効果を発現するかについては明らかではないが、界面活性剤中のノニオン構造とカチオン構造が共存することにより、シリカ中の−OH基および吸着しているCaとの分子間力により亜鉛めっき中に効率的にCaを吸着したシリカを導入することが可能で、さらに、ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤の分子量が3000以上の場合は、界面活性剤の分子鎖が長くなるので、ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤がCaを吸着したシリカをめっき層の電析の後半においてより効率的に導入することが可能となると推定している。
ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤の平均分子量は長期耐食性の向上効果の観点から3000以上であることが好ましい。なお、上限は特に設けないが、百万を超える場合は、めっき液の循環時に発生する発泡などめっき操業性に課題がでる場合があり好ましくない。
図2に、電気めっき層中のC質量%と、耐食性能の関係を示す。電気めっき層中に含有するポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤量の下限は、必要な長期耐食性を発現するためにめっき層のCの質量%で0.0001%とすることが好ましい。上限は、コストパフォーマンス、めっき層自体の耐食性の低下を抑える観点から0.1%とすることが好ましい。
なお、電気めっき層中に含有するポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤の量については、例えば、標準サンプルを用いて蛍光X線分析装置であらかじめ検量線を作成しておき、めっきの蛍光X線分析を行うことでめっき中のC量として測定することができる。また分子量はTOF−MS法による直接測定およびクロマトグラフィ法による換算測定のいずれかを用いて測定することができる。耐食性評価は後述の塩水噴霧平面部長期耐赤錆性試験(JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を360時間行い、赤錆発生面積で評価)によるものである。
本発明の表面処理金属材料について、微量のCaをシリカに吸着させた状態で亜鉛めっき層中の上半分の層に効率的に導入しためっき皮膜の片面あたりの皮膜量は1.0〜20.0g/mが好ましい。めっき皮膜の片面あたりの皮膜量の下限は、最小限の耐食性を確保するため1.0g/mとすることが好ましい。めっき皮膜の片面あたりの皮膜量の上限は、電気めっき製造でのコストパフォーマンス、自動車分野に適用した場合の溶接性などを考慮して20.0g/mとすることが好ましい。より好ましい範囲は5.0〜20.0g/mである。
また、コストパフォーマンスの観点から、微量のCaをシリカに吸着させた状態で亜鉛めっき層中の上半分の層に効率的に導入しためっき皮膜を形成する原板の金属材料が電気亜鉛めっき鋼板とすることが好ましい。この場合は、一般的な電気亜鉛めっき鋼板上に微量のCaをシリカに吸着させた状態で分散しためっき層が形成され、2層めっきの下層が一般的な電気亜鉛めっき、その上層に微量Ca吸着シリカを含む電気亜鉛めっきが形成される。2層めっきの下層が一般的な電気亜鉛めっき、その上層に微量Ca吸着シリカを含む電気亜鉛めっきとすることにより、めっき皮膜と水系金属表面処理剤の塗布乾燥皮膜との間の界面における密着向上が、効率的にまたコスト的に有利に実現可能となる。
Caを吸着したシリカとしては、例えばGRACE DAVISION社のシールデックスなどを用いることができる。Caを吸着したシリカを亜鉛めっき層中に導入するためには、通常の硫酸基浴が好ましく適用でき、例えば、1リットルのめっき浴中に、硫酸亜鉛七水和物を400g、硫酸を40g、Ca吸着シリカを20g、ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤を0.4gという組成を有するめっき浴を用いて、50〜150A/dmなどの電流密度条件で、従来の電気亜鉛めっき同様、電流効率90%以上で効率低下を伴わずに製造することができる。
(第2層無機系皮膜に関する説明)
本発明の表面処理金属材料は第2層に水系金属表面処理剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成する。
有機ケイ素化合物(W)は、分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分質量比〔(A)/(B)〕で0.5〜1.7の割合で配合して得られるものである。シランカップリング剤(A)とシランカップリング剤(B)の配合比率としては、固形分質量比〔(A)/(B)〕で0.5〜1.7である必要があり、0.7〜1.7が好ましく、0.9〜1.1であることが最も好ましい。固形分質量比〔(A)/(B)〕が0.5未満であると、耐指紋性および浴安定性、耐黒カス性が著しく低下するため好ましくない。逆に1.7を超えると、耐水性が著しく低下するため好ましくない。
また、本発明中における前記分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)としては、特に限定するものではないが、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどを例示することができ、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを例示することができる。
また、本発明の有機ケイ素化合物(W)の製造方法は、特に限定するものではないが、pH4に調整した水に、前記シランカップリング剤(A)と、前記シランカップリング剤(B)を順次添加し、所定時間攪拌する方法が挙げられる。
有機ケイ素化合物(W)における官能基(a)の数は2個以上であることが必要である。官能基(a)の数が1個である場合には、金属材料表面に対する密着力および造膜性が低下するため、耐黒カス性が低下する。官能基(a)のR1、R2及びR3の定義におけるアルコキシ基の炭素数は特に制限されないが1から6であるのが好ましく、1から4であるのがより好ましく、1又は2であるのがもっとも好ましい。官能基(b)の存在割合としては、1分子内一個以上であればよい。有機ケイ素化合物(W)の平均分子量は1000〜10000であることが必要であり、1300〜6000であることが好ましい。ここでいう分子量は、特に限定するものではないが、TOF−MS法による直接測定およびクロマトグラフィー法による換算測定のいずれかを用いて良い。平均分子量が1000未満であると、形成された皮膜の耐水性が著しく低くなる。一方、平均分子量が10000より大きいと、前記有機ケイ素化合物を安定に溶解または分散させることが困難になる。
また、フルオロ化合物(X)の配合量に関しては、前記有機ケイ素化合物(W)とフルオロ化合物(X)の固形分質量比〔(X)/(W)〕が0.02〜0.07である必要があり、0.03〜0.06が好ましく、0.04〜0.05であることが最も好ましい。前記有機ケイ素化合物(W)とフルオロ化合物(X)の固形分質量比〔(X)/(W)〕が0.02未満であると、添加効果が発現しないため好ましくない。逆に0.07より大きいと導電性が低下するため好ましくない。
また、りん酸(Y)の配合量に関しては、前記有機ケイ素化合物(W)とりん酸(Y)の固形分質量比〔(Y)/(W)〕が0.03〜0.12である必要があり、0.05〜0.12であることが好ましく、0.09〜0.1であることが最も好ましい。前記有機ケイ素化合物(W)とりん酸(Y)の固形分質量比〔(Y)/(W)〕が0.03未満であると添加効果が発現しないため好ましくない。逆に0.12を超えると、皮膜の水溶化が著しくなるため好ましくない。
また、バナジウム化合物(Z)の配合量に関しては、前記有機ケイ素化合物(W)とバナジウム化合物の固形分質量比〔(Z)/(W)〕が0.05〜0.17である必要があり、0.07〜0.15であることが好ましく、0.09〜0.14であることがさらに好ましく、0.11〜0.13であることが最も好ましい。前記有機ケイ素化合物(W)とバナジウム化合物の固形分質量比〔(Z)/(W)〕が0.05未満であると添加効果が発現しないため好ましくない。逆に0.17を超えると、安定性が極めて低下するため好ましくない。
また、バナジウム化合物(Z)としては、特に限定するものではないが、五酸化バナジウムV25、メタバナジン酸HVO3、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウムVOCl3、三酸化バナジウムV23、二酸化バナジウムVO2、オキシ硫酸バナジウムVOSO4、バナジウムオキシアセチルアセトネートVO(OC(=CH2)CH2COCH3))2、バナジウムアセチルアセトネートV(OC(=CH2)CH2COCH3))3、三塩化バナジウムVCl3、リンバナドモリブデン酸などを例示することができる。また、5価のバナジウム化合物を水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、1〜3級アミノ基、アミド基、リン酸基及びホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機化合物により、4価〜2価に還元したものも使用可能である。
また、フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)の配合量に関しては、前記フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(X)〕が1.3〜6.0である必要があり、1.3〜3.5であることが好ましく、2.5〜3.3であることがさらに好ましく、2.8〜3.0であることが最も好ましい。前記フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)固形分質量比〔(Z)/(X)〕が1.3未満であるとバナジウム化合物(Z)の添加効果が発現しないため好ましくない。逆に6.0を超えると、浴安定性、耐黒カス性が低下するため好ましくない。
コバルト化合物(C)は、硫酸コバルト、硝酸コバルトおよび炭酸コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種のコバルト化合物である必要がある。また、その配合比率は、前記有機ケイ素化合物(W)とコバルト化合物(C)の固形分質量比〔(C)/(W)〕が0.01〜0.1である必要があり、0.02〜0.07であることが好ましく、0.03〜0.05であることが最も好ましい。前記有機ケイ素化合物(W)とコバルト化合物(C)の固形分質量比〔(C)/(W)〕が0.01未満であると、コバルト化合物(C)の添加効果が発現しないため好ましくない。逆に0.1より大きいと耐食性が低下するため好ましくない。
本発明の表面処理金属材料は、前記水系金属表面処理剤を塗布し、60℃より高く250℃未満の到達温度で乾燥を行い、乾燥後の皮膜重量が0.1〜1.5g/m2であることが好ましい。乾燥温度については、到達温度で60℃より高く250℃未満であることが好ましく、100℃〜140℃であることが更に好ましい。到達温度が60℃未満であると、該水系金属表面処理剤の溶媒が完全に揮発しないことがあるため好ましくない。逆に250℃以上となると、該水系金属表面処理剤にて形成された皮膜の有機鎖の一部が分解するため好ましくない。皮膜重量に関しては、0.1〜1.5g/m2であることが好ましく、0.3〜0.6g/m2であることが更に好ましい。皮膜重量が0.1g/m2未満であると、該金属材の表面を被覆できないため耐食性が劣るため好ましくない。1.5g/m2より大きいと、耐食性は優れるものの、加工時耐黒カス性や導電性がやや低下する傾向となるため好ましくない。
本発明に用いる水系金属表面処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、塗工性を向上させるためのレベリング剤や水溶性溶剤、金属安定化剤、エッチング抑制剤およびpH調整剤、潤滑剤、光触媒機能付与添加剤などを使用することが可能である。レベリング剤としては、ノニオンまたはカチオンの界面活性剤として、ポリエチレンオキサイドもしくはポリプロピレンオキサイド付加物やアセチレングリコール化合物などが挙げられ、水溶性溶剤としてはエタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールおよびプロピレングリコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。金属安定化剤としては、エチレンジアミン四酢酸系、ジエチレントリアミン五酢酸系などのキレート化合物が挙げられ、エッチング抑制剤としては、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、グアニジンおよびピリミジンなどのアミン化合物類が挙げられる。特に一分子内に2個以上のアミノ基を有するものが金属安定化剤としても効果があり、より好ましい。pH調整剤としては、酢酸および乳酸などの有機酸類、フッ酸などの無機酸類、アンモニウム塩やアミン類などが挙げられる。潤滑剤としては、ポリエチレンワックス等の有機系潤滑剤や、黒鉛、二硫化モリブデン、シリカやアルミナなどの金属酸化物、などの無機系潤滑剤などが挙げられる。光触媒機能付与添加剤としては、アナターゼ型酸化チタンなどが挙げられる。
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれ
らにより限定されるものではない。試験板の調製、実施例および比較例、および金属材料
用表面処理剤の塗布方法について下記に説明する。
〔試験材〕
(1)試験基材
下記に示した冷延鋼板を基材として用いた。
・冷延鋼板:SPC270、板厚=0.8mm
(2)脱脂処理
基材を、アルカリ脱脂剤のファインクリーナーFC4460(登録商標:日本パーカライジング(株)製)を用いて、濃度:A剤20g/L+B剤12g/L、温度60℃の条件で2分間スプレー処理し、純水で30秒間水洗したのちに乾燥したものを試験板とした。
(3)電気めっき方法
実施例および比較例に使用しためっき水準について、表1にめっき液組成成分と名称、表2に、上層および下層、めっき液種類及び成分濃度、めっき条件及びめっき量、めっき中CaおよびSiの含有量、GDSによるめっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)の比、を示す。
めっきは、脱脂した基材を5%硫酸溶液中に10秒間浸漬して酸洗し、取り出し後水洗した後、硫酸塩めっき浴を用いて電気めっきを施した。例えば、めっき水準1のめっき条件は以下の通り。
めっき浴組成
ZnSO・7HO:400g/L
SO :40g/L
Ca吸着型シリカ:10g/L
ポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤量:0.2g/L
pH:1.8
セル:小型オーバーフローセル(極間距離:15mm、電極:チタン−白金)
浴温:50±2℃
液流速:1m/秒
電流密度:80A/dm
めっき量:20g/m
Figure 0005168075
Figure 0005168075
表2に示す他めっき水準について、めっき浴の組成、めっき量などが異なるが、基本的に同様のめっき条件にてめっきを実施した。
ここで得られためっき材について、めっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)およびめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)は、リガク製GDS(高周波グロー放電発光分析装置)GDA750を用い、分析径2.5mmで測定し、全体厚みSi積分強度Iとめっき層厚み上半分中のSi積分強度Iの比を求めた。また、めっき層全体厚みとはGDSによる測定でZnの強度が低下し変化しなくなった深さまでとした。
また、電気めっき層中に含有するSi、Ca、Cの量については標準サンプルを用いて蛍光X線分析装置で事前に検量線を作成しておき、めっきの蛍光X線分析を行うことでめっき中のSi量、Ca量、C量を測定した。Cはポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤の構造中のCに起因するものとして、界面活性剤量をC量で評価した。
(4)水系金属表面処理剤の調整および処理
次に水系金属表面処理剤作製に使用したシランカップリング剤とバナジウム(V)化合物を表3および表4にそれぞれ示し、配合例、乾燥温度および皮膜量を表5〜7に示す。
例えば、実施例1では、水系金属表面処理剤として、3−アミノプロピルトリメトキシシランと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの各固形分の比率が0.5、平均分子量が1500となるように有機ケイ素化合物を調整し、ジルコニウム弗化水素酸を有機ケイ素化合物との固形分比で0.03、りん酸を有機ケイ素化合物との固形分比で0.05、オキシ硫酸バナジウムを有機ケイ素化合物との固形分比で0.07、ジルコニウム弗化水素酸との固形分比で2.3となるよう原料を調整し、処理液の全固形分濃度が10質量%になるように脱イオン水とともに混合攪拌して調整した。表5〜表7に示す他水準についても、同様に指定の各成分比率を満足するように調整し、水系金属表面処理剤を準備した。
準備した水系金属表面処理剤を上記めっき処理済みの各種金属サンプルにラボロールコーター(ウレタンゴムロール、径150mm)を用いて面圧をかけながら塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて所望の到達板温度となる条件で乾燥した。なお、皮膜量については、ロール回転数とロール圧下力により制御した。
皮膜量については、断面サンプルについて走査型電子顕微鏡(日立製SEM、S−2460N)での観察(倍率1万倍)により特異でない30箇所の水系金属表面処理厚みを測定し、その平均値と皮膜比重から皮膜厚みを算出した。
Figure 0005168075
Figure 0005168075
Figure 0005168075
Figure 0005168075
Figure 0005168075
〔2〕評価試験
上記で作成した試験材について以下の鋼板性能評価試験を実施した。それぞれの試験内容と評価基準を以下に示す。
(1)塩水噴霧平面部耐食性試験
JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を120時間行い、白錆発生状況
を観察した。
<評価基準>
◎◎=錆発生が全面積の1%未満
◎=錆発生が全面積の1%以上3%未満
○=錆発生が全面積の3%以上10%未満
△=錆発生が全面積の10%以上30%未満
×=錆発生が全面積の30%以上
(2)塩水噴霧加工部耐食性試験
エリクセン試験(7mm押出し)を行った後、JIS Z 2371による塩水噴霧
試験を72時間行い、白錆発生状況を観察した。
<評価基準>
◎◎=錆発生が全面積の5%未満
◎=錆発生が全面積の5%以上10%未満
○=錆発生が全面積の10%以上20%未満
△=錆発生が全面積の20%以上30%未満
×=錆発生が全面積の30%以上
(3)塩水噴霧平面部長期耐赤錆性試験
JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を360時間行い、赤錆発生状況
を観察した。
<評価基準>
◎◎=赤錆発生が全面積の1%未満
◎=赤錆発生が全面積の1%以上3%未満
○=赤錆発生が全面積の3%以上10%未満
△=赤錆発生が全面積の10%以上30%未満
×=赤錆発生が全面積の30%以上
(4)耐熱性試験
オーブンにて200℃で2時間加熱後、平面部耐食性JIS Z 2371による塩水
噴霧試験を48時間行い、白錆発生状況を観察した。
<評価基準>
◎=錆発生が全面積の3%未満
○=錆発生が全面積の3%以上10%未満
△=錆発生が全面積の10%以上30%未満
×=錆発生が全面積の30%以上
(5)導電性試験
層間抵抗測定機により、層間抵抗を測定した。
<評価基準>
◎=層間抵抗が1.0Ω未満
○=層間抵抗が1.0Ω以上2.0Ω未満
△=層間抵抗が2.0Ω以上3.0Ω未満
×=層間抵抗が3.0Ω未満
(6)塗装性試験
メラミンアルキッド系塗料を焼付け乾燥後の膜厚が25μmとなるようにバーコートで
塗布し、120℃で20分焼付けた後、1mm碁盤目にカットし、密着性の評価を残個数
割合(残個数/カット数:100個)にて行った。
<評価基準>
◎=100%
○=95%以上
△=90%以上95%未満
×=90%未満
(7)黒カス性試験
高速深絞り試験にて、絞り比2.0で加工した場合の黒カス発生度合いを、試験前後のL
値増減にて評価した。
<評価基準>
◎=△Lが0.5未満
○=△Lが0.5以上1.0未満
△=△Lが1.0以上2.0未満
×=△Lが2.0以上
(8)耐指絞性試験
色差計にて、ワセリン塗布前後のL値増減(△L)を測定した。
<評価基準>
◎=△Lが0.5未満
○=△Lが0.5以上1.0未満
△=△Lが1.0以上2.0未満
×=△Lが2.0以上
試験結果を表8〜10に示す。実施例1〜79は長期耐赤錆性まで含めた非常に優れた耐食性、導電性、耐熱性、耐指紋性、塗装性および加工時耐黒カス性を同時に満足することがわかる。
Figure 0005168075
Figure 0005168075
Figure 0005168075
めっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)の比が耐食性に及ぼす影響を示すグラフである。 電気めっき層中のC質量%と耐食性との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. (1)金属材料の表面に、
    (2)第1層として、質量%で、Ca:0.01〜1%、Si:0.01〜5%を含有し、残部が亜鉛および不可避不純物からなり、平均分子量が3000以上であるポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤をCの質量%で0.0001〜0.1%含有し、片面あたりの皮膜量が1.0〜20.0g/mで、GDSによるめっき層全体中のSi積分強度I(全体厚みSi)とめっき層厚みの上半分中のSi積分強度I(1/2厚みSi)の比、〔I(1/2厚みSi)/I(全体厚みSi)〕が0.75以上である電気めっき層を形成し、
    (3)第2層として分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分質量比〔(A)/(B)〕で0.5〜1.7の割合で配合して得られる、分子内に式−SiR123(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基を表す)で表される官能基(a)を2個以上と、水酸基(官能基(a)に含まれ得るものとは別個のもの)およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基(b)を1個以上含有し、平均分子量が1000〜10000である有機ケイ素化合物(W)と、
    (4)チタン弗化水素酸またはジルコニウム弗化水素酸から選ばれる少なくとも1種の
    フルオロ化合物(X)と、
    (5)りん酸(Y)と、
    (6)バナジウム化合物(Z)
    からなる水系金属表面処理剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成し、且つ、その複合皮膜の各成分において、
    (7)有機ケイ素化合物(W)とフルオロ化合物(X)の固形分質量比〔(X)/(W)〕が0.02〜0.07であり、
    (8)有機ケイ素化合物(W)とりん酸(Y)の固形分質量比〔(Y)/(W)〕が0.03〜0.12であり
    (9)有機ケイ素化合物(W)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(W)〕が0.05〜0.17であり、且つ、
    (10)フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(X)〕が1.3〜6.0
    であることを特徴とする耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料。
  2. さらに成分(C)として、第2層の皮膜中に硫酸コバルト、硝酸コバルトおよび炭酸コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種のコバルト化合物を、前記有機ケイ素化合物(W)とコバルト化合物(C)の固形分質量比〔(C)/(W)〕が0.01〜0.1の割合で含有する請求項1記載の耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料。
  3. 金属材料の表面に、水系金属表面処理剤を塗布し、60℃より高く250℃未満の到達温度で乾燥を行い、乾燥後の皮膜重量が0.1〜1.5g/m2であることを特徴とする請求項1または2記載の耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料。
  4. 金属材料が電気亜鉛めっき鋼板であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の表面処理金属材料の製造方法において、電気めっき浴を、Caを吸着させたシリカ粒子を平均分子量が3000以上であるポリジアルキルアンモニウムクロライド界面活性剤と共に分散させた酸性めっき浴とすることを特徴とする耐食性、導電性、耐熱性に優れる表面処理金属材料の製造方法。
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