WO2024075833A1 - 表面処理鋼板 - Google Patents

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義勝 西田
浩雅 莊司
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日本製鉄株式会社
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Abstract

この表面処理鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の表面に形成されためっき層と、前記めっき層の表面に形成された被膜と、を有する表面処理鋼板であって、前記めっき層のZn濃度が40質量%以上、100質量%以下であり、Mg濃度が0質量%以上、4.0質量%未満であり、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Tiの質量%での最大濃度、Zrの質量%での最大濃度、Vの質量%での最大濃度が所定の関係を満たし、かつ、前記被膜の前記中央部におけるCの質量%での平均濃度、前記被膜の前記境界領域におけるMgの質量%での最大濃度、前記被膜の前記中央部におけるMgの質量%での平均濃度、前記被膜の前記境界領域におけるFの質量%での最大濃度、前記被膜の前記中央部におけるFの質量%での平均濃度、前記被膜の前記中央部におけるSiの質量%での平均濃度が所定の関係を満たす。

Description

表面処理鋼板
 本発明は表面処理鋼板に関する。
 本願は、2022年10月06日に、日本に出願された特願2022-161691号、および、2022年10月06日に、日本に出願された特願2022-161692号、に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 従来、鋼板の表面に亜鉛を主体とするめっき層が形成されためっき鋼板(亜鉛系めっき鋼板)が、自動車や建材、家電製品などの幅広い用途で使用されている。
 また、このような亜鉛系めっき鋼板の表面に、耐食性や塗装密着性などを付与する目的で、クロム酸、重クロム酸又はそれらの塩を主成分として含有する処理液によりクロメート処理を施す方法、クロムを含まない金属表面処理剤を用いて処理を行う方法、リン酸塩処理を施す方法、シランカップリング剤単体による処理を施す方法、有機樹脂被膜処理を施す方法、などが一般的に知られており、実用に供されている。
 特に、近年、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性のある6価クロム化合物に対する各種法規制を受け、クロムを含まない金属表面処理剤の開発が進められている。クロムを含まない金属表面処理剤としては、TiやZrなどの4族金属の酸化物や水酸化物を使用する技術がある。
 例えば、特許文献1には、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板を基材とし、この基材の表面に、酸化物が高い絶縁抵抗を示すバルブメタルの酸化物または水酸化物およびフッ化物を共存が共存する化成処理皮膜が形成されたクロメートフリー化成処理鋼板が開示されている。
 また、特許文献2には、Mg含有亜鉛合金めっき層の上に、フッ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、マグネシウムとバルブメタル酸素酸塩との複合化合物から選ばれた一種又は二種以上を含む界面反応層を介し、バルブメタルの水酸化物、酸化物、酸素酸、酸素酸塩、フッ化物の一種又は二種以上を主成分とする化成皮膜が形成された、耐食性に優れた溶融亜鉛合金めっき鋼板が開示されている。特許文献2では、Mgを含んだ亜鉛合金めっき層を下地にすることにより、Mgを含む界面反応層を形成して高い耐白錆性(耐食性)を発現させている。
 また、特許文献3には、Zn-Al合金めっき層の上に、Al-Fの界面反応層を介し、Ti,Vの複合化成皮膜が形成された耐食性に優れた溶融亜鉛合金めっき鋼板が開示されている。特許文献3では、Alを含んだ亜鉛合金めっき層を下地にすることにより、Al-Fの反応層を形成して高い耐白錆性を発現させている。
 また、特許文献4には、金属板の少なくとも片面に、上層塗膜(α)が形成されているクロメートフリープレコート金属板であって、前記金属板と前記上層塗膜(α)との間に、(1)分子中にアミノ基を含有するシランカップリング剤(A)と分子中にグリシジル基を含有するシランカップリング剤(B)とを配合し反応させて得られ、構造中に環状シロキサン結合と鎖状シロキサン結合を有し、前記環状シロキサン結合と前記鎖状シロキサン結合の存在割合が、FT-IR反射法による環状シロキサン結合を示す1090~1100cm-1の吸光度(C1)と鎖状シロキサン結合を示す1030~1040cm-1の吸光度(C2)の比〔C1/C2〕で表して0.4~2.5である、有機ケイ素化合物(C)と、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種のカチオン性有機樹脂(D)とを含む、造膜成分(X)と、(2)チタン化合物及びジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(E)とリン酸化合物(J)とフッ素化合物(F)とを含むインヒビター成分(Y)であって、但し、前記金属化合物(E)がフルオロ金属錯化合物(E’)である場合は、前記フッ素化合物(F)を含まなくても良い、インヒビター成分(Y)と、を配合して調整した下地処理剤を塗布し乾燥することにより形成される下地処理層(β)を有することを特徴とする、クロメートフリープレコート金属板が開示されている。
日本国特開2002-194558号公報 日本国特開2007-23309号公報 日本国特開2003-306777号公報 日本国特開2012-237065号公報
 特許文献1~3に開示された技術は、耐食性に優れたクロメートフリー表面処理を施した表面処理鋼板として実用化されている優れた技術である。クロメートフリー処理の耐食性を向上させるためには、特許文献2および3に記載のように、めっき層に含まれる金属元素を含む反応層を形成する技術が利用されてきた。しかしながら、近年の顧客ニーズの高度化により、これらの先行技術では耐食性が不足するケースがあることがわかってきた。
 例えば、MgやAlを含まないめっきを用いた亜鉛めっき鋼板では、特許文献2または3に記載のような前記反応層の形成が困難であり、平坦部(平面部)および加工部の耐食性が不足するという課題があった。また、めっき層中にMgやAlを含むめっきを用いた亜鉛めっき鋼板の場合においても、連続溶融めっき鋼板製造ラインにおいて化成処理被膜(皮膜)を形成する場合、生産性の観点から化成処理液を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布してから乾燥による化成処理被膜の形成までの時間が5秒以内と非常に短いために、亜鉛合金めっきのZn相に含まれるMgやAlは極僅かであることから、当該めっきのZn相上には前記反応層を形成しにくく、耐食性が不足するという課題があった。
 また、特許文献4は、造膜成分として、有機樹脂を含む必要がある。そのため、耐食性と塗膜密着性とについては優れたとしても、導電性に劣るという課題がある。
 このようなことから、加工部及び平面部のいずれにおいても耐食性(耐白錆性)及び導電性に優れる表面処理鋼板が求められている。
 本発明は、鋼材の表面に亜鉛または亜鉛合金を含むめっき層を有する亜鉛系めっき鋼材の表面にクロメートフリーの化成処理被膜を有する表面処理鋼板を前提として、耐食性及び導電性に優れる表面処理鋼板を提供することを課題とする。
 化成処理被膜を有する表面処理鋼材の耐食性は、化成処理被膜のバリア性(水分や塩化物イオンなどの腐食因子を透過させない性質)が高いほど向上する。また、疵などにより化成処理被膜が損傷した部分においては、水分が付着した際に化成処理被膜中の物質(主に金属元素)が溶け出してめっき層の腐食を防止する効果(インヒビター効果)が高いほど、耐白錆性等の耐食性が向上する。
 上述の通り、特許文献1~3に示される化成処理被膜は、バリア性およびインヒビター効果の両方を備えている被膜ではあるが、従来よりも高い耐白錆性が要求される環境では、それぞれの性質が十分とは言えず、めっき層を腐食させてしまい早期に白錆が発生することが懸念される。
 このような事情に鑑み、本発明者らは、導電性の観点で有機樹脂を含まない化成処理被膜を前提として、化成処理被膜のバリア性及びインヒビター効果を高める方法について検討を行った。
 その結果、亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層の表面に短時間で化成処理被膜を形成する場合において、亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層のZn相と化成処理被膜との界面の近傍から化成処理被膜の表面までの間において、各元素の濃度の制御に加えて、特定の元素が濃化した箇所を複数形成させることで、化成処理被膜のバリア性が向上し、耐食性を飛躍的に高めることが出来ることを見出した。
 本発明は上記の知見に鑑みてなされた。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係る表面処理鋼板は、
 母材鋼板と、
 前記母材鋼板の表面に形成されためっき層と、
 前記めっき層の表面に形成された被膜と、
を有する表面処理鋼板であって、
 前記めっき層のZn濃度が40質量%以上、100質量%以下であり、Mg濃度が0質量%以上、4.0質量%未満であり、
 前記めっき層から前記表面処理鋼板の表面に向けて厚み方向に線分析によって連続的にC、O、F、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Zn、Zrの濃度を測定した際に、
  Znの濃度が初めて35.0質量%以下となる位置を、前記めっき層と前記被膜の界面とし、
  前記界面を含み、前記厚み方向に前記界面から前記めっき層の側に10nmの範囲と前記被膜の側に15nmの範囲との間の領域を境界領域とし、
  前記厚み方向の前記界面と前記被膜の表面との中央から前記表面側に10nmの範囲を被膜の中央部としたとき、
 下記式(1)~(3)の1つ以上、かつ、(4)~(12)を満たす。
 Dti≧5.0  (1)
 Dzr≧5.0  (2)
 Dv≧5.0  (3)
 Dti+Dzr+Dv≦25.0  (4)
 Bc<10.0  (5)
 5.0/M≦Amg≦25.0  (6)
 0.5≦Bmg≦5.0  (7)
 15.0/M≦Af≦40.0  (8)
 0.5≦Bf≦15.0  (9)
 Amg/Bmg≧2.0  (10)
 Af/Bf≧2.0  (11)
 Bsi<5.0  (12)
 ここで、前記Dtiは、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Tiの質量%での最大濃度であり、
 前記Dzrは、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Zrの質量%での最大濃度であり、
 前記Dvは、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Vの質量%での最大濃度であり、
 前記Bcは、前記被膜の前記中央部におけるCの質量%での平均濃度であり、
 前記Amgは、前記被膜の前記境界領域におけるMgの質量%での最大濃度であり、
 前記Bmgは、前記被膜の前記中央部におけるMgの質量%での平均濃度であり、
 前記Afは、前記被膜の前記境界領域におけるFの質量%での最大濃度であり、
 前記Bfは、前記被膜の前記中央部におけるFの質量%での平均濃度であり、
 前記Bsiは、前記被膜の前記中央部におけるSiの質量%での平均濃度であり、
 前記Mは、前記めっき層の前記Mg濃度が0質量%以上1.0質量%未満の場合には1、1.0質量%以上4.0質量%未満の場合には2となる定数である。
[2][1]に記載の表面処理鋼板は、さらに、下記式(13)を満たしてもよい。
 0≦Cmg<5.0  (13)
 ここで、前記Cmgは、前記めっき層の厚み方向において、前記界面から前記めっき層の側に10nmの位置における質量%でのMgの濃度である。
[3][1]または[2]に記載の表面処理鋼板は、さらに、下記式(14)~(16)を満たしてもよい。
 5.0≦Aal≦20.0  (14)
 0.2≦Bal≦5.0  (15)
 Aal/Bal≧5.0  (16)
 ここで、前記Aalは、前記境界領域におけるAlの質量%での最大濃度であり、前記Balは、前記被膜の前記中央部におけるAlの質量%での平均濃度である。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の表面処理鋼板は、さらに、下記式(17)~(18)を満たしてもよい。
 10.0≦Ap≦25.0  (17)
 0.5≦Bp≦8.0  (18)
 ここで、前記Apは、前記境界領域におけるPの質量%での最大濃度であり、前記Bpは、前記被膜の前記中央部におけるPの質量%での平均濃度である。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の表面処理鋼板は、さらに、下記式(19)を満たしてもよい。
 1.0≦Bzn≦30.0  (19)
 ここで、前記Bznは、前記被膜の前記中央部における、Znの質量%での平均濃度である。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の表面処理鋼板は、さらに、下記式(20)を満たしてもよい。
 Af/Bf≧2.5  (20)
 本発明の上記態様によれば、耐食性及び導電性に優れる表面処理鋼板を提供することができる。
本実施形態に係る表面処理鋼板の断面の例を示す模式図である。 エネルギー分散型X線分析装置付きFE-TEMを用いて得られた、厚み方向の元素分析結果の例を示す図である。
 本発明の一実施形態に係る表面処理鋼板(本実施形態に係る表面処理鋼板)について説明する。以下に記載する「~」で挟まれる数値限定範囲には、両端の値が、下限値及び上限値としてその範囲に含まれる。一方、「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。また、比(例えば、後述のAmgとBmgとの比であるAmg/Bmg)の単位は、すべて無次元である。
 図1に示すように、本実施形態に係る表面処理鋼板1は、母材鋼板10と、前記母材鋼板10の表面に形成されためっき層20と、前記めっき層20の表面に形成された被膜30とを有する。めっき層20は、0%以上、4.0%未満のMgを有する、亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層である。導電性の点で、被膜30の上にさらに有機樹脂を含む被膜を有する構成は好ましくない。そのため、母材鋼板10と、前記母材鋼板10の表面に形成されためっき層20と、前記めっき層20の表面に形成された被膜30からなっていてもよい。被膜30は例えば化成処理被膜である。
 また、本実施形態では、前記めっき層から表面処理鋼板の表面に向けて厚み方向に線分析によって連続的にC、O、F、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Zn、Zrの濃度(濃度分布)を測定した際に、Znの濃度が初めて35.0質量%以下となる位置を、めっき層20と被膜30の界面25とする。
 また、界面25を含み、厚み方向に界面25からめっき層20の側に10nmの範囲と被膜30の側に15nmの範囲との間の領域を境界領域Aと定義する。
 めっき層20、被膜30は、母材鋼板10の片面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
 線分析はエネルギー分散型X線分析装置付きFE-TEM(Field Emission-Tranmisson Electron Microscope)を用いて、例えば以下の条件で行う。
 被膜を形成した表面処理鋼板から試験片をクライオFIB(Focused Ion Beam)法にて切り出し、切り出した試験片の断面構造を、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electoron Microscope)で、観察視野中に被膜の全体とめっき層のZn相の一部が視野に入る倍率(10万~100万倍)にて、観察する。各層の構成元素を特定するために、TEM-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、めっき層から表面処理鋼板の表面でもある被膜の表面に向けて厚み方向に、連続的にC、O、F、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Zn、Zrの濃度を測定する。観察およびEDS分析時の加速電圧は200kVとする。
 めっき層は、FE-TEMで観察した際に、被膜とは違いが明確であるので、FE-TEMで観察し、被膜とは明らかに異なる位置をめっき層であると判断できる。線分析の始点は、例えば、FE-TEMで観察されためっき層の任意の位置としてよい。また、FE-TEMによる観察でめっき層が十分に識別できなかったとしても、EDSによる線分析の始点において、例えば、Zn濃度が85質量%以上かつMg濃度とAl濃度との両方が1.0質量%以下であれば、その始点は確実にめっき層であるため、FE-TEMによる観察やEDSによる線分析を再度行う必要はない。
 線分析の終点は、後述のBmgなど(後述の被膜の中央部BにおけるMgなどの平均濃度)が測定および算出できる位置であればよい。例えば、線分析の終点は、表面処理鋼板の表面から被膜の厚みの30%、20%又は10%の位置、若しくは、被膜の表面(表面処理鋼板の表面)であってもよく、表面処理鋼板の表面(被膜の表面)であってもよい。
 EPMAでも線分析は可能であるが、EPMAではTEMに比べて高倍率の観察ができないため、本実施形態に係る表面処理鋼板の被膜中の各元素の濃度分布を高精度に分析できない。そのため、本実施形態では、線分析はエネルギー分散型X線分析装置付きFE-TEMを用いて行う。
 以下、母材鋼板、めっき層、被膜のそれぞれについて説明する。
<母材鋼板>
 本実施形態に係る表面処理鋼板は、めっき層及び被膜によって、優れた耐食性が得られる。そのため、母材鋼板については、特に限定されない。母材鋼板は、適用される製品や要求される強度や板厚等によって決定すればよく、例えば、JIS G 3131:2018、または、JIS G 3113:2018に記載された熱間圧延軟鋼板及び鋼帯、または、自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯(総じて熱間圧延鋼板という場合がある)や、JIS G 3141:2021、または、JIS G 3135:2018に記載された冷間圧延鋼板及び鋼帯、または、自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯(総じて冷間圧延鋼板という場合がある)を用いることができる。
<めっき層>
 本実施形態に係る表面処理鋼板が備えるめっき層の化学組成の亜鉛(Zn)濃度(含有量)は40質量%以上、100質量%以下であり、Mg濃度(含有量)は0質量%以上、4.0質量%未満である。めっき層は、亜鉛めっき層、または亜鉛合金めっき層である。
 めっき層の化学組成に関し、Zn、Mg以外の元素については限定されないが、例えば、質量%で、
 Al:0%以上、25.0%未満、
 Sn:0%以上、20%以下、
 Bi:0%以上、5.0%未満、
 In:0%以上、2.0%未満、
 Ca:0%以上、3.0%以下、
 Y:0%以上、0.5%以下、
 La:0%以上、0.5%未満、
 Ce:0%以上、0.5%未満、
 Si:0%以上、2.5%未満、
 Cr:0%以上、0.25%未満、
 Ti:0%以上、0.25%未満、
 Ni:0%以上、0.25%未満、
 Co:0%以上、0.25%未満、
 V:0%以上、0.25%未満、
 Nb:0%以上、0.25%未満、
 Cu:0%以上、0.25%未満、
 Mn:0%以上、0.25%未満、
 Fe:0%以上、5.0%以下、
 Sr:0%以上、0.5%未満、
 Sb:0%以上、0.5%未満、
 Pb:0%以上、0.5%未満、
 B:0%以上、0.5%未満、及び
 残部:不純物
であってもよい。
 Zn以外の元素は、MgおよびAlも含め、すべて任意元素であり、それらの下限は0%である。つまり、めっき層の化学組成は、Znと不純物のみであってもよい。必要に応じて、Mg濃度を0.1%以上、0.5%以上又は1.0%以上としてもよく、Mg濃度を3.5%以下、3.0%以下又は2.5%以下としてもよい。必要に応じて、Al濃度を0.1%以上、0.2%以上、1.0%以上又は4.0%以上としてもよく、Al濃度を21.0%以下、17.0%以下又は12.0%以下としてもよい。必要に応じて、Zn濃度を50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は85%以上としてもよく、Zn濃度を100%未満、99%未満、97%未満又は95%未満としてもよい。
 不純物はその合計の濃度が、1.0%未満であることが好ましい。
 めっき層の化学組成は、めっき層を、例えば、地鉄(母材鋼板)の腐食を抑制するインヒビター(例えば、朝日化学工業株式会社製イビット)を含有した10%HCl水溶液などで溶解し、ICP発光分光分析法により組成分析を行って求めることができる。
 めっき層の付着量は限定されないが、耐食性向上のため、片面当たり、10g/m以上であることが好ましい。一方、片面当たりの付着量が200g/mを超えても耐食性が飽和する上、経済的に不利になる。そのため、付着量は200g/m以下であることが好ましい。
 また、めっき層の種類も限定されない。例えば、溶融めっき層であってもよいし、電気めっき層であってもよい。
<被膜>
 被膜は、本実施形態に係る表面処理鋼板において、めっき層の上(母材鋼板とは反対側の面)に存在する。被膜は、化成処理被膜、下地処理被膜又は表面処理被膜などと呼ばれることがある。
 本実施形態では、厚み方向の、めっき層と被膜との界面と、前記被膜の表面との中央から表面側に10nmの範囲を被膜の中央部Bとする。
 被膜は、後述するようにTi、Zr、Vのいずれかと、MgとFとを含む水溶液に、さらにりん酸と硝酸とを添加した化成処理液を塗布して、乾燥させることで形成される化成処理被膜であり、Ti、Zr、Vのいずれかと、MgとFとを含み、PとSiとを含んでもよい。導電性の点から、被膜は、有機樹脂を含まない。
 本実施形態に係る表面処理鋼板が備える被膜(本実施形態に係る被膜)では、界面から界面と表面との厚さ方向での中央までの間において、Tiの最大濃度をDti(単位:質量%)、Zrの質量%での最大濃度をDzr(単位:質量%)、Vの質量%での最大濃度をDv(単位:質量%)としたとき、Dti、Dzr、Dvから選ばれる1つまたは2つ以上が5.0%以上であり、1つまたは2つ以上の合計が25.0%以下である。この場合、被膜のバリア性が高まる。
 それぞれの値が高くなると被膜が脆くなりバリア性が低下するため、好ましくは、Dti、Dzr、Dvの合計は20.0%以下である。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、式(1)~(3)の1つ以上、かつ式(4)を満たす。
 Dti≧5.0  (1)
 Dzr≧5.0  (2)
 Dv≧5.0  (3)
 Dti+Dzr+Dv≦25.0  (4)
 本実施形態に係る被膜は、上述した被膜の中央部BでのCの平均濃度(Bc(単位:質量%))が、10.0%未満である。すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、式(5)を満たす。
 Bc<10.0  (5)
 Bcが10.0%以上であると、被膜のバリア性が低下して耐食性が劣化する。前述のとおり、導電性の点から、被膜は有機樹脂を実質的に含まない(1質量%以下である)。被膜の分析により、有機樹脂が1質量%以下であることを確認できる簡便な測定方法はない。しかしながら、表面処理液中の有機樹脂の調合量が増加すると、被膜中のC濃度が増加する。このため、本実施形態では、有機樹脂が1質量%以下であることを示す指標としても、Bcは10.0%未満とする。優れた耐食性を得るためにBcは6.0%以下、4.5%以下、若しくは、3.0%以下であることがより好ましい。Bcの下限は限定されないため、Bcの下限は0%である。必要に応じて、Bcを0.5%以上、1.0%以上または1.5%以上としてもよい。
 また、本実施形態に係る被膜では、境界領域AにおけるMgの最大濃度であるAmg(単位:質量%)が2.5~25.0%であり、被膜の中央部BのMgの平均濃度であるBmg(単位:質量%)が0.5~5.0%であり、Bmgに対するAmgの比であるAmg/Bmgが2.0以上である。すなわち、Mgが界面付近に濃化している。所定の量のMgを含有した上で、Mgが界面付近に濃化していることで、被膜のバリア性が向上し、耐食性が向上する。
 Amgが2.5%未満、Bmgが0.5%未満、または、Amg/Bmgが2.0未満であると、耐食性の向上効果が十分に得られない。
 ただし、めっき層のMg濃度が1.0質量%未満である場合は、Amgが5.0%未満では効果が得られない。これは、めっき組織に占めるZnの体積割合が大きいため、白錆の発生を抑えるには、Mgをより多く(1.0%以上)含有しているめっき層よりも強固なMgの濃化層を形成する必要があるためと考えられる。そのため、めっき層のMg濃度が質量%で0%以上1.0%未満であるときは、Amgは5.0~25.0%である。
 一方、Amgが25.0%超であると、めっき層と被膜との密着性が低下し耐食性が低下する。Bmgが5.0%超であると、Mgの濃化している部分が形成されなくなり耐食性が低下する。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の式(6)、式(7)、および式(10)を満たす。
 5.0/M≦Amg≦25.0  (6)
 0.5≦Bmg≦5.0  (7)
 Amg/Bmg≧2.0  (10)
 ここで、Mは、めっき層の前記化学組成におけるMg濃度が質量%で0%以上1.0%未満の場合にはM=1となり、1.0%以上4.0%未満の場合にはM=2となる定数である。
 必要に応じて、Amgを20.0%以下、15.0%以下、12.0%以下、10.0%以下又は8.0%以下としてもよい。特に、めっき層の前記化学組成におけるMg濃度が1.0質量%以上4.0質量%未満の場合にのみ、Amgの上限を制限してもよく、例えば、Amgを12.0%以下、10.0%以下、8.0%以下又は6.0%以下としてもよい。
 また、必要に応じて、Bmgを4.0%以下、3.0%以下又は2.0%以下としてもよい。
 Amg/Bmgの上限を特に定める必要はないが、Amg/Bmgを、20.0以下、15.0以下又は10.0以下としてもよい。必要に応じて、Amg/Bmgを、2.5以上、3.5以上又は4.5以上としてもよい。
 また、Fも被膜のバリア性を高める元素であり、Mgと同様に、被膜に所定量含有した上で、界面付近に濃化させる。
 具体的には、被膜において、境界領域AのFの最大濃度であるAf(単位:質量%)が7.5~40.0%であり、被膜の中央部BのFの平均濃度であるBf(単位:質量%)が0.5~15.0%であり、前記Bfに対する前記Afの比であるAf/Bfが2.0以上である。
 Afが7.5%未満、Bfが0.5%未満、またはAf/Bfが2.0未満では、耐食性の向上効果が十分に得られない。
 ただし、めっき層のMg濃度が1.0質量%未満である場合は、Afが15.0%未満では効果が得られない。これは、めっき組織に占めるZnの体積割合が大きいため、白錆の発生を抑えるには、Mgをより多く含有しているめっき層よりも強固なFの濃化層を形成する必要があるためと考えられる。そのため、めっき層のMg濃度が質量%で0%以上1.0%未満であるときは、Afは15.0~40.0%である。
 一方、Afが40.0%超であると、過剰なFがバリア性を阻害し、耐食性が低下する。Bfが15.0%超であると、Fの濃化している部分が形成されなくなり優れた耐食性が得られない。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の式(8)、式(9)及び式(11)を満たす。
 15.0/M≦Af≦40.0  (8)
 0.5≦Bf≦15.0  (9)
 Af/Bf≧2.0  (11)
 ここで、Mは、めっき層の前記化学組成におけるMg濃度が質量%で0%以上1.0%未満の場合には1(つまり、M=1)となり、1.0%以上4.0%未満の場合には2(つまり、M=2)となる定数である。
 また、好ましくは、以下の式(20)を満たす。
 Af/Bf≧2.5  (20)
 必要に応じて、Afを38.0%以下、35.0%以下、30.0%以下、25.0%以下又は20.0%以下としてもよい。特に、めっき層の前記化学組成におけるMg濃度が1.0質量%以上4.0質量%未満の場合にのみ、Afの上限を制限してもよく、例えば、Afを25.0%以下、20.0%以下、16.0%以下又は12.0%以下としてもよい。
 また、必要に応じて、Bfを12.0%以下、10.0%以下又は7.5%以下としてもよい。
 Af/Bfの上限を特に定める必要はないが、Af/Bfを、50.0以下、30.0以下、20.0以下又は10.0以下としてもよい。必要に応じて、Af/Bfを、3.0以上、3.5以上又は4.5以上としてもよい。
 本実施形態に係る被膜では、被膜の中央部BのSiの平均濃度であるBsi(単位:質量%)が5.0%未満である。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の式(12)を満たす。
 Bsi<5.0  (12)
 Bsiが5.0%以上であるとバリア性の被膜が形成されなくなり耐食性が低下する。耐食性向上の点で、Bsiは2.0%以下がより好ましい。必要に応じて、Bsiを1.5%以下、1.0%以下又は0.5%以下としてもよい。
 Bsiの下限は0%であるが、Bsiを0.1%以上としてもよい。
 本実施形態に係る表面処理鋼板では、被膜の中央部Bの、Znの平均濃度であるBzn(単位:質量%)が1.0~30.0%であることが好ましい。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の式(19)を満たすことが好ましい。
 1.0≦Bzn≦30.0  (19)
 被膜がZnを含むことで耐食性が向上する。Bznが1.0%未満ではその効果が十分に得られない。一方、Bznが30.0%超では、耐食性が低下するため好ましくない。必要に応じて、Bznを25.0%以下、21.0%以下又は18.0%以下としてもよく、Bznを1.5%以上、2.0%以上、3.5%以上又は5.0%以上としてもよい。
 本実施形態に係る表面処理鋼板では、境界領域AにおけるAlの最大濃度であるAal(単位:質量%)が5.0~20.0%であり、被膜の中央部BにおけるAlの平均濃度であるBal(単位:質量%)が0.2~5.0%であり、Balに対するAalの比であるAal/Balが5.0以上である、ことが好ましい。Balは0.2~1.0%がより好ましい。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の式(14)~(16)を満たすことが好ましい。
 5.0≦Aal≦20.0  (14)
 0.2≦Bal≦5.0  (15)
 Aal/Bal≧5.0  (16)
 この場合、耐食性(耐白錆性)が向上する。
 めっき層中のAl濃度を考慮し、Aalを20.0%以下又は15.0%以下としてもよい。Aalを0.5%以上、1.0%以上、3.0%以上、7.0%以上又は10.0%以上としてもよい。
 Balを3.0%以下、2.0%以下又は1.0%以下としてもよく、Balを0.1%以上又は0.3%以上としてもよい。
 Aal/Balの上限を特に定める必要はないが、Aal/Balを80.0以下、60.0以下又は30.0以下としてもよい。必要に応じて、Aal/Balを、7.0以上、10.0以上又は15.0以上としてもよい。
 また、境界領域AでのPの最大濃度であるAp(単位:質量%)が10.0~25.0%であり、被膜の中央部BのPの平均濃度であるBp(単位:質量%)が0.5~8.0%である、ことが好ましい。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、式(17)~(18)を満たすことが好ましい。
 10.0≦Ap≦25.0  (17)
 0.5≦Bp≦8.0  (18)
 この場合、耐食性が向上する。
 被膜の付着量は、150~800mg/mであることが好ましい。付着量が150mg/m未満であると、耐食性が低下する場合がある。一方、付着量が800mg/m超であると、被膜が厚くなり加工部の耐食性が低下する場合がある。
 また、境界領域Aのうち、最もめっき層側の位置(厚み方向において、界面から前記めっき層の側に10nmの位置)におけるMgの濃度であるCmg(単位:質量%)が、0%以上、5.0%未満であることが好ましい。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の式(13)を満たすことが好ましい。
 0≦Cmg<5.0  (13)
 この場合、加工した場合によるめっきの亀裂が低減するため、加工部耐食性が向上する。
<製造方法>
 次に、本実施形態に係る表面処理鋼板の好ましい製造方法について説明する。
 本実施形態に係る表面処理鋼板は、製造方法に関わらず上記の特徴を有していればその効果を得ることができるが、以下に示す製造方法であれば、安定して製造できるので好ましい。
 すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼板は、以下の工程を含む製造方法によって製造できる。
(I)鋼板の表面に、亜鉛または亜鉛合金を含むめっき層を形成する、めっき工程と、
(II)めっき層を有する鋼板に化成処理液を塗布し、加熱、乾燥させることで、被膜を形成する、被膜形成工程。
[めっき工程]
 めっき工程では、鋼板などの鋼材を、ZnまたはZn合金を含むめっき浴に浸漬する、または電気めっきを行うことで、表面にめっき層を形成する。めっき層の形成の方法については特に限定されない。十分なめっき密着性が得られるように通常の方法で行えばよい。
 また、めっき工程に供する鋼板や、その製造方法については限定されない。めっき浴に浸漬する鋼板として、例えば、JIS G 3131:2018、または、JIS G 3113:2018に記載された熱間圧延軟鋼板及び鋼帯、または、自動車構造用熱間圧延鋼板及び鋼帯やJIS G 3141:2021、または、JIS G 3135:2018に記載された冷間圧延鋼板及び鋼帯、自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯を用いることができる。
 めっき浴の組成は、得たいめっき層の化学組成に応じて調整すればよい。
 鋼材をめっき浴から引き上げた後は、必要に応じて、ワイピングによって、めっき層の付着量を調整することができる。
 Cmgを0%以上、5.0%未満とする場合、めっき層中のMg濃度を、0質量%以上、3.0質量%以下とすることが好ましい。
 Aal/Balを5.0以上とする場合、めっき層中のAl濃度を0.1質量%以上とすることが好ましい。
[被膜形成工程]
 この工程では、めっき層を有する鋼板に化成処理液を塗布し、加熱して乾燥させることで、被膜(化成処理被膜)を形成する。
 本実施形態に係る被膜を形成する場合、化成処理液をTi、Zr、Vのいずれかと、Mg、Fを含み、必要に応じてSiを含む水溶液を用い、さらにりん酸と硝酸を添加した処理液とする。
 このような処理液を塗布することで、めっき層と被膜の界面に特定の元素を濃化させることが可能となる。
 具体的には、化成処理液中の各元素濃度およびりん酸と硝酸の濃度を以下のようにする。ここで、りん酸、硝酸の濃度には、りん酸塩や硝酸塩などの濃度は含まない。りん酸と硝酸とを上述の範囲で同時に含むことで、めっきの溶解が進むと共に化成処理被膜とめっきの界面に特定の物質が濃化することによって密着性の向上の効果が大きく向上する。
  Ti、V、Zrのいずれか1つ以上:5.0~20.0g/L
  Mg:0.7~7.0g/L
  F:14.4~46.1g/L
  P:6.8~32.9g/L
  Si:0.0~0.4g/L
  りん酸:10.0~80.0g/L
  硝酸:5.0~40.0g/L
 Ap、Bpを所定の範囲とする場合、化成処理液中のP濃度を10.0g/L以上とすることが好ましい。
 また、耐食性向上の点からBznを1.0~30.0%とする場合、化成処理液をロールコーターで塗布する場合において、処理液とめっき鋼板の接触時間を制御することによって、処理液中のZn濃度を、質量基準で0.5~5.0g/Lとすることが好ましい。Zn濃度は、めっき鋼板を処理液中に浸漬させるか、Zn粉の添加によって調整することができる。Bznを高めるために、化成処理液にZnの粉末やZn化合物などを添加してもよい。化成処理液にZnの粉末やZn化合物などを添加しない場合でも、めっき層からZnが拡散するため、Bznは0%とならないことが多い。
 化成処理液に含ませるMgとしては、例えば、フッ化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムが例示される。
 化成処理液に含ませるFとしては、フッ素化合物として、フッ化水素酸HF、ホウフッ化水素酸BFH、ケイフッ化水素酸HSiF、ジルコンフッ化水素酸HZrF、チタンフッ化水素酸HTiFなどの化合物を例示することができる。化合物は、1種類または2種類以上の組み合わせであってもよい。この中でも、フッ化水素酸であることがより好ましい。フッ化水素酸を用いる場合、より優れた耐食性や塗装性を得ることができる。
 化成処理液にZrを含ませる場合、Zr化合物として、炭酸ジルコニウムアンモニウム、六フッ化ジルコニウム水素酸、六フッ化ジルコニウムアンモニウムなどを例示することが出来る。
 また、Vを含ませる場合、V化合物として、五酸化バナジウムV、メタバナジン酸HVO、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウムVOCl、三酸化バナジウムV、二酸化バナジウムVO、オキシ硫酸バナジウムVOSO、バナジウムオキシアセチルアセトネートVO(OC(=CH)CHCOCH))、バナジウムアセチルアセトネートV(OC(=CH)CHCOCH))、三塩化バナジウムVCl、リンバナドモリブデン酸などを例示することができる。また、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、1~3級アミノ基、アミド基、リン酸基およびホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機化合物により、5価のバナジウム化合物を4価~2価に還元したものも使用可能である。
 また、Tiを含ませる場合、Ti化合物として、六フッ化チタン酸アンモニウム、チタン弗化水素酸、硝酸チタンなどを例示することができる。
 化成処理液の塗布方法については限定されない。例えばロールコーター、バーコーター、スプレーなどを用いて塗布することができる。
 化成処理液を塗布した後は、塗布後5秒以内に、最高加熱温度(最高到達温度(PMT))まで加熱して乾燥させる。加熱の際のPMT-10℃までの平均昇温速度は、5~50℃/sが好ましい。
 Aal/Balを5.0以上とする場合、加熱を2段階加熱とし、後半の昇温速度を、前半の昇温速度よりも速くすることが好ましい。具体的には、加熱開始から、最高加熱温度(PMT)より10℃低い温度(PMT-10℃)に到達するまでの時間をtとした場合、加熱開始から0.5t~1.0tまでの間の後半の平均昇温速度V2が、加熱開始から0.5tまでの前半の平均昇温速度V1の1.25倍以上である、つまり、V2/V1≧1.25であることが好ましい。さらに、Aal/Balを5.0以上とするために2段加熱とする場合、前半の昇温速度V1は、5℃/s以上とすることが好ましい。
 また、加熱及び乾燥のための在炉時間が長いと、Fが界面付近に濃化しやすくなるため、Af/Bfが大きくなる。例えば、在炉時間を15秒以上とすると、Af/Bfを2.5以上とすることができる。
 また、加熱に際しては、パンチングメタル(複数の貫通孔が存在する鋼板)を通して鋼板に吹き付けることが好ましい。
 表1に示すめっき層組成を有するめっきを有する金属板(めっき鋼板)を準備した。めっき層の付着量は、70g/mとした。金属板No.1は電気めっき、No.2~8は溶融めっき、No.4は溶融めっき後の加熱処理(合金化処理)により作製した。表1中、例えば99.6%Zn-0.2%Alとは、99.6%のZnと0.2%のAlを含有する組成を示しており、他も同様である。めっき層組成の残部は不純物である。
 めっき鋼板の基材は、JIS G3141:2021を満足する冷間圧延鋼板を用いた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 このめっき鋼板に対し、表4-1、表4-2、表5に示す組成の化成処理液を塗布した。化成処理液の塗布は、ロールコーターを用いて行った。ただし、No.48およびNo.118は、化成処理液に有機樹脂成分として、ポリウレタン樹脂を1.1重量%含有させた。
 化成処理液中の元素濃度は、表2-1、表2-2、表3に示すように(NHTiF、(NHZrF、V、MgHPO・3HO、HPO、NHF、HNO、Ca(NO)・4HO、C12Si(ビニルトリメトキシシラン)を必要に応じて混合することで調整した。
 化成処理液を塗布した後、5秒以内に熱風を、パンチングメタル(複数の貫通孔が存在する鋼板)を通して鋼板に吹き付けて、鋼板を表4-1、表4-2、表5の乾燥板温(PMT)まで表4-1、表4-2、表5の条件で加熱した後、パンチングメタルを通して空気を吹き付けることによる空冷、または水冷によって20℃まで冷却した。これによってNo.1~50、101~120の表面処理鋼板を得た。
 ここで、表4-1、表4-2、表5中の「昇温速度V1」とは、最高加熱温度(PMT)より10℃低い温度(PMT-10℃)に到達するまでの時間の前半の平均昇温速度であり、「昇温速度V2」とは最高加熱温度(PMT)より10℃低い温度(PMT-10℃)に到達するまでの時間の後半の平均昇温速度である。
 化成処理被膜の付着量は、No.40、No.41を除いて400mg/mとした。No.40は、150mg/mとし、No.41は800mg/mとした。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 作製した化成処理鋼板からから試験片を冷却機能付きFIB(Focused Ion Beam)加工法にて切り出し、切り出した試験片の断面構造を、エネルギー分散型X線分析装置付き電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM:Field Emission-Transmission Electoron Microscope)で、観察視野中に被膜全体とめっき層が入る倍率にて、観察した。
 その際、めっき層中にAl相、MgZn相、Zn相が存在していたため、その中からZn相をコントラストによって確認し(暗視野像の比較的明るい部分をZn相と判断し)、EDS分析で当該Zn相の、Znの濃度が85%以上かつMg濃度とAl濃度の両方が1.0%以下であり、めっき層であると確認した位置から表面処理鋼板の表面までのC、O、F、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Zn及びZrの濃度分布をエネルギー分散型X線分析装置にて測定を行った。結果を表6-1~表9に示す。また、図2に実施例の試験No.40についての深さ方向元素分布測定結果を示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 また、以下の方法で、平面部(平坦部)の耐白錆性(平面部耐食性)、加工部耐食性、導電性の評価を行った。結果を表10-1、表10-2、表11に示す。
<平面部耐食性>
 平板試験片(70mm×150mmの長方形状の試験片)に対し、JIS Z 2371:2015に準拠する中性塩水噴霧試験を、塩濃度70g±5g/Lで、72、120、168、240時間の各時間まで実施し、試験後の試験片の白錆の発生状況(面積率)によって耐食性を評価した。耐食性の評価基準を以下に示す。168時間後においてSSSまたはSSであれば十分な耐食性を有すると判断した。
(耐食性の評価基準)
SSS:3%以下
SS:3%超、5%以下
S:5%超、10%以下
A:10%超、30%以下
B:30%超、50%以下
C:50%超
 <加工部耐食性(耐白錆性)>
 平板試験片(70mm×150mmの長方形状の試験片)の中央部をエリクセン試験(7mm押し出し)に供した後、JIS Z 2371:2015による塩水噴霧試験を72時間行い、押し出し加工部の白錆の発生状況を観察した。評価基準は平面部耐食性と同様に行い、SSまたはSであれば十分な耐食性を有すると判断した。
(耐食性の評価基準)
SS:5%超、10%以下
S:10%超、30%以下
A:30%超、50%以下
B:50%超
 <導電性>
 JIS C 2550-4:2011のA法を用いて、10個の接触子電極の合計面積が1000mmの条件で層間抵抗係数を測定した。
 Aであれば十分な導電性を有すると判断した。
 (導電性の評価基準)
A :層間抵抗係数が300Ω・mm未満
C :層間抵抗係数が300Ω・mm以上
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
 表1~表11から分かるように、鋼板と、めっき層と、被膜とを有し、めっき層から被膜の表面の範囲において、本発明で規定する元素の分布となっている試験No.1~23、40~42、50、101~106、120では、耐食性、導電性ともに優れる。
 一方、元素の分布が本発明範囲外である試験No.24~39、43~49、107~119では耐食性が劣る。また、有機樹脂を含んだNo.48、No.118では導電性も劣っている。
 本発明によれば、耐食性及び導電性に優れる表面処理鋼板を提供することができ、産業上の利用可能性が高い。
 1   表面処理鋼板
 10  母材鋼板(鋼板)
 20  めっき層(亜鉛めっき層または合金化亜鉛めっき層)
 30  被膜(化成処理被膜)
 25  界面
 A   境界領域
 B   被膜の中央部

Claims (6)

  1.  母材鋼板と、
     前記母材鋼板の表面に形成されためっき層と、
     前記めっき層の表面に形成された被膜と、
    を有する表面処理鋼板であって、
     前記めっき層のZn濃度が40質量%以上、100質量%以下であり、Mg濃度が0質量%以上、4.0質量%未満であり、
     前記めっき層から前記表面処理鋼板の表面に向けて厚み方向に線分析によって連続的にC、O、F、Mg、Al、Si、P、Ti、V、Zn、Zrの濃度を測定した際に、
      Znの濃度が初めて35.0質量%以下となる位置を、前記めっき層と前記被膜の界面とし、
      前記界面を含み、前記厚み方向に前記界面から前記めっき層の側に10nmの範囲と前記被膜の側に15nmの範囲との間の領域を境界領域とし、
      前記厚み方向の前記界面と前記被膜の表面との中央から前記表面側に10nmの範囲を被膜の中央部としたとき、
     下記式(1)~(3)の1つ以上、かつ、(4)~(12)を満たす、
    ことを特徴とする、表面処理鋼板。
     Dti≧5.0  (1)
     Dzr≧5.0  (2)
     Dv≧5.0  (3)
     Dti+Dzr+Dv≦25.0  (4)
     Bc<10.0  (5)
     5.0/M≦Amg≦25.0  (6)
     0.5≦Bmg≦5.0  (7)
     15.0/M≦Af≦40.0  (8)
     0.5≦Bf≦15.0  (9)
     Amg/Bmg≧2.0  (10)
     Af/Bf≧2.0  (11)
     Bsi<5.0  (12)
     ここで、前記Dtiは、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Tiの質量%での最大濃度であり、
     前記Dzrは、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Zrの質量%での最大濃度であり、
     前記Dvは、前記界面から前記界面と前記表面までの前記厚み方向の中央までの間における、Vの質量%での最大濃度であり、
     前記Bcは、前記被膜の前記中央部におけるCの質量%での平均濃度であり、
     前記Amgは、前記被膜の前記境界領域におけるMgの質量%での最大濃度であり、
     前記Bmgは、前記被膜の前記中央部におけるMgの質量%での平均濃度であり、
     前記Afは、前記被膜の前記境界領域におけるFの質量%での最大濃度であり、
     前記Bfは、前記被膜の前記中央部におけるFの質量%での平均濃度であり、
     前記Bsiは、前記被膜の前記中央部におけるSiの質量%での平均濃度であり、
     前記Mは、前記めっき層の前記Mg濃度が0質量%以上1.0質量%未満の場合には1、1.0質量%以上4.0質量%未満の場合には2となる定数である。
  2.  さらに、下記式(13)を満たす、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の表面処理鋼板。
     0≦Cmg<5.0  (13)
     ここで、前記Cmgは、前記めっき層の厚み方向において、前記界面から前記めっき層の側に10nmの位置における質量%でのMgの濃度である。
  3.  さらに、下記式(14)~(16)を満たす、
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の表面処理鋼板。
     5.0≦Aal≦20.0  (14)
     0.2≦Bal≦5.0  (15)
     Aal/Bal≧5.0  (16)
     ここで、前記Aalは、前記境界領域におけるAlの質量%での最大濃度であり、前記Balは、前記被膜の前記中央部におけるAlの質量%での平均濃度である。
  4.  さらに、下記式(17)~(18)を満たす、
    ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
     10.0≦Ap≦25.0  (17)
     0.5≦Bp≦8.0  (18)
     ここで、前記Apは、前記境界領域におけるPの質量%での最大濃度であり、前記Bpは、前記被膜の前記中央部におけるPの質量%での平均濃度である。
  5.  さらに、下記式(19)を満たす、
    ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
     1.0≦Bzn≦30.0  (19)
     ここで、前記Bznは、前記被膜の前記中央部における、Znの質量%での平均濃度である。
  6.  さらに、下記式(20)を満たす、
    ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の表面処理鋼板。
     Af/Bf≧2.5  (20)
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