JP2022085512A - 表面処理鋼材 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022085512000001
【課題】塗装密着性と耐食性とに優れる表面処理鋼材を提供すること。
【解決手段】鋼板と、前記鋼板上に形成された、亜鉛を含むめっき層と、前記めっき層上に形成された被膜と有し、前記被膜が、構成元素として、Si、C、O、P、F、Znを含み、前記被膜が、厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記めっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、濃化層を有し、前記濃化層が、前記めっき層との前記界面に隣り合って存在し、前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面までPの濃度についてEDSの線分析を行った際、前記濃化層内においてP濃度の最大値を示す、表面処理鋼材。
【選択図】図3

Description

本発明は、表面処理鋼材に関する。
従来、鋼板の表面に亜鉛を主体とするめっき層が形成されためっき鋼板(亜鉛系めっき鋼板)が、自動車や建材、家電製品などの幅広い用途で使用されている。通常、めっき鋼板の表面には、塗油せずにさらなる耐食性を付与するため、クロムフリーの化成処理が施される。
この化成処理によって形成される化成処理被膜は、均一に表面を覆い、かつめっきとの密着性に優れ、耐食性にも優れることが求められる。しかしながら、亜鉛系めっき鋼板の表面は酸化被膜で覆われているので、化成処理被膜を形成しようとしても酸化被膜が障害となり化成処理被膜の密着性が低く、化成処理被膜の密着性低下による塗装不良・塗装むらが発生する、または、化成処理被膜がめっき層から剥離してしまう場合があった。
このような課題に対し、例えば特許文献1には、亜鉛を含むめっき鋼板上に、アクリル樹脂とジルコニウムとバナジウムとリンとコバルトとを含み、皮膜の断面における表面から膜厚1/5の厚みまでの領域においてアクリル樹脂の面積率が80~100面積%であり、皮膜の膜厚中心から前記表面側に膜厚1/10の厚みまでの領域と前記膜厚中心から前記めっき層側に膜厚1/10の厚みまでの領域とからなる領域においてアクリル樹脂の面積率が5~50面積%である皮膜を形成させることで、接着剤との接着性が良好で、優れた耐食性を有する皮膜が得られることが開示されている。
特許文献2には、鋼板および樹脂系化成処理被膜を含む表面処理鋼板であって、該樹脂系化成処理被膜はマトリックス樹脂と該マトリックス樹脂中に分散した難溶性クロム酸塩のコロイド粒子を重量比50/1~1/1の範囲で有し、該コロイドは該マトリックス樹脂中に分散した粒子の平均粒径として1μm未満である、表面処理鋼板が開示されている。
特許文献2では、この表面処理鋼板は、耐クロム溶出性、SST(240hr)、加工部耐食性、処理液安定性に優れると記載されている。
また、特許文献3には、Al:0.1~22.0質量%を含むZn系めっき層を有するZn系めっき鋼板と、前記Zn系めっき層の上に配置された化成処理皮膜と、を有する化成処理鋼板であって、前記化成処理皮膜は、前記Zn系めっき層表面に配置され、V、MoおよびPを含む第1化成処理層と、前記第1化成処理層の上に配置され、4A族金属酸素酸塩を含む第2化成処理層と、を有し、前記化成処理皮膜中における、全Vに対する5価のVの比率は、0.7以上である、化成処理鋼板が開示されている。
特許文献3では、この化成処理鋼板は、Zn系めっき鋼板を原板とする化成処理鋼板であって、塗布した化成処理液を低温かつ短時間で乾燥させても製造することができ、耐食性および耐黒変性に優れると開示されている。
特許文献4には、(1)鋼材表面に、(2)分子中にアミノ基を1つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を1つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分質量比〔(A)/(B)〕で0.5~1.7の割合で配合して得られる、分子内に式-SiR1(式中、R、R及びRは互いに独立に、アルコキシ基又は水酸基を表し、少なくとも1つはアルコキシ基を表す)で表される官能基(a)を2個以上と、水酸基(官能基(a)に含まれ得るものとは別個のもの)およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基(b)を1個以上含有し、平均の分子量が1000~10000である有機ケイ素化合物(W)と、(3)チタン弗化水素酸またはジルコニウム弗化水素酸から選ばれる少なくとも1種のフルオロ化合物(X)と、(4)りん酸(Y)と、(5)バナジウム化合物(Z)からなる水系金属表面処理剤を塗布し乾燥することにより各成分を含有する複合皮膜を形成し、且つ、その複合皮膜の各成分において、(6)有機ケイ素化合物(W)とフルオロ化合物(X)の固形分質量比〔(X)/(W)〕が0.02~0.07であり、(7)有機ケイ素化合物(W)とりん酸(Y)の固形分質量比〔(Y)/(W)〕が0.03~0.12であり、(8)有機ケイ素化合物(W)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(W)〕が0.05~0.17であり、且つ、(9)フルオロ化合物(X)とバナジウム化合物(Z)の固形分質量比〔(Z)/(X)〕が1.3~6.0である、表面処理鋼材が開示されている。
特許文献4によれば、この表面処理鋼材は、耐食性、耐熱性、耐指紋性、導電性、塗装性および加工時の耐黒カス性の全てを満足すると開示されている。
しかしながら、近年、化成処理被膜への品質要求の高度化により、絞り加工後の耐食性などのより優れた耐食性と塗装密着性とが求められるようになってきた。
特許第6191806号公報 国際公開第97/00337号 特許第6272207号公報 特許第4776458号公報
本発明は上記の課題に鑑みてなされた。本発明は、塗装密着性と耐食性とに優れる表面処理鋼材を提供することを課題とする。
本発明者らは、塗装密着性を低下させずに、耐食性を向上させる方法について検討した。その結果、めっき層の表面上に形成される被膜(例えば化成処理被膜)のマトリックスを構成する成分について、断面方向に最適成分を分布させることで塗装密着性と耐食性とを向上させることができることを見出した。
本発明は上記の知見に鑑みてなされた。
本発明は以下を要旨とする。
[1]鋼板と、前記鋼板上に形成された、亜鉛を含むめっき層と、前記めっき層上に形成された被膜と有し、前記被膜が、構成元素として、Si、C、O、P、F、Znを含み、前記被膜が、厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記めっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、濃化層を有し、前記濃化層が、前記めっき層との前記界面に隣り合って存在し、前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面までPの濃度についてEDSの線分析を行った際、前記濃化層内においてP濃度の最大値を示す、表面処理鋼材。
[2]前記Pの平均濃度に対する前記最大値の比が、1.2以上2.0以下である、[1]に記載の表面処理鋼材。
[3]前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面まで、Fの濃度についてEDSの線分析を行った際、前記濃化層内において、Fの濃度の最大値を示す、[1]または[2]に記載の表面処理鋼材。
[4]前記被膜の表面から前記被膜と前記めっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、前記Fの濃度の前記最大値の比が、1.5以上2.3以下である、[3]に記載の表面処理鋼材。
[5]前記濃化層の厚みが、5nm以上100nm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の表面処理鋼材。
[6]前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面まで、Znの濃度についてEDSの線分析を行った際、Znが連続的に検出され、かつ、Znの前記濃度が1.0原子%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の表面処理鋼材。
[7]前記めっき層の化学組成が、Al:4.0%~25.0%未満、Mg:0%~12.5%未満、Sn:0%~20%、Bi:0%~5.0%未満、In:0%~2.0%未満、Ca:0%~3.0%、Y:0%~0.5%、La:0%~0.5%未満、Ce:0%~0.5%未満、Si:0%~2.5%未満、Cr:0%~0.25%未満、Ti:0%~0.25%未満、Ni:0%~0.25%未満、Co:0%~0.25%未満、V:0%~0.25%未満、Nb:0%~0.25%未満、Cu:0%~0.25%未満、Mn:0%~0.25%未満、Fe:0%~5.0%、Sr:0%~0.5%未満、Sb:0%~0.5%未満、Pb:0%~0.5%未満、B:0%~0.5%未満、及び残部:Zn及び不純物からなる、[1]~[6]のいずれかに記載の表面処理鋼材。
本発明によれば、塗装密着性と耐食性とに優れる表面処理鋼材を提供することができる。
本実施形態に係る表面処理鋼材の断面模式図である。 本実施形態に係る表面処理鋼材の断面の、めっき層及び被膜を含む領域の、HAAD-STEM像である。 本実施形態に係る表面処理鋼材の断面の、めっき層及び被膜を含む領域(図2Aと同じ視野)の、BF-STEM像である。 本実施形態に係る表面処理鋼材の断面の、Si、C、O、P、F及びZnについてのEDSの線分析結果の一例を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る表面処理鋼材(本実施形態に係る表面処理鋼材)について説明する。
本実施形態に係る表面処理鋼材1は、図1に示すように、鋼板11と、鋼板11上に形成された亜鉛を含むめっき層12と、前記めっき層12上に形成され、構成元素としてSi、C、O、P、F、Znを含む、被膜13と有する。
また、被膜13は、厚さ方向において、被膜中(被膜13の表面から被膜13とめっき層12との界面までの範囲)のPの平均濃度よりもPの濃度が高い濃化層を有している。
また、この濃化層は、被膜13の、被膜13とめっき層12との界面側(より具体的には被膜13とめっき層12との界面に隣り合う位置)に存在する。また、本実施形態に係る表面処理鋼材では、被膜13の表面から被膜13とめっき層12との界面まで、Pの濃度についてEDSの線分析を行った場合に、濃化層内においてP濃度の最大値を示す。
図1では、めっき層12及び被膜13は、鋼板11の片面のみに形成されているが、両面に形成されていてもよい。また、被膜13の上には、保護層14が形成されていてもよい。
以下、鋼板11、めっき層12、被膜13についてそれぞれ説明する。
<鋼板>
本実施形態に係る表面処理鋼材1は、めっき層12及び被膜13によって、優れた塗装密着性及び耐食性が得られる。そのため、鋼板11については、特に限定されない。鋼板11は、適用される製品や要求される強度や板厚等によって決定すればよく、例えば、JIS G3193:2008に記載された熱延鋼板やJIS G3141:2017に記載された冷延鋼板を用いることができる。
<めっき層>
本実施形態に係る表面処理鋼材1が備えるめっき層12は、鋼板11の表面上に形成され、亜鉛を含有する亜鉛系めっき層である。
めっき層12は、亜鉛系めっき層であれば、化学組成については限定されない。しかしながら、化学組成が、Al:4.0%~25.0%未満、Mg:0%~12.5%未満、Sn:0%~20%、Bi:0%~5.0%未満、In:0%~2.0%未満、Ca:0%~3.0%、Y:0%~0.5%、La:0%~0.5%未満、Ce:0%~0.5%未満、Si:0%~2.5%未満、Cr:0%~0.25%未満、Ti:0%~0.25%未満、Ni:0%~0.25%未満、Co:0%~0.25%未満、V:0%~0.25%未満、Nb:0%~0.25%未満、Cu:0%~0.25%未満、Mn:0%~0.25%未満、Fe:0%~5.0%、Sr:0%~0.5%未満、Sb:0%~0.5%未満、Pb:0%~0.5%未満、B:0%~0.5%未満、及び残部:Zn及び不純物からなることによって、より顕著な耐食性向上の効果があるので好ましい。
めっき層12の好ましい化学組成の理由について説明する。以下、「~」を挟んで示される数値範囲はその両端の数値を下限値、上限値として含むことを基本とするが、数値に未満または超と記載されている場合、その数値を下限値または上限値として含まない。すなわち、例えば、0%~20%は、0%以上20%以下を示し、4.0%~25.0%未満は、4.0%以上25.0%未満を示す。
また、断りがない限り、めっき層の化学組成に関する%は質量%である。
[Al:4.0%~25.0%未満]
Alは、亜鉛系めっき層において、耐食性を向上させるために有効な元素である。上記効果を十分に得る場合、Al含有量を4.0%以上とすることが好ましい。
一方、Al含有量が25.0%以上であると、めっき層の切断端面の耐食性が低下する。そのため、Al含有量は25.0%未満であることが好ましい。
めっき層12は、Alを含み、残部がZn及び不純物からなってもよい。しかしながら、必要に応じてさらに以下の元素を含んでもよい。以下の元素は必ずしも含まなくてよいので、下限は0%である。
[Mg:0%~12.5%未満]
Mgは、めっき層の耐食性を高める効果を有する元素である。上記効果を十分に得る場合、Mg含有量を1.0%超とすることが好ましい。
一方、Mg含有量が12.5%以上であると、耐食性向上の効果が飽和する上、めっき層の加工性が低下する場合がある。また、めっき浴のドロス発生量が増大する等、製造上の問題が生じる。そのため、Mg含有量を12.5%未満とすることが好ましい。
[Sn:0%~20%]
[Bi:0%~5.0%未満]
[In:0%~2.0%未満]
これらの元素は、耐食性、犠牲防食性の向上に寄与する元素である。そのため、いずれか1種以上を含有させてもよい。上記効果を得る場合、それぞれ、含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
これらのうちでは、Snが、低融点金属でめっき浴の性状を損なうことなく容易に含有させることができるので、好ましい。
一方、Sn含有量が20%超、Bi含有量が5.0%以上、またはIn含有量が2.0%以上であると、耐食性が低下する。そのため、それぞれ、Sn含有量を20%以下、Bi含有量を5.0%未満、In含有量を2.0%未満とすることが好ましい。
[Ca:0%~3.0%]
Caは、操業時に形成されやすいドロスの形成量を減少させ、めっき製造性の向上に寄与する元素である。そのため、Caを含有させてもよい。この効果を得る場合、Ca含有量を0.1%以上とすることが好ましい。
一方、Ca含有量が多いとめっき層の平面部の耐食性そのものが劣化する傾向にあり、溶接部周囲の耐食性も劣化することがある。そのため、Ca含有量は3.0%以下であることが好ましい。
[Y:0%~0.5%]
[La:0%~0.5%未満]
[Ce:0%~0.5%未満]
Y、La、Ceは、耐食性の向上に寄与する元素である。この効果を得る場合、これらのうち1種以上を、それぞれ0.05%以上含有することが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になるとめっき浴の粘性が上昇し、めっき浴の建浴そのものが困難となることが多く、めっき性状が良好な鋼材を製造できないことが懸念される。そのため、Y含有量を0.5%以下、La含有量を0.5%未満、Ce含有量を0.5%未満とすることが好ましい。
[Si:0%~2.5%未満]
Siは、耐食性の向上に寄与する元素である。また、Siは、鋼板上にめっき層を形成するにあたり、鋼板表面とめっき層との間に形成される合金層が過剰に厚く形成されることを抑制して、鋼板とめっき層との密着性を高める効果を有する元素でもある。これらの効果を得る場合、Si含有量を0.1%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.2%以上である。
一方、Si含有量が2.5%以上になると、めっき層中に過剰なSiが析出し、耐食性が低下するだけでなく、めっき層の加工性が低下する。従って、Si含有量を2.5%未満とすることが好ましい。Si含有量は、より好ましくは1.5%以下である。
[Cr:0%~0.25%未満]
[Ti:0%~0.25%未満]
[Ni:0%~0.25%未満]
[Co:0%~0.25%未満]
[V :0%~0.25%未満]
[Nb:0%~0.25%未満]
[Cu:0%~0.25%未満]
[Mn:0%~0.25%未満]
これらの元素は、耐食性の向上に寄与する元素である。この効果を得る場合、これらの元素の1種以上の含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になるとめっき浴の粘性が上昇し、めっき浴の建浴そのものが困難となることが多く、めっき性状が良好な鋼材を製造できないことが懸念される。そのため、各元素の含有量をそれぞれ0.25%未満とすることが好ましい。
[Fe:0%~5.0%]
Feはめっき層を製造する際に、不純物としてめっき層に混入する。5.0%程度まで含有されることがあるが、この範囲であれば本実施形態に係る表面処理鋼材の効果への悪影響は小さい。そのため、Fe含有量を5.0%以下とすることが好ましい。
[Sr:0%~0.5%未満]
[Sb:0%~0.5%未満]
[Pb:0%~0.5%未満]
Sr、Sb、Pbがめっき層中に含有されると、めっき層の外観が変化し、スパングルが形成されて、金属光沢の向上が確認される。この効果を得る場合、Sr、Sb、Pbの1種以上の含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になるとめっき浴の粘性が上昇し、めっき浴の建浴そのものが困難となることが多く、めっき性状が良好な鋼材を製造できないことが懸念される。そのため、各元素の含有量をそれぞれ0.5%未満とすることが好ましい。
[B:0%~0.5%未満]
Bは、めっき層中に含有させるとZn、Al、Mg等と化合し、様々な金属間化合物をつくる元素である。この金属間化合物はLMEを改善する効果がある。この効果を得る場合、B含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
一方、B含有量が過剰になるとめっきの融点が著しく上昇し、めっき操業性が悪化してめっき性状の良い表面処理鋼材が得られないことが懸念される。そのため、B含有量を0.5%未満とすることが好ましい。
めっき層12の付着量は限定されないが、耐食性向上のため10g/m以上であることが好ましい。一方、付着量が200g/mを超えても耐食性が飽和する上、経済的に不利になる。そのため、付着量は200g/m以下であることが好ましい。
<被膜>
[構成元素として、Si、C、O、P、F、Znを含む]
本実施形態に係る表面処理鋼材が備える被膜13は、シランカップリング剤、ふっ化物、りん酸塩などのP化合物を含有する処理液を、亜鉛を含むめっき層の上に、所定の条件で塗布し、乾燥させることによって得られる。そのため、本実施形態に係る表面処理鋼材が備える被膜13は、シランカップリング剤に由来するSi、C、O、P化合物に由来するP、ふっ化物に由来するF、及びめっき層から溶出したZnを含む。また、必要に応じて、被膜13はZr化合物やV化合物に由来するZrやVを含んでもよい。
被膜の付着量は、0.05~2.0g/mであることが好ましく、0.2~1.0g/mであることが更に好ましく、0.3~0.6g/mであることが最も好ましい。被膜付着量が0.05g/m未満であると、鋼材の表面を被覆できず、耐食性が著しく低下するため好ましくない。逆に2.0g/mより大きいと、加工時の耐黒カス性が低下するため好ましくない。
[厚さ方向において、被膜の表面から被膜とめっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、濃化層を有する]
[濃化層が、めっき層との界面に隣り合って存在する]
[被膜の表面から被膜とめっき層との界面までPの濃度についてEDSの線分析を行った際、濃化層内においてP濃度の最大値を示す]
本発明者らが検討した結果、表面処理鋼材のめっき層の上に形成される被膜に関し、マトリックスを構成する成分については、厚さ方向に最適成分を分布させることで塗装密着性と耐食性とが向上することが分かった。
より詳細には、厚さ方向において、被膜の、めっき層との界面側(めっき層との界面に隣り合う位置)に、被膜の表面から被膜とめっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度(すなわち被膜全体におけるPの平均濃度)よりもPの濃度が高い領域(濃化層)が存在し、被膜の表面から被膜とめっき層との界面までPの濃度についてEDSを用いて線分析を行った際に、Pの濃度が最大となる位置が濃化層内にある(濃化層内においてP濃度の最大値を示す)ことで、耐食性が向上することが分かった。
上述した濃化層が存在する場合に、耐食性が向上する理由は、以下のように考えられる。
ふっ素化合物とインヒビター成分としてのP化合物とを含有する処理液を、亜鉛を含むめっき層に所定の条件で塗布し、乾燥させた場合、ふっ素化合物によるエッチング反応に伴って生じるpH変動の中和のため、P化合物がめっき層側へ移動する。めっき層側に移動したP化合物は、めっき層から被膜に溶出したZnと、被膜中の被膜とめっき層との界面付近で複合塩を形成し、空気や水を通しにくい被膜となる。その結果、耐食性が向上すると考えられる。
上述した濃化層を有することは、被膜中の、めっき層との界面付近に、PとZnとの複合塩が形成されていることを示しているので、上述した濃化層が存在する場合に、耐食性が向上すると考えられる。
濃化層が存在しない、または、Pの濃度がめっき層との界面付近以外の位置で高くなっている場合、PとZnとの複合塩が十分形成されず、被膜における空気や水の透過が十分に抑制されず、耐食性が十分に向上しない。
耐食性向上効果の観点から、Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比(濃度の最大値/平均濃度)が、1.2以上であることが好ましい。より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.5以上である。一方、(濃度の最大値/平均濃度)が2.0超では、めっき層と被膜の密着性が低下し、加工部耐食性や塗装密着性が低下するため好ましくない。この原因は明らかではないが、めっき層と被膜の間においてPとZnの複合塩が過剰生成したためと推定される。そのため、Pの平均濃度に対するP濃度の最大値の比は、2.0以下であることが好ましい。
濃化層の厚みは、十分な効果を得るため、5nm以上であることが好ましい。一方、加工時の被膜追従性の観点から、濃化層の厚みは100nm以下であることが好ましい。
本実施形態に係る表面処理鋼材では、処理液にエッチング成分としてふっ酸物を含有させ、処理液を塗布後、めっき層の表面の酸化被膜を除去することにより、めっき層と処理液との反応が促進される。また、エッチング反応によりめっき層成分が被膜に溶出する。めっき層を構成する亜鉛(Zn)が被膜へ溶出し、被膜のめっき層近傍に亜鉛が含有されることで、めっき層と化成層との被膜が向上する。
また、本実施形態に係る表面処理鋼材では、被膜の表面から被膜とめっき層との界面まで、Fの濃度についてEDSを用いて線分析を行った際、上述した濃化層内において、Fの濃度の最大値を示す(Fの濃度が最大となる位置が濃化層内にある)ことが好ましい。
Fの濃化は処理液中のエッチング成分に起因する。処理液のエッチング成分がめっき表面と反応するため、めっき表面にFが移動し、めっき表面にFが濃化する。
濃化層内にFの濃度が最大となる点が存在することで、Znとの複合塩化反応に必要な濃度閾値を満たし、FとZnとが複合塩を形成することで、水などの腐食因子が透過しにくい被膜となる。その結果、耐食性が向上すると考えられる。
被膜の表面から被膜とめっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、F濃度の最大値の比が、1.5以上であることがより好ましい。この場合、さらに耐食性が向上する。さらに好ましくは1.7以上である。一方、Fの平均濃度に対する、F濃度の最大値の比が2.3超では、めっき層と被膜の密着性が低下し、加工部耐食性や塗装密着性が低下するため好ましくない。この原因は明らかではないが、めっき層と被膜の間においてFとZnの複合塩が過剰生成したためと推定される。そのため、被膜の表面から被膜とめっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、F濃度の最大値の比が、2.3以下であることが好ましい。
本実施形態において、P濃度、F濃度について、EDSの線分析の結果、平均値よりも高い領域があれば濃化層有りと判断する。一方、P濃度、F濃度の最大値については、最も濃度が高い点であってかつ平均値に対して1.1倍以上である点を採用する。すなわち、平均値に対して1.1倍以上の点が存在しない(いずれの点も1.1倍未満である)場合には、最大値については、無しと判断する。
また、本実施形態に係る表面処理鋼材では、被膜の表面から被膜とめっき層との界面まで、Znの濃度についてEDSの線分析を行った際、Znが連続的に検出され、かつ、Znの前記濃度が対象の全範囲において1.0原子%以上であることが好ましい。
1.0原子%以上のZnが連続的に存在することで、被膜の表面から被膜とめっき層との界面までZn化合物が化学結合した組織を有することになる。この場合、被膜とめっき層とが強固に結合することができ、その結果、被膜とめっき層の密着性が向上する。
Zn濃度の上限は限定されないが、5.5原子%程度が溶解限度になると考えられる。
本実施形態に係る表面処理鋼材では、被膜が、Si、C、O、P、F、Znを含むかどうか、濃化層の位置や厚み、及び各元素の濃度が最大値を示す位置とその最大値については、EDSの線分析によって求める。
具体的には、被膜を形成したZn系めっき鋼板から、厚さが80~200nmの試験片をクライオFIB(Focused Ion Beam)法にて切り出し、切り出した試験片の断面構造を、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electoron Microscope)で、観察視野中に被膜全体が入る倍率にて、観察する。各層の構成元素を特定するために、TEM-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、厚さ方向に沿って線分析を行い、各場所での化学組成の定量分析を行う。線分析の手法は特に限定されないが、数nm間隔の連続点分析でも良いし、任意の領域内の元素マップを測定し面方向の平均で元素の厚さ分布を測定してもよい。定量分析する元素は、C、O、F、Si、P、Znの6元素とし、各元素の濃度の算出の分母は、該6元素の濃度を合計したものとする。使用する装置は特に限定されないが、例えば、TEM(日本電子製の電解放出型透過電子顕微鏡:JEM-2100F)、EDS(日本電子製のJED-2300T)を用いればよい。
上記したTEM-EDSの線分析結果から、Si、C、O、P、F、Znの濃度分布を求め、濃化層を特定して、濃化層の厚さの測定を行う。
TEMで特定した濃化層の厚さが5nm程度であるとき、空間分解能の観点から球面収差補正機能を有するTEMを用いることが好ましい。
図2Aは、本実施形態に係る表面処理鋼材の断面の、めっき層及び被膜を含む領域の、HAAD-STEM像、図2Bは、本実施形態に係る表面処理鋼材の断面の、めっき層及び被膜を含む領域の(図2Aと同じ視野)、BF-STEM像である。図3は、本実施形態に係る表面処理鋼材の断面の、図2Bに示す範囲での、Si、C、O、P、F及びZnについてのEDSを用いて線分析を行った結果の一例を示す図である。(縦軸については、Znのみ右の目盛り。その他は左の目盛り。)
図3に示すように、本実施形態に係る表面処理鋼材では、被膜の、めっき層との界面付近に、Pの濃度が最大となる点が存在し、めっき層との界面から一定の厚み範囲において、めっき層のPの平均濃度よりもPの濃度が高い領域(濃化層)が存在する。
また、Fも同様に、めっき層との界面付近において、濃度が高くなっている。
次に、本実施形態に係る表面処理鋼材の好ましい製造方法について説明する。
本実施形態に係る表面処理鋼材は、製造方法に関わらず上記の特徴を有していればその効果を得ることができるが、以下に示す製造方法であれば、安定して製造できるので好ましい。
すなわち、本実施形態に係る表面処理鋼材は、以下の工程を含む製造方法によって製造できる。
(I)鋼材(鋼板)を、Znを含むめっき浴に浸漬して、表面にめっき層を形成するめっき工程と、
(II)めっき層を有する鋼材に表面処理金属剤を塗布する工程と、
(III)表面処理金属剤が塗布された鋼材を加熱して、Si、C、O、P、F、Znを含む被膜を形成する加熱工程。
ここで、上記加熱工程は、
(III-1)表面処理金属剤が塗布された鋼材を40℃未満の温度域で所定の時間保持する保持過程と、
(III-2)保持過程後、40~55℃未満の温度域で所定の時間保持する加熱反応過程と、を含む。
[めっき工程]
めっき工程については特に限定されない。十分なめっき密着性が得られるように通常の方法で行えばよい。
また、めっき工程に供する鋼材の製造方法についても限定されない。
例えば、JIS G3302:2019に規定される亜鉛めっき鋼板の製造方法でも良いし、JIS G3323:2019に規定されるめっき鋼板の製造方法でも良い。
[塗布工程]
塗装工程では、Znを含むめっき層を有する鋼材に、Si化合物、P化合物、F化合物を含む表面処理金属剤を塗布する。表面処理金属剤は、V化合物やZr化合物をさらに含んでもよい。
塗布工程において、表面処理金属剤の塗布方法については限定されない。例えばロールコーター、バーコーター、スプレーなどを用いて塗布することができる。
本実施形態において、表面処理金属剤に含まれるSi化合物は、例えば分子中にアミノ基を一つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を一つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分濃度比(A)/(B)で0.5~1.7で配合して得られるSi化合物であってもよい。
また、表面処理金属剤に含まれるF化合物は、ふっ化水素酸HF、ホウふっ化水素酸BFH、ケイふっ化水素酸HSiF、ジルコンふっ化水素酸HZrF、チタンふっ化水素酸HTiFなどの化合物を例示することができる。化合物は、1種類または2種類以上の組み合わせであってもよい。この中でも、ふっ化水素酸であることがより好ましい。ふっ化水素酸を用いる場合、より優れた耐食性や塗装性を得ることができる。
本実施形態において、表面処理金属剤が含むP化合物は、特に限定されないが、りん酸、りん酸アンモニウム塩、りん酸カリウム塩、りん酸ナトリウム塩などを例示することができる。この中でも、りん酸であることがより好ましい。りん酸を用いる場合、より優れた耐食性を得ることができる。
また、表面処理鋼材にV化合物を含ませる場合、V化合物は、五酸化バナジウムV25、メタバナジン酸HVO3、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、オキシ三塩化バナジウムVOCl3、三酸化バナジウムV23、二酸化バナジウムVO2、オキシ硫酸バナジウムVOSO4、バナジウムオキシアセチルアセトネートVO(OC(=CH2)CH2COCH32、バナジウムアセチルアセトネートV(OC(=CH2)CH2COCH33、三塩化バナジウムVCl3、リンバナドモリブデン酸などを例示することができる。また、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、1~3級アミノ基、アミド基、リン酸基及びホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する有機化合物により、5価のバナジウム化合物を4価~2価に還元したものも使用可能である。
[加熱工程]
加熱工程では、表面処理金属剤を塗布した鋼材を加熱して乾燥させ、焼き付ける。
乾燥温度については、最高到達温度が60~200℃であることが好ましく、80~150℃であることがより好ましい。最高到達温度が60℃未満であると表面処理金属剤の溶媒が完全に揮発しないので好ましくない。一方、最高到達温度が200℃超となると、加熱による溶媒乾燥効果が飽和し、経済的ではないため好ましくない。
加熱工程において、表面処理金属剤の加熱方法は限定されない。例えばIH、熱風炉などを用いて加熱して、乾燥させることができる。
加熱工程は、以下に示す保持過程、加熱反応過程を含み、例えば、これらの条件を制御することで、P、Fをめっき表面側に濃化させ、濃化層内においてP、Fの濃度を最大とすることができる。
[加熱工程内、保持過程]
塗布工程においてF化合物を含む表面処理金属剤を塗布し、続く加熱工程で加熱することで、めっき層との界面付近にFが濃化する。特に、濃化層におけるF濃度の最大値を一定以上に高める場合、鋼材の温度が40℃に達するまでの時間(40℃未満での保持時間)を0.5~15.0秒とすることが好ましい。塗布後、40℃に達するまでの時間(保持時間)を0.5秒以上とすることで、乾燥前の表面処理金属剤とめっき表面が十分な時間接触し、表面処理金属剤に含まれるF化合物とめっき層のZnとが反応し、FとZnとが複合塩が形成される。また、上記反応が起こることによって、乾燥前の表面金属剤に含まれるFの厚さ方向の濃度勾配を緩和するため、めっき表面以外の表面金属剤中のF化合物がめっき表面に移動し、Fがめっき表面に濃化する。40℃に達するまでの時間が0.5秒未満であると、F化合物とZnとの反応が不十分となり、めっき層との界面側へFの濃化が十分でなく、被膜の表面からめっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、Fの濃度の最大値の比が、1.5以上とならない。40℃に達するまでの時間は、5.0秒以上であることが好ましい。一方、40℃に達するまでの時間が15.0秒を超えると、被膜の表面からめっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、Fの濃度の最大値の比が、2.3を超えるので、好ましくない。
[加熱工程内、加熱反応過程]
被膜のめっき表面側にPを濃化させる場合、P化合物を含む表面処理金属剤を塗布した後、鋼材を、上述した保持過程よりも高い温度域である40~55℃未満の温度域において、保持する。
表面処理金属剤に含まれるP化合物とめっき層の表面のZnとの複合塩化反応は、40℃以上の温度で進むが、55℃以上の温度に達すると、表面処理金属剤の溶媒が蒸発して、複合塩化反応は終了する。そのため、本実施形態に係る表面処理鋼材の製造方法では、P化合物とZnとの複合塩化反応を十分に進めて、被膜のめっき層側にPを濃化させる場合、40~55℃未満の温度域での保持時間を0.5秒以上とすることが好ましい。保持時間は1.0秒以上がより好ましく、5.0秒以上がさらに好ましい。一方、保持時間が25.0秒を超えると、Pの濃化度(平均濃度に対する最大濃度)が高くなりすぎるので好ましくない。
加熱工程(保持過程、加熱反応過程)における保持とは、所定の温度範囲内にあれば、温度変化があってもよい。
また、上述した濃化層の厚みは5~100nmが好ましい。例えば表面処理鋼材を0.05~2.0g/m塗布し、加熱工程における保持過程で40℃に達するまでの時間を0.5秒以上25.0秒以下とし、加熱反応過程で40~55℃未満の温度域での保持時間を0.5秒以上15.0秒以下にすることで、濃化層の厚みは5~100nmとなる。
また、被膜の表面から被膜と前記めっき層との界面まで、連続的に1.0原子%以上のZnを含むようにする場合、F化合物を含む表面処理金属剤を塗布した後、被膜が乾燥するまで(55℃に達するまで)の時間を、1.0秒以上とすることが好ましい。塗布~乾燥までの間に表面処理金属剤に含まれるF化合物によってめっき層のZnが溶出し、被膜内に拡散する。この時間が1.0秒以上であれば、被膜に1.0原子%以上のZnが含まれることになる。塗布~乾燥までの時間は、表面処理鋼材内のZn濃度が飽和するという理由で、40.0秒以下であることが好ましい。
表1に示すめっき鋼板を準備した。表1のA(めっき種がZnめっきであるめっき鋼板)は、JIS G3302:2019に規定される亜鉛めっき鋼板であって、めっきの付着量がZ27で表記されるものを使用した。表1のB(めっき種がZn-6%Al-3%Mgであるめっき鋼板)とC(めっき種がZn-11%Al-3%Mg-0.2%Siであるめっき鋼板)は、いずれもJIS G3323:2019に規定されるめっき鋼板で、めっきの付着量がK-27で表記されるものを使用した。
これらのめっき鋼板に対し、表面処理金属剤を塗布した。表面処理金属剤の塗布は、めっき後脱脂することなく、Si化合物、表2-1、表2-2に記載の、F化合物、P化合物を含み、必要に応じてさらにV化合物を含んだ表面処理金属剤を処理液として、ロールコーターを用いて、行った。
Si化合物は、分子中にアミノ基を一つ含有するシランカップリング剤(A)と、分子中にグリシジル基を一つ含有するシランカップリング剤(B)を固形分濃度比(A)/(B)を1.7として配合して得られるSi化合物を用いた。
また、表中、V化合物において、V1、V2は以下を示す。
V1:オキシ硫酸バナジウムVOSO
V2:バナジウムオキシアセチルアセトネートVO)OC(=CH)CHCO
また、F化合物において、F1、F2は以下を示す。
F1:ふっ化水素酸
F2:ジルコニウムふっ化水素酸
F3:チタンふっ化水素酸
表面処理金属剤を塗布した後、めっき鋼板を、40℃未満での保持温度、40~55℃未満での保持温度、塗布~乾燥までの時間、最高到達温度が、表2-1、表2-2のようになるように制御し、被膜を形成した。
Figure 2022085512000002
Figure 2022085512000003
Figure 2022085512000004
得られた表面処理鋼材について、被膜が、Si、C、O、P、F、Znから構成されるかどうか、めっき層との界面に隣り合って存在する濃化層の有無と、存在する場合のその厚み、及び各元素の濃度が最大値を示す位置、P、Fが濃化層内で最大値を示す場合には、それぞれの濃度の最大値/平均値、被膜中のZnの最小濃度を、TEM-EDSを用いて、上述した方法で測定した。ただし、P、Fについて、濃度が平均値に対して1.1倍以上の点が存在しない場合(いずれの点も平均値に対して1.1倍未満の場合)には、「最大値無」と判断した。また、その場合、最大値/平均値は算出しなかった。
具体的には、クライオFIB法にて、被膜から試料を切り出し、TEM(日本電子製の電解放出型透過電子顕微鏡:JEM-2100F、加速電圧200kV)、EDS(日本電子製のJED-2300T)を用いて、構成元素、構成元素の比、被膜の厚み、濃化層の厚みを測定し、その結果から厚さ方向におけるP濃度の平均値に対するP濃度の最大値の比、厚さ方向におけるF濃度平均値に対するF濃度最大値の比、被膜中のZnの最小濃度等を算出した。
結果を表3-1、表3-2に示す。
また、得られた表面処理鋼材について以下の要領で、平板耐食性、エリクセン加工部耐食性、塗装密着性の評価を行った。結果を表4-1、表4-2に示す。
「平板耐食性」
平板試験片を作製し、各試験片に対し、JIS Z 2371:2015に準拠する塩水噴霧試験を行い、48時間後の表面の白錆の発生状況(試験片の面積における白錆が発生した面積の割合)を評価した。
<評価基準>
3:錆発生が全面積の10%以下
2:錆発生が全面積の10%超30%以下
1:錆発生が全面積の30%超
n=3で試験を行い、評価基準が、3以上が2つ以上あれば、平板耐食性に優れると判断した。
「エリクセン加工部耐食性」
平板試験片を作製し、エリクセン試験(7mm押し出し)を行った後、JIS Z 2371:2015に準拠する塩水噴霧試験を72時間行い、白錆発生状況を観察した。
<評価基準>
5:錆発生が加工部面積の3%未満
4:錆発生が加工部面積の3%以上10%未満
3:錆発生が加工部面積の10%以上20%未満
2:錆発生が加工部面積の20%以上40%未満
1:錆発生が加工部面積の40%以上
n=3で試験を行い、評価基準が、4以上が2つ以上あれば、エリクセン加工部耐食性に優れると判断した。
「塗装密着性試験」
平板試験片を作製し、メラミンアルキッド系塗料を、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにバーコート塗布し、120℃で20分間焼き付けた。1mm間隔の碁盤目にカットを入れ、密着性の評価を残個数割合(残個数/カット数:100個)にて行った。
<評価基準>
3:残存数95%以上100%以下
2:残存数80%以上95未満
1:残存数80%未満
n=3で試験を行い、評価基準が、3以上が1つ以上あれば、塗装密着性に優れると判断した。
Figure 2022085512000005
Figure 2022085512000006
Figure 2022085512000007
Figure 2022085512000008
表1~4-2から分かるように、構成元素として、Si、C、O、P、F、Znを含み、被膜が、めっき層との界面に隣り合う位置にP濃化層を有し、濃化層内においてP濃度の最大値を示す場合には、平板耐食性、エリクセン加工部耐食性、塗装密着性の全てにおいて優れていた。
一方、所定の濃化層を有しない、または濃化層内にPの最大値を示さない例(No.14~18では、平板耐食性、エリクセン加工部耐食性、塗装密着性のいずれかが劣っている。
1 表面処理鋼材
11 鋼板
12 めっき層
13 被膜
14 保護層

Claims (7)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板上に形成された、亜鉛を含むめっき層と、
    前記めっき層上に形成された被膜と有し、
    前記被膜が、構成元素として、Si、C、O、P、F、Znを含み、
    前記被膜が、厚さ方向において、前記被膜の表面から前記被膜と前記めっき層との界面までの範囲でのPの平均濃度よりもPの濃度が高い、濃化層を有し、
    前記濃化層が、前記めっき層との前記界面に隣り合って存在し、
    前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面までPの濃度についてEDSの線分析を行った際、前記濃化層内においてP濃度の最大値を示す、
    表面処理鋼材。
  2. 前記Pの平均濃度に対する前記最大値の比が、1.2以上2.0以下である、
    請求項1に記載の表面処理鋼材。
  3. 前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面まで、Fの濃度についてEDSの線分析を行った際、前記濃化層内において、Fの濃度の最大値を示す、
    請求項1または2に記載の表面処理鋼材。
  4. 前記被膜の表面から前記被膜と前記めっき層との界面までの範囲でのFの平均濃度に対する、前記Fの濃度の前記最大値の比が、1.5以上2.3以下である、
    請求項3に記載の表面処理鋼材。
  5. 前記濃化層の厚みが、5nm以上100nm以下である、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の表面処理鋼材。
  6. 前記被膜の前記表面から前記被膜と前記めっき層との前記界面まで、Znの濃度についてEDSの線分析を行った際、Znが連続的に検出され、かつ、Znの前記濃度が1.0原子%以上である、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の表面処理鋼材。
  7. 前記めっき層の化学組成が、
    Al:4.0%~25.0%未満、
    Mg:0%~12.5%未満、
    Sn:0%~20%、
    Bi:0%~5.0%未満、
    In:0%~2.0%未満、
    Ca:0%~3.0%、
    Y :0%~0.5%、
    La:0%~0.5%未満、
    Ce:0%~0.5%未満、
    Si:0%~2.5%未満、
    Cr:0%~0.25%未満、
    Ti:0%~0.25%未満、
    Ni:0%~0.25%未満、
    Co:0%~0.25%未満、
    V :0%~0.25%未満、
    Nb:0%~0.25%未満、
    Cu:0%~0.25%未満、
    Mn:0%~0.25%未満、
    Fe:0%~5.0%、
    Sr:0%~0.5%未満、
    Sb:0%~0.5%未満、
    Pb:0%~0.5%未満、
    B :0%~0.5%未満、及び
    残部:Zn及び不純物からなる、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の表面処理鋼材。
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