JPWO2019186891A1 - 亜鉛系めっき鋼板および熱処理鋼材 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼板および熱処理鋼材 Download PDF

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Abstract

鋼板の表面に亜鉛系めっき層を有する基材と、基材の少なくとも片面に形成された表面処理層と、を備え、表面処理層が、片面当たりの含有量で、粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m2、粒状のシリカ:0.5〜2.0g/m2、および、粒状の酸化亜鉛:0.20〜2.0g/m2を含有する、亜鉛系めっき鋼板。

Description

本発明は、亜鉛系めっき鋼板および熱処理鋼材に関する。
近年、化石燃料の消費を抑制する要請が、環境の保護と地球温暖化の防止のために、高まっている。この要請は様々な製造業に対して影響を与えている。例えば、移動手段として日々の生活や活動に欠かせない自動車についても例外ではなく、車体の軽量化などによる燃費の向上等が求められている。
自動車の構成部品の多くは、鉄系材料、特に鋼板により形成されている。このため、鋼板の重量を低減することが車体の軽量化に有効である。しかし、自動車では、単に車体の軽量化を実現することは許されず、適切な安全性を確保しなければならない。このため、鋼板の機械的強度を高めることが同時に求められる。
このような鋼板に対する要請は、自動車製造業のみならず様々な製造業でも同様に強い。よって、鋼板の機械的強度を高めることにより、従来使用されていた鋼板より薄肉化しても、構成部品の剛性や強度を維持または向上できる鋼板の研究開発が推進されている。
一般的に、高い機械的強度を有する材料は、曲げ加工等の成形加工において、形状凍結性が低下する傾向にあり、複雑な形状に成形加工することが困難になる。この成形性についての問題を解決する手段の一つとして、いわゆる熱間プレス法(ホットスタンプ法、ホットプレス法、または、ダイクエンチ法とも呼ばれる。)が知られている。熱間プレス法では、成形対象である材料を一旦高温に加熱し、加熱により軟化した鋼板にプレス加工を行って成形および冷却する。
熱間プレス法によれば、材料を一旦高温に加熱して軟化させるため、対象とする材料を所望の形状に容易にプレス成形することができる。さらに、プレス成形後の冷却による焼入れにより、材料の機械的強度を高めることができる。したがって、熱間プレス法によれば、高い寸法精度および機械的強度を兼ね備える成形品(熱処理鋼材)を製造することができる。
熱間プレス方法を鋼板に適用すると、800℃以上の高温に加熱されることにより鋼板の表面に酸化スケール(化合物)が生成する。このため、熱間プレスを行った後に酸化スケールを除去するデスケーリング工程が必要になり、製造コストが上昇する。また、耐食性を必要とする部材等では、部材の表面へ防錆処理または金属被覆処理を行う必要もある。このため、熱間プレス後に表面清浄化処理および表面処理をさらに行う必要もあり、製造コストが一層上昇する。
製造コストの上昇を抑制する方法として、例えば、熱間プレス加工を行われる鋼板に予め被覆を施す方法がある。鋼板の被覆には、一般に、有機系材料または無機系材料などの様々な材料が使用される。なかでも、鋼板に対して犠牲防食作用のある亜鉛(Zn)系めっき鋼板が自動車用鋼板に広く使われている。
亜鉛系の金属被覆を施すことにより、鋼板の表面への酸化スケールの生成を防止でき、熱間プレス後のデスケーリング工程が不要になる。また、亜鉛系の金属被覆は防錆効果も有するため、成形品の耐食性も向上する。特許文献1〜4には、所定の化学組成を有する鋼板に亜鉛系の金属被覆を施した熱間プレス用めっき鋼板が開示されている。
特許文献1〜3に開示された発明では、熱間プレス用鋼板として、溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板を利用する。溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板を熱間プレスに利用することにより、酸化スケール(鉄酸化物)が表面に形成されることなく、構造部材を熱間プレス成形できる。
特許文献4には、亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスした鋼材の表面に酸化亜鉛層が厚く形成されると、鋼材の塗膜密着性および塗装後耐食性に悪影響を及ぼすため、鋼材にショットブラストを行って酸化亜鉛層を除去するか、または、酸化亜鉛層の厚さを低減してから塗装する発明が開示されている。
また、特許文献5および6には、亜鉛系めっき鋼板を熱間プレスした鋼材の塗膜密着性および塗装後耐食性を改善する発明が開示されている。特許文献5には、シリコーン樹脂皮膜により表面を被覆された溶融亜鉛めっき鋼板を用いる発明が開示され、また、特許文献6には、リン(P)及びケイ素(Si)を含有するバリア層(Pとしてリン酸塩が例示され、Siとしてコロイダルシリカが例示される)により被覆された溶融亜鉛めっき鋼板を熱間プレス用鋼板として用いる発明が開示されている。
さらに、特許文献7には、亜鉛めっき層中に亜鉛よりも酸化し易い元素(易酸化性元素)を添加し、熱間プレス時の昇温中にこれら易酸化性元素の酸化物層を亜鉛めっき層の表層に形成させることによって亜鉛の揮発を防止する発明が開示されている。
特許文献5〜7により開示された発明によれば、亜鉛めっき層が前述のバリア層により被覆されるために亜鉛の蒸発が抑えられ、これにより、自動車車体の中塗り塗膜および上塗り塗膜の密着性ならびに塗装後耐食性が良好であるとされている。
また、特許文献8には、亜鉛系めっき層の上に粒状のシリカを含有する処理液から形成された表面処理層を備え、良好な耐食性を有する熱処理用表面処理鋼板が開示されている。さらに、特許文献9には、基材の表面に酸化チタン、酸化ニッケルおよび酸化スズ(IV)から選択される1種以上を含有する表面処理層を備え、熱間プレス後の塗膜密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板が開示されている。
特開2003−73774号公報 特開2003−129209号公報 特開2003−126921号公報 特開2004−323897号公報 特開2007−63578号公報 特開2007−291508号公報 特開2004−270029号公報 特開2013−1981号公報 国際公開第2016/159306号
熱間プレス方法を亜鉛系めっき鋼板に適用すると、亜鉛系めっき鋼板が800℃以上の高温に加熱されることにより、めっき皮膜中の亜鉛が蒸発してめっき表面で酸化するため酸化亜鉛皮膜が形成される。このため、耐食性に寄与する有効な亜鉛量が減少するために耐食性が低下するとともに、酸化亜鉛層の成長に伴って酸化亜鉛皮膜等が容易に剥離するために塗装後密着性が低下する。さらに、皮膜の表面抵抗が上昇するためにスポット溶接性も低下する。
本発明者は、めっき皮膜中の亜鉛の蒸発を抑制するために、特許文献5により開示された、シリコーン樹脂皮膜により表面を被覆された溶融亜鉛めっき鋼板に熱間プレスを行って熱間プレス鋼材を製造する追試を行った。その結果、後述するように、乾湿環境を繰り返すサイクル腐食試験での熱間プレス鋼材の塗装後耐食性は良好であるものの、熱間プレス鋼材の塗装密着性が必ずしも良好でないことが判明した。
このため、特許文献5により開示された発明によって得られる熱間プレス鋼材は、例えば、構造上水が溜まり易い部位や部材(例えば、ドアー下部の袋状構造部位やエンジンコンパートメント内の閉断面部材等)に用いることには適さない。
一方、特許文献7に開示された亜鉛めっき層中に易酸化性元素を添加することは、例えばめっき浴の温度管理やめっき槽内のドロス対策等の操業上の新たな課題への対策が必要になる。
また、特許文献8に開示された熱処理用表面処理鋼板は、より厳しい腐食環境での耐食性については、やや劣る。また、Si含有皮膜に欠損部を設け、そこを通じて表面に現れる亜鉛酸化物により電着塗膜の密着性を改善しているが、必ずしも十分とはいえず、改善の余地が残されている。さらに、特許文献9に開示された亜鉛系めっき鋼板は、熱間プレス後の塗膜密着性には優れるものの、化成処理性の面において改善の余地が残されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、熱間プレス後の耐食性、塗装後密着性および化成処理性に加えてスポット溶接性にも優れる亜鉛系めっき鋼板および熱処理鋼材を提供することを目的とする。
本発明は、以下に列記のとおりである。
(1)鋼板の表面に亜鉛系めっき層を有する基材と、
前記基材の少なくとも片面に形成された表面処理層と、を備え、
前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、
粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
粒状のシリカ:0.5〜2.0g/m、および、
粒状の酸化亜鉛:0.20〜2.0g/mを含有する、
亜鉛系めっき鋼板。
(2)前記表面処理層に含まれる前記粒状のカーボンブラック、前記粒状の酸化シリカおよび前記粒状の酸化亜鉛の含有量が、下記(i)式を満足する、
上記(1)に記載の亜鉛系めっき鋼板。
C+Z<S<2×(C+Z) ・・・(i)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
C:粒状のカーボンブラックの含有量(g/m
S:粒状の酸化シリカの含有量(g/m
Z:粒状の酸化亜鉛の含有量(g/m
(3)前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、
粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
粒状のシリカ:0.5〜1.5g/m、および、
粒状の酸化亜鉛:0.50〜2.0g/mを含有する、
上記(1)または(2)に記載の亜鉛系めっき鋼板。
(4)前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、
粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
粒状のシリカ:1.0〜2.0g/m、および、
粒状の酸化亜鉛:0.20〜1.0g/mを含有する、
上記(1)または(2)に記載の亜鉛系めっき鋼板。
(5)前記粒状の酸化亜鉛の粒子が、粒状のドープ型の酸化亜鉛粒子である、
上記(1)から(4)までのいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
(6)前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、さらに、
チタン含有化合物:0.2〜2.0g/mを含有する、
上記(1)から(5)までのいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
(7)前記チタン含有化合物が、平均粒径が1〜200nmである酸化チタン、および/または、平均粒径が0.2〜5μmであるチタン含有の非酸化物セラミクスである、
上記(6)に記載の亜鉛系めっき鋼板。
(8)前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、さらに、平均粒径が5〜500nmであるジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ネオジムから選択される1種以上を、合計で0.2〜2.0g/m含有する、
上記(1)から(7)までのいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
(9)基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された表面形成層とを備え、
前記表面形成層が、片面当たりの含有量で、
シリカ:0.5〜2.0g/m、および、
酸化亜鉛:0.20〜2.0g/mを含有し、かつ、
前記表面形成層の表面に垂直でかつ表面から厚さ方向の中心までの断面における、0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛が占める面積率が10〜50%である、
熱処理鋼材。
本発明によれば、熱間プレス後の耐食性、塗装後密着性および化成処理性に加えてスポット溶接性にも優れる亜鉛系めっき鋼板および熱処理鋼材が得られる。
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理鋼材の断面を模式的に示した図である。 図2は、本発明例に係る熱処理鋼板のリン酸塩処理後の表面におけるSEM写真である。 図3は、比較例に係る熱処理鋼板のリン酸塩処理後の表面におけるSEM写真である。 図4は、比較例の熱処理鋼材の断面を模式的に示した図である。 図5は、比較例の熱処理鋼材の断面を模式的に示した図である。
本発明を説明する。本明細書においては化学組成または濃度に関する「%」は、特に断りがない限り、「質量%」を意味する。
1.亜鉛系めっき鋼板
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、基材と、基材の少なくとも片面に形成された表面処理層とを備える。表面処理層は、片面当たりで、以下に示す量の粒状のカーボンブラック、粒状のシリカおよび粒状の酸化亜鉛を含有する。本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、熱間プレス法に好適に用いられる。
粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
粒状のシリカ:0.5〜2.0g/m
粒状の酸化亜鉛:0.20〜2.0g/m
(1)基材
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板の基材は、鋼板(素地鋼板)の表面に亜鉛系めっき層を有するものである。
(1−1)素地鋼板
上記基材の素地鋼板は、特定の鋼板には限定されず、公知の特性および化学組成を有する各種の鋼板を用いることができる。素地鋼板の化学組成は、特に限定されないが、焼入れによって高強度を得られる化学組成であることが好ましい。
例えば、引張強度が980MPa以上の熱処理鋼材を得ようとする場合には、素地鋼板が、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、およびMo:0〜0.5%を含有し、残部は、Feおよび不純物からなる化学組成を有する焼入用鋼からなることが例示される。
焼入れ時に強度が980MPa未満となる比較的低強度の熱処理鋼材を得ようとする場合には、素地鋼板の化学組成は上記化学組成でなくてもよい。
焼入れ時の焼入れ性、ならびに、加熱後の酸化亜鉛層中に含まれるMn酸化物およびCr酸化物の形成性から、MnおよびCrの合計含有量は、好ましくは0.5〜3.0%であり、より好ましくは0.7〜2.5%である。
鋼板の化学組成としてMnおよびCrを含有すると、熱間プレス後に表層に形成される酸化亜鉛層の一部が、MnおよびCrを含有する複合酸化物となる。MnおよびCrを含有する複合酸化物が形成されることにより、リン酸塩系の化成処理後の塗装密着性がさらに向上する。この理由は、明らかではないが、これら複合酸化物が形成されることにより、酸化亜鉛と比較して、形成されるリン酸塩系の化成処理皮膜の耐アルカリ性が向上し、良好な塗装密着性が得られると推定される。
MnおよびCrの合計含有量が0.5%未満であると、熱間プレス後に表層に形成される複合酸化物の量が不十分となり、より良好な塗装密着性を得られないことがある。一方、MnおよびCrの合計含有量が、3.0%を超えると、塗装密着性は問題ないものの、コストが上昇し、また、スポット溶接部の靭性の低下が著しくなったり、めっきのぬれ性の劣化が著しくなったりすることがある。
なお、素地鋼板に含まれる不純物としては、鉱石もしくはスクラップ等の原材料に含まれるもの、または製造工程において混入するものが例示される。
(1−2)亜鉛系めっき層
上記基材の亜鉛系めっき層は、特に限定されるものではなく、一般に知られている亜鉛系めっきを用いることができる。亜鉛系めっき層としては、例えば、溶融Znめっき、合金化溶融Znめっき、溶融Zn−55%Al−1.6%Siめっき、溶融Zn−11%Alめっき、溶融Zn−11%Al−3%Mgめっき、溶融Zn−6%Al−3%Mgめっき、溶融Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Siめっき、電気Znめっき、電気Zn−Niめっき、電気Zn−Coめっき等が例示される。
また、上記成分のめっきを蒸着等の方法により被覆することも有効であり、めっきの方法も特に限定されるものではない。
具体的な溶融めっき処理は、溶融状態にあるZnまたはZn合金が保持されているめっき浴に鋼板を浸漬し、めっき浴から鋼板を引き上げることである。鋼板へのめっき付着量は、鋼板の引き上げ速度の調整、またはめっき浴の上方に設けられたワイピングノズルから噴出するワイピングガスの流量もしくは流速の調整などにより、制御される。めっき後の合金化処理は、溶融めっき処理後に、ガス炉もしくは誘導加熱炉、またはこれらを併用した加熱炉などで、追加的にめっき後の鋼板を加熱することにより、行われる。溶融めっきは、コイルの連続めっき法、または切板単体のめっき法のいずれによってもよい。
具体的な電気めっき処理は、Znイオンを含有する電解液中で鋼板を負極として対極との間で電解処理を行うことである。また、鋼板へのめっき付着量は、電解液の組成、電流密度、または電解時間の調整により、制御される。
亜鉛系めっき層の厚さ、すなわち亜鉛系めっき層の付着量は、片面当たり10〜100g/mであることが好ましい。亜鉛系めっき層の厚みが片面当たり10g/m未満であると、熱間プレス後の有効亜鉛量を確保できず、熱間プレス後の熱処理鋼材の耐食性が不十分になるおそれがある。一方、亜鉛系めっき層の厚さが片面当たり100g/mを超えると、亜鉛系めっき層の加工性および密着性が低下するおそれがある。亜鉛系めっき層の厚みは、より好ましくは片面当たり20〜80g/mである。
さらに、めっきの蒸発を抑制するためには、熱間プレス時に亜鉛系めっきの融点が向上する電気Zn−Niめっき、合金化溶融Znめっき、または合金化溶融Znめっき上にNiめっきを施した亜鉛系めっき鋼板が好ましい。
(2)表面処理層
基材の上には、粒状のカーボンブラック、粒状のシリカおよび粒状の酸化亜鉛を含有する表面処理層が形成される。それぞれの粒状化合物の熱間プレス時の効果および最適な形態を説明する。
(2−1)粒状のカーボンブラック
「粒状のカーボンブラック」とは、表面処理層中では、粒子の状態で存在するカーボンブラックを意味する。粒状のカーボンブラックを用いることにより、熱間プレスの加熱時に粒状のカーボンブラックの犠牲酸化により亜鉛系めっきの表面上の亜鉛の酸化を抑制できるとともに、表面処理層の放射率が向上することにより大気雰囲気での加熱または炉加熱における昇温速度を高めることができる。
表面処理層中に含まれる粒状のカーボンブラックは、片面当たりの含有量として、0.15〜1.0g/mである。粒状のカーボンブラックの含有量が0.15g/m未満であると、カーボンブラックの絶対量が少ないために亜鉛の酸化を抑制する効果が得られない。一方、粒状のカーボンブラックの含有量が1.0g/mを超えると、亜鉛の酸化を抑制する効果が飽和するとともに、熱間プレス前の耐食性が低下する。
粒状のカーボンブラックの平均粒子径は、10〜100nmであることが好ましい。亜鉛の酸化を抑制するためには、粒状のカーボンブラックの粒径は小さいことが有利であるが、平均粒子径が10nm未満のカーボンブラックは入手し難く、コストの上昇につながる。一方、粒状のカーボンブラックの平均粒子径が100nmを超えると、粒状のカーボンブラックと亜鉛系めっき鋼板との接触面積が小さくなり、熱間プレス時の粒状のカーボンブラックの犠牲酸化が小さくなる。粒状のカーボンブラックの平均粒子径は、より好ましくは20〜50nmである。
粒状のカーボンブラックの平均粒子径(一次粒径)は、公知の方法により測定可能である。例えば、塗装後断面埋め込みサンプルを作製し、皮膜中の粒状のカーボンブラックの粒径を数点測定し、得られた測定結果を平均したものを平均粒子径とする方法により、測定可能である。
粒状のカーボンブラックとしては、着色顔料等で使用されるカーボンブラックまたは予めカーボンブラックを溶剤に分散したカーボンブラック分散液が例示される。具体的な市販製品としては、三菱化学(株)製のカーボンブラック、および東洋カラー(株)製の高濃度カーボンブラック分散液等が例示される。
(2−2)粒状のシリカ
「粒状のシリカ」とは、シランカップリング剤などのように処理液中に溶解した状態で存在するのではなく、一次粒子径として数nm以上の粒子の状態で存在する、Siの酸化物を主体とする物質を意味する。粒状のシリカを用いることにより、熱間プレス加熱時に粒状のシリカがガラス状の皮膜を形成することにより亜鉛系めっき層からの亜鉛の蒸発を抑制できる。
表面処理層中に含まれる粒状のシリカは、片面当たりの含有量として、0.5〜2.0g/mである。粒状のシリカの含有量が0.5g/m未満であると、亜鉛系めっき層の表面上に均一にガラス状の皮膜が形成されず、亜鉛の蒸発を十分に抑制できない。
一方、粒状のシリカの含有量が2.0g/m超であると、ガラス状のシリカ皮膜層の厚みが増大することにより皮膜表面の電気抵抗値が増大し、良好なスポット溶接性が得られない。
粒状シリカの平均粒子径は、2〜100nmであることが好ましい。亜鉛の蒸発を抑制するガラス状の皮膜を速やかに形成する面からは、粒状のシリカの粒径はより小さいほうが有利であるが、粒子径が2nm未満のものは入手し難く、コストが上昇する。一方、粒状のシリカの粒径が100nmを超えると、均一な皮膜になり難く、局所的に亜鉛の蒸発が起こり易くなる。粒状のシリカの粒径は、好ましくは7〜40nmである。
なお、粒状のシリカの平均粒子径(一次粒径)は、公知の方法により測定可能である。例えば、塗装後断面埋め込みサンプルを作製し、皮膜中の粒状のシリカの粒径を数点測定し、得られた測定結果を平均したものを平均粒子径とする方法により、測定可能である。
粒状のシリカとしては、予め水溶液に分散されたコロイダルシリカが例示される。具体的な市販製品としては、日産化学(株)製のスノーテックス(登録商標)シリーズが例示される。
(2−3)粒状の酸化亜鉛
「粒状の酸化亜鉛」とは、表面処理層中では、粒子の状態で存在する酸化亜鉛を意味する。粒状の酸化亜鉛により、熱間プレス加熱後に粒状の酸化亜鉛が皮膜の表面に存在するため、自動車用化成処理であるリン酸塩処理の際にリン酸亜鉛結晶が生成し易くなって、電着塗装後の塗膜密着性が向上する。
酸化亜鉛が存在することによりリン酸塩結晶が生成するメカニズムは、酸性の化成処理液による化成処理を施すと、酸性の化成処理液により樹脂塗膜の表面に露出する酸化亜鉛が溶解し、その付近のpHが上昇するため、化成処理液の成分(例えば、リン酸塩等の酸塩化物)が析出および成長する。
これにより、化成処理皮膜が形成される。このとき、樹脂塗膜の表層の内部に存在する酸化亜鉛も、酸性の化成処理液により溶解し、化成処理液の成分が樹脂塗膜の表層の内部に析出し、樹脂塗膜の表層の内部から表面に突出するように楔状に成長していくと考えられる。
表面処理層中に含まれる粒状の酸化亜鉛は、片面当たりの含有量として、0.20〜2.0g/mである。粒状の酸化亜鉛の含有量が0.20g/m未満であると、熱間プレスの加熱後に皮膜の表面に存在する酸化亜鉛の存在量が十分でなく、スケのある化成結晶となり、電着塗装後の塗膜密着性が劣る。
一方、粒状の酸化亜鉛の含有量が2.0g/m超であると、酸化亜鉛を含有する皮膜層の厚みが増大することにより皮膜の凝集力が低下し、これにより、電着塗装後の塗膜密着性が低下するとともに、皮膜の表面の電気抵抗値が増大して良好なスポット溶接性を得られない。
粒状の酸化亜鉛の平均粒子径は、0.01〜1μmであることが好ましい。亜鉛の蒸発を抑制するガラス状の皮膜を速やかに形成するためには、粒状の酸化亜鉛の粒径はより小さいことが有利であるが、粒子径が0.01μm未満のものは入手し難く、コストが上昇する。
一方、粒状の酸化亜鉛の粒径が1μmを超えると、皮膜の表面に酸化亜鉛が不均一に存在し、リン酸塩処理の際にスケのある化成処理皮膜となり、良好な電着塗装後の塗膜密着性を得られない。粒状の酸化亜鉛の平均粒子径は好ましくは0.05〜0.5μmである。
酸化亜鉛の平均粒子径(一次粒径)は、公知の方法により測定可能である。例えば、塗装後断面埋め込みサンプルを作製し、皮膜中の粒状の酸化亜鉛の粒径を数点測定し、得られた測定結果を平均したものを平均粒子径とする方法により、測定可能である。
粒状の酸化亜鉛としては、市販の化学薬品である酸化亜鉛粉末が例示される。
上述した粒状のカーボンブラック、粒状のシリカおよび粒状の酸化亜鉛を上述した所定量含有することにより、上述したそれぞれの効果を得られる。具体的には、(a)熱間プレスの加熱時に粒状のカーボンブラックが犠牲酸化することにより亜鉛の酸化を抑制し、(b)粒状のシリカがガラス状の皮膜となって亜鉛の蒸発を抑制することにより優れた耐食性およびスポット溶接性を得られ、さらに、(c)熱間プレス後に皮膜表面に酸化亜鉛が存在することによりリン酸塩処理の際に均一なリン酸亜鉛皮膜を形成し、良好な電着塗装後の塗膜密着性を得られる。
(2−4)樹脂、架橋剤
表面処理層の形成には、粒状のカーボンブラック、粒状のシリカ、粒状の酸化亜鉛をそのまま亜鉛系めっき鋼板上に塗布してもよいが、処理液の安定性および表面処理層の密着性を改善するために、樹脂および架橋剤を混合した処理液としてから亜鉛系めっき鋼板に塗布することが好ましい。
樹脂としては、粒状のカーボンブラックとしてカーボンブラック分散液を用いるとともに粒状のシリカとしてコロイダルシリカを用いる場合、水溶性または水分散性の樹脂を用いることが好ましい。樹脂の種類としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、または、これら樹脂の変性体等が例示される。粒状のカーボンブラック、粒状のシリカ、粒状の酸化亜鉛のそれぞれの粉末を用いる場合は、上述した水系樹脂に加え、各種溶剤を溶媒とする溶剤系樹脂を用いてもよい。
架橋剤としては、シランカップリング剤、炭酸ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、オキサゾリンポリマー、水溶性エポキシ化合物、水溶性メラミン樹脂、水分散ブロックイソシアネート、水系アジリジン化合物等が例示される。
(2−5)カーボンブラック、シリカおよび酸化亜鉛の含有比率
粒状のカーボンブラック、粒状のシリカおよび粒状の酸化亜鉛の含有量は、下記(i)式を満足することが好ましい。下記(i)式を満足すると、熱間プレスの加熱時に形成される皮膜に占める粒状の酸化亜鉛が均一に存在し、これにより、上述した粒状のカーボンブラック、粒状のシリカの効果を阻害せずに、リン酸塩処理の際に均一なリン酸亜鉛皮膜を形成できる。そして、その結果、電着塗装後の塗膜密着性が向上する。
C+Z<S<2×(C+Z) ・・・(i)
但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
C:粒状のカーボンブラックの含有量(g/m
S:粒状の酸化シリカの含有量(g/m
Z:粒状の酸化亜鉛の含有量(g/m
C+Z≧Sであると、熱間プレスの加熱の際に、粒状のシリカにより形成されるガラス状皮膜が不均一となり、亜鉛の蒸発が起こり、耐食性が劣るおそれがある。一方、S≧2×(C+Z)であると、熱間プレス時に形成される、酸化亜鉛の量が少なくなるため、リン酸塩処理の際に均一なリン酸亜鉛皮膜が形成し難くなり、電着塗装後の塗膜密着性が劣るおそれがある。
(2−6)粒状のドープ型の酸化亜鉛
粒状の酸化亜鉛が粒状のドープ型の酸化亜鉛であると、熱間プレス後のスポット溶接性がより優れるため、好ましい。粒状のドープ型の酸化亜鉛としては、例えば、周期律表13族元素および周期律表15族元素よりなる群から選択される少なくとも1種の元素(以下「ドープ元素」とも称する)を、酸化亜鉛にドープして導電性を発現させる粒子が挙げられる。
周期律表13族元素としては、B、Al、Ga、In等が例示される。周期律表15族元素としては、P、As等が例示される。これらの元素の中でも、導電性の向上のためには、ドープ元素としてはAl、Gaが好ましく、さらにコストの観点からAlがより好ましい。ドープ元素の含有量は、導電性の向上のために、未ドープの酸化亜鉛粒子に対して、0.05〜5atm%であることが好ましく、0.1〜5atm%であることがより好ましい。
粒状のドープ型の酸化亜鉛も粒状の酸化亜鉛と同様に、化成処理液により溶解した後、化成処理皮膜の結晶(例えば、リン酸塩等の酸塩化物の結晶)の成長を促進するため、化成処理皮膜の結晶のアンカー効果により樹脂塗膜と塗装膜との密着性をさらに向上させることができる。ドープ型の酸化亜鉛粒子は、化成処理液により溶解した後、化成処理皮膜中に取り込まれる。さらに、ドープ型の酸化亜鉛粒子は、電着塗装後の塗膜密着性の向上に加え、導電性を有するために導電顔料としても作用して導電性を向上し、優れたスポット溶接性も得られる。
表面処理層中に含まれる粒状のドープ型の酸化亜鉛は、粒状の酸化亜鉛と同様に片面当たりの含有量として、0.20〜2.0g/mである。粒状のドープ型の酸化亜鉛の含有量が0.20g/m未満であると、熱間プレスの加熱後に皮膜の表面に存在する酸化亜鉛の存在量が十分でなく、スケのある化成結晶となり、電着塗装後の塗膜密着性が劣るおそれがある。一方、粒状の酸化亜鉛の含有量が2.0g/m超であると、ドープ型の酸化亜鉛を含有する皮膜層の厚みが増大することにより皮膜の凝集力が低下し、電着塗装後の塗膜密着性が低下するおそれがある。
粒状のドープ型の酸化亜鉛の平均粒子径は、0.1〜1μmであることが好ましい。粒子径が0.1μm未満であると、皮膜中にドーム型の酸化亜鉛が内在した場合、スポット電極との接触ができず、良好なスポット溶接性を得られない。一方、粒径が1μmを超えると、皮膜表面に酸化亜鉛が不均一に存在し、リン酸塩処理の際にスケのある化成処理皮膜となり、良好な電着塗装後の塗膜密着性を得られない。粒状の酸化亜鉛の平均粒子径は、好ましくは0.2〜0.5μmである。
(2−7)チタン含有化合物
表面処理層中にさらに含有させることが好ましい他の成分として、チタン含有化合物が挙げられる。
表面処理層中にチタン含有化合物を含有すると、熱間プレス後にこれらが酸化された酸化チタンが鋼板の表面に存在することにより、電着塗装時の電着塗膜の凝集析出に何らかの影響を与え、酸化物と電着塗膜とが強固に密着することにより、化成処理が十分でない場合であっても、強固な塗膜密着性を得られる。
また、チタン含有化合物を含有することにより、上述したカーボンブラックと同様に表面処理層の放射率が向上するため、大気雰囲気での加熱または炉加熱での昇温速度を高めることができる。これらの効果をより効率的に得るには、チタン含有化合物の含有量は、好ましくは0.2〜2.0g/mである。
チタン含有化合物としては、平均粒径が0.2〜5μmであるチタン含有の非酸化物セラミクスを用いることが好ましい。
平均粒子径が0.2〜5μmであるチタン含有の非酸化物セラミクスは、上記特徴に加え、熱間プレスの加熱時にその表面またはその一部が酸化チタンとなることにより、熱間プレス時に亜鉛の酸化および蒸発を抑制する。また、酸化せずに残ったチタン含有の非酸化物セラミクスは優れた導電性を発現するため、導電性が向上し、スポット溶接性が向上する。
ここで、「非酸化物セラミクス」とは、元素として酸素を含まない化合物からなるセラミクスを意味する。非酸化物セラミクスとしては、例えば、ホウ化物セラミクス、窒化物セラミクス、ケイ化物セラミクス等を挙げることができる。ホウ化物セラミクス、窒化物セラミクスおよびケイ化物セラミクスとは、それぞれ、ホウ素(B)、窒素(N)およびケイ素(Si)を主要な非金属構成元素とするチタンを含有する非酸化物セラミクス粒子のことである。
また、チタン含有の非酸化物セラミクスとしては、例えば、TiB(25℃での電気抵抗率40×10−6Ωcm)、TiB(28℃での電気抵抗率10−6Ωcm)、TiC(180℃での電気抵抗率10−6Ωcm)、TiN(22℃での電気抵抗率10−6Ωcm)、TiSi(63℃での電気抵抗率10−6Ωcm)、TiSi(123℃での電気抵抗率10−6Ωcm)の粒子からなる群から選択される粒子の少なくとも1種が例示される。具体的な市販製品としては、日本新金属(株)製のチタン含有の非酸化物セラミクスが例示される。
さらに、チタン含有化合物としては、平均粒子径が1〜200nmである酸化チタンを用いてもよいし、上記のチタン含有の非酸化物セラミクスと酸化チタンの混合物を用いてもよい。
平均粒子径が1〜200nmである酸化チタンは、上記特徴に加え、熱間プレス時に、亜鉛の酸化および蒸発を抑制し、熱間プレス後の塗膜密着性に加え、熱間プレス後の耐食性を高めることができる。
酸化チタンは、通常、金属酸化物の状態で安定に存在するが、皮膜中に存在する酸化亜鉛と反応し、酸化亜鉛との複合酸化物を形成することにより、亜鉛の酸化および蒸発をより抑制すると推定される。この効果をより効率的に得るには、酸化チタンの平均粒子径は、2〜100nmであることが好ましい。
ただし、酸化チタンは、放射率が高く、同じ放射率が高いカーボンブラックとは異なり、900℃付近での加熱状態化でも酸化チタンとして存在するため、熱間プレス時に後述するような長時間加熱を行う場合には、より加熱雰囲気温度近くまで鋼板温度が上昇するため、めっき中のZnが母材鋼板により拡散するため耐食性が損なわれるおそれがある。そのため、熱間プレス時に長時間加熱を行う場合には、酸化チタンの含有量は0.2g/m未満であることが好ましく、0.1g/m以下であることがより好ましい。
酸化チタンとしては、予め水溶液に分散された酸化チタン分散液が例示される。具体的な市販製品としては、日産化学(株)製のスノーテックス(登録商標)シリーズが例示される。
(2−8)ジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ネオジム
表面処理層中にさらに含有させることが好ましい他の成分として、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ネオジムが挙げられる。
表面処理層中に上記のジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ネオジムから選ばれる1種以上を含有していると、熱間プレス前に存在し、かつ、熱間プレス時に形成されるAl酸化物を、加熱時の表面処理層中に存在するジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジムが無害化する。
これにより、熱間プレス時の酸化亜鉛の形成が促進されて、熱間プレス後のリン酸塩処理性が高まり、塗膜密着性が向上する。なお、ジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジムによる熱間プレスの際の加熱時のAl酸化物の無害化について、その無害化機構の詳細は不明である。
しかしながら、鋼板表面に形成されたAl酸化物をジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジムが溶解させることで、Alの次に酸化されやすいZnが熱間プレス時に酸化されるようになり、その結果、化成性に優れる酸化亜鉛(ZnO)の生成を促進するものと考えられる。
これらの効果をより効率的に得るには、ジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ネオジムから選択される1種以上を、合計で0.2〜2.0g/m含有することが好ましい。また、熱間プレス後にこれら酸化物が鋼板表面により均一に存在するようになり、より強固な電着塗膜との密着性を実現するためには、上記の酸化物の平均粒径は、5〜500nmであることが好ましい。
(2−9)P含有化合物、V含有化合物
表面処理層は、上記のような化合物に加えて、P含有化合物、V含有化合物、Cu含有化合物の1種以上を所定の含有量で含有してもよい。
P含有化合物は、リンを構成元素として含有する化合物である。P含有化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスフィン酸、ホスフィンオキシド、もしくはホスフィン等の化合物、またはこれらの化合物をアニオンとするイオン化合物等が例示される。
P含有化合物は、いずれも試薬または製品として市販されており、容易に入手することができる。P含有化合物は、処理液中に溶解した状態で、または、処理液中に粉末として分散した状態で、存在し、表面処理層中では、固体として分散した状態で存在する。
V含有化合物は、バナジウムを構成元素として含有する化合物である。V含有化合物としては、例えば、五酸化バナジウムを含むバナジウム酸化物、メタバナジン酸アンモニウムを含むメタバナジン酸系化合物、バナジン酸ナトリウムを含むバナジウム化合物、および、その他のVを含有する化合物等が例示される。
V含有化合物は、いずれも試薬または製品として市販されており、容易に入手することができる。V含有化合物は、処理液中に溶解した状態で、または、処理液中に粉末として分散した状態で、存在し、表面処理層中では、固体として分散した状態で存在する。
表面処理層は、P含有化合物およびV含有化合物から選ばれる1種以上の化合物を、PおよびV換算で、それぞれ片面当たり0.0〜0.01g/m含有することが好ましい。
P含有化合物およびV含有化合物から選ばれる1種以上の化合物は、熱間プレス時に酸化されて酸化物となり、亜鉛系めっき層と表面処理層との界面に偏在して、PまたはVの少なくともいずれかを含有する凝集力の弱い酸化物層を形成する。
P含有化合物およびV含有化合物から選ばれる1種以上の化合物の含有量が、PおよびV換算で、それぞれ片面当たり0.0〜0.01g/mであることにより、熱間プレス時に形成される凝集力の弱い酸化物層の厚さが薄くなり、熱間プレス後の亜鉛系めっき層と表面処理層との密着性がさらに向上する。
表面処理層中におけるP含有化合物およびV含有化合物から選ばれる1種以上の含有量が片面当たり0.01g/mを超えると、熱間プレス時に形成される凝集力の弱い酸化物層の厚さが厚くなり、亜鉛系めっき層と表面処理層との密着性が低下し、これにより、電着塗装後の塗膜密着性が低下する。
熱間プレス後の亜鉛系めっき層と表面処理層との密着性の観点から、表面処理層中のP含有化合物およびV含有化合物から選ばれる1種以上の化合物の含有量は、PおよびV換算で、それぞれ片面当たり0.0〜0.003g/mであることがより好ましい。
(2−10)Cu含有化合物
Cu含有化合物は、銅を構成元素として含有する化合物である。Cu含有化合物としては、例えば、金属Cu、酸化銅、各種の有機銅化合物、各種の無機銅化合物、各種の銅錯体等が例示される。
Cu含有化合物は、いずれも試薬または製品として市販されており、容易に入手することができる。これらCu含有化合物は、処理液中に溶解した状態で、または、処理液中に粉末として分散した状態で、存在し、表面処理層中では、固体として分散した状態で存在する。
表面処理層は、Cu含有化合物から選ばれる1種以上の化合物を、Cu換算で、片面当たり0.0〜0.02g/m含有することが好ましい。
Cu含有化合物から選ばれる1種以上の化合物は、熱間プレス時に酸化されて酸化物となり、亜鉛系めっき層と表面処理層との界面に偏在して、Cuを含有する凝集力の弱い酸化物層を形成する。
Cu含有化合物から選ばれる1種以上の化合物の含有量が、Cu換算で、片面当たり0.0〜0.02g/mであることにより、熱間プレス時に形成される凝集力の弱い酸化物層の厚さが薄くなり、熱間プレス後の亜鉛系めっき層と表面処理層との密着性がさらに向上する。
表面処理層中におけるCu含有化合物から選ばれる1種以上の含有量が片面当たり0.02g/mを超えると、熱間プレス時に形成される凝集力の弱い酸化物層の厚さが厚くなり、亜鉛系めっき層と表面処理層との界面の密着性が低下して、電着塗装後の塗膜密着性も低下する。加えて、Cuは、素地鋼板の主成分であるFeよりも貴な元素であるため、耐食性も低下する。
熱間プレス後の亜鉛系めっき層と表面処理層との密着性の観点から、表面処理層中のCu含有化合物から選ばれる1種以上の化合物の含有量は、Cu換算で、片面当たり0.0〜0.005g/mであることがより好ましい。
(2−11)その他
酸化ニッケルおよび酸化スズ(IV)は、表面処理層中に含まれることで皮膜の耐久性を向上させる。しかしながら、酸化ニッケルおよび酸化スズ(IV)も、酸化チタンと同様に、比較的放射率が高く、同じ放射率が高いカーボンブラックとは異なり、900℃付近での加熱状態化でも酸化ニッケルおよび酸化スズ(IV)として存在するため、熱間プレス時に後述するような長時間加熱を行う場合には、めっき中のZnが母材鋼板により拡散するため耐食性が損なわれるおそれがある。したがって、酸化チタン、酸化ニッケルおよび酸化スズ(IV)の合計含有量は0.2g/m未満であることが好ましく、0.1g/m以下であることがより好ましい。
2.熱処理鋼材
本発明に係る熱処理鋼材は、基材と、基材の少なくとも片面に形成された表面形成層とを備える。表面形成層は、片面当たりで、以下に示す量のシリカおよび酸化亜鉛を含有する。また、表面形成層の表面に垂直でかつ表面から厚さ方向の中心までの断面における、0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛が占める面積率が10〜50%である。
シリカ:0.5〜2.0g/m
酸化亜鉛:0.20〜2.0g/m
本発明において、熱処理鋼材とは所定の鋼板に対して熱間プレス加工を施し得られる鋼材をいう。本発明に係る熱処理鋼材において、基材の種類については特に制限されないが、以下の説明においては、上述の亜鉛系めっき鋼板に熱間プレス加工を施すことで得られる熱処理鋼材を例に説明する。
(1)基材
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理鋼材の断面を模式的に示した図である。図1に示す構成において、熱処理鋼材100の基材10は、例えば、鋼板(素地鋼板)11の表面に亜鉛系めっき層12を有するものである。素地鋼板11および亜鉛系めっき層12の種類については、上述の亜鉛系めっき鋼板と同じであるため、説明は省略する。
ただし、素地鋼板11と亜鉛系めっき層12との境界部分には、熱間プレス前の加熱により、図示しない境界層が形成される。後述するように、熱間プレス前の加熱方法には、短時間加熱と長時間加熱との2種類が存在し、加熱方法の違いにより、境界層の構成も異なる。
具体的には、短時間加熱を行った場合には、素地鋼材11側から亜鉛系めっき層12側に向かって順に、固溶層および金属間化合物層が形成される。固溶層は、めっき層中の亜鉛が素地鋼板11中に拡散することによって形成され、Feを質量%で50〜80%含有する鉄亜鉛固溶相からなる層である。また、金属間化合物層は、Feを質量%で9〜30%含有する亜鉛主体のΓ相からなる層である。一方、長時間加熱を行った場合には、素地鋼材11と亜鉛系めっき層12との間に、固溶層が形成される。
上記の鉄亜鉛固溶相はZnを含んでいるため、それを主体とする固溶層を有することにより、優れた耐食性を発揮する。また、Γ相は亜鉛主体の金属間化合物であるため、鉄亜鉛固溶相に比べて高い犠牲防食能を有する。そのため、金属間化合物層を有することにより、優れた犠牲防食能を発揮する。
なお、鉄亜鉛固溶相は素地鋼板と同じ結晶構造(体心立方格子)を有しているが、Znが固溶しているため格子定数が素地鋼板に比べて大きく、区別が可能である。
(2)表面形成層
図1に示すように、基材10の上には、シリカを主体とするマトリックス21中に酸化亜鉛22が分散した表面形成層20を備える。
(2−1)シリカ
表面形成層20中のマトリックス21に含まれるシリカは、上述の表面処理層中に含まれる粒状のシリカが熱間プレス加熱時にガラス状に変化したものである。表面形成層20中にシリカを含有することで、亜鉛系めっき層からの亜鉛の蒸発を抑制できる。
なお、熱間プレス加熱時にシリカが失われることはほとんどないため、表面形成層20中に含まれるシリカの含有量は、表面処理層中に含まれる粒状のシリカの含有量に依存する。そのため、シリカは、片面当たりの含有量として、0.5〜2.0g/mである。
(2−2)酸化亜鉛
表面形成層20中の酸化亜鉛22は、上述の表面処理層中に含まれる粒状の酸化亜鉛が分散したものである。上述のように、表面形成層20中に分散した酸化亜鉛22が含まれ、表面形成層20の表面に存在することで、自動車用化成処理であるリン酸塩処理の際にリン酸亜鉛結晶が生成し易くなって、電着塗装後の塗膜密着性が向上する。
酸化亜鉛もシリカと同様に、熱間プレス加熱時に失われることはほとんどないため、表面形成層20中に含まれる酸化亜鉛の含有量は、表面処理層中に含まれる粒状の酸化亜鉛の含有量に依存する。そのため、シリカは、片面当たりの含有量として、0.20〜2.0g/mである。
また、塗膜密着性の向上効果を十分に得るためには、表面形成層20中の表面近傍において、十分な量の酸化亜鉛が分散していることが望ましい。具体的には、表面形成層20の表面20aに垂直でかつ表面20aから厚さ方向の中心20bまでの断面における、0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛が占める面積率が10〜50%であることが望ましい。
なお、上記の酸化亜鉛の占有面積は、公知の方法により測定可能である。例えば、まず、熱処理鋼材の断面埋め込みサンプルを作製し、表面形成層の表面に垂直でかつ表面から厚さ方向の中心までの断面について走査型顕微鏡で観察を行う。続いて、断面視野内における0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛を特定し、画像処理によって、酸化亜鉛の面積率を求めることが可能である。
(2−3)その他
その他、表面形成層中に含まれる各化合物の状態および含有量については、表面処理層と同じであるため、詳細な説明は省略する。例えば、表面形成層中の酸化亜鉛は、ドープ型の酸化亜鉛であってもよい。また、チタン含有化合物等が含まれていてもよい。好適な含有量については上述のとおりである。
3.製造方法
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板および熱処理鋼材の製造方法については特に制限されない。例えば、以下に示す方法により基材の表面に表面処理層を形成することにより、亜鉛系めっき鋼板を製造できる。また、当該亜鉛系めっき鋼板に対して、以下に示す条件で熱間プレス加工を施すことで、熱処理鋼材を製造できる。
(1)表面処理層の形成方法
表面処理層の形成方法は、粒状のカーボンブラック、粒状のシリカと粒状の酸化亜鉛を含有する処理液を基材の表面に塗布して、乾燥および焼付すればよい。
塗布方法は、特定の方法には限定されず、基材を処理液に浸漬するか、または、基材の表面に処理液をスプレーしてから、所定の付着量となるようにロールもしくはガス吹き付けにより付着量を制御する方法、またはロールコータ、カーテンコーターもしくはバーコータで塗布する方法が例示される。
乾燥方法および焼付方法も、分散媒(主として水)を揮発させることが可能な方法であればよく、特定の方法には限定されない。過度に高温で加熱すると表面処理層の均一性が低下することが懸念され、逆に、過度に低温で加熱すると生産性の低下が懸念される。このため、優れた特性を有する表面処理層を安定的かつ効率的に製造するためには、塗布後の表面処理層を、80〜150℃程度の温度で5〜20秒間程度加熱することが好ましい。
表面処理層は、めっき鋼板の製造ラインにおいてインラインで形成されることが経済的であり好ましいが、別ラインで形成してもよいし、または、成形のためのブランキングをしてから形成するようにしてもよい。
表面処理層の形成方法としては、粒状のカーボンブラック、粒状のシリカを含有する処理液を亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布した後、粒状の酸化亜鉛を含有する処理液を上層に塗布し、皮膜を形成することがより好ましい。この場合、酸化亜鉛を塗布する前に樹脂層を塗布して形成してもよい。
皮膜の乾燥、焼付けは、皮膜塗布の都度行ってもよいし、多層カーテンコーターを用いて2層または3層を同時に塗布し、一度に焼き付けてもよい。上述の表面処理層の形成方法を用いることにより、それぞれの化合物が奏する効果がより得られ易くなり、より優れた熱間プレス後の耐食性、塗装後密着性に加えて、スポット溶接性を得られる。
表面処理層における粒状のカーボンブラック、粒状のシリカおよび粒状の酸化亜鉛の含有量は、公知の方法により測定可能である。例えば、事前に各種化合物がシリカまたは酸化亜鉛であることを断面エネルギー分散型X線(Energy Dispersive X-ray:EDX)分析等で確認したうえで、皮膜を溶解してICP(Inductively Coupled Plasma、誘導結合プラズマ)発光分光分析法などを用いることにより測定可能である。また、表面処理層中におけるP含有化合物、V含有化合物およびCu含有化合物の含有量についても、同様の方法により測定が可能である。
(2)熱間プレス加工方法
以下に示す熱間加工方法においては、亜鉛系めっき鋼板を所定の温度まで加熱した後、プレス成形と冷却とが同時に行われる。それぞれについて詳しく説明する。
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、熱間プレス成形に供されることから、通常、700〜1000℃に加熱されるが、急速冷却後にマルテンサイト単相としたり、マルテンサイトを体積率で90%以上としたりする場合には、加熱温度はAc点以上とする。本発明では、急速冷却後マルテンサイトおよびフェライトの2相域の場合も包含されるため、加熱温度は700〜1000℃とすることが好ましい。
熱間プレス前の加熱方法は、所定温度(900℃前後)到達後、加熱炉中への静置時間(在炉時間)に応じ、短時間加熱と長時間加熱との2種類に大別できる。短時間加熱においては、所定温度到達後、速やかに炉から取り出し、プレス加工を行う。一方、長時間加熱においては、所定温度到達後、めっき中の亜鉛が、素地鋼板に拡散することで形成される鉄亜鉛固溶相が十分に形成されるまで加熱炉中に保持し、その後、炉から取り出し、プレスを行う。
いずれの場合においても、用いる加熱方法としては、電気炉、ガス炉、火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等が例示される。また、加熱時の雰囲気も特に制限されるものではない。
短時間加熱の場合には、亜鉛系めっき鋼板を所定温度に加熱した後、速やかに炉から取り出すか、またはごく短時間保持し、炉から取り出し、プレス成形を行い、その際に金型との接触により急冷する。このような加熱を行うことで、素地鋼材と亜鉛系めっき層との間に、固溶層および金属間化合物層が形成される。
なお、Γ相からなる金属間化合物層は、炉から取り出した直後では、液相の状態で存在する。そのため、加工時における素地鋼板の粒界割れを抑制するためには、めっき層を冷却して固化した後、プレス成形を実施する必要がある。具体的には、730〜500℃の温度域でプレス成形を実施するのがよい。
一方、長時間加熱の場合には、亜鉛系めっき鋼板を所定温度に加熱した後、一定時間保持してからプレス成形を行い、その際に金型との接触により急冷する。その際に、プレス金型を加熱しておいて、焼入れ温度または冷却速度を変化させ、熱間プレス後の製品特性を制御してもよい。所定温度に到達後、一定時間保持することで、めっき中の亜鉛が素地鋼板中に拡散し、素地鋼材と亜鉛系めっき層との間に、鉄亜鉛固溶相からなる固溶層が形成される。
(3)他の加工方法
以上の説明とは異なり、冷間で本発明に係る亜鉛系めっき鋼板をプレス成形して冷間プレス成形体とし、この冷間プレス成形体を緩加熱でAc点以上に加熱し、金型を用いて冷却することにより熱処理鋼材とすることとしてもよい。
本発明に係る亜鉛系めっき鋼板を用いて製造された熱処理鋼材は、優れた耐食性、電着塗装後の密着性、化成処理性およびスポット溶接性を有する。特に、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、緩加熱による熱間プレスにより亜鉛系めっき層中の溶融亜鉛がFeと結合して固相(鉄亜鉛固溶相)となるように保持時間を長時間とすることにより、効果が顕著に奏される。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<1>素地鋼板
表1に示す化学組成を有する溶鋼を製造し、製造したそれぞれの溶鋼を用いて、連続鋳造法によりスラブを製造した。得られたスラブを熱間圧延し、熱延鋼板を製造した。続いて、熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延を行って冷延鋼板を製造し、表1に示す化学組成を有する冷延鋼板#1〜#8を作製した。各冷延鋼板#1〜#8の板厚はいずれも1.6mmとした。
Figure 2019186891
<2>亜鉛系めっき
冷延鋼板#1〜#8に溶融亜鉛めっき処理を行い、その後、合金化処理を行った。合金化処理での最高温度はいずれも530℃であり、約30秒間加熱した後に室温まで冷却し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板GA(0.2%Al含有)を製造した。
加えて、冷延鋼板#1に溶融亜鉛めっき処理を行い、合金化処理を行わずに、溶融亜鉛めっき鋼板GI(0.4%Al含有)を製造した。
また、冷延鋼板#1に、溶融Zn−55%Al、溶融Zn−6%Al−3%Mg、溶融Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Siという3種類のめっき浴を用いて各種溶融亜鉛めっきを行い、溶融亜鉛系めっき鋼板A1〜A3を製造した。
A1:溶融Zn−55%Al
A2:溶融Zn−6%Al−3%Mg
A3:溶融Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Si
さらに、冷延鋼板#1に、電気Znめっき、電気Zn−Niめっきの各種の亜鉛系めっきを行った。電気めっきにおける具体的なめっき操作としては、Znイオンを含有する電解液中で鋼板を負極として対極との間で電解処理を行った。鋼板へのめっき付着量は、電解液の組成、電流密度、および電解時間により制御した。
A4:電気Znめっき
A5:電気Zn−12%Niめっき
上記の7種類の亜鉛系めっき工程では、亜鉛系めっき層の付着量を片面当たり45g/mとした。
そして、上述したGA上に電気めっきを用いNiめっきを行った、溶融亜鉛系めっき鋼板A6、7も作製した。
A6:GA+Niめっき(片面当たりの付着量2g/m
A7:GA+Niめっき(片面当たりの付着量8g/m
<3>表面処理
次いで、固形分比率で、表2および3の組成となる薬液を作製するため、下記化合物および薬剤を、水を用いてブレンドした。得られた処理液をバーコータで塗布し、最高到達温度100℃で8秒間保持されるような条件でオーブンを用いて乾燥することにより、亜鉛系めっき鋼板を製造した。
また、表2の組成となる薬液を上述の条件で塗布、乾燥した後に、さらに表2の組成となる薬液を上述の条件で塗布、乾燥することにより2層以上の表面処理層を有する亜鉛系めっき鋼板を製造した。
処理液の付着量は、処理液中の不揮発分の全付着量が表4〜8に示される数値になるように、液の希釈およびバーコータの番手により調整した。なお、表2および3において、各成分の固形分濃度は、処理液全体の不揮発分に対する「粒状のカーボンブラック」といった各成分の不揮発分の比率(単位:質量%)として記載した。
用いた粒状のカーボンブラック、粒状のシリカおよび粒状の酸化亜鉛の銘柄を以下に示す。
(i)粉状のカーボンブラック
C1:カーボンブラック粉末(三菱化学(株)#2650)、粒径13nm(カタログ値)
C2:カーボンブラック粉末(三菱化学(株)MA100)、粒径24nm(カタログ値)
C3:カーボンブラック粉末(三菱化学(株)MA220)、粒径55nm(カタログ値)
C4:カーボンブラック粉末(高純度化学(株)カーボン粉末)、粒径5μm(カタログ値)
(ii)粉状のシリカ
S1:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)OXS)、粒径約4nm〜6nm(カタログ値)
S2:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)O)、粒径約10nm〜15nm(カタログ値)
S3:コロイダルシリカ(日産化学(株)スノーテックス(登録商標)OYL)、粒径約50nm〜80nm(カタログ値)
S4:多孔質シリカ(富士シリシア化学(株)サイロマスク02)、粒径2μm
S5:シリコーン樹脂(信越化学工業(株)KR−300)
(iii)粉状の酸化亜鉛
Z1:酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)微粒子酸化亜鉛F−1)、粒径0.1μm(カタログ値)
Z2:酸化亜鉛粉末(高純度化学(株)酸化亜鉛)、粒径1μm(カタログ値)
Z3:導電性酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)導電性酸化亜鉛23−k)、粒径0.12μm〜0.25μm(カタログ値)
Z4:導電性酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)導電性酸化亜鉛Pazet CK)、粒径0.02μm〜0.04μm(カタログ値)
(iv)樹脂
A:ウレタン系樹脂エマルション(第一工業製薬(株)スーパーフレックス(登録商標)150)
B:ウレタン系樹脂エマルション(第一工業製薬(株)スーパーフレックス(登録商標)E−2000)
C:ポリエステル樹脂エマルション(東洋紡(株)バイロナール(登録商標)MD1480)
(v)架橋剤
M:メラミン樹脂(三井サイテック(株)サイメル(登録商標)325)
Z:炭酸ジルコニウムアンモニウム(キシダ化学(株)炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液)
CP:シランカップリング剤(日美商事(株)サイラエースS510)(Si含有化合物)
(vi)チタン含有化合物
T1:チタニアゾル(テイカ(株)チタニアゾルTKS−203)、粒径6nm(カタログ値)
T2:チタニア粉末(イオリテック社製)、粒径10〜30nm(カタログ値)
T3:酸化チタン(石原産業(株)酸化チタンR−930)、粒径250nm(カタログ値)
T4:窒化チタン(日本新金属(株)TiN)、粒径700〜1190nm(カタログ値)
(vii)その他化合物
Zr:ジルコニア(日産化学(株)ナノユースZR40BL)
P:亜リン酸カルシウム(一般試薬)(P含有化合物)
V:バナジン酸カリウム(一般試薬)(V含有化合物)
Cu:酸化銅(II)(一般試薬)(Cu含有化合物)
なお、薬液No.45の薬液は、シリカ量が少なく、酸化チタンの量が過剰であったため、分散せずに基材の表面に均一に塗布することができなかった。そのため、以降の試験には用いていない。
Figure 2019186891
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<4>熱間プレス
表面処理層を形成した後、各番号のめっき鋼板に対して、以下に示す2種類の方法のいずれかにより熱間プレス加工を施し、熱処理鋼材を製造した。
方式1:短時間加熱
炉加熱方式により熱間プレスの加熱を行い、熱間プレスを行った。炉加熱では、炉内雰囲気:910℃、空燃比:1.1とし、鋼板温度が890℃に到達後速やかに炉内から取り出し、700℃になるまで空冷を行った。
700℃まで空冷後、速やかに水冷ジャケットを備えた平板金型を利用して、鋼板を挟み込んで板状の熱処理鋼材を製造した。熱間プレス時冷却速度が遅い部分でも、マルテンサイト変態開始点である360℃程度まで、50℃/秒以上の冷却速度となるように冷却し、焼入れた。
方式2:長時間加熱
炉加熱方式により熱間プレスの加熱を行い、熱間プレスを行った。炉加熱では、炉内雰囲気:910℃、空燃比:1.1とし、鋼板温度が890℃に到達後5分間炉内に静置し、その後速やかに炉内から取り出した。
熱間プレス加熱後、速やかに水冷ジャケットを備えた平板金型を利用して、鋼板を挟み込んで板状の熱処理鋼材を製造した。熱間プレス時冷却速度が遅い部分でも、マルテンサイト変態開始点である360℃程度まで、50℃/秒以上の冷却速度となるように冷却し、焼入れた。
得られた熱処理鋼材について、断面埋め込みサンプルを作製し、表面形成層の表面に垂直でかつ表面から厚さ方向の中心までの断面について0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛の占有面積を測定した。具体的には、各熱処理鋼材の断面埋め込みサンプルを作製し、走査型顕微鏡で5000倍の視野で表面形成層の表面に垂直でかつ表面から厚さ方向の中心までの断面に含まれる0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛を特定し、画像処理によって、酸化亜鉛の面積率を求めた。この測定を10視野で実施し、平均値を各サンプルの占有面積率とした。
表中の「占有面積」欄の「D」は面積率が5%未満を意味し、「C」は面積率が、5%以上10%未満を意味し、「B」は面積率が10%以上25%未満を意味し、「A」は面積率が25%以上50%以下を意味し、「E」は面積率が50%超を意味する。面積率評価において、「B」または「A」を、良好な熱処理鋼材の表面形成層とした。
各試験番号の熱処理鋼材の表面形成層の組成および亜鉛酸化物の占有面積を、表9〜12に示す。
<5>評価方法
得られた各試験番号の熱処理鋼材を用いて、以下に示す試験を実施することにより、リン酸塩処理性(化成処理性)、塗装後密着性、耐食性およびスポット溶接性の評価を行った。
[5−1]リン酸塩処理性評価試験
各試験番号の熱処理鋼材に対して、日本パーカライジング株式会社製の表面調整処理剤プレパレンX(商品名)を用いて、表面調整を室温で20秒間行った。
さらに、日本パーカライジング株式会社製のリン酸亜鉛処理液パルボンド3020(商品名)を用いて、リン酸塩処理を行った。処理液の温度は43℃とし、熱処理鋼材を処理液に120秒間浸漬後、水洗および乾燥を行った。
リン酸塩処理後の熱処理鋼材の表面の任意の5視野(125μm×90μm)を1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、反射電子像(BSE像)を得た。反射電子像では、観察領域をグレースケールで画像表示した。反射電子像内において、化成皮膜であるリン酸塩皮膜が形成された部分と、リン酸塩皮膜が形成されていない部分とでは、コントラストが異なる。そこで、リン酸塩皮膜が形成されていない部分の明度(複数階調)の数値範囲X1を、SEMおよびEDS(エネルギ分散型X線分光器)により予め決定した。
各視野の反射電子像において、画像処理により、数値範囲X1内のコントラストを示す領域の面積A1を求めた。そして、以下の(1)式に基づいて、各視野の透け面積率TR(%)を求めた。
TR=(A1/A0)×100 ・・・・・(1)
(1)式において、A0は、視野の全面積(11250μm)である。5視野の透け面積率TR(%)の平均を、その試験番号の熱処理鋼材の透け面積率(%)と定義した。
表9〜12中の「リン酸塩処理性」欄の「F」は透け面積率:30%以上を意味し、「E」は透け面積率:20%以上30%未満を意味し、「D」は透け面積率:15%以上20未満を意味し、「C」は透け面積率:10%以上15%未満を意味し、「B」は透け面積率:5%以上10%未満を意味し、さらに、「A」は透け面積率:5%未満を意味する。透け評価において、「C」、「B」または「A」を、リン酸塩処理性に優れるとした。
[5−2]塗装密着性評価試験
上述のリン酸塩処理を行った後、各試験番号の熱処理鋼材に対して、日本ペイント株式会社製のカチオン型電着塗料を、電圧160Vのスロープ通電により電着塗装し、さらに、焼き付け温度170℃で20分間焼き付けた。電着塗装後の塗料の膜厚の平均は、いずれの試験番号も10μmであった。
電着塗装後、熱処理鋼材を、50℃の5%NaCl水溶液に500時間浸漬した。浸漬後、試験面60mm×120mmの領域(面積A10=60mm×120mm=7200mm)全面に、ポリエステル製テープを貼り付けた。その後、テープを引き剥がした。テープの引き剥がしにより剥離した塗膜の面積A2(mm)を求め、(2)式に基づいて塗膜剥離率(%)を求めた。
塗膜剥離率=(A2/A10)×100 ・・・(2)
表9〜12中の「塗装密着性」欄の「F」は塗膜剥離率:30.0%以上を意味し、「E」は塗膜剥離率:20%以上30%未満を意味し、「D」は塗膜剥離率:10%以上20%未満を意味し、「C」は塗膜剥離率:5%以上10%未満を意味し、「B」は塗膜剥離率:2.5%以上5%未満を意味し、さらに、「A」は塗膜剥離率:2.5%未満を意味する。塗装密着性評価において、「C」、「B」または「A」を、塗装密着性に優れるとした。
[5−3]サイクル腐食試験
評価面の塗装に対し、カッターナイフ(荷重500gf、1gf≒9.8×10−3N)で切れ目を入れ、「塩水噴霧(SST、5%NaCl、35℃雰囲気)2時間→乾燥(60℃)2時間→湿潤(50℃、98%RH)4時間」を1サイクルとするサイクル条件のサイクル腐食試験を360サイクル行った。
その後、カット部から1cm幅程度の領域で発生する塗膜の膨れの有無を観察した。表9〜12の「耐食性」欄の「F」は4.0mm以上の塗膜膨れの発生を意味し、「E」は3.0mm以上4.0mm未満の塗膜膨れの発生を意味し、「D」は2.0mm以上3.0mm未満の塗膜膨れの発生を意味し、「C」は1.5mm以上2.0mm未満の塗膜膨れの発生を意味し、「B」は1.0以上1.5mm未満の微小な塗膜膨れを意味し、さらに、「A」は1.0mm未満の極微小な塗膜膨れがあったことを意味する。このサイクル腐食試験において、「C」、「B」または「A」を、耐食性に優れるとした。
[5−4]スポット溶接性試験
上記化成処理(リン酸塩処理)を行う前の表面処理金属板を、先端径5mm、R40のCF型Cr−Cu電極を用い、直流電源で、加圧力350kgfでスポット溶接を行った。種々の溶接電流で試験を行い、溶接部のナゲット径が4√t(tは試験片の板厚)を超えた値を下限値とし、適宜溶接電流の値を上げていき、溶接時にチリ発生した値を上限値とした。上限値と下限値の間の値を適正電流範囲と設定した。
表9〜12中の「溶接性」欄の「F」はこの値がないことを意味し、「E」はこの値が0.00kA以上0.5kA未満であることを意味し、「D」はこの値が0.25kA以上0.5kA未満であることを意味し、「C」はこの値が0.5kA以上0.75kA未満であることを意味し、「B」はこの値が0.75kA以上1.0.A未満であることを意味し、さらに、「A」はこの値が1.0kA以上であることを意味する。このスポット溶接性試験において、「C」、「B」または「A」を、スポット溶接性に優れるとした。
Figure 2019186891
Figure 2019186891
Figure 2019186891
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表9〜12における下線は、本発明の範囲外であること、または試験結果が良好でないことを示す。表9〜12から明らかなように、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板を用いて製造した熱処理鋼材は、優れた耐食性のみならず、優れた化成処理性、塗膜密着性、スポット溶接性を有していることが分かる。
図2は、本発明例に係る熱処理鋼板のリン酸塩処理後の表面におけるSEM写真である。図2から分かるように、本発明の規定を満足する亜鉛系めっき鋼板から製造された熱処理鋼板では、表面形成層中に酸化亜鉛が均一に分散するため、リン酸塩処理によって、均一なリン酸亜鉛皮膜が形成されている。
一方、図3は、比較例に係る熱処理鋼板のリン酸塩処理後の表面におけるSEM写真である。図3(a)に示す、熱処理鋼板No.L7では、使用した亜鉛系めっき鋼板の表面処理層中のカーボンブラック量が少なく、粒状の酸化亜鉛が含まれていない。そのため、図4に断面を模式的に示すように、皮膜41に割れが発生し、めっき層32に由来する酸化亜鉛42が表面に現れるような構造となった。その結果、図3(a)に示すように、リン酸塩皮膜がわずかにしか形成されず、リン酸塩処理性が劣る結果となった。
また、図3(b)に示す、熱処理鋼板No.L32では、使用した亜鉛系めっき鋼板の表面処理層中に、粒状シリカの代わりにシリコーン樹脂を含有させた。その結果、表面形成層の表層付近に酸化亜鉛が分散せずに、リン酸塩皮膜がほとんど形成されず、リン酸塩処理性が著しく劣る結果となった。
さらに、熱処理鋼板No.L121は、表面処理層を一切形成させていないめっき鋼板No.130を用いた比較例である。この例では、亜鉛系めっき鋼板が表面処理層を有しないため、図5に断面を模式的に示すように、熱間プレスによってめっき層32中の亜鉛が酸化亜鉛50となった。図5に模式的に示すように、酸化亜鉛50の密着性が悪いため剥離の原因となり、塗装後密着性が悪化するとともに、耐食性が劣る結果となった。
10.基材
11.鋼板(素地鋼板)
12.亜鉛系めっき層
20.表面形成層
20a.表面
20b.厚さ方向の中心
21.マトリックス
22.酸化亜鉛

Claims (9)

  1. 鋼板の表面に亜鉛系めっき層を有する基材と、
    前記基材の少なくとも片面に形成された表面処理層と、を備え、
    前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、
    粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
    粒状のシリカ:0.5〜2.0g/m、および、
    粒状の酸化亜鉛:0.20〜2.0g/mを含有する、
    亜鉛系めっき鋼板。
  2. 前記表面処理層に含まれる前記粒状のカーボンブラック、前記粒状の酸化シリカおよび前記粒状の酸化亜鉛の含有量が、下記(i)式を満足する、
    請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板。
    C+Z<S<2×(C+Z) ・・・(i)
    但し、上記式中の各記号の意味は以下のとおりである。
    C:粒状のカーボンブラックの含有量(g/m
    S:粒状の酸化シリカの含有量(g/m
    Z:粒状の酸化亜鉛の含有量(g/m
  3. 前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、
    粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
    粒状のシリカ:0.5〜1.5g/m、および、
    粒状の酸化亜鉛:0.50〜2.0g/mを含有する、
    請求項1または請求項2に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  4. 前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、
    粒状のカーボンブラック:0.15〜1.0g/m
    粒状のシリカ:1.0〜2.0g/m、および、
    粒状の酸化亜鉛:0.20〜1.0g/mを含有する、
    請求項1または請求項2に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  5. 前記粒状の酸化亜鉛の粒子が、粒状のドープ型の酸化亜鉛粒子である、
    請求項1から請求項4までのいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
  6. 前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、さらに、
    チタン含有化合物:0.2〜2.0g/mを含有する、
    請求項1から請求項5までのいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
  7. 前記チタン含有化合物が、平均粒径が1〜200nmである酸化チタン、および/または、平均粒径が0.2〜5μmであるチタン含有の非酸化物セラミクスである、
    請求項6に記載の亜鉛系めっき鋼板。
  8. 前記表面処理層が、片面当たりの含有量で、さらに、平均粒径が5〜500nmであるジルコニア、酸化ランタン、酸化セリウムおよび酸化ネオジムから選択される1種以上を、合計で0.2〜2.0g/m含有する、
    請求項1から請求項7までのいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
  9. 基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された表面形成層とを備え、
    前記表面形成層が、片面当たりの含有量で、
    シリカ:0.5〜2.0g/m、および、
    酸化亜鉛:0.20〜2.0g/mを含有し、かつ、
    前記表面形成層の表面に垂直でかつ表面から厚さ方向の中心までの断面における、0.01〜1μmの粒径を有する酸化亜鉛が占める面積率が10〜50%である、
    熱処理鋼材。

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