以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ここに、図1は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジ10の外観を示す斜視図である。図2は、インクカートリッジ10が分解された状態を示す分解斜視図である。
図1及び図2に示されるように、インクカートリッジ10は、インクが収容される本体100(図2参照)と、ケース20と、プロテクタ30とを備えている。ケース20は、本体100の略全体を覆う。プロテクタ30は、インクカートリッジ10が搬送される際に本体100のインク供給バルブ200(本発明のバルブ機構に相当、図2参照)などを保護するものであり、ケース20に着脱可能に取り付けられている。なお、本実施形態では、本体100、ケース20、及びプロテクタ30は、樹脂材料により構成されている。したがって、金属材料が使用されていないので、廃棄処分の際に焼却することができる。例えば、樹脂材料としては、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンなどが該当する。
ケース20は、本体100を2方向(図2の上下方向)から挟み込む2つのケース部材21,22で構成されている。第1ケース部材21は、本体100の図2下側面を覆う部材であり、第2ケース部材22は、本体100の図2上側面を覆う部材である。各ケース部材21,22は、例えば、樹脂材料を射出成形することにより得られる。これらのケース部材21,22は、本体100を構成するフレーム部110(本発明のフレームに相当)やインク供給バルブ200、大気連通バルブ131などに対応する形状に形成されている。
第1ケース部材21には、本体100の位置決めを行う棒状のピン25a,25b,25cが形成されている。ピン25a〜25cは、第1ケース部材21の内面に垂直に立設されている。ピン25a〜25cで囲まれた部分に本体100が装着される。これにより、ピン25a〜25cによって、本体100が位置決めされ、本体100が緩みなく第1ケース部材21に仮付けされる。また、第2ケース部材22には、ピン25a〜25cが形成された位置に対応して、ピン25a〜25cと嵌合する孔を有する嵌合孔部(図示せず)が設けられている。各ケース部材21,22が本体100を挟み込むようにして接合され、ピン25a〜25cが上記嵌合孔部に嵌め入れられることにより、第1ケース部材21と第2ケース部材とが互いに連結する。これにより、本体100がケース20によって保護される。
ケース20には、突起片26,27が設けられている。突起片26に切り欠き26aが設けられており、突起片27に切り欠き27aが設けられている。これらの切り欠き26a,27aに、プロテクタ30に形成された図示しない突起が嵌合される。これにより、プロテクタ30が、ケース20に確実に取り付けられる。なお、ケース20にプロテクタ30が取り付けられた状態で、プロテクタ30の貫通孔31から大気連通バルブ131のロッド134が露出される。これにより、プロテクタ30をケース20から取り外すことなく、大気連通バルブ131を動作させることができる。
次に、図2〜図7を参照して、本体100について説明する。ここに、図3は、インク注入部150側から見て本体100の左側の面を示す図である。図4は、インク注入部150側から見て本体100の右側の面を示す図である。図5は、バルブ収容室120の断面構造を示す部分断面図である。図6は、インク供給室175付近の構造を示す部分拡大図である。図6の(a)には、インク供給室175付近の概略構造が示されており、(b)には、(a)における切断線VIb−VIbの断面構造が示されており、(c)には、インク量が減少した状態が示されており、(d)には、インクの供給が終了した状態が示されている。図7は、本体100が横置きにされた状態の断面構造を示す断面図である。図7の(a)には、左側面105を下にして横置きされた状態が示されており、(b)には、右側面106を下にして横置きされた状態が示されている。なお、図3では、インク供給バルブ200及び大気連通バルブ131が本体100から取り外された状態が示されている。また、図3及び図4では、フィルム160が省略されている。また、図5では、インク供給バルブ200の一部が省略されている。
図2に示されるように、本体100は、扁平形状の略6面体として構成されている。詳細には、本体100は、幅方向(矢印51の方向)に細く、高さ方向(矢印52の方向)に長く、奥行き方向(矢印53の方向)が上記高さ方向よりもさらに長い略直方体形状に形成されている。この本体100は、図3及び図4に示された起立状態で、つまり、図中の下側の面を底面104とし、図中の上側の面を上面103として記録装置に装着される。インクカートリッジ10は、記録装置に対して矢印50で示される挿入方向に挿入される。なお、本体100において、矢印50の方向の前方側の面、つまり、底面104から起立するように設けられた面が本体100の背面102である。また、この背面102に対向する面が本体100の正面101である。正面101、背面102、上面103、底面104に連結された面が側面105及び側面106(本発明の第1側面及び第2側面に相当)である。これら側面105,106は、背面102と底面104との共有辺に交差する一対の辺を有し、互いに対向するよう配置されている。本実施形態では、一対の側面105,106が本体100において6面体の最大面積となっている。
本体100は、大別して、フレーム部110と、合成樹脂製のフィルム160(本発明の第1被覆部材及び第2被覆部材に相当)と、センサーアーム90と、大気連通バルブ131と、インク供給バルブ200とにより構成されている。フレーム部110の両側面(図2の上下の2面)にフィルム160が溶着されることにより、その内部に、インクを収容することが可能なインク室170(本発明の第1空間に相当)が形成される。
フレーム部110は、本体100の筐体を構成する部材であり、本体100の六面101〜106を形成する。したがって、本体100の六面101〜106は、フレーム部110の六面に一致する。以下において、本体100の各面に付された符号を用いてフレーム部110の各面を示す。
フレーム部110は、透光性のある透明或いは半透明の樹脂材料で構成されており、例えば、樹脂材料を射出成形することにより得られる。このフレーム部110は、大別して、複数の壁部材(外周壁111等)と、インク注入部150と、検知窓140と、バルブ収容室120と、バルブ収容室130と、傾斜部80とを備える。
図3及び図4に示されるように、フレーム部110は、外周壁111と、複数の内壁112とを備える。内壁112は、外周壁111の内側に配設されている。外周壁111及び内壁112は、フレーム部110として一体に形成されており、本体100の左側面105から右側面106に渡って設けられている。外周壁111は、内部に空間を形成するように、正面101、上面103、背面102、底面104に概ね沿って環状に配設されている。これにより、フレーム部110の左側面105に開口114aが形成され、右側面106に開口114bが形成される。
外周壁111及び内壁112の側面105,106側の外縁部分には、溶着部116(黒塗りの部分)が設けられている。この溶着部116に、超音波溶着によってフィルム160が溶着される。これにより、開口114a及び開口114bがフィルム160によって閉塞されて、外周壁111とフィルム160とによって囲まれたインク室170が区画される。このように区画されたインク室170にインクが収容される。
本実施形態では、内壁112は、外周壁111で囲まれた領域内において分散された状態で配設されている。そのため、フィルム160の弛みを抑制しつつ、インク室170におけるインクの流通性を高めることができる。また、内壁112が分散して配置されているため、例えば、軟性な樹脂材料でケース20が形成されている場合に、そのケース20が本体100側に変形したとしても、内壁112によってケース20の変形を規制することができる。これにより、ケース20やフィルム160の破損を防止することができる。さらに、外周壁111及び内壁112は、側面105,106の方向、つまり、矢印51(図1参照)で示される幅方向に延設されているため、フレーム部110を射出成形する場合に、複雑な金型を必要としない。これにより、インクカートリッジ10の製作コストの低減を図ることができる。
インク注入部150は、インクをインク室170に注入するために設けられている。インク注入部150は、フレーム部110に一体に成形されている。このインク注入部150は、本体100の正面101の中段付近よりやや下側に配設されている。
図4に示されるように、インク注入部150は、筒部152と、連通孔153と、隔壁156と、連通孔154とを主に備えている。筒部152は、正面101からインク室170側に穿設された略円筒状の孔であり、その奥部が閉塞されている。連通孔153は、筒部152とインク室170との間を連通するものである。この連通孔153は、筒部152の側壁に形成されている。この連通孔153は、筒部152の側壁を本体100の右側面106側に貫通している。
隔壁156は、連通孔153をインク室170に対して隔離するとともに、後述する注入路158を形成するものである。隔壁156は、筒部152の外面に右側面106側へ向けて立設された横向き略U字状のリブ部材からなり、本体100の奥行き方向(図4の矢印53の方向)に延設された細長形状を呈する。隔壁156の右側面106側の外縁部分には溶着部116が設けられている。この溶着部116にもフィルム160が溶着される。右側面106の開口114bがフィルム160で閉塞された状態で、隔壁156及びフィルム160で囲まれた部分に注入路158が形成される。この注入路158は、インクが注入されたときにインクがインク室170へ向かって流れる流路である。隔壁156の正面101側に連通孔154が形成されている。この連通孔154によって、隔壁156が正面101側でインク室170側に開放されている。したがって、注入路158は、連通孔154を通じてインク室170に連通している。
筒部152の正面101側の開口は、本体100の外部に開放されたインク注入口(不図示)である。このインク注入口からインクが注入される。インク注入口から注入されたインクは、筒部152の内部から連通孔153を通って注入路158に流れ込み、そして、連通孔154からインク室170に流入する。
検知窓140は、インク室170に収容されているインクの量を視覚的或いは光学的に検知するためのものである。検知窓140は、フレーム部110に一体に形成されている。したがって、検知窓140は、フレーム部110と同じ材質、つまり、透光性のある透明或いは半透明の樹脂材料で構成されている。そのため、検知窓140は、外部からの光を透過することができる。なお、検知窓140は、記録装置に取り付けられたフォトインタラプタなどの光センサによって検出光が照射される。本実施形態では、上記検出光は、側壁140bに照射される。
検知窓140は、図3〜図5に示されるように、本体100の背面102の中段付近から外向き、つまり、インク室170とは反対側の方向(図3の左向き)へ突出している。具体的には、検知窓140は、背面102に平行で、この背面102から外向きに所定距離だけ離反された矩形状の前壁140a(図5参照)と、この前壁140aの幅方向の二辺を含む一対の側壁140bと、前壁140aの上下の二辺を含む上壁140c及び底壁140dとにより区画されている。前壁140aの幅(図2の矢印51方向の寸法)は、本体100の背面102の幅よりも小さく形成されている。
図5に示されるように、検知窓140の内部に空間142が形成されている。空間142は、インク室170に連続している。空間142に、センサーアーム90のインジケータ部92が進入或いは退出する。なお、図3及び図4では、インジケータ部92が空間142に進入した姿勢が実線で示されており、図5では、破線で示されている。
センサーアーム90は、インク室170に収容されたインクの液量を検知するための部材である。センサーアーム90の一方端に、空間142に進入或いは退出されるインジケータ部92が設けられている。センサーアーム90の他方端に、内部が中空状に形成されたフロート部93が設けられている。このセンサーアーム90は、外周壁111の幅方向(矢印51の方向)の中心に立設されたリブ94に揺動可能に支持されている。フロート部93は浮きの役割を担っており、インク量に応じて上下に変位する。これにより、フロート部93の変位量に応じてセンサーアーム90が回動する。リブ94は、背面102及び底面104で形成されるコーナー付近の外周壁111に設けられており、このリブ94に、センサーアーム90を軸支する支持部97(図5参照)が形成されている。
センサーアーム90は、インク室170内に十分な量のインクが収容されている場合は、図3及び図4に示されるようにインジケータ部92が空間142に進入した姿勢を維持する。一方、インクが所定量未満になるとフロート部93が下降して、インジケータ部92が空間142から退出した姿勢を維持する。空間142におけるインジケータ部92の有無を検知窓140の外部からフォトインタラプタなどの光センサで監視することで、インク室170内のインクの液量が所定量あるかどうかを検知することができる。
インク室170には、図3及び図4に示されるように、背面102及び底面104で形成されるコーナー部分に、傾斜部80が設けられている。この傾斜部80は、検知窓140の空間142や外周壁111における背面102側の垂直面172に付着したインクをインク室170の底面171、より詳細には、底面171に形成された凹陥部117へ円滑に導くために設けられたものである。傾斜部80は、垂直面172から凹陥部117へ向けて傾斜する第1傾斜面81と、該第1傾斜面81の下方に位置する第2傾斜面82とを有する。
第1傾斜面81は、外周壁111の上記コーナー部分が傾斜されることによって形成される。また、第2傾斜面82は、後述する隔壁177が傾斜されることによって形成される。第1傾斜面81と第2傾斜面とに間には、段が設けられている。したがって、傾斜部80は、側面105,106の方向から見て階段状に形成されている。このような傾斜部80が設けられているため、凹陥部117へ効率よくインクを集めることができる。
本実施形態では、傾斜部80は、第1傾斜面81と第2傾斜面82とによって階段状に構成されているが、もちろん、垂直面172から凹陥部117へ向けて段を有しない傾斜面で構成されていてもよい。また、第1傾斜面81が空間142の底面と連続して形成されていてもよい。つまり、空間142の底面が傾斜されており、その底面が第1傾斜面81に連続するように傾斜部80が構成されていてもよい。これにより、外周壁111のみならず、空間142に付着したインクを円滑にインク室170の底面171へ導くことができる。
図3に示されるように、フレーム部110の背面102の上部、言い換えれば、検知窓140の上方に、円形の開口132が設けられている。開口132に連続してフレーム部110の内部に円筒状のバルブ収容室130が形成されている。バルブ収容室130は、その奥部においてインク室170に連通している。バルブ収容室130に、大気連通バルブ131が収容される。
大気連通バルブ131は、開口132からインク室170に至る経路を開放又は閉鎖する弁機構であり、バルブ本体137やバネ136、シール部材133、ロッド134、カバー135などの部材によってユニット化された構造を有する。大気連通バルブ131は、常時は、バネ136の付勢力によって上記経路を閉鎖する方向にバルブ本体137が押し付けている。ロッド134は、背面102側に突出している。このロッド134が上記付勢力に抗して開口132の奥部へ押圧されることにより、上記経路が開放される。なお、バルブ収容室130及び大気連通バルブ131は本発明に関係しないため、詳細な説明は省略する。
図4及び図5に示されるように、フレーム部110の背面102の下部、言い換えれば、検知窓140の下方に、円形の開口122が設けられている。この開口122に連続してフレーム部110の内部側に、本発明の第2空間の一例であるバルブ収容室120及びインク供給室175が形成されている。なお、バルブ収容室120が本発明の第1室に相当し、インク供給室175が本発明の第2室に相当する。
バルブ収容室120は、開口122から本体100のインク室170へ向かう方向(矢印53の方向)に沿ってフレーム部110の内側に延設されている。バルブ収容室120は、図示されるように、外周壁111の外側に設けられている。一方、インク供給室175は、背面102側から見てバルブ収容室120の奥側に設けられている。このインク供給室175は、外周壁111の内側に設けられている。つまり、インク供給室175とバルブ収容室120とは、外周壁111によって仕切られるように隔離されている。以下、外周壁111において、インク供給室175とバルブ収容室120とを仕切る部分を隔壁179と称する。
バルブ収容室120は、略円筒状に形成された側壁124(図5参照)によってその側面が区画され、隔壁179によってその奥面が区画されている。このバルブ収容室120に、逆止弁190及びインク供給バルブ200(図3参照)が収容される。
インク供給バルブ200は、開口122からバルブ収容室120に至る経路を開放又は閉鎖する弁機構であり、バルブ本体207(本発明の蓋体に相当)やバネ206(本発明の弾性部材に相当)、シール部材204、カバー205などの部材によってユニット化された構造を有する。バルブ本体207は、バルブ収容室120内で、後述するインク供給口210を閉塞する位置とインク供給口210を開放する位置との間で移動可能に配設されている。インク供給バルブ200は、常時は、バネ206の付勢力によって、インク供給口210を閉塞する方向にバルブ本体207を押し付けている。そして、インク供給口210に外部側からインクニードルが挿入されて上記付勢力に抗してバルブ本体207が押圧されると、バルブ本体207がスライドして、上記インク供給口210が開放される。このとき、インク室170内のインクがインク供給室175及びバルブ収容室120を経てインク供給口210から外部へ流出可能な状態となる。
図5に示されるように、開口122の外縁部にシール部材204を介してカバー205が取り付けられている。カバー205には貫通孔214が設けられ、シール部材204には貫通孔215が設けられている。このカバー205が上記外縁部に取り付けられた状態で、インクニードルが挿入可能なインク供給口210(貫通孔214,215)が形成される。このインク供給口210は、その中心がバルブ収容室120の円筒中心線176に一致するように形成されている。
逆止弁190は、インク室170からバルブ収容室120へのインクの流通を許容し、バルブ収容室120からインク供給室175へのインクの流通を制限するものである。逆止弁190は、バルブ収容室120とインク供給室175とを連通する後述の連通孔181(本発明の第2連通孔に相当)に装着される。この逆止弁190は、バルブ収容室120からインク供給室175へのインクの逆流を抑止するために設けられている。
インク供給室175は、右側面106から見て略三角形状に形成されている。このインク供給室175は、右側面106から見て横向き略V字状の隔壁177(本発明の区画壁に相当)と外周壁111の一部を構成する隔壁179とによって区画されている。したがって、インク供給室175は、バルブ収容室120から奥行き方向(矢印53の方向)へ向かうにつれて先細り形状に形成されている。インク供給室175とバルブ収容室120とは、隔壁179を間に介在させて本体100の奥行き方向(矢印53の方向)に隣接している。隔壁177の右側面106側の外縁部分には溶着部116が設けられている。この溶着部116にもフィルム160が溶着される。右側面106の開口114bがフィルム160で閉塞されることにより、隔壁177、隔壁179、及びフィルム160で囲まれた空間にインク供給室175が形成される。
隔壁179には、インク供給室175とバルブ収容室120とを連通する連通孔181が形成されている。この連通孔181は、上記インク供給口210と同じように、その中心がバルブ収容室120の円筒中心線176に一致するように形成されている。
図6(a)に示されるように、隔壁177は、連通孔181を囲むように設けられている。隔壁177のうち、下側の壁(以下「下壁」と称する。)177bには、インク室170とインク供給室175とを連通する連通孔182(本発明の第1連通孔に相当)が形成されている。この連通孔182は、連通孔181及びインク供給口210それぞれの中心を通る円筒中心線176から下方へずらされた箇所に形成されている。なお、隔壁177のうち、上側の壁(以下「上壁」と称する。)177aは、後述する凹陥部117へ向けて傾斜されている。この上壁177aによって第2傾斜面82が形成されている。
図6(b)に示されるように、下壁177bに切り欠き184が形成されている。この切り欠き184は、下壁177bの右側面106側の端部に設けられている。切り欠き184は、下壁177bの右側面106側の端部の一部が略コの字状に切り欠かれることにより形成される。切り欠き184は、フレーム部110を射出成形することによってフレーム部110と同時に形成される。この切り欠き184と、下壁177bの溶着部116に溶着されたフィルム160とによって、連通孔182が形成される。これにより、断面が矩形状(四角形状)に形成された連通孔182が、右側面106側のフィルム160に隣接して設けられる。
本実施形態では、連通孔182は、インク供給口210或いは連通孔181よりも小さい断面積に形成されている。したがって、インク供給口210から外部へインクが流出された場合に、連通孔182におけるインクの流速は、インク供給口210及び連通孔181における流速よりも大きい。そのため、連通孔182付近で気泡などが滞留し難くなる。
下壁177bの下方に、凹陥部117が設けられている。凹陥部117は、インク室170の底面171を形成する底壁118の一部を凹陥状に一段低くして陥没させることにより形成される。なお、外周壁111のうち、インク室170の底面171を形成する部分が底壁118である。本実施形態では、この凹陥部117で区画される凹部空間119に、連通孔182のインク室170側の開口が配置されている。
図6(b)に示されるように、凹陥部117は、リブ94より右側面106側のみに設けられており、リブ94より左側面105側には設けられていない。凹陥部117の直上のリブ94には、リブ94を右側面106側から左側面105側へ貫通する貫通孔95が形成されている。この貫通孔95を通ってインクが右側面106側と左側面105側との間で流通する。なお、凹陥部117は右側面106側のみに設けられているため、例えば、インク室170内のインクの液面が底面171より下がった場合には、リブ94の左側面105側に残ったインクは、貫通孔95を通って凹陥部117へ流入する。このような凹陥部117が設けられているため、凹陥部117に溜められたインクの液面が下がって連通孔182に達するまでの間、空気を連通孔182に入り込ませることなく、インクをインク供給室175に供給することができる。
本実施形態では、図6(b)に示されるように、隔壁177は、インク室170とバルブ収容室120とをインク供給室175で隔てるように設けられている。即ち、インク供給室175は、インク室170との連通を連通孔182のみで行い、バルブ収容室120との連通を連通孔181のみで行う。したがって、インク供給口210が開放されると、インク室170に収容されたインクが、凹陥部117から連通路182を通ってインク供給室175に流入し、インク供給室175から連通孔181を通ってバルブ収容室120に流入する(図6(c)の矢印54)。そして、バルブ収容室120からインク供給口210を通って外部へインクが流出される(図6(c)の矢印55)。
次に、図6(c)及び図6(d)を参照して、インク供給口210が開放されたときのインク流路、つまり、インク室170からバルブ収容室120へのインク流路(図6(c)の矢印54)について説明する。
図6(c)に示されるように、インク室170に収容されたインクの液面60が凹陥部117より上方で、且つ、連通孔181及びインク供給口210より下方に位置する場合は、図示されるように、凹部空間119がインクで満たされている。上述したように、連通孔182は、凹部空間119内に配置されているため、記録装置に対するインクカートリッジ10の装着姿勢において、連通孔182に空気や気泡が入り込むことはない。したがって、この場合は、たとえインク液面60が連通孔181及びインク供給口210より下方に位置していたとしても、インク室170内のインクは、凹陥部117から連通孔182、インク供給室175、連通孔181、バルブ収容室120、そしてインク供給口120を通るインク流路(図6(c)の矢印54,55)で外部へ流出する。
なお、本実施形態では、バルブ収容室120は5に示されるように略円筒状に形成されている。連通孔181に逆止弁190が装着され、バルブ収容室120内にインク供給バルブ200が収容される。そのため、本体100の底面104を略フラットにしたままの状態で、連通孔181をインク室170の底面171に近づけて配置するのに限界がある。隔壁117を設けない構成では、連通孔181よりインクの液面60が下がると、連通孔181から空気が入り込むため、インクの供給ができなくなり、インク室170内に消費できないインクが残ることになる。しかし、隔壁117を設けることで、連通孔182を連通孔181やインク供給口210より下方で、しかも底面171の近傍に配置することが可能になる。これにより、インクの液面60が連通孔182より下がるまでインクを供給することができるので、インクの消費効率が向上する。
また、本実施形態では、連通孔182の断面が矩形状(四角形状)に形成されているため、矢印54で示されるインク流路を通ってインクが流通する際に、インク中の気泡が凹部空間119から連通孔182に到達したとしても、連通孔182の4つのコーナー部分に気泡が接触しない部分が形成される。そのため、気泡によって連通孔182が完全に閉塞されることがないため、常に、矢印54で示されるインク流路を確保することができる。
次に、図7を参照して、連通孔182が右側面106側のフィルム160に隣接して設けられることによる作用効果について説明する。なお、ここでは、例えば、保守点検等を理由に、記録装置から取り外されたインクカートリッジ10を例にとって説明する。この場合、インク室170には略半分程度のインクが収容されているものとする。
図7(a)に示されるように、左側面105を下にしてインクカートリッジ10を横置きにした場合は、インクの液面60は、概ね、幅方向(矢印51の方向)の中央付近に位置する。図示されるように、連通孔182は、右側面106側のフィルム160に隣接しており、インクの液面60からは十分に離されている。したがって、液面60付近で漂う気泡63が連通孔182に入り込むことはない。また、液面60の揺れなどによって連通孔182におけるインクのメニスカスが破られることもない。
また、図7(b)に示されるように、右側面106を下にしてインクカートリッジ10を横置きにした場合は、連通孔182は、インク層の底面に位置する。そのため、インクの液面60付近で漂う気泡が連通孔182に入り込むことはない。また、連通孔182はインク中にあるため、ダイレクトに空気が入り込むこともない。
このように連通孔182が配置されているため、いずれの側面105,106を下にしてインクカートリッジ10を横置きにしても、インク室170の空気がインク供給室172に入り込むことはない。
上述の実施形態では、連通孔182の断面形状を矩形状に形成することとしたが、例えば、連通孔182の断面形状を三角形状に形成してもよい。この場合、隔壁117に三角形状の切り欠きを形成して、この切り欠きとフィルム160とによって連通孔182を形成することが可能のである。もちろん、連通孔182の断面形状は、矩形状や三角形状に限られず、五角形状、或いはそれ以上の角を有する多角形状に形成してもかまわない。また、多角形状に限られず、連通孔182の断面形状が楕円などの非円形状であってもよい。このような形状に連通孔182の断面が形成されていても、連通孔182が気泡によって完全に閉塞されない。
また、上述の実施形態では、連通孔182を右側面106のフィルム160に隣接して設けたが、左側面105のフィルム160に隣接して設けてもよい。また、フィルム160に隣接させることなく、連通孔182を左側面105或いは右側面106のいずれかの近傍に配設してもよい。この場合も、インク室170からインク供給室172への空気の進入が防止される。
なお、上述した実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更することが可能である。