JP5167023B2 - 舶用推進機 - Google Patents

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Description

この発明は、舶用推進機に関し、特に、ベーパセパレータタンクと吸気系とを接続するベーパ逃し経路の途中に設けられたバルブを備えた舶用推進機に関する。
従来、ベーパセパレータタンクと吸気系とを接続するベーパ逃し経路の途中に設けられたバルブを備えた船外機(舶用推進機)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1の船外機では、エンジンの停止中にはバルブを閉じ、エンジンの始動時にバルブを徐々に開くようにバルブがエンジンコントロールユニットにより制御されるように構成されている。これにより、運転時においては、温度が上昇したベーパセパレータタンク内で発生する燃料の蒸気(ベーパ)が吸気系に逃されるので、ベーパを燃焼させることが可能であるとともに、エンジンの停止時には、ベーパが外部に放出されるのを抑制することが可能である。
特開2005−042706号公報
しかしながら、上記のように、エンジンの停止中にはバルブを閉じ、エンジンの始動時にバルブを徐々に開く場合には、以下のような問題点がある。すなわち、船舶の運転後にエンジンを停止し、エンジンの温度が高い状態で再度エンジンを始動して運転を行う場合には、エンジンの停止時において、高温のエンジンの輻射熱を受けてベーパセパレータタンク内の燃料の温度が上昇し、ベーパセパレータタンク内でベーパが発生する。この状態でエンジンを始動した場合に、バルブを速く開き過ぎた場合には、ベーパセパレータタンク内のベーパがベーパ逃し経路および吸気系を介して一度にエンジンに吸入されてしまうので、エンジンにおける空気と燃料との混合気の空燃比が燃料リッチの状態となり、その結果、エンジンがストール(いわゆるエンスト)してしまうという問題点がある。また、バルブを速く開き過ぎた場合には、ベーパセパレータタンク内の圧力が急激に低下するので、ベーパセパレータタンク内の燃料が減圧沸騰により泡立ってしまう。この場合には、燃料噴射装置に燃料を輸送するポンプ部が燃料の泡を吸ってしまうので、ポンプ部が正常に作動しなくなり、これによっても、エンジンがストールしてしまうという問題点がある。また、バルブを遅く開き過ぎた場合には、ベーパによるベーパセパレータタンク内の圧力が下がらないので、ベーパセパレータタンク内の圧力が大きいことに起因して、ベーパセパレータタンクに燃料を新たに輸送することが困難となる。この場合には、運転中にベーパセパレータタンク内の燃料がなくなってしまうので、この場合にも、エンジンがストールしてしまうという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、エンジンの始動時に、エンジンがストールするのを抑制することが可能な舶用推進機を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
この発明の一の局面による舶用推進機は、エンジンと、エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、エンジンに供給する空気の空気通路を含む吸気系と、エンジンに供給される燃料の蒸気を液体の燃料と分離するためのベーパセパレータタンクと、ベーパセパレータタンクから燃料を燃料噴射装置に輸送するポンプ部と、燃料噴射装置とポンプ部とを接続する配管と、ベーパセパレータタンクと吸気系とを接続するベーパ逃し経路の途中に設けられたバルブと、バルブの開度を制御するエンジンコントロールユニットとを備え、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、少なくとも配管内の燃料の圧力に基づいて設定されたバルブの開速度に基づき、バルブの開度を制御するように構成されている。なお、本発明の「エンジンの始動時」とは、エンジンを始動する際および始動した直後のみならず、エンジンを始動した後の通常運転状態に至るまでの期間も含む広い概念である。
この一の局面による舶用推進機では、上記のように、少なくとも配管内の燃料の圧力に基づいて設定されたバルブの開速度に基づきバルブの開度を制御することによって、配管内の燃料の圧力が低下しないようにバルブを開くことができる。これにより、配管内の燃料の圧力が低下することに起因してエンジンがストールしてしまうのを抑制することができる。すなわち、ポンプ部がベーパセパレータタンク内の減圧沸騰により泡立ってしまった燃料を吸うこと(いわゆる、エア噛み)に起因してポンプ部が正常に作動しなくなった場合には、配管内の燃料の圧力が低くなるので、配管内の燃料の圧力に基づいてバルブの開度を設定することによって、エア噛みに起因してエンジンがストールしてしまうのを抑制することができる。また、ベーパセパレータタンク内の燃料がなくなってしまった場合(いわゆる、燃欠の場合)にも、配管内の燃料の圧力が低くなるので、配管内の燃料の圧力に基づいてバルブの開度を設定することによって、燃欠に起因してエンジンがストールしてしまうのを抑制することができる。
上記一の局面による舶用推進機において、好ましくは、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、配管内の燃料の圧力に加えて、エンジンに供給される燃料と空気との混合気の空燃比にも基づいて設定された開速度に基づき、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、バルブの開度が配管内の燃料の圧力に加えて空燃比にも基づいて適切に制御されることにより、エンジンに供給される混合気の空燃比が燃料リッチの状態になり過ぎるのを抑制することができる。これにより、空燃比が燃料リッチの状態になり過ぎることに起因してエンジンがストールするのも抑制することができる。
上記一の局面による舶用推進機において、好ましくは、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、配管内の燃料の圧力に加えて、ベーパセパレータタンク内の燃料の残量にも基づいて設定された開速度に基づき、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、バルブ開度が配管内の燃料の圧力に加えて燃料の残量にも基づいて制御されることにより、配管内の燃料の圧力が低くなっている場合に、ベーパセパレータタンク内の燃料の残量が多い場合には、配管内の燃料の圧力が低くなった原因がエア噛みであると判断することができる。また、配管内の燃料の圧力が低くなっている場合に、ベーパセパレータタンク内の燃料の残量が少ない場合には、配管内の燃料の圧力が低くなった原因が燃欠であると判断することができる。このように、配管内の燃料の圧力が低くなった原因を判断することによって、バルブの開速度をより適切に設定することができるので、エンジンがストールするのをより抑制することができる。
上記一の局面による舶用推進機において、好ましくは、エンジンコントロールユニットは、予め配管内の燃料の圧力に基づいて設定されたバルブの開速度を記憶する記憶部を有しており、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、記憶部に記憶された開速度に基づいて、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、少なくとも配管内の燃料の圧力が低下しないようなバルブの開速度の設定値を実験により求めておき、その設定値に基づいてバルブの開度が制御されるので、センサなどを設けることなく、エンジンがストールしないように容易にバルブの開度を制御することができる。
この場合、好ましくは、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、記憶部に記憶された開速度になるように所定のパルス間隔でバルブを開くようにバルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、バルブの開度の制御を容易に行うことができる。
上記一の局面による舶用推進機において、好ましくは、バルブの開閉に関する値は、バルブの開き具合であり、配管内の燃料の圧力を検出する燃圧センサをさらに備え、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、燃圧センサにより配管内の燃料の圧力を検出するとともに、少なくとも燃圧センサの検出値に基づいて、バルブの開速度を補正することにより、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、配管内の燃料の圧力が低下しないようにリアルタイムでバルブの開度を制御することができる。
上記燃圧センサを備えた構成において、好ましくは、エンジンに供給される燃料と空気との混合気の空燃比を検出する空燃比センサをさらに備え、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、燃圧センサの検出値に加えて、空燃比センサの検出値にも基づいて、バルブの開速度を補正することにより、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、ベーパセパレータタンク内のベーパを吸気系に逃すことに起因して空燃比が燃料リッチの状態になり過ぎないようにリアルタイムでバルブの開度を制御することができる。
上記燃圧センサを備えた構成において、好ましくは、ベーパセパレータタンク内の燃料の残量を検出する残量センサをさらに備え、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、燃圧センサの検出値に加えて、残量センサの検出値にも基づいて、バルブの開速度を補正することにより、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、バルブ開度が配管内の燃料の圧力に加えて燃料の残量にも基づいて制御されることにより、配管内の燃料の圧力が低くなっている場合に、ベーパセパレータタンク内の燃料の残量が多い場合には、配管内の燃料の圧力が低くなった原因がエア噛みであると判断することができる。また、配管内の燃料の圧力が低くなっている場合に、ベーパセパレータタンク内の燃料の残量が少ない場合には、配管内の燃料の圧力が低くなった原因が燃欠であると判断することができる。このように、配管内の燃料の圧力が低くなった原因を判断することによって、バルブの開き具合をより適切に設定することができるので、エンジンがストールするのをより抑制することができる。
上記燃圧センサを備えた構成において、好ましくは、ベーパセパレータタンク内の燃料の温度を検出する燃料温度センサをさらに備え、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、燃料温度センサによりベーパセパレータタンク内の燃料の温度を検出するとともに、ベーパセパレータタンク内の燃料の温度が所定の温度以上の場合に、少なくとも検出された燃圧センサの検出値に基づいて、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、ベーパセパレータタンク内の燃料の温度が高く、ベーパが多く発生している場合に、そのベーパに起因してエンジンがストールしないようにバルブの開度を制御することができる。
上記燃圧センサを備えた構成において、好ましくは、ベーパセパレータタンク内の内圧を検出するベーパセパレータタンク内圧センサをさらに備え、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、ベーパセパレータタンク内圧センサによりベーパセパレータタンク内の内圧を検出するとともに、ベーパセパレータタンク内の内圧が所定の圧力より低い場合に、少なくとも燃圧センサの検出値に基づいて、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、ベーパセパレータタンク内の内圧が低く、ベーパが多く発生している場合に、そのベーパに起因してエンジンがストールしないようにバルブの開度を制御することができる。
上記燃圧センサを備えた構成において、好ましくは、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、所定の時間毎に燃圧センサにより配管内の燃料の圧力を検出するとともに、少なくとも検出された燃圧センサの検出値に基づいて、バルブの開速度を補正することにより、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、舶用推進機の状態に対応した開度になるように、バルブの開度をリアルタイムに設定することができる。
この場合、好ましくは、エンジンの始動時に、エンジンコントロールユニットは、所定の時間毎にバルブの開度を増加させ、または減少させ、または開度を保持させてバルブの開速度を補正することにより、バルブの開度を制御するように構成されている。このように構成すれば、エンジンがストールしないようにバルブの開度をリアルタイムで適切に制御することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による船外機の全体構成を示す側面図である。図2〜図7は、図1に示した船外機のエンジン部の詳細構造を説明するための図である。まず、図1〜図7を参照して、本発明の第1実施形態による船外機1の構造を説明する。
図1に示すように、船外機1は、エンジン部2と、エンジン部2の駆動力により回転され、鉛直方向(Z方向)に延びるドライブ軸3と、ドライブ軸3の下端と接続された前後進切換機構4と、前後進切換機構4と接続され、水平方向に延びるプロペラ軸5と、プロペラ軸5の後端部に取り付けられたプロペラ6とを備えている。また、エンジン部2は、カウリング7内に収納されている。カウリング7の下方に配置されたアッパーケース8およびロアーケース9内には、ドライブ軸3、前後進切換機構4およびプロペラ軸5が収納されている。また、船外機1は船体100の後進方向(矢印A方向)側に設けられた船尾板101にクランプブラケット10を介して取り付けられている。クランプブラケット10は、船外機1をチルト軸10aを中心に船体100に対して上下に揺動可能に支持している。また、船体100には、燃料(ガソリン)を貯留するための燃料タンク102が設けられている。燃料タンク102と船外機1のエンジン部2とは、図示しない燃料管によって接続されており、船外機1のエンジン部2は燃料タンク102から供給される燃料を用いて駆動される。エンジン部2の駆動力によりプロペラ6が回転されるとともに、前後進切換機構4によりプロペラ6の回転方向が切り替えられることにより、船体100は前進方向(矢印B方向)または後進方向(矢印A方向)に推進される。また、カウリング7の後進方向(矢印A方向)側の側部には通気穴7aが設けられており、エンジン部2に供給される空気は通気穴7aを介してカウリング7内のエンジン部2に取り込まれる。
図2〜図6に示すように、エンジン部2は、エンジン本体20と、エンジン本体20に空気を供給するための吸気系30と、エンジン本体20に燃料を供給する燃料系40と、ECU(Engine Control Unit)50(図5および図6参照)とを含んでいる。なお、エンジン本体20およびECU50は、それぞれ、本発明の「エンジン」および「エンジンコントロールユニット」の一例である。
図3に示すように、エンジン本体20は、上下方向(図2のZ方向)に並んだ3つのシリンダ21と、各シリンダ21内を水平方向に往復移動するピストン22とを含んでいる。ピストン22はコンロッド23を介して上下方向(Z方向)に延びるクランク軸24に接続されている。ピストン22の水平方向の往復運動は、コンロッド23およびクランク軸24により回転運動に変換される。クランク軸24の下端部はドライブ軸3(図1参照)と接続されている。また、図2に示すように、クランク軸24の回転は、クランク軸24の上部に固定されたプーリ(図示せず)と、ベルト25と、カム軸26(図3参照)に固定されたプーリ27とによりカム軸26に伝達されるように構成されている。カム軸26の回転により、各シリンダ21の吸気バルブ28aおよび排気バルブ28bが所定のタイミングで駆動される。また、排気バルブ28bから排気された排気ガスは、排気通路29を介して外部に放出される。また、図5に示すように、クランク軸24の近傍にはクランク角センサ24aが取り付けられており、クランク角センサ24aの出力値に基づいて、ECU50はエンジン回転数を算出することが可能である。
図2〜図4に示すように、吸気系30は、エンジン本体20の側方にエンジン本体20の前進方向(矢印B方向)に向かって右側の側部に沿って配置されている。吸気系30は、前進方向(矢印B方向)側に配置されるとともに吸気口31a(図3参照)を有するサイレンサケース31と、サイレンサケース31と接続されたスロットルボディ32と、スロットルボディ32と接続されたサージタンク33と、サージタンク33から延びるとともに、エンジン本体20の3つのシリンダ21の各吸気口にそれぞれ接続される3本の吸気管34とを含んでいる。スロットルボディ32は、サージタンク33およびサイレンサケース31とネジ150を介して連結されている。
図3〜図5に示すように、スロットルボディ32は樹脂または金属により形成されており、円筒状の空気通路32aを有している。この空気通路32aにバタフライ式のスロットルバルブ32bが設けられている。また、図5に示すように、スロットルボディ32には、空気通路32aのスロットルバルブ32bに対して上流側と下流側とを接続するバイパス空気通路32cが一体的に設けられている。このバイパス空気通路32cにより、スロットルバルブ32bの全閉状態におけるアイドリング状態の空気流量が確保される。
図5に示すように、スロットルボディ32の上部には、インジェクタ45の燃料噴射量を制御するための3つのセンサ(スロットル開度センサ35、吸気圧センサ36および吸気温センサ37)と、アイドリング時の空気流量を調整するためのアイドルスピードコントロールユニット38(以下、ISCユニット38)とが取り付けられている。ISCユニット38は、バイパス空気通路32cの途中に配置されており、バイパス空気通路32cを通る空気の流量を制御し、アイドリング時のエンジン回転数を制御するために設けられている。
図2〜図5に示すように、燃料系40は、船体100に配置された燃料タンク102(図1および図5参照)と接続されたフィルタ41と、フィルタ41と接続された低圧燃料ポンプ42と、低圧燃料ポンプ42と接続されたベーパセパレータタンク43と、ベーパセパレータタンク43内の燃料を輸送する高圧燃料ポンプ44(図5参照)と、高圧燃料ポンプ44により輸送された燃料を噴射するインジェクタ45とを含んでいる。高圧燃料ポンプ44とインジェクタ45とは、配管44aおよびデリバリーパイプ44b(図4参照)を介して接続されている。なお、配管44aおよびデリバリーパイプ44bは、本発明の「配管」の一例である。また、高圧燃料ポンプ44およびインジェクタ45は、それぞれ、本発明の「ポンプ部」および「燃料噴射装置」の一例である。
低圧燃料ポンプ42は、燃料タンク102からベーパセパレータタンク43に燃料を輸送する機能を有する。低圧燃料ポンプ42は、クランク軸24の回転と連動して駆動されるメカ駆動式のポンプである。また、低圧燃料ポンプ42により船体100の燃料タンク102から吸い上げられた燃料がフィルタ41を通過することにより燃料に含まれた異物などが取り除かれる。
また、低圧燃料ポンプ42により送り出された燃料はベーパセパレータタンク43に貯留される。図3および図4に示すように、ベーパセパレータタンク43は、平面的に見て、エンジン本体20とサージタンク33および吸気管34との間に配置されている。
ベーパセパレータタンク43は、燃料タンク102から汲み上げられた燃料を貯留するとともに、燃料の蒸気(ベーパ)または空気と、液体の燃料とを分離するために設けられている。図5に示すように、ベーパセパレータタンク43は、ベーパセパレータタンク43内に貯留される燃料が一定の量に保たれるとともに、ベーパセパレータタンク43内の燃料の液面位置が所定の高さ位置に保たれるように構成されている。具体的には、ベーパセパレータタンク43内にニードルバルブ43bを有するフロート(浮き)43aが設けられている。ベーパセパレータタンク43内の燃料の液面位置が所定の高さ以上になった場合には、フロート43aのニードルバルブ43bにより自動的にベーパセパレータタンク43への燃料の流入が停止される。また、ベーパセパレータタンク43内の燃料の液面位置が所定の高さより低くなった場合には、ベーパセパレータタンク43への燃料の流入が自動的に開始される。このような機構によりベーパセパレータタンク43内に貯留される燃料が一定の量に保たれるとともに、ベーパセパレータタンク43内の燃料の液面位置が所定の高さに保たれるように構成されている。
高圧燃料ポンプ44は、ベーパセパレータタンク43内に配置されており、所定の圧力の燃料をインジェクタ45に輸送する機能を有する。インジェクタ45は、高圧燃料ポンプ44により所定の圧力で送り出された燃料をシリンダ21(図3参照)の吸気口の近傍に所定のタイミングで噴射する機能を有する。また、高圧燃料ポンプ44からインジェクタ45に輸送された燃料の一部は、燃料を冷却する冷却装置(図示せず)を介してベーパセパレータタンク43に戻されるように構成されている。
また、図2、図4および図5に示すように、ベーパセパレータタンク43の上部は、配管46aおよび配管46bを介してスロットルボディ32と接続されている。これにより、ベーパセパレータタンク43のベーパがスロットルボディ32の空気通路32aに逃がされるように構成されている。配管46aと配管46bとの間にはベーパシャットバルブ47(以下、VSV47)が設けられており、VSV47を制御することにより、ベーパを逃がすタイミングを制御することが可能である。なお、配管46aおよび配管46bは、本発明の「ベーパ逃し経路」の一例である。第1実施形態では、VSV47の開度は、ステッピングモータ(図示せず)により細かく制御することが可能に構成されている。
また、図5および図6に示すように、ECU50は、高圧燃料ポンプ44、インジェクタ45、VSV47およびISCユニット38を電気的に制御している。インジェクタ45の燃料噴射量は、スロットルボディ32に取り付けられたスロットル開度センサ35、吸気温センサ37および吸気圧センサ36の検出結果に基づいて制御されている。ここで、第1実施形態では、ECU50は、エンジン部2の停止時にはVSV47を閉じるとともに、エンジン部2を始動した場合には、VSV47を徐々に一定速度で開くようにVSV47を制御するように構成されている。具体的には、ECU50は、記憶部51(図6参照)を有しており、記憶部51にエンジン部2の始動時にVSV47を開く速度の設定値が記憶されている。この設定値は、予め行った実験により、VSV47を開く際にエンジン回転数が低下しないようなVSV47の開速度を求めて設定されている。また、記憶部51には、通常運転時(エンジン部2の始動時以外の時)のVSV47の開度を制御するためのマップ(図7参照)が記憶されている。ECU50は、通常運転時には、図7のマップと、吸気圧センサ36の検出値と、エンジン回転数とに基づいて、VSV47の開度を制御するように構成されている。
図8には、エンジン部2の再始動時(運転後にエンジン部2を停止し、エンジン部2の温度が高い状態で始動する時)にアクセルを全開にした場合において、VSV47の開度と、エンジン回転数、低圧燃料ポンプ42の吐出圧、ベーパセパレータタンク43内の温度およびベーパセパレータタンク43の内圧との関係を示している。次に、図8を参照して、本発明の第1実施形態による船外機1のエンジン始動時のVSV47の制御について説明する。なお、アクセルを全開にしているのは、エンジン部2を始動してすぐに船舶を運転する場合を想定している。
図8に示すように、エンジン部2が停止している際には、燃料の冷却装置(図示せず)が作動しないとともに、ベーパセパレータタンク43は高熱のエンジン本体20からの輻射熱を受けるので、ベーパセパレータタンク43内の温度は高温となっている。これに伴い、ベーパセパレータタンク43内の燃料が蒸発し、ベーパセパレータタンク43内にベーパ(燃料の蒸気)が発生している。エンジン部2の停止中にはVSV47は閉じているので、発生したベーパによってベーパセパレータタンク43内の圧力は高くなっている。この状態において、エンジン部2を始動してアクセルを全開にすると、エンジン回転数は所定の回転数まで上昇した後、その回転数が保たれる。また、エンジン部2の駆動と連動して駆動される低圧燃料ポンプ42の吐出圧は、エンジン回転数の上昇とともに上昇し、その後、一定の吐出圧が保たれる。始動直後においては、ベーパセパレータタンク43の内圧が低圧燃料ポンプ42の吐出圧よりも大きいので、ベーパセパレータタンク43に新たな燃料は供給されない。
ここで、第1実施形態では、エンジン部2を始動した後、VSV47は、記憶部51に記憶された設定値に基づいて一定速度で開かれる。VSV47が開かれるのに伴い、ベーパセパレータタンク43内のベーパが配管46aおよび46bを介して吸気系30に逃される。これにより、ベーパセパレータタンク43の内圧が徐々に減少していく。時間T1後にはベーパセパレータタンク43の内圧よりも低圧燃料ポンプ42の吐出圧が大きくなるので、ベーパセパレータタンク43に新たな燃料が供給されるようになる。また、エンジン部2の始動後には燃料の冷却装置が駆動されるので、ベーパセパレータタンク43内の燃料の温度も下降し、ベーパセパレータタンク43内におけるベーパの発生が少なくなっていく。この後、通常運転状態に移行していく。
第1実施形態では、VSV47を開く速度が適正な値に設定されているので、エンジン部2の始動時にエンジン回転数の低下およびエンジン部2のストールの発生が抑制されている。
図9〜図14は、本発明の第1実施形態による船外機のVSVを開く速度を設定するための設定方法を説明するための図である。次に、図9〜図14を参照して、本発明の第1実施形態による船外機1のVSV47を開く速度を設定するための設定方法を説明する。
第1実施形態による船外機1に設定されるVSV47の開速度を設定するために、第1実施形態による船外機1と同様の構成を有する船外機1aを用いて実験を行う。図9および図10に示すように、船外機1aには、ベーパセパレータタンク43内の燃料の残量を検出する残量センサ61と、ベーパセパレータタンク43内の燃料の温度を検出する燃料温度センサ62と、高圧燃料ポンプ44からインジェクタ45に供給される燃料の圧力(燃圧)を検出する燃圧センサ63と、エンジン本体20のシリンダ21に供給された空気と燃料との混合気の空燃比(Air/Fuel)を検出するA/Fセンサ64(図9参照)と、ベーパセパレータタンク43の内圧を検出するVST内圧センサ65とが取り付けられている。なお、A/Fセンサ64は、本発明の「空燃比センサ」の一例である。残量センサ61としては、電気抵抗の変化を利用してフロート43aの動きを検出するセンサ、磁気を利用してフロート43aの位置を検出するセンサ、または、液面位置を超音波を用いて検出するセンサなどが用いられる。
船外機1aを用いて以下のように実験を行っていく。すなわち、船外機1aを運転し、エンジン部2の温度が高温となった状態でエンジン部2を停止させる。そして、エンジン部2を再始動するとともに、図11のステップS1において、暫定的な設定値の開速度でVSV47を開くように制御する。そして、各センサ(残量センサ61、燃料温度センサ62、燃圧センサ63、A/Fセンサ64およびVST内圧センサ65)の出力値の時間の経過に伴う変動を記録する。
そして、記録した出力値を参照して、燃圧またはA/Fに異常があるか否かを判定する。具体的には、まず、ステップS2において、燃料温度センサ62の出力に基づいて、エンジン部2の始動時のベーパセパレータタンク43内の燃料の温度が所定の温度以上か否かが判断される。ここで、所定の温度は、たとえば、燃料が沸騰してベーパが発生する温度である約45℃である。ベーパセパレータタンク43内の燃料の温度が所定の温度以上の場合には、ベーパセパレータタンク43内でベーパが発生しており、エンジン部2のストールの原因となるので、ステップS3に進む。また、ベーパセパレータタンク43内の燃料の温度が所定の温度より低い場合(エンジン部2が冷えている場合)には、ベーパセパレータタンク43内にあまり多くのベーパが発生しておらず、VSV47の開速度がエンジン部2に与える影響も小さい。このため、エンジン部2が冷えている時のデータはエンジン部2が高温の時のVSV47の開速度を設定するためのデータとしては用いずに、再度実験を行う。
ステップS3において、燃圧センサ63により取得したデータに基づいて、燃圧の低下が生じた部分があったか否かが判断される。燃圧の低下があった場合には、インジェクタ45が適切な量の燃料を噴射することが困難となり、エンジン部2のストールの原因となるので、ステップS4に進んでVSV47の開速度が調整される。なお、燃圧の低下については、燃圧センサ63の出力のみならず、VST内圧センサ65の出力および燃料温度センサ62の出力も総合して判断される。具体的には、ステップS4において、残量センサ61の出力値に基づいて、ベーパセパレータタンク43内の燃料の残量がなくなっているか否かが判断される。燃料の残量が残っている場合には、高圧燃料ポンプ44がいわゆるエア噛みを起こしたと判断される。すなわち、VSV47の開速度が速過ぎた場合には、ベーパセパレータタンク43内のベーパが急速に吸気系に逃される。このため、ベーパセパレータタンク43内の圧力が急激に減少するので、燃料が減圧沸騰により泡立ってしまう。この泡を高圧燃料ポンプ44が吸ってしまった場合には、高圧燃料ポンプ44が正常に燃料を輸送することが困難となるので、ステップS3における燃圧の減少が生ずる。図12にVSV47の開速度が速過ぎた場合の実際の取得データのグラフを示す。図12では、VSV47のステッピングモータに入力するパルスの間隔t1を3secとしている。図12のグラフでは、矢印Pで示す部分に燃圧の低下が認められる。図12では、エンジン回転数の低下は認められないが、燃圧が大きく低下した場合には、エンジン回転数の低下およびエンジン部2のストールの発生に繋がる。
したがって、ステップS4において燃料の残量が残っている場合には、VSV47の開速度が速過ぎたと判断されて、ステップS5において、ステッピングモータに入力するパルス間隔を大きくすることによりVSV47の開速度を遅くする。この後、ステップS1に戻り、遅くしたVSV47の開速度で上記と同様の実験が行われる。
また、ステップS4においてベーパセパレータタンク43内の燃料の残量がなくなっていると判断された場合には、いわゆる燃欠を起こしたと判断される。すなわち、VSV47の開速度が遅すぎた場合には、ベーパセパレータタンク43からベーパが逃げるのに時間がかかるので、エンジン部2を始動してから低圧燃料ポンプ42の吐出圧がベーパセパレータタンク43の内圧よりも大きくなるまでの時間(図8のT1)が長くなってしまう。エンジン部2を始動してから時間T1が経過するまでは、ベーパセパレータタンク43に新たな燃料が供給されないので、時間T1が経過するまでにベーパセパレータタンク43内の燃料を消費してしまった場合には燃欠となる。燃欠の場合にも、高圧燃料ポンプ44が正常に燃料を輸送することが困難となるので、ステップS3における燃圧の減少が生ずる。図13にVSV47の開速度が遅過ぎた場合の実際の取得データのグラフを示す。図13では、VSV47のステッピングモータに入力するパルスの間隔t2を7.5secとしている。図13のグラフでは、矢印Qで示す部分に燃圧およびエンジン回転数の低下が認められる。
したがって、ステップS4において燃料の残量が残っていない場合にはVSV47の開速度が遅過ぎたと判断されて、ステップS6において、ステッピングモータに入力するパルス間隔を小さくすることによりVSV47の開速度を速くする。この後、ステップS1に戻り、速くしたVSV47の開速度で上記と同様の実験が行われる。
また、ステップS3において燃圧の低下がない場合には、ステップS7において、A/Fセンサ64の出力値に基づいて、空燃比が過度に燃料リッチな状態(オーバーリッチ状態)になっているか否かが判断される。すなわち、VSV47の開く速度が速すぎた場合には、ベーパセパレータタンク43内のベーパが吸気系30に一度に取り込まれてしまい、その結果、空燃比が過度に燃料リッチな状態になる場合がある。この場合には、混合気がうまく燃焼されないので、エンジン部2のストールの原因となる。ステップS7において、空燃比が過度に燃料リッチな状態になっていない場合には、ステップS1のVSV47の開速度を設定値として決定して、VSV47の開速度設定を終了する。
また、ステップS7において、空燃比が過度に燃料リッチな状態になっている場合には、VSV47の開速度が速すぎるので、ステップS8において、VSV47の開速度を遅くする。この後、ステップS1に戻り、遅くしたVSV47の開速度で上記と同様の実験が行われる。
このように、上記ステップS1〜ステップS8を繰り返すことにより、エンジン部2の始動時にエンジン部2のストールが生じないようなVSV47の開速度を決定することが可能である。図14にVSV47の開速度を適正な値に調整した場合の実際の取得データのグラフを示す。図14では、VSV47のステッピングモータに入力するパルスの間隔t3を5secとしている。図14のグラフでは、燃圧およびエンジン回転数の低下は認められないので、図12(速い開速度)および図13(遅い開速度)の場合と異なり、エンジン始動時にエンジン部2のストールの発生が抑制される。なお、この説明では、t1、t2およびt3をそれぞれ3sec、7.5secおよび5secとした場合のグラフを示したが、これらの数値は参考数値であり、測定環境や使用する装置によって最適値は異なるものである。
なお、エンジン部2を始動してからアクセルを全開にして行った実験により取得したデータに基づいてVSV47の開速度を決定したが、これは以下の理由によるものである。すなわち、アクセルを全開にした場合に最もエンジン部2に負荷がかかり、燃圧の低下およびエンジンストールなどが生じやすいので、アクセルを全開にして行った実験結果に基づいてVSV47の開速度を決定すれば、アクセルを全開にしない場合にもエンジンストールは生じないと考えられるためである。
第1実施形態では、上記のように、配管44a内の燃料の圧力(燃圧)に基づいて設定された開速度になるようにVSV47の開度を制御することによって、配管44a内の燃料の圧力が低下しないようにVSV47を開くことができる。これにより、配管44a内の燃料の圧力が低下することに起因してエンジン部2がストールしてしまうのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、エンジン部2の始動時に、燃圧に加えて、エンジン部2に供給される燃料と空気との混合気の空燃比にも基づいて設定された開速度になるように、VSV47の開度を制御することによって、エンジン部2に供給される混合気の空燃比が燃料リッチな状態になり過ぎるのを抑制することができる。これにより、空燃比が燃料リッチな状態になり過ぎることに起因してエンジン部2がストールするのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、エンジン部2の始動時に、燃圧に加えて、ベーパセパレータタンク43内の燃料の残量にも基づいて設定された開速度になるようにVSV47の開度を制御することによって、配管44a内の燃料の圧力が低くなっている場合に、ベーパセパレータタンク43内の燃料の残量が多い場合には、配管44a内の燃料の圧力が低くなった原因がエア噛みであると判断することができる。また、配管44a内の燃料の圧力が低くなっている場合に、ベーパセパレータタンク43内の燃料の残量が少ない場合には、配管44a内の燃料の圧力が低くなった原因が燃欠であると判断することができる。配管44a内の燃料の圧力が低くなった原因を判断することによって、VSV47の開速度をより適切に設定することができるので、エンジン部2がストールするのをより抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、エンジン部2の始動時に、記憶部51に記憶された設定値に基づいて、VSV47の開度を制御することによって、少なくとも配管44a内の燃料の圧力が低下しないようなVSV47の開度の設定値を実験により求めておき、その設定値に基づいてVSV47の開度が制御されるので、センサなどを設けることなく、エンジン部2がストールしないように容易にVSV47の開度を制御することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、一定の速度でVSV47を開くようにVSV47の開度を制御することによって、VSV47の開度の制御を容易に行うことができる。
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態による船外機のエンジン始動時のVSVの制御を説明するためのフローチャートである。図16は、本発明の第2実施形態による船外機のエンジン始動時のVSVの開度の遷移を説明するためのグラフである。次に、図7、図15および図16を参照して、この第2実施形態では、予め記憶された開速度の設定値に基づいてVSV47の開度を制御した上記第1実施形態と異なり、センサの出力に基づいてリアルタイムでVSV47の開速度を補正することによりVSV47の開度を制御する例について説明する。なお、第2実施形態による船外機の機械的な構造は、図9および図10に示した船外機1aの構造と同様であるので、詳細な説明を省略する。
第2実施形態による船外機では、エンジン始動時に、まず、ステップS11において、燃料温度センサ62の出力値に基づいて、ベーパセパレータタンク43内の燃料の温度が高温(45℃以上)か否かが判断される。燃料の温度が高温でない場合には、ステップS12において、図7に示したマップと、エンジン回転数および吸気圧センサ36の出力値に基づいてVSV47の開度が制御される。ステップS11において燃料の温度が高温である場合には、ステップS13において、VST内圧センサ65、燃料温度センサ62および燃圧センサ63の出力値に基づいて、燃圧が低下しているか否かが判断される。なお、VST内圧センサ65は、本発明の「ベーパセパレータタンク内圧センサ」の一例である。
ステップS13において、燃圧が低下していると判断された場合には、ステップS14において、残量センサ61の出力値に基づいて、ベーパセパレータタンク43内の燃料の残量があるか否かが判断される。燃料の残量がない場合には、燃欠であり、ベーパセパレータタンク43内のベーパを速く逃す必要があるので、ステップS15において、図16の矢印R1で示すように、VSV47を1ステップ分開く。この後、ステップS11に戻る。
また、ステップS14においてベーパセパレータタンク43内の燃料の残量があると判断された場合には、いわゆるエア噛みであり、減圧沸騰に起因する泡立ちの発生を抑制する必要があるので、ステップS16において、図16の矢印R2で示すように、VSV47を1ステップ分閉じる。この後、ステップS11に戻る。
ステップS13において燃圧の低下がないと判断された場合には、ステップS17において、A/Fセンサ64の出力値に基づいて、空燃比が過度に大きくなっているか否かが判断される。空燃比が過度に大きくなっている場合には、VSV47を開き過ぎであるので、ステップS18において、VSV47を1ステップ分閉じる。また、空燃比が過度に大きくなっていない場合には、VSV47の開度が適正であるので、ステップS19において、図16の矢印R3で示すように、VSV47の開度がそのまま保たれる。第2実施形態では、上記ステップS11〜ステップS19が所定の時間毎に繰り返されることにより、VSV47の開度を増加させ、または減少させ、または開度を保持させてVSV47の開速度が所定の時間毎に補正される。これにより、VSV47の開度がリアルタイムで制御される。
第2実施形態では、エンジン部2の始動時に、所定の時間毎に燃圧センサ63により配管44a内の燃料の圧力を検出するとともに、燃圧センサ63の検出値に基づいてVSV47の開度を制御することによって、船外機の状態に対応した開度になるように、VSV47の開度をリアルタイムに設定することができる。
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態では、エンジンの始動時に一定の開速度でVSV47を開くように制御する例を示したが、本発明はこれに限らず、VSV47を開く速度は一定でなくてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、本発明を船外機1に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、船内機または船内外機に適用してもよい。
また、上記第1実施形態では、VSV47の開速度の設定値を決定するための実験を人が行った例を示したが、本発明はこれに限らず、VSV47の開速度の設定値を決定するための実験を行うためのプログラムを組んで自動的に設定値を決定してもよい。
本発明の第1実施形態による船外機の全体構成を示す側面図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のエンジン部を示す斜視図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のエンジン部を示す平面図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のエンジン部を示す側面図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機を示すシステム図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機を示すブロック図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機の通常運転時のバルブ開度を制御するためのマップである。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のエンジン始動時のバルブ開度および船外機の状態を説明するためのグラフである。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のバルブ開速度の設定値を決定するための実験に用いられる船外機を示す平面図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のバルブ開速度の設定値を決定するための実験に用いられる船外機を示すシステム図である。 図1に示した本発明の第1実施形態による船外機のバルブ開速度の設定値の決定手順を説明するためのフローチャートである。 本発明の第1実施形態による船外機のバルブ開速度の設定値の決定手順において、バルブの開速度が速過ぎる場合の船外機の状態を示すグラフである。 本発明の第1実施形態による船外機のバルブ開速度の設定値の決定手順において、バルブの開速度が遅過ぎる場合の船外機の状態を示すグラフである。 本発明の第1実施形態による船外機のバルブ開速度の設定値の決定手順において、バルブの開速度が適正な場合の船外機の状態を示すグラフである。 本発明の第2実施形態による船外機のバルブ開度の制御を説明するためのフローチャートである。 本発明の第2実施形態による船外機のエンジン始動時のバルブ開度の遷移を説明するためのグラフである。
符号の説明
1 船外機(舶用推進機)
1a 船外機(舶用推進機)
2 エンジン部(エンジン)
20 エンジン本体(エンジン)
30 吸気系
43 ベーパセパレータタンク
44 高圧燃料ポンプ(ポンプ部)
45 インジェクタ(燃料噴射装置)
46a 配管(ベーパ逃し経路)
46b 配管(ベーパ逃し経路)
47 VSV(バルブ)
50 ECU(エンジンコントロールユニット)
51 記憶部
61 残量センサ(残量検知センサ)
62 燃料温度センサ
63 燃圧センサ
64 A/Fセンサ(空燃比センサ)

Claims (12)

  1. エンジンと、
    前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、
    前記エンジンに供給する空気の空気通路を含む吸気系と、
    前記エンジンに供給される燃料の蒸気を液体の燃料と分離するためのベーパセパレータタンクと、
    前記ベーパセパレータタンクから燃料を燃料噴射装置に輸送するポンプ部と、
    前記燃料噴射装置と前記ポンプ部とを接続する配管と、
    前記ベーパセパレータタンクと前記吸気系とを接続するベーパ逃し経路の途中に設けられたバルブと、
    前記バルブの開度を制御するエンジンコントロールユニットとを備え、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、少なくとも前記配管内の燃料の圧力に基づいて設定された前記バルブの開速度に基づき、前記バルブの開度を制御するように構成されている、舶用推進機。
  2. 前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記配管内の燃料の圧力に加えて、前記エンジンに供給される燃料と空気との混合気の空燃比にも基づいて設定された開速度に基づき、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項1に記載の舶用推進機。
  3. 前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記配管内の燃料の圧力に加えて、前記ベーパセパレータタンク内の燃料の残量にも基づいて設定された開速度に基づき、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項1または2に記載の舶用推進機。
  4. 前記エンジンコントロールユニットは、予め前記配管内の燃料の圧力に基づいて設定された前記バルブの開速度を記憶する記憶部を有しており、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記記憶部に記憶された前記開速度に基づいて、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の舶用推進機。
  5. 前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記記憶部に記憶された前記開速度になるように所定のパルス間隔で前記バルブを開くように前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項4に記載の舶用推進機。
  6. 前記配管内の燃料の圧力を検出する燃圧センサをさらに備え、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記燃圧センサにより前記配管内の燃料の圧力を検出するとともに、少なくとも前記燃圧センサの検出値に基づいて、前記バルブの開速度を補正することにより、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の舶用推進機。
  7. 前記エンジンに供給される燃料と空気との混合気の空燃比を検出する空燃比センサをさらに備え、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記燃圧センサの検出値に加えて、前記空燃比センサの検出値にも基づいて、前記バルブの開速度を補正することにより、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項6に記載の舶用推進機。
  8. 前記ベーパセパレータタンク内の燃料の残量を検出する残量センサをさらに備え、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記燃圧センサの検出値に加えて、前記残量センサの検出値にも基づいて、前記バルブの開速度を補正することにより、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項6または7に記載の舶用推進機。
  9. 前記ベーパセパレータタンク内の燃料の温度を検出する燃料温度センサをさらに備え、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記燃料温度センサにより前記ベーパセパレータタンク内の燃料の温度を検出するとともに、前記ベーパセパレータタンク内の燃料の温度が所定の温度以上の場合に、少なくとも前記燃圧センサの検出値に基づいて、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の舶用推進機。
  10. 前記ベーパセパレータタンク内の内圧を検出するベーパセパレータタンク内圧センサをさらに備え、
    前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、前記ベーパセパレータタンク内圧センサにより前記ベーパセパレータタンク内の内圧を検出するとともに、前記ベーパセパレータタンク内の内圧が所定の圧力より低い場合に、少なくとも前記燃圧センサの検出値に基づいて、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の舶用推進機。
  11. 前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、所定の時間毎に前記燃圧センサにより前記配管内の燃料の圧力を検出するとともに、少なくとも前記燃圧センサの検出値に基づいて、前記バルブの開速度を補正することにより、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項6〜10のいずれか1項に記載の舶用推進機。
  12. 前記エンジンの始動時に、前記エンジンコントロールユニットは、所定の時間毎に前記バルブの開度を増加させ、または減少させ、または開度を保持させて前記バルブの開速度を補正することにより、前記バルブの開度を制御するように構成されている、請求項11に記載の舶用推進機。
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