台所に設置されるシステムキッチン50は、図10に示すように、流し台キャビネット51と、これに互いに隣接して設置されるコンロ用キャビネット52と、それらを被覆する1枚の天板53とを備えている。このシステムキッチン50においては、天板53のうち流し台キャビネット51を被覆する流し台領域Aにはシンク54が形成されており、このシンク54に対して水栓61から湯水が供給されることになる。コンロ用キャビネット52を被覆するコンロ領域Bの前面部寄りには長方形の開口部56が切り抜かれて、その開口部56から1台のコンロ55がコンロ用キャビネット52上に落とし込まれている。また、この流し台領域Aと、コンロ領域Bの中間には、調理台ユニット領域Cが形成され、ユーザは、かかる調理台ユニット領域Cの上面に貼り渡されている天板53上において食物を調理し、或いは調理に必要な器具や食器等を載置する。
ここで一般的にシステムキッチンとは、収納用の各種フロアキャビネットを併設し、該フロアキャビネット上にはワークトップを有し、必要によってシンクあるいは加熱調理機器を配した、モジュール化されコーディネートされた組み合わせ型キッチンであり、広義には、間仕切り収納キャビネットやダイニングカウンターを含む。これらワークトップ又はカウンターを総称して、以下天板という。
図11は、かかるコンロ領域B並びに調理台ユニット領域Cにおける使用例を示している。
この図11に示す例において、先ずコンロ領域Bでは、コンロ55本体を構成する本体ケース81が天板上から落とし込み状態に固定装着されている。このコンロ55本体には、複数のガスバーナ84が配設されており、上面に設けられたカバー83には、該各ガスバーナ84が臨むバーナ用開口部85が開設されている。さらに、前記バーナ用開口部85上方には五徳86が配設され、バーナの炎や、炎により生じた熱気が五徳86の爪部に載置された調理鍋74等の底面に沿って五徳86の外側に放出されるようになっている。即ち、ガスバーナ84を燃焼させることにより、前記五徳86に載置した調理鍋74内の食材等を加熱調理することが可能となる。
また、調理台ユニット領域Cでは、実際に食物を切り刻み、加工するためのまな板91や、洗浄した食器類を乾燥させるためのステンレス製の食器篭92等が載置される。さらには、トースター65,ジューサー69,炊飯器71等のような実際の調理に必要な調理用機器等が所狭しと配置されることになる。これら各調理用機器は、コンセント61やプラグ67を介して電源が供給される。
これらトースター65やジューサー69、炊飯器71等の各種調理用機器の代替として、例えば泡立て器や食器洗い機等の各種調理用機器をこの調理台ユニット領域Cに配置する場合もあり、同じくコンセント61からの電源を供給することになる。
ところで、数多くのレシピが研究されつつある中、和洋東西多彩を極めた多岐にわたる調理が家庭においても実現可能となった昨今において、多くの調理用機器を同時に動作させる必要性も高まっている。
しかしながら、上述の如き従来のシステムキッチンにおいて多くの調理用機器を同時に動作させるためには、面積が限定された調理台ユニット領域Cにおいて、多くの調理用機器を配置しなければならない。このため、食器籠92を含め他の食器を置くスペースや、まな板91を使用して食物を加工するためのスペースが必然的に小さくなる。また、調理台ユニット領域Cに隣接するコンロ領域Bにおいてもガスコンロを利用して調理鍋に入れた食物等を同時に煮たりする場合もあるが、かかるガスコンロからの熱が調理台ユニット領域C上に置いてある調理用機器に伝熱することもあるため、かかる調理用機器の配置箇所において更なる制約がかかる。
一方、多くのガスコンロを用いて一度に多くの食物等を同時に煮炊きする場合には、ガスコンロを増設する必要があるところ、上述のガスコンロ領域Bにおける天板上の占有率を高く設定するとともに調理台ユニット領域Cの占有率を低く設定したい場合もある。また、図11に示す既存のシステムキッチンにおいては、本体ケースが天板上から落とし込み状態に固定装着されるものであり、ガスコンロを増設し、ガスコンロ領域を大幅に移動させることはできなかった。
従って、調理台ユニット領域Cやコンロ領域Bの天板上における占有比率をユーザの意思に応じて可変とすることにより、かかる調理をより効率的に実現ことが望まれている。
特にこのような要請に応えるためには、ガスコンロの配置の自由度をいかにして向上させるかが最重要課題となる。かかる課題を解決すべく、電磁誘導を利用して加熱調理する誘導加熱機器を上記ガスコンロの代替として用いる手法が従来において提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に示される誘導加熱機器100は、例えば図12に示すように、調理鍋等に代表される負荷部98とこの負荷部98を誘導加熱する磁気発生部99とを備え、この磁気発生部99は、上記負荷部98を載置するためのトッププレート103と、トッププレート103の下部に設けられ、上記誘導加熱を実行するための高周波磁界を発生する一次コイル104とこの一次コイル104を駆動するインバータ107とを備え、このインバータ107には電源コード109を介して電源が供給されることになる。
ユーザは、この磁気発生部99を天板上の任意の位置に配置することができるため、調理台ユニット領域Cとコンロ領域Bとを区別することなく、誘導加熱機器100と調理用機器との間で自由な配置のバリエーションを楽しむことが可能となる。
特開平5−184471号公報
特開2006−230516号公報
特開2006−230517号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態として、飲食店や家庭等において食物を調理する際に適用されるシステムキッチンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したシステムキッチン1は、少なくともワークトップ又はカウンター(以下、これらを天板という)を有するシステムキッチンであって、図1に示すように、キャビネット11と、このキャビネット11における上面を被覆する天板13と、この天板13に隣接する流し台領域Aにおいて形成されたシンク14と、シンク14に対して湯水を供給するための水栓15とを備えている。以下では、システムキッチン1を、キッチンの作業台を壁面から分離し、島(Island)型に設けたいわゆるアイランドキッチンとして適用する場合について説明をするが、かかる場合に限定されるものではなく、シンク、コンロのある作業台を1列に並べたいわゆる1列型キッチン、或いはシンク、コンロをL字型に並べたいわゆるL型キッチンとして適用するようにしてもよい。
キャビネット11は、例えば前面側に片開き可能に軸着されている図示しない扉や収納用引出を設けてもよく、これら各扉や収納用引出内には、主として台所用具や食器等を収納可能な棚やケース等を設けるようにしてもよい。
シンク14には、水切り用の凹み部等が形成されており、底面には排水口が設けられている。このシンク14において、凹み部並びに排水口は、プレス成形や注型成形、インジェクション成形等の方法により互いに一体に成形されている。シンク14の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性のある樹脂やステンレス鋼板等の金属を用いることも可能である。
天板13は、表面が平滑なガラス板で構成されている。その理由として、調理用容器をコイルユニットを介して誘導加熱する構成であることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるからである。この天板13上には、食材等を加熱調理するための調理鍋やポット等に代表される調理用容器や、実際に食材を切り刻み、加工するためのまな板がユーザ任意の位置に載置可能な構成とされている。この天板13は、全ての領域が同素材で構成される場合に限定されるものではなく、後述するコイルユニットを配置する範囲について上述の如きガラス板等で構成されていればよい。
この天板13上には、調理用容器が複数に亘り任意の位置に載置される場合もあるし、まな板以外に、図示しない食器篭や炊飯器、ジューサー等といった各種調理用容器20がそれぞれ任意の位置に載置される場合もある。即ち、この天板13は、調理用容器20が載置される可能性があることから、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性、機械的強度に優れた材料で構成する必要があるところ、通常、耐熱ガラスやセラミックス等で構成される。
ちなみに、本発明を適用したシステムキッチン1では、天板13上に載置された調理用容器20につき、IHヒーターを利用して誘導加熱する。実際にこの誘導加熱は、天板13の下部に配設されたコイルユニット3を介して実行していくことになる。
コイルユニット3は、少なくとも1箇所に亘り移動自在に配置されてなる平板状のベースプレート4に搭載されている。以下では、図1に示すように、天板13の長手方向Xに4列のベースプレート4a〜4dを配列させた場合を例にとり説明をする。このとき、ベースプレート4a〜4cをユーザによる指示に基づいて制御することとし、ベースプレート4dを、天板13上に載置された調理用容器20へ向けて自動的に移動制御するものとする。
また、これらベースプレート4a〜4dは、天板13の幅方向Yに移動自在とされているものとする。なお、天板13上には、これらベースプレート4a〜4cが配列されている箇所に応じたマーキングが描かれていてもよい。
ベースプレート4は、天板13下部における空間19中に配設される。この空間19は、天板13と底板の周囲を後述する側壁で囲むことにより構成される。ちなみに、この空間19は、天板13上において調理用容器20が載置可能な位置に対応させて形成されている。
なお、このコイルユニット3の構成並びに移動機構の構成については、例えば、特開2006−230516号公報に記載の構成を適用するようにしてもよい。
このようにシステムキッチン1においては、コイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)を幅方向Yに移動させることができるため、天板13上の略全ての領域で、鍋等の調理用容器を誘電加熱することができる。即ち、本実施形態のシステムキッチン1は、流し台領域A以外の領域が、従来のコンロ領域及び調理台ユニット領域の両方の機能を兼ね備えた加熱調理領域Dとして機能させることが可能となる。このため、ユーザは、天板13上の任意の位置で加熱調理を行うことができると共に、天板13上の任意の位置でまな板等を載置して調理を行うことができ、更には天板13上の任意の位置に各種調理用機器を載置することができる。
次に、本発明を適用したシステムキッチン1に対して適用される天板ユニット7の構成について説明をする。
図2は、天板ユニット7の分解斜視図を、また図3は、天板ユニット7の組立て斜視図を示している。天板ユニット7は、天板13と、この天板13底面の周囲に亘り設けられる裏当て材171と、裏当て材171が設けられた天板13底面におけるその周囲が緩衝材172を介して嵌合される枠体173と、枠体173を支持するための筐体174とを備えている。
裏当て材171は、例えば金属や合成樹脂等の材質で構成され、望ましくは板厚0.4mmの鋼板で構成するようにしてもよい。この裏当て材171は、ガラス製の天板13に対して、ビニル製の弾性粘着テープにより貼着されていてもよいし、その他接着剤等により貼着されていてもよい。裏当て材171は、少なくとも天板13底面の周囲に亘って互いに間隔をおいて複数配置される。また、この裏当て材171は、更にコイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)の移動領域の周囲においても同様に配置されるようにしてもよい。裏当て材171は、矩形状で構成され、その板厚は、0.3〜0.5mmで構成されることが望ましい。その理由として、ガラスの衝撃吸収特性のたわみ(振動)に追従させる必要があるためである。
緩衝材172は、例えば、スポンジやゴム、ポリスチレン、発泡剤等の材質で構成される。この緩衝材172は枠体173と天板13との間に介装されるものであり、枠体173の形状に応じて予め裁断され、その枠体173上に載置されることになる。
枠体173は、アルミ合金を初めとした金属製で構成され、天板13の周囲のサイズに応じた枠体周囲長を形成している。枠体173は、図4に示すように、周壁部161と、周底板162とを有し、さらに、この周底板162間を架設する架設板163が所定間隔をおいて設けられている。周壁部161は、略鉛直方向に立設されてなり、当該周壁部161の下端が内側へ向けて略水平方向に折り曲げられて周底板162が構成されてなる。
筐体174内部には、コイルユニット3a〜3d(ベースプレート4a〜4d)が内部に配置される。筐体174は、このコイルユニット3a〜3dを内部に配置する必要があるところ、内部に開空間177をしている。この開空間177は、側壁178a〜178dにより周囲を覆うことにより構成される。更に、この開空間177は、ベースプレート4a〜4dの移動領域毎に分割されていてもよく、内壁179を介して互いに隔てられていてもよい。ちなみに、上記枠体173における架設板163は、この内壁179の配設箇所に対応したピッチで設けられているものとする。
なお、筐体174の構造は、上述の如く一方向に駆動可能なコイルユニット3a〜3dが複数列に亘って配設されている場合には、上述した内壁179を設けることになるが、コイルユニット3a〜3dが2軸方向に動く場合には、内壁179の構成は省略するようにしてもよい。また、コイルユニット3a〜3dの駆動方向が幅方向Yと垂直方向に設定されている場合には、その方向に沿って内壁179が構成されることになる。またコイルユニット3a〜3dの数は4個に限定されるものではなく、いかなる個数で構成されていてもよいことから、実際のコイルユニット3の配置個数に応じて内壁179の形状や位置等が予め調整されることになる。
この筐体174における側壁178、内壁179の形状に応じて、枠体173の形状が決定され、さらにこれに伴って緩衝材172の裁断形態や裏当て材171の配置位置等が決定されることになる。
なお、天板13は、コイルユニット3を駆動可能とするために、通常のシステムキッチンの天板と比較して大面積で構成される。本実施の形態において、天板13は、少なくとも幅1000mm、奥行き650mm程度で構成されていてもよい。
上述した構成からなる本発明では、裏当て材171を、少なくとも天板13底面の周囲に亘って互いに間隔をおいて複数配置することにより、天板13を構成するガラスが割れてしまった場合においても、その割れに伴う亀裂を食い止めることができる。裏当て材171は、上述の如くガラス製の天板13底面において強固に貼着されているため、天板13の亀裂の進展を食い止めることができ、またかかる亀裂を完全に食い止めることができなくても、ガラスの破片が飛び上るようにして突き出てしまったり、飛び散ったりするのを、この裏当て材171により防止することができる。
また、この裏当て材171は、互いに連続するものではなく、少なくとも互いを離間させて天板13底面の周囲に亘って互いに間隔をおいて複数配置される。このため、ガラス板自体の動きを却って拘束することも無くなり、これによる破損強度の低下を引き起こすのを防止することが可能となる。
図5は、本発明を適用した天板ユニット7における天板13に対して実際に押圧力を負荷し、天板13を構成するガラス板を割った場合における亀裂の進展傾向を示している。天板13の中央付近に押圧力を負荷した場合において、亀裂は、その周囲に向けて進展していくことになる。しかし、この亀裂の進展は、裏当て材171の存在により天板13周囲においてある程度食い止められることになる。また、裏当て材171の存在により、天板13を構成するガラス板の破片が飛び散ったり、あるいは破片が飛び上がるようにして突き出てしまうこともなく、単に天板13に亀裂が入った状態でとどめることができる。このため、飛び散ったり、突き出てしまったガラスの破片によりユーザが怪我を負うのを防止することができ、より安全性を向上させることが可能となる。
本発明を適用した天板ユニット7では、裏当て材171の形状や間隔を以下に説明するように最適化しているため、天板13に発生した亀裂の進展をより強固に防止し、安全性を更に向上させることができる。以下、裏当て材171の形状並びに配置例について図面を参照しながら詳細に説明をする。
図6は、裏当て材171における互いに隣接する箇所の拡大図を示している。隣接する一の裏当て材171aと、隣接する他の裏当て材171bは互いに対向する対抗辺181を持つものとする。ここでいう対向辺181とは、隣接する他の裏当て材171に対面する全ての辺を総称していうものであり、直線、曲線の何れも含まれる概念である。以下、裏当て材171bに対して対面する裏当て材171a上の辺を対向辺181aとし、裏当て材171aに対して対面する裏当て材171b上の辺を対向辺181bとする。図6(a)においては、対向辺181aは、図中外側から内側へY方向に向けて内側へ伸びる辺と、そこから折れ曲がりX方向へ伸びる辺と、更にそこから折れ曲がり内側へY方向に延びる辺の3辺からなる。同様に対向辺181bも図中外側から内側へY方向に向けて内側へ伸びる辺と、そこから折れ曲がりX方向へ伸びる辺と、更にそこから折れ曲がり内側へY方向に延びる辺の3辺からなる。
図6(b)における対向辺181a、181bは、それぞれ湾曲する曲線が隣接する裏当て材171b、171aに対向するものであることから、当該曲線部全てがこれに該当することになる。
本発明では、一の裏当て材171aにおける対向辺181a上の任意の点に接する全ての接線が他の裏当て材171bにおける対向辺181bに交わるように、それぞれの対向辺181a、181bの形状と間隔が予め調整されている。同様に他の裏当て材171bにおける対向辺181b上の任意の点に接する全ての接線が一の裏当て材171aにおける対向辺181aに交わるように、それぞれの対向辺181a、181bの形状と間隔が予め調整されていることが条件となる。
ここでいう対向辺181上の任意の点に接する接線とは、対向辺181と当該任意の点においてのみ共有する直線をいう。即ち、対向辺181a上の任意の点に接する接線は、当該任意の点以外と対向辺181aに対して交わらない直線である。同様に、対向辺181b上の任意の点に接する接線は、当該任意の点以外と対向辺181bに対して交わらない直線である。
これについて実際に上述した図6の裏当て材171a、171bの配置を例にとり説明をする。
例えば図7(a)に示すように、対向辺181aにおける任意の点として、H,J,Kに焦点を当てる。先ず点Hにおいては、接線CL1が考えられる。このCL1は、点H以外は、対向辺181aと接点を共有しないため、上記定義した接線の範疇に入る。このCL1は、相手側の対向辺181bと交わるため、上記条件を満たすものである。このCL1の傾きを徐々に急峻にしてCL3に至るまでの過程においても、この接線CL1は常に相手側の対向辺181bと交わる。このため、点Hは、全ての接線が他の裏当て材171bにおける対向辺181bに交わる。
点Jの接線は、CL3からCL5に至る過程までの全ての接線であり(CL3、CL5は接線に含まれない)、CL2−1やCL2−2(ちなみに、このCL2−2は、J,Kを通る直線である。)も含む。CL3からCL5に至る過程までの全ての接線は、何れも相手側の対向辺181bと交わる。このため、点Jは、全ての接線が他の裏当て材171bにおける対向辺181bに交わる。
点Jから点Kに至るまでの対向辺181a上には接線は存在しない。その理由として、点Jから点Kに至るまでの対向辺181a上の任意の点を通る直線は、何れも他の対向辺181a上の点と交わることから、上記接線の定義から逸脱してしまうためである。
点Kの接線は、CL2−2等を含むものであるが、これも同様に対向辺181bと交わる。また、CL2−2の傾きをX方向まで傾ける過程においても同様に対向辺181bと交わることになる。
次に対向辺181bにおける任意の点として、L,N,Oに焦点を当てる。先ず点Lにおいては、接線CL7等が考えられる。このCL7は、点L以外は、対向辺181bと接点を共有しないため、上記定義した接線の範疇に入る。このCL7は、相手側の対向辺181aと交わるため、上記条件を満たすものである。このCL7の傾きを徐々にY方向へ近づけることによりCL4に至るまでの過程においても、この接線CL7は常に相手側の対向辺181aと交わる。同様にこのCL7の傾きを徐々にX方向に近づける過程においてもこの接線CL7は常に相手側の対向辺181aと交わる。このため、点Lは、全ての接線が他の裏当て材171aにおける対向辺181aと交わる。
点Jの接線は、CL3から、CL2−1、CL2−2、CL5に至る全ての接線であるが、これらは何れも相手側の対向辺181bと交わる。このため、点Jは、全ての接線が他の裏当て材171bにおける対向辺181bに交わる。
点Nの接線は、CL8、CL4に至る全ての接線であり、CL6−2(ちなみに、このCL6−2は、N,Oを通る直線である。)、CL6−1を含むものであるが、これらは何れも相手側の対向辺181aと交わる。このため、点Nは、全ての接線が他の裏当て材171aにおける対向辺181aに交わる。
点Nから点Oに至るまでの対向辺181b上には接線は存在しない。その理由として、点Nから点Oに至るまでの対向辺181b上の任意の点を通る直線は、何れも他の対向辺181b上の点と交わることから、上記接線の定義から逸脱してしまうためである。
点Oの接線は、CL6−2であるが、これも同様に対向辺181aと交わる。また、CL6−2の傾きをY方向まで傾ける過程においても同様に対向辺181aと交わることになる。
また図7(b)の例では、対向辺181a上における点Pの接線CL9や、点Qの接線CL10等に示されるように何れもこれと対向する対向辺181bと交わることになる。また、点P、Q以外の任意の点についての接線も同様に検証してみると、何れも対向辺181bと交わる。また、対向辺181b上の任意の点についても同様にこれと対向する対向辺181aと交わることになる。
このように、図7の例では、裏当て材171における対向辺181上の任意の点に接する全ての接線が他の裏当て材171における対向辺181に交わるように、それぞれの対向辺181の形状と間隔が予め調整されている。これは、一の裏当て材171aにおける対向辺181a上の任意の点に接する何れの接線は、他の裏当て材171bにおける対向辺181bに交わることなく、内側及び外側の両方へ貫通することができないことを意味している。同様に、他の裏当て材171bにおける対向辺181b上の任意の点に接する何れの接線は、他の裏当て材171aにおける対向辺181aに交わることなく、内側及び外側の両方へ貫通することができないことを意味している。
これにより、以下に説明するような効果を得ることができる。
図8(a)、(b)は、それぞれの裏当て材171に対して伝播してくる亀裂の方向DL1〜DL5の関係を示している。ちなみに、この亀裂は、長い進展距離で見た場合には、折れ曲がりながら、或いは曲線カーブを描きながら進展するが、5〜10cm単位の短い進展距離で見た場合には、ほぼ直線状に進展する。このため、以下では、亀裂がほぼ直線状に進展するものと仮定して説明する。
亀裂DL1は裏当て材171に対して略垂直に伝播してくるが、裏当て材171bにより伝播が食い止められる。亀裂DL2、DL3はそれぞれ裏当て材171aにおける対向辺181aにより食い止められる。また、亀裂DL4は、対向辺181bによって食い止められ、亀裂DL5は、対向辺181aにより食い止められることになる。
即ち、裏当て材171における対向辺181上の任意の点に接する全ての接線が他の裏当て材171における対向辺181に交わるように、それぞれの対向辺181の形状と間隔が予め調整されている。これは、亀裂が直線状に伝播してくることを仮定した場合において、当該亀裂が対向辺181a又は対向辺181bの何れに交差することなく、内側から外側へ貫通することができないことを意味している。逆に言えば、亀裂が、いかなる角度でこの裏当て材171a、171bの間隙へ伝播してきても、対向辺181a、181bの何れかに当ることを意味している。
即ち、本発明を適用した天板ユニット7においては、裏当て材171を互いに離間させることにより、天板13の動きが拘束されるのを防止しつつ、さらに亀裂が裏当て材171a、171bの間隙を介して内側から外側へ貫通してしまうのを防止することができる構造を採用することにより、いかなる方向に亀裂が伝播しても、天板を構成するガラスが割れて破片が飛び散るのを防止することができる。このため、本発明を適用した天板ユニット7は、天板の動きの拘束を防止することによる破損強度の低下防止を図ると共に、ガラスの破片の飛び散り等を防止することによる安全性の向上をも同時に実現することが可能となる。ちなみに、図5に示すように、天板13の隅部分を構成する裏当て材171についても同様の条件となるような間隙の形状とすることにより亀裂の貫通を抑制することが可能となる。
なお、隣接する裏当て材171a、171bを構成する各対向辺181a、181bの形状や互いの間隔は、上述した例に限定されるものではない。裏当て材171における対向辺181上の任意の点に接する全ての接線が他の裏当て材171における対向辺181に交わるように、それぞれの対向辺181の形状と間隔が予め調整されていれば、いかなる形態で構成されていてもよい。
図9(a)は、本発明を適用した天板ユニット7における他の裏当て材171の配置形態を示している。一の裏当て材171aにおける対向辺181aのうち他の裏当て材181bへの最近接点をPとする。また、他の裏当て材171bにおける対向辺181bのうち一の裏当て材171aへの最近接点をQとする。このとき点Pは、点Qよりも裏当て材171b側に位置するように、また点Qは、点Pよりも裏当て材171aに位置するように、対向辺181a、181bの形状と間隔が予め調整されていてもよい。これは換言すれば、点Qから裏当て材171の外側端縁へ向けて下ろした垂線の位置が点Pよりも裏当て材171a側に位置していることを意味するものである。
これにより、裏当て材171に対して垂直に伝播してくる亀裂DL6の全てを食い止めることが可能となる。このため、この図9に示す形態においても同様に上述した効果を得ることができる。
図9(b)は、本発明を適用した天板ユニット7における更なる他の裏当て材171a、171bの形態を示している。対向辺181a、181bとして階段状に構成したものであるが、かかる形態においても同一の効果を奏することになる。
なお、本発明は、上述したような天板ユニット7として具体化される場合に限定されるものではなく、天板ユニット7から、裏当て材171が貼り付けられた天板13と枠体73とを遊離させた天板ユニット部品として具体化されるものであってもよい。更に本発明は、裏当て材71が貼り付けられた天板13のみからなる天板ユニット部品として具体化されるものであってもよいことは勿論である。