I.半導体ドライプロセス後の残渣除去液
本発明の残渣除去液は、(A)フッ素化合物を含まず、銅に配位し得る2以上の酸素原子を有する中性有機化合物(以下「中性有機化合物」とも呼ぶ)及び/又はC4以上のモノアルコールと、水とを基本組成として含む水溶液、或いは(B)過塩素酸塩と水とを含む水溶液であることを特徴とする。
上記(A)及び(B)のいずれの水溶液においても、さらに、水溶性の塩基、ポリカルボン酸塩、界面活性剤、フッ素化合物、酸化防止剤、亀裂防止剤などを添加することにより、より優れた機能を追加することが可能である。
また、上記(B)の水溶液の場合には、さらに中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールを添加するとさらに効果が増す。
本発明の除去液の対象物は、主としてCu酸化膜及びドライプロプロセス後の残渣である。
Cu酸化膜としては、ドライエッチング及び/又はアッシング時に形成されたCu酸化物、或いはプロセス間の移動などにより大気に曝された場合に、金属が自然に酸化されてできたCuの自然酸化膜等が挙げられる。これらの組成としては、CuO、Cu2O、Cu(OH)2等が多く含まれる。
ドライプロプロセス後の残渣は、導電性金属として、Cuを用いて成膜したウェハーにおいて、Cu/low-k多層配線構造のCu表面上のCu酸化膜、及び/又は、ドライエッチング及び/又はアッシングにより形成されたCu酸化物を含むCu変質物からなる。この残渣は、主にパターンが形成されたCu配線上やlow-k膜などの層間絶縁膜で形成されたパターンの側壁および層間絶縁膜基板表面に付着する。Cu上に形成される残渣はドライエッチング及び/又はアッシングにより、損傷を受けて酸化及び/又はフッ素化されたCu酸化物とそのCuとの混合物からなる変質物残渣であり、電気抵抗が増大したものである。このCu変質物は、酸化及び/又はフッ素化された、Cu酸化物及びCuからなるので、その電気抵抗はCu酸化物に近い絶縁層となる。
low-k膜などの層間絶縁膜で形成されたパターンの側壁に付着する残渣は、Cu変質物のほかにSiNなどのストッパー膜やlow-k膜、埋め込み剤などがドライエッチングでスパッタリングされたものであり、Siや有機物を含んでいる場合がある。また、層間絶縁膜基板表面の残渣は、アッシングすることにより除去しきれなかったレジスト、反射防止膜および埋め込み剤などの有機物や無機マスクを用いたプロセスでの残留物に、ドライエッチングの際にホールやトレンチの底から飛来した若干のSiやCu変質物を含んだものであると推測できる。
Cuやlow-k膜へのダメージを抑制して、これらのドライプロセス後の残渣を
除去するためには、上記した(A)のフッ素化合物を含まず、中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールの水溶液、もしくは(B)過塩素酸塩の水溶液が必要である。
上記(A)において、中性有機化合物がエステル、ラクトン等の加水分解されやすい基を有する化合物の場合には、加水分解で生じるH+を中和ため水溶性の塩基を添加すること、又は、解離したH+を制御するためポリカルボン酸塩を添加することが好適である。上記(B)において、中性有機化合物を添加する場合に、水溶性の塩基やポリカルボン酸塩を添加すると同様の効果が確認される。
また、low-k膜などの層間絶縁膜で形成されたパターンの側壁に付着する残渣を除去しにくい場合には、若干のフッ素化合物を添加すると除去効果が増す。これらの残渣を除去した後に、亀裂状のCu腐食を生じさせない効果をいっそう付加するために、亀裂防止剤を添加してもよい。さらにCu表面上に酸化膜を成長させたくない場合には、酸化防止剤を添加する。
本明細書において、層間絶縁膜とは、主にLow-k膜のことであり、例えばフッ素を含んだシリコン酸化膜(FSG膜)も包含され、比誘電率が、1より大きく、4以下程度、好ましくは3以下程度、より好ましくは2.8以下程度、さらに好ましくは2.6以下程度の絶縁膜を意味する。Low-k膜は主に塗布またはプラズマCVDにより生成される。
具体的には、LKDシリーズ(商品名、JSR社製)、HSGシリーズ(商品名、日立化成社製)、Nanoglass(商品名、Honeywell社製)、IPS(商品名、触媒化成社製)、Z3M(商品名、Dow Corning社製)、XLK(商品名、Dow Corning社製)、FOx(商品名、Dow Corning社製)、Orion(商品名Tricon社製)、NCS(商品名、触媒化成社製)、SiLK(商品名、Dow Corning社製)などの無機SOG(HSG:水素化シルセスキオキサン)、有機SOG膜(MSQ膜:メチルシルセスキオキサン膜)、ポリアリルエーテルなどを主成分とする有機ポリマー膜とよばれる塗布膜や、Black Diamond(商品名、アプライドマテリアルズ社製)、コーラル(商品名、Novellus社製)、オーロラ(商品名、ASM社製)に代表されるプラズマCVD膜などがあるが、これらに限定されるものではない。
レジストとしては、KrF(クリプトンエフ)、ArF、F2レジスト等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
埋め込み剤は、反射防止膜の機能を兼ねる有機化合物であることが多い。
本発明の残渣除去液は、(A)フッ素化合物を含まず、中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールと水とを含む薬液、或いは、(B)過塩素酸塩を含む薬液である。これにより、Cuバルクの腐食と亀裂状のCuの腐食を抑制する効果と、ドライプロセス後の残渣を除去する効果を発揮させることが出来る。
残渣除去液(A)
まず、フッ素化合物を含まず、中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールと水とを含む薬液(A)について説明する。
中性有機化合物としては、銅に対して2座以上の酸素配位座を有する中性の有機化合物であれば良く、中性とは、プロトン供与性溶媒(酸性)および親プロトン性溶媒(塩基性)以外のものを示す。例えば、ポリカルボニル類、ケトアルコール類、ヒドロキシエステル類、ジエステル類、ケトエステル類、ラクトン類、炭酸エステル類、ポリエーテル類、グリコール類、アルキレングリコールモノエーテル類、アルキレングリコールジエステル類、アルキレングリコールエーテルエステル類、ポリアルキレングリコール類、ポリアルキレングリコールモノエーテル類、ポリアルキレングリコールジエステル類、ポリアルキレングリコールエーテルエステル類等が挙げられる。
ポリカルボニル類としては、例えば、ジアルデヒド類(例えば、グリオキサール等)、ジケトン類(2,3-ブタンジオン、2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン、2,3-ペンタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン等)、ケトアルデヒド類(メチルグリオキサール等)、が挙げられる。そのうち、2,3-ブタンジオンが好ましい。
ケトアルコール類としては、例えば、アセトイン、ジアセトンアルコール、アセトニルアルコール等が挙げられる。そのうち、アセトインが好ましい。
ヒドロキシエステル類としては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、酒石酸ジメチル、酒石酸ジエチル、グリコール酸メチル等が挙げられる。そのうち、乳酸エチル、グリコール酸メチルが好ましい。
ジエステル類としては、例えば、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。そのうち、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、が好ましい。
ケトエステル類としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、レブリン酸ブチル等が挙げられる。そのうち、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルが好ましい。
ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン、グルコノ‐δ‐ラクトン、δ‐バレロラクトン等が挙げられる。そのうち、γ−ブチロラクトンが好ましい。
炭酸エステル類としては、例えば、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等が挙げられる。そのうち、炭酸プロピレンが好ましい。
ポリエーテル類としては、例えば、グリコールジアルキルエーテル(ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールジ‐n‐ブチルエーテル、ジメトキシプロパン等)、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ‐n‐ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等)等が挙げられる。
そのうち、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,3‐プロパンジオール、1,2‐プロパンジオール、グリセリン、1,2‐シクロヘキサンジオール、2,2‐ジメチル‐1,3‐プロパンジオール、2,5‐ジメチル‐2,5‐ヘキサンジオール、2,3‐ナフタレンジオール、1,2‐ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、2‐ブチン‐1,4‐ジオール、2‐ブテン‐1,4‐ジオール、DL‐1,2‐ヘキサンジオール、2,5‐ヘキサンジオール、1,2‐ベンゼンジオール、2,4‐ペンタンジオール、2‐メチル‐2,4‐ペンタンジオールが挙げられる。そのうち、エチレングリコール、1,3‐プロパンジオール、1,2‐プロパンジオールが好ましい。
アルキレングリコールモノエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。そのうち、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
アルキレングリコールジエステル類としては、例えば、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。そのうちエチレングリコールジアセテートが好ましい。
アルキレングリコールエーテルエステル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセタート、プロピレングリコール1-モノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。そのうち、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましい。
ポリアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリ(プロピレングリコール)、グリセリン等が挙げられる。そのうち、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
ポリアルキレングリコールモノエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ‐n‐ドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノ‐n‐ドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。そのうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコキシアルコールが好ましい。
ポリアルキレングリコールジエステル類としては、例えば、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。そのうち、ジエチレングリコールジアセテートが好ましい。
ポリアルキレングリコールエーテルエステル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。そのうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
上記の中性有機化合物のうち、好ましくは、2,3-ブタンジオン、アセトイン、乳酸エチル、グリコール酸メチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコール、1,3‐プロパンジオール、1,2‐プロパンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
また、上記の中性有機化合物のうち、他の好ましいものとして、low-k膜にダメージを与えずに亀裂状のCu腐食をより効果的に抑制できる点から、ケトアルコール類、ヒドロキシエステル類、ジエステル類、ケトエステル類、ラクトン類、炭酸エステル類、アルキレングリコールジエステル類、アルキレングリコールエーテルエステル類、ポリアルキレングリコールジエステル類、ポリアルキレングリコールエーテルエステル類等が挙げられる。
具体的には、乳酸エチル、グリコール酸メチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
また、C4以上のモノアルコールとしては、例えば、1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコールなどのC4〜7のモノアルコールが挙げられる。そのうち、1-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコールが好ましい。
中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールの配合量(濃度)は、残渣除去液の全量に対して、0.1〜60重量%であり、好ましくは、1〜40重量%、より好ましくは2〜15重量%である。
上記の中性有機化合物の中には、水溶液中で加水分解を受けやすいエステル基を有する化合物もある。例えば、ヒドロキシエステル類、ジエステル類、ケトエステル類、ラクトン類、炭酸エステル類、アルキレングリコールジエステル類、アルキレングリコールエーテルエステル類、ポリアルキレングリコールジエステル類、及びポリアルキレングリコールエーテルエステル類が挙げられる。このようなエステル類に対しては、加水分解で生じたH+を中和するために水溶性の塩基、又は、生成したH+を制御するためポリカルボン酸塩を、さらに残渣除去液中に添加することが好ましい。ポリカルボン酸塩を添加することにより、CuxO含有残渣の除去効果とCuの防食効果が増加する。水溶性塩基としてアミンを用いた場合や、ポリカルボン酸のアミン塩を加えた場合には、Cuの亀裂状の腐食を防止する効果も増加するため好ましい。
水溶性の塩基としては、例えば、アンモニア、ヒドロキシルアミン、第一級、第二級又は第三級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等、第四級アンモニウム(水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等)、ポリアミン(ヒドラジン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリアミノトリエチルアミン、トリエチレンテトラミン等)等が挙げられる。このうち、エチルアミン、ジエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン等が好ましい。
水溶性の塩基の配合量は、pHを4〜7に中和するために添加するのに適した量であれば良い。したがって、エステルの量とその加水分解の量にも依存し、加水分解は、温度やその他の組成にも依存するため、一般的に決められない。好ましくは、pH5〜7に中和し、より好ましくはpH6〜7に中和するのに適した量を加える。
ポリカルボン酸塩としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸水素アンモニウム、クエン酸等のポリカルボン酸と、アンモニア、ヒドロキシルアミン、第一級、第二級又は第三級アミン、第四級アンモニウム、ポリアミン等の塩基とから形成される塩が挙げられる。好ましくは、マロン酸、クエン酸水素アンモニウム、クエン酸等のポリカルボン酸と、アンモニア、第一級、第二級又は第三級アミン、第四級アンモニウム、ポリアミン等の塩基とから形成される塩が挙げられる。より具体的にはマロン酸、クエン酸水素アンモニウム、クエン酸のアンモニウム塩、メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、水酸化テトラメチルアンモニウム塩、コリン塩、プロパンジアミン塩、トリエチレンテトラミン塩である。これらの中で、マロン酸、クエン酸水素アンモニウム、クエン酸のアンモニウム塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、水酸化テトラメチルアンモニウム塩、コリン塩、トリエチレンテトラミン塩が最も好ましい。
ポリカルボン酸塩は結晶として用いても良いし、水中でこれらの酸と塩基を混合して中和することにより生成した水溶液を用いても良い。ポリカルボン酸塩の配合量(濃度)は、残渣除去液の全量に対して、0.1〜15重量%であり、好ましくは、0.5〜10重量%、より好ましくは0.75〜8重量%である。
さらに、過塩素酸塩を添加しても良い。過塩素酸塩としては、アンモニア、ヒドロキシルアミン、第一級、第二級又は第三級アミン、第四級アンモニウム及びポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種とから形成される塩であり、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸メチルアミン塩、過塩素酸プロパンポリアミン塩、過塩素酸トリエチレンテトラミン塩などがあげられる。これらの中で過塩素酸アンモニウムが好ましい。
過塩素酸塩の配合量(濃度)は、残渣除去液の全量に対して、0.1〜10重量%であり、好ましくは、0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。
なお、本発明の残渣除去液は、基本的にはフッ素化合物を含まないものであるが、例えば、C4以上のモノアルコールを用いる場合や、中性有機化合物として、ケトアルコール類、ヒドロキシエステル類、ジエステル類、ケトエステル類、ラクトン類、炭酸エステル類、アルキレングリコールジエステル類、アルキレングリコールエーテルエステル類、ポリアルキレングリコールジエステル類、ポリアルキレングリコールエーテルエステル類等を用いる場合には、さらにフッ素化合物を添加することもできる。
フッ素化合物を添加することにより、low-k膜などの層間絶縁膜で形成されたパターンの側壁に付着する残渣を除去する効果が高められる。この残渣は、Cu変質物のほかにSiNなどのストッパー膜やlow-k膜、埋め込み剤などがドライエッチングでスパッタリングされたものであり、Siや有機物を含んでいる場合がある。しかし、たとえ残渣中にSiや有機物含んでいたとしても、Cu酸化物が主な構成物である場合には、通常は、フッ素化合物を添加しなくても、本発明の残渣除去液では、この残渣も除去できる。また、ドライプロセスでプラズマダメージを受けたlow-k膜などの層間絶縁膜はフッ素化合物によりエッチングされやすく、設計寸法どおりの加工ができなくなる可能性もある。そのため、この残渣の除去が十分できない場合や除去できたかどうか不安が残る場合に、より高い除去効果を付加するために、少量のフッ素化合物を添加する。
フッ素化合物としては、例えば、フッ化水素、或いは、アンモニア、ヒドロキシルアミン、第一級、第二級若しくは第三級アミン、第四級アンモニウム又はポリアミン等のフッ化物塩などが挙げられる。具体的には、フッ化水素、フッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウム、フッ化アミン塩、フッ化トリエチレンテトラミン塩等が好ましい。フッ素化合物は、1種であっても又は2種以上であってもよい。本発明の1つの実施形態として、例えば、フッ化アンモニウム水溶液、希フッ酸(50重量%水溶液)を用いることができる。
フッ素化合物の配合量(濃度)は、シリコン含有膜、Low-k膜などの層間絶縁膜およびドライプロセスによりプラズマダメージを受けた層間絶縁膜の種類と量に応じて、適宜選択することができる。
フッ素化合物の好ましい配合量(濃度)は、残渣除去液の全量に対して0.001〜5重量%であり、より好ましくは0.01〜3重量%である。層間絶縁膜のプラズマダメージを受けた部分が本発明の除去液によりエッチングされるのを抑制する必要がある場合には、フッ素化合物を含有しないか、或いは少量(1重量%以下)配合するのが好ましい。しかし、0.001重量%未満であると残渣を除去する効果が低下する。
本発明の残渣除去液には、さらに界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、疎水性の層間絶縁膜に対して濡れ性を増し、パターンの形状によっては薬液がいきわたらない場合などを防ぐためである。その種類は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系など特に限定されない。濃度は0.00001〜5重量%、好ましくは0.0001〜3重量%である。0.00001重量%より少ないと界面活性効果が小さく、5重量%より多くても、その効果に変化はない。
本発明の残渣除去液には、さらに亀裂防止剤を添加することもできる。亀裂防止剤としては、亀裂防止剤としては、非共有電子をもつ酸素及び/又は非共有電子をもつ窒素を有する非共有電子をもつ硫黄含有化合物が挙げられる。スルフィド類、メルカプタン類、チオカルボン酸類、チオアセトアミド類、チオウレア類、チアジアゾール類、テトラゾール類、トリアジン類、チアゾール類、チオフェン類、ピリミジン類、プリン類、チアゾリン類およびチアゾリジン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の硫黄含有化合物を例示でき、具体的には以下の化合物を好ましく例示できる。
スルフィド類としては、例えば、チオジグリコール、2,2′‐チオ二酢酸、3,3′‐ジチオジプロピオン酸が挙げられる。
メルカプタン類としては、例えば、メルカプト酢酸、チオリンゴ酸、チオ乳酸、3-メルカプトプロピオン酸、アミノチオフェノール、2‐メルカプトエタノール、3‐メルカプト‐1,2‐プロパンジオールが挙げられる。
チオカルボン酸類としては、例えば、チオール酢酸、3-アセチルチオ-2-メチルプロパン酸が挙げられる。
チオアセトアミド類としては、例えば、チオアセトアミドが挙げられる。
チオウレア類としては、例えば、チオ尿素、チオカルボヒドラジド、グアニルチオウレア、エチレンチオ尿素、マロニルチオ尿素が挙げられる。
チアジアゾール類としては、例えば、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-チオ酢酸-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ジチオ酢酸-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。
テトラゾール類としては、例えば、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾールが挙げられる。
トリアジン類としては、例えば、2,4,6-トリメルカプト-S-トリアジンが挙げられる。
チアゾール類としては、例えば、4-チアゾールカルボン酸、2‐アミノチアゾールが挙げられる。
チアゾリジン類としては、例えば、2,4-チアゾリジンジオン、2-チオ-4-チアゾリドン、2-イミノ-4-チアゾリジノンが挙げられる。
チオフェン類としては、例えば、2,5-チオフェンジカルボン酸、3-チオフェンマロン酸、2-チオフェンカルボン酸が挙げられる。
ピリミジン類としては、例えば、2-チオバルビツル酸、2-チオシトシン、チオウラシル、4-アミノ-6-ヒドロキシ-2-メルカプトピリミジンが挙げられる。
プリン類としては、例えば、2,5-ジチオプリン、6-メルカプトプリンが挙げられる。
チアゾリン類は、2-アミノ-2-チアゾリン、2-チアゾリン-2-チオールが挙げられる。
これらの中で最も好ましいのは、2-アミノ-2-チアゾリン、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸及びチオリンゴ酸である。
本発明において亀裂防止剤は補足的に用いることができ、その配合量(濃度)は、0.00001〜3重量%、好ましくは0.00005〜1重量%である。
本発明の残渣除去液には、さらに酸化防止剤を添加することもできる。酸化防止剤としては、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。その配合量(濃度)は0.00001〜3重量%、好ましくは0.0005〜1重量%である。
本発明の残渣除去液に含まれる水の割合は、残渣除去液の全量に対し通常40〜99.5重量%程度、好ましくは60〜99重量%程度であり、水以外の成分の配合量に応じて決定することができる。
本発明の残渣除去液のpHは4〜7である。pHが4以下であるとCuを腐食しやすくなる傾向にあり、pHが7を超えるとlow-k膜にダメージを与える場合がある。好ましくはpH4〜6である。pHは、塩基により調整する。
本発明の残渣除去液(A)の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
例えば、中性有機化合物と水とを含む残渣除去液の場合、中性有機化合物の配合量は0.1〜60重量%程度(好ましくは3〜20重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは4〜6程度)である。
また、C4以上のモノアルコールと水とを含む残渣除去液の場合、C4以上のモノアルコールの配合量は1〜10重量%程度(好ましくは2〜5重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは5〜7程度)である。
また、中性有機化合物と、水溶性の塩基と、水とを含む残渣除去液の場合、中性有機化合物の配合量は0.1〜20重量%程度(好ましくは1〜10重量%程度)であり、水溶性の塩基の配合量は0.05〜5重量%程度(好ましくは0.1〜3重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは4〜6程度)である。
また、中性有機化合物と、ポリカルボン酸塩と、水とを含む残渣除去液の場合、中性有機化合物の配合量は0.1〜60重量%程度(好ましくは3〜20重量%程度)であり、ポリカルボン酸塩の配合量は0.1〜10重量%程度(好ましくは0.5〜5重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは4〜6程度)である。
残渣除去液(B)
次に、過塩素酸塩を含む薬液(B)について説明する。
過塩素酸塩は、上記の薬液(A)で挙げたものを用いることができる。具体的には、過塩素酸塩としては、アンモニア、ヒドロキシルアミン、第一級、第二級又は第三級アミン、第四級アンモニウム及びポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種とから形成される塩であり、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸メチルアミン塩、過塩素酸プロパンポリアミン塩、過塩素酸トリエチレンテトラミン塩などがあげられる。これらの中で過塩素酸アンモニウムが好ましい。
過塩素酸塩の配合量(濃度)は、残渣除去液の全量に対して、0.1〜10重量%であり、好ましくは、0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。
過塩素酸塩を含む残渣除去液中には、さらに薬液(A)で挙げた銅に配位し得る2以上の酸素原子を有する中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールを含んでもよい。Cuバルクの腐食と亀裂状のCuの腐食を抑制する効果と、ドライプロセス後の残渣を除去する効果を増大させることが出来る。また、その配合量も薬液(A)で挙げたものを採用できる。
また、本発明の残渣除去液中に、さらに水溶性塩基、ポリカルボン酸塩、界面活性剤、フッ素化合物、酸化防止剤、亀裂防止剤等を添加しても良い。これらは、例えば、薬液(A)で挙げたものを用いることができ、また、その配合量も(A)で挙げたものを採用できる。
本発明の残渣除去液に含まれる水の割合は、残渣除去液の全量に対し通常40〜99.5重量%程度、好ましくは60〜99重量%程度であり、水以外の成分の配合量に応じて決定することができる。
本発明の残渣除去液のpHは4〜7である。pHが4以下であるとCuを腐食しやすくなる傾向にあり、pHが7を超えるとlow-k膜にダメージを与える場合がある。好ましくはpH4〜6である。pHは、塩基により調整する。
本発明の残渣除去液(B)の具体例としては、次のようなものが挙げられる。
例えば、過塩素酸塩と水とを含む残渣除去液の場合、過塩素酸塩の配合量は0.1〜10重量%程度(好ましくは0.3〜5重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは5〜7程度)である。
また、過塩素酸塩と中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールと水とを含む残渣除去液の場合、過塩素酸塩の配合量は0.1〜10重量%程度(好ましくは0.3〜5重量%程度)であり、中性有機化合物及び/又はC4以上のモノアルコールの配合量は0.5〜60重量%程度(好ましくは2〜40重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは5〜7程度)である。
また、過塩素酸塩と、中性有機化合物と、水溶性の塩基と、水とを含む残渣除去液の場合、過塩素酸塩の配合量は0.1〜10重量%程度(好ましくは0.3〜5重量%程度)であり、中性有機化合物の配合量は0.5〜40重量%程度(好ましくは2〜30重量%程度)であり、水溶性の塩基の配合量は0.5〜40重量%程度(好ましくは2〜30重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは4〜6程度)である。
また、過塩素酸塩と、中性有機化合物と、ポリカルボン酸塩と、水とを含む残渣除去液の場合、過塩素酸塩の配合量は0.1〜10重量%程度(好ましくは0.3〜5重量%程度)であり、中性有機化合物の配合量は0.5〜60重量%程度(好ましくは2〜40重量%程度)であり、ポリカルボン酸塩の配合量は0.5〜20重量%程度(好ましくは0.75〜10重量%程度)であり、pHは4〜7程度(好ましくは4〜6程度)である。
II.Cu酸化物及び/又はドライプロセス後の残渣の除去
本発明の方法は、主にCu/Low-k多層配線構造において、ダマシン、デュアルダマシンなどの構造を形成する場合およびキャパシタ構造において使用される。
従って、本発明の除去液は、Low-k膜、反射防止膜及びレジストに穴もしくは溝が開き、レジスト(レジストの変質物を含む)、反射防止膜、埋め込み材などをアッシングなどにより除去された状態の被処理物の残渣、即ちドライプロセス後の残渣を除去する液である。基板上にLow-k膜を形成した後には、必要に応じてLow-k膜上にSiN、SiC、TaN膜などの絶縁膜バリアを形成し、該SiN、SiC、TaN膜などをLow-k膜と共にエッチングすることもできる。
残渣除去液での処理は、例えば、ドライエッチング及び/又はアッシング後の基板を被処理物として、これを本発明の残渣除去液に接触させることにより行うことができる。残渣除去液への接触条件は、Cu酸化物、及び/又は、ドライプロセス後の残渣が除去でき、Cuの腐食を抑えて、Low-k膜に実質的にダメージを与えなければ特に限定されることはなく、残渣除去液の種類や温度に応じて適宜設定することができる。
接触方法としては、例えば、薬液をためた槽に、カセットに入った多量の被処理物(ウェハー)を浸漬させるバッチ式、回転させた被処理物(ウェハー)の上から薬液をかけて洗浄する枚葉式、被処理物(ウェハー)に薬液をスプレーで吹付け続けて洗浄するスプレー式等、種々の接触方法が用いられる。
残渣除去液の温度は、例えば10〜60℃程度、好ましくは15〜40℃程度にするのがよい。接触時間としても限定されず適宜選択することができるが、例えば、0.5分〜60分程度、好ましくは1分〜40分程度が例示できる。
また、バッチ式の場合は、必要に応じて、撹拌下の残渣除去液にウェハーを浸漬してもよい。撹拌の速度も限定されず、適宜選択することができる。不要物が剥離しにくい場合、例えば被処理物を残渣除去液に浸漬して超音波洗浄を行ってもよい。
本発明のCu酸化物の除去方法は、さらに、Cu酸化物、及び/又は、ドライプロセス後の残渣を除去したウェハーを、純水で洗浄することにより行うことができる。この洗浄工程により本発明の残渣除去液を洗い流すことができる。
本発明の残渣除去液を用いてCu酸化物、及び/又は、ドライプロセス後の残渣の除去を行った半導体基板は、例えば、Cu配線をするなど、慣用されている方法(例えば、詳説半導体CMP技術、土肥俊郎 編著 2001年 に記載された方法)に従って、様々な種類の半導体装置(デバイス)へと加工することができる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴を明確にする。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
ドライプロセス後の残渣の除去及びパターンの形状の変化を調べるために、ビアファーストプロセスにより形成されたCu/low-kデュアルダマシン構造を持つテストパターン付きウェハーを用いた。Cu/low-kデュアルダマシン構造のLow-k膜はプラズマCVDにより形成されたSiOC膜であり、絶縁膜バリアはSiN膜である。ドライプロセス後の残渣は、ビアホール底に多く存在し、ビアホール側壁とlow-k基板表面に若干みられる。
このテストパターン付きウェハーを、本発明(実施例)の除去液および比較例で示した薬液に25℃で1〜3分間、撹拌下(約600rpm)に浸漬した後、超純水の流水でリンス、乾燥してドライプロセス後の残渣除去処理を行った。この残渣除去処理の後、12個のビアホールについて、ドライプロセス後の残渣除去の状態と断面形状を、電子顕微鏡(SEM)で観察した。ドライプロセス後の残渣除去の状態と断面形状を、電子顕微鏡(SEM)で観察した。さらに、銅表面亀裂の有無を判断するために、60個のビアホールを上方から電子顕微鏡(SEM)で観察した。
また、テストパターン付きウェハーを用いた評価では見つけにくいCuおよびlow-k膜に対するダメージを調べるため、これらを成膜したブランケットウェハーを本発明の除去液および比較例の薬液に10分間浸漬して、エッチング速度を求めた。low-k膜については、表面状態の変化を調べるため、薬液の浸漬前後の接触角を測定し比較した。接触角の変化の大きい場合には昇温脱離分析(TDS)において、水の吸着量が増加する相関関係が得られている。すなわち、接触角の変化はlow-k膜の最表面の変化を反映している。なお、接触角は、接触角計を用いて測定した。
表2、表4及び表6に実施例として本発明の残渣除去液を、表8及び表10に比較例を例示した。これらの薬液を用いてテストした結果を表3、表5、表7、表9及び表11に示す。テスト結果の判定基準を、表1に示す。
実施例1〜30
実施例1〜30の薬液は表2の組成となるように調合した。また薬液のpHは約4〜6になるように調合した。
実施例1〜30の薬液を用いてテストした結果を表3に示す。
表3に示したテストパターン付きウェハーを用いた評価の結果から、実施例1〜30の残渣除去液は、パターン形状を変化させないだけでなく、銅表面の僅かな亀裂も非常に少なく残渣除去性能に優れていることが明らかである。ブランケットウェハーを用いた評価の結果から、Cuとlow-k膜のエッチング速度は小さく、low-k膜の接触角変化も小さいことから、Cu腐食やlow-k膜の残渣除去液によるダメージがないことを示している。
実施例1〜30は、濃度を増加させた場合には残渣除去能力を増し、濃度を半分に減少させた場合においても残渣除去能力を十分に発揮し、CuやLow-k膜に対するダメージはさらに小さい。
実施例31〜63
実施例31〜63に示した本発明の除去液のpHは約4〜6になるように調合した。
実施例31〜42は水溶性の塩基を加えた残渣除去液である。
実施例40〜42において、エチルアミンの代わりにアンモニア、メチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリンなどを用いた場合でも同様の結果を示した。
実施例43〜47、62、63は、アンモニウム塩の代わりに、メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ブチルアミン塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、水酸化テトラメチルアンモニウム塩、コリン塩、プロパンジアミン塩、トリエチレンテトラミン塩などを用いた場合でも同様の効果を示した。
実施例48〜61はNH4Fを加えた残渣除去液であり、実施例62及び63はポリカルボン酸塩とNH4Fを加えた残渣除去液である。Cu表面上の残渣やパターン側壁の残渣が取れにくい場合にNH4Fを添加すると、これらの除去効果を高めることができる。
表5に示したテストパターン付きウェハーを用いた評価の結果から、実施例31〜63の残渣除去液は、パターン形状を変化させないだけでなく、銅表面の僅かな亀裂も非常に少なく残渣除去性能に優れていることが明らかである。
ブランケットウェハーを用いた評価の結果から、Cuとlow-k膜のエッチング速度は小さく、low-k膜の接触角変化も小さいことから、Cu腐食やlow-k膜の残渣除去液によるダメージがないことを示している。
実施例31〜63は、濃度を増加させた場合には残渣除去能力を増し、濃度を半分に減少させた場合においても残渣除去能力を十分に発揮し、CuやLow-k膜に対するダメージはさらに小さい。
実施例64〜74
実施例64〜74では、過塩素酸塩を含む残渣除去液を作製し、pH約5.5になるように調合した(表6)。また、
表7に示したテストパターン付きウェハーを用いた評価結果から、実施例64〜74の残渣除去液においても、パターン形状を変化させないだけでなく、銅表面の亀裂も少なく、残渣除去性能に優れていることが明らかである。
ブランケットウェハーを用いた評価結果から、Cuとlow-k膜のエッチング速度は小さく、low-k膜の接触角の変化も問題ないことから、残渣除去液によるCu腐食やlow-k膜に対するダメージが非常に少ないことがわかる。
過塩素酸塩を含む残渣除去液だけではCu表面上の残渣を除去しにくい場合には、実施例65〜73に示すように、中性有機化合物(アセトイン、アセト酢酸メチル、エチレングリコールジアセテート、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、中性有機化合物(マロン酸ジエチル)と水溶性塩基(エチルアミン)、C4以上のモノアルコール(1−ブタノール)、NH4F等を添加すると残渣除去効果が助長される。例えば、パターン側壁の残渣が取れにくい場合にNH4Fを添加し、基板表面の残渣が除去しにくい場合には中性有機化合物を添加すると残渣除去効果が増す。
実施例64〜74は、濃度を増加させた場合には残渣除去能力を増し、濃度を半分に減少させた場合においても残渣除去能力を十分に発揮し、CuやLow-k膜に対するダメージはさらに小さい。
実施例3〜6、実施例13〜17に示したそれぞれの薬液に対して、Cuの亀裂防止剤として3-メルカプトプロピオン酸1ppmを添加した場合、表5のCu表面亀裂の評価は“B”から“A”に改善できた。3-メルカプトプロピオン酸の代わりに、チオ乳酸、2-アミノ-2-チアゾリン、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンなどを1ppm添加した場合も同様の効果を示した。
実施例25、実施例33、実施例62、実施例67に示したそれぞれの薬液に対して、Cuの酸化防止剤としてベンゾトリアゾールを、それぞれ5ppmを添加した場合、添加していない場合に比べて、Cuの酸化を防止することができた。
Cuの酸化状態を判断は、薬液に浸漬したCuのブランケットウェハーを、27℃で湿度80%以上の状態に24時間以上保持した後にXPS(光電子分光法)によりCuOに由来するCuピークを観察することにより行った。
以上のように、Cu亀裂防止剤、Cu酸化防止剤を添加することにより、亀裂防止効果、酸化防止効果を付与できることがわかる。他の実施例についても同様の効果があると考えることができる。
比較例1〜7
比較例1〜7の残渣除去液の濃度及びpHは、表2の実施例のそれとほぼ同等にした。
比較例1〜7は全て残渣の剥離性が不十分である。形状評価ができないほど、側壁の残渣は特に除去できていない。表9のその他の項目においても評価がC以下のものはその性能が劣ることを示している。したがって、表9に示した薬液は全て除去液としては好ましくない。
比較例8〜11
比較例8〜11の残渣除去液の濃度及びpHは、表2の実施例のそれとほぼ同等にした。
比較例8〜11は全てCu表面亀裂が多い。表11のその他の項目においても評価がC以下のものはその性能が劣ることを示している。したがって、表11に示した薬液は全て除去液としては好ましくない。
実施例と比較例を比べた場合、実施例では過塩素酸イオンがCu表面を保護していると推測できる。