JP5158183B2 - 車両の必要電力予測装置 - Google Patents
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Description
本発明は、電動車両が走行するために必要な消費電力を予測する装置に関する
特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、二次電池を搭載した車両に対して、系統電力網から給電し、二次電池を充電するシステムと装置とを開示している。このようなシステムにおいては、系統電力網に接続されて充電される複数の車両への充電電力を正確に予測し、系統電力網における配電計画を立案する必要がある。ところが、それぞれの車両による消費電力は種々の要因によって変動する。そして、それらの車両への充電電力も変動する。このため、それぞれの車両において必要とされる充電電力を正確に予測し、配電計画に反映することは困難であった。
また、特許文献4、特許文献5、および特許文献6は、車両の運行計画に基づいて消費電力または消費動力を予測する技術を開示している。
例えば、特許文献4に記載の装置では、走行予定の経路に基づいて消費電力および充電電力を予測する。しかし、上記経路に関する情報は、地図データに基づく情報であるため、実際に車両が走行した場合に生じる変動を反映することができない。例えば、運転者のくせ(運転傾向)、経路の勾配、道路の種類、交通量、渋滞状況などの変動要因が反映されない。このため、消費電力または消費動力を正確に予測することが困難であった。
また、特許文献5に記載の装置では、過去の走行による消費電力を記憶し、次の走行へ反映する。しかし、これでは初めて走行する経路における消費電力を予測することができない。
また、特許文献6に記載の装置では、車両の停止回数を含む走行パターンを生成し、この走行パターンに基づいてエネルギー収支を計画している。しかし、この構成でも、運転者のくせ(運転傾向)、経路の勾配、道路の種類、交通量、渋滞状況などの変動要因を反映して消費電力または消費動力を予測することが困難であった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の運行計画に基づいて車両の消費電力を高精度に予測することができる車両の必要電力予測装置を提供することである。
本発明の他の目的は、基地局と、複数の車両との間で、車両の走行に必要な電力を予測するための処理負荷を適切に分担することができる車両の必要電力予測装置を提供することである。
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
請求項1に記載の発明は、走行用の電動機(31)に給電するバッテリ(34)を備える複数の車両(3)と、これら複数の車両(3)を管理する基地局(2)とを備え、車両(3)の走行に必要な必要電力を予測する必要電力予測装置において、基地局に設けられ、道路上の複数の区間のそれぞれを走行するための基準消費電力を記憶する記憶手段(23A)と、基準消費電力を基地局から車両に送信する通信手段(7、21、42)と、車両に設けられ、車両が走行するために要した実消費電力と基準消費電力との差に含まれ、車両における要因に起因して発生する車両誤差に対応する車両補正値(VCR)を算出する車両補正値算出手段(P9)と、車両に設けられ、基準消費電力(STPC)と車両補正値を含む情報に基づいて、将来の走行における必要電力を予測する予測手段(P8)とを備えることを特徴とする。
この構成によると、将来の走行における必要電力を予測するための処理を、基地局と車両とに分散して配置することができる。また、車両における要因に起因する誤差が車両補正値によって補正されるから、基準消費電力に基づいて正確に必要電力を予測することができる。
請求項2に記載の発明は、車両補正値算出手段は、車両が所定区間を走行したときの実消費電力を計測する計測手段(112)と、車両が所定区間を走行したときの車両に搭載された補助機器の補助機器消費電力を計測する補助機器消費電力計測手段(113)と、車両が所定区間を走行したときの基準消費電力(STPC)と、実消費電力(CPC)と、補助機器消費電力(APC)とに基づいて車両補正値(VCR)を設定する設定手段(114,115)とを備えることを特徴とする。
この構成によると、車両の補助機器が消費する消費電力を考慮して車両補正値を設定することができる。このため、補助機器の消費電力の影響を排除して基準消費電力から必要電力を予測することができる。
請求項3に記載の発明は、予測手段は、将来の走行における補助機器の補助機器消費電力を予測する補助機器消費電力予測手段(146)を備え、補助機器消費電力予測手段によって予測された補助機器消費電力(EAPC)が予測手段(P8)における情報に含まれていることを特徴とする。この構成によると、補助機器の消費電力が予測される。さらに、予測された補助機器消費電力が、必要電力の予測処理に反映される。このため、将来の走行における補助機器の消費電力も加えた必要電力を予測することができる。
請求項4に記載の発明は、さらに、道路上の複数の区間の渋滞状況に応じた渋滞補正値(TCR)を算出する渋滞補正値算出手段(91−93)を備え、渋滞補正値(TCR)が予測手段における情報に含まれていることを特徴とする。この構成によると、車両の消費電力に影響を与える道路の渋滞状況が、渋滞補正値として与えられ、必要電力の予測に反映される。このため、渋滞状況に応じた必要電力を予測することができる。
請求項5に記載の発明は、複数の車両には、基準車両(3A)が含まれており、基準車両は、道路上の複数の区間を走行することにより、それら区間における消費電力を計測する計測手段(61−78)を備え、通信手段は、消費電力を基地局に送信するよう構成され、記憶手段は、基準車両から得られた消費電力を基準消費電力として記憶するよう構成されていることを特徴とする。この構成によると、基準車両によって基準消費電力を計測し、収集することができる。
請求項6に記載の発明は、さらに、予測手段により予測された必要電力に基づいて電力需要を予測する電力需要予測手段(175)を備えることを特徴とする。この構成によると、正確に予測された必要電力に基づいて、バッテリを充電するための電力の需要を正確に予測することができる。
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した一実施形態に係る充電システム1を示すブロック図である。充電システム1は、複数の車両3の運行情報を管理する運行情報管理システムと、これら車両3へ電力を供給する電力網(GRID)5の電力管理システムとから構成されている。充電システム1は、電力網5の電力に関する情報を処理する電力情報装置を構成している。充電システム1は、複数の車両3に関する情報を管理する管理組織に属するサービスセンタ(SVCT)2を備える。サービスセンタ2は、基地局である。
図1は、本発明を適用した一実施形態に係る充電システム1を示すブロック図である。充電システム1は、複数の車両3の運行情報を管理する運行情報管理システムと、これら車両3へ電力を供給する電力網(GRID)5の電力管理システムとから構成されている。充電システム1は、電力網5の電力に関する情報を処理する電力情報装置を構成している。充電システム1は、複数の車両3に関する情報を管理する管理組織に属するサービスセンタ(SVCT)2を備える。サービスセンタ2は、基地局である。
車両3は、二次電池であるバッテリを搭載した移動体である。車両3は、走行動力の少なくとも一部を車載のバッテリから供給される電動車両である。車両3は、バッテリのみを動力源とする電気車両、またはバッテリと燃料とを動力源とし、かつ外部からバッテリに充電可能なプラグイン型のハイブリッド車両である。複数の車両3には、管理組織によって運用される基準車両(EVH0)3Aと、運行情報管理システムに所属する一般の車両(EVH1、EVHn)3Bとが含まれている。車両3のバッテリは、充電スタンド(CGS1、CGS2、CGSn)4によって充電することができる。
充電スタンド4は、電力網5に属している。充電スタンド4は、電力網5から電力を供給される。充電スタンド4は、車両3のバッテリを充電するための定置型の充電器である。車両3が所属する組織、または住宅も充電スタンド4として構成することができる。図示の例においては、目的地8Bである住宅にも充電スタンド4が設けられている。
電力網5は、系統電力網である。電力網5は、複数の車両3のバッテリへ充電される電力を供給する。電力網5は、商用電力を供給する管理組織に属する電力制御センタ(PSCM)6によって管理されている。電力制御センタ6は、電力網を制御する。電力制御センタ6は、変電所などの送電設備、および/または発電所を含むことができる。電力制御センタ6は、電力制御処理を実行することによって、電力網5における電力需要に応えるように、電力網5に電力を供給する。電力制御処理には、発電所における発電電力の調節、他の電力網からの電力の導入、送電電力の調節、発電施設の計画、送電施設の計画などが含まれる。通信ネットワーク7は、充電システム1を構成する要素間の情報通信を可能とする情報通信手段を提供している。
サービスセンタ2と、複数の車両3とは、通信ネットワーク7を介して互いに情報通信できるように接続されることによって運行情報管理システムを構成している。運行情報管理システムは、サービスセンタ2から供給される基準消費電力に基づいて、各車両3が将来の走行のために必要とする必要電力を正確に予測する必要電力予測装置を提供する。つまり、サービスセンタ2と車両3とによって、必要電力予測装置が構成され、必要電力予測方法が実行される。さらに、運行管理システムは、複数の車両3が必要とする電力を集計し、電力網5における電力の需要を示す需要データを作成する手段を提供する。ここで、集計は、単なる加算処理を意味することがある。また、集計は、複数の数値情報を、時間軸上、および/または地図上における分布に編集することを意味することがある。また、運行情報管理システムは、充電が実施される時期および/または場所を予測し、その分布を示す需要分布データを作成する手段を提供する。需要分布データは、需要データに、充電が実施される時期および/または場所の分布を反映することによって作成される。また、運行情報管理システムは、充電スタンド4の充電速度を含む充電スタンド4に関する情報を収集する手段を提供する。運行情報管理システムは、需要分布データに、充電スタンド4の充電速度を反映する手段を提供する。
サービスセンタ2と、複数の充電スタンド4と、複数の車両3とは、通信ネットワーク7を介して互いに情報通信できるように接続されている。これらの構成要素は、車両3への充電時期を予約する手段を提供する。
さらに、サービスセンタ2と、電力制御センタ6とは、通信ネットワーク7を介して互いに情報通信できるように接続されることによって電力管理システムを構成している。通信ネットワークはサービスセンタ2と電力制御センタ6との間の専用通信でも良い。サービスセンタ2と、電力制御センタ6とは、電力の需要分布データに基づいて、電力網5の資源を調節することにより、電力需要に応える電力を電力網5に供給する手段を提供する。需要分布データは、サービスセンタ2を運営する組織から電力制御センタ6を運営する組織へ販売されることがある。また、サービスセンタ2と電力制御センタ6とが実質的に同一の組織によって運営されてもよい。
基準車両3Aは、サービスセンタ2の管理の下で、管理対象となっている地区の道路を走行する。管理対象となる地区は、少なくとも電力網5の範囲を含んでいる。以下の説明では、車両3Bが電力網5の中の道路を走行する場合を想定する。例えば、出発地(STPS)8Aから、目的地(DSTN)8Bまで走行する。さらに、車両3Bは、複数の充電スタンド4のいずれかにおいて充電される。例えば、出発地8Aと目的地8Bとの間の充電スタンド4Aにおいて充電される。
図2は、サービスセンタ2の構成を示すブロック図である。サービスセンタ2は、通信ネットワーク7と通信するための通信装置(COMN)21と、制御装置(CNDV)22と、データベース(DB)23とを備える。
制御装置22は、複数の処理P1−P6を提供する。基準消費電力処理(STCT)P1は、基準車両3Aから基準消費電力STPCを含む情報を収集し、一般の車両3Bへ基準消費電力STPCを含む情報を提供する。消費電力補正処理(PCCT)P2は、種々の要因に基づいて基準消費電力STPCを補正する。また、消費電力補正処理P2は、基準消費電力STPCを補正するための補正情報を車両3へ提供する。
充電期待値集計処理(CHCT)P3は、複数の車両3から充電期待値CHXPを収集し、複数の充電期待値CHXPを集計する。充電期待値CHXPは、ひとつの車両3への充電の可能性と充電量とを、時間軸上、および/または地図上における分布として示したデータである。充電期待値CHXPは、車両3への充電量と、充電時期、および/または充電場所とを予測することによって作成される。複数の充電期待値CHXPを集計することにより、複数の車両3に充電するための電力需要を示す電力需要PCSDが提供される。
電力推移処理(PSCT)P4は、複数の充電スタンド4において必要とされる電力を予測し、電力需要の推移を示す電力推移PCSDを作成する。電力推移PCSDは、充電期待値CHXPの集計によって求められる基礎電力推移PCSD1と、基礎電力推移PCSD1を充電速度CHSPに基づいて修正した修正電力推移PCSD2とを含むことができる。電力推移PCSDは、電力の需要の時間軸上、および/または地図上の分布を示す。電力推移PCSDは、電力制御センタ6に提供される。
充電予約処理(RVCT)P5は、車両3に対して充電に関するサービスを提供する。このサービスには、充電時期の通知、特定の充電スタンド4の提案、特定の充電スタンド4への経路案内、特定の充電スタンド4への充電予約などを含むことができる。さらに、他のサービス処理(OTSV)P6は、車両3への情報提供、充電スタンド4への情報提供、電力制御センタ6への情報提供を実行する。
データベース23は、メモリ、ハードディスクなどの記憶装置によって提供される。データベース23は、制御装置22において取り扱われるデータを記憶する複数のデータベース23A−23Fを含んでいる。データベース23Aは、基準消費電力STPCを含む車両3の消費電力に関連するデータを記憶する。基準消費電力STPCは、予め定められた道路の区間ごとに記憶されている。データベース23Aは、道路上の複数の区間のそれぞれを走行するための基準消費電力STPCを記憶する記憶手段を提供する。
データベース23Bは、渋滞状況TRFCを含む車両3の走行に影響を与える道路の状況に関するデータを記憶する。データベース23Cは、充電期待値CHXPを記憶する。データベース23Dは、充電スタンド4の充電速度CHSPを含む充電スタンド4に関する情報を記憶する。充電スタンド4に関する情報には、充電スタンド4の場所、特徴、そこで提供されるサービスなどを含むことができる。データベース23Dは、バッテリ34へ充電することができる複数の充電スタンド4の充電速度CHSPを記憶する記憶手段を提供する。データベース23Eは、電力推移PCSDを含む充電スタンド4での電力需要に関するデータを記憶する。データベース23Fは、車両3に提案した充電スタンド4の情報を記憶する記憶手段を提供する。
図3は、基準車両3Aの構成を示すブロック図である。基準車両3Aは、管理対象となる複数の車両3の平均的な車種によって提供されている。例えば、5人乗り乗用車が選定される。基準車両3Aは、走行用の電動発電機(MG)31、インバータ(INV)32、遮断器(CTBR)33、バッテリ(BATT)34、遮断器(CTBR)35、充電回路(CHGR)36、および充電コネクタ37を備える。発電電動機31は、車両3Aの走行用の電動機である。車両3Aは、電動機31に給電するバッテリ34を備える。遮断器35が閉じ、遮断器33が開いているとき、充電コネクタ37に供給される電力が、充電回路36を経由して、バッテリ34に充電される。遮断器35が開き、遮断器33が閉じているとき、バッテリ34の電力が、インバータ32を経由して、電動発電機31に供給される。
基準車両3Aは、走行制御装置(EVCU)38、バッテリ制御装置(BTCU)39、および充電制御装置(CGCU)41を備える。走行制御装置38は、基準車両3Aを運転者の指示に応答して走行させるようにインバータ32と遮断器33とを制御する。バッテリ制御装置39は、バッテリ34に流れる電流を検出する電流センサ(CRSN)40の出力に基づいて、バッテリ34を監視し、制御する。充電制御装置41は、充電コネクタ37が充電スタンド4と接続された時に、バッテリ34が所定の充電状態となるように充電回路36と遮断器35とを制御する充電量制御機能を備えている。充電制御装置41は、さらに、運行情報管理システムの一部としての制御機能を備えている。基準車両3Aの充電制御装置41は、基準となる消費電力を収集するための基準消費電力収集処理P7を備える。この処理P7は、道路上に予め設定された複数の区間のそれぞれにおいて消費される消費電力を計測し、記録する。
基準車両3Aは、通信ネットワーク7と通信するための車載の通信装置(VHCM)42を備える。よって、通信ネットワーク7と、通信装置21と、通信装置42とサービスセンタ2と車両3との間の通信手段を提供する。さらに、基準車両3Aは、通常の車両に搭載されることのある複数の制御装置を備えている。車載のナビゲーション制御装置(NAVI)43は、運転者に対して地図を提供し、さらに経路案内を提供する装置である。ナビゲーション制御装置43は、基準車両3Aの位置を示す位置データを提供する位置特定手段として機能する。さらに、ナビゲーション制御装置43は、基準車両3Aの走行経路を予測し経路データを提供する経路予測手段を提供する。ナビゲーション制御装置43は、位置特定手段の一部をなすGPS装置(GPSD)44から位置データを取得する。
基準車両3Aは、バッテリ34の消費電力に影響を与える車載の補助機器を備えている。補助機器は、例えば、空調装置と、車載の複数の電気負荷とを備える。空調制御装置(ACCU)45は、空調装置(ACDV)46を制御する。空調制御装置45は、空調装置46の作動状態を制御することによって、空調装置46による消費電力を示す補機消費電力データを提供することができる。例えば、補機消費電力データには、空調装置46の冷凍サイクル用の電動圧縮機の消費電力が含まれる。ボデー制御装置(BDCU)47は、車載の負荷(VHLD)48を制御する。ボデー制御装置47は、負荷48の作動状態を制御することによって、負荷48による消費電力を示す補機消費電力データを提供することができる。補機消費電力データには、車載の複数の電動機器、例えば、照明装置、および電動ワイパの消費電力が含まれる。
基準車両3Aに搭載された複数の制御装置38、39、41、42、43、45、47は、車載のネットワーク(LAN)49によって情報通信可能に接続されている。
図4は、一般の車両3Bの構成を示すブロック図である。車両3Bは、基準車両3Aと同じ構成要素を備えている。ただし、充電制御装置41には、一般の車両3Bとしての複数の制御処理P8−P11が搭載されている。車両3Bは、基準消費電力収集処理P7を備えない。消費電力予測処理(PCES)P8は、予測された経路を車両3Bが走行するために必要とすると予測される予測必要電力ESPCを算出する。消費電力予測処理(PCES)P8は、必要電力予測手段を提供する。必要電力予測手段は、基準消費電力STPCと後述の車両補正値VCRを含む情報に基づいて、将来の走行における必要電力を予測する。
補正値算出処理(CRVC)P9は、処理P8における予測精度を高めるために、車両3Bに特有の補正値VCRを算出する。この補正値VCRは、基準車両3Aと車両3Bとの差を補償して、基準消費電力STPCに基づいて車両3Bの消費電力を正確に予測するための値である。補正値算出処理P9は、車両補正値算出手段を提供する。車両補正値算出手段は、車両3Bが走行するために要した実消費電力と基準消費電力との差に含まれ、かつ車両3Bにおける車両3Bに特有の要因に起因して発生する車両誤差に対応する車両補正値VCRを算出する。例えば、車両の重量の差、乗員数の差、車載の機器の差、運転者の運転操作の差、車載の補助機器の作動状態の差などの変動要因が消費電力の差をもたらす。上記補正値VCRは、これらの変動要因を反映する補正値である。
充電期待値算出処理(CXPC)P10は、車両3Bへの充電処理の履歴データを蓄積する履歴データ蓄積手段と、この履歴データに基づいて、車両3Bへの充電の可能性、すなわち充電期待値を予測する予測手段とを備える。充電処理の履歴は、車両3Bの運行者の傾向、好みなどを反映している。例えば、履歴には、バッテリ34の残存電力SOCと充電処理の頻度との関係を含むことができる。また、履歴には、充電処理と充電処理との間の車両3Bの運行時間、および/または走行距離を含むことができる。また、履歴には、充電処理が実行された充電スタンド4の種類、特徴、場所などの充電スタンド4に関する情報を含むことができる。これらの履歴は、時間軸上、および/または地図上における、次の充電処理が実行される可能性を算出するために利用される。充電期待値は、時間軸上、および/または地図上における充電に必要な電力と、充電可能性との積の分布として表現される。充電期待値算出処理P10により算出された充電期待値CHXPには、車両3Bが予測された経路を走行するために必要な予測必要電力ESPCが反映されている。さらに、充電期待値CHXPには、充電処理が実行される可能性の時間軸上の分布、および/または地図上の分布が反映されている。言い換えると、充電期待値は、予測必要電力ESPCを、時間軸上、および/または地図上に分散させて配置した情報とも見ることができる。また、充電期待値CHXPは、車両3Bに充電するために必要な電力需要を示しているともいえる。
充電速度収集処理(CDPC)P11は、車両3Bへ実際に充電した充電スタンド4の充電速度CHSPに関するデータを収集する。充電速度収集処理P11は、充電速度CHSPの他の充電スタンド4に関する情報も収集するように構成されている。
以上に述べた複数の制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
図5は、充電システム1の全体の処理を示すフローチャートである。基準車両3Aは、基準消費電力収集処理P7を実行する。基準車両3Aによって収集された基準消費電力STPCは、サービスセンタ2に送信される。基準車両3Aによって収集された基準消費電力STPCは、設定処理(STCT−1)P13によってサービスセンタ2内のデータベースに記録される。設定処理P13は、基準消費電力処理P1の一部を構成している。サービスセンタ2は、渋滞補正処理(PCCT−1)P14によって道路の渋滞状況TRFCに応じた渋滞補正値TCRを算出する。渋滞補正処理P14は、消費電力補正処理P2の一部を構成している。サービスセンタ2は、送信処理(TRNS)P15により、基準消費電力STPCと渋滞補正値TCRとを車両3Bに提供する。
車両3Bでは、補機電力処理(PCES−1)P16が実行される。補機電力処理P16は、車両3Bの過去の走行における補助機器の過去消費電力APCに基づいて、将来の走行における補助機器の消費電力を予測し、予測補機電力EAPCを算出する。補機電力処理P16では、ナビゲーション制御装置43から車両3Bが今後走行しようとする経路を示す予測経路のデータを取得する。さらに、予測経路と、過去消費電力APCとに基づいて、予測経路において発生すると予測される補助機器の消費電力を予測補機電力ESPCとして算出する。補機電力処理P16は、消費電力予測処理P8の一部を構成する。また、車両3Bでは、車両補正値VCRの算出処理(CRVC)P9が実行される。処理P16および処理P9の後に、必要電力予測処理(PCES−2)P17が実行される。必要電力予測処理P17では、ナビゲーション制御装置43から車両3Bが今後走行しようとする経路を示す予測経路のデータを取得する。必要電力予測処理P17では、予測経路における基準消費電力STPCをサービスセンタ2から送信されたデータから取得する。さらに、必要電力予測処理P17では、予測経路と、基準消費電力STPCと、渋滞補正値TCRと、車両補正値VCRと、予測補機電力ESPCとから、予測経路を走行するために車両3Bが必要とすると予測される予測必要電力ESPCを算出する。さらに、車両3Bでは、充電期待値算出処理P10が実行される。ひとつの車両3Bの充電期待値CHXPは、サービスセンタ2に送信される。
サービスセンタ2では、充電期待値集計処理P3が実行される。充電期待値集計処理P3により、複数の車両3における充電期待値CHXPが集計される。ひとつの車両3Bの充電期待値CHXPは、その車両3Bの電力需要を示している。よって、複数の車両3の充電期待値CHXPを加算することによって複数の車両3に充電するための電力網5における電力需要を示す基礎電力推移PCSD1が求められる。基礎電力推移PCSD1は、少なくとも時間に対する電力需要の分布を示している。また、基礎電力推移PCSD1は、地図上における電力需要の分布を示してもよい。
上記の処理と並行して、または上記の処理の後に、サービスセンタ2は、充電予約処理P5を実行する。充電予約処理P5では、複数の充電スタンド4から特定の充電スタンド4Aを選定し、選定された充電スタンド4Aを車両3Bに送信する。車両3Bにおいては、選定された充電スタンド4Aがナビゲーション装置などに表示され、車両3Bの運行者によって充電スタンド4Aでの充電処理が予約される。予約処理は、サービスセンタ2によって実行されてもよい。特定の充電スタンド4Aを選定する処理は、充電期待値CHXPに基づいて実行することができる。例えば、予測経路上に位置する充電スタンド4、および/または予測経路の近傍に位置する充電スタンド4から、ひとつまたは複数の候補が、充電期待値CHXPに基づいて選定される。充電期待値CHXPは、充電が予測される充電時間帯を示している。一例においては、充電期待値CHXPが示す充電時間帯に予約が可能な充電スタンド4Aを選定することができる。また、充電期待値CHXPは、充電が予測される充電時間帯、および/または地図上の走行位置を示している。一例においては、充電期待値CHXPが示す充電時間帯または走行位置に基づいて利用可能な充電スタンド4Aを選定することができる。また、車両3Bに蓄積された履歴データに基づいて、運行者の好みに適合した充電スタンド4A、あるいは運行者に経済的な利益をもたらす充電スタンド4Aを選定してもよい。また、車両3Bの予定到着時刻と、充電スタンド4の充電速度CHSPとに基づいて、予定到着時刻までに他車への充電が実現可能となる充電速度CHSPをもつ充電スタンド4Aを選定するように構成することができる。
充電予約処理P5に応答して、車両3Bでは、充電処理(CHRG)P12が実行される。例えば、車両3Bの運行者は、サービスセンタ2から提案された充電スタンド4Aにおいて充電処理P12を実行する。充電処理P12では、車両3Bの充電コネクタ37に充電スタンド4Aのコネクタが接続され、バッテリ34への充電が実行される。この充電処理P12の間に、充電速度収集処理P11が実行される。充電速度収集処理P11によって収集された充電速度CHSPを含む充電スタンド4Aに関する情報は、サービスセンタ2に送信される。
サービスセンタ2では、充電スタンドに関する情報を収集する充電情報収集処理(PSCT−1)P18が実行される。充電情報収集処理P18によって収集された充電スタンド4に関する情報は、充電予約処理P5に用いられる。さらに、充電情報収集処理P18によって収集された充電速度CHSPは、電力推移補正処理(PSCT−2)P19に用いられる。電力推移補正処理P19では、充電期待値集計処理P3によって得られた基礎電力推移PCSD1を、充電速度CHSPに基づいて修正し、修正電力推移PCSD2が算出される。ひとつの充電スタンド4に供給すべき最大の電力は、その充電スタンド4の充電速度CHSPに比例する。よって、ひとつの充電スタンド4に供給すべき電力は、充電速度CHSPに応じて制限することができる。そこで、電力推移補正処理P19では、基礎電力推移PCSD1によって示される電力需要を、充電速度CHSPに応じて分散させる。具体的には、電力推移補正処理P19は、基礎電力推移PCSD1を複数の充電スタンド4に割り当てる手段と、ひとつの充電スタンド4Aに割り当てられた電力をその充電スタンド4Aの充電速度CHSPに基づいて時間軸上に分散させる手段とを含む。これにより、それぞれの充電スタンド4の能力を反映した電力需要を示す修正電力推移PCSD2が得られる。サービスセンタ2は、送信処理(TRNS)P20により、基礎電力推移PCSD1と修正電力推移PCSD2とを電力制御センタ6へ送信する。以下の説明では、基礎電力推移PCSD1と修正電力推移PCSD2とを総称して、電力推移PCSDと呼ぶ。
電力制御センタ6は、電力推移PCSDに基づいて電力制御処理(PWCT)P21を実行する。電力制御処理P21には、電力推移PCSDに基づいて、電力網5における資源の配分を調節する処理が含まれる。例えば、電力制御処理P21は、電力推移PCSDが示す電力需要に応えるように発電所の発電電力を調節する。また、電力制御処理P21は、電力推移PCSDが示す電力需要に基づいて、電力網5内の複数の地区のそれぞれへの供給電力、または送電設備の配分を調節する処理を含むことができる。さらに、電力制御処理には、電力推移PCSDに基づいて、電力網5の設備を計画する処理を含むことができる。
図6は、基準消費電力STPCを収集するための処理を説明するブロック図である。基準車両3Aが道路上の区間SA、SBを走行する過程が図示されている。通信ネットワーク7は、道路上に複数の路上局7A、7B、7Cを有している。路上局7A、7B、7Cは、交差点の信号機などに設置されている。ひとつの路上局は、ひとつの交差点に対応する通信可能範囲CRを有している。
基準車両3Aは、自らが走行している区間SA、SBを特定する区間特定手段と、その区間における自らの消費電力を計測する計測手段と、基準消費電力STPCを算出する手段と、基準消費電力STPCをサービスセンタ2に送信する送信手段とを備える。サービスセンタ2は、基準車両3Aから基準消費電力STPCを受信する手段を備える。例えば、基準車両3Aは、区間SA、SBを走行した場合、区間SAにおける基準消費電力STPC(SA)と、区間SBにおける基準消費電力STPC(SB)とを送信する。一方、サービスセンタ2は、基準消費電力処理P1とデータベース23Aとによって、基準消費電力STPCを記憶し、蓄積する蓄積手段を提供している。
図7は、基準消費電力STPCを収集するための基準車両3Aにおける処理60を示すフローチャートである。図7は、基準消費電力収集処理P7を示している。ステップ61では、走行前処理が実行される。ステップ62では、基準車両3Aの走行計画に基づいて走行が予定された区間と交差点とを特定するための複数の区間ID(SCID)と複数の交差点ID(CRID)とが設定される。ステップ63では、走行前の残存電力SOCを示す初期残存電力SOCiが計測される。
基準車両3Aが走行し所定の交差点に到達すると、以下の処理が実行される。ステップ64では、路上局から交差点IDが受信される。ステップ65では、交差点の中央を特定し、自車が中央を通過したか否かが判定される。交差点の中央は、区間の両端を示す基準点として用いられる。交差点の中央は、ナビゲーション制御装置43から得られる自車の位置情報に基づき、または画像認識処理に基づき特定する。例えば、自車と交差点の中央との距離を算出し、自車がその距離を走行したら、交差点の中央に到達したものと判定する。また、路上局7A、7B、7Cは、通信可能範囲CRに基づいて交差点の中央を特定してもよい。なお、交差点の中央は、道路の厳密な中央地点である必要はない。交差点の中央は、交差点の通過を判別するための基準点として用いられるので、車両によって認識可能な種々の地点によって代替することができる。基準車両3Aが交差点の中央を通過するとステップ66へ進む。
ステップ66では、新区間の消費電力SPC(i)の計測を開始する。これにより、バッテリ34の電流が計測され、記録される。バッテリ34の電流は、電動発電機31の必要トルクに応じて変動する。さらに、回生制御によって、基準車両3Aが減速されるときには、電動発電機31は発電機として使用される。よって、減速時には電力がバッテリ34へ供給され、バッテリ34が充電される。電流センサ40は、電流の方向と大きさとを検出する。ステップ67では、新区間の開始時の時刻、およびバッテリ34の電圧などのバッテリ34の状態が記録される。
ステップ68では、前区間があったか否かが判定される。最初の区間である場合、区間カウンタiをカウントアップし、ステップ64へ戻る。これにより、ステップ66によるバッテリ状態の記録が継続される。やがて、基準車両3Aが次の交差点に到達すると、ステップ64からステップ67の処理が再び実行される。これにより、次の区間の消費電力SPC(i)の計測処理が開始される。一方、ステップ65を再び通過したことは、前区間の終了を意味している。ステップ68では、前区間があったことが判定されるから、ステップ69へ進む。
ステップ69では、前区間の消費電力SPC(i−1)の計測を終了する。これにより前区間における電流の計測が終了する。ステップ70では、前区間の終了時の時刻、およびバッテリ34の電圧などのバッテリ34の状態が記録される。ステップ71では、前区間の消費電力STPC(i−1)が算出され、記録される。消費電力STPC(i−1)は、区間走行中にバッテリ34から流出した電流の平均電流に基づいて算出される。消費電力STPC(i−1)は、計測開始時のバッテリ電圧と終了時のバッテリ電圧との平均電圧に基づいて算出される。消費電力STPC(i−1)は、STPC(i−1)=平均電流×平均電圧×区間走行時間に基づいて算出される。なお、区間の基準点として、一定の時間間隔を用いてもよい。例えば、一定の周期で消費電力を算出してもよい。また、一定周期で算出された消費電力を、交差点によって示される区間の終了後に合計してもよい。このような手法は、高速道路など区間が長距離の場合に有効である。高速道路などでは、消費電力量が多く、またバッテリ電圧の変化が直線的ではない場合が生じる。このため、上記手法は、消費電力の算出精度を高くするために有効である。
ステップ72では、計画された区間の走行を終了したか否かを判定する。走行を継続する場合、ステップ64へ戻る。ステップ64からステップ72の処理を繰り返すことにより、複数の区間の消費電力が計測され、記録される。計画された区間をすべて走行した場合、ステップ73へ進む。
ステップ73では、走行後処理を実行する。走行後処理73では、各区間における消費電力の誤差を抑制するために、全区間を含む走行全体の総合消費電力CPCに基づいて各区間の消費電力を補正して、各区間の基準消費電力STPCとして確定させる。
ステップ74では、走行後の残存電力SOCを示す終期残存電力SOCeが計測される。ステップ75では、初期残存電力SOCiと終期残存電力SOCeとに基づいて総合消費電力CPC(Wh)が算出される。総合消費電力CPCは、初期残存電力SOCiと終期残存電力SOCeとの差に基づいて算出することができる。ステップ76では、複数の区間の消費電力SPC(i)を合計することによって合計消費電力TPC(Wh)を算出する。合計消費電力TPCは、TPC=ΣSPC(i)によって算出される。
ステップ77では、各区間の消費電力SPC(i)と、総合消費電力CPCと、合計消費電力TPCとに基づいて、各区間の区間補正値SCRを算出する。ステップ77は、各区間の消費電力量SPC(i)を合計消費電力TPCで割ることにより区間の消費電力比率(%)を算出する工程と、総合消費電力CPCと合計消費電力TPCとの差を算出する工程と、この差に消費電力比率を掛けることにより区間補正値SCR(i)を算出する工程とを含むことができる。この場合、区間補正値SCR(i)は、SCR(i)=(CPC−TPC)×SPC(i)/TPCによって算出される。
ステップ78では、基準消費電力STPCの確定処理を実行する。ステップ78では、各区間の消費電力SPC(i)を区間補正値SCR(i)により補正し、各区間の基準消費電力STPC(i)を算出する。例えば、基準消費電力STPCは、STPC(i)=SPC(i)+SCR(i)によって算出される。ステップ61からステップ78の一連の処理により、基準車両3Aを道路上の複数の区間を走行することにより、それら区間における消費電力を計測する計測手段が提供される。
ステップ79では、確定された基準消費電力STPC(i)がサービスセンタ2に送信される。よって、通信手段は、基準車両3Aによって計測された消費電力をサービスセンタ2に送信するよう構成されている。
一方、サービスセンタ2では、基準車両3Aから送信される基準消費電力STPC(i)を受信し、データベース23Aに記録する処理が実行される。すなわち、データベース23Aは、基準車両3Aによって計測され、基準車両3Aから得られた消費電力を基準消費電力として記憶するよう構成されている。
図8は、車両補正値VCRを算出するための処理を説明するブロック図である。車両3Bが道路上の区間SA、SBを走行する過程が図示されている。
サービスセンタ2は、基準消費電力STPCを車両3Bに送信する手段を備える。車両3Bは、自らが走行している区間SA、SBを特定する区間特定手段と、その区間における自らの実消費電力CPCを計測する計測手段と、その区間における基準消費電力STPCを受信する受信手段と、少なくとも実消費電力CPCと基準消費電力STPCとに基づいて車両補正値VCRを算出する手段とを備える。例えば、車両3Aが、区間SA、SBを走行した場合、サービスセンタ2は、区間SAにおける基準消費電力STPC(SA)と、区間SBにおける基準消費電力STPC(SB)とを送信する。一方、車両3Aは、基準消費電力STPC(SA)と、基準消費電力STPC(SB)とを受信する。一方、を記憶し、蓄積する蓄積手段を提供している。
図9は、複数の車両3のためにサービスセンタ2が実行するデータ提供処理90を示すフローチャートである。図9は、基準消費電力処理P1の一部を示している。ステップ91では、既存の交通管制システムから各区間の渋滞状況TRFCを入力する。例えば、渋滞状況TRFCは、ひとつの区間の年間の平均車速VSMYと、その区間の現在の車速VSPTとを入力する。ステップ92では、各区間の渋滞補正値TCRを算出し、渋滞状況TRFCとしてデータベース23Bに記録する。渋滞補正値TCRを算出するために、サービスセンタ2は、基準車両3Aの走行に使う消費電力と車速との関係を示すデータを記憶している。このデータにより、車速に基づいて消費電力を求めることができる。ステップ92では、各区間の車速情報に基づいて、各区間の渋滞補正値TCRを算出する。まず、現在の車速VSPTにおける消費電力SPC(VSPT)を求める。次に、平均車速VSMYにおける消費電力SPC(VSMY)を求める。渋滞補正値TCR(%)は、例えば、TCR=(SPC(VSPT))/(SPC(VAMY))×100によって求めることができる。
ステップ93では、渋滞補正値TCRを車両3Bに送信する。ステップ91からステップ93の一連の処理により、渋滞補正値算出手段が提供される。渋滞補正値算出手段は、道路上の複数の区間の渋滞状況に応じた渋滞補正値TCRを算出する。
ステップ94では、基準消費電力STPCを車両3Bに送信する。ステップ94は、基準消費電力STPCをサービスセンタ2から車両3Bに送信する通信手段を提供する。ステップ93およびステップ94における送信処理は、車両3Bからの要求に応じて実行されてもよい。例えば、車両3Bから要求された区間の渋滞補正値TCRと基準消費電力STPCだけを送信することができる。また、一定期間毎に、あるいは一定の更新が生じた場合に、全区間の渋滞補正値TCRと基準消費電力STPCとを送信してもよい。
図10は、車両補正値VCRを算出するための車両3Bにおける処理100を示すフローチャートである。図10は、車両補正値VCRの算出処理P9を示している。ステップ101では、走行前処理が実行される。ステップ102では、補助機器の消費電力APCの計測処理と記録処理とが開始される。ステップ102では、充電制御装置41が、ネットワーク49を通して、他の制御装置45、47に消費電力の記録を指示する。補助機器の消費電力の記録は、消費電力に大きな影響を与える比較的電力消費が大きい負荷を制御する制御装置に指示され、実行される。ここでは、空調制御装置45とボデー制御装置47とに対して指示が出力される。制御装置45、47は、指示を受けると、消費電力の計測と記録とを開始し、終了指示を受けるまで継続する。ステップ103では、走行前の残存電力SOCを示す初期残存電力SOCiが計測される。
車両3Bが走行し所定の交差点に到達すると、以下の処理が実行される。ステップ104では、路上局から交差点IDを受信する。ステップ105では、車両3Bが走行している走行区間が特定される。ステップ106では、走行区間の基準消費電力STPCをサービスセンタ2から受信する。ステップ107では、走行区間の渋滞補正値TCRをサービスセンタ2から受信する。ステップ108では、合計消費電力TPCが算出される。合計消費電力TPCは、TPC=Σ(STPC×TCR)によって算出される。ここでは、区間の基準消費電力STPCに区間の渋滞補正値TCRをかけることにより区間の道路状況に応じた補正が実行される。
ステップ109では、車両3Bが走行を終了したか否かを判定する。例えば、走行の終了は、車両3Bのパーキングブレーキの操作、シフトレバーのパーキング(P位置)への移動操作、またはキースイッチのオフ操作に基づいて判定することができる。走行を継続する場合、ステップ104へ戻る。ステップ104からステップ108の処理を繰り返すことにより、複数の区間の基準消費電力STPCが積算される。車両3Bが走行を終了するとステップ110へ進む。
ステップ110では、走行後処理を実行する。走行後処理110では、消費電力の誤差を抑制するために、車両3Bに特有の補正値を算出する。ステップ111では、走行後の残存電力SOCを示す終期残存電力SOCeが計測される。ステップ112では、初期残存電力SOCiと終期残存電力SOCeとに基づいて総合消費電力CPC(Wh)が算出される。総合消費電力CPCは、初期残存電力SOCiと終期残存電力SOCeとの差に基づいて算出することができる。総合消費電力CPCは、車両3Bが所定区間を走行したときの実消費電力に相当する。ステップ112は、実消費電力を計測する計測手段を提供する。
ステップ113では、ステップ102で開始された補助機器の消費電力の計測処理が停止され、補助機器の実消費電力APCが算出される。ここでは、空調制御装置45から充電制御装置41に送信される消費電力と、ボデー制御装置47から充電制御装置41に送信される消費電力とが合計され、補助機器の実消費電力APCとされる。車両3Bに搭載された補助機器の消費電力は、補助機器消費電力と呼ばれる。ステップ113は、車両3Bが所定区間を走行したときの補助機器消費電力を計測する補助機器消費電力計測手段を提供する。
ステップ114では、総合消費電力CPCと、合計消費電力TPCと、補助機器の実消費電力APCとに基づいて、車両補正値VCRを算出する。ステップ114は、総合消費電力量CPCから、走行した区間における合計消費電力TPCを引き算し消費電力差を算出する工程と、この消費電力差から、さらに、補助機器の実消費電力APCを引き算し誤差を算出する工程とを含むことができる。消費電力差は、基準車両3Aと車両3Bとの定常的な特性差、運転者の特性差、および補助機器の作動状態の差を含んでいる。よって、消費電力差から補助機器の実消費電力APCを引き算することによって、基準車両3Aと車両3Bとの定常的な特性差、および運転者の特性差のような車両3Bに特有の誤差を算出することができる。この場合、車両補正値VCRは、VCR=(CPC−TPC−APC)/TPCによって算出される。すなわち車両補正値VCRは、基準消費電力STPCを渋滞補正値TCRによって補正した基準値TPCに対する係数として与えられる。
さらに、車両補正値VCRステップ115では、車両補正値VCRが車両3Bにおいて記録される。この結果、ステップ114、115により、車両補正値を設定する設定手段が提供される。設定手段は、車両3Bが所定区間を走行したときの基準消費電力STPC(TPC)と、実消費電力CPCと、補助機器消費電力APCとに基づいて車両補正値VCRを設定する。
このように車両3Bに特有の車両補正値VCRが当該車両3Bにおいて算出され、当該車両3Bにおいて記録される。これにより、車両3Bに特有の構成、使用状態、運転者の操作の傾向を反映する車両補正値VCRを求めることができる。しかも、車両補正値VCRの算出処理を複数の車両3のそれぞれに分散することができる。
図11は、充電期待値CHXPに関連する処理を説明するブロック図である。車両3Bが出発地8Aから目的地8Bまで走行する過程が図示されている。車両3Bは、出発地8Aから走行を開始し、充電スタンド4Aにおいて充電した後、目的地8Bに到達する。この場合、出発地8Aにおいて、または出発地8Aの近傍において、路上局7Aを経由して、充電期待値CHXPがサービスセンタ2に送信される。また、充電スタンド4Aに到達する前に、路上局7Bを経由して、充電予約のための処理が実行される。
車両3Bは、自らの充電処理に関する履歴情報を収集する充電履歴情報収集手段と、充電スタンド4の充電速度を含む充電スタンド4に関する情報を収集する充電器情報収集手段とを備える。さらに、車両3Bは、自らが今後走行する経路における区間を予測する区間予測手段と、それらの区間における基準消費電力STPCを受信する手段と、少なくとも基準消費電力STPCに基づいて予測必要電力ESPS、ESPCを予測する電力予測手段と、予測必要電力ESPS、ESPCの少なくとも一部を電力網5からの充電によって得るための電力需要を示す充電期待値CHXPを算出する手段と、この充電期待値CHXPを送信する送信手段とを備える。
一方、サービスセンタ2は、基準消費電力STPCを車両3Bに送信する手段を備える。さらに、サービスセンタ2は、充電期待値CHXPに基づいて電力需要を示す電力推移PCSDを算出する手段と、電力推移PCSDを電力制御センタ6に送信する手段とを備える。電力制御センタ6は、電力推移PCSDに応じて電力網5への電力供給を制御する手段を備える。
図12は、車両3Bが充電されるときに車両3Bにおいて実行される処理120を示すフローチャートである。図12は、充電期待値算出処理P10の一部と、充電速度収集処理P11とを示している。ステップ121では、充電処理の開始を示す充電コネクタ37の接続が検出される。
ステップ122では、車両3Bの充電処理の履歴情報を蓄積する処理が実行される。履歴情報は、車両3Bへの充電が開始されたときのバッテリ34の残存電力SOCcによって示される。より具体的には、残存電力SOCに対する充電開始の頻度が履歴情報として蓄積される。この情報は、バッテリ34の残存電力SOCに対する充電開始の確率を示す。よって、この情報は、充電確率とも呼ぶことができる。すなわち、どれぐらいの残存電力SOCの時に、車両3Bの運転者が最も充電しようと判断するかという充電行動の傾向が示される。ステップ122は、バッテリ34への充電処理が実施される可能性を示す充電確率CHPBを算出する充電確率算出手段を提供する。この手段は、充電処理が実施されたときのバッテリ34の残存電力SOCに対する充電処理の頻度に基づき充電確率CHPBを算出している。
ステップ123では、充電開始時の初期残存電力SOCcが計測される。ステップ124では、充電確率CHPBのデータが更新される。充電確率CHPBは、車両3に搭載されたデータベースに記録される。
図13は、処理120によって集計される充電確率CHPBの一例を示すグラフである。充電確率CHPBは、残存電力SOCに対する充電処理の頻度分布として表現することができる。車両3Bへの充電が繰り返されることにより、頻度分布は、運転者の傾向を反映するようになる。図示された充電確率CHPBは、合計100%となるように設定されている。充電確率CHPBは、任意の残存電力SOCにおいて充電が実施される確率(%)を示している。このような充電確率CHPBのデータから、充電確率閾値CHthが設定される。充電確率閾値CHthは、充電処理の頻度が所定回数以上となる残存電力SOCによって示される。図示の例においては、残存電力SOC=50%を、充電確率閾値CHthとしている。充電確率閾値CHthの初期値は、例えば40%などの所定の値とすることができる。また、充電確率閾値CHthは、固定値としてもよい。
図12に戻り、ステップ125では、充電処理が実行される。これにより、バッテリ34が充電される。
ステップ126では、充電スタンド4に関する情報を収集する処理が実行される。ステップ126は、充電スタンド4から前記バッテリ34へ充電するときに充電速度を計測する計測手段を提供する。ステップ127では、充電スタンド4Aを特定する情報が収集され、記録される。例えば、充電スタンド4Aを示す識別コード、充電スタンド4Aの地図上の位置、充電スタンド4Aが配置されている区間の区間IDなどにより充電スタンド4Aを特定することができる。
ステップ128では、充電処理終了時の終期残存電力SOCfが計測される。ステップ129では、初期残存電力SOCcと終期残存電力SOCfとに基づいて実充電量ACPW(Wh)が算出される。実充電量ACPWは、バッテリ34の総電力量をTBPW(Wh)として、ACPW=TBPW×(SOCf−SOCc)/100によって求められる。総電力量TBPWは、TBPW=バッテリ容量(Ah)×電圧(V)によって求められる。なお、充電量は、充電スタンド4Aから車両3へ与えられてもよい。ステップ130では、充電速度CHSPが算出される。充電速度CHSPは、充電処理125に要した時間と、ステップ129で算出された充電量から求めることができる。ステップ131では、充電スタンド4Aを特定する情報と、充電速度CHSPとをサービスセンタ2に送信する。
サービスセンタ2では、充電スタンド4Aを特定する情報と、充電速度CHSPとを受信し、データベース23Dに記録する。サービスセンタ2では、充電スタンド4に関する古い情報を削除し、新しい情報を記録する。特定の充電スタンド4について新しい情報が所定期間にわたって得られない場合、その充電スタンド4が廃止されたと判断して、その充電スタンド4に関する情報を削除してもよい。
図14は、車両3Bが出発地8Aから目的地8Bまで走行するために必要な必要電力を予測するための車両3Bにおける処理140を示すフローチャートである。図14は、消費電力予測処理P8を示している。消費電力予測処理P8が実行されるとき、サービスセンタ2では、図9に示したデータ提供処理90が実行される。
ステップ141では、ナビゲーション制御装置43を利用して、出発地8Aと目的地8Bとを設定する処理が実行される。例えば、目的地8Aは、ナビゲーション装置43に備えられた現在地検出手段によって求めることができる。また、目的地8Bは、車両3Bの乗員からの設定操作によって設定することができる。また、目的地8Bは、車両3Bの運行履歴、運行時間などから予測されてもよい。ステップ142では、出発地8Aから目的地8Bまでの経路がナビゲーション制御装置43によって設定される。ステップ143では、ステップ142において設定された経路に基づいて、車両3Bが通過しようとしている区間を特定する。これにより、複数の区間が特定される。
ステップ144では、ステップ143において特定されたすべての区間のそれぞれの基準消費電力STPC(i)をサービスセンタ2から受信する。基準消費電力STPC(i)は、出発地8Aにおいて、もしくは出発地8Aからの出発後早急に、通信ネットワーク7を介して受信される。ステップ145では、ステップ143において特定されたすべての区間のそれぞれの渋滞補正量TCR(i)をサービスセンタ2から受信する。
ステップ146では、ステップ143において特定されたすべての区間のそれぞれの補機消費電力EAPC(i)が予測される。補機消費電力EAPC(i)は、ステップ113において求められた補助機器の実消費電力APCに基づいて算出することができる。補機消費電力EAPC(i)は、補助機器を制御する制御装置45、47から充電制御装置41に提供され、集計されてもよい。また、充電制御装置41内に、補助機器毎の消費電力マップを記録し、補助機器の作動情報に基づいて補機消費電力EAPC(i)を算出してもよい。例えば、季節を示す情報に基づいて空調装置46の消費電力EAPC(i)が得られる。また、時刻を示す情報に基づいて照明装置などの負荷48の消費電力EAPC(i)が得られる。ステップ146により、将来の走行における補助機器の補助機器消費電力EAPCを予測する補助機器消費電力予測手段が提供される。
ステップ147では、それぞれの区間における必要電力を予測することにより、予測必要電力ESPS(i)が算出される。区間の予測必要電力ESPS(i)は、例えば、ESPS(i)=STPC(i)×TCR(i)×VCR+EAPC(i)によって求めることができる。区間の予測必要電力ESPS(i)は、当該区間における渋滞状況に起因する差が補償されている。また、区間の予測必要電力ESPS(i)は、車両3Bに特有の要素に起因する差が補償されている。さらに、区間の予測必要電力ESPS(i)は、当該区間における補助機器の消費電力に起因する差が補償されている。
ステップ148では、出発地8Aから目的地8Bまでの全区間における予測必要電力ESPCが算出される。全区間の予測必要電力ESPCは、ESPC=ΣESPS(i)によって算出することができる。ステップ149では、それぞれの区間のための複数の予測必要電力ESPS(i)と、全区間のための予測必要電力ESPCとを車両3Bのデータベースに記録する。
図15は、充電期待値CHXPを算出するための車両3Bにおける処理150を示すフローチャートである。図15は、充電期待値算出処理P10の一部を示している。ステップ151では、予測必要電力ESPS(i)、ESPCを読み出す。ステップ152では、バッテリ34の劣化状態を検出する。バッテリ34の劣化状態は、バッテリ34の充放電能力から検出することができる。ここで検出される劣化状態は、バッテリ34の残存電力SOCの減少の速さを示すものである。ステップ153では、残存電力SOCの推移を予測する。ステップ153での処理は、車両3Bが出発地8Aから目的地8Bへ向けて走行する過程における残存電力SOCの推移を予測する。ステップ153の処理は、出発地8Aにおける残存電力SOCから、各区間の予測必要電力ESPS(i)を順に減算することによって算出することができる。このステップ153においては、バッテリ34の劣化状態が考慮される。すなわち、バッテリ34の劣化が進行するほど、バッテリ34の残存電力SOCの減少量は大きくなる。例えば、同じ予測必要電力ESPS(i)を供給する場合、劣化が進行したバッテリ34の残存電力SOCの減少量は、劣化が少ないバッテリ34の残存電力SOCの減少量より大きい。そこで、残存電力SOCの推移は、各区間の予測必要電力ESPS(i)と、バッテリ34の劣化状態とに基づいて予測される。
ステップ154では、充電期待区間CHSCを予測する。充電期待区間CHSCは、充電処理の履歴を示す充電確率CHPBと、予測された残存電力SOCの推移とに基づいて予測される。
図16は、車両3Bの走行と、車両3Bへの充電が期待される充電期待区間CHSCとの関係を説明する説明図である。車両3Bが出発地8Aから目的地8Bへ走行する場合、残存電力SOCが充電確率閾値CHthを下回ると、運転者は車両3Bに充電する可能性があると判定できる。よって、充電期待区間CHSCは、残存電力SOCが充電確率閾値CHthを下回る地点Dth1と、目的地8Bとの間に設定することができる。
図17は、バッテリ34の残存電力SOCと充電期待区間CHSCとの関係の一例を示すグラフである。車両3Bの走行に伴って、残存電力SOCは徐々に減少する。この減少量は、区間の予測必要電力ESPS(i)に対応している。車両3Bが複数の区間を走行すると、区間の予測必要電力ESPS(i)に基づいて、図示されるような階段状の残存電力SOCの推移が予測される。ステップ153では、図示されるような残存電力SOCの推移が予測される。充電期待区間CHSCは、残存電力SOCが充電確率閾値CHthを下回る地点Dth1から始まる。
図18は、バッテリ34の残存電力SOCと充電期待区間CHSCとの関係の他の例を示すグラフである。図18のバッテリは、図17のバッテリより劣化が進行している。図18の残存電力SOCの減少は、図17の残存電力SOCの減少より速い。このため、図18の充電期待区間CHSCは、図17の充電期待区間CHSCより近距離に設定される。例えば、充電期待区間CHSCは、走行距離Dth2から始まる。ステップ153では、バッテリの劣化状態が残存電力SOCの推移を予測する処理に反映される。すなわち、バッテリの劣化が進行するほど、残存電力SOCが早く減少するように、残存電力SOCの推移が予測される。この結果、バッテリの劣化状態に応じた充電期待区間CHSCを設定することができる。
図15に戻り、ステップ155では、充電期待区間CHSCにおける充電量CHPWを予測する。ここでは、充電期待区間CHSC内の複数の区間のそれぞれにおける充電量CHPW(i)が予測される。充電量CHPWは、充電期待区間CHSC内における残存電力SOCから求めることができる。例えば、バッテリ34を所定の目標値まで回復させるために必要な充電量CHPWを予測することができる。目標値は、車両3Bの過去の充電履歴から設定することができる。また、目標値は、目的地8Bまで走行できるように設定されてもよい。また、目標値は、例えば80%の固定値としてもよい。また、目的地8Bまで走行するために必要な予測必要電力ESPCを得るために必要な充電量CHPWを予測してもよい。ステップ155は、バッテリ34への充電量CHPWを予測する充電量予測手段を提供する。
図17において、車両3Bが距離Dth3において充電スタンド4Aに到達し、充電される場合、バッテリ34の残留電力SOCを約80%に回復させるために必要な充電量CHPWを予測することができる。残存電力SOCは、車両3Bが走行するほど減少するから、予測された充電量CHPWは、車両3Bが走行するほど増加する。車両3Bが距離Dth3で充電されると、残存電力SOCは、破線のように推移する。
図15に戻り、ステップ156では、充電期待区間CHSC内の複数の区間のそれぞれにおける充電期待値CHXPが算出される。充電期待値CHXPは、CHXP(i)=CHPW(i)×CHPB(i)に基づいて求めることができる。充電期待値CHXPは、予測された充電量CHPW、すなわち車両3Bが必要とする電力を、充電期待区間CHSC内において時間軸上、および/または地図上に分布させた値ということができる。しかも、充電量CHPWは、充電確率CHPBを重み指標として、重み付けされて分布されている。ステップ156は、充電量CHPWを充電確率CHPBに基づき時間軸上、および/または地図上に分布させた充電期待値CHXPを算出する充電期待値算出手段を提供する。ステップ157では、充電期待値CHXPがサービスセンタ2に送信される。
図19は、ひとつの車両における充電期待値の一例を示す表である。処理150の開始時刻をゼロ(0)とする。時刻が進むに従って、残存電力SOCが徐々に減少している。充電確率CHPBは、残存電力15%のときをピークとして、ほぼ正規分布を示している。時刻が進むに従って、車両3Bが走行するため、区間が順に切り替わっている。図示の例では、区間Aから充電期待区間CHSCが始まっている。区間Aから区間Eの複数の区間のそれぞれにおいて、充電量CHPWが予測されている。充電期待値CHXPは、区間Aから区間Eの複数の区間のそれぞれにおいて設定されている。図示の例においては、充電期待値CHXPは、時間軸上における電力需要の分布を示している。
図20は、サービスセンタ2における充電期待値CHXPに関連する処理170を示すフローチャートである。ステップ171では、充電期待値CHXPを車両3Bから受信する。ステップ172では、充電スタンド4の予約処理を実行する。ステップ173では、充電期待値CHXPに基づいて利用可能な充電スタンド4を割り当てる。ステップ174では、利用可能な充電スタンド4を車両3Bの運転者に対して提案する。ステップ172は、ひとつの車両3Bの充電期待値CHXPに基づいてバッテリ34への充電処理に関する情報を提供する情報提供手段を提供する。この手段は、充電スタンドに関する情報を提供する。車両3Bには、サービスセンタ2から提案された充電スタンド4Aと、その充電スタンド4Aまでの経路とが表示される。運転者は、自らが所有する携帯電話、車載通信端末、またはサービスセンタ2を経由して充電スタンド4Aの利用を予約する。
ステップ174において提案される充電スタンド4は、車両3Bの充電期待値CHXPに基づいて設定されている。このため、車両3Bの運転者が充電したくなる可能性が高い時刻、および/位置における充電スタンド4を提案することができる。言い換えると、車両3Bの運転者が過去の運転履歴においてほとんど充電処理を実行したことがないような時刻、および/または位置に対応する充電スタンド4が提案されることを回避できる。
ステップ175では、複数の車両3Bから提供された複数の充電期待値HCXPに基づいて、電力推移PCSDが作成される。ステップ175は、電力推移処理P4を示している。充電期待値CHXPには、予測手段により予測された必要電力が反映されている。よって、ステップ175は、必要電力に基づいて電力需要を予測する電力需要予測手段を提供する。ステップ175は、充電期待値CHXPに基づいて電力需要を予測する電力需要予測手段を提供するともいえる。電力需要は、複数の車両に関する複数の充電期待値を集計することによって得られる。ステップ176では、基礎電力推移PCSD1が作成される。ステップ177では、修正電力推移PCSD2が作成される。ステップ178では、基礎電力推移PCSD1と、修正電力推移PCSD2とを含む電力推移PCSDを示すデータがサービスセンタ2から電力制御センタ6へ送信される。ステップ178は、電力需要予測手段により予測された電力需要を、電力網5を制御する電力制御センタ6へ送信する電力情報提供手段を提供する。
図21は、充電期待値CHXPから電力推移を算出するためのサービスセンタ2における処理180を示すフローチャートである。図21は、ステップ175を詳細に示している。図21は、電力推移処理P4を示している。処理180は、電力推移を示すデータに、複数の車両3を充電するための電力需要の変化を反映できるように定められた所定の時間間隔で実行される。ステップ181では、複数の車両3のそれぞれにおいて算出された複数の充電期待値CHXPが集計される。
ステップ182では、基礎電力推移PCSD1が作成される。ステップ183では、区間毎の充電期待値CHXPが集計される。すなわち、複数の車両3から提供された充電期待値CHXPを、ひとつの区間に着目して集計する。
図22は、ひとつの区間における充電期待値CHXPの推移の一例を示す表である。図中には、区間Aにおける複数の車両の充電期待値CHXPと、その合計値が図示されている。区間は、区間IDによって示されている。それぞれの車両3は、車両ID(VHID)によって示されている。ステップ183の処理により、ひとつの区間における電力需要の時間軸上の変化を得ることができる。
図21に戻り、ステップ184では、電力網5内における充電期待値CHXPを集計する。すなわち、電力網5内に位置するすべての区間の充電期待値CHXPが集計される。それぞれの区間の充電期待値CHXPは、ステップ183の処理によって与えられる。
図23は、ひとつの電力網5における充電期待値CHXPの推移の一例を示す表である。図中には、GRID=No.1によって表される電力網5に属する区間Aから区間ZZにおける充電期待値CHXPの集計値が図示されている。充電期待値CHXPの集計値は、複数の車両3を充電するために必要な充電電力の時間軸上の推移を示している。言い換えると、充電期待値CHXPの集計値は、電力網5内における複数の車両3の電力需要の推移を示している。充電期待値CHXPの集計値が、基礎電力推移PCSD1として設定される。ステップ182は、移動体である車両3Bに搭載されたバッテリ34へ充電するために必要な電力の推移を示す基礎電力推移PCSD1を算出する電力推移算出手段を提供している。
図21に戻り、ステップ185では、修正電力推移PCSD2が作成される。複数の車両3への充電は、複数の充電スタンド4によって実行される。しかし、複数の充電スタンド4は互いに異なる充電能力をもつ場合がある。また、電力網5から充電スタンド4に至る送電機器の容量が異なる場合も想定される。このような場合、充電スタンド4から車両3に供給できる単位時間あたりの電力に差が発生する。例えば、充電速度の差が発生する。この結果、充電期待値CHXPで示される電力需要が、充電スタンド4の充電能力を超える場合がある。そこで、ステップ185では、充電スタンド4の充電速度に応じて基礎電力推移PCSD1を修正する。ステップ185は、基礎電力推移PCSD1を充電速度CHSPに基づいて修正し、修正電力推移PCSD2を算出する修正手段を提供する。
ステップ186では、区間毎に集計された充電期待値CHXPに、その区間において利用可能な充電スタンド4を割り当てる。
図24は、充電期待値CHXPの推移と充電スタンド4(充電器)との関連付けの一例を示す表である。充電スタンド4は、充電器ID(CHID)によって示されている。図示の例では、区間Aにおける充電期待値CHXPの推移に対して、区間Aに属する充電器CHID=1と、充電器CHID=10とが割り当てられている。区間Bにおける充電期待値CHXPの推移に対して、区間Bに属する充電器CHID=2が割り当てられている。また、区間Cにおける充電期待値CHXPの推移に対して、区間Cに属する充電器CHID=3が割り当てられている。
図21に戻り、ステップ187では、充電スタンド毎、すなわち充電器毎の充電期待値CHXPを集計する。ステップ188では、充電器毎の充電期待値CHXPの集計値を、各充電器の充電速度CHSPに基づいて修正し、修正電力推移PCSD2を作成する。修正電力推移PCSD2は、後述する図26のような充電器毎の電力推移を示す形態とすることができる。また、修正電力推移PCSD2は、図23に図示されたような、電力網5における充電期待値CHXPの集計値の形態とすることもできる。
図25は、充電器毎の充電期待値CHXPの一例を示す表である。この表には、充電スタンド4の充電速度CHSPが記載されている。例えば、充電器CHID=1には、1時間後には20kWhの充電期待値が割り当てられている。充電器CHID=1には、2時間後には80kWhの充電期待値が割り当てられている。よって、2時間後においては、充電器CHID=1の充電速度50kW/hを超える充電期待値CHXPが割り当てられている。これでは、充電器CHID=1は、電力需要として予定された80kWhを充電することができない。また、充電器CHID=2には、現在、すなわち0時間後に30kWhの充電期待値CHXPが割り当てられている。ところが、充電器CHID=2の充電速度CHSPは、3kW/hである。このため、充電器CHID=2は、電力需要として予定された30kWhを充電することができない。
図26は、充電スタンド4の充電速度CHSPに応じて修正された充電期待値CHXPの一例を示す表である。図27は、修正プロセスを説明するためのグラフである。2時間後に充電器CHID=1に割り当てられた80kWhの充電期待値CHXPのうち、充電速度50kW/hを超える30kWhが、後の時間にずらして設定されている。これにより、充電スタンド4の充電速度CHSPを超えないように充電期待値CHXPを修正することができる。
図28は、修正プロセスを説明するためのグラフである。0時間後に充電器CHID=2に割り当てられた30kWhの充電期待値CHXPは、充電速度3kW/hずつに分割され、後の時間にずらして設定されている。これにより、充電スタンド4の充電速度CHSPを超えないように充電期待値CHXPを修正することができる。
図21に戻り、ステップ189では、基礎電力推移PCSD1と、修正電力推移PCSD2とがサービスセンタ2から電力制御センタ6へ送信される。電力制御センタ6では、電力制御処理P21によって、基礎電力推移PCSD1と、修正電力推移PCSD2とに基づいて、電力網5が制御される。電力制御処理P21は、修正電力推移PCSD2に基づいて電力網5を制御する電力網制御手段を提供する。例えば、電力制御センタ6では、基礎電力推移PCSD1と、修正電力推移PCSD2とに基づいて、電力網5への電力供給が調節される。また、電力制御センタ6では、基礎電力推移PCSD1と、修正電力推移PCSD2とに基づいて、電力網5の設備計画が立案され、実行される。
この実施形態によると、サービスセンタ2は基準消費電力STPCを収集し、車両3Bに提供する。一方、車両3Bでは、基準消費電力STPCと車両3Bに特有の補正値VCRとに基づいて車両3Bの走行に必要な必要電力を予測する。このような処理の分担により、処理負担を適切に分散させながら、車両3Bの必要電力を正確に算出することができる。また、車両3Bが初めて走行する道路の区間においても必要電力を正確に算出することができる。さらに、必要電力の予測には、車両3Bにおける補助機器の消費電力EAPCが考慮される。このため、車両3Bに特有の補助機器の使用状況を反映して必要電力を正確に予測することができる。さらに、道路の渋滞状況TRFCに起因する消費電力の差を補償することができる。
また、車両3Bの充電確率CHPBに基づいて、車両3Bの走行に必要な電力を、時間軸上、および/または地図上に分布させた充電期待値を作成している。これにより、車両3Bの充電に必要な電力の需要を適切に評価することができる。また、充電期待値によって、車両3Bが充電される可能性が示される。このため、車両3Bの使用者に対して適切な時期、および/または位置において充電に関する情報を提供することができる。また、車両3Bの充電に必要な電力の需要に応じて、電力網5への電力供給を調節することができる。
また、車両3Bの充電に必要な電力の需要を示すデータを、充電スタンド4の充電速度に基づいて設定している。このため、充電速度を超える過大な電力需要が設定されることを回避することができ無駄な発電を抑制できる。また、大容量の充電スタンド4における大きな電力需要を需要データに反映することができる。また、充電速度を含む充電スタンド4に関する情報が車両3Bによって収集される。このため、充電スタンド4の新設、廃止などに対応することができる。さらに、車両3Bの充電に必要な電力に応じて、電力網5を制御することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
例えば、電力網5は、系統電力網に代えて、事業所内などの構内電力網とすることができる。
また、充電システム1は、車種が異なる複数の基準車両3Aを備えることができる。この場合、一般の車両3Bは、自車に最も類似する基準車両3Aによって収集された基準消費電力STPCを使用するように構成することができる。
また、各区間の消費電力SPC(i)と、区間補正値SCR(i)とを基準車両3Aからサービスセンタ2ヘ送信し、基準消費電力STPCの確定処理78をサービスセンタ2において実行してもよい。
また、複数の処理P7−P11の一部または全部を、充電制御装置41に代えて、他の制御装置、例えばバッテリ制御装置39によって実行させてもよい。
また、経路予測手段は、車載ナビゲーションでなくても、携帯電話などのナビゲーション機能を用いてもよい。
上記実施形態では、渋滞状況TRFCに応じた渋滞補正値TCRを算出する処理をサービスセンタ2に設けたが、同処理を複数の車両3に設けてもよい。
上記実施形態では、ひとつの電力網5を対象として説明した。しかし、上記実施形態に説明した処理は、複数の電力網にわたる処理として実行することができる。例えば、複数の電力網の範囲内を走行する複数の車両3を対象として上記処理を実行する。この場合、複数の電力網のそれぞれの電力推移を区別して集計するように構成してもよい。例えば、ステップ187の処理において、ひとつの電力網に属する複数の充電スタンドを選定し、それら複数の充電スタンドの充電期待値CHXPを集計することにより、ひとつの電力網における電力需要を示す電力推移を提供することができる。このような処理を、複数の電力網のそれぞれに関して実行することにより、複数の電力網の電力推移を提供することができる。
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
1 充電システム、2 サービスセンタ、3 電動の車両、3A 基準車両、3B 一般の車両、4 充電スタンド、5 電力網、6 電力制御センタ、7 通信ネットワーク。
Claims (6)
- 走行用の電動機(31)に給電するバッテリ(34)を備える複数の車両(3)と、これら複数の前記車両(3)を管理する基地局(2)とを備え、前記車両(3)の走行に必要な必要電力を予測する必要電力予測装置において、
前記基地局に設けられ、道路上の複数の区間のそれぞれを走行するための基準消費電力を記憶する記憶手段(23A)と、
前記基準消費電力を前記基地局から前記車両に送信する通信手段(7、21、42)と、
前記車両に設けられ、前記車両が走行するために要した実消費電力と前記基準消費電力との差に含まれ、前記車両における要因に起因して発生する車両誤差に対応する車両補正値(VCR)を算出する車両補正値算出手段(P9)と、
前記車両に設けられ、前記基準消費電力(STPC)と前記車両補正値を含む情報に基づいて、将来の走行における前記必要電力を予測する予測手段(P8)とを備えることを特徴とする必要電力予測装置。 - 前記車両補正値算出手段は、
前記車両が所定区間を走行したときの前記実消費電力を計測する計測手段(112)と、
前記車両が所定区間を走行したときの前記車両に搭載された補助機器の補助機器消費電力を計測する補助機器消費電力計測手段(113)と、
前記車両が前記所定区間を走行したときの前記基準消費電力(STPC)と、前記実消費電力(CPC)と、前記補助機器消費電力(APC)とに基づいて前記車両補正値(VCR)を設定する設定手段(114,115)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の必要電力予測装置。 - 前記予測手段は、
前記将来の走行における前記補助機器の補助機器消費電力を予測する補助機器消費電力予測手段(146)を備え、
前記補助機器消費電力予測手段によって予測された前記補助機器消費電力(EAPC)が前記予測手段(P8)における前記情報に含まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の必要電力予測装置。 - さらに、
道路上の複数の区間の渋滞状況に応じた渋滞補正値(TCR)を算出する渋滞補正値算出手段(91−93)を備え、
前記渋滞補正値(TCR)が前記予測手段における前記情報に含まれていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の必要電力予測装置。 - 複数の前記車両には、基準車両(3A)が含まれており、
前記基準車両は、
道路上の複数の前記区間を走行することにより、それら区間における消費電力を計測する計測手段(61−78)を備え、
前記通信手段は、前記消費電力を前記基地局に送信するよう構成され、
前記記憶手段は、前記基準車両から得られた前記消費電力を前記基準消費電力として記憶するよう構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の必要電力予測装置。 - さらに、前記予測手段により予測された前記必要電力に基づいて電力需要を予測する電力需要予測手段(175)を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の必要電力予測装置。
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