まず、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明に係る建設機械の電力供給システムに含まれる主な特徴について説明する。
(1)本発明に係る建設機械の電力供給システムは、それぞれにバッテリが搭載された複数の被牽引車と、前記複数の被牽引車の1台を牽引し、当該被牽引車のバッテリの電力で駆動される電動機および当該電動機で駆動される油圧ポンプを有する少なくとも1台の建設機械と、前記複数の被牽引車に搭載されたバッテリを充電するための充電設備と、前記複数の被牽引車のうち当該充電設備で充電された充電済み被牽引車を前記少なくとも1台の建設機械のいずれかの近辺まで牽引し、当該充電済み被牽引車に代えて当該建設機械に牽引されていた前記被牽引車を前記充電設備まで牽引する少なくとも1台の運搬車両と、前記少なくとも1台の建設機械の所定期間における作業量計画に基づいて当該所定期間において当該建設機械が交換する前記被牽引車の交換回数と各交換時刻を予測し、当該各交換時刻に間に合うように、前記少なくとも1台の運搬車両が当該建設機械の近辺に前記充電済み被牽引車を牽引して到着する時刻を算出するコンピュータとを備えることを特徴とする。
このように構成した電力供給システムによれば、建設機械の所定期間における作業量計画に即した被牽引車の交換回数および交換時刻を推定でき、その交換時刻に間に合うように充電済み被牽引車を建設機械まで運搬車両で牽引していくことができるので、充電済み被牽引車が到着するまでの待ち時間が低減して、建設機械の作業効率とバッテリ(被牽引車)の利用効率が向上する。
(2)上記(1)において、前記コンピュータは、前記少なくとも1台の建設機械の実際の作業量に基づいて、前記作業量計画から算出した前記少なくとも1台の運搬車両が当該建設機械の近辺に前記充電済み被牽引車を牽引して到着する時刻を補正することが好ましい。
このように構成すると、実際の作業量が当初の作業量計画から乖離した場合にも、実際の作業量に即した被牽引車の交換回数および交換時刻に補正できるので、建設機械の作業効率とバッテリの利用効率の低下を抑制できる。
(3)上記(1)または(2)において、前記少なくとも1台の建設機械が牽引する前記被牽引車のバッテリの充電率の時間変化に基づいて、前記作業量計画から算出した前記少なくとも1台の運搬車両が当該建設機械の近辺に前記充電済み被牽引車を牽引して到着する時刻を補正することが好ましい。
このように構成すると、バッテリの実際のSOCの推移が当初の作業量計画で予測したものから乖離した場合にも、実際のSOC推移に即した被牽引車の交換回数および交換時刻に補正できるので、建設機械の作業効率とバッテリの利用効率の低下を抑制できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、同一の構成要素が複数存在する場合、符号の末尾にアルファベットの大文字を付すことがあるが、当該アルファベットの大文字を省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば、同一のショベル100A、100B、100Cが存在するとき、これらをまとめてショベル190と表記することがある。
図1は本発明の実施の形態に係る建設機械の電力供給システムの全体概略図である。この図に示した電力供給システムは、少なくとも1台の電動油圧ショベル(建設機械)100が作業する作業現場1と、被牽引車400に搭載されたバッテリ10を充電するための少なくとも1つの充電設備300が設置された充電施設2、作業現場1と充電施設2を接続する道路であって被牽引車400を牽引した少なくとも1台の運搬車両用200が走行する搬送路500と、電動油圧ショベル100、運搬車両200及び充電設備300等と情報のやり取りを行う管理局900を備えている。
図1の例では、作業現場1で2台の油圧ショベル100A,100Bが稼働しており、充電施設2には2機の充電設備300A,300Bが設置されており、合計9台の被牽引車400A,400B,400C,400D,400E,400F,400G,400H,400Iと、合計5台の運搬車両200A,200B,200C,200D,200Eが存在している。なお、図示した油圧ショベル100、運搬車両200、充電設備300、被牽引車400の数は一例に過ぎず、それぞれ1つ以上存在すればその数に特に限定はない。
図示の例では、搬送路500Aは充電施設2から作業現場1に向かう運搬車両200が走行するための道路(往路)となっており、搬送路500Bは作業現場1から充電施設2に向かう運搬車両200が走行するための道路(復路)となっている。なお、搬送路500の数についても図示は一例に過ぎず、往路及び/又は復路を複数用意しておいても良い。
各油圧ショベル100、各運搬車両200、各充電設備300および管理局900には無線通信装置151,251,351が備えられており、当該無線通信装置151,251,351を介して、管理局900と、各油圧ショベル100、各運搬車両200及び各充電設備300とは各種情報のやり取りを行っている。
図2は電動油圧ショベル100の概略構成図である。電動油圧ショベル100は、ブーム101、アーム102及びバケット103を有する多関節型の作業装置110と、上部旋回体104及び下部走行体105を有する車体150と、無線通信装置151とを備えており、自走機能の無い1台の被牽引車400を牽引している。油圧ショベル100は、油圧ポンプ3の駆動源として電動機2(図3参照)を搭載しているが、電動機2に電力供給するためのバッテリを搭載していない。電動機2の電力源は、被牽引車400に搭載されたバッテリ10であり、被牽引車400は油圧ショベル100と着脱可能に連結されている。
ブーム101は、上部旋回体104に回動可能に支持されており、油圧シリンダ(ブームシリンダ)111により駆動される。アーム102は、ブーム101に回動可能に支持されており、油圧シリンダ(アームシリンダ)112により駆動される。バケット103は、アーム102に回動可能に支持されており、油圧シリンダ(バケットシリンダ)113により駆動される。上部旋回体104は油圧アクチュエータ5(図3参照)である油圧モータ(旋回モータ)により旋回駆動され、下部走行体105は左右の油圧モータ(走行モータ)95,96により駆動される。油圧シリンダ111、油圧シリンダ112、油圧シリンダ113及び走行モータ95,96は、油圧ポンプ3(図3参照)によってタンク(図示せず)から汲み上げられる圧油によって駆動される。
被牽引車400は、複数の車輪が取り付けられたフレーム401と、フレーム401上に搭載されたバッテリ10と、フレーム401と牽引車(油圧ショベル100又は運搬車両200)を連結するための連結部材(例えば形鋼)402を備えている。図2の連結部材402の一端は、油圧ショベル100のトラックフレームに連結されており、その連結部を中心に回動可能に設けられている。油圧ショベル100と連結部材402の連結方法については特に限定は無いが、例えば、トラックフレームに孔(図示せず)を設け、連結部材402の先端部に設けた釣り針状のフックを当該孔にかけて連結するものがある。その他の例としては、トラクターとトレーラーの連結装置のように、トラックフレームにカプラーを設け、連結部材の先端にキングピンを設け、当該カプラーと当該キングピンにより連結するものや、トラックフレームにピントルフックを設け、連結部材の先端にルネットアイを設け、当該ピントルフックと当該ルネットアイにより連結するものがある。
上部旋回体104には、油圧ポンプ3を駆動するための電動機2が搭載されている。電動機2には、被牽引車400上のバッテリ10からインバータ装置9A(図3参照)を介して電力が供給されている。バッテリ10と電動機2を接続する電源ケーブル130は、下部走行体105のフレーム(トラックフレーム)のセンタージョイン(図示せず)の近傍に設けられたスリップリング(図示せず)を介して上部旋回体104の内部に引き込まれており、これにより電源ケーブル130のねじれや絡まりを防止している。電源ケーブル130はバッテリ10と着脱可能となっている。
図3は図2に示した電動油圧ショベル100におけるアクチュエータ駆動制御システムの概略構成図である。なお、先の図に示した部分と同じ部分には同じ符号を付して説明は適宜省略することがある(後の図についても同じ)。
この図に示すアクチュエータ駆動制御システムは、バッテリ10の電力により駆動される電動機(モータ)2と、電動機2によって駆動される可変容量形油圧ポンプ3(以下、単に「油圧ポンプ3」と称することがある)と、油圧ポンプ3から吐出される圧油によって駆動される油圧アクチュエータ5(例えば、図2に示した油圧シリンダ91,92,93、油圧モータ95,96)と、油圧ポンプ3の容量を調節して吸収トルクを制御するためのポンプ制御装置(ポンプ制御部)45と、電動機2の制御とともに、電動機2とバッテリ10間での電力の授受を制御するためのインバータ(電力変換装置)9Aと、油圧アクチュエータ5を駆動するための操作信号を操作量に基づいて出力する操作レバー(操作装置)16と、電動機2のトルク制御、油圧ポンプ3の容量制御、バッテリ10の放電制御等を行うコンピュータであるショベル端末システム(制御装置)160とを備えている。
操作レバー16は、パイロットポンプ32から吐出される圧油を操作量に応じて減圧して油圧アクチュエータ5の操作信号を生成する。油圧アクチュエータ5の操作信号としては、操作量に応じて操作レバー16で減圧された圧油がそのまま利用され、当該圧油はバルブ装置4内の複数のコントロールバルブ(図示せず)のいずれかに出力され当該コントロールバルブを駆動する。
ポンプ制御装置(ポンプ制御部)45は、レギュレータ14と電磁比例弁15を有している。レギュレータ14は油圧ポンプ3に備えられており、レギュレータ14によって油圧ポンプ3の斜板もしくは斜軸の傾転角を操作すると、油圧ポンプ3の容量(押しのけ容積)が変更されて油圧ポンプ3の吸収トルク(入力トルク)を制御することができる(ポンプ吸収トルク制御)。本実施の形態におけるレギュレータ14は、電磁比例弁15が発生する制御圧によって制御されている。電磁比例弁15は、ショベル端末システム160から出力される信号(容積指令)に基づいて動作する。
ショベル端末システム160は、制御信号(電気信号)を電磁比例弁15に出力し、電磁比例弁15は当該操作信号に応じた制御圧力を生成することでレギュレータ14を駆動する。これによりレギュレータ14によって油圧ポンプ3の容量が変更され、油圧ポンプ3の吸収トルクは電動機2の出力可能範囲内で適宜調整される。なお、ショベル端末システム160は、ハードウェア構成として、各種プログラムを実行するための演算手段としての演算処理装置(例えば、CPU)と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶手段としての記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置)と、当該演算処理装置及び当該記憶装置等へのデータ及び指示等の入出力制御を行うための入出力演算処理装置を備えている(いずれも図示せず)。
バッテリ10には、バッテリ10の充電率(SOC)及び劣化度(SOH)を演算するために必要な情報を検出する手段(バッテリ状態検出手段)として、電流センサ11、電圧センサ12及び温度センサ13が取り付けられている。ショベル端末システム160は、これらセンサ11,12,13によって検出された電流、電圧及び温度等の情報に基づいてバッテリ管理部168(後述)においてバッテリ10のSOC及びSOHを演算し、バッテリ10の充電率及び劣化度等を管理している。電流センサ11、電圧センサ12及び温度センサ13からの出力信号は電源ケーブル130とともにまとめられた通信線(図示せず)を介してショベル端末システム160に入力される。当該通信線は電源ケーブル130とともにバッテリ10と着脱可能となっている。
図4は運搬車両200の概略構成図である。運搬車両200は、1台の被牽引車400を牽引して作業現場1と充電施設2の間を往復する車両であり、無線通信装置251を備えている。運搬車両200の動力源は、エンジンと電動機のいずれか又は両者のハイブリッドで構成しても良いが、動力源を電動機とすれば、作業現場1および充電施設2で利用されるエネルギーを電気エネルギーで一本化できる。
なお、運搬車両200は、図示のように荷台を有するトラック状の車両に限らず、被牽引車400を牽引可能なものであれば他の車両(例えば、ダンプ、トラクター等)でも構わない。また、運搬車両200と被牽引車400の連結方法は、先述の油圧ショベル100との連結と同様のものが利用可能であり、特に限定はない。
図5は充電施設2に設置された充電設備300の概略構成図である。この図に示す充電設備300は、バッテリ10の状態監視等をはじめとした各種処理を行うコンピュータである充電設備端末システム360と、被牽引車400上のバッテリ10に流れる電流を検知するための電流計(電荷検出手段)312と、被牽引車400上のバッテリ10と端末システム360を結ぶ通信線313と、被牽引車400上のバッテリ10を充電するための充電器314と、充電器314と端末システム360を接続する通信線315、端末システム360等で計算されたバッテリ10の充電率等を表示するための表示装置316と、端末システム360と表示装置316を接続する通信線317と、無線通信装置351を備えている。
バッテリ10は、複数の単電池から構成される組電池であり、組電池は電池モジュールの集合体である。各被牽引車400に搭載されるバッテリ10の容量は、各油圧ショベル100の1日の作業量を電力量に変換した値よりも小さく設定されており、1台の油圧ショベル100を1日稼働するためには複数の被牽引車400の交換が必要な構成となっている。このように各被牽引車400のバッテリ10の容量を比較的小さい値に抑制すると、被牽引車400の製造コストを抑制できるとともに、作業現場1での油圧ショベル100の機動性や被牽引車400の交換作業の作業性を向上できる。
バッテリ10としては、二次電池であれば特に限定はなく、鉛蓄電池やリチウムイオン電池など種々のものが適用可能であるが、廉価なバッテリで構成すればイニシャルコストを低減できる。なお、一般的な電池モジュールとしては、4〜40個の電池を直列接続して箱の中に収めたものがある。電池モジュールは更に直列または並列に接続されて、組電池の一構成要素となる。
電流計312としては、例えば、シャント抵抗を利用したものや、ホール素子を利用したものが適用可能である。電流計312で検出された電流値は、端末システム360に出力されている。
バッテリ10は、通信線313を介して端末システム360に接続されている。また、バッテリ10は、各電池の電圧を監視しており、端末システム360に通信線313を介して定期的に電圧値を送信している。
充電器314は、商用電源355を利用してバッテリ10の充電を行うためのもので、電源ケーブル318を介してバッテリ10に接続して用いられる。充電器314の充電方式には、例えば、CCCV充電(Constant-Current Constant-Voltage:定電流−定電圧充電)やパルス充電方式がある。本実施の形態における充電器314は、端末システム360から出力される充電休止信号に基づいて充電を停止するものとし、さらに、電池が満充電になると充電器314は自動的に停止するものとする。
充電設備端末システム360は、コンピュータであり、ハードウェア構成として、各種の制御プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)、当該制御プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。このようなハードウェア構成を利用して、端末システム360は、通信線313を介して取得した各電池の電池電圧と、電流計312を介して取得した電流とに基づいて各電池の充電容量を計算する。そして、当該充電容量に基づいてバッテリ10全体の充電率(SOC:State of Charge)及び劣化度(SOH:State of health)を計算する。ここで計算されたSOHやSOCは、通信線317を介して表示装置316に表示されたり、無線通信装置351を介して他の端末(例えば、管理局端末システム960)に出力されたりすることがある。
充電設備300によってバッテリ10の充電が完了した被牽引車400は、運搬車両200による作業現場1への牽引(往路)、油圧ショベル100でのバッテリ利用、運搬車両200による充電施設2への牽引(復路)、充電設備300によるバッテリ充電、という一連の工程(以下「被牽引車利用サイクル」と称することがある)を繰り返して利用される。或る油圧ショベル100の電力源として選定され被牽引車利用サイクルを開始した被牽引車400は、当該サイクルの途中では他の油圧ショベル100の電力源とはなり得ず、当該サイクルの終了後にはじめて他の油圧ショベル100の電力源になり得る。
管制センタ900内には、図6に示すようにコンピュータから成る管理局端末システム960が設置されている。管理局端末システム960には、オペレータ910からの作業指示を受け付けるためのマウスおよびキーボード等の入力装置(管理局側入力部)973と、表示画面920上に画像を表示してオペレータ910への情報提示を行うモニタ等の表示装置(管理局側表示部)974が接続されている。
図7は管理局端末システム960の概略構成図である。管理局端末システム960は、作業量計画記憶部961と、必要電力用算出部962と、バッテリ利用計画算出部963と、車両運行計画算出部964と、バッテリ状態記憶部965と、バッテリ利用計画記憶部966と、車両運行計画記憶部967と、車両位置管理部968と、ショベル位置管理部969と、車両運行計画記憶部970と、バッテリ利用計画記憶部971と、管理局側制御部972と、管理局側入力部973と、管理局側表示部974と、管理局側通信部975と、バッテリ状態管理部976と、作業量比較部977と、SOC比較部978として機能する。
作業量計画記憶部961には、入力部973等を介して入力された各油圧ショベル100の所定期間(例えば、或る1日の午前9時から午後6時までの期間)における作業量計画が記憶されている。図8は油圧ショベル100の作業量計画の一例を示す図である。この図に示すように或る油圧ショベル100の作業量の時間変化が作業量計画として記憶されている。図8の例では作業量が相対的に多い時間帯Aと作業量が相対的に少ない時間帯Bからなっている。
必要電力量算出部962は、作業量計画記憶部961の作業量計画に基づいて各油圧ショベル100の作業に必要な電力量(消費電力量)[kW]の時間変化および積算値を算出する処理を実行する部分である。
バッテリ状態管理部976は、作業現場1、搬送路500および充電施設2に存在する全ての被牽引車400のバッテリ10の状態を管理する部分である。バッテリ状態管理部976は、各油圧ショベル100に搭載されたショベル端末システム160のバッテリ管理部168(図9参照)と、各充電設備300に搭載された充電設備端末システム360のバッテリ管理部368(図11参照)とから無線通信で送信される各バッテリ10の状態パラメータを受信し、これらをバッテリ状態記憶部965に記憶することで管理する。また、バッテリ状態管理部976は、バッテリ利用計画(図12のS606参照)および車両運行計画(図12のS608参照)の決定に基づいてバッテリ状態記憶部965のバッテリ状態パラメータを更新する。
バッテリ状態記憶部965は、各被牽引車400のバッテリ10の状態がパラメータ形式で記憶される部分である。バッテリ状態としては、バッテリ10が搭載された被牽引車400のID、バッテリ10のID、種類、サイズ、SOCの現在値及び予測推移、SOHの現在値及び予測推移、充電開始時刻、充電完了時刻、現在のステータス(充電施設2で充電中、充電施設2で待機中、運搬車両200により運搬中、油圧ショベル100により使用中等)等が記憶されている。
バッテリ利用計画算出部963は、必要電力量算出部962で算出した電力量を出力するために必要なバッテリ10(被牽引車400)の交換回数、組み合わせ及び交換時刻を、バッテリ状態記憶部965から読み込んだ各バッテリ10の状態パラメータに基づいて予測・算出する処理を実行する部分である。
車両運行計画算出部964は、バッテリ利用計画算出部963で算出した交換時刻に該当する油圧ショベル100の近辺に到着するように、運搬車両の充電設備300からの出発時刻、当該油圧ショベル100の近辺の到着時刻、その道中の目標速度(「運行計画」と称することがある)を算出する処理を実行する部分である。1台の油圧ショベル100に対してバッテリ交換回数(交換時刻)が複数ある場合(すなわち1日に被牽引車400を複数回運搬する場合)が一般的となるが、その場合には各被牽引車400について運行計画が算出される。
バッテリ利用計画記憶部971には、バッテリ利用計画算出部963で算出された利用計画が記憶される。車両運行計画記憶部970には、車両運行計画算出部964で算出された運行計画が記憶される。
管理局側制御部972は、管理局端末システム960全体の処理を制御している。管理局側通信部975は、無線LANアンテナ等の無線通信装置(図示せず)を介して各ショベル100、各車両200および各充電設備300とデータの通信を行うためのものである。
車両位置管理部968には、各運搬車両200の位置が記憶されている。各運搬車両200の測位部261で測定される位置は、無線通信装置251を介して管理局側通信部975に入力され、車両位置管理部968に記憶される。
ショベル位置管理部969には、各油圧ショベル100の位置が記憶されている。各油圧ショベル100の測位部161で測定される位置は、無線通信装置151を介して管理局側通信部975に入力され、ショベル位置管理部969に記憶される。
管理局側入力部973は、マウスおよびキーボード等の入力装置を介したオペレータ910からの指示入力等を受け付ける部分である。例えば、各油圧ショベル100の作業量計画の入力や、バッテリ利用計画の決定および車両運行計画の決定等が入力部973を介して行われる。
管理局側表示部974には表示画面920(図6参照)上に、作業計画(図8参照)、バッテリ利用計画および車両運行計画など電力供給システムに関する種々の情報が表示される。
図9は複数の電動油圧ショベル100にそれぞれ搭載されたショベル端末システム160の概略構成図である。ショベル端末システム160は、コンピュータで構成された制御装置であり、GPS受信機や加速度センサやジャイロや速度センサなどを使って油圧ショベル100の位置を測定するショベル側測位部161と、バケット103の重量変化等から算出した掘削対象物重量の時間変化または油圧ポンプ3の吸収トルクの時間変化等に基づいて或る期間(例えば、或るバッテリ10(被牽引車400)の利用期間中)に油圧ショベル100により実際に行われた作業量を算出する処理を実行する作業量算出部163と、管理局端末システム960と無線LANアンテナ等の無線通信装置151を介して通信を行うショベル側通信部(例えば、無線通信装置)164と、オペレータが入力操作を行うショベル側入力部(例えば、キーボード、タッチパネル)165と、オペレータに情報表示を行うショベル側表示部(例えば、液晶モニタ)166と、ショベル端末システム160の全体的な処理制御を行うショベル側制御部167と、牽引中の被牽引車400に搭載されたバッテリ10のSOC及びSOHを演算し、当該バッテリ10の状態を管理するバッテリ管理部168とを備えている。
図10は複数の運搬車両200にそれぞれ搭載された車両端末システム260の概略構成図である。車載端末システム260は、コンピュータで構成された制御装置であり、GPS受信機や加速度センサやジャイロや速度センサなどを使って運搬車両200の位置を測定する車載側測位部261と、管理局端末システム960の車両運行計画記憶部967から提供される自車の運行計画データを記憶している車載運行計画記憶部(例えば、半導体記憶装置)262と、管理局端末システム960から指令に基づいて車載運行計画記憶部262で管理されている車載運行計画データを更新する車載地図更新部263と、管理局端末システム960と無線LANアンテナ等の無線通信装置251を介して通信を行う車載側通信部(例えば、無線通信装置)264と、オペレータが入力操作を行う車載側入力部(例えば、キーボード)265と、オペレータに情報表示を行う車載側表示部(例えば、液晶モニタ)266と、車載端末システム260の全体的な処理制御を行う車載側制御部267と、運搬車両200の加速、減速、停止などの車両制御を行う車両制御部268とを備えている。
車両制御部268は、管理局端末システム960から与えられる指示と、車載側測位部261で測位される自車位置と、車載運行計画記憶部262で管理されている運行計画データとに基づいて、搬送路500上で自律的に運搬車両200を操舵したり加減速したりする自律走行制御を行っている。
図11は複数の充電設備300にそれぞれ搭載された充電設備端末システム360の概略構成図である。充電設備端末システム360は、コンピュータで構成された制御装置であり、管理局端末システム960と無線LANアンテナ等の無線通信装置351を介して通信を行う設備側通信部(例えば、無線通信装置)364と、オペレータが入力操作を行う設備側入力部(例えば、キーボード、タッチパネル)365と、オペレータに情報表示を行う設備側表示部(例えば、液晶モニタ)366と、充電設備端末システム360の全体的な処理制御を行う設備側制御部367と、被牽引車400に搭載された充電中のバッテリ10のSOC及びSOHを演算し、当該バッテリ10の状態を管理するバッテリ管理部168とを備えている。
次に、本発明の基本構成としての実施の形態における電力供給処理フローについて図を用いて説明する。はじめに図12を用いて管理局端末システム960によるバッテリ利用計画および車両運行計画の決定フローについて説明する。
図12は油圧ショベル100の電力供給に関する管理局端末システム960における処理フローの一例である。作業現場1での1日の作業開始前に作業管理局900のオペレータ910からの管理局側入力部973を介した開始要求により処理フローを開始し、油圧ショベル100A,100Bの1日の作業量計画データの入力をオペレータ910から受けてこれを作業量計画記憶部961に保存する(S600)。ここで入力される作業量計画データとしては、充電施設2の電力供給対象となっている作業現場1で稼働される全ての油圧ショベル100A,100Bの1日における作業量の時間変化を規定した数値データ(例えば、各時刻での作業量を規定した数値群)であれば特に限定はない。例えば、図8に示した作業量と時刻の関係をグラフ化したデータがその一例であり、複数の油圧ショベル100が稼働される場合には当該油圧ショベル100の台数分のグラフがオペレータ910により提供されることになる。なお、電力供給対象となる作業現場が複数存在する場合には、各作業現場の油圧ショベルの合計台数分の作業量計画データを入力することになる。
S602では、S600で記憶した作業量計画データに基づいて各油圧ショベル100の必要電力量の時間変化を算出する。図13は図8に示した作業量計画データに基づいて算出した或る油圧ショベル100の必要電力量の1日の時間変化をグラフで示した例である。図13の図は管理局900内における表示部974の表示画面920上に表示しても良い。
S604において、バッテリ利用計画算出部963は、バッテリ状態記憶部965に利用対象として登録された全てのバッテリ10の状態パラメータを読み込み、各バッテリ10について出力可能な電力量を取得する。
S606では、バッテリ利用計画の算出に際して、バッテリ利用計画算出部963は、まず、作業現場1の各油圧ショベル100で最初に電源として利用される被牽引車400(以下「第1被牽引車」と称することがあり、図13中のバッテリ1がこれに該当する)を所定のアルゴリズムに基づいて選定する。第1被牽引車の選定アルゴリズムの例としては、各被牽引車400のバッテリ10の状態パラメータを読み込んだS604の時点で出力可能な電力量の多い被牽引車(SOCが高く、劣化の進んでいないバッテリ10を搭載した被牽引車400)400を作業現場1の油圧ショベル100の台数分選択し、各油圧ショベルに第1被牽引車として割り当てるものがある。
第1被牽引車の選定が完了したら、バッテリ利用計画算出部963は、当該第1被牽引車が被牽引車利用サイクルの一連の工程を完了するまでに要する時間を算出する。ここで被牽引車利用サイクルの所要時間の算出方法について図14を用いて説明する。
図14は、油圧ショベル100A(図1参照)の作業量計画(図8参照)を実現するためのバッテリ利用計画及び車両運行計画を示した図であり、先の図1は図中の時刻t1の状態を示しているものとして説明する。図14の図は管理局900内における表示部974の表示画面920上に表示しても良い。各被牽引車利用サイクルの所要時間は、図14に示した時間Ta、時間Tbk、時間Tc、時間Tdk、時間Teから構成されている(kは1以上の整数であり、油圧ショベル100Aへの被牽引車400の連結回数に一致する)。
時間Taは、充電施設2で運搬対象の被牽引車400を待機中の運搬車両200に連結し、当該運搬車両200が搬送路500A(往路)を介して作業現場1の目的地に到着し、当該被牽引車400を油圧ショベル100Aに連結して、当該油圧ショベル100Aの作業を開始するまでの所要時間である。
時間Taの算出に際して、運搬車両200又は油圧ショベル100Aへの被牽引車400の連結および切り離し作業に要する時間は計算を簡略するために実績値に基づいて決定した設定値を利用している。また、時間Taに関して、充電施設2から作業現場1に至る往路500Aの運搬車両200の移動時間は、例えば、往路の走行距離と、過去の運搬車両200の走行速度の実績値から算出可能である。作業現場1側の走行距離の基準点(運搬車両200の往路の目標到着地点)は、作業現場1内の予め決めた或る地点を基準とすれば良いが、例えば1日のうちで油圧ショベル100Aの作業位置が大きく変化する場合等には、ショベル側測位部161が測定した油圧ショベル100Aの位置(ショベル位置管理部969で管理されている)を基準としても良い。また、作業量計画とともに油圧ショベルの100A作業予定地(被牽引車400の到着地)を入力し、当該作業予定地までの距離から到着予定時刻を算出しても良い。なお、上記前提と異なり油圧ショベル100Aの作業開始時刻が決定していない場合には、時間Taの開始時刻を適宜決定し、その時刻に上記時間Taを加算することで油圧ショベル100Aの作業開始時刻を推定しても良い。
時間Tbkは、時間Taの後に、当該被牽引車400上のバッテリ10が油圧ショベル100Aで電源として利用される時間を示す(つまり、或る油圧ショベル100Aでの利用開始時刻から利用終了時刻までの時間)。時間Tbkは、当該油圧ショベル100Aの必要電力量(S604で算出)と当該第1被牽引車上のバッテリ10の電力量から算出する。バッテリ10はSOCが0になるまで利用する必要はなく、劣化促進を回避するためにSOCが所定の値に達する時刻を利用終了時刻(すなわち他のバッテリへの交換時刻)とするアルゴリズムを利用しても良い。
時間Tcは、時間Tbの終了時刻(利用終了時刻)から被牽引車400の連結を油圧ショベル100Aから運搬車両200に変更し、当該運搬車両200が搬送路500B(復路)を介して充電施設2に到着し、当該被牽引車400を当該運搬車両200から切り離してバッテリ10に充電設備300の電源ケーブル318と接続して充電を開始するまでの所要時間である。
時間Tcの算出に際して、運搬車両200又は油圧ショベル100Aへの被牽引車400の連結および切り離し作業に要する時間は計算を簡略するために時間Taと同様に実績値に基づいて決定した設定値を利用している。また、作業現場1から充電施設2に至の復路500Bの運搬車両200の移動時間についても、時間Taと同様に、復路の走行距離と、過去の復路における運搬車両200の走行速度の実績値から算出可能である。
時間Tdkは、充電施設2に到着した被牽引車400のバッテリ10を所定のSOC(例えば、100%)まで充電するために必要な時間である。時間Tdkは、バッテリ10のSOHと充電前のSOCから予測可能である。SOCが100%になるまでバッテリ10を充電する必要はない。そのため、満充電になるまで充電をしたら作業量計画を賄うことができない場合(バッテリ10が不足する場合)には、途中で充電を停止して作業現場1に運搬するようなバッテリ利用計画を立てても良い。
時間Teは、充電が完了した被牽引車400のバッテリ10を充電設備300から切り離して充電施設2の所定の場所に移動するまでの所要時間を示す。時間Teの算出に関しては、前述のTa等と同様に、充電設備300からの被牽引車400の切り離し作業に要した過去の実績値に基づいて決定した設定値を利用すれば良い。
図14の例における第1被牽引車は被牽引車400Aであり、当該被牽引車400Aに係る時間Ta、Tb1、Tc、Td1、Teを合計すれば、被牽引車400の被牽引車利用サイクルの所要時間およびその終了時刻である開放時刻を算出できる。
上記のように、各油圧ショベル100についての第1被牽引車の選定と被牽引車利用サイクルの所要時間の算出が完了したら、バッテリ利用計画算出部963は、第1被牽引車の次に利用される被牽引車400(「第2被牽引車」と称することがある)を選定する。第2被牽引車の選定は、第1被牽引車について時間Tb1の開始時刻から時間Taを減じた時刻(すなわち、第2被牽引車の被牽引車利用サイクルの開始時刻)の時点で出力可能な電力量の多い被牽引車400を作業現場1の各油圧ショベル100に割り当てることで行う。第2被牽引車についても先の場合と同様に被牽引車利用サイクルの所要時間を算出する。以下、各油圧ショベル100の必要電力量が賄われるまで第3被牽引車、第4被牽引車、…と処理を繰り返す。
これにより、各油圧ショベル100について、被牽引車400(バッテリ10)の交換回数、利用順番、被牽引車利用サイクルの所要時間等を示すバッテリ利用計画が決定するので、これらをバッテリ利用計画記憶部971に保存する。図13の例は、S606により油圧ショベル100Aの必要電力量を4回のバッテリ交換(バッテリ1〜4)で賄うことが決定されたものが示されている。図13では時間帯Aでは必要電力量が相対的に多いためバッテリ交換を3回行っており、時間帯Bでは必要電力量が少ないためバッテリ交換は1回だけとなっている。
図14の例では、第1被牽引車(バッテリ1(図13参照))として選定された被牽引車400Aは、第2および第3被牽引車の選択時にはサイクルの途中にあり選定不可能となっているが、第4牽引車の選択時に再び利用可能となっており、第4被牽引車(バッテリ4(図13参照))としても選定されている。これにより充電施設2で予め準備しておく被牽引車400の台数を最適化できる。
次に図12に戻り、S608において、車両運行計画算出部964は、S606で決定したバッテリ利用計画に沿って各被牽引車400を各運搬車両200で牽引する運行計画(車両運行計画)を決定し、これを車両運行計画記憶部970に保存する。本実施の形態における車両運行計画は、ステップ606で算出した各被牽引車400に係る時間Ta及び時間Tcを参考にして立案されている。より具体的には、被牽引車400を牽引した各運搬車両200の充電施設2からの出発予定時刻、作業現場1への到着予定時刻、復路において使用済バッテリ10が搭載された被牽引車400を牽引した各運搬車両200の作業現場1からの出発予定時刻、その運搬車両200の充電施設2への到着予定時刻、往路(搬送路500A)と復路(搬送路500B)の走行速度等がある。
図14の例における運搬車両200Eは、被牽引車400A(第1被牽引車)を作業現場1まで運搬していくが、その時点で油圧ショベル100Aに連結されている被牽引車は存在しないため、復路は被牽引車400を牽引することなく充電施設2に帰ってくる(なお、油圧ショベル100A及び油圧ショベル100Bでの利用が終了した被牽引車400が作業現場1に残っている場合にはその被牽引車400を牽引して帰ってきても良い)。運搬車両200Eの次に出発する運搬車両200Aは、充電施設2から被牽引車400C(第2被牽引車)を作業現場1まで牽引し、その帰り道に、先に運搬車両200Eが牽引してきて油圧ショベル100Aに牽引されていた被牽引車400A(第1被牽引車)を牽引して充電施設2に帰る。運搬車両200Aの次には運搬車両200Eが再び出発し、充電施設2から被牽引車400I(第3被牽引車)を作業現場1まで牽引し、その帰り道に油圧ショベル100Aに牽引されていた被牽引車400C(第2被牽引車)を牽引して充電施設2に帰る。最後の運搬車両200Aは、充電施設2から被牽引車400A(第4被牽引車)を作業現場1まで牽引し、その帰り道に油圧ショベル100Aに牽引されていた被牽引車400I(第3被牽引車)を牽引して充電施設2に帰る。なお、第4被牽引車は、その日のうちに運搬車両200で回収する運用を採用しても良いし、翌日の最初の運搬車両200で回収する運用を採用しても良い。
最初の運搬車両200Eの出発時刻の決定に関して、通常は作業現場1での油圧ショベル100Aの作業開始時刻が決定しているので、当該作業開始時刻から、時間Ta(充電施設2で運搬車両200と被牽引車400の連結作業が必要な場合にはその作業時間も含める)を減じて、当該運搬車両200の出発時刻を決定する。なお、上記前提と異なり油圧ショベル100の作業開始時刻が決定していない場合には、時間Taの開始時刻や運搬車両200の充電施設2からの出発時刻を決定し、これら時刻に基づいて油圧ショベル100の作業開始時刻を推定しても良い。
なお、図14では、便宜上、或る運搬車両200が往路及び復路で牽引する合計2つの被牽引車400に係る時間Taと時間Tcを加算した時間を当該運搬車両200の拘束時間として表記しているが、これに代えて、例えば、運搬車両200が移動中の時間のみ(すなわち、往路と復路の出発時刻から到着時刻までの時間)を表記、記録、管理しても良い。
S610では、バッテリ状態管理部976が、S606のバッテリ利用計画とS608の車両運行計画に基づいて、バッテリ状態記憶部965に記憶された各バッテリ10の状態パラメータを更新する。更新される状態パラメータとしては、例えば、使用中および充電中の各バッテリ10のSOCおよびSOHの予測推移と、各バッテリ10の放電開始予定時刻(使用開始予定時刻)および放電終了予定時刻(使用終了予定時刻)と、充電開始予定時刻および充電完了予定時刻と、現在および将来におけるステータス(充電施設2で充電中、充電施設2で待機中、運搬車両200により運搬中、油圧ショベル100により使用中等)等がある。
S610が終了したら、管理局端末システム960は、車両運行計画記憶部970に記憶された運行計画を該当する運搬車両200に対して通信部975を介して配信する(S612)。通信部264を介して当該運行計画を受信した運搬車両200の車両端末システム260は、当該運行計画を車載運行計画記憶部262に記憶し、当該運行計画に基づいて充電施設2と作業現場1の間を被牽引車400を牽引しながら往復する。各運搬車両200の走行は、運搬車両200に搭乗したオペレータが表示部266に表示される当該運行計画(走行経路、出発時刻、到着時刻)と測位部261で取得された現在位置に基づいて運搬車両200を操縦することで行っても良いし、これに代えて、車両制御部268が当該運行計画(走行経路、出発時刻、到着時刻)に基づいて無人の運搬車両200を自律走行させても良い。
上記のように構成した電力供給システムによれば、所定期間(例えば1日)に亘る作業の開始前に作業現場1の各油圧ショベル100の作業量計画から各油圧ショベル100の必要電力量(消費電力量)が算出され、当該必要電力量に基づいてバッテリ10を搭載した被牽引車400の交換タイミングが計画され、これにより搬送路500A,500B上で被牽引車400を牽引している運搬車両200の適切な配置と、充電設備300による被牽引車400の適切な充電スケジュールを予め計画できる。したがって、被牽引車400の作業現場1への到着時間が最適化され油圧ショベル100の作業効率の低下を防止でき、また、被牽引車400の充電終了時刻の予測精度の低下を防止できる。また、当該所定期間内に利用する運搬車両200と被牽引車400の台数を作業開始前に最適化できるので、イニシャルコストの増加を抑制できるとともに、短期的なスケジュール変更等によって或る作業現場における運搬車両200及び/又は被牽引車400に余剰が出た場合にはこれらが不足している他の作業現場に迅速に回すことができ、複数の作業現場間で作業効率や作業進捗に偏りが生じることを防止できる。
また、バッテリ利用計画と車両運行計画の明確化により、作業現場1と充電施設2を往復する被牽引車400および運搬車両200の管理主体(例えば、法人)と、作業現場1の油圧ショベル100の管理主体を異ならせることが容易になり、前者の事業が後者の事業と独立して発展することが見込める。
次に本発明に係る第1の実施の形態について説明する。本実施の形態では、バッテリ利用計画および車両運行計画の立案後に、作業現場1の各油圧ショベル100の実際の作業量の時間変化を監視し、その作業量の時間変化と作業計画上の作業量の時間変化の差異を監視することで、当該差異に基づいて各油圧ショベル100に関するバッテリ利用計画および車両運行計画を補正する処理が行われている点で第1の実施の形態と異なっている。
図15は図12の一連の処理の終了後に油圧ショベル100の作業を開始した以後に管理局端末システム960で実行されるバッテリ利用計画および車両運行計画の補正処理のフローチャートである。ここでは作業現場1の油圧ショベル100Aのバッテリ利用計画および車両運行計画を補正する場合を例に挙げて説明する。
まず図15のフローチャートの説明の前に油圧ショベル100Aの作業量算出部163で実行される計算について説明する。作業量算出部163は、油圧ショベル100Aの始動時に起動し、当該油圧ショベル稼働中の油圧ポンプ3の吸収トルクの時間変化を入力することで油圧ショベル100Aによる実際の作業量(実作業量)の時間変化を取得する。作業量算出部163で取得された実作業量の時間変化は、ショベル側通信部164を介して管理局端末システム960に送信され、作業量比較部977(図7参照)に保存蓄積される。
管理局900のオペレータが実作業量に基づくバッテリ利用計画及び車両運行計画の見直しを所望しその旨を入力部973を介して入力すると図15の処理が開始され、作業量比較部977は、その日の作業開始時から計画見直し希望の入力時までの実作業量の積算値Wr1を記憶されているデータから算出する(S700)。そして、作業量比較部977は、積算値Wr1を取得した期間に対応する計画作業量の積算値Wp1を作業量計画記憶部961に記憶されたデータから算出する(S702)。
次に、作業量比較部977は、積算値Wp1から積算値Wr1を減じた値(Wp1−Wr1)を算出し(S704)、計画見直し希望以後の作業量計画(残りの作業量計画)に対して所定のアルゴリズムに従って当該差分(Wp1−Wr1)を加えたものを計画見直し希望以後の作業量計画(新たな作業量計画)とする(S706)。差分(Wp1−Wr1)の符号がプラスのときは、実作業量が計画作業量未満で「作業不足」であることを示し、差分の符号がマイナスのときは、実作業量が計画作業量を超え「作業過多」であることを示す。S706において差分(Wp1−Wr1)を残りの作業量計画に加えるアルゴリズムとしては、残りの全期間に均等に作業を追加するものや、残りの期間のうち所定の期間だけに作業を追加するもの等がある。なお、残りの作業量計画に係る計画作業量積算値は、当初の全期間の計画作業量積算値Wp0から計画作業量積算値Wp1を減じた値となる。
S708では、S706で作成した新たな作業量計画に基づいて必要電力量の時間変化を算出し、当該必要電力量の時間変化に基づいて先述のS604〜S612と同様の処理を行ってバッテリ利用計画及び車両運行計画を更新・配信する。図16は差分(Wp1−Wr1)に基づいてバッテリ利用計画に補正を加えることを示す概念図である。
上記のように構成した本実施の形態によれば、油圧ショベル100による実際の作業が当初の作業量計画(図12のS600で入力したもの)から乖離した場合にも、バッテリ利用計画及び車両運行計画をその差分に合わせて補正することで当初の作業量計画に近づけることができ、実際の作業量に合わせて作業現場1への被牽引車400の到着時刻を早くしたり遅くしたりすることができる。
なお、上記では実作業量と計画作業量の差分に基づいてバッテリ利用計画及び車両運行計画を補正したが、バッテリ10の実際の消費電力量とS602(図12)で算出した必要電力量との差分やバッテリ10のSOCの実際の推移と予測推移との差分に基づいて、そのときに利用しているバッテリ10(被牽引車400)の交換時刻を補正し、バッテリ利用計画及び車両運行計画を補正しても良い。次にその場合の一例を第2の実施の形態として説明する。
本発明に係る第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、作業現場1の油圧ショベル100Aによる作業を開始した以後に、作業現場1の各油圧ショベル100の電源となっているバッテリ10のSOCを監視し、そのSOCの実際の推移と、バッテリ利用計画の作成時に算出された当該バッテリ10のSOCの予測推移の差異を監視することで、当該差異に基づいて当該バッテリ10(被牽引車400)の交換時期を補正する点が第1の実施の形態と異なっている。
図17は図12の一連の処理の終了後に油圧ショベル100の作業を開始した以後に管理局端末システム960で実行されるバッテリ利用計画および車両運行計画の補正処理のフローチャートである。ここでは作業現場1の油圧ショベル100Aのバッテリ利用計画および車両運行計画を補正する場合を例に挙げて説明する。
管理局900のオペレータによる入力部973を介した入力または管理局端末システム960が自動的に決めたタイミング(以下、「計画見直しタイミング」と称することがある)で図17の処理が開始され、SOC比較部978(図7参照)は、その日の作業開始時から計画見直しタイミングまでの実際のSOC推移をバッテリ状態記憶部965から取得する(S800)。そして、SOC比較部978は、実際のSOC推移を取得した期間に対応するSOC予測推移をバッテリ状態記憶部965から取得する(S802)。
次に、SOC比較部978は、実際のSOC推移とSOC予測推移の差分に基づいてバッテリ10のSOCがバッテリ交換タイミングを示す設定値にまで低下する時刻を予測し、当該予測時刻をバッテリ10の新たな交換時刻として決定する(S804)。例えば、この時に油圧ショベル100Aに連結されている被牽引車400が図14中の第1被牽引車(被牽引車400A)であれば、時間Tb1の終了時刻が変化する。
S806では、バッテリ利用計画算出部963は、S804で決定した交換時刻に合わせて後続するバッテリ10(被牽引車)の交換時刻等を補正し、これをバッテリ利用計画記憶部971に保存する。本実施の形態のバッテリ利用計画算出部963は、S804で変化した第1被牽引車(被牽引車400A)に係る時間Tb1に続く時間Tc,Td1,Teの開始・終了時刻と、第2〜4被牽引車に係る時間Ta,Tbk,Tc,Tdk,Teの開始・終了時刻(k=2,3,4)とを図14上の左右に適宜スライドさせて補正するものとする。これにより例えばS804により次のバッテリ交換タイミングが早まった場合には、図14の各時間は図中の左側にスライドされる。
S808では、車両運行計画算出部964は、S806で補正したバッテリ利用計画に合わせて車両運行計画の補正を行い、これを車両運行計画記憶部970に保存する。
S610とS612では、先の場合と同様に管理局端末システム960が、S806のバッテリ利用計画とS808の車両運行計画に基づいて、バッテリ状態記憶部965に記憶された各バッテリ10の状態パラメータを更新し、該当する運搬車両200に対してS808の車両運行計画を配信して一連の処理を終了する。
上記のようにSOCの差分に基づいてバッテリ利用計画と車両運行計画を補正すれば、天候による路面状況の悪化に起因した消費電力の向上やバッテリ10の経年劣化等で当初の予定よりも次のバッテリへの交換タイミングが早まる場合にもその交換時期を予め予測することができるので、油圧ショベル100の作業効率の低下を防止することができる。このようにSOCや電力量に基づいて計画を補正すると、バッテリ交換タイミングが実際のSOCに合わせて最適化されるので、油圧ショベル100による作業の継続性を担保できるという顕著な効果が奏される。
ところで、本発明は、システム稼働に利用される主たるエネルギーが電気となるため、化石燃料に比べて電力の供給能力が卓越した地域でのサイト運営に極めて有効なシステムといえる。この種の地域は例えば中国西部等の開発途上地域でみられる。開発途上地域では、都市開発の初期段階で発電設備が設置され、化石燃料よりも電力が安価になることがある。
なお、上記では作業現場1が1箇所の場合について説明したが、複数の作業現場に対して被牽引車400と運搬車両200を往復させても良い。この場合は充電施設2から各作業現場の油圧ショベル100までの移動距離の相違に基づく移動時間の変化を考慮すれば、他の処理は図12に示したものと変わらない。
また、上記では電力供給対象となる建設機械として油圧ショベルのみを説明したが、電機駆動式の建設機械であれば油圧ショベル以外のもの(例えば、ホイールローダ、クレーン等)でも構わない。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
また、上記の各実施の形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。