以下、本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
本実施形態に係るテープ印刷装置1およびテープカセット30について、図1から図8を参照して以下に説明する。本実施形態の説明では、図1の左下側をテープ印刷装置1の前側とし、図1の右上側をテープ印刷装置1の後側とし、図1の右下側をテープ印刷装置1の右側とし、図1の左上側をテープ印刷装置1の左側とする。また、図2の右下側をテープカセット30の前側とし、図2の左上側をテープカセット30の後側とし、図2の右上側をテープカセット30の右側とし、図2の左下側をテープカセット30の左側とする。なお、実際には、図2に図示されている駆動ギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、キャビティ8aの底面により覆い隠されているが、これらのギヤ群を説明する必要上、図2にはキャビティ8aの底面は図示されていない。また、図3および図4では、カセット装着部8の周囲を形成する側壁を模式的に図示しているが、これはあくまでも模式図であって、実際よりも厚く描かれている。図2中に示す側壁も同様である。また、図3および図4では、理解を容易にするために、カセット装着部8にテープカセット30が装着された状態を、上ケース31aを取り除いて示している。また、図5から図8でも理解を容易にするために、テープカセット30を、上ケース31aを取り除いて示している。
はじめに、本実施形態に係るテープカセット30が着脱可能なテープ印刷装置1の概略構成について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態に係るテープカセット30は、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とインクリボン52とが収納され、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とが貼り合わされて形成された貼合テープ50が排出されるラミネートタイプのテープカセットである。以下では、貼合テープ50が排出されるテープカセット30のほか、感熱紙テープのみが収納されたテープカセット、印刷テープとインクリボンとが収納されたテープカセット等、テープ種類が異なる複数のテープカセットを共通して使用可能な汎用機として構成されたテープ印刷装置1を例示する。
テープ印刷装置1の外部構造について、図1を参照して説明する。テープ印刷装置1は、平面視長方形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2の前側には、文字、記号及び数字等の文字キーや、種々の機能キー等を含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、入力した文字や記号を表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。また、図示は省略するが、本体カバー2の左側面後方には、印刷済みのテープを外部に排出するための排出スリットが設けられている。
テープ印刷装置1の本体カバー2の内部構造について、図2から図4を参照して説明する。図2に示すように、カセットカバー6に対応する本体カバー2の内部には、テープカセット30が着脱自在な領域であるカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8は、テープカセット30が装着された場合に後述するカセットケース31の底面30bの形状と略対応するように凹設され、平面である底面を有するキャビティ8aと、キャビティ8aの外縁から水平に延びる平面部であるカセット支持部8bとを有する。カセット支持部8bの平面視形状は、テープカセット30の平面視形状に略対応して、左右方向に長い長方形である。キャビティ8aの後縁部は、平面視で2つの弧が左右に並んだ形状を有している。
カセット装着部8には、テープカセット30からテープを引き出して搬送する搬送機構や、テープの表面に文字等を印刷する印刷機構等が設けられている。図2に示すように、カセット装着部8の前側には、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10を搭載したヘッドホルダ74が固設されている。
カセット装着部8の外側(図2では右上側)には、ステッピングモータであるテープ送りモータ23が配設されている。テープ送りモータ23の駆動軸の下端には駆動ギヤ91が固着されており、駆動ギヤ91は開口を介してギヤ93に噛合され、ギヤ93はギヤ94に噛合されている。ギヤ94の上面には、後述するリボン巻取スプール44の回転駆動を行うリボン巻取軸95が立設されている。さらに、ギヤ94にはギヤ97が噛合され、ギヤ97にはギヤ98が噛合され、ギヤ98にはギヤ101が噛合されている。ギヤ101の上面には、後述するテープ送りローラ46(図3参照)の回転駆動を行うテープ駆動軸100が立設されている。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態でテープ送りモータ23が反時計回り方向に回転駆動されると、駆動ギヤ91、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動される。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95が嵌挿されたリボン巻取スプール44を回転駆動させる。さらに、ギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動される。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100が嵌挿されたテープ送りローラ46(図3参照)を回転駆動させる。
図3および図4に示すように、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が軸支部12aを中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、サーマルヘッド10に相対して接離可能に設けられたプラテンローラ15と、テープ駆動軸100が嵌挿されるテープ送りローラ46に相対して接離可能に設けられた可動搬送ローラ14とが共に回転可能に軸支されている。
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示しないリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、図3に示すように、プラテンホルダ12が待機位置に向けて移動する。図3に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間して位置するので、テープカセット30をカセット装着部8に着脱することができる。なお、プラテンホルダ12は、図示しない巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
一方、カセットカバー6が閉鎖されると、図4に示すように、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が印刷位置に向けて移動する。図4に示す印刷位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接して位置している。そして、プラテンローラ15がフィルムテープ59とインクリボン52とを介してサーマルヘッド10を押圧するとともに、可動搬送ローラ14が両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを介してテープ送りローラ46を押圧する。
また、図3および図4に示すように、テープカセット30のテープ排出口49からテープ印刷装置1の排出スリット(図示せず)までの間には、フィルムテープ59と両面粘着テープ58とが貼り合わされて形成された貼合テープ50が搬送される搬送経路が設けられている。この搬送経路には、貼合テープ50を所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と、固定刃18に対向して前後方向(図3および図4に示す上下方向)に移動可能に支持された移動刃19とから構成されている。移動刃19は、カッターモータ(図示せず)によって前後方向に移動される。
次に、本実施形態に係るテープカセット30の構成について説明する。テープカセット30は、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とが貼り合わされて形成された貼合テープ50を排出するラミネートタイプのテープカセットである。
テープカセット30の外観について、図2を参照して説明する。テープカセット30は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略直方体状(箱型)の筐体であるカセットケース31を有している。カセットケース31は、カセットケース31の底面30bを含む下ケース31bと、カセットケース31の上面30aを含み、下ケース31bの上部に固定される上ケース31aとで構成される。上ケース31aおよび下ケース31bが互いに固定されると、上面30aおよび底面30bの外縁に亘って所定高さの側面30cが形成される。つまり、カセットケース31は、その上下方向で対向配置された矩形状の平面をなす一対の上面30aおよび底面30bと、上面30aおよび底面30bの外縁に亘って所定高さで形成された側面30c(ここでは、前面、背面、左側面、右側面からなる四側面)とを有する箱状のケース体である。
カセットケース31は、上面30aおよび底面30bの周縁部全体が側面30cによって囲われている必要はなく、側面30cの一部(例えば背面)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上面30aおよび底面30bを接続するボスが設けられてもよい。なお、本実施形態では、カセットケース31の上下方向(つまり、上面30aおよび底面30bが対向する方向)は、テープカセット30の着脱方向と略一致している。
図2に示すように、上ケース31aおよび下ケース31bには、後述する第一テープスプール40(図5参照)、第二テープスプール41(図5参照)およびリボン巻取スプール44(図5参照)、テープ送りローラ46を回転可能に支持する支持孔65、66、67、64が設けられている。
カセットケース31の前面には、平面視で略半円状をなす溝部である半円溝34iが、カセットケース31の高さ方向(つまり、上面30aから底面30b)に亘って設けられている。半円溝34iは、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、プラテンホルダ12の回転中心である軸支部12aがカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。カセットケース31の前面のうち、半円溝34iから左に延びる部分を、アーム前面35という。アーム前面35と、アーム前面35から後方へ離間した位置に高さ方向に亘って設けられたアーム背面37とで規定される、テープカセット30の右前部から左方に延びる部位をアーム部34という。
アーム部34は、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59、及びリボンスプール42から引き出されたインクリボン52を案内し、先端に形成された開口34aから送出する。なお、フィルムテープ59、第二テープスプール41、インクリボン52、及びリボンスプール42については、図5を参照して後述する。
アーム部34の後方には、テープ印刷装置1のヘッドホルダ74が挿入されるヘッド挿入部39が設けられている。ヘッド挿入部39は、アーム背面37と、アーム背面37から連続して設けられた周壁面とにより囲まれた、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面に設けられた開口部77によってテープカセット30の前面においても外部とつながっている。アーム部34の開口34aから排出されたフィルムテープ59に、開口部77においてサーマルヘッド10による印刷が行われる。
テープカセット30の内部構造について、図5を参照して説明する。テープカセット30内には、第一テープスプール40に巻回された両面粘着テープ58、第二テープスプール41に巻回されたフィルムテープ59、およびリボンスプール42に巻回されたインクリボン52の3種類のテープロールが収納されている。
両面粘着テープ58を巻回した第一テープスプール40は、支持孔65(図2参照)を介して回転可能に配置されている。両面粘着テープ58は、剥離紙を一面に備え、剥離紙を外側に向けて第一テープスプール40に巻回されている。第一テープスプール40は、カセットケース31内の左後方に配置されている。フィルムテープ59が巻回された第二テープスプール41は、支持孔66(図2参照)を介して回転可能に配置されている。第二テープスプール41は、カセットケース31内の右後方に配置されている。インクリボン52が巻回されたリボンスプール42は、カセットケース31内において、右前方に回転可能に配置されている。
カセットケース31内における第一テープスプール40とリボンスプール42との間には、リボンスプール42からインクリボン52を引き出すとともに、文字等の印刷にて使用されたインクリボン52を巻き取るリボン巻取スプール44が、上ケース31aおよび下ケース31bの支持孔67を介して回転可能に配置されている。なお、リボン巻取スプール44の下部には、リボン巻取スプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン52が緩んでしまうのを防止するためのクラッチバネ(図示せず)が取り付けられている。
リボンスプール42の右方には、第二テープスプール41から引き出されたフィルムテープ59を案内する円柱状の案内部材71が立設されている。案内部材71の左前方には、案内部材71よりもテープ搬送方向下流側において、フィルムテープ59を案内する円柱状の案内部材72が立設されている。
第一テープスプール40の前方には、筒状のテープ送りローラ46が、上ケース31aおよび下ケース31bの支持孔64を介して回動可能に軸支されている。テープ送りローラ46は、テープカセット30がテープ印刷装置1に装着された状態において、テープ印刷装置1の可動搬送ローラ14と対向する。テープ送りローラ46は、右前部において両面粘着テープ58を外周面45に沿わせて後述する制限部材60に向けて案内する。また、テープ送りローラ46は、可動搬送ローラ14(図3参照)との協働により、前端部において両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを接着し、貼合テープ50を形成し、搬送する。これにより、両面粘着テープ58が第一テープスプール40から引き出され、フィルムテープ59が第二テープスプール41から引き出される。
テープ送りローラ46の右前方には、両面粘着テープ58のテープ送りローラ46の径方向外側への移動を規制する規制壁43が立設されている。規制壁43は、平面視円弧状に形成され、テープ送りローラ46の外周面45の両面粘着テープ58が案内される部位に対向して、外周面45とは離間して設けられている。規制壁43の外周面45に対向する側の面は、平面視のこぎり歯状に形成されている。のこぎり歯形状に形成されている側の面が、両面粘着テープ58の剥離紙で覆われていない側の面に対向する。そのため、例え両面粘着テープ58が規制壁43に接触しても、両者の接触面積が小さいので、両者は容易に剥がれる。
規制壁43の右前方には、上下一対の規制部材36が設けられている。規制部材36の基部は、フィルムテープ59を上下方向(テープ幅方向)に規制して、テープ送りローラ46に向かって案内する。
規制壁43の右方には、ヘッド挿入部39を経由して搬送された使用済みのインクリボン52をフィルムテープ59から離間させ、リボン巻取スプール44に向かって案内するための案内壁47が立設されている。案内壁47とリボン巻取スプール44との間には、案内壁47に沿って案内される使用済みのインクリボン52と、第一テープスプール40に巻回して支持された両面粘着テープ58とが互いに接触するのを防止するための分離壁48が立設されている。
テープ送りローラ46の左前方には、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とからテープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって形成された貼合テープ50の面に直交する方向への移動を制限する制限部材60が設けられている。
制限部材60について、図6を参照して説明する。制限部材60は、第一制限部材61と第二制限部材62とからなる。第一制限部材61と第二制限部材62とは、貼合テープ50を挟んで互いに対向し、第一制限部材61は後側に、第二制限部材62は前側に位置している。
第一制限部材61について説明する。第一制限部材61は、平面視略長方形の柱状部材である。第一制限部材61の前面である第一面611は、貼合テープ50の両面粘着テープ58が貼り合わされている側の面に対向する。第一面611には、貼合テープ50の搬送方向下流側端部(図6における左側端部)において、上流側から下流側に向けて貼合テープ50から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられている。第一制限部材61は、貼合テープ50の面に直交する方向のうち、両面粘着テープ58が貼り合わされている側の方向(後方)への移動を制限する。
第二制限部材62について説明する。第二制限部材62は、平面視略長方形の柱状部材であって、第一制限部材61の前方に設けられている。すなわち、第二制限部材62は、第一制限部材61よりもテープ送りローラ46から離れた位置に配置されている。第二制限部材62の後面である第二面621は、第一面611に略平行な面であり、貼合テープ50のフィルムテープ59が貼り合わされている側の面に対向する。第二面621には、貼合テープ50の搬送方向上流側端部(図6における右側端部)において、下流側から上流側に向けて、貼合テープ50から離れる方向に傾斜する傾斜面622が設けられている。第二面621のテープ搬送方向上流側端部は、第一面611のテープ搬送方向上流側端部よりも下流側に位置する。すなわち、第二制限部材62の貼合テープ50の搬送方向に沿った長さは、第一制限部材61の貼合テープ50の搬送方向に沿った長さよりも短い。第二制限部材62は、貼合テープ50の面に直交する方向のうち、フィルムテープ59が貼り合わされている側の方向(前方)への移動を制限する。
第一制限部材61の第一面611と第二制限部材62の第二面621との間には、貼合テープ50が搬送されるテープ通路63が形成されている。テープ通路63は、テープカセット30の左右方向に沿って形成され、貼合テープ50のテープ搬送方向下流端部(図6における左側端部)に、貼合テープ50をテープカセット30から排出するテープ排出口49が形成される。テープ通路63の前後方向における位置は、テープ送りローラ46の前端位置と同一位置である。貼合テープ50は、テープ通路63を右方から左方に搬送される際に、第一制限部材61と第二制限部材62とによって、面に直交する方向の移動が規制される。テープ通路63の貼合テープ50の搬送方向に沿った長さを通路長さL1、テープ送りローラ46の外周面45と規制壁43との離間距離を離間距離L2とすると、通路長さL1は、離間距離L2よりも長い(L1>L2)。
次に、テープカセット30の内部における両面粘着テープ58、フィルムテープ59、貼合テープ50の搬送経路について、図5を参照して説明する。
はじめにフィルムテープ59の搬送経路について説明する。第二テープスプール41に時計回りに巻回されたフィルムテープ59は、第二テープスプール41の右部から前方に引き出され、テープカセット30の右前部まで搬送される。そして、案内部材71、72によって左方向に方向変換され、アーム部34に至る。フィルムテープ59は、アーム部34の内部を左方向に搬送されて、アーム部34の左端部に形成された開口34aから排出される。開口34aから排出されたフィルムテープ59は、開口部77において、サーマルヘッド10(図2参照)による印刷がなされる。フィルムテープ59は、さらに左方向に搬送され、規制部材36の基部によって上下方向の移動が規制されたあと、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14(図3、図4参照参照)とによって、両面粘着テープ58とともに挟み込まれ、両面粘着テープ58に接着される。
次に、両面粘着テープ58の搬送経路について説明する。剥離紙側を外側にして第一テープスプール40に反時計回りに巻回された両面粘着テープ58は、第一テープスプール40の左部から前方に引き出される。テープカセット30の前方まで引き出された両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46の右前部において外周面45に沿って、左方向に方向変換される。ここで、外周面45の両面粘着テープ58と接触する部分の周方向長さは、外周面45の全周長さの1/4以上である。すなわち、後方から前方に向かって、テープ送りローラ46まで搬送された両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46の外周面45の右前部に沿って鋭角に湾曲し、左方へ搬送される。
両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46の前端部において、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14とによって、フィルムテープ59とともに挟み込まれ、フィルムテープ59に接着される。こうして、フィルムテープ59と両面粘着テープ58とからなる貼合テープ50が形成される。
貼合テープ50の搬送経路について説明する。貼合テープ50は、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とが貼り合わされて形成されている。よって、両面粘着テープ58の搬送経路とフィルムテープ59の搬送経路とが重なる部分に、貼合テープ50の搬送経路が形成される。テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、テープ送りローラ46の前端部において形成された貼合テープ50は、制限部材60のテープ通路63の入り口に向けて左方に案内される。貼合テープ50は、テープ通路63を通過したあと、テープ排出口49からテープカセット30の外部に排出される。
次に、貼合テープ50をテープカセット30から排出する排出動作について、図4を参照して簡単に説明する。テープ印刷装置1の印刷動作が開始されると、プラテンホルダ12が印刷位置に移動して、可動搬送ローラ14とテープ送りローラ46とによって、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを圧接する。これによって、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とが接着されて貼合テープ50が形成される。
そして、テープ送りモータ23(図2参照)が反時計回りに回転駆動されることにより、プラテンローラ15と、可動搬送ローラ14と、テープ送りローラ46とがそれぞれ回転する。これによって、テープ送りローラ46の外周面45に接触する両面粘着テープ58と、可動搬送ローラ14の外周面に接触するフィルムテープ59とが、テープ送りモータ23の駆動量に合わせて搬送される。貼合テープ50が搬送されることにより、両面粘着テープ58は、第一テープスプール40から引き出され、フィルムテープ59は、第二テープスプール41から引き出される。
引き出されたフィルムテープ59の印刷面には、サーマルヘッド10によって、文字等の印刷が行われる。フィルムテープ59の印刷面は、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との間において、第一テープスプール40から引き出された両面粘着テープ58の粘着層に圧接される。フィルムテープ59と両面粘着テープ58とからなる貼合テープ50は、テープ排出口49からテープカセット30の外部に排出される。
ところで、このようなテープカセット30では、テープ排出口49から排出された貼合テープ50や、カセットケース31から露出したフィルムテープ59が外力を受けて、テープ搬送方向上流側に向けて押し戻されてしまうことがある。貼合テープ50やフィルムテープ59が外力を受けてテープ搬送方向上流側に向けて押し戻された場合の、各テープの動きについて、図5から図7を参照して説明する。
図5に示すように、出荷時またはカット後のテープカセット30においては、フィルムテープ59が、開口34aからテープ送りローラ46の前方に至るまで外部に露出している。また、貼合テープ50は、テープ送りローラ46の前方からテープ通路63の入り口に至るまでと、テープ排出口49よりも搬送方向下流側において、テープカセット30の外部に露出している。この外部に露出された部分において、フィルムテープ59および貼合テープ50は外力を受けうる。
ここで、両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46の右前部において外周面45に沿って鋭角に湾曲し、外周面45の前部においてフィルムテープ59に接着された後、貼合テープ50として、右方から左方に向けて搬送される。よって、フィルムテープ59または貼合テープ50が露出部分において搬送方向上流側向きの外力をうけると、両面粘着テープ58も、テープ送りローラ46よりも搬送方向下流側において搬送方向上流方向(右方向)の力を受けて、押し戻される。
図7に示すように、両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46よりも搬送方向下流側において搬送方向上流側(右方向)に押し戻されると、テープ送りローラ46の外周面45に接触していた部分が外周面45から離れ、テープ送りローラ46の径方向外側に向かって撓む。撓んだ両面粘着テープ58は、外周面45の両面粘着テープ58と接触する部分に対向して立設された規制壁43にぶつかる。規制壁43にぶつかった両面粘着テープ58は、規制壁43に向かう方向への移動が規制されるので、搬送方向上流側に押し戻されることがない。
ここで、両面粘着テープ58が外周面45に接触している状態から規制壁43にぶつかるまでに、搬送方向上流側へ押し戻される両面粘着テープ58の長さは、外周面45と規制壁43との離間距離L2とほぼ同一寸法である。よって、搬送方向上流側に押し戻される両面粘着テープ58の長さの最大値は、離間距離L2とほぼ等しい。言いかえれば、両面粘着テープ58の搬送方向上流側へ押し戻される長さは、離間距離L2以下である。
両面粘着テープ58とフィルムテープ59とが接着されて貼合テープ50が形成されているので、貼合テープ50と両面粘着テープ58とフィルムテープ59とが搬送方向上流側に押し戻される長さは等しい。すなわち、貼合テープ50の搬送方向上流側へ押し戻される長さ、およびフィルムテープ59の搬送方向上流側へ押し戻される長さは、離間距離L2以下である。
ここで、上述のように、貼合テープ50が搬送されるテープ通路63の通路長さL1は、外周面45と規制壁43との離間距離L2よりも長い。また、貼合テープ50が搬送方向上流側へ押し戻される長さは、離間距離L2以下である。そのため、貼合テープ50が、搬送方向上流側に押し戻された場合であっても、貼合テープ50の搬送方向下流側端部が、テープ通路63の入り口よりもテープ搬送方向上流側まで移動してしまうことがない。よって、貼合テープ50が、テープ通路63から外れてしまうことを防止できる。
このように両面粘着テープ58が規制壁43に当接した状態のテープカセット30が、カセット装着部8に装着されて、テープ印刷装置1の印刷動作が開始された場合の各テープの動きについて、図7を参照して説明する。
貼合テープ50の動きについて説明する。テープ印刷装置1において印刷動作が開始されると、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14(図4参照)とが、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とを挟み込み、貼合テープ50として左方向に搬送する。図7に示すように、貼合テープ50の少なくとも下流側端部はテープ通路63に位置しているので、貼合テープ50は、面に直交する方向の移動が規制されつつ、テープ通路63を左方向に搬送され、テープ排出口49からテープカセット30の外部に排出される。このように、貼合テープ50が搬送方向上流側に押し戻された場合であっても、貼合テープ50の搬送経路は復帰する。
両面粘着テープの動きについて説明する。テープ印刷装置1において印刷動作が開始されると、両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14(図4参照)との協働により、フィルムテープ59と接着されて、貼合テープ50として左方向に搬送される。まず、撓んでいた部分が搬送されてフィルムテープ59と接着される。搬送された長さが、押し戻された長さ以上になると、撓みがなくなり、図7に示すように規制壁43に当接していた両面粘着テープ58は、図6に示すように、再び外周面45に接触する。このように、両面粘着テープ58が搬送方向上流側に押し戻された場合であっても、両面粘着テープ58の搬送経路は復帰する。
なお、撓んだ状態の両面粘着テープ58は、規制壁43に接している部分においては規制壁43に接着されている。しかしながら、規制壁43の外周面45に対向する側の面は、平面視のこぎり歯状に形成されているので、両者の接触面積は小さく、両者の接着力も小さい。よって、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14により、両面粘着テープ58が搬送されると、両面粘着テープ58は規制壁43から容易に剥がれる。そのため、両面粘着テープ58と規制壁43とが部分的に接着しても、両面粘着テープ58の搬送には影響を与えない。
フィルムテープ59についても同様に、テープ送りローラ46と可動搬送ローラ14との協働により搬送された長さが、押し戻された長さ以上になるとテープカセット30の内部における撓みがなくなり、搬送経路は復帰する。
このように、外力によって、貼合テープ50、両面粘着テープ58、フィルムテープ59のいずれかが搬送方向上流側に押し戻されても、本実施形態のテープカセット30では、各テープの搬送経路を復帰することができる。
ところで、このようなテープカセット30では、加えられる外力が、両面粘着テープ58の剛力よりも大きく、規制壁43に当接した後の両面粘着テープ58に撓みが生じてしまった場合等には、テープ通路63から貼合テープ50が外れてしまうことも考えられる。テープ通路63から外れてしまった貼合テープ50の動きについて、図8を参照して説明する。
第一面611のテープ搬送方向上流側端部は、第二面621の該上流側端部よりも上流側に位置している。そのため、貼合テープ50がテープ通路63から外れてしまった場合も、第一面611の方向への移動を規制することができる。第一制限部材61は、第二制限部材62よりも、テープ送りローラ46に近い位置に配置されているため、第一面611は、貼合テープ50の面に直交する方向のうち、テープ送りローラ46に向かう方向(テープカセット30の内側方向)への移動を規制する。よって、貼合テープ50がテープ通路63から外れてしまった場合にも、貼合テープ50がテープ送りローラ46の方向に入り込むことを抑制できる。
貼合テープ50がテープ送りローラ46の方向に向かって、テープカセット30の内部に入り込んでしまった場合には、テープカセット30の内部から貼合テープ50を引き出して、正規の搬送経路に復帰させることが困難である。一方、テープカセット30の外部に外れた場合には、使用者は、テープ通路63に貼合テープ50を挿入するだけで貼合テープ50を正規の搬送経路に復帰させることができる。
また、特に、図8に示すように、貼合テープ50のテープ搬送方向下流端がテープ通路63の搬送方向上流端よりも上流側に位置する場合には、貼合テープ50をテープ印刷装置1の可動搬送ローラ14に当接させることにより、貼合テープ50の搬送経路を復帰することができる。詳しくは、テープ印刷装置1のカセットカバー6(図1参照)が閉鎖されると、プラテンホルダ12がテープカセット30の方向へ移動する。このとき、プラテンホルダ12の先端側に設けられた可動搬送ローラ14が、テープカセット30の外部に位置する貼合テープ50に当接し、貼合テープ50をテープカセット30の方向に向けて押し戻す。可動搬送ローラ14は、貼合テープ50を介して、テープ送りローラ46を押圧する。そして、可動搬送ローラ14とテープ送りローラ46とが協働して、貼合テープ50をテープ通路63の入り口に向けて搬送する。このようにして、貼合テープ50の搬送経路を復帰することができる。
また、第二制限部材62の貼合テープ50に対向する第二面621には、貼合テープ50の搬送方向上流側端部において、下流側から上流側に向けて、貼合テープ50から離れる方向(後方から前方)に傾斜する傾斜面が設けられている。そのため、貼合テープ50が、テープ通路63の入り口よりも搬送方向上流側において正規の搬送経路よりも前方で搬送されても、貼合テープ50をテープ通路63に向けて案内することができる。
以上説明したように、本実施形態のテープカセット30によれば、両面粘着テープ58は、テープ送りローラ46において、外周面45に沿って鋭角に湾曲し、テープ通路63の入り口に向けて案内される。規制壁43が外周面45とは所定の離間距離L2で、外周面45の両面粘着テープ58に接触する部分に対向して立設されている。両面粘着テープ58は、搬送方向上流向きの力を受けると、テープ送りローラ46の径方向外側に向かって撓むが、規制壁43にぶつかると、規制壁43によって移動が規制される。両面粘着テープ58の移動を規制することができるので、フィルムテープ59、および貼合テープ50の移動を規制することができる。押し戻される各テープの長さの最大値は、離間距離L2とそれぞれほぼ等しい。
貼合テープ50が搬送されるテープ通路63の通路長さL1は、離間距離L2よりも長い。そのため、貼合テープ50が、搬送方向上流側に押し戻された場合であっても、貼合テープ50が、テープ通路63から外れてしまうことを防止できる。よって、貼合テープ50が、搬送方向上流側に押し戻された場合であっても、貼合テープ50を、テープ通路63に沿ってテープ排出口49まで案内し、テープ排出口49から排出させることができる。
また、第一面611のテープ搬送方向上流側端部は、外方に位置している第二制限部材62の該上流側端部よりも上流側に位置している。よって、テープ通路63から貼合テープ50が外れてしまった場合にも、貼合テープ50がテープカセット30の内部に入り込んでしまうことを防止できる。そのため、テープ通路63から貼合テープ50が外れてしまった場合にも、貼合テープ50の搬送経路を簡単に復帰させることができる。
上記実施形態において、フィルムテープ59が、本発明の「印刷テープ」に相当する。規制壁43が本発明の「規制部材」に相当する。
なお、本発明のテープカセット30は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
たとえば、本実施形態において第一制限部材61と第二制限部材62とは、テープカセット30の下面から上面にわたって、連続して形成されていたが、連続して形成されるものに限定されない。例えば、第一制限部材61を、上ケース31aから下方に突出する上部制限部材と、下ケース31bから上方に突出する下部制限部材とから構成し、上部制限部材と下部制限部材との間に隙間が形成されても良い。また、第二制限部材62についても、同様の構成でもよい。
また、本実施形態では、両面粘着テープ58とフィルムテープ59とインクリボン52とが収納されるラミネートタイプのテープカセットについて説明したが、たとえば、第一テープスプール40に両面粘着テープ58が巻回され、第二テープスプール41に透明フィルムからなる感熱紙テープが巻回されるテープカセットに適用しても良い。