JP5156278B2 - 塩化ビニル壁紙を再利用した塩化ビニル系重合体組成物及びその組成物からなる床材シート - Google Patents

塩化ビニル壁紙を再利用した塩化ビニル系重合体組成物及びその組成物からなる床材シート Download PDF

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Description

本発明は、塩化ビニル壁紙の全ての成分を有効に再利用した樹脂組成物及びその組成物からなる床材シートに関するものである。更に詳しくは、カレンダー成形性と物性を兼ね備えた安価な成形品材料を得ることを目的とし、外観性が優れた床材シートに適した樹脂組成物に関する。
塩化ビニル壁紙は、基材の裏打紙に塩化ビニル成分が強固に含浸、被覆されている為、紙成分と塩化ビニル成分を完全に分離してそれぞれを有効利用することは極めて困難である。このため、これまで不用となった塩化ビニル壁紙は殆ど埋め立て処分されていたが、近年、社会的に環境保全、再資源化の要求が強まり、塩化ビニル壁紙についても再利用の検討が進められている。
例えば、特許文献1では、裏打ち紙が付着したままの廃棄塩化ビニル壁紙を直径1mm以下の大きさに微粉砕し、該微粉砕物を高周波ウエルダー処理させる塩化ビニル壁紙の処理方法が開示されている。また、特許文献2では、裏打ち紙が付着したままの廃棄塩化ビニル壁紙を所望の大きさに粗粉砕した後、単軸又は2軸の高混練性能を有する構成のスクリューを介してペレット状に押出成形させる再生利用方法が開示されている。しかし、前記技術では、粉砕された塩化ビニル壁紙中には多量の紙繊維成分が含有されている為、再利用するにも、紙繊維成分が塩化ビニル成分中に均一分散されず凝集してしまい、押出成形やカレンダー成形等、通常の成形加工方法に適用することは困難である。
また、特許文献3では、ジェット渦流で塩化ビニル壁紙を微粉砕して塩化ビニル成分と裏打ち紙成分を分離する方法が開示されている。また、特許文献4では、乾式粉砕法や湿式粉砕法等を用いて塩化ビニル壁紙を粉砕する際に塩化ビニル成分と裏打ち紙成分を剥離させ、剥離した紙繊維を塩化ビニル壁紙粉砕物から分離除去させる。これにより、紙繊維含有率の抑制と紙繊維の短縮化が図られた塩化ビニル壁紙の再生組成物が開示されている。
これらの技術では、塩化ビニル壁紙中の紙成分をある程度分離除去させる為、塩化ビニル壁紙粉砕物を再利用する際に大きな問題となる多量の紙成分の凝集による成形不良については幾分改善効果がみられる。しかし、再生組成物から紙成分が完全に除去される訳ではないため、塩化ビニル成分と紙繊維成分との親和性不良により、カレンダー成形等に用いた場合、バンク内での脱気不良による成形品の外観不良や物性不良といった問題が生じる場合がある。したがって、塩化ビニル壁紙の再生利用技術としては未だ十分とはいえない。
また、これら塩化ビニル壁紙の再生技術では、分離除去された紙成分が副産物として生成されるが、これら分離された紙成分には塩化ビニル成分も含まれている為、再生紙としての再利用は困難である。したがって、埋め立て処分せざるを得ず、塩化ビニル壁紙の全ての成分を再利用できる技術には至っていない。
特開平6−114838号公報 特開平6−126745号公報 特開平5−247863号公報 特開2003−53728号公報
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、使用済みの塩化ビニル壁紙の全ての成分を有効に再利用でき、カレンダー成形性と物性発現に優れた塩化ビニル系重合体組成物及びその組成物からなる床材シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明は以下の事項により特定される。
(1)塩化ビニル系重合体15〜30質量%、裏打ち紙を20〜35質量%含有した塩化ビニル壁紙の破砕物10〜30質量%、熱安定剤0.05〜1.5質量%、可塑剤10〜25質量%、炭酸カルシウム30〜55質量%からなる混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤、酢酸ビニル−エチレン系共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、有機錫化合物からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物を0.1〜10質量部添加してなり、前記の裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物が、粉砕により裏打ち紙の紙繊維が数平均繊維長として600μm以下まで細断され、塩化ビニル成分内に分散されていることを特徴とする塩化ビニル系重合体組成物。
)(1)記載の塩化ビニル系重合体組成物において、該混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤若しくは部分鹸化ポリ酢酸ビニルの中から選ばれる1種類以上の化合物と、酢酸ビニル−エチレン系共重合体若しくは有機錫化合物の中から選ばれる1種類以上の化合物からなる少なくとも2種類以上の化合物を併せて0.1〜10質量部添加してなることを特徴とする(1)記載の塩化ビニル系重合体組成物。
)前記のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤が、平均分子量90万〜600万の範囲にあるメチルメタクリレート−アルキルアクリレート系共重合体であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の塩化ビニル系重合体組成物。
)前記の酢酸ビニル−エチレン系共重合体が、酢酸ビニルを質量比率で20〜80質量%含有しており、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100g/10分の範囲にあることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物。
)前記の部分鹸化ポリ酢酸ビニルが、酢酸ビニルの部分鹸化により、ビニルアルコールを質量比率で40〜95質量%含有しており、平均重合度が300〜1500の範囲にあることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物。
)前記有機錫化合物が、アルキル基の炭素数が1〜18のジブチル錫ビスアルキルマレート、ジオクチル錫ビスアルキルマレート、ジブチル錫ビスチオグリコール酸アルキルエステル、ジオクチル錫ビスチオグリコール酸アルキルエステル、ジブチル錫βメルカプトプロピオン酸アルキルエステル、ジオクチル錫βメルカプトプロピオン酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物であることを特徴とする請求項(1)〜()のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物。
)(1)〜()のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物からなることを特徴とする床材シート。
本発明によれば、使用済みの塩化ビニル壁紙の全ての成分を有効に再利用でき、床材等のカレンダー成形におけるシートの外観性と物性発現に優れた塩化ビニル系重合体組成物を得ることができる。
本発明は、裏打ち紙層と塩化ビニル層が強固に含浸付着しており両成分の分離が困難な為、本来、再利用が困難であった使用済みの塩化ビニル壁紙廃材を、裏打ち紙成分と塩化ビニル成分とに分離しなくても全ての成分を有効に再利用することができる。また、カレンダー成形性に優れ、床材シート等の成形加工に優れた塩化ビニル系重合体組成物及びその組成物からなる床材シートに関するものである。
すなわち、本発明の塩化ビニル系重合体組成物及びその組成物からなる床材シートは、塩化ビニル系重合体と熱安定剤、可塑剤、炭酸カルシウムからなる軟質塩化ビニル系重合体組成物に、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物を添加、混合し、塩化ビニル壁紙廃材を床材シート等のカレンダー成形加工に再利用するにあたり、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤、酢酸ビニル−エチレン系共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、有機錫化合物の中から選ばれる化合物のうち少なくとも1種類以上の化合物を添加してなることを特徴とするものである。
床材シート等のカレンダー成形加工に通常適用されている軟質塩化ビニル系重合体組成物に、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物を単に添加した場合、紙成分と塩化ビニル系重合体成分との親和性の不足により、紙繊維の凝集や分散不良が生じる。したがって、カレンダー成形加工等において、バンク内での樹脂の不規則な回転流動や樹脂と金属ロール面との剥離が生じ、シート内への空気の巻き込みにより、得られたシートの外観不良や物性不良の発生を促す。
本発明者は上記課題に対し、裏打ち紙が付着したままの塩化ビニル壁紙の破砕物を添加する際、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤、酢酸ビニル−エチレン系共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、有機錫化合物のいずれかを併用添加することを見出した。これにより、塩化ビニル系重合体と紙繊維との親和性が改善され、成形加工時に組成物中の紙繊維の分散が促進され、カレンダー成形時に金属ロール面と樹脂シートの接着性や剪断応力が向上する。また、バンク内での脱気不良や不規則な回転流動が改善され、表面外観や物性の良好な床材シートを得ることが可能である。
この理由は必ずしも明らかではないが、紙繊維を構成するセルロース繊維は水酸基に覆われた構造であり、塩化ビニル系重合体を覆っている塩素基とは本来反発しあう関係にある。しかし、紙繊維と塩化ビニル系樹脂の界面間に、酢酸基やカルボニル基、更には必要に応じて水酸基を適度に分散させることにより、反発し合っていた水酸基と塩素基がこれらの極性基を介して水素結合で結合され、親和性が改善されるものと考えられる。つまり、酢酸基やカルボニル基又は水酸基を適度な比率で含有する特定の添加剤を塩化ビニル壁紙廃材の破砕物と併用添加し、配合量を適度に調整することにより、塩化ビニル系重合体成分と紙繊維成分との界面の接着力が向上する。また、流動場での樹脂層の剪断力の向上や、ロール等加工機金属面と樹脂層との接着力の向上により、組成物中での紙繊維の均一分散化が促進される。したがって、塩化ビニル壁紙廃材を再利用する上で問題となる成形不良や物性不良について、改善を図ることができるものと考えられる。
本発明に用いられる塩化ビニル系重合体とは、塩化ビニルの単独重合体又は、塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のビニル系単量体との共重合体、さらには、塩化ビニル、必要により塩化ビニルと共重合可能な他のビニル系単量体及び多官能性モノマーとの共重合により部分架橋された塩化ビニル系重合体などが挙げられる。
ここで用いる塩化ビニルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα−モノオレフィン系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド、塩化ビニリデンなどのビニリデン類等であり、これらのうち少なくとも1種以上を塩化ビニルと共重合させる。
また、部分架橋させる多官能性モノマーとしては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルアジペート、トリアリルシアヌレート等の多官能アリル化合物、エチレングリコールジビニルエーテル、オクタデカンジビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等があげられる。これらのうち少なくとも1種以上を塩化ビニルと共重合させ、部分的に架橋構造を有する塩化ビニル系重合体とする。
塩化ビニル系重合体の平均重合度については特に制限はないが、好ましくは600〜3000、より好ましくは700〜2500であると、成形加工性と物性が共に良好な塩化ビニル系重合体組成物が得られ、好ましい。
塩化ビニル系重合体は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などのいずれの方法で製造されたものでも良く、特に制限はないが、懸濁重合法で製造されたものが、残存モノマーが少なく、好ましい。
塩化ビニル系重合体の懸濁重合法はよく知られており、公知の方法を用いればよく、特に制限は無い。
本発明に用いられる裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物とは、塩化ビニル壁紙中に質量比率で裏打ち紙が20〜35質量%、好ましくは20〜33質量%含有した塩化ビニル壁紙の粉砕物である。塩化ビニル壁紙中の裏打ち紙の含有率が35質量%を越えると、粉砕機で塩化ビニル壁紙を破砕する際、紙繊維が過剰なため、紙成分のみの凝集体が形成されやすくなる。これにより、塩化ビニル成分と紙繊維の均一混合及び均一破砕が難しくなるため、好ましくない。また、塩化ビニル壁紙中の裏打ち紙の含有率が20質量%未満であると、破砕の際、塩化ビニル成分が過剰なため、破砕物同士が粘着し、紙繊維の破砕効率が低下するため、好ましくない。
本発明に用いられる裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の組成としては、上述のように、塩化ビニル壁紙中に裏打ち紙が20〜35質量%含有している以外には特に制限は無い。一般に使用されている塩化ビニル壁紙の組成は、基材となる裏打ち紙層と、これを被覆した塩化ビニル層から成り、裏打ち紙層の比率は20〜35質量%の範囲にある。また、塩化ビニル層の組成は、塩化ビニル樹脂と、充填剤、可塑剤、顔料、熱安定剤などで構成されている。したがって、本発明の塩化ビニル壁紙には、例えば、塩化ビニル壁紙の製造時に発生する不良品、端材、長期不良在庫品、改装、解体時に発生する壁紙など、製造過程、販売過程、使用過程で不用となった塩化ビニル壁紙廃材を適用することができる。
上述のように、本発明に用いられる塩化ビニル壁紙の破砕物中には、20〜35質量%の裏打ち紙成分が含まれている為、破砕物中の紙繊維長が過剰に長いと、紙繊維同士の絡み合いにより凝集構造が形成されやすくなる。これにより、成形加工時紙繊維が分散不良となり、成形不良や物性不良が生じやすくなる。したがって、本発明で用いられる塩化ビニル壁紙の破砕物としては、粉砕又は混練によって、含有する紙繊維の数平均繊維長が1000μm以下であることが好ましい。更に好ましくは600μm以下、最も好ましくは500μm以下である。
本発明における裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物の破砕方法としては特に制限は無いが、乾式の破砕方法、湿式の破砕方法、及び乾式と湿式の併用方法や、単軸又は二軸のスクリューで押出混練させる方法が好ましい。乾式の粉砕方法は、固定刃、回転刃、スクリーンを備えた一般的な粉砕機を用いて、塩化ビニル壁紙廃材を固定刃と回転刃の間に挟んで破砕する方法である。湿式の粉砕方法は、ジャマ板と回転刃を備えた破砕機の中に水と塩化ビニル壁紙廃材を仕込み、回転刃の回転による破砕と、回転で形成された水流とジャマ板との衝突により、塩化ビニル壁紙廃材を破砕するものである。乾式と湿式の併用方法は、乾式で粗粉砕した後、湿式で微粉砕させる方法であり、乾式又は湿式のみで粉砕するよりも効率が良い。単軸又は二軸のスクリューで押出混練させる方法は、予め粗粉砕した塩化ビニル壁紙廃材を単軸又は二軸スクリューの押出機で押出混練させ、ペレット状に押出成形させるもので、混練時の剪断力により塩化ビニル壁紙を破砕させるものである。
本発明に用いられる熱安定剤としては、例えば、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤、トリブチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、モノトリデシルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレンジホスファイト等のホスファイト系安定剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト系安定剤、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβジケトン、エポキシ化大豆油、ペンタエリスリトール等のポリオール等が挙げられ、2種類以上の熱安定剤を併用して添加しても構わない。
本発明に用いられる可塑剤としては、例えば、ジ2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル、ジイソノニルアジペート、ジ2−エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられ、これらの可塑剤の中から2種類以上の可塑剤を併用して添加しても構わない。
本発明に用いられる炭酸カルシウムとしては、一般にフィラーとして用いられるものでよく、特に制限は無いが、平均粒子径0.1〜10μmの重質炭酸カルシウム又は表面処理された軽質炭酸カルシウムが、成形加工時の分散性や成形品の表面外観が良好であることから好ましい。
本発明の塩化ビニル系重合体組成物における上述の塩化ビニル系重合体、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物、熱安定剤、可塑剤、炭酸カルシウムの組成比率は、塩化ビニル系重合体15〜30質量%、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物10〜30質量%、熱安定剤0.05〜1.5質量%、可塑剤10〜25質量%、炭酸カルシウム30〜55質量%である。好ましくは、塩化ビニル系重合体18〜27質量%、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物10〜25質量%、熱安定剤0.1〜1.3質量%、可塑剤12〜22質量%、炭酸カルシウム35〜55質量%である。
裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物の組成比率が30質量%を越えたり、塩化ビニル系重合体の組成比率が15質量%未満であると、紙繊維の凝集が生じる。したがって、成形加工性の悪化や、得られた成形品の引張り特性の低下、成形品を積層加工した場合の剥離強度の低下が生じ好ましくない。一方、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物の組成比率が10質量%未満であったり、塩化ビニル系重合体の組成比率が30質量%を越える場合、熱安定剤、可塑剤、炭酸カルシウムを適切な比率で混合することにより良好な成形品を得ることはできる。しかし、本発明は塩化ビニル壁紙の再利用を目的とすることである為、塩化ビニル壁紙の使用量が相対的に少なくなることは再利用の効率が低下し、好ましくない。
熱安定剤の組成比率が0.05質量%未満であると、該塩化ビニル系重合体組組成物の熱安定性の悪化による成形加工時の着色や焼けが発生し、好ましくない。一方、熱安定剤が1.5質量%を越える場合、該塩化ビニル系重合体組成物の熱安定性としては十分であるが、過剰添加に伴い、成形加工時のロール金属面やダイス等の汚染による成形不良が生じやすくなる。したがって、該塩化ビニル系重合体組成物のコストアップとなり、好ましくない。
可塑剤の組成比率が25質量%を越えると、可塑剤のブリードによる成形加工時のロール金属面やダイス等の汚染による成形不良が生じやすくなり、また、得られた成形品の弾性率、剛性も低下し、好ましくない。一方、可塑剤の組成比率が10質量%未満であると、得られる成形品の引張り特性、表面平滑性が悪化し、好ましくない。
炭酸カルシウムの組成比率が30質量%未満であると、得られる成形品の弾性率や剛性が低下し、好ましくない。一方、炭酸カルシウムの組成比率が55質量%を越えると、成形加工時の流動性低下や、得られる成形品の表面外観の悪化、得られる成形品の物性低下が生じ、好ましくない。
本発明の塩化ビニル系重合体組成物では、上述の塩化ビニル系重合体、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物、熱安定剤、可塑剤、炭酸カルシウムからなる混合組成物100質量部に対して、更にメタクリル酸エステル系高分子加工助剤、酢酸ビニル−エチレン系共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、有機錫化合物からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物を、0.1〜10質量部添加する必要がある。好ましくは、0.2〜8質量部添加する必要がある。
該化合物群の添加量が10質量部を越えると、成形加工時にロール等加工機の金属面と該塩化ビニル系重合体組成物との接着性が強固になりすぎ、シートのロールリリース性不良や粘着による流動不良等の成形不良が発生しやすくなる。また、得られた成形品の物性や色相も悪化し、好ましくない。一方、上述の化合物の添加量が0.1質量部未満であると、添加による十分な改良効果がみられず、好ましくない。
該化合物群の中で、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤若しくは部分鹸化ポリ酢酸ビニルの中から選ばれる1種類以上の化合物と、酢酸ビニル−エチレン系共重合体若しくは有機錫化合物の中から選ばれる1種類以上の化合物からなる少なくとも2種類以上の化合物を併せて添加した場合、塩化ビニル系重合体成分と紙繊維成分との界面の接着力の向上と、ロール等加工機金属面と樹脂層との接着力の向上の両立が図られる。したがって、単独添加の場合と比べより少量の添加量で組成物中での紙繊維の均一分散化が促進され、外観及び物性の良好なシートが得られる。さらに、カレンダー成形加工を長時間実施しても混練樹脂から金属ロール面へのブリード物の付着が殆ど発生せず、シート表面を汚染させることが無く安定した高品質のシートを生産することができ、更に好ましい。
本発明に用いられるメタクリル酸エステル系高分子加工助剤としては、メタクリル酸メチルを必須成分とし、必要により共重合可能な他のビニル系単量体との多元的なランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などが挙げられる。その中で、好ましくは、メタクリル酸メチル50〜95質量%とメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの中から選ばれる少なくとも1種類以上の単量体5〜50質量%とこれらと共重合可能な他のビニル系単量体0〜20質量%とからなるメチルメタクリレート−アルキルアクリレート系共重合体が挙げられる。
更に、上記のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート系共重合体の平均分子量は、90万〜600万の範囲が好ましく、120万〜500万の範囲がさらに好ましい。該塩化ビニル系重合体組成物中での紙繊維の分散がより促進され、カレンダー成形時のバンク内の回転流動や脱気が良好となり、外観の良好なシートが得られるためである。
本発明に用いられる酢酸ビニル−エチレン系共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルを必須成分とし、必要によりエチレン又は酢酸ビニルと共重合可能な他のビニル系単量体との多元的なランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などが挙げられる。
ここで用いるエチレン又は酢酸ビニルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、プロピレン、ブチレンなどのα−モノオレフィン系単量体、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド、塩化ビニリデンなどのビニリデン類、塩化ビニル等であり、これらのうち少なくとも1種以上をエチレン又は酢酸ビニルと共重合させる。
本発明に用いられるエチレン−酢酸ビニル系共重合体の平均分子量や平均重合度については特に制限はないが、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100g/10分の範囲が好ましく、1〜80g/10分の範囲がさらに好ましい。混練時の紙繊維の分散が促進され、カレンダー成形時のバンク内の脱気が良好となり、外観の良好なシートが得られるためである。
本発明に用いられる酢酸ビニル−エチレン系共重合体の組成は、酢酸ビニル及びエチレンを必須成分とする以外何ら制限されないが、好ましくは、酢酸ビニル含有率として、質量比率で、20〜80質量%、更に好ましくは、40〜70質量%である。酢酸ビニル含有率が上述の範囲であると、塩化ビニル系重合体と紙繊維との親和性が良好となり、紙繊維の分散性やロール金属面と該塩化ビニル系重合体組成物との接着性がより良好となり、外観の良好なシートが得られ、好ましい。
本発明に用いられる部分鹸化ポリ酢酸ビニルとしては、ポリ酢酸ビニルの一部の酢酸基が部分鹸化により水酸基に置換されることにより得られる、酢酸ビニルとビニルアルコールのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
本発明に用いられる部分鹸化ポリ酢酸ビニルの平均重合度については特に制限はないが、300〜1500の範囲が好ましく、400〜1000の範囲がさらに好ましい。該塩化ビニル系重合体組成物の粘度が適度に調整され、混練時の紙繊維の分散がより促進され、カレンダー成形時のバンク内の脱気がより良好となり、外観の良好なシートが得られるためである。
本発明に用いられる部分鹸化ポリ酢酸ビニルのビニルアルコールの組成比については特に制限は無いが、酢酸ビニルの部分鹸化により、ビニルアルコールを質量比率で40〜95質量%含有していることが好ましく、60〜90質量%がさらに好ましい。塩化ビニル系重合体と紙繊維との親和性がより良好となり、紙繊維の分散がより促進され、外観の良好なシートが得られるためである。
本発明に用いられる有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ビスメチルマレート、ジブチル錫ビスエチルマレート、ジブチル錫ビスブチルマレート、ジブチル錫ビスオクチルマレート、ジブチル錫ビスステアリルマレート、ジブチル錫ビスベンジルマレート、ジブチル錫ビスマレートポリマー、ジオクチル錫ビスエチルマレート、ジオクチル錫ビスベンジルマレート、ジオクチル錫ビスマレートポリマー、ジブチル錫βメルカプトプロピオン酸オクチルエステル、ジブチル錫ビスチオグリコール酸オクチルエステル、ジブチル錫βメルカプトプロピオネート、ジオクチル錫ビスチオグリコール酸オクチルエステル、モノ又はジオクチル錫ビスチオグリコール酸オクチルエステル、モノ又はジメチル錫ビスチオグリコール酸オクチルエステル、モノ又はジメチルSnメルカプトリバースエステル、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられ、2種類以上の有機錫化合物を併用して添加しても構わない。
その中で、アルキル基の炭素数が1〜18のジブチル錫ビスアルキルマレート、ジオクチル錫ビスアルキルマレート、ジブチル錫ビスチオグリコール酸アルキルエステル、ジオクチル錫ビスチオグリコール酸アルキルエステル、ジブチル錫βメルカプトプロピオン酸アルキルエステル、ジオクチル錫βメルカプトプロピオン酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種類以上の有機錫化合物を用いた場合、ロール等加工機の金属面と該塩化ビニル系重合体組成物との接着性がより良好となり、成形加工時の紙繊維の分散がより促進され、外観の良好なシートが得られ、好ましい。
本発明の塩化ビニル系重合体組成物の製造方法については、特に制限されるものではない。例えば、各組成分を所定量配合し、必要に応じ各種添加剤を配合したものをヘンシェルミキサー、らいかい機、プラネタリーミキサー、その他各種ミキサーなどを用いて均一に混合することによって得られる。常温下でのいわゆるコールドブレンドで行っても、また、60〜140℃の範囲でのいわゆるホットブレンドで行ってもかまわない。上記の方法で製造した塩化ビニル系重合体組成物を、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、バンバリーミキサー等の混練機により、所定の剪断応力場で溶融混練させることにより、混練物中の紙繊維の分散を促進させることができる。
この場合、予め、裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙とメタクリル酸エステル系高分子加工助剤、酢酸ビニル−エチレン系共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、有機錫化合物の中から選ばれる化合物のうち少なくとも1種類以上を所定量配合する。その後、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、バンバリーミキサー等の混練機により、所定の剪断応力場で溶融混練させた後に、その他の各組成分を所定量配合し必要に応じ各種添加剤を配合する。さらに、再溶融混練させて成形品を製造することにより、塩化ビニル壁紙中の紙繊維を効率よく塩化ビニル系重合体中に微分散させることができ、より好ましい。
本発明の塩化ビニル系重合体組成物には、目的に応じて、顔料や染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、耐電防止剤等の添加剤を添加しても良い。
また、本発明の組成物からなる成形品は、公知の樹脂の成形方法、例えば、プレス成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形等によって、溶融混練、賦形加工されることにより得られる。溶融混練時の温度については特に制限は無いが、140〜220℃の温度範囲で成形加工することにより、良好な外観と物性を有する成形品が得られ好ましい。本発明の組成物からなる成形品としては、建築材料、土木材料、自動車及び鉄道車両などの内装材、日用品等が挙げられるが、その中でカレンダー成形により床材等の建築材料を成形した場合、良好な表面外観と機械特性を兼ね備えた製品が得られ、より好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。下記の実施例及び比較例で得られた塩化ビニル系重合体組成物の評価は、以下に示す方法によって行った。
(塩化ビニル壁紙破砕物中の裏打ち紙含有率の測定方法)
塩化ビニル壁紙破砕物20gをTHF600ml中に攪拌しながら分散させ、塩化ビニル等溶解成分をTHFに溶解させ、不溶分を金網で濾過させた。残った紙繊維をTHFで再洗浄後、乾燥させ、質量を測定し、塩化ビニル壁紙破砕物中の裏打ち紙含有率を測定した。
(塩化ビニル壁紙破砕物中に分散している紙繊維の数平均繊維長の測定方法)
上記方法で塩化ビニル壁紙破砕物中から抽出した紙繊維を水に分散させ、レーザー回折計(商品名:「カヤーニFS200」、メッツォオートメーション(株)製)にて、数平均繊維長を測定した。
(カレンダー加工性評価方法)
得られた塩化ビニル系重合体組成物を190℃の温度のテストロールで、シート巻き付き後2分間混練した時点でのバンク内の樹脂の回転挙動や脱気挙動及び、対面ロール表面の汚染度合いを目視にて評価した。
<バンク回転・脱気挙動の目視判定基準>
◎:バンク内回転流動場で空気の巻き込みが全く無く、バンク形状も紡錘形を示し、均一な回転流動である。
○:バンク内回転流動場で空気の巻き込みが僅かに見られるが、バンク形状は概ね紡錘形を示し、均一な回転流動である。
△:バンク内回転流動場で空気の巻き込みが僅かに見られ、バンク形状も泡立ちにより僅かにイビツな形状を示すが、得られたシートの表面外観は良好で合格レベルにある。
×:バンク内回転流動場で空気の巻き込みが顕著に見られ、バンク形状も泡立ちによりイビツな形状を示し、回転流動も不均一な流動を示し、得られたシートの表面外観も不良で不合格レベルである。
<対面ロール表面の汚染度合いの目視判定基準>
○:対面ロール表面は全く汚れておらず、混練時のシートからのプレートアウト物は全く無い。
△:対面ロール表面に僅かに汚れがみられるものの、成形上特に問題ないレベルであり、許容範囲である。
×:対面ロール表面が激しく汚れており、成形上問題である。
(引張り伸びの測定方法)
上記で作成した成形品を用いて、JIS K 7113に準じる試験機(商品名:「テンシロン」、エーアンドデイ社製)にて、引張り伸びを測定した。
(実施例1)
塩化ビニル系重合体として、平均重合度1020の懸濁重合法で製造した塩化ビニル重合体(商品名:「TH−1000」、大洋塩ビ(株)製)を22.3質量%、回転刃と固定刃を有する回転式破砕機を用いて塩化ビニル壁紙廃材を破砕し、数平均繊維長が550μmの紙繊維を22質量%含有する塩化ビニル壁紙の破砕物を15質量%、熱安定剤としてCa−Zn系複合金属石鹸系安定剤(商品名:「TMF−362」、東京ファインケミカル(株)製)を0.7質量%、可塑剤としてジ2−エチルヘキシルフタレート(商品名:「ビニサイザー80」、花王(株))を17質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:「ホワイトンP−30」、白石工業(株))を45質量%となる組成比率で調合された混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を1質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表1に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が良好で、均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染も殆ど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、良好であった。
(実施例2)
塩化ビニル系重合体として、平均重合度1020の懸濁重合法で製造した塩化ビニル重合体(商品名:「TH−1000」、大洋塩ビ(株)製)を21.3質量%、回転刃と固定刃を有する回転式破砕機を用いて塩化ビニル壁紙廃材を破砕し、数平均繊維長が550μmの紙繊維を22質量%含有する塩化ビニル壁紙の破砕物を20質量%、熱安定剤としてCa−Zn系複合金属石鹸系安定剤(商品名:「TMF−362」、東京ファインケミカル(株)製)を0.6質量%、可塑剤としてジ2−エチルヘキシルフタレート(商品名:「ビニサイザー80」、花王(株))を16質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:「ホワイトンP−30」、白石工業(株))を42.1質量%となる組成比率で調合された混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表1に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が良好で、均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染も殆ど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、良好であった。
(実施例3)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、平均分子量95万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−550A」、三菱レーヨン(株))を1質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表1に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が比較的良好で、概ね均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染も殆ど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、良好であった。
参考例1
塩化ビニル系重合体として、平均重合度1320の懸濁重合法で製造した塩化ビニル重合体(商品名:「TH−1300」、大洋塩ビ(株)製)を22.3質量%、回転刃と固定刃を有する回転式破砕機を用いて塩化ビニル壁紙廃材を破砕し、数平均繊維長が950μmの紙繊維を25質量%含有する塩化ビニル壁紙の破砕物を15質量%、熱安定剤としてCa−Zn系複合金属石鹸系安定剤(商品名:「TMF−362」、東京ファインケミカル(株)製)を0.7質量%、可塑剤としてジ−2−エチルヘキシルフタレート(商品名:「ビニサイザー80」、花王(株))を17質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:「ホワイトンP−30」、白石工業(株))を45質量%となる組成比率で調合された混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を1.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表1に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が比較的良好で、概ね均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染も殆ど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、良好であった。
(実施例5)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤を添加する代わりに、酢酸ビニルの含有率が60質量%で、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが75g/10分の酢酸ビニル−エチレン共重合体(商品名:「ソアブレンCH」、日本合成(株))を2.5質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表1に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてロール汚染が僅かにみられたものの、バンク内での脱気が良好で、均一なバンク回転流動を示し、また、得られた成形品の引張り伸びも高く、比較的良好であった。
Figure 0005156278
(実施例6)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤を添加する代わりに、酢酸ビニルの含有率が20質量%で、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが1.6g/10分の酢酸ビニル−エチレン共重合体(商品名:「ウルトラセン631」、東ソー(株))を7質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表2に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてロール汚染が僅かにみられたものの、バンク内での脱気が比較的良好で、概ね均一なバンク回転流動を示し、又、得られた成形品の引張り伸びも高く、比較的良好であった。
(実施例7)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤を添加する代わりに、酢酸ビニルの部分鹸化によりビニルアルコールを質量比率で71質量%含有しており、平均重合度が700である部分鹸化ポリ酢酸ビニル(商品名:「L−8」、(株)クラレ)を2.5質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表2に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が良好で、均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染も殆ど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、良好であった。
(実施例8)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤を添加する代わりに、酢酸ビニルの部分鹸化によりビニルアルコールを質量比率で40質量%含有しており、平均重合度が600である部分鹸化ポリ酢酸ビニル(商品名:「LM−10HD」、(株)クラレ)を2.5質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表2に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が比較的良好で、概ね均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染も殆ど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、良好であった。
(実施例9)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤を添加する代わりに、ジブチル錫ビスブチルマレート(商品名:「グレックT−157」、大日本インキ化学工業(株))を0.2質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表2に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてロール汚染が僅かにみられたものの、バンク内での脱気が良好で、均一なバンク回転流動を示し、又、得られた成形品の引張り伸びも高く、比較的良好であった。
(実施例10)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を0.9質量部添加した上に、更にジブチル錫ビスブチルマレート(商品名:「グレックT−157」、大日本インキ化学工業(株))を0.1質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表2に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が非常に良好で、均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染もほとんど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、非常に良好であった。
(実施例11)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を1.0質量部添加した上に、更に酢酸ビニルの含有率が60質量%で、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが75g/10分の酢酸ビニル−エチレン共重合体(商品名:「ソアブレンCH」、日本合成(株))を1.5質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表2に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が非常に良好で、均一なバンク回転流動を示し、又、ロール汚染もほとんど無く、得られた成形品の引張り伸びも高く、非常に良好であった。
Figure 0005156278
(比較例1)
実施例2において、混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を全く添加せずに実施例2と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表3に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内で空気の巻き込みが顕著に見られ、バンク形状も泡立ちによりイビツな形状を示し、得られたシート表面の外観が悪く、また、ロール汚染もみられ、好ましくなかった。
(比較例2)
実施例1において、混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤を添加する代わりに、酢酸ビニルの含有率が60質量%で、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが75g/10分の酢酸ビニル−エチレン共重合体(商品名:「ソアブレンCH」、日本合成(株))を0.05質量部添加することに変更した以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表3に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内で空気の巻き込みが顕著に見られ、バンク形状も泡立ちによりイビツな形状を示し、得られたシート表面の外観は悪く、また、ロール汚染もみられ、好ましくなかった。
(比較例3)
回転刃と固定刃を有する回転式破砕機を用いて塩化ビニル壁紙廃材を破砕し、数平均繊維長が550μmの紙繊維を22質量%含有する塩化ビニル壁紙の破砕物を34質量%、熱安定剤としてCa−Zn系複合金属石鹸系安定剤(商品名:「TMF−362」、東京ファインケミカル(株)製)を1質量%、可塑剤としてジ2−エチルヘキシルフタレート(商品名:「ビニサイザー80」、花王(株))を5質量%、重質炭酸カルシウム(商品名:「ホワイトンP−30」、白石工業(株))を60質量%となる組成比率で調合された混合組成物100質量部に対して、平均分子量300万のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤(商品名:「メタブレンP−530A」、三菱レーヨン(株))を5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表3に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形において、ロール汚染が僅かに低減できたものの、バンク内で空気の巻き込みが顕著に見られ、バンク形状も泡立ちによりイビツな形状を示し、得られたシート表面の外観は悪く、また、引張り伸びも不良で、好ましくなかった。
(比較例4)
比較例2において、混合組成物100質量部に対して、酢酸ビニルの含有率が60質量%で、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが75g/10分の酢酸ビニル−エチレン共重合体(商品名:「ソアブレンCH」、日本合成(株))を15質量部添加することに変更した以外は、比較例2と同様にして塩化ビニル系重合体組成物を作製した。評価結果を表3に示す。
得られた組成物は、カレンダー成形においてバンク内での脱気が良好で、均一なバンク回転流動を示したが、シートからのブリード物によるロール汚染が顕著にみられ、シートのロングラン生産が難しく、好ましくなかった。
Figure 0005156278

Claims (7)

  1. 塩化ビニル系重合体15〜30質量%、裏打ち紙を20〜35質量%含有した塩化ビニル壁紙の破砕物10〜30質量%、熱安定剤0.05〜1.5質量%、可塑剤10〜25質量%、炭酸カルシウム30〜55質量%からなる混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤、酢酸ビニル−エチレン系共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、有機錫化合物からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物を0.1〜10質量部添加してなり、前記の裏打ち紙を含有した塩化ビニル壁紙の破砕物が、粉砕により裏打ち紙の紙繊維が数平均繊維長として600μm以下まで細断され、塩化ビニル成分内に分散されていることを特徴とする塩化ビニル系重合体組成物。
  2. 請求項1記載の塩化ビニル系重合体組成物において、該混合組成物100質量部に対して、メタクリル酸エステル系高分子加工助剤若しくは部分鹸化ポリ酢酸ビニルの中から選ばれる1種類以上の化合物と、酢酸ビニル−エチレン系共重合体若しくは有機錫化合物の中から選ばれる1種類以上の化合物からなる少なくとも2種類以上の化合物を併せて0.1〜10質量部添加してなることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系重合体組成物。
  3. 前記のメタクリル酸エステル系高分子加工助剤が、平均分子量90万〜600万の範囲にあるメチルメタクリレート−アルキルアクリレート系共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ビニル系重合体組成物。
  4. 前記の酢酸ビニル−エチレン系共重合体が、酢酸ビニルを質量比率で20〜80質量%含有しており、JIS K6924−1に準拠し190℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100g/10分の範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物。
  5. 前記の部分鹸化ポリ酢酸ビニルが、酢酸ビニルの部分鹸化により、ビニルアルコールを質量比率で40〜95質量%含有しており、平均重合度が300〜1500の範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物。
  6. 前記有機錫化合物が、アルキル基の炭素数が1〜18のジブチル錫ビスアルキルマレート、ジオクチル錫ビスアルキルマレート、ジブチル錫ビスチオグリコール酸アルキルエステル、ジオクチル錫ビスチオグリコール酸アルキルエステル、ジブチル錫βメルカプトプロピオン酸アルキルエステル、ジオクチル錫βメルカプトプロピオン酸アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の塩化ビニル系重合体組成物からなることを特徴とする床材シート。
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