JP5153558B2 - 粘着性熱伝導シート - Google Patents
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Description
かかる状況下、本発明の目的は、高い熱伝導性と難燃性を有し、かつ被配設体との密着性、取り扱い性に優れた両面で粘着性の異なるアクリル系ポリウレタン樹脂を主体とする熱伝導シートを提供することにある。
(1) アクリル系ポリウレタン樹脂を主体とするバインダ樹脂に、無官能性アクリルポリマー、熱伝導性充填剤および難燃剤を含有してなる表面層および裏面層の2層からなる熱伝導シートであって、
アクリル系ポリウレタン樹脂と無官能性アクリルポリマーの割合が、アクリル系樹脂やアクリル系ポリウレタン樹脂中の水酸基を有するアクリルポリマー100重量部に対し、無官能性アクリルポリマーが表面層で10〜60重量部、裏面層で50〜120重量部であり、
表面層の粘着力が0.10N/25mm未満、裏面層の粘着力が0.10N/25mm以上であり、かつ該熱伝導シート全体の引張強度が0.5MPa以上である粘着性熱伝導シート。
(2) アクリル系ポリウレタン樹脂が、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有するアクリルポリマーと1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートの反応により得られたものである前記(1)に記載の粘着性熱伝導シート。
(3) 前記熱伝導シートの表面層の引張強度が0.7MPa以上であり、裏面層の引張強度が0.1MPa以上である前記(1)または(2)に記載の粘着性熱伝導シート。
(4) 前記熱伝導シートの熱伝導率が、0.5W/mK以上である前記(1)から(3)のいずれかに記載の粘着性熱伝導シート。
(5) 難燃剤が、リン系化合物、金属水酸化物、膨張黒鉛および窒素化合物から選ばれた少なくとも1種のノンハロゲン難燃剤である前記(1)から(4)のいずれかに記載の粘着性熱伝導シート。
(6) 前記性熱伝導シートの片面または両面に剥離フィルムを有する前記(1)から(5)のいずれかに記載の粘着性熱伝導シート。
本発明は、アクリル系ポリウレタン樹脂を主体とするバインダ樹脂に、無官能性アクリルポリマー、熱伝導性充填剤および難燃剤を含有してなる表面層および裏面層を有する多層熱伝導シートであって、表面層の粘着力が0.10N/25mm未満、裏面層の粘着力が0.10N/25mm以上であり、かつ熱伝導シートの引張強度が0.5MPa以上である粘着性熱伝導シートに係るものである。
即ち、アクリル系ポリウレタン樹脂を主体とするバインダ樹脂に、無官能性アクリルポリマー、熱伝導性充填剤および難燃剤を含有してなる表面層(第一層)と、アクリル系ポリウレタン樹脂を主体とするバインダ樹脂に、無官能性アクリルポリマー、熱伝導性充填剤および難燃剤を含有してなる表面層(第二層)を少なくとも有する多層熱伝導シートであり、表面層の粘着力が0.10N/25mm未満であり、一方、裏面層の粘着力が0.10N/25mm以上であり、かつ熱伝導シートの全体の引張強度が0.5MPa以上である粘着性熱伝導シートに関する。
多層シートは、少なくとも上記表裏2層を含むものであり、中間層として表裏2層と同様な性質を有する粘着層やその他の層を本発明の目的および効果を損なわない範囲で含むことができる。多層シートは、好ましくは、上記表裏2層からなる2層シートである。この場合は、後述のように表面層の引張強度が0.7MPa以上であり、裏面層の引張強度が0.1MPa以上であることが望ましい。
また、イソオクチルアクリレート、2 −エチルヘキシルアクリレート、n −ブチルアクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのモノマーが挙げられる。
更に、物性調整の為にメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、酢酸ビニルなどのモノマーを適宜加えてもよい。これらのアクリルポリマーは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
これらのモノマーは、ラジカル等の触媒下に、通常の方法で付加重合によりアクリルポリマーとすることができる。本発明の水酸基を有するアクリルポリマーとしては、比較的分子量が小さい液状物が好適に使用される。
なお、本発明において、バインダ樹脂の主体であるアクリルポリマーと多官能性イソシアネートとの反応は、後述の無官能性アクリルポリマー、熱伝導充填剤や難燃剤を混合する前に行うこともできるが、通常は、これらの化合物を混合後に行われる。
一方、裏面層(第二層)を構成するアクリル系ポリウレタン樹脂の前駆体となるアクリルポリマーとしては、表面層(第一層)にくらべ水酸基の含有量が少なく、分子量の大きいものが使用される。水酸基の含有量(OHV:mgKOH/g)としては、10〜40、好ましくは20〜30であり、分子量(Mw)は、7000〜15000、好ましくは8000〜12000のものが好適に使用される。
このような構成とすることにより、水酸基を有するアクリルポリマーはイソシアネートと反応し、本発明のバインダ樹脂として好適に使用され、また、熱伝導剤や難燃剤を混合した粘着性熱伝導シートとして本発明の目的を達成できる。
上記、表面層および裏面層に好適なアクリルポリマーとするためには、これらの商品(グレード)を2種或いは3種以上適宜ブレンドして調整することが好ましい。
無官能性アクリルポリマーは、一種の可塑剤としての役目を果たしシートに適度の柔軟性を付与すると共に、粘着性を付与する役割を果たす。
本発明の特徴の一つは、バインダ樹脂としてのアクリル系ポリウレタンと無官能性アクリルポリマーとの組み合わせにある。一般に可塑剤として広く用いられているトリクレジルホスフェートやフタル酸エステル類等の他の可塑剤を用いても、粘着性が劣り、また、可塑剤が120℃でブリードする為、本発明の目的を達成できない。
これらのアクリルポリマーは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらのモノマーは、ラジカル等の触媒下に、通常の方法で付加重合によりアクリルポリマーとすることができる。本発明の無官能性アクリルポリマーとしては、比較的分子量が小さい液状物が好適に使用される。
これらの商品は、バインダ樹脂の硬さや引張強度をコントロールするために、2種又は3種以上の異なる品番のものを適宜混合して用いることができる。
本発明においては熱伝導性充填剤として、金属酸化物、金属水酸化物を使用する場合は、その平均粒子径は0 .1〜50μmであることが好ましく、一般には充填密度を上げる為に、その平均粒径の範囲内で比較的粒径の大きな粒子と小さな粒子を混合して使用される。また、添加量はバインダ樹脂100重量部に対し、300〜700重量部、好ましくは400〜600重量部である。添加量が少ないと熱伝導効率が悪くなり、多すぎると各層の柔軟性が少なくなる。
粘着性熱伝導シートは、被配設体からの放熱効率の観点から、その熱伝導率が0.5W/mK以上,好ましくは0.9W/mK、更に好ましくは1.0W/mKである。
金属水酸化物、特に水酸化アルミニウムは上記熱伝導性充填剤としても、また本難燃剤の両方の効果を有することから本発明で有用である。
また、ハロゲン不含難燃剤としては、例えば有機リン化合物、膨張黒鉛、ポリフェニレンエーテル、又はトリアジン骨格含有化合物を挙げることができる。これらのうち、難燃性の効果を発現する上で最も好ましいものは、有機リン化合物である。有機リン化合物としては、リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム類等を挙げることができる。なかでも、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく用いられる。なお、これらの難燃剤を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
この難燃剤の含量は、バインダ樹脂100部に対し、10〜60重量部、好ましくは20〜40重量部であり、10重量部未満では所望の難燃効果が得られず、60重重量部を超えると熱伝導性が損なわれる。
第一の層の粘着力が0.10N/25mm以上であると、電子部品等との粘着性が有すぎてズレ等の調整が困難となり、一方、第二の層の粘着力が0.10N/25mm未満であると筐体等との粘着性が少なくシートの脱落が起こるおそれがある。
更に、本発明の粘着性熱伝導シートが表面層および裏面層の2層にて構成される場合は、第一層の引張強度が0.7MPa以上、好ましくは1.0MPa以上であり、第二層の引張強度が0.1MPa以上、好ましくは0.2MPa以上であることが好ましい。このような範囲にコントロールすることにより、被着体との密着性、取り扱いに優れた熱伝導シートを得ることができる。
なお、本発明で熱伝導シートとは、熱伝導フィルムを含む概念であり、通常厚みが200〜5000μmで使用される。
ASTM D5470に準拠して測定した。
(2)粘着力(単位:N/25mm)
JIS Z0237に準拠して測定した。
(3)引張強度(単位:MPa)
JIS K6251に準拠して測定した。
(4)難燃性
UL−94V 燃焼試験に準拠して測定した。
塗工液の調整
バインダ樹脂のプレポリマー成分として液状の水酸基含有アクリルポリマー、アルホンUH−2032(東亜合成化学工業株式会社製、Mw:2000、OH値:110)および同UH−2000(Mw:11000、OH値:20)、また、無官能性アクリルポリマーとして、アルホンUP−1021(東亜合成化学工業株式会社製、(Mw:1600、OH基を含まず))を使用した。ここに、OH値は、官能基としての水酸基の含有率(単位: mgKOH/g)を示す。これらのアクリルポリマーに、更にイソシアネートおよび反応触媒並びに熱伝導性充填剤、難燃剤を配合し、第一層用の塗工液及び第二層用の塗工液を調整した。各実施例における各成分の配合割合(固形物換算)を表1に示すとおり、配合割合は、いずれも液状水酸基含有アクリルポリマーの合計量を100重量部として、無官能性アクリルポリマーその他の各成分の量を設定した。
なお、熱伝導性充填剤としては、粒子径40μmと1μmの水酸化アルミニウムを、重量比8:2の割合で混合したものを使用した。また、難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウムを使用した。
次に、図1を参照しながら塗工方法について説明する。
塗工装置(株式会社ヒラノテクシード製、コンマダイレクトコーター;型番TM-MC)を使用して、粘着性熱伝導シートを作製した。本実施例の熱伝導シートの支持材となる剥離フィルムとして、第一層用、第二層用ともに送り出しロールに巻回された厚み50μmのPETフィルムを用いた。
剥離フィルム(PETフィルム)を送り出しロール1から塗工機のバックロール2に送り、その上に第一層用の塗工液を乗せ、PETフィルム上とコンマヘッド3との間隙を400μmに調整し均一に塗工した。そして乾燥炉4に送り、温度60℃、通過時間10分間の条件下で揮発分を蒸発させ、第一層用の樹脂乾燥被膜を有する塗工シートとして、案内ロール6,7を経ていったん巻き取ロール9に巻き取った。この塗工シートは、さらに巻き取ったロールごと乾燥機内(図示せず。)に収容し、温度80℃、60分間の条件下で剥離フィルム上の樹脂被膜を完全に硬化させて第一層用の被膜を有する塗工シートを得た。このときの塗工シート上に形成された被膜の膜厚は250μmであった。
次に、巻取ロールに巻き取られた第一層用の被膜を有する塗工シートを、再び前記送り出しロール1の位置に戻し、第一層用の被膜上に第二層用の塗工液を乗せ、PETフィルム上とコンマヘッド3との間隙を650μmに調整し、第一層用の塗工処理のときと同様、均一に塗工した。そして乾燥炉4に送り、温度70℃、通過時間10分間の条件下で揮発分を蒸発させた。この塗工シートに積層した第二層用の被膜上に、前記と同じ剥離フィルムを送り出しロール10からラミネータロール8に供給し、剥離フィルムを第二層用の被膜上に貼合しつつ巻き取りロール9に巻き取った。この塗工シートは、さらに巻き取ったロールごと乾燥機内(図示せず。)に収容し、温度80℃、60分間の条件下で塗工フィルム上の樹脂被膜を完全に硬化させ、本実施例の粘着性熱伝導シートを得た。この熱伝導シートの総膜厚は500μm(剥型フイルム含で600μm)であった。なお、本実施例の検証試験に用いる試験片は、各試験に必要な所定長さに裁断した粘着性熱伝導シートを用いた。配合割合、試験結果を併せて表1、表2にそれぞれ示した。
得られた熱伝導シートは、両面で粘着力を有し、熱伝導率、引張強度も本発明の目的を満足するものであった。また、難燃性もV0相当であった。
実施例1〜3において、樹脂硬化剤としてイソシアネートのグレードをコロネートL(日本ポリウレタン株式会社製、商品名)に変えた以外は、同様に塗工液の調整を行い、また粘着性熱伝導シートを作製した。この熱伝導シートの総膜厚は500μmであった。配合割合、試験結果を併せて表1、表2に示した。また、信頼性試験として、120℃で保持後の粘着力、熱伝導率、引張強度、伸び率、硬度を評価したが、100時間経過後もそれぞれの物性にほとんど変化はなく、2000時間経過後も本発明の要件(表面層の粘着力が0.10N/25mm未満、裏面層の粘着力が0.10N/25mm以上であり、かつ該熱伝導シートの引張強度が0.5MPa以上)を満たすものであった。
(1)塗工液の調整
アクリル系ポリウレタン樹脂として、表1に示すとおり2種類の液状水酸基含有アクリルポリマーUH−2032とUH−2000の配合比率を1:3の割合で混合し、前記各実施例における第一層用と第二層用の各樹脂比率を、ほぼ平均化した割合とした。そして、アクリル系ポリウレタン樹脂の合計重量を100重量部として、無官能性アクリルポリマー及び各化合物の配合割合を表1に示すように設定した。
なお可塑剤については、無官能性アクリルポリマーは、比較例1の場合に添加せず、比較例2の場合に前記各実施例の第一層用と第二層用の平均量を添加した。
上記実施例1から3の場合と同様に塗工液の調整をおこなった。
各比較例における熱伝導シートの作製は、前記各実施例1から3の場合と同じ方法で行った。ただし、各比較例では、2層塗工ではなく1層塗工とし、乾燥後の膜厚を実施例の総膜厚と同じ50μmとなるよう調整した。
得られた比較例の熱伝導シートの膜厚は各々500μmであった。比較例の配合割合、試験結果を併せて表1、表2に示した。
実施例4において、無官能性アクリルポリマー(UP−1021)に代え、可塑剤であるトリクレジルホスフェート(TCP)(第八化学工業株式会社製)を使用した以外は、同様に塗工液の調整を行い、また粘着性熱伝導シートを作製した。この熱伝導シートの総膜厚は500μmであった。配合割合、試験結果を併せて表1、表2に示した。また、信頼性試験として、120℃で保持後の熱伝導率、引張強度、伸び(%)、硬度を評価した。
2 バックロール
3 コンマヘッド
4 乾燥炉
5 案内ロール
6 案内ロール
7 案内ロール
8 ラミネータロール
9 巻き取りロール
10 送り出しロール
Claims (6)
- アクリル系ポリウレタン樹脂を主体とするバインダ樹脂に、無官能性アクリルポリマー、熱伝導性充填剤および難燃剤を含有してなる表面層および裏面層の2層からなる熱伝導シートであって、
アクリル系ポリウレタン樹脂と無官能性アクリルポリマーの割合が、アクリル系樹脂やアクリル系ポリウレタン樹脂中の水酸基を有するアクリルポリマー100重量部に対し、無官能性アクリルポリマーが表面層で10〜60重量部、裏面層で50〜120重量部であり、
表面層の粘着力が0.10N/25mm未満、裏面層の粘着力が0.10N/25mm以上であり、かつ該熱伝導シート全体の引張強度が0.5MPa以上であることを特徴とする粘着性熱伝導シート。 - アクリル系ポリウレタン樹脂が、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有するアクリルポリマーと1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートの反応により得られたものである請求項1に記載の粘着性熱伝導シート。
- 前記熱伝導シートの表面層の引張強度が0.7MPa以上であり、裏面層の引張強度が0.1MPa以上である請求項1または2に記載の粘着性熱伝導シート。
- 前記熱伝導シートの熱伝導率が、0.5W/mK以上である請求項1から3のいずれかに記載の粘着性熱伝導シート。
- 難燃剤が、リン系化合物、金属水酸化物、膨張黒鉛および窒素化合物から選ばれた少なくとも1種のノンハロゲン難燃剤である請求項1から4のいずれかに記載の粘着性熱伝導シート。
- 前記熱伝導シートの片面または両面に剥離フィルムを有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の粘着性熱伝導シート。
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