JP5153429B2 - ２個のガンギ車を有するアンカー脱進機 - Google Patents

Description

本発明は、時計のアンカー脱進機に関する。

本発明は、特に、以下の構成を有するアンカー脱進機に関する。即ち、本発明に関連する時計用のアンカー脱進機は、第１の輪列により駆動される第１ガンギ車セットと、振り石と第１衝突アンクル石とを搭載するバランスローラーと、ピボット上で駆動されるアンカー・ピースとを有する。第１衝突アンクル石（impulse pallet stone）は、前記第１ガンギ車セットの歯と共働するよう配置され、前記アンカー・ピースは、前記バランスローラー（以下：単に「ローラー」とも称する）の振り石と共働するフォークと、前記第１ガンギ車セットと共働するよう配置された第２衝突アンクル石と第１係止アンクル石（locking pallet stone）と第２係止アンクル石とを有する。

上記のアンカー脱進機は、非特許文献１に開示されている。同文献によれば、この脱進機は、腕時計で使用する為に実験的に製造された。以下に説明するように、変形例としてガンギ車セットは、互いに固定された２個の同軸歯車を有する。これにより、同文献の２４０ページから２４６ページに記載されたように、同軸に配置された２枚の歯車を有する脱進機を構成することができる。どのような変形例を選択しようとも、この構造は、１個あるいは２個の同軸に搭載された歯車を有する１個のガンギ車セットを有するに過ぎない。
"La Montre: principes et methodes de fabrication", by George Daniels, Scriptar Editions S.A., La Conversion, Lausanne 1993. This escapement is explained at pages 247 and 248 of said work, under the title "Echappement Daniels a roue simple".

上記構成の脱進機に加えて、本発明の脱進機は、第２の輪列により駆動される第２のガンギ車セットを有する。前記ローラーは、前記第２ガンギ車セットの歯と共働するよう配置さた第３衝突アンクル石を搭載する。前記アンカー・ピースは、前記第２ガンギ車セットと共働するよう配置された第４衝突アンクル石と第３係止アンクル石と第４係止アンクル石とを有する。

本発明による２個（枚）のガンギ車を具備する脱進機は、２つの時間領域を表示することが可能となる。

図１は、本発明の第１実施例による脱進機の構造を表わす平面図である。この脱進機は、第１の輪列（図示せず）により駆動される１個のガンギ車を具備する第１ガンギ車セット１を有する。第１ガンギ車セット１は、自由な時には、矢印３０で示す反時計方向に回転する。脱進機は、バランスローラー（以下：単に「ローラー」とも称する）３を有する。このローラー３は、振り石４と第１衝突アンクル石５とを搭載する。この第１衝突アンクル石５は、第１ガンギ車セット１の歯と共働するように配置される。脱進機は、ピボット７上で駆動されるアンカー・ピース６を有する。このアンカー・ピース６は、ローラー３の衝撃ピン４と共働するフォーク８を具備する。アンカー・ピース６は、第２衝突アンクル石９を搭載する。この第２衝突アンクル石９は、第１係止アンクル石１０と第２係止アンクル石１１と共に、第１ガンギ車セット１と共働する（cooperating ：係止する或いは噛み合う）よう配置される。

図１に示すように、本発明の脱進機の特徴は、第２の輪列（図示せず）により駆動される第２ガンギ車セット２を有する点である。第２ガンギ車セット２は、自由な時には、矢印３１で示す時計方向に回転する。この第１実施例においては、第２ガンギ車セット２は１個の歯車のみを有し、ローラー３は、さらに第２ガンギ車セット２の歯と共働するよう配置された第３衝突アンクル石１２を搭載する。アンカー・ピース６は、第２ガンギ車セット２と共働するよう配置された第４衝突アンクル石１３を搭載する。このアンカー・ピース６は、第２ガンギ車セット２の歯と共働するよう配置された第３係止アンクル石１４と第４係止アンクル石１５とを搭載する。

図２は、本発明の第２実施例の平面図である。第１ガンギ車セット１は、１枚の歯車ではなく、互いに同軸に固定搭載された第１と第２の歯車１６、１８を有する。このことは第２ガンギ車セット２についても言える。即ち、第２ガンギ車セット２は、互いに同軸に固定搭載された第１と第２の歯車１７、１９を有する。この脱進機は、第１衝突アンクル石５と第３衝突アンクル石１２を搭載したローラー３を有する。この第１衝突アンクル石５と第３衝突アンクル石１２は、第１実施例のローラー３にも搭載されている。アンカー・ピース６は、ローラー３に搭載された振り石４と共働するフォーク８を有する。アンカー・ピース６は、第２衝突アンクル石９と第４衝突アンクル石１３と、第１係止アンクル石１０と第３係止アンクル石１４と、第２係止アンクル石１１と第４係止アンクル石１５とを具備する。これらは第１実施例のアンカー・ピース６と同様である。より具体的には、第１衝突アンクル石５と第１係止アンクル石１０と第２係止アンクル石１１とは、第１ガンギ車セット１の第１歯車１６と共働する。第２衝突アンクル石９は、第１ガンギ車セット１の第２歯車１８と共働する。同様に、第３衝突アンクル石１２と第３係止アンクル石１４と第４係止アンクル石１５は、第２ガンギ車セット２の第１歯車１７と共働する。第４衝突アンクル石１３は、第２ガンギ車セット２の第２歯車１９と共働する。

図２によれば、第１ガンギ車セット１の第１歯車１６は、第２歯車１８よりも大きな直径を有する。同じことは第２ガンギ車セット２についても言える。第１歯車１７は第２歯車１９よりも大きい。この構成により脱進機の機構が小型になる。これは図１と図２を比較すると明らかである。図２のガンギ車セット１と２の軸真間の距離は、図１のガンギ車セット１と２の軸真間の距離よりも短い。図２の第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２は、アンカー・ピース６により、図１の構成よりもより近づくことができる。

図２に示すように、本発明の脱進機においては、アンカー・ピース６は対称軸２１を有する。対称軸２１は、アンカー・ピース６のピボット７とフォーク８の凹部空間２０の中心を通る。図２によれば、第２衝突アンクル石９と第４衝突アンクル石１３は、軸２１から対称位置にある。同じことは、第２係止アンクル石１１と第４係止アンクル石１５、第１係止アンクル石１０と第３係止アンクル石１４についても言える。

図２によれば、第２係止アンクル石１１と第４係止アンクル石１５は、互いに十分近くに配置され、１つの部品で形成することもできる。

本発明の脱進機の動作を次に説明する。第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２を有する第２実施例を用いて説明する。ローラー３の完全な１回の振動を、図３−１４に示す。同図には、様々な動作フェーズが示される。

図３において、ローラー３は矢印３２の方向に回転する。第１ガンギ車セット１は、第１係止アンクル石１０に第１歯車１６の歯５１を介して、ロックされる。第２ガンギ車セット２は、第４係止アンクル石１５に第１歯車１７の歯６２（点線で示す）を介してロックされる。ローラー３の振り石４は、フォーク８と接触するようになる。アンカー・ピース６は、そのテール２２は停止ピン２３に当たり、ロックされている。これはロック解除の開始点である。

図４において、ローラー３は矢印３２の方向に回転し続ける。ローラー３の振り石４は、アンカー・ピース６を矢印３３の方向に回転駆動する。これにより歯５１と歯６２は、第１係止アンクル石１０と第４係止アンクル石１５のそれぞれの保持位置から離れる。第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２は、かくして解放される。

図５に示すように、第１ガンギ車セット１は矢印３０の方向に回転し、第２ガンギ車セット２は矢印３１の方向に回転する。第１ガンギ車セット１の第１歯車１６の歯５３が、ローラー３の第１衝突アンクル石５と接触するようになり、その衝撃を前記ローラー３に伝え、その結果、ローラー３は矢印３２の方向に回転し続ける。同時に第２ガンギ車セット２の第２歯車１９の歯６５は、アンカー・ピース６の第４衝突アンクル石１３と接触するようになり、衝撃力を前記ローラー３に加える。これは衝突フェーズの開始である。

図６に衝突フェーズの終了点を示す。歯５３と歯６５が、それぞれ第１衝突アンクル石５と第４衝突アンクル石１３から離れる。一方、アンカー・ピース６は矢印３３の方向に回転し続ける。これにより、第２係止アンクル石１１は、第１ガンギ車セット１の第１歯車１６の歯５２の軌道と交差する。第３係止アンクル石１４は、第２ガンギ車セット２の第１歯車１７の歯６０の軌道と交差する。

図７において、第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２は、それぞれ矢印３０と３１に沿って移動（回転）し続ける。第１ガンギ車セット１の歯５２と第２ガンギ車セット２の歯６０とは、それぞれ第２係止アンクル石１１と第３係止アンクル石１４に当たる。これにより、２個のガンギ歯車セット１，２を停止させる。ローラーは、矢印３２に沿って移動（回転）し続ける。

図８において、第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２が完全にロックされている。これらのガンギ車セット１，２によるトルクによって引き起こされるドロー効果（draw effect）により、第２係止アンクル石１１と第３係止アンクル石１４は、第１歯車１６と第１歯車１７の歯の内側（奥）にさらに押される。ローラー３は、矢印３２の方向にさらにアークを描き、その後矢印３４の方向に戻る。アンカー・ピース６のテール２２は、停止ピン２４に当たる。

図９において、ローラー３は、矢印３４の方向に回転するが、これにより振り石４をアンカー・ピース６のフォーク８に接触させる。これは、歯５２（点線で示す）と歯６０が、それぞれ第２係止アンクル石１１と第３係止アンクル石１４に係止保持されていた位置からロックが解除されるフェーズの開始点である。

図１０にロック解除の終了点を示す。ローラー３は、矢印３４の方向に回転し続けるが、これによりアンカー・ピース６を矢印３５の方向に回転させる。その結果、第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２のロックが同時に解除される。

図１１に新たな衝突フェーズの開始を示す。第１ガンギ車セット１は、矢印３０の方向に回転し、歯５５を駆動し、歯５５がアンカー・ピース６の第２衝突アンクル石９と接触するようになる。同時に、第２ガンギ車セット２は、矢印３１の方向に回転し、歯６２を駆動し、歯６２がローラー３の第３衝突アンクル石１２と接触するようになる。ローラー３は、矢印３４の方向に更に回転する。

図１２は、衝突の終了点を示す。第２ガンギ車セット２の歯６２は、ローラー３の第３衝突アンクル石１２から離れる。第１ガンギ車セット１の歯５５は、アンカー・ピース６の第２衝突アンクル石９から離れる。アンカー・ピース６は、ローラー３の振り石４により駆動され、矢印３５の方向に回転する。この回転により、第１係止アンクル石１０と第４係止アンクル石１５は、それぞれの歯５０と歯６１（点線で示す）の軌道内に入る。

図１３は、新たなロックフェーズを示す。第１ガンギ車セット１が矢印３０の方向に回転している間、第１ガンギ車セット１の歯５０は、アンカー・ピース６の第１係止アンクル石１０に当たる。同様に、第２ガンギ車セット２が矢印３１の方向に回転している間、第２ガンギ車セット２の歯６１（点線で示す）は、アンカー・ピース６の第４係止アンクル石１５に当たる。ローラー３の振り石４は、ローラー３が矢印３４の方向に回転し続けると、フォーク８から解放される。

図１４は、第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２が完全にロックされた状態を示す。ローラー３が矢印３４の方向に回転することにより、ローラー３の振り石４は、フォーク８から完全に抜け出る。第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２により掛かるドロー効果により、第１係止アンクル石１０と第４係止アンクル石１５は、それぞれ歯５０と歯６１に沿ってより深く入る。アンカー・ピース６のテール２２は、停止ピン２３に当たる。この時点から、ローラー３とそれに関連するテンプは矢印３４の方向にさらにアークを描き、その後、矢印３２の方向に沿って戻る。かくして、ローラー３の完全な１回の振動が詳細に説明された。図３に示すように、ローラー３の振り石４がフォーク８内に再び入ると新たなサイクル（即ち振動）が開始する。

上記した振動の間、２回の衝突（衝撃）がローラー３とそれに関連するテンプにかかる。１回目の衝突は、ローラー３が矢印３２の方向に回転している１回目の振動の間に起こる。この１回目の衝突は、第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２から同時に来るため、２倍になる（図５、６）。２回目の衝突は、ローラー３が矢印３４の方向に回転している２回目の振動の間に起こる。この２回目の衝突も、第１ガンギ車セット１と第２ガンギ車セット２から同時に来るため、２倍になる（図１１、１２）。

以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。

左右にある各ガンギ車セットが１枚の歯車のみを有する本発明の第１実施例の平面図。 左右にある各ガンギ車セット互いに固定された２枚の同軸の歯車を有する本発明の第２実施例の平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第１動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第２動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第３動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第４動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第５動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第６動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第７動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第８動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第９動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第１０動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第１１動作フェーズを表わす平面図。 本発明の第２実施例の脱進機の第１２動作フェーズを表わす平面図。

符号の説明

１ 第１ガンギ車セット
２ 第２ガンギ車セット
３ ローラー
４ 振り石
５ 第１衝突アンクル石
６ アンカー・ピース
７ ピボット
８ フォーク
９ 第２衝突アンクル石
１０ 第１係止アンクル石
１１ 第２係止アンクル石
１２ 第３衝突アンクル石
１３ 第４衝突アンクル石
１４ 第３係止アンクル石
１５ 第４係止アンクル石
１６ 第１歯車
１８ 第２歯車
１７ 第１歯車
１９ 第２歯車
２０ 凹部空間
２１ 対称軸
２２ テール
２３ 停止ピン
２４ 停止ピン
５１ 歯
５３ 歯
５５ 歯
６２ 歯
６５ 歯

Claims (5)

1. 時計用のアンカー脱進機において、
   （Ａ）第１の輪列により駆動される第１ガンギ車セット（１）と、
   （Ｂ）振り石（４）と第１衝突アンクル石（５）を搭載するバランスローラー（３）と、
   前記第１衝突アンクル石（５）は、前記第１ガンギ車セット（１）の歯と共働するよう配置され、
   （Ｃ）ピボット（７）上で駆動されるアンカー・ピース（６）と、
   前記アンカー・ピース（６）は、前記振り石（４）と共働するフォーク（８）と、前記第１ガンギ車セット（１）と共働するよう配置された第２衝突アンクル石（９）と第１係止アンクル石（１０）と第２係止アンクル石（１１）とを有し、
   （Ｄ）第２の輪列により駆動される第２ガンギ車セット（２）と、
   を有し、
   前記バランスローラー（３）は、前記第２ガンギ車セット（２）の歯と共働するよう配置さた第３衝突アンクル石（１２）を搭載し、
   前記アンカー・ピース（６）は、前記第２ガンギ車セット（２）と共働するよう配置された第４衝突アンクル石（１３）と第３係止アンクル石（１４）と第４係止アンクル石（１５）とを有する
   ことを特徴とするアンカー脱進機。
2. 前記第１ガンギ車セット（１）は、それぞれ互いに固定された同軸歯車である第１歯車（１６）と第２歯車（１８）とを有し、
   前記第２ガンギ車セット（２）は、それぞれ互いに固定された同軸歯車である第１歯車（１７）と第２歯車（１９）とを有し、
   前記第１衝突アンクル石（５）と第１係止アンクル石（１０）と第２係止アンクル石（１１）は、前記第１ガンギ車セット（１）の第１歯車（１６）と共働し、
   前記第２衝突アンクル石（９）は、前記第１ガンギ車セット（１）の第２歯車（１８）と共働し、
   前記第３衝突アンクル石（１２）と第３係止アンクル石（１４）と第４係止アンクル石（１５）は、第２ガンギ車セット（２）の第１歯車（１７）と共働し、
   前記第４衝突アンクル石（１３）は、第２ガンギ車セット（２）の第２歯車（１９）と共働する
   ことを特徴とする請求項１記載のアンカー脱進機。
3. 前記第１ガンギ車セット（１）の第１歯車（１６）は、前記第１ガンギ車セット（１）の第２歯車（１８）より大きな直径を有し、
   前記第２ガンギ車セット（２）の第１歯車（１７）は、前記第２ガンギ車セット（２）の第２歯車（１９）より大きな直径を有する
   ことを特徴とする請求項２記載のアンカー脱進機。
4. 前記アンカー・ピース（６）は、前記ピボット（７）の中心と前記フォーク（８）の凹部空間（２０）の中心とを通る対称軸（２１）を有し、
   前記第２衝突アンクル石（９）と第４衝突アンクル石（１３）と、前記第２係止アンクル石（１１）と第４係止アンクル石（１５）と、前記第１係止アンクル石（１０）と第３係止アンクル石（１４）とは、前記対称軸（２１）の両側に対称に配置される
   ことを特徴とする請求項１または２記載のアンカー脱進機。
5. 前記第２係止アンクル石（１１）と第４係止アンクル石（１５）は、一体の部品で形成される
   ことを特徴とする請求項１または２記載のアンカー脱進機。

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