JP5152007B2 - ピストン式圧縮機における潤滑構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ピストンによってシリンダボア内に区画される圧縮室に吸入圧領域から冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブを備え、該ロータリバルブが前記回転軸と一体的に回転するピストン式圧縮機における潤滑構造に関する。
ロータリバルブを用いたピストン式圧縮機は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の圧縮機では、両頭ピストンが前後で対となる前側シリンダボアと後側シリンダボアとに収容されており、両頭ピストンは、前側シリンダボア内に圧縮室を区画すると共に、後側シリンダボア内に圧縮室を区画する。両頭ピストンは、回転軸と一体的に回転する斜板の回転に伴ってシリンダボア内を前後動する。
回転軸には前側ロータリバルブと後側ロータリバルブとが一体形成されている。回転軸内には吸入通路(軸内通路)が形成されており、前側ロータリバルブと後側ロータリバルブとは、吸入通路の出口(吸入開口)を備えている。前側シリンダブロック及び後側シリンダブロックには吸入ポートが圧縮室に連通するように形成されており、吸入通路の出口は、回転軸の回転、つまりロータリバルブの回転に伴って、間欠的に吸入ポートに連通する。吸入通路の出口と吸入ポートとが連通すると、吸入通路内の冷媒が圧縮室へ流入する。
吸入通路は、リヤハウジング内の吸入室に連通しており、吸入室内の冷媒が吸入通路を経由して前側シリンダボア側の圧縮室と後側シリンダボア側の圧縮室とに供給される。前側シリンダボア側の圧縮室内の冷媒は、吐出弁を押し退けてフロントハウジング内の吐出室へ吐出され、後側シリンダボア側の圧縮室内の冷媒は、吐出弁を押し退けてリヤハウジング内の吐出室へ吐出される。
斜板と前側シリンダブロックとの間には前側スラスト軸受けが介在されており、斜板と後側シリンダブロックとの間には後側スラスト軸受けが介在されている。斜板は、スラスト軸受けを介して、前側シリンダブロックと後側シリンダブロックとの間に位置規制されている。
回転軸には吸入通路から外周面に至る給油孔が貫設されている。又、回転軸にはその外周面から吸入通路に至る圧抜き孔が貫設されている。吸入通路は、前側の小径孔部と後側の大径孔部とからなり、小径孔部と大径孔部との境界である段差は、後側スラスト軸受けと対置する位置に設けられている。給油孔は、吸入通路内の冷媒進行方向(後側から前側に向かう方向)に関して前記段差の手前(後側スラスト軸受けと対置する位置)に設けられており、圧抜き孔は、前側スラスト軸受けと対置する位置に設けられている。
前記吸入室から吸入通路へ流入した冷媒の一部は、段差に衝突し、段差に衝突した冷媒中の潤滑油が分離する。この分離した潤滑油の一部は、回転軸の回転に伴う遠心力によって前記一方の給油孔から後側スラスト軸受けに達して後側スラスト軸受けを潤滑する。斜板を収容するクランク室内の圧力が高まった場合には、クランク室内の冷媒が圧抜き孔から吸入通路へ流れ、クランク室から圧抜き孔へ流れる冷媒中の潤滑油によって前側スラスト軸受けが潤滑される。
特開2003−247488号公報
しかし、クランク室から圧抜き孔へ流れる冷媒中の潤滑油によって前側スラスト軸受けを潤滑する方式では、スラスト軸受け及び圧抜き孔を経由する経路が直線的であるために油分離が十分に行われない。そのため、圧抜き孔に対応する前側スラスト軸受けの潤滑が十分ではない。
本発明は、ピストン式圧縮機におけるスラスト軸受けの潤滑効果を高めることを目的とする。
本発明は、複数のシリンダボアが回転軸の周囲に配列されるようにシリンダブロックに形成されており、前記複数のシリンダボア内にピストンが収容されており、前記ピストンが前記回転軸と一体的に回転可能なカムを介して前記回転軸の回転に連動されており、前記カムと前記シリンダブロックとの間にはスラスト軸受けが介在されており、前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に吸入圧領域から冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブが備えられており、前記導入通路は、前記回転軸内に設けられた軸内通路と、前記軸内通路から前記ロータリバルブの外周面に至る窓とを含み、外部冷媒回路から圧縮機内に還流する冷媒は、前記カムを収容するカム収容室を介さずに前記軸内通路へ直接導入されるピストン式圧縮機における潤滑構造を対象とし、請求項1の発明では、前記スラスト軸受けは、前記カム又は前記シリンダブロックに接触する環状レースと、前記環状レースに係合する転動子とを備えており、前記転動子の介在間隙から前記窓に至る油通路が前記回転軸の外周面に沿って形成されている。
圧縮室内の冷媒は、ピストンとシリンダボア周壁面とのクリアランスを通ってカムを収容する収容室に流出する。そのため、該収容室内の圧力は、吸入圧よりも高く、窓が圧縮室に連通した状態では、該収容室内の冷媒は、油通路及び窓を介してシリンダボアへ流れる。油通路が軸内通路を経由しないため、軸内通路を経由した場合に比べて圧損が少なく、油通路における冷媒流量が増す。従って、スラスト軸受けの潤滑が十分に行われる。
好適な例では、前記油通路の終端は、前記回転軸の回転に伴う前記窓の角度幅の先行側半分に接続されている。
油通路の終端が窓の角度幅の先行側半分にある構成は、油通路における冷媒流量増をもたらす。これは、スラスト軸受けの潤滑の向上に寄与する。
好適な例では、前記油通路は、一対設けられている。
1つの窓に一対の油通路を連通させた構成では、複数のシリンダボアのうちの少なくとも1つと油通路との連通を常に確保することが可能である。
好適な例では、前記油通路は、始端から終端に向かうにつれて前記回転軸の回転方向とは逆方向に向かう。
油通路のこのような方向性は、油通路内の冷媒を窓側へ助勢し、油通路内の冷媒流量が増す。これは、スラスト軸受けの潤滑の向上に寄与する。
好適な例では、複数の第1シリンダボアが第1シリンダブロックに形成されており、複数の第2シリンダボアが第2シリンダブロックに形成されており、回転軸の回転に連動する両頭ピストンが対となる前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとに収容されており、前記第1シリンダボア内に区画される第1圧縮室に吸入圧領域から冷媒を導入するための第1導入通路を有する第1ロータリバルブと、前記第2シリンダボア内に区画される第2圧縮室に前記吸入圧領域から冷媒を導入するための第2導入通路を有する第2ロータリバルブとが備えられており、前記第1圧縮室に連通して前記第1導入通路に連通可能な第1連通路が前記第1シリンダブロックに設けられており、前記第2圧縮室に連通して前記第2導入通路に連通可能な第2連通路が前記第2シリンダブロックに設けられており、前記第1導入通路及び前記第2導入通路の少なくとも一部は、前記回転軸内に設けられた軸内通路であり、前記スラスト軸受けは、前記カムと前記第1シリンダブロックとの間に介在された第1スラスト軸受けと、前記カムと前記第2シリンダブロックとの間に介在された第2スラスト軸受けとであり、前記窓は、前記第1ロータリバルブに設けられた第1窓と、前記第2ロータリバルブに設けられた第2窓とであり、前記油通路は、前記第1窓に連通する第1油通路と、前記第2窓に連通する第2油通路とである。
第1スラスト軸受けと第2スラスト軸受けとをほぼ同等に潤滑することができる。
好適な例では、前記回転軸の内端部は、前記第2シリンダブロックに回転可能に支持されており、前記軸内通路は、前記回転軸の前記内端部のみにて前記吸入圧領域に連通しており、前記第1油通路の通路断面積は、前記第2油通路の通路断面積よりも大きい。
第1窓側の圧力は、第2窓側の圧力よりも若干高くなる。第1油通路と第2油通路とのこのような通路断面積の違いは、第1油通路内の冷媒流量と、第2油通路内の冷媒流量とをほぼ同等にすることを可能にする。これは、第1スラスト軸受けと第2スラスト軸受けとをほぼ同等に潤滑することに寄与する。
本発明は、ピストン式圧縮機におけるスラスト軸受けの潤滑効果を高めることができるという優れた効果を奏する。
第1の実施形態を示す圧縮機全体の側断面図。 (a)は、部分拡大側断面図。(b)は、図2(a)のC−C線断面図。(c)は、部分拡大側断面図。(d)は、図2(c)のD−D線断面図。 (a)は、図1のA−A線断面図。(b)は、図1のB−B線断面図。 シリンダボア内の圧力変化を示すグラフ。 第2の実施形態を示し、(a),(b)は、部分拡大断面図。 第3の実施形態を示し、(a)は、部分拡大側断面図。(b)は、図6(a)のE−E線断面図。(c)は、部分拡大側断面図。(d)は、図6(c)のF−F線断面図。 第4の実施形態を示し、(a),(b)は、部分拡大側断面図。 第5の実施形態を示し、(a),(b)は、部分拡大側断面図。
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1に示すように、連結された一対のシリンダブロック11,12の一方の第1シリンダブロック11にはフロントハウジング13が連結されており、他方の第2シリンダブロック12にはリヤハウジング14が連結されている。シリンダブロック11,12、フロントハウジング13及びリヤハウジング14は、両頭ピストン式圧縮機10の全体ハウジングを構成する。フロントハウジング13には吐出室131が形成されており、リヤハウジング14には吐出室141及び吸入圧領域である吸入室142が形成されている。
第1シリンダブロック11とフロントハウジング13との間にはバルブプレート15、弁形成プレート16及びリテーナ形成プレート17が介在されている。第2シリンダブロック12とリヤハウジング14との間にはバルブプレート18、弁形成プレート19及びリテーナ形成プレート20が介在されている。バルブプレート15,18には吐出ポート151,181が形成されており、弁形成プレート16,19には吐出弁161,191が形成されている。吐出弁161,191は、吐出ポート151,181を開閉する。リテーナ形成プレート17,20にはリテーナ171,201が形成されている。リテーナ171,201は、吐出弁161,191の開度を規制する。
シリンダブロック11,12には回転軸21が回転可能に支持されている。シリンダブロック11,12には軸孔111,121が貫設されており、軸孔111,121には回転軸21が通されている。回転軸21の外周面213は、軸孔111,121の内周面に接しており、回転軸21は、軸孔111,121の内周面を介してシリンダブロック11,12によって直接支持されている。軸孔111に接する回転軸21の外周面213の部分は、シール周面211となっており、軸孔121に接する回転軸21の外周面213の部分は、シール周面212となっている。
回転軸21にはカム体としての斜板23が固着されている。斜板23は、シリンダブロック11,12間のカム収容室としての斜板室24に収容されている。フロントハウジング13と回転軸21との間にはリップシール型の軸シール部材22が介在されている。軸シール部材22は、フロントハウジング13と回転軸21との間からの冷媒洩れを防止する。フロントハウジング13から外部に突出する回転軸21の突出端部は、図示しない外部駆動源(例えば車両エンジン)から回転駆動力を得る。
図3(a)に示すように、第1シリンダブロック11には複数の第1シリンダボア27が回転軸21の周囲に配列されるように形成されている。図3(b)に示すように、第2シリンダブロック12には複数の第2シリンダボア28が回転軸21の周囲に配列されるように形成されている。前後(フロントハウジング13側を前側、リヤハウジング14を後側としている)で対となる第1シリンダボア27と第2シリンダボア28とには両頭ピストン29が収容されている。
図1に示すように、回転軸21と一体的に回転する斜板23の回転運動は、シュー30を介して両頭ピストン29に伝えられ、両頭ピストン29がシリンダボア27,28内を前後に往復動する。両頭ピストン29の円柱形状の頭部291は、第1シリンダボア27内に第1圧縮室271を区画し、両頭ピストン29の円柱形状の頭部292は、第2シリンダボア28内に第2圧縮室281を区画する。
回転軸21内には軸内通路31が回転軸21の回転軸線210に沿って形成されている。第2シリンダブロック12に回転可能に支持された回転軸21の内端部214は、リヤハウジング14内の吸入室142内に突出している。軸内通路31は、軸内通路31の入口311は、リヤハウジング14内の吸入室142に開口しており、軸内通路31は、回転軸21の内端部214のみにて吸入室142に連通している。
軸孔111内の回転軸21には軸内通路31の第1窓312が回転軸21のシール周面211に開口するように形成されている。軸孔121内の回転軸21には軸内通路31の第2窓313が回転軸21のシール周面212に開口するように形成されている。
図2(a)及び図3(a)に示すように、第1シリンダブロック11には第1連通路32が第1シリンダボア27と軸孔111とに連通するように形成されている。図2(c)及び図3(b)に示すように、第2シリンダブロック12には第2連通路33が第2シリンダボア28と軸孔121とに連通するように形成されている。回転軸21の回転に伴い、軸内通路31の第1窓312は、第1連通路32に間欠的に連通し、軸内通路31の第2窓313は、第2連通路33に間欠的に連通する。
両頭ピストン29が第1シリンダボア27側で吸入行程の状態(両頭ピストン29が図1の左側から右側へ移動する行程)にあるときには、第1窓312と第1連通路32とが連通する。両頭ピストン29が第1シリンダボア27側で吸入行程の状態にあるときには、吸入室142内の冷媒が軸内通路31内、第1窓312及び第1連通路32を経由して第1シリンダボア27の第1圧縮室271に吸入される。
両頭ピストン29が第1シリンダボア27側で吐出行程の状態(両頭ピストン29が図1の右側から左側へ移動する行程)にあるときには、第1窓312と第1連通路32との連通が遮断される。両頭ピストン29が第1シリンダボア27側で吐出行程の状態にあるときには、第1圧縮室271内の冷媒が吐出ポート151から吐出弁161を押し退けて吐出室131へ吐出される。吐出室131へ吐出された冷媒は、通路341を介して外部冷媒回路34へ流出する。
両頭ピストン29が第2シリンダボア28側で吸入行程の状態(両頭ピストン29が図1の右側から左側へ移動する行程)にあるときには、第2窓313と第2連通路33とが連通する。両頭ピストン29が第2シリンダボア28側で吸入行程の状態にあるときには、吸入室142内の冷媒が軸内通路31、第2窓313及び第2連通路33を経由して第2シリンダボア28の第2圧縮室281に吸入される。
両頭ピストン29が第2シリンダボア28側で吐出行程の状態(両頭ピストン29が図1の左側から右側へ移動する行程)にあるときには、第2窓313と第2連通路33との連通が遮断される。両頭ピストン29が第2シリンダボア28側で吐出行程の状態にあるときには、第2圧縮室281内の冷媒が吐出ポート181から吐出弁191を押し退けて吐出室141へ吐出される。吐出室141へ吐出された冷媒は、通路342を介して外部冷媒回路34へ流出する。
外部冷媒回路34上には、冷媒から熱を奪うための熱交換器37、膨張弁38、及び周囲の熱を冷媒に移すための熱交換器39が介在されている。膨張弁38は、熱交換器39の出口側のガス温度の変動に応じて冷媒流量を制御する。外部冷媒回路34へ流出した冷媒は、吸入室142へ還流する。圧縮機内及び外部冷媒回路34内には潤滑油が入れられている。該潤滑油は、冷媒と共に圧縮機内及び外部冷媒回路34内を流動する。
回転軸21のシール周面211の部分は、回転軸21に一体形成された第1ロータリバルブ35となり、回転軸21のシール周面212の部分は、回転軸21に一体形成された第2ロータリバルブ36となる。軸内通路31及び第1窓312は、第1ロータリバルブ35の第1導入通路40を構成し、軸内通路31及び第2窓313は、第2ロータリバルブ36の第2導入通路41を構成する。
図2(a),(c)に示すように、第1シリンダブロック11と斜板23の基部231との間には第1スラスト軸受け25が介在されており、第2シリンダブロック12と斜板23の基部231との間には第2スラスト軸受け26が介在されている。第1スラスト軸受け25は、基部231の端面232に接する環状のレース251と、第1シリンダブロック11の端面112に接する環状のレース252と、レース251,252間に介在された複数の転動子253とからなる。斜板23の回転に伴い、転動子253は、レース251,252に係合して転動可能である。
第2スラスト軸受け26は、基部231の端面233に接する環状のレース261と、第2シリンダブロック12の端面122に接する環状のレース262と、レース261,262間に介在された複数の転動子263とからなる。斜板23の回転に伴い、転動子263は、レース261,262に係合して転動可能である。
斜板23は、スラスト軸受け25,26を介して、第1シリンダブロック11と第2シリンダブロック12との間に位置規制されている。
図2(a),(b)に示すように、回転軸21の外周面213の一部であるシール周面211には油溝42が凹み形成されている。油通路としての油溝42の始端421は、レース251,252間に介在された転動子253によって生じるレース251,252間の介在間隙44に対応する位置にあり、油溝42は、介在間隙44と第1窓312とに連通するように、回転軸21の回転軸線210の方向に延びる直線形状である。
図2(c),(d)に示すように、回転軸21の外周面213の一部であるシール周面212には油溝43が凹み形成されている。油通路としての油溝43の始端431は、レース261,262間に介在された転動子263によって生じるレース261,262間の介在間隙45に対応する位置にあり、油溝43は、介在間隙45と第2窓313とに連通するように、回転軸21の回転軸線210の方向に延びる直線形状である。
図2(a),(b)は、両頭ピストン29の頭部291が上死点位置にあるときの状態を示し、図2(c),(d)は、両頭ピストン29の頭部292が上死点位置にあるときの状態を示す。つまり、図2(c),(d)は、図2(a),(b)の状態から回転軸21及び斜板23が180°回転したときの状態であり、図2(a),(b)は、図2(c),(d)の状態から回転軸21及び斜板23が180°回転したときの状態である。回転軸21は、矢印Rの方向に回転する。
両頭ピストン29の吐出行程側の頭部291によって区画される第1圧縮室271内の圧力は、吸入圧よりも高く、両頭ピストン29の吐出行程側の頭部292によって区画される第2圧縮室281内の圧力は、吸入圧よりも高い。圧縮室271,281内の冷媒の一部は、両頭ピストン29の頭部291,292の外周面とシリンダボア27,28の内周面との間の間隙から斜板室24へ流出する。そのため、斜板室24内の圧力は、吸入圧相当の圧力領域である軸内通路31内、第1,2窓312,313内及び第1,2連通路32,33内の圧力よりも高い。この圧力差により、斜板室24内の冷媒は、介在間隙44及び油溝42を経由して第1窓312及び第1連通路32へ流出すると共に、介在間隙45及び油溝43を経由して第1連通路32及び第2連通路33へ流出する。
介在間隙44、油溝42、第1窓312及び第1連通路32を流れる冷媒中の潤滑油は、第1スラスト軸受け25を潤滑し、介在間隙45、油溝43、第2窓313及び第2連通路33を流れる冷媒中の潤滑油は、第2スラスト軸受け26を潤滑する。
図2(b)に示すように、回転軸線210を中心とする角度幅αの油溝42の終端422の先行端423(回転方向Rに関する先行側の端)は、第1窓312における回転方向Rに関する先行端314に位置する。回転軸線210を中心とする第1窓312の角度幅をγとすると、油溝42の角度幅αは、γ/2よりも小さくしてある。
図2(d)に示すように、回転軸線210を中心とする角度幅βの油溝43の終端432の先行端433(回転方向Rに関する先行側の端)は、第2窓313における回転方向Rに関する先行端315に位置する。回転軸線210を中心とする第2窓313の角度幅をδとすると、油溝43の角度幅βは、δ/2よりも小さくしてある。
本実施形態では、α=β、γ=δである。
図4のグラフにおける曲線E1,E2は、第1連通路32及び第1シリンダボア27内の圧力の変化を示す。曲線E1は、圧縮機の回転が低速の場合であり、曲線E2は、圧縮機の回転が高速の場合である。横軸は、回転軸21の回転角度を表し、縦軸は、第1連通路32及び第1シリンダボア27内の圧力を表す。回転角度θ1は、複数の第1連通路32のうちの1つと第1窓312との連通が開始するタイミングを表し、回転角度θ2は、第1連通路32と第1窓312との連通が終了するタイミングを表す。回転角度θ1は、油溝42と第1窓312との連通が開始するタイミングでもある。圧縮機の回転が低速及び高速のいずれの場合にも、第1連通路32内及び第1シリンダボア27内の圧力は、回転角度範囲〔θ1,θ2〕のうちの前半〔θ1,θ1+(θ2−θ1)/2〕で最も低くなる。
第2連通路33及び第2シリンダボア28内の圧力の変化も図4のグラフにおける曲線E1,E2で示す変化と同じようになる。
図4に示す範囲〔θ1−γ,θ1〕は、第1窓312と第1シリンダボア27との連通が開始するときの角度幅γの第1窓312の回転角度位置を表す。範囲〔θ1−α,θ1〕は、第1窓312と第1連通路32との連通が開始するときの角度幅αの油溝42の回転角度位置を表す。
図4に示すεは、回転軸線210を中心とする第1連通路32の角度幅を表す。回転軸線210を中心とする角度幅εの第1連通路32の角度位置は、範囲〔θ1,θ1+ε〕にある。回転角度位置(θ1+ε+α)は、油溝42と第1窓312との連通が終了するタイミングである。つまり、回転角度範囲〔θ1,θ1+ε+α〕は、油溝42と第1窓312とが連通する期間を表す。
図4に示すPsは、吸入室142内の圧力(吸入圧)を表す。第1連通路32及び第1シリンダボア27内の圧力は、連通期間〔θ1,θ1+ε+α〕内で最も低圧となるため、斜板室24内の圧力と第1シリンダボア27内の圧力との差が連通期間〔θ1,θ1+ε+α〕内において最も大きくなる。従って、介在間隙44、油溝42、第1窓312及び第1連通路32を流れる冷媒流量が最も多くなり、該冷媒中の潤滑油による第1スラスト軸受け25の潤滑効率が最も高くなる。
このような事実は、第2連通路33、第2シリンダボア28及び油溝43の側に関しても同様に成り立つ。
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)斜板23の収容室である斜板室24内の圧力は、吸入圧よりも高く、第1,2窓312,313が圧縮室271,281に連通した状態では、斜板室24内の冷媒は、介在間隙44,45、油溝42,43、第1,2窓312,313及び第1,2連通路32,33を介して圧縮室271,281へ流れる。油溝42,43が軸内通路31を経由しないため、軸内通路31を経由した場合に比べて圧損が少なく、介在間隙44,45及び油溝42,43における冷媒流量が増す。従って、スラスト軸受け25,26の潤滑が十分に行われる。
(2)第1,2窓312,313の角度幅γ(=δ)の先行側半分〔θ1−γ/2,θ1〕に油溝42,43を設けた構成は、冷媒中の潤滑油による第1,2スラスト軸受け25,26の潤滑効率を最も高くする。
(3)油溝42が第1スラスト軸受け25に対応して設けられており、油溝43が第2スラスト軸受け26に対応して設けられている。そのため、第1スラスト軸受け25と第2スラスト軸受け26とがほぼ同等に潤滑される。
次に、図5の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図5(a)は、両頭ピストン29の頭部291が上死点位置にあるときの状態を示し、図5(b)は、両頭ピストン29の頭部292が上死点位置にあるときの状態を示す。シール周面211に設けられた油溝42Aは、第1窓312の先行端314から離れているが、第1窓312の角度幅γの先行側半分にある。同様に、シール周面212に設けられた油溝43Aは、第2窓313の先行端315から離れているが、第2窓313の角度幅δ(=γ)の先行側半分にある。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
次に、図6の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図6(a),(b)は、両頭ピストン29の頭部291が上死点位置にあるときの状態を示し、図6(c),(d)は、両頭ピストン29の頭部292が上死点位置にあるときの状態を示す。シール周面211には油溝42Bが油溝42と平行に設けられており、シール周面212には油溝43Bが油溝43と平行に設けられている。
隣り合う第1連通路32間の回転軸線210を中心とした角度間隔をu1、回転軸線210を中心とした第1連通路32の入口の角度幅をw1とすると、油溝42と油溝42Bとの角度間隔t1は、u1≦t1≦u1+w1の範囲に設定されている。隣り合う第2連通路33間の回転軸線210を中心とした角度間隔をu2、回転軸線210を中心とした第2連通路33の入口の角度幅をw2とすると、油溝43と油溝43Bとの角度間隔t2は、u2≦t2≦u2+w2の範囲に設定されている。
このような角度間隔t1,t2の設定をした構成では、油溝42,42Bの少なくとも一方と複数の第1連通路32のうちの少なくとも1つとの連通が確保され、油溝43,43Bの少なくとも一方と複数の第2連通路33のうちの少なくとも1つとの連通が確保される。従って、第1シリンダボア27と斜板室24とが油溝42,42Bによって常に連通され、第2シリンダボア28と斜板室24とが油溝43,43Bによって常に連通される。これは、スラスト軸受け25,26の潤滑効率の向上に寄与する。
次に、図7の第4の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図7(a)は、両頭ピストン29の頭部291が上死点位置にあるときの状態を示し、図7(b)は、両頭ピストン29の頭部292が上死点位置にあるときの状態を示す。回転軸線210を中心とする油溝42Cの角度幅は、回転軸線210を中心とする油溝43Cの角度幅よりも大きくしてある。つまり、油溝42Cの通路断面積は、油溝43Cの通路断面積よりも大きい。油溝42Cの終端422は、第1窓312の角度幅γ〔図4参照〕の先行側半分にあり、油溝43Cの終端432は、第2窓313の角度幅δ〔図4参照〕の先行側半分にある。
第1窓312側の圧力は、第2窓313側の圧力よりも若干高くなる。油溝42Cと油溝43Cとのこのような通路断面積の違いは、油溝42C内の冷媒流量と油溝43C内の冷媒流量とをほぼ同等にすることを可能にする。油溝42Cの通路断面積を油溝43Cの通路断面積よりも大きくした構成は、第1スラスト軸受け25と第2スラスト軸受け26とをほぼ同等に潤滑することに寄与する。
次に、図8の第5の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
図8(a)は、両頭ピストン29の頭部291が上死点位置にあるときの状態を示し、図8(b)は、両頭ピストン29の頭部292が上死点位置にあるときの状態を示す。
油溝42Dは、始端421(介在間隙44側)から終端422(第1連通路32側)へ向かうにつれて回転方向Rとは反対方向に向かう傾き形状をしており、油溝43Dは、始端431(介在間隙45側)から終端432(第2連通路33側)へ向かうにつれて回転方向Rとは反対方向に向かう傾き形状をしている。油溝42Dの終端422は、第1窓312の角度幅γ〔図4参照〕の先行側半分にあり、油溝43Dの終端432は、第2窓313の角度幅δ〔図4参照〕の先行側半分にある。
第5の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。又、油溝42D,43Dの傾き形状は、回転軸21の回転に伴って油溝42D,43D内の冷媒を介在間隙44,45側から第1,2連通路32,33側へ助勢する作用をもたらす。これは、油溝42D,43D内の冷媒流量増に寄与し、スラスト軸受け25,26における潤滑効率が向上する。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第1の実施形態において、γ≠δであってもよい。
○第1の実施形態において、第1,2窓312,313の角度幅γ,δの後行側半分に油溝42,43の終端422,432を接続してもよい。
○フロントハウジング13内に吸入室を設け、この吸入室から軸内通路31を経由して圧縮室271,281へ冷媒を導入するようにしてもよい。
○圧縮機外の吸入圧領域から第1,2導入通路へ冷媒を導入するようにしてもよい。
○第1ロータリバルブ35及び第2ロータリバルブ36を回転軸21とは別体に形成してもよい。
10…両頭ピストン式圧縮機。11…第1シリンダブロック。12…第2シリンダブロック。142…吸入圧領域としての吸入室。21…回転軸。213…外周面。214…内端部。23…カムとしての斜板。24…カム収容室としての斜板室。25…第1スラスト軸受け。26…第2スラスト軸受け。251,252,261,262…レース。253,263…転動子。27…第1シリンダボア。271…第1圧縮室。28…第2シリンダボア。281…第2圧縮室。29…両頭ピストン。31…第1導入通路及び第2導入通路を構成する軸内通路。312…第1導入通路を構成する第1窓。313…第2導入通路を構成する第2窓。32…第1連通路。33…第2連通路。34…外部冷媒回路。35…第1ロータリバルブ。36…第2ロータリバルブ。40…第1導入通路。41…第2導入通路。42,42A,42B,42C,42D,43,43A,43B,43C,43D…油通路としての油溝。421,431…始端。422,432…終端。44,45…介在間隙。α,β,γ,δ,ε…角度幅。R…回転方向。

Claims (6)

  1. 複数のシリンダボアが回転軸の周囲に配列されるようにシリンダブロックに形成されており、前記複数のシリンダボア内にピストンが収容されており、前記ピストンが前記回転軸と一体的に回転可能なカムを介して前記回転軸の回転に連動されており、前記カムと前記シリンダブロックとの間にはスラスト軸受けが介在されており、前記ピストンによって前記シリンダボア内に区画される圧縮室に吸入圧領域から冷媒を導入するための導入通路を有するロータリバルブが備えられており、前記導入通路は、前記回転軸内に設けられた軸内通路と、前記軸内通路から前記ロータリバルブの外周面に至る窓とを含み、外部冷媒回路から圧縮機内に還流する冷媒は、前記カムを収容するカム収容室を介さずに前記軸内通路へ直接導入されるピストン式圧縮機における潤滑構造において、
    前記スラスト軸受けは、前記カム又は前記シリンダブロックに接触する環状レースと、前記環状レースに係合する転動子とを備えており、
    前記転動子の介在間隙から前記窓に至る油通路が前記回転軸の外周面に沿って形成されているピストン式圧縮機における潤滑構造。
  2. 前記油通路の終端は、前記回転軸の回転に伴う前記窓の角度幅の先行側半分に接続されている請求項1に記載のピストン式圧縮機における潤滑構造。
  3. 前記油通路は、一対設けられている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のピストン式圧縮機における潤滑構造。
  4. 前記油通路は、始端から終端に向かうにつれて前記回転軸の回転方向とは逆方向に向かう請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のピストン式圧縮機における潤滑構造。
  5. 複数の第1シリンダボアが第1シリンダブロックに形成されており、複数の第2シリンダボアが第2シリンダブロックに形成されており、前記回転軸の回転に連動する両頭ピストンが対となる前記第1シリンダボアと前記第2シリンダボアとに収容されており、前記第1シリンダボア内に区画される第1圧縮室に前記吸入圧領域から冷媒を導入するための第1導入通路を有する第1ロータリバルブと、前記第2シリンダボア内に区画される第2圧縮室に前記吸入圧領域から冷媒を導入するための第2導入通路を有する第2ロータリバルブとが備えられており、前記第1圧縮室に連通して前記第1導入通路に連通可能な第1連通路が前記第1シリンダブロックに設けられており、前記第2圧縮室に連通して前記第2導入通路に連通可能な第2連通路が前記第2シリンダブロックに設けられており、前記第1導入通路及び前記第2導入通路の少なくとも一部は、前記回転軸内に設けられた軸内通路であり、前記スラスト軸受けは、前記カムと前記第1シリンダブロックとの間に介在された第1スラスト軸受けと、前記カムと前記第2シリンダブロックとの間に介在された第2スラスト軸受けとであり、前記窓は、前記第1ロータリバルブに設けられた第1窓と、前記第2ロータリバルブに設けられた第2窓とであり、前記油通路は、前記第1窓に連通する第1油通路と、前記第2窓に連通する第2油通路とである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のピストン式圧縮機における潤滑構造。
  6. 前記回転軸の内端部は、前記第2シリンダブロックに回転可能に支持されており、前記軸内通路は、前記回転軸の前記内端部のみにて前記吸入圧領域に連通しており、前記第1油通路の通路断面積は、前記第2油通路の通路断面積よりも大きい請求項5に記載のピストン式圧縮機における潤滑構造。
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