JP5151597B2 - ロングレール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、前記ハンマーピーニングは工具の先端を材料に打撃して溶接部に塑性変形を与えて、圧縮応力を導入するとともに、塑性変形により応力集中を低減することで疲労強度が向上すると言われている。しかし、打撃時の振動が大きく、作業者への負担が大きいことに加え、細かいコントロールが難しく、処理むらが生じやすい。例えば非特許文献1によると、処理条件によっては加工によって生じるシワ状の溝部が影響し、疲労強度の向上効果は小さいことが示されている。
また、前記TIGドレッシングは、溶接ビードの止端部をタングステン電極から発生するアークで再溶融させて、滑らかな形状に再凝固させて、応力集中を軽減することにより疲労強度を向上するものである。しかし、レールなどの難溶接材料では高い熟練技能と、厳格な施工管理が必要となる。
(1)2本のレールを溶接することにより製造されたロングレールであって、溶接部に形成されたビードの止端部において、表面から深さ50μm以内の組織がパーライトを有しており、前記表面に対して垂直な断面において該パーライトの60%以上のラメラーが前記表面に対して±45°以下の角度を成しており、前記ビードの止端部は超音波ピーニング処理されていることを特徴とするロングレール。
(3)前記ビードの止端部の表面から50μm以内に位置するパーライトの10%以上は、前記断面においてラメラー間隔が70nm以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のロングレール。
(4)さらに、前記ビードの止端部の表面から50μm以内に位置するパーライトの5%以上は、前記断面においてラメラー間隔が50nm以下であることを特徴とする上記(3)に記載のロングレール。
(5)前記ロングレールの長手方向の断面において、前記ビードの止端部は、曲率半径が1.5mm以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のロングレール。
(6)前記ビードの止端部の表面は、前記ロングレールの長手方向の残留応力が中立又は圧縮であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のロングレール。
(7)荷重繰り返し回数200万回での疲労限界が280MPa以上であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載のロングレール。
(9)荷重繰り返し回数200万回での前記溶接部の疲労限界が、前記超音波ピーニング処理を行わない非処理材と比較して30MPa以上高いことを特徴とする上記(9)又は(8)に記載のロングレールの製造方法。
また、上記した断面において止端部10aの表面から50μm以内のパーライトの10%以上のラメラー間隔(隣り合う2つのフェライト相の中心間隔)が70nm以下である場合も硬度が上昇する(例えばHv50以上)為、特に疲労強度が向上する。この場合、止端部10aの表面から50μm以内に位置するパーライトの5%以上のラメラー間隔が50nm以下である場合、さらに硬度が上昇して疲労強度が向上する。
一方、鋼材温度がさらに低下するに従って、鋼材の靭性、延性は低下していく。このため、周囲温度が−20℃を下回ると、超音波ピーニング処理部に加工による亀裂発生の懸念があるため、−20℃以上の温度で処理を行うことが望ましい。
荷重繰返し速度は5Hzとし、溶接部が破断した時点で試験を終了した。また、荷重繰返し回数が200万回まで非破断であった場合は、そこで試験を終了した。
テルミット溶接法を用いてロングレールを製造し、このロングレールの溶接部に形成されたビードの止端部に、上記した条件で超音波ピーニング処理を行うことにより、複数の試料を作製した。複数の試料相互間は、超音波ピーニング処理の処理回数が異なっているが、他の作製条件は同じである。また、比較例として溶接まますなわち超音波ピーニング処理を行わないロングレールを作製した。
また参考例A4〜A6は、表面とパーライトラメラーの角度が±45°以下の組織が60%以上であり、かつ表面とパーライトラメラーの角度が±15°以下の組織が40%以上であるため、200万回疲労限界が250MPaとなった。
また、参考例A10〜A12は、表面とパーライトラメラーの角度が±45°以下の組織が60%以上であり、かつラメラー間隔が50nm以下のパーライトが5%以上であるため、200万回疲労限界が255MPaとなった。
エンクローズアーク溶接法を用いてロングレールを製造し、このロングレールの溶接部に形成されたビードの止端部に、上記した条件で超音波ピーニング処理を行うことにより、複数の試料を作製した。複数の試料相互間は、超音波ピーニング処理の処理回数が異なっているが、他の条件は同じである。また、比較例として、超音波ピーニング処理を行わずにビードを除去したロングレールを作製した。
フラッシュバット溶接法を用いて複数のロングレールを製造し、これらのロングレールの溶接部に形成されたビードの大部分を、バイトを用いて熱間で押し抜いて除去した。そして、残存しているビードの止端部に、上記した条件で超音波ピーニング処理を行うことにより、複数の試料を作製した。複数の試料相互間は、超音波ピーニング処理の処理回数が異なっているが、他の条件は同じである。また、比較例として、超音波ピーニング処理を行わずにビードの残部をグラインダー等で研磨除去したロングレールを作製した。
ガス圧接法を用いて複数のロングレールを製造し、これらのロングレールの溶接部に形成されたビードの大部分を、バイトを用いて熱間で押し抜いて除去した。そして、残存しているビードの止端部に、上記した条件で超音波ピーニング処理を行うことにより、複数の試料を作製した。複数の試料相互間は、超音波ピーニング処理の処理回数が異なっているが、他の条件は同じである。また、比較例として、超音波ピーニング処理を行わずにビードの残部をグラインダー等で研磨除去したロングレールを作製した。
表5は様々な疲労強度改善方策をレールのテルミット溶接部に適用した場合の疲労試験の結果と処理時間を示したものである。
比較例C2は、鋼材表面に打撃される工具の先端曲率が15mmφの工具を用い、ビード10の止端部を集中的にハンマーピーニングした例である。加工は同じ位置を10パス繰り返した。加工部の凹みは深い部分ではレール母材表面から1.8mm程度あり、疲労強度は非処理材に比較してむしろ低下した。
比較例C5は、ビード10の止端部をTIG溶接機により幅約5mmの範囲で再溶融させて、滑らかな形状に再凝固させた例である。疲労強度は非処理材にくらべて向上したが、処理部の割れ防止のために400℃に予熱するために20分を要した。
このことから、超音波ピーニングは、他の疲労強度改善方法より効率的で効果的に疲労強度の向上が得られることが示された。
Claims (9)
- 2本のレールを溶接することにより製造されたロングレールであって、溶接部に形成されたビードの止端部において、表面から深さ50μm以内の組織がパーライトを有しており、前記表面に対して垂直な断面において該パーライトの60%以上のラメラーが前記表面に対して±45°以下の角度を成しており、前記ビードの止端部は超音波ピーニング処理されていることを特徴とするロングレール。
- 前記断面において前記ビードの止端部の表面から50μm以内に位置するパーライトの40%以上のラメラーが前記表面に対して±15°以下の角度を成していることを特徴とする請求項1に記載のロングレール。
- 前記ビードの止端部の表面から50μm以内に位置するパーライトの10%以上は、前記断面においてラメラー間隔が70nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のロングレール。
- 前記ビードの止端部の表面から50μm以内に位置するパーライトの5%以上は、前記断面においてラメラー間隔が50nm以下であることを特徴とする請求項3に記載のロングレール。
- 前記ロングレールの長手方向の断面において、前記ビードの止端部は、曲率半径が1.5mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のロングレール。
- 前記ビードの止端部の表面は、前記ロングレールの長手方向の残留応力が中立又は圧縮であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のロングレール。
- 荷重繰り返し回数200万回での疲労限界が280MPa以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のロングレール。
- 2本のレールを溶接することによりロングレールを製造する工程と、前記ロングレールの溶接部に形成されているビードの止端部を超音波ピーニング処理することにより、前記止端部において表面から50μm以内の組織が含んでいるパーライトを、前記表面に対して垂直な方向の断面において60%以上のラメラーが前記表面に対して±45°以下の角度を成すようにする工程と、を具備し、前記ビードの止端部を超音波ピーニング処理する際に、超音波ピーニング処理用の打撃用部材を、5mm/秒以上20mm/秒以下の速度で前記止端部に沿って3パス以上移動させることを特徴とするロングレールの製造方法。
- 荷重繰り返し回数200万回での前記溶接部の疲労限界が、前記超音波ピーニング処理を行わない非処理材と比較して30MPa以上高いことを特徴とする請求項8に記載のロングレールの製造方法。
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