本発明のディスプレイ用フィルターは、基材上に、気相製膜法のみで製膜された金属薄膜にフォトリソグラフ・エッチング法及び黒化処理を利用して形成された金属メッシュを有する。なお本発明で定義される金属メッシュは、黒化処理によって形成された黒化層を有するものである。従来から知られている湿式メッキ法は、本発明の金属薄膜の形成には用いられない。また、後述する黒化層の形成にも湿式メッキ法は用いられない。
上記の気相製膜法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等が挙げられるが、本発明では、スパッタリング及び真空蒸着が好ましい。金属薄膜を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタンなどの金属の内、1種または2種以上を組合せた合金あるいは多層のものを使用することができる。これらの中でも、良好な電磁波シールド性が得られ、メッシュパターン加工が容易で、かつ低価格であるなどの点から、銅が好ましく用いられる。
また、金属薄膜の金属として銅を用いる場合は、基材と銅薄膜との間に、5〜100nmの厚みのニッケル薄膜を用いるのが好ましい。これによって、基材と銅薄膜の接着性が向上する。
本発明は、上記の気相製膜法のみで形成された金属薄膜に、フォトリソグラフ・エッチング法を施して金属メッシュに加工する。
係るフォトリソグラフ・エッチング法は、金属薄膜上にフォトレジスト層を積層し、該フォトレジスト層をメッシュパターン状に露光し、現像してレジスト像を形成し、次いで、金属薄膜をエッチングしてメッシュパターン化し、メッシュ上のレジスト層を剥離除去する方法である。
フォトレジスト層としては、露光部分が硬化するネガレジスト、あるいは逆に露光部分が現像によって溶解するポジレジストを用いることができる。フォトレジスト層は金属薄膜上に直接に塗工して積層してもよいし、あるいはフォトレジストからなるフィルムを貼り合わせてもよい。フォトレジスト層を露光する方法としては、フォトマスクを介して紫外線等で露光する方法、もしくはレーザーを用いて直接に走査露光する方法を用いることができる。
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、レジスト像で保護された金属部分以外の金属をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
上述したフォトリソグラフ・エッチング法は公知であり、本発明では従来から知られている方法を用いることができる。
本発明の金属メッシュは、黒化処理によって形成された黒化層を有する。黒化処理は、金属薄膜を形成後でフォトリソグラフ・エッチング法を施す前、もしくは金属薄膜を形成後でフォトリソグラフ・エッチング法を施した後、のいずれかに行われる。
本発明に係る黒化処理は、金属薄膜を形成後でフォトリソグラフ・エッチング法を施す前に黒化処理する場合であれば、金属箔膜の金属を化学的に処理して黒化するものであり、金属薄膜を形成後でフォトリソグラフ・エッチング法を施した後に黒化処理する場合であれば、金属メッシュを構成する金属層の金属を化学的に処理して黒化するものである。黒化処理としては例えば、酸化処理、硫化処理等が用いられる。上記黒化処理は、金属メッシュ上に新たに金属酸化物等を湿式メッキ法や蒸着法で積層する方法に比べてコストや生産効率の点で有利である。
上記酸化処理としては、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を用いることができるが、経済性の点から、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を用いることが好ましい。
上記硫化処理としては、硫酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム等の水溶液を使用することができるが、好ましくは、硫酸カリウム及び硫酸アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
本発明において、厚みが1〜4μmの金属メッシュを形成するためには、所望する金属メッシュの厚みと同程度の厚みの金属薄膜が基材上に形成されることが重要である。即ち、1〜4μmの厚みの金属薄膜が、基材上に気相製膜法のみで形成されることが重要となる。金属メッシュの厚み(A)は、1〜4μmであるが、好ましくは1〜3.5μmであり、より好ましくは1.5〜3μmである。そのため金属薄膜の厚みも、好ましくは1〜3.5μmであり、より好ましくは1.5〜3μmである。このように、厚みが薄い金属薄膜を気相製膜法で形成し、フォトリソグラフ・エッチング法で金属メッシュを構成する金属層を形成することによって、金属メッシュの線幅及び線ピッチが小さく、かつ導電性が良好(金属メッシュの表面抵抗値が低い)な、高精細なメッシュパターンの金属メッシュ形成が可能になる。
本発明に係る金属メッシュの厚み(A)は、1〜4μmであり、好ましくは1〜3.5μmであり、より好ましくは1.5〜3μmである。黒化層を有する金属メッシュの厚み(A)が1μmより薄くなると、金属メッシュの金属光沢を抑制するのに十分な黒化層の厚み(B)(0.5μm以上)を確保することができず、金属メッシュの高い導電性の確保(金属メッシュから黒化層を除いた金属層の厚み(A−B)が0.5μm以上必要)との両立ができなくなる。一方、金属メッシュの厚みが4μmを越えると、金属薄膜の形成速度低下により生産コストが増大し、また、高精細メッシュパターンの形成に不利となる。また、更に、後述するように、金属メッシュ上へ機能層を塗工形成するときの塗工性が低下する。
金属メッシュは、少なくとも表面に黒化処理による黒化層を有する。ここで、金属メッシュの表面とは、金属薄膜が形成される基材とは反対側の面である。黒化処理を、フォトリソグラフ・エッチング法を施して金属メッシュを形成する前、即ち金属薄膜の状態で行う場合は、黒化層は金属メッシュの表面のみに形成される。一方、金属箔膜にフォトリソグラフ・エッチング法を施した後に黒化処理を行う場合、金属メッシュの表面と両側面に黒化層が形成される。
金属メッシュの金属光沢を抑制するという観点からは、金属メッシュの両側面(金属メッシュを構成する細線の両側面)にも黒化層が形成される、上記後者の方法が有利であるが、金属メッシュを構成する細線の両側面に黒化層が形成されることによって金属メッシュを構成する金属層の体積が相対的に減少するので、金属メッシュの表面抵抗値を下げるという観点からは不利となる。一方、金属メッシュを構成する細線の表面にのみ黒化層が形成される、上記前者の方法は、上記後者の方法とは逆に、金属光沢を抑制するという観点からは不利であるが、低い表面抵抗値を確保するという観点からは有利である。
本発明に係る金属メッシュの厚みは、4μm以下と従来のものに比べて十分に小さいので、金属メッシュを構成する細線の両側面の金属光沢への影響は大幅に軽減され、従って、上記した前者の方法でも、金属光沢は実質的に問題にはならない。しかし、上記前者の方法は、本発明の範囲内で金属メッシュの厚み及び線幅が比較的小さく設定される場合には、金属光沢の抑制と低い表面抵抗値の確保を両立させるという観点から効果を発揮する。一方、上記後者の方法は、本発明の範囲内で金属メッシュの厚みが比較的大きく設定される場合に有益である。
従って、上記前者の方法を採用するか、もしくは上記後者の方法を採用するかは、金属メッシュの厚みと線幅に応じて適宜選択するのが好ましい。上記の1つの目安としては、金属メッシュの厚みが2μm以下または線幅が5μm以下の場合は上記前者の方法が好ましく、金属メッシュの厚みが3μm以上の場合は上記後者の方法が好ましい。
本発明において、黒化層の厚み(B)は、金属メッシュの表面にのみ形成された黒化層の厚み(B)を意味する。本発明に係る黒化層の厚み(B)は、0.5〜1.5μmであり、好ましくは0.7〜1.3μmである。黒化層の厚みが0.5μmより薄い場合、十分な黒化濃度が得られず、金属メッシュの金属光沢の抑制が不十分となり、コントラストの低下を招く。一方、黒化層の厚みが1.5μmを越える場合、黒化層の表面が脆くなり、剥離しやすくなるという問題、及び厚みが薄い本発明の金属メッシュでは、金属メッシュを構成する金属層の厚み、即ち金属メッシュの厚み(A)から黒化層の厚み(B)を差し引いた層の厚み(A−B)が小さくなり、導電性が低下するという問題が生じる。また、上記したように黒化層の表面が脆くなると、後述する機能層を金属メッシュ上に塗工形成する工程において、金属メッシュが生産ラインの搬送ロール等に接触し、黒化層の一部が剥離し、搬送ロール等の生産ラインを汚染するという問題が生じる。
本発明の金属メッシュは、金属薄膜由来の金属層と金属薄膜を黒化処理して形成された黒化層からなる。そして、高い導電性を確保するという観点から、金属メッシュの厚み(A)と黒化層の厚み(B)の差(A−B)、即ち、金属メッシュを構成する金属層の厚みが0.5μm以上必要である。上記厚み差(A−B)は、好ましくは0.7〜3μmであり、より好ましくは1〜2.5μmである。
上記した、金属メッシュの厚み(A)や黒化層の厚み(B)は、走査型電子顕微鏡による拡大断面写真から求めることができる。
本発明に係る金属メッシュを構成する金属層(金属メッシュを構成する金属層とは、金属メッシュから黒化層を除いた部分、を示す)は、その表面抵抗値が0.5Ω/□以下が好ましく、0.4Ω/□以下がより好ましく、特に0.3Ω/□以下が好ましい。表面抵抗値としては小さな値程好ましいものの、下限の表面抵抗値は0.01Ω/□程度である。ここで、表面抵抗値は、JISK 7194に準拠した測定装置を用いて測定することができる。測定装置としては、例えば、三菱化学(株)製のLoresta-EP(MCP−T360)を用いることができる。上記装置を用いて表面抵抗値を測定するときは、測定装置の測定端子が接触する部分の金属メッシュ表面の黒化層は予めナイフ等で削り取り、金属メッシュを構成する金属層を露出させておく必要がある。表面抵抗値が0.5Ω/□以下の金属メッシュを構成する金属層を用いることによって、ディスプレイから発せられる電磁波を有効に遮蔽することができる。
本発明において、金属メッシュの線ピッチは50〜160μmである。これによって、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着したときのモアレを有効に抑制することができる。線ピッチが160μmより大きくなるとモアレの発生を有効に抑制することができず、一方、線ピッチが50μmより小さくなるとディスプレイ用フィルターの透過率が低下する。本発明に係る金属メッシュの線ピッチは、好ましくは70〜150μmであり、より好ましくは80〜130μmである。
本発明の金属メッシュは、その開口率は88%以上である。これによって、高い透過率が確保できる。ここで開口率(D)は、線幅(W)と線ピッチ(P)から、以下の式1で求めたものである。
D=(P−W)2/W2 ・・・・式1
上記開口率は、90%以上が好ましく、上限としては95%以下が好ましい。開口率が95%を越えると、高い導電性(低い表面抵抗値)を得るのに十分な線幅の確保が難しくなる。
本発明において、金属メッシュの線幅は、3〜9μmである。本発明のように、線幅が小さい方が、モアレには効果的であり、また線ピッチが小さい本発明の金属メッシュにおいて、比較的大きな開口率を確保することができ、それによって透過率も高くなる。本発明に係る金属メッシュの線幅は、好ましくは3〜8μmであり、より好ましくは3〜6μmである。
金属メッシュの線幅が9μmを越えて大きくなると、透過率が低下し、またモアレが発生しやすくなる。一方、線幅が3μmより小さくなると、表面抵抗値が高くなり、電磁波遮蔽性能が低下する。また、3μmより小さい線幅からなる金属メッシュは断線しやすく、目標とする表面抵抗値が得られない場合がある。また、線幅が3μmより小さい場合は、後述の機能層を金属メッシュ上に塗工形成する工程において、金属メッシュが生産ラインの搬送ロール等に接触し、金属メッシュが一段と破断しやすくなる。
本発明において、基材上に金属メッシュのみが形成された部材の透過率は、75%以上が好ましく、77%以上がより好ましく、特に80%以上が好ましい。透過率の上限は90%程度が適当である。本発明のディスプレイ用フィルターは、後述するように、各種機能層や粘着層を積層するのが好ましく、これらの機能層の積層によって透過率が低下するので、上記の基材上に金属メッシュのみが形成された部材の透過率は高めに設定しておくのが好ましい。
金属メッシュの線幅と線ピッチは、デジタルマイクロスコープ等を用いて、金属メッシュ表面の拡大映像から求めることができる。具体的には、デジタルマイクロスコープ(例えば、キーエンス製のVHX−200)を用いて倍率450倍で表面観察を行い、その測長機能を用いて線幅及び線ピッチを測長する。サンプルサイズは、20cm×20cmで、任意の25箇所(各箇所につき、線4本と線ピッチ1箇所)、計100本の線幅と25箇所の線ピッチについて測定し、その平均値をそれぞれの寸法とする。
本発明が目指すところの線幅の小さい金属メッシュは、上述した従来から一般的に知られている製造方法では、安定的に製造することが困難であったが、本発明の気相製膜法のみで形成された、厚みの薄い金属薄膜に、フォトリソグラフ・エッチング法を組み合わせることによって、安定的に精度よく作製することが可能になった。
本発明の金属メッシュは、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等からなる格子状のメッシュであり、好ましくは正方形のメッシュである。
本発明に係る基材の材質としては、ガラス、プラスチックスなど特に限定されないが、ロール形態での製造および加工時に望まれる可とう性の点ではプラスチックフィルムが好ましい。プラスチックフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(以降PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、或いは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、或いは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等を溶融または溶液製膜したものである。これらの中でも、透明性、耐熱性、耐薬品性、コスト等の点より、PETフィルムが最も好ましい。
基材の厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コストの観点及びディスプレイ用フィルターの剛性を確保するという観点から90〜250μmの範囲が特に好ましい。基材としてプラスチックフィルムを用いる場合は、金属メッシュあるいは後述する近赤外線遮蔽層との密着性(接着強度)を強化するための下引き層(プライマー層、易接着層)を設けておくのが好ましい。
本発明のディスプレイ用フィルターは、金属メッシュ側の面、もしくは基材の金属メッシュとは反対側の面に、保護機能あるいは光学機能を有する機能層を積層するのが好ましい。係る機能層としては、ハードコート機能、反射防止機能、防眩機能、防汚機能等がある。上記機能層は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着したときに、視認側の最表面となるように配置するのが好ましい。
本発明においては、反射防止機能、防眩機能、及びハードコート機能の中から選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能層を用いるのが好ましく、また係る機能層は、金属メッシュ上にプラスチックフィルム等の基材及び接着剤層を介在せずに積層するのが好ましい。特に、機能層を金属メッシュ上に直接に塗工形成するのが好ましい。機能層を金属メッシュ上に直接に塗工形成することによって、1枚のみ基材からなるディスプレイ用フィルターを実現することができる。
機能層は単一層であっても複数層で構成されていてもよく、また複数の機能を併せ持った層であってもよい。以下に機能層を構成するハードコート機能、反射防止機能、防眩機能、及び防汚機能を有する層について具体的に説明する。
反射防止機能を有する層(反射防止層)は、ディスプレイの画像表示に影響を与える蛍光灯などの外光の反射や映り込みを防止するものである。反射防止層は、表面の視感反射率が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下であることが好ましい。ここで視感反射率は、分光光度計等を使用して可視領域波長(380〜780nm)の反射率を測定し、CIE1931システムに準じて計算された視感反射率(Y)である。
このような反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が視認側になるように2層以上積層したものを用いることが好ましい。高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7の範囲が好ましく、特に1.55〜1.69の範囲が好ましい。低屈折率層の屈折率は1.25〜1.49の範囲が好ましく、特に1.3〜1.45の範囲が好ましい。
高屈折率層を形成する材料としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを重合硬化させたもの、あるいはシリコーン系、メラミン系、エポキシ系の架橋性樹脂原料を架橋硬化させたもの等の有機系材料、酸化インジウムを主成分としこれに二酸化チタンなどを少量含ませたもの、あるいはAl2 O3 、MgO、TiO2 等の無機系材料が挙げられる。これらの中でも、有機系材料が好ましく用いられる。以下に本発明の高屈折率層の好ましい態様を説明する。
本発明において、高屈折率層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、含リン系樹脂、含スルフィド樹脂、含ハロゲン樹脂などの樹脂成分を単体または混合系で用いることが出来るが、特に、硬度と耐久性などの点から、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂を用いるのが好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点から、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリレート系樹脂は、活性エネルギー線照射によって容易にラジカル重合が起こり、形成される膜の耐溶剤性や硬度が向上するので好ましい。
かかる(メタ)アクリレート系樹脂として、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
高屈折率層には、更にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(モノマー)を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
高屈折率層には、塗布した樹脂成分の硬化を進めるために開始剤を含有させてもよい。該開始剤としては、塗布した樹脂成分を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知の各種光重合開始剤が使用可能である。
かかる光重合開始剤としては、具体的には、ソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイド等のサルファイド類や、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体や、ヒドラゾン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、ベンゼンジアゾニウム塩等のジアゾ化合物や、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン等の芳香族カルボニル化合物や、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、D−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、p−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピル等のジアルキルアミノ安息香酸エステルや、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物や、9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジン等のアクリジン誘導体や、9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジン等のフェナジン誘導体や、6,4’,4”−トリメトキシ−2、3−ジフェニルキノキサリン等のキノキサリン誘導体や、2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体、2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリフェニルピリリウム四弗化ホウ素塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
また、高屈折率層には、上記開始剤の酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物や、芳香族アミン化合物等の不揮発性のものであれば、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が好ましい。
また、高屈折率層には、金属酸化物微粒子を含有してもよい。これによって帯電防止効果が得られる。金属酸化物微粒子としては錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が好ましく、より好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)である。
かかる金属酸化物粒子は、平均粒子径(BET法により測定される非表面積(JIS R1626:1996年)に基づく球相当径分布から計算される算術平均粒子径(JIS Z8819−1:1999年およびZ8819−2:2001年)が0.5μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは、0.001〜0.3μm、更に好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が、0.5μmを超えると高屈折率層の透明性を低下させることがあり、0.001μm未満では、該粒子が凝集し易くヘイズ値が増大する場合がある。高屈折率層中の金属酸化物粒子の含有量は、樹脂成分100質量%に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
更に、高屈折率層には、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有することができる。
高屈折率層の厚みは、ハードコート層を設けない場合は、0.5〜10μmの範囲が好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましい。
反射防止層を構成する低屈折率層は、含フッ素ポリマー、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル、含フッ素シリコーン等の有機系材料、MgF2 、CaF2 、SiO2 等の無機系材料で構成することができる。以下に低屈折率層の好ましい態様を例示する。
低屈折率層の1つの好ましい態様として、MgF2やSiO2等の薄膜を真空蒸着法やスパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する方法、或いはSiO2ゾルを含むゾル液からSiO2ゲル膜を形成する方法等が挙げられる。
低屈折率層の他の好ましい態様として、シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーを主成分とする構成を採用することができる。なお、ここで言う「結合」とは、シリカ系微粒子のシリカ成分とマトリックスのシロキサンポリマーが反応して均質化している状態を意味する。シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーは、該シリカ系微粒子の存在下、多官能性シラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応によって、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。
かかる多官能性シラン化合物としては、多官能性フッ素含有シラン化合物を含むことが低屈折率化、防汚性の点から好ましく、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどの3官能性フッ素含有シラン化合物、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性フッ素含有シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが、より好ましい。
多官能性シラン化合物として多官能性フッ素非含有シラン化合物を用いることができる。かかる多官能性フッ素非含有シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点からビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが、より好ましい。
また、上述のシリカ系微粒子としては、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に好ましくは、平均粒子径1nm〜70nmである。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。さらに、かかるシリカ系微粒子の中でも、内部に空洞を有する構造のものが、屈折率を低下させるために、特に好ましく使用される。
かかる内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。このような例としては例えば、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、微粒子内部の空洞の占める体積、すなわち微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。空隙率は、例えば、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。また、該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるのが好ましく、1.20〜1.35であるのがより好ましい。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、特許第3272111号公報等の一般に市販されているものを挙げることができる。
低屈折率層の厚みは、0.01〜0.4μmの範囲が好ましく、0.02〜0.2μmの範囲がより好ましい。
防眩機能を有する層(防眩層)は、画像のギラツキを防止するものであり、表面に微小な凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩層としては、例えば、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させたもの、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させたものなどが用いられる。防眩層は、ヘイズ値(JISK 7136;2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。
本発明の機能層として、反射防止機能と防眩機能を併せ持つ層を用いることは好ましい態様の1つである。
ハードコート機能を有する層(ハードコート層)は、傷防止のために設けられる。ハードコート層は硬度が高いことが好ましく、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度が、1H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いることができる。
また、反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム(登録商標)”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール(登録商標)”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC(登録商標)”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス(登録商標)”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー(登録商標)”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD(登録商標)”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
ハードコート層形成組成物を構成するアクリル化合物の代表的なものを例示すると、1分子中に3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる混合物を主たる構成成分とし、活性エネルギー線硬化または熱硬化によって得られるハードコート層が、硬度、耐摩耗性および可撓性に優れている点で好ましく用いられる。(メタ)アクリロイルオキシ基が多すぎる場合には、単量体は高粘度となり取り扱いし難くなり、また、高分子量とならざるを得なくなって塗布液として用いることが困難となるので、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基は好ましくは10個以下である。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体およびプレポリマーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。特にこれらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物は、後述するイソシアネートとの併用により、ハードコート層と隣接層との接着性を向上させることができるので特に好ましい。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して20〜90質量%が好ましく、より好ましくは30〜80質量%、最も好ましくは30〜70質量%である。
上記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して20質量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で不十分な場合がある。また、上記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して90質量%を超える場合は、硬化による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招く場合がある。
また、これらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、最も好ましくは30〜60質量%である。少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して10質量%未満の場合には、ハードコート層とその隣接層との接着性を向上させる効果が小さい場合がある。少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して80質量%を超える場合は、ハードコート層内の架橋密度が低下して、ハードコート層の硬度が低下する傾向がある。
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
また、分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど;
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど;
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど;
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど;
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および;
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−およびi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して50質量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる場合がある。また、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して10質量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材フィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合がある。
本発明において、ハードコート形成組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート層形成組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成組成物総量に対して0.01〜10質量%が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また220度以上の高温で熱硬化させる場合には、熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
本発明におけるハードコート層形成組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有していることが好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、水添MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の少なくとも2量体以上のものが挙げられる。これらポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
これらのポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体は、前記したハードコート層形成組成物に混合されて塗布される。上記ポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量は、接着性、表面硬度、耐湿熱性および虹彩模様低減の点で、ハードコート層形成組成物総量に対し、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。上記ポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量が、ハードコート層形成組成物総量に対して0.5質量%未満の場合には、接着性向上効果が不足したり、虹彩模様の低減が不十分な場合があり、またポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量が、ハードコート層形成組成物総量に対して50質量%を超えると、表面硬度が低下する場合がある。
上記ポリイソシアネートを添加したハードコート層形成組成物は、その硬化効率を高める目的で有機金属系触媒を含有させることも好ましい。
有機金属系触媒は、特に限定されるものではなく、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機4A族元素(チタン、ジルコニウムまたはハフニウム)化合物などが挙げられるが、安全性を考慮した場合、非錫系金属触媒である有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および、有機チタン化合物から選ばれたものが好ましく適用される。有機錫化合物としては、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウリレートなどのジブチル錫脂肪酸塩、ジオクチル錫ジラウリレートなどのジオクチル錫脂肪酸塩が例示できる。
有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ハフニウム化合物、有機チタン化合物としては、これらの金属のオルトエステルとβ−ケトエステル(βジケトン)の反応生成物が例示され、具体的にはジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、アルミニウムテトラ−n−プロポキシド、アルミニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムテトラ−n−ブトキシドなどの金属オルトエステルと、アセチルアセトン、メチルアセテート、エチルアセトアセテート、n−プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどのβケトエステル(βジケトン)との反応生成物を挙げることができる。金属オルトエステルとβジケトエステル(βジケトン)の混合モル比率は4:1〜1:4程度が好ましく、より好ましくは2:1〜1:4である。4:1より金属オルトエステルが多い場合は触媒の反応性が高すぎてポットライフが短くなりやすく、1:4よりβジケトエステルが多い場合は触媒活性が低下するため好ましい態様では無い。上記有機金属系触媒の配合量は、ハードコート形成組成物総量に対して0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。上記有機金属系触媒の配合量が、ハードコート形成組成物総量に対して0.001質量%より少ない場合には触媒添加効果が低く、10質量%より多くすることは経済的見地から好ましくない。
上記したハードコート層形成組成物の好ましい態様としては、ハードコート層形成組成物総量に対して、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物10〜80質量%、イソシアネート化合物1〜30質量%および必要に応じて有機金属系触媒0.001から10質量%の範囲とするのが望ましい。さらに必要に応じて1〜2個のエチレン性不飽和結合を有する単量体を0質量%以上50質量%以下添加しても良い。
本発明において、ハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤などを用いることができる。
シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基が付加されたものが好ましく、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
またハードコート層上にさらに積層膜を設ける場合には、接着性を阻害しないアクリル系レベリング剤を適用するのが好ましい。このようなレベリング剤としては「ARUFON−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製)などを好ましく用いることができる。レベリング剤の添加量はハードコート形成組成物総量に対して、0.01〜5質量%の範囲とするのが望ましい。
本発明で用いられる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200度以上に加温された空気による熱が好ましく、さらに好ましくは200度以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
ハードコート層の厚みは、0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜8μmである。ハードコート層の厚みが0.5μm未満の場合には十分硬化していても薄すぎるために、表面硬度が十分でなく、傷が付きやすくなる傾向にある。一方、ハードコート層の厚みが10μmを超えると、硬化時の重合収縮により、カールが発生しやすくなる。
ハードコート層には、前述した反射防止層を構成する高屈折率層としての機能を付与することができる。ハードコート層の高屈折率化は、ハードコート層形成用樹脂組成物中に高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することにより、あるいは高屈折率成分の分子や原子を含んだ樹脂を用いることにより図られる。
前記高屈折率を有する超微粒子は、その粒径が5〜50nmで、屈折率が1.65〜2.7程度のものが好ましく、具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2 O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等の微粉末が挙げられる。
前記屈折率を向上させる樹脂に含まれる分子及び原子としては、F以外のハロゲン原子、S、N、Pの原子、芳香族環等が挙げられる。
防汚機能を有する層(防汚層)は、ディスプレイ用フィルターに、人が指で触ることによって油脂性物質が付着するのを防止したり、大気中のごみや埃が付着するのを防止したり、あるいはこれらの付着物が付着しても除去しやすくするための層である。かかる防汚層としては、例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚さは、1〜10nmの範囲が好ましい。
前述したように本発明の機能層は単一層であっても、複数層であってもよい。複数構成の機能層としては、a)ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、b)高屈折率ハードコート層/低屈折率層、c)ハードコート層/防眩層、d)ハードコート層/防眩性反射防止層、等が例示される。尚、上記a)〜d)の構成において、右側に記載の層が視認側に配置される。防汚層を設ける場合は、視認側の最表面に設けるのが好ましい。
また、機能層が単一層の場合は、複数の機能を併せ持つのが好ましい。かかる単一層の例としては、e)反射防止性ハードコート層(反射防止機能とハードコート機能を有する単一層)、f)防眩性ハードコート層(防眩機能とハードコート機能を有する単一層、g)防眩性反射防止ハードコート層(防眩機能と反射防止機能とハードコート機能を有する単一層)、h)防眩性反射防止層(防眩機能と反射防止機能を有する単一層)、i)防汚性ハードコート層(防汚機能とハードコート機能を有する単一層)等が例示される。
本発明において、機能層は金属メッシュ上に直接に塗工形成するのが好ましく、この場合、少なくともハードコート機能を含む単一層を塗工するのが、生産効率及びディスプレイ用フィルターの品質性能の観点から好ましい。
本発明の金属メッシュは、基材との間に接着剤や粘着剤を介在せずに形成されており、更に金属メッシュの厚みが、従来の一般的な金属メッシュ(厚み10μm程度の銅箔エッチングメッシュ)に比べて大幅に薄く、機能層が塗工される金属メッシュ表面の凹凸高さが小さいので、機能層が金属メッシュ上に均一に塗工形成することができる。また、金属メッシュ上に機能層を直接に塗工形成するという観点から、金属メッシュの線幅が9μm以下と小さくすることは有効である。
本発明において、機能層は金属メッシュを完全に被覆するように塗工形成するのが好ましく、金属メッシュを構成する細線部と細線に囲まれた開口部を埋めて被覆するためには、機能層はある程度の厚みが必要である。しかし、本発明のように、金属メッシュの厚みが4μm以下であると、機能層の厚みを小さくしても金属メッシュ上に均一かつ平滑に塗工形成することが可能となる。機能層の厚みを小さくすることによって、原材料コストの低減、及び機能層の塗工速度や乾燥速度の増大が図られ、生産コストが大幅に低減する。特に、機能層としてハードコート機能を含む層を単一層で塗工形成する場合、機能層の厚みを小さくすることは、ハードコート層の重合収縮によるディスプレイ用フィルターのカールを抑制できるという利点がある。
図1は、本発明に係るディスプレイ用フィルターの一例の模式断面図であり、基材4の上に金属メッシュ3が形成され、金属メッシュ3上に機能層2が積層されている。ここで、機能層2は、金属メッシュ3を構成する細線部3aに囲まれた開口部3bを埋めて、かつ細線部3aを被覆するように塗工形成されている。
機能層が金属メッシュを完全に被覆するように機能層を塗工形成するためには、機能層の合計厚み(図1の符号N)は、金属メッシュの厚み(図1の符号A)に対して130%以上が好ましく、150%以上がより好ましい。ここで機能層の合計厚み(N)は、上記したように機能層は金属メッシュの開口部を埋めてかつ細線部を被覆するように塗工形成されるので、金属メッシュの細線部の厚み(A)と細線部上に形成された機能層の厚み(L)との和である。上記したように、金属メッシュの厚み(A)に対して機能層の合計厚み(N)を大きくすることによって金属メッシュの凹凸面を十分に埋めて均一化することができる。
上記の観点から機能層の合計厚み(N)としては、2〜10μmの範囲が好ましく、特に3〜8μmの範囲が好ましい。また、金属メッシュの細線部上に形成された機能層の厚み(L)は、0.5〜4μmの範囲が好ましく、1〜4μmの範囲がより好ましい。
上記した金属メッシュや機能層の厚みは、走査型電子顕微鏡によるディスプレイ用フィルターの拡大断面写真から求めることができる。
金属メッシュ上に形成される機能層は、前述したように塗工形成するのが好ましく、塗工方式としては、ディップコーティング法、スピンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、リーバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、スプレー法、ロールコーティング法等の公知のウェットコーティング法を用いることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターには、更に近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与するのが好ましい。
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近赤外線遮蔽機能は、基材、機能層、あるいは後述する接着層に近赤外線吸収剤を混錬、分散することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収剤を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。本発明においては、近赤外線吸収剤を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは機能層や接着層に上記近赤外線吸収剤を含有させる態様が好ましく用いられる。近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の有機系近赤外線吸収剤、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、硫化亜鉛、セシウム含有酸化タングステン等の無機系近赤外線吸収剤を用いることができる。
上記した近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合は、基材と金属メッシュとの間、もしくは基材に対して金属メッシュとは反対面に、基材に塗工形成して設けることができる。
近赤外線遮蔽機能を基材より視認側に付与する場合は、耐光性に優れる無機系近赤外線吸収剤を用いるのが好ましい。
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層、機能層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、基材、近赤外線遮蔽層、機能層、あるいは接着層に付与してもよいし、新たに透過率調整層を設けてもよい。
上述した色調調整機能を有する層及び可視光透過率調整機能を有する層をそれぞれ新たに設ける場合、これらの層は基材と金属メッシュとの間、もしくは基材に対して金属メッシュとは反対面に設けることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、ディスプレイに直接、あるいはガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板等の公知の高剛性基板を介して装着することができる。本発明のディスプレイ用フィルターには、ディスプレイあるいは高剛性基板に貼り付けるための接着層を設けるのが好ましい。上記高剛性基板としては、厚みが1〜3mm程度のガラス板が好ましい。
接着層は基材に対して金属メッシュとは反対面側の最表面に設けられる。接着層には、前述したように近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与することができる。また、接着層に、ディスプレイを衝撃から保護するための衝撃緩和機能を付与することは好ましい態様である。接着層に衝撃緩和機能を付与するには、接着層の厚みを50μm以上にすることが好ましく、100μm以上がより好ましく、上限の厚みは、接着層のコーティング適性を考慮して500μm以下が好ましい。
接着層には、公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明に係るディスプレイ用フィルターは、基材が1枚のみのプラスチックフィルムから構成されるのが好ましい。係るディスプレイ用フィルターの構成としては、粘着剤層/近赤外線遮蔽層/プラスチックフィルム/金属メッシュ/機能層を順に有する構成が好ましい。近赤外線遮蔽層は、色調調整機能を併せ持つのが好ましい。
図1は、上記構成のディスプレイ用フィルターの模式断面図である。図1において、ディスプレイ用フィルター1は、プラスチックフィルムからなる基材4の一方の面に金属メッシュ3が形成され、金属メッシュ3上に機能層2が直接に積層されており、基材4の他方の面には近赤外線遮蔽層5及び粘着剤層6が順次積層された構成になっている。
また本発明は、基材上に金属メッシュを有するディスプレイ用フィルターの製造方法であって、基材上に気相製膜法のみで金属薄膜を製膜する工程、フォトリソグラフ・エッチング法を施す工程、黒化処理を施す工程、を行うことで、金属メッシュの厚み(A)が1〜4μm、黒化層の厚み(B)が0.5〜1.5μm、金属メッシュと黒化層の厚みの差(A−B)が0.5μm以上である黒化層を有する金属メッシュを形成する、金属メッシュの線幅3〜9μm、線ピッチ50〜160μm、開口率88%以上であるディスプレイ用フィルターの製造方法である。フォトリソグラフ・エッチング法を施す工程と黒化処理を施す工程の順序については、前述しているように側面も黒化されるという観点から順序を判断することになる。本発明の製造方法によれば、モアレ発生を大幅に抑制し、透過率が高く、金属光沢がなく、表面抵抗値が低い、ディスプレイ用フィルターを得ることができる。
またすでに説明している通り、基材上に気相製膜法のみで金属薄膜を製膜する工程においては、金属として銅を用いることが好ましい。
また前述している通り、機能層を有するディスプレイ用フィルターを製造する際は、金属メッシュ上に、反射防止機能、防眩機能、及びハードコート機能の中から選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能層を、直接に塗工形成する工程を有することが好ましい。これにより1枚のみの基材からなるディスプレイ用フィルターを低コストで製造することができる。
また、金属メッシュ上に機能層を直接に塗工形成する工程については、金属メッシュの細線部上に形成された機能層の厚み(L)が0.5〜4μmとなるように塗工形成することが好ましい。