JP4849069B2 - 電磁波シールドフィルタ - Google Patents
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Description
従って、通常使用される構成においては、黒化処理面の外観は、この濡れ色が直接的に影響し、従来技術のように算術表面粗さRaを規定しただけでは、黒化処理面の黒化度を充分に出せないことがあった。
本発明に係る電磁波シールドフィルタは、黒化処理された導電性メッシュ層の黒化処理面について、全反射率と、全反射率に対する拡散反射率の比を上記特定の範囲とすることにより、濡れ色を呈するような構成で用いられる場合であっても、黒化度が充分で、光反射防止効果に優れた黒化処理面を有することができ、ディスプレイの画像の視認性を良好にすることができる。
2 メッシュ層
21 メッシュ状導電体層
22 黒化層
3 透明樹脂層
4 被着体
10 電磁波シールドフィルタ
ADF 確率密度関数
Adc 確率密度曲線
BAC 負荷曲線
ML 平均線
R 粗さ曲線
Rp (粗さ曲線の)最大山高さ
Rv (粗さ曲線の)最大谷深さ
先ず、図1は本発明による電磁波シールドフィルタ10について、基本的な形態を例示する断面図である。
図1(A)は、透明基材1上に導電性メッシュ層2(以下単に「メッシュ層」とも略称する)が積層されている構成である。また、図1(B)は、透明基材1上に導電性メッシュ層2が積層され、更に導電性メッシュ層2上に透明樹脂層3が積層された構成である。また、図1(C)のように、透明樹脂層3上に被着体層4が積層されていても良いし、図1(D)のように、透明基材1側に被着体層4が積層されていても良い。また、これら図1では、導電性メッシュ層2は、メッシュ状導電体層21と黒化層22とからなり、メッシュ層の黒化処理面はメッシュ状導電体層の面に形成した黒化層22の面として形成されている。なお、図1は、黒化処理面は導電体メッシュ層2の線条部分(ライン部)の表面(図面上方)及び両側面に形成した形態での説明図である。黒化処理面は、導電性メッシュ層の表裏面のうち少なくとも1面以上に設け、処理面の組み合わせは図2で後述するように各種ある。なお、上記被着体層4とは、例えば、シート状や板状或いは塗膜状の、反射防止フィルタ、近赤外吸収フィルタ等の各種光学フィルタ、保護フィルム、或いはディスプレイ自体の構成部品となる前面基板等の任意の機能を有する層である。
以上の例示は、本発明の電磁波シールドフィルタの態様を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
[透明基材]
透明基材1は、機械的強度が弱い銅メッシュ層を補強するための層である。従って、機械的強度と共に光透過性を有すれば、その他、耐熱性、絶縁性等も適宜勘案した上で、用途に応じたものを選択使用すれば良い。透明基材の具体例としては、例えば、透明樹脂等の有機材料からなる板及びシート(乃至フィルム。以下同様。)等、並びに、ガラス等の無機材料からなる板等である。
また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
また、透明基材は色素等で着色しても良い。着色により、近赤外線吸収、ネオン光吸収、色調整、外光反射防止等が図れる。例えば、樹脂の透明基材に対しては、近赤外線吸収剤、ネオン光吸収剤、色調整用色素、外光反射防止用色素等の従来公知の各種色素を添加すればよい。
導電性メッシュ層2は、電磁波遮蔽機能を担う層であり、またそれ自体は不透明性であるが、メッシュ状の形状で開口部を設けることで、電磁波遮蔽性能と光透過性を両立させている層である。本発明における導電性メッシュ層は、表面及び裏面のうち少なくとも1面以上を黒化処理による黒化処理面とし、且つ当該黒化処理面のJIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)が14%以下、より好ましくは12%以下で、且つ全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.8以上のものである。本発明においては、黒化処理面に上記特定の反射特性を付与するために、通常、導電性メッシュ層の本体とする金属箔等から形成した導電性のメッシュ状導電体層21の必要な面に、黒化処理によって黒化層22を形成し、該黒化層の露出面を黒化処理面とする。なお、黒化層以外にメッシュ層の形状的特徴であるメッシュ形状が維持される点で、適宜、後述する防錆層等のその他の層を導電性メッシュ層の構成層として設けても良い。電磁波シールドフィルタがディスプレイに用いられる形態において観察者が当該電磁波シールドフィルタを見る側の最表面に当該防錆層等のその他の層が形成される場合には、当該最表面の層が黒化処理面となり、上記特定の反射特性を有する必要がある。
メッシュ状導電体層21は、一般的には金属箔のエッチングで形成した物が代表的であるが、これ以外のものでも、電磁波シールド性能に於いては意義を有する。従って、本発明では、メッシュ状導電体層の材料及び形成方法は特に限定されるものでは無く、従来公知の光透過性の電磁波シールドフィルタに於ける各種メッシュ状導電体層を適宜採用できるものである。例えば、印刷法やめっき法等を利用して透明基材上に最初からメッシュ状の形状でメッシュ状導電体層を形成したもの、或いは、最初は透明基材上に全面に、めっき法で導電体層を形成後、エッチング等でメッシュ状の形状にしてメッシュ状導電体層としたもの等でも構わない。
また、メッシュ状導電体層となる金属層の表面は、当該面に黒化層を追加的に形成する場合、黒化層がより薄くても所望の微小凹凸や低反射特性を有することが容易となりやすい点から、表面粗さは、メッシュ状導電体層となる金属層の表面の輪郭曲線として粗さ曲線を採用した時に、当該輪郭曲線の十点平均粗さRzJIS(JIS B0601(1994年版))が1μm以上であることが好ましい。
黒化処理は上記導電性メッシュ層の面の光反射を防ぐためのものであり、黒化処理で形成された黒化処理面により、導電性メッシュ層面での外光反射による透視画像の黒レベルの低下を防いで、その黒レベルを向上させ、また、透視画像の明室コントラスト感を出すことによりディスプレイの画像の視認性を向上するものである。黒化処理面は、導電性メッシュ層のライン部(線条部分)の全ての面に設けることが好ましいが、本発明では表裏両面のうち少なくとも何れか1面以上は黒化処理面とする。本発明に係る電磁波シールドフィルタは、当該黒化処理面を有する側を、観察者が見る側としてのディスプレイの前面に設置される。
本発明における導電性メッシュ層の黒化処理面は、黒乃至は黒に近い色(褐色、紺色、深緑色等。これも含めて黒ということにする。)を呈し、JIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)が14%以下、好ましくは12%以下で、且つ全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.8以上であるという光学特性を有する。
また、本発明における黒化処理面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)は、0.8以上であるが、好ましくは、0.9以上、更に好ましくは0.95以上である。全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)は、1に近いほど全反射における拡散反射の成分が多くなり、鏡面反射の成分が少なくなる点から、所謂黒光りをすることなく、黒レベルを向上させることができる。
本発明に係る黒化処理面の反射特性を上記特定の反射特性とするための一態様として、黒化処理面の形状は、微小凹凸を有することが、拡散反射成分を増やす点から好ましい。上記特定の反射特性は、黒化処理面の微小凹凸の様々な特性に依存するものである。
図3で説明すれば、図3(A)が輪郭曲線としての粗さ曲線Rを示し、図中、符号MLは平均線である。なお、輪郭曲線としては、断面曲線、粗さ曲線、うねり曲線があるが、うねり曲線を断面曲線から差し引いた粗さ曲線Rを本発明では採用する。そして、図3(B)が図3(A)の粗さ曲線Rの輪郭曲線から算出された、粗さ曲線の確率密度関数ADFと、粗さ曲線の負荷曲線BAC(累積曲線)である。図中、Rpは粗さ曲線の最大山高さ、Rvは粗さ曲線の最大谷深さを示す。そして、図3(C)が、図3(B)を確率密度が図面上側正方向の縦軸となる様に時計回り逆方向に90度回転させたグラフである。なお、図3(C)中、水平軸のRpとRv間、確率密度の縦軸は、真数目盛りであり対数目盛りではない。確率密度関数ADFが示す形状は、図3(C)の様に細かく凸凹する形状なので、図4(A)の様に、これを滑らかな曲線化したのが確率密度曲線Adcである。表面を測定して得られる確率密度関数ADFは、図3(B)及び(C)の如く、棒グラフの様なギザギサなグラフとなるので、これを最小二乗法等によって滑らか確率密度曲線として、測定表面の微小凹凸の特徴を捉える。なお、確率密度関数を滑らかな曲線化するとは、表面の測定を無限回数繰り返せば、ギザギザしたグラフは平均化し、最終的には確率密度関数は滑らかな曲線に近づき、この最終的な曲線を1回乃至は少ない測定回数の結果から近似的に求めることに該当する。そして、図4(A)で示す確率密度曲線Adcの様に、その確率密度曲線のピーク付近の形状が、上に凸の曲線形状からなる黒化処理面が、図4(B)の様なピーク付近の形状が尖った形状で尖点を有し、ピークの頂点を通り縦軸に平行な直線に対して左右に位置する曲線がいずれも下に凸の曲線形状からなっている黒化処理面よりも、より優れた反射防止性能を与える。
上記のような確率密度関数の曲線形状は、多くは、例えば、当該微小凹凸が粗い凹凸に細かい凹凸が重畳した場合に得られる。
黒化層22は前述した黒化処理面を付与する為に設ける層であり、黒等の暗色を呈し、密着性等の基本的物性を満足するものであれば良く、公知の黒化層を適宜採用し得る。
従って、黒化層としては、金属等の無機材料、黒着色樹脂等の有機材料等を用いることができ、例えば無機材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物の金属化合物等の金属系の層として形成する。金属系の層の形成法としては、従来公知の各種黒化処理法を適宜採用できる。なかでも、めっき法による黒化処理は密着性、均一性、容易性等で好ましい。めっき法の材料は、例えば、銅、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン、スズ、クロム等の金属や金属化合物等を用いる。これらは、密着性、黒さ等の点でカドミウム等による場合よりも優れている。
例えば、銅からなるメッシュ状導電体層の表面の粗さが比較的大きくRzJISが1μm以上であるときは、黒色ニッケルめっきにより黒化層を形成することが好ましい。また、メッシュ状導電体層の表面の粗さが比較的小さくRzJISが1μm未満であるときは、平均粒子径1nm〜1μm程度の銅粒子や銅−コバルト合金粒子を用いたカソーディック電着法、或いは、アルカリ性溶液による平均粒子径1nm程度の酸化銅微粒子形成により黒化層を形成することが好ましい。
なお、メッシュ層2のメッシュ状としての形状は、任意で特に限定されないが、そのメッシュの開口部の形状として、正方形が代表的である。開口部の平面視形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、等の多角形、或いは、円形、楕円形などである。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は通常幅均一のライン状のライン部となり、通常は、開口部及びライン部は全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、開口率及びメッシュの非視認性の点で、開口部間のライン部の幅は5〜25μmが良い。また、開口部サイズは〔ライン間隔或いはラインピッチ〕−〔ライン幅〕であるが、この〔ライン間隔或いはラインピッチ〕で言うと150μm〜500μm、且つ開口率(開口部の面積の合計/メッシュ部の全面積)を80〜95%とするのが、光透過性と電磁波遮蔽性との両立性の点で好ましい。
なお、バイアス角度(メッシュのライン部と電磁波シールドフィルタの外周辺との成す角度)は、ディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレが出難い角度に適宜設定すれば良い。
なお、非メッシュ部の具体的大きさは使われ方によるが、額縁状でアース部や外枠とする場合、額縁の幅は15〜100mm程度で、なかでも30〜40mmとするのが一般的である。
メッシュ層2としては、必要に応じ適宜その他の層の形成、乃至は処理を施しても良い。例えば、錆びに対する耐久性が不十分な場合は、防錆層を設けると良い。防錆層は、また前述した黒化層もそうであったが、それがメッシュ層の形状的特徴であるメッシュ形状を維持する限り、メッシュ層に含まれるメッシュ層の構成層として本発明では捉える。
防錆層はメッシュ層の表面の錆び易い面に施せば良いが、黒化処理面上に更に施す場合は、施された後の黒化処理面(実際は防錆層面であるが)でも、本発明では表裏両面のうち少なくとも1面以上は、所望の反射特性を有する面とする。防錆層によるメッシュ層の被覆面は、表面だけ、裏面だけ、表裏両面、側面(両側或いは片側)だけ、表面と両側面、裏面と両側面、表裏両面と両側面等である。
また、クロメート処理は、該処理前に亜鉛めっきするのが、密着性、防錆効果の点で好ましい。また、防錆層中には、エッチングや酸洗浄時の耐酸性向上の為に、シランカップリング剤等のケイ素化合物を含有させることもできる。
なお、防錆層の厚さは通常0.001〜2μm程度、好ましくは0.01〜1μmである。
透明樹脂層3は、図1(B)の断面図で例示のように、導電性メッシュ層2による表面凹凸を埋めてメッシュ層側の表面を平坦化することにより、メッシュ層側で被着体と接着剤等で積層する場合に気泡抱き込み等を防いだり、メッシュ層を外力から保護したりする為に、必要に応じて設ける層である。なお、該保護の点では、この透明樹脂層は表面保護層でもある。また、図1(C)のように、透明樹脂層3は、被着体4と導電性メッシュ層2との間に介在し、両者を接着させる接着剤層として用いることもできる。この様な透明樹脂層3は、透明基材1上に積層した導電性メッシュ層2による凹凸表面に対して、樹脂を含む液状組成物を塗布等で施すことで形成できる。該液状組成物としては、透明な樹脂を含むものであれば特に限定は無く、公知の樹脂を適宜採用すれば良い。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等である。例えば、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂等であり、熱硬化性樹脂としては、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等であり、電離放射線硬化性樹脂としては紫外線や電子線で硬化するアクリレート系樹脂等である。なかでも、メッシュ層による凹凸を埋め易い点では、無溶剤或いは無溶剤に近い状態で塗工形成したりできる、電離放射線硬化性樹脂は好ましい樹脂である。
なお、上記被着体とは、例えば光学フィルタ層(フィルム、シート、板)、表面保護層(フィルム、シート、板)等である。光学フィルタ層の光学フィルタ機能としては、近赤外線吸収、反射防止(含む防眩)、色調調整(ネオン光吸収、色再現性向上)、外光反射防止等である。また、表面保護層の機能としては、防汚染、耐擦傷性等である。これらは、従来公知のものを適宜採用すれば良い。また、光学フィルタ層、表面保護層は透明樹脂層の被着体としてではなく、塗布等によってメッシュ層上、透明樹脂層上、光学フィルタ層の場合は別の光学フィルタ層上に形成することもできる。
なお、透明基材、透明樹脂層、透明接着剤層、被着体等の電磁波シールドフィルタを構成する樹脂中には、外光反射防止用色素、ネオン光吸収剤、色調整用色素、等の電磁波シールドフィルタに於いて公知の色素を適宜添加しても良い。
<実施例1>
まず、透明基材1として、連続帯状で無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)の表側とする面に、厚さ10μmの電解銅箔を、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いてドライラミネートして、連続帯状の銅貼積層シートを作製した。
次いで、上記銅貼積層シートの銅箔に対して、フォトリソグラフィー法を利用したエッチングで、メッシュ状に加工し、透明基材1上にメッシュ状導電体層21が形成されたメッシュ積層シートを作成した。
次いで、このメッシュ積層シートのメッシュ状導電体層側の面に対して、黒色ニッケルめっきによる黒化層22を形成する黒化処理を施して、導電性メッシュ層2の表面(及び両側面)に表1に示す反射特性の黒化処理面を有する、図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。なお、形成したメッシュの形状は、その開口部が正方形でライン部のライン幅25μm、ラインピッチ150μmである。また、メッシュ部の四辺全周は額縁状の非メッシュ部とした。
実施例1において電解銅箔を各々変更した他は、実施例1と同様にして、表1に示す反射特性の黒化処理面を有する図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。次いで、実施例1と同様にして、反射防止機能付きの電磁波シールドフィルタを作製した。
実施例1において電解銅箔を変更し、更に、黒色ニッケルめっきによる黒化層22を形成する代わりに、カソーディック電着めっき法により平均粒子径1nmの銅粒子を付着して黒化層22を形成した他は、実施例1と同様にして、表1に示す反射特性の黒化処理面を有する図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。次いで、実施例1と同様にして、反射防止機能付きの電磁波シールドフィルタを作製した。
実施例1において電解銅箔を変更し、更に、黒色ニッケルめっきによる黒化層22を形成する代わりに、カソーディック電着めっき法により平均粒子径0.1μmの銅−コバルト合金粒子を付着して黒化層22を形成した他は、実施例1と同様にして、表1に示す反射特性の黒化処理面を有する図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。次いで、実施例1と同様にして、反射防止機能付きの電磁波シールドフィルタを作製した。
実施例1において電解銅箔を変更し、更に、黒色ニッケルめっきによる黒化層22を形成する代わりに、カソーディック電着めっき法により平均粒子径0.2μmの銅−コバルト合金粒子を付着して黒化層22を形成した他は、実施例1と同様にして、表1に示す反射特性の黒化処理面を有する図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。次いで、実施例1と同様にして、反射防止機能付きの電磁波シールドフィルタを作製した。
実施例1において電解銅箔を変更し、更に、黒色ニッケルめっきによる黒化層22を形成する代わりに、カソーディック電着めっき法により平均粒子径1μmの銅粒子を付着し、その後更にコバルトめっきを行なって黒化層22を形成した他は、実施例1と同様にして、表1に示す反射特性の黒化処理面を有する図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。次いで、実施例1と同様にして、反射防止機能付きの電磁波シールドフィルタを作製した。
まず、透明基材1として、厚さ100μmで片面にポリエステル樹脂系プライマー層を形成した、連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。この透明基材のプライマー層上に、スパッタ法で、順次、厚さが0.1μmのニッケル−クロム合金層及び厚さが0.2μmの銅層を設けて導電処理層とした。該導電処理層面に、硫酸銅浴を用いた電解メッキ法で厚さが2.0μmの銅メッキ層を設け、導電処理層及び銅メッキ層からなる導電体層が透明基材上に接着剤層を間に介さずに直接形成された、銅貼積層シートを作製した。次いで、上記銅貼積層シートの銅箔に対して、フォトリソグラフィー法を利用したエッチングで、メッシュ状に加工し、透明基材1上にメッシュ状導電体層21が形成されたメッシュ積層シートを作成した。次いで、このメッシュ積層シートのメッシュ状導電体層側の面に対して、ピロ燐酸銅水溶液、ピロ燐酸カリウム水溶液、及びアンモニア水の混合溶液を用いた酸化により平均粒子径0.1μmの酸化銅微粒子を析出させる黒化処理を施して、導電性メッシュ層2の表面(及び両側面)に表1に示す反射特性の黒化処理面を有する、図1(A)の様な電磁波シールドフィルタ10を作製した。その他は、実施例1と同様にして、反射防止機能付きの電磁波シールドフィルタを作製した。
実施例1において電解銅箔を各々変更した他は、実施例1と同様にして、電磁波シールドフィルタを作製した。
先ず、実施例及び比較例の電磁波シールドフィルタについて、黒化処理面の特性と、性能評価結果を、表1に示す。
なお、黒化処理面の反射特性及び微小凹凸は、メッシュ層のメッシュ部の外周に在る非メッシュ部のメッシュ層表面の黒化処理面で評価した。また、光反射防止性能もメッシュ部の開口部の影響を削除できる点で、非メッシュ部の部分(但し、透明樹脂層を介して反射防止フィルムが積層され濡れ色となる内周部分)で行った。
黒化処理面のJIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(%)は、分光測色計(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−3600d)を反射モードに設定し、光源は標準の光D65、視野2°を用いて、検出器を、反射光のうち、拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCIモードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定した。また、黒化処理面のJIS Z8722による拡散光線反射率(%)は、同様に分光測色計を用いて、光源及び視野は同じくして、鏡面反射光を光トラップで吸収遮断することによって、検出器が反射光のうち拡散反射光のみの(積分)強度を測定するようなSCEモードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定した。
電磁波シールドフィルタの光反射防止性能の評価は、透明樹脂層及び光反射防止フィルムを積層した後の濡れ色となった状態で、黒化処理面側の全光線反射率(%)を、反射防止フィル側から測定した(表中「AR」)。全光線反射率の測定方法は、(1)における全光線反射率の測定方法と同様に行なった。濡れ色となった状態での全光線反射率(AR)は小さい方が好ましく、全光線反射率が5%未満である場合が、光反射防止性能として許容範囲である。
黒化処理面の微小凹凸は、微小凹凸の輪郭曲線に粗さ曲線を採用したときの、当該輪郭曲線の十点平均粗さRzJIS(JIS B0601(1994年版)、単位はμm)により評価した。また、参考値として、該微細凹凸の中心線平均粗さRa(JIS B0601、単位はμm)も合わせて測定した。
黒化処理面の微小凹凸に関し、微小凹凸の輪郭曲線に粗さ曲線を採用したときの、当該輪郭曲線の確率密度関数〔JIS B0601(2001年版)規定〕において、確率密度のピーク(頂上部)付近の形状が、該確率密度関数を滑らかにした曲線にて、確率密度を縦軸にとり且つ上方向にとったときに(横軸は粗さ曲線の凹凸の振幅値)、上に凸の曲線から成る形状となるか否かをみた。そして、図4(A)のように、ピーク付近の形状が上に凸の曲線からなる場合を「上に凸」、また図4(B)のように、ピーク付近の形状が尖った形状で尖点を有し、ピークの頂点を通り縦軸に平行な直線に対して左右に位置する曲線がいずれも下に凸の曲線形状からなっている場合を「下に凸」と略記した。
表1に示すように、黒化処理面のJIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)が14%以下で、且つ全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.8以上である各実施例はいずれも、これらの反射特性を満たさない各比較例に比べて、濡れ色となった状態での全光線反射率(AR)が小さく、より優れた光反射防止性能が得られた。実施例8〜10以外の実施例及び比較例は、表面の算術平均粗さRaでは、0.2〜1.0μmの範囲内で、従来ならばいずれも良好とされて来た範囲であるが、反射特性によって、性能差がある事が判明した。また、実施例8〜10により、従来ならば良好とされてきた表面の算術平均粗さRaの範囲外であっても、良好な光反射防止性能が得られることが明らかになった。
Claims (5)
- 透明基材上に、導電性メッシュ層を少なくとも有する電磁波シールドフィルタにおいて、当該導電性メッシュ層の少なくとも表裏面の何れか一面以上の面が黒化処理され、当該黒化処理面のJIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)が10.8%以下で、且つ全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.86以上1以下であることを特徴とする電磁波シールドフィルタ。
- 前記黒化処理面が微小凹凸を有し、該微小凹凸の輪郭曲線に粗さ曲線を採用したときに、当該粗さ曲線の十点平均粗さRzJIS(JIS B0601(1994年版))が2μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁波シールドフィルタ。
- 前記黒化処理面を有する導電性メッシュ層の当該黒化処理面上に、透明樹脂層が積層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルタ。
- 前記黒化処理面が微小凹凸を有し、該微小凹凸の輪郭曲線に粗さ曲線を採用したときの、該輪郭曲線の確率密度関数〔JIS B0601(2001年版)規定〕において、確率密度のピーク付近の形状が、確率密度を縦軸にとり且つ上方向にとり、粗さ曲線の凹凸の振幅値を横軸にとったときに、上に凸の曲線形状となることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルタ。
- 前記黒化処理面が、黒色ニッケルめっき、カソーディック電着めっき法による銅粒子付着、カソーディック電着めっき法による銅−コバルト合金粒子付着、コバルトめっき、酸化銅微粒子析出よりなる群から選ばれる黒化処理によって形成されたものであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルタ。
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