本発明のディスプレイ用フィルターは、光吸収部がストライプ状に複数配列された外光遮蔽層を含み、前記光吸収部は、高さが5〜50μm、幅が1〜10μm、ピッチが5〜50μmである。
図1は、光吸収部がストライプ状に複数配列された外光遮蔽層の平面図である。
図2は、本発明の1つの態様である、樹脂層内部にストライプ状の光吸収部が形成された外光遮蔽層の模式断面図(図1のA−A断面図)である。図2において、樹脂層3の内部に光吸収部2が形成されている。ここで、光吸収部2は樹脂層3に溝を形成し、この溝に光を吸収できる黒色物質等を充填して形成することができる。
光吸収部2の高さhは、5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。
光吸収部2の幅wは、1〜10μmであり、好ましくは2〜8μmである。
光吸収部2のピッチpは、5〜50μmであり、好ましくは5〜30μmである。
また、光吸収部2のアスペクト比(h/w)は、2〜10の範囲が好ましく、3〜8の範囲がより好ましい。
本発明の最大の特徴は、光吸収部の高さhを、従来の半分以下である、5〜50μmとすることにある。これにより、従来技術の問題点であった、コストや取り扱い性の課題を改善できるとともに、深い溝の形成および溝への黒色物質の充填等、光吸収部の製造工程での不利を回避することができる。
また、幅wおよびピッチpを適切な値(幅wを1〜10μm、ピッチpを5〜50μm)とすることで、高さhが5〜50μmの光吸収部であっても外光によるコントラスト低下を有効に抑制し、かつフィルターの透過率を維持して輝度を低下させない構成が実現できる。
従って、本発明により、外光によるコントラスト低下を有効に抑制し、かつコストおよび生産性に有利なディスプレイ用フィルターを提供することができる。
本発明において、光吸収部の形状は特に限定されず、例えば図2に示すように断面が矩形であっても、台形(図3)あるいは三角形(図4)であってもよい。
光吸収部の形状が台形及び三角形の場合のアスペクト比の計算には、底部の幅w(つまり、台形においては長い方の辺の長さ)を用いる。
また、本発明に係る外光遮蔽層の他の態様として、プラスチックフィルム上に光吸収部が形成されたものを例示することができる。係る外光遮蔽層は、プラスチックフィルム上に光吸収部を形成し、光吸収部と光吸収部の間の空間を樹脂等で埋設して製造することができる。この方法で製造された外光遮蔽層の模式断面図(図1のA−A断面図)を図5に示す。プラスチックフィルム4上に、光吸収部2が形成され、樹脂層5で光吸収部間が埋設されている。
本発明にかかる外光遮蔽層において、外光によるコントラスト低下を有効に抑制するという観点から、光吸収部の高さh、幅w、及びピッチpとの間には好ましい関係が存在する。この好ましい関係を満たすことは、本発明のディスプレイ用フィルターが外光によるコントラスト低下をより抑制するという点で、好ましい実施態様である。この実施態様について、以下に詳細に説明する。
ディスプレイを室内で観賞する場合、明所コントラストを低下させる原因となる外光は室内照明灯である。室内におけるディスプレイ、観賞者及び照明灯の位置関係を図19に示す。鑑賞者62は、ディスプレイ61から発せられる直進光DLを観賞するように位置し、照明灯63はディスプレイ61からの直進光DLに対して角度θの位置にある。照明灯63から角度θで入射する外光RLは、ディスプレイ61に当たって乱反射し、その一部が直進光(散乱直進光)SRLとして、ディスプレイ61から発せられる直進光DLと一緒に鑑賞者62に届く。ここで、ディスプレイ61から発せられる直進光DLに対して外光RLの散乱直進光SRLの比率が大きくなると明所コントラストが低下して鮮明な画像を観賞することができなくなる。従って明所コントラストの低下を防止するためには、外光RLがディスプレイ61に入射しないように外光遮蔽層で遮断する必要がある。
外光RLの入射角度θ(°)については、外光遮蔽層の遮蔽限界(入射角度θが小さい外光、即ちディスプレイに対して垂直に近い外光は遮蔽することができなくなる)、及び室内におけるディスプレイと照明灯の現実的な位置関係を考慮すると、外光RLの入射角を40度以上に設定するのが適当であり、より安全性を考慮すると35度以上に設定するのが好ましい。従って、本発明では、入射角度が40度以上、更には35度以上の外光を遮蔽するという発明コンセプトを基に、光吸収部の断面形状の高さh、幅w、及びピッチpの関係を導き出した。
入射角度θと同等以上の角度の外光を遮蔽するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w及びピッチpの関係は、下記式1のようになる。
(p−w)/h≦tanθ ・・・・式1
この関係式について図20を用いて説明する。図20において、入射角度θ以上の外光RLは、光吸収部2によって遮蔽される。このとき、tanθは(p−w)/hで表され、入射角度θと同等以上の外光RLの遮光は、上記式1を満足することによって達成される。
上記したように、入射角度40度以上の外光を遮蔽するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w、及びピッチpの関係は、式1のθを40度とすることによって、下記の関係式が導かれる。
(p−w)/h≦tan40°
(p−w)/h≦0.84
上記関係式から、高さhと幅wを予め設定したときのピッチpは、以下のようになる。
p≦0.84×h+w
ここで、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは17.6μm以下となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは33.2μm以下となる。
本発明は上記したように、入射角度が35度以上の外光を遮蔽するのがより好ましく、式1のθに35度を入れると、
(p−w)/h≦tan35°
(p−w)/h≦0.70
p≦0.70×h+w
となる。上記式で、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは15.5μm以下となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは29μm以下となる。
上述の関係は、図20に示すように断面形状が矩形の光吸収部を用いた場合であり、光吸収部が図4に示すような断面形状が3角形のものを用いた場合について、図21を用いて以下に説明する。図20と同様に、入射角度θ以上の外光RLは、光吸収部2によって遮蔽される。このとき、tanθは(p−w/2)/hで表され、入射角度θと同等以上の外光RLの遮光は、下記式2を満足することによって達成される。
(p−w/2)/h≦tanθ ・・・・式2
入射角度40度以上の外光を遮蔽するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w、及びピッチpの関係は、式2のθを40度とすることによって、下記の関係式が導かれる。
(p−w/2)/h≦tan40°
(p−w/2)/h≦0.84
上記関係式から、高さhと幅wを予め設定したときのピッチpは、以下のようになる。
p≦0.84×h+w/2
ここで、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは15.1μm以下となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは29.2μm以下となる。
本発明は上記したように、入射角度が35度以上の外光を遮蔽するのがより好ましく、式2のθに35度を入れると、
(p−w/2)/h≦tan35°
(p−w/2)/h≦0.70
p≦0.70×h+w/2
となる。上記式で、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは13μm以下となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは25μm以下となる。
光吸収部の断面形状が、図3に示すような台形の場合は、高さh、幅w、及びピッチpの関係は、台形のテーパー角度によって変わってくるが、テーパー角度がいずれの場合も上述した矩形の場合の関係式1と三角形の場合の関係式2と間に位置する。従って、光吸収部の断面形状が台形の場合は、安全性を考慮して、上記の光吸収部の断面形状が三角形の関係式を適用するのが好ましい。
一方、外光遮蔽層は外光を遮蔽するという利点がある反面、視野角を小さくするという不利益も同時に存在する。従って視野角の確保と外光遮蔽とを同時に満足することが要求される。以下、視野角と光吸収部のサイズ仕様との関係について説明する。
図22は、ディスプレイに対する鑑賞者の視野角を説明した模式概念図である。図22において、一点鎖線はディスプレイ61の表示画面の中心線CLであり、鑑賞者62の目線を上記中心線CLの延長線上に設定すると、ディスプレイに対する鑑賞者の最大視野角は、中心線CLとディスプレイ61の表示画面の上端もしくは下端との角度α(最大視野角α)となる。
ここで、最大視野角α(°)は、ディスプレイのサイズとディスプレイからの鑑賞者の距離によって変化する。従って、最大視野角を設定するに際し、室内観賞条件を、大サイズのディスプレイを近距離で観賞するという条件を採用した。具体的には、ディスプレイのサイズを65インチ(表示画面の垂直方向長さ870mm)、ディスプレイから鑑賞者の距離を1.5mに設定した。この条件で、最大視野角αを算出すると16.2度となる。上記室内観賞条件よりディスプレイのサイズが小さい場合、あるいはディスプレイと鑑賞者の距離が大きい場合は、最大視野角αは16.2度より小さくなる。逆に鑑賞者62の目線位置が垂直方向に上または下に移動した場合には、最大視野角αは大きくなる。従って、本発明では安全性を考慮して、最大視野角αを20度に設定した。
即ち、視野角が20度までは、ディスプレイの表示画面が視認できるように、外光遮蔽層が視線を遮らないようにすることが好ましい。図23は、視野角と、光吸収部の断面形状の高さh、幅w、及びpの関係を示した模式概念図である。
視野角αを確保するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w及びピッチpの関係は、下記式3のようになる。
(p−w)/h≧tanα ・・・・式3
図23において、tanαは(p−w)/hで表され、式3を満足することによって最大視野角αを確保することができる。従って、最大視野角20度を確保するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w、及びピッチpの関係は、式3のαに20度を入れることによって、下記の関係式が導かれる。
(p−w)/h≧tan20°
(p−w)/h≧0.36
上記関係式から、高さhと幅wを予め設定したときのピッチpは、以下のようになる。
p≧0.36×h+w
ここで、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは10.4μm以上となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは18.8μm以上となる。
本発明においては、更に最大視野角αを25度とするのが好ましく、式3のαに25度を入れると、
(p−w)/h≧tan25°
(p−w)/h≧0.47
p≧0.47×h+w
となる。上記式で、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは12.1μm以上となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは22.1μm以上となる。
上述の関係式3は、図23に示すように矩形の断面形状の光吸収部を用いた場合であり、光吸収部が図4に示すような断面形状が3角形のものを用いた場合について、図24を用いて以下に説明する。図24において、視野角αを確保するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w及びピッチpの関係は、下記式4のようになる。
(p−w/2)/h≧tanα ・・・・式4
図24において、tanαは(p−w/2)/hで表され、式4を満足することによって最大視野角αを確保することができる。従って、最大視野角20度を確保するための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w、及びピッチpの関係は、式4のαに20度を入れることによって、下記の関係式が導かれる。
(p−w/2)/h≧tan20°
(p−w/2)/h≧0.36
上記関係式から、高さhと幅wを予め設定したときのピッチpは、以下のようになる。
p≧0.36×h+w/2
ここで、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは7.9μm以上となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは14.8μm以上となる。
本発明においては、更に最大視野角αを25度とするのが好ましく、式4のαに25度を入れると、
(p−w/2)/h≧tan25°
(p−w/2)/h≧0.47
p≧0.47×h+w/2
となる。上記式で、高さhを15μm、幅wを5μmに設定すると、ピッチpは9.6μm以上となり、また、高さhを30μm、幅wを8μmに設定すると、ピッチpは18.1μm以上となる。
光吸収部の断面形状が、図3に示すような台形の場合は、高さh、幅w、及びピッチpの関係は、台形のテーパー角度によって変わってくるが、テーパー角度がいずれの場合も上述した矩形の場合の関係式1と三角形の場合の関係式2と間に位置する。従って、光吸収部の断面形状が台形の場合は、安全性を考慮して、上記の光吸収部の断面形状が三角形の関係式を適用するのが好ましい。
上述したように、外光遮蔽層は外光遮蔽と視野角の確保とを両立させる必要があり、本発明においては、外光遮蔽と視野角の確保とを両立させるための、光吸収部の断面形状の高さh、幅w及びピッチpの好ましい関係を導き出した。
即ち、光吸収部の断面形状が矩形の場合は下記関係式5を満足するのが好ましく、光吸収部の断面形状が三角形及び台形の場合は下記関係式6を満足するのが好ましい。
tanα≦(p−w)/h≦tanθ ・・・・・・式5
tanα≦(p−w/2)/h≦tanθ ・・・・式6
上記式5及び6において、αは視野角の確保の観点から20度が好ましく、25度がより好ましい。θは外光遮蔽の観点から40度が好ましく、35度がより好ましい。
なお、少なくとも隣合う光吸収部の断面形状のh、w、pが、上記式5又は式6を満たせば好ましく、さらに好ましくは全ての隣合う光吸収部の断面形状のh、w、pが上記式5または式6を満たす場合である。
以下、本発明に係る光吸収部について詳細に説明する。
本発明の光吸収部には、マトリックス組成物に着色剤を分散あるいは溶解したものを用いることができる。
マトリックス組成物としては、紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する樹脂、オリゴマー、モノマーおよびこれらの混合体、熱硬化性組成物等の硬化性樹脂を用いることができる。特に電離放射線硬化組成物は、硬化速度が早く生産性に優れ、かつ外光遮蔽層を被覆する際の塗布組成物およびそれに使用する溶剤などに対する耐久性に優れるので好ましい。
電離放射線硬化組成物としては、例えば、電離放射線硬化性の樹脂、オリゴマー、モノマー、及びこれらの混合体を含むことができ、上記の樹脂、オリゴマー、モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。
電離放射線硬化組成物として好ましく用いられる、上記の分子内にエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、具体的には1〜3個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、4個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物などを挙げることができるが、ストライプ形状の精度、耐傷性などを考慮するとその主成分として多官能アクリレートを用いるのが好ましい。
このような多官能アクリレートとしては、1分子中に3(より好ましくは4、更に好ましくは5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体もしくはオリゴマー、プレポリマーが好ましく用いられる(但し、本明細書において「・・・(メタ)アクリ・・・」とは、「・・・アクリ・・・又は・・・メタアクリ・・・」を略して表示したものである。)。このような化合物としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーの使用割合はマトリックス組成物総量に対して50〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
マトリックス組成物としては、上記化合物以外に、剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させたり、塗液の粘度を調整する目的で、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体を併用するのが好ましい。
1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
1分子中に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、マトリックス組成物総量に対して10〜40質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。
マトリックス組成物に好ましく用いられる電離放射線硬化組成物を硬化するために用いる電離放射線としては、例えば紫外線を用いる場合などは、電離放射線硬化組成物に従来公知の光重合開始剤を含有させるのが好ましい。
また、マトリックス組成物には、改質剤を含有させることができる。改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線または熱による反応を損なわない範囲内で構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じて特性を改良することができる。
マトリックス組成物として、市販されている多官能アクリル系硬化塗料を用いることができる。かかる硬化塗料としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)、JSR株式会社;(商品名“デソライト”シリーズ)などの製品を利用することができる。
光吸収部中の着色剤の含有は、上述したように着色剤を分散または溶解させたマトリックス組成物を用いることで可能である。このような光吸収部中の着色剤としては、各種顔料や染料を用いることができる。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンや鉄等の黒色金属粒子等が挙げられる。着色剤の含有量は、マトリックス組成物100質量%に対して1〜50質量%の範囲が適当である。
前述したように本発明の外光遮断層は、光吸収部がストライプ状に複数配列した層である。そして該外光遮断層は、樹脂層内部に光吸収部を形成したものや、プラスチックフィルム上に光吸収部を形成し光吸収部間を樹脂層で埋設したものが挙げられる。樹脂層内部に光吸収部を形成した場合の樹脂層(例えば図2の樹脂層3)や、後述のプラスチックフィルム上に光吸収部を形成し光吸収部間を樹脂層で埋設した場合の樹脂層(例えば図5の樹脂層5)としては、紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いることができる。好ましくは電離放射線硬化性樹脂が用いられる。
係る電離放射線硬化性樹脂としては、反応性プレポリマー(エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等)、反応性モノマー(ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリテート等)が適宜選択される。用いる電離放射線の種類によっては、光重合開始剤を添加することが好ましい。
本発明においては、外光遮断層(プラスチックフィルム上に光吸収部を形成し光吸収部間を樹脂層で埋設した外光遮蔽層)、及び後述する光学フィルムに、プラスチックフィルムが用いられる。
かかるプラスチックフィルムとしては特に限定されず、ポリエステル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアミド、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリウレタンなどから構成されるプラスチックフィルムを好ましく用いることができるが、特にポリエステルフィルムが好ましい。
ポリエステルフィルムのポリエステルとしては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、この場合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のプラスチックフィルムであることが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。
なお結晶化度は、密度勾配法(JIS−K7112(1980))やラマンスペクトル分析法により得ることができる。
またプラスチックフィルムとして、上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
また、本発明で用いられるプラスチックフィルムは、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができ、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
本発明の目的用途であるディスプレイ用に用いる場合には、プラスチックフィルム中には粒子などを含有しない方が内部散乱などがなく透明性などの光学特性の点から好ましい。
プラスチックフィルムの厚みは、特に限定するものでは無いが機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μm、特に好ましくは50〜200μmである。
プラスチックフィルム中には本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
特に本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイ用として使用する場合には、色補正や近赤外カット機能を有する染料を用いるためにプラスチックフィルムには紫外線カット機能を有するのが好ましく、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが380nm〜390nmでの紫外線カット性、色調などの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種で用いても良いし、2種以上併用しても良い。またHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤の併用はより好ましい。
紫外線吸収剤として好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これら紫外線吸収剤として働く化合物の添加量は、プラスチックフィルム中に0.5〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%含有させるのが好ましい。
また、本発明のディスプレイ用フィルターに更に優れた耐光性を付与するため、プラスチックフィルム中には紫外線吸収剤とともにシアノアクリレート系4量体化合物を併用することが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物はプラスチックフィルム中に0.05〜2重量%含有させることが好ましい。
シアノアクリレート系4量体化合物とは、シアノアクリレートの4量体を基本とする化合物であり、例えば1,3−ビス(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ)−2、2−ビス−(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシメチルプロパン)などを例示することができる。シアノアクリレート系4量体化合物と紫外線吸収剤を併用する場合には、前述の紫外線吸収剤はプラスチックフィルム中に0.3〜3重量%添加するのが好適である。
上記の紫外線吸収剤添加による本発明のディスプレイ用フィルターに用いるプラスチックフィルムは、波長380nmでの透過率が5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下であり、これにより本発明のディスプレイ用フィルターを特にプラズマディスプレイ用部材に適用した場合、紫外線からプラスチックフィルムや染料色素などを保護することができる。
上記の透過率は、分光光度計U−3410((株)日立製作所製)に直径60mmの積分球130−063((株)日立製作所製)及び10度傾斜スペーサーを取り付けた状態とすることで、波長380nmの透過率を求めることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターに用いられるプラスチックフィルムは、前述した光吸収部、後述する光学機能層、導電層、近赤外線遮蔽層との密着性(接着強度)を強化するための下引き層(プライマー層)を設けておくのが好ましい。下引き層はプラスチックフィルムの製膜中に塗布するインラインコーティング法によるのが経済性の点から好ましく、ポリエステル共重合体、アクリル共重合体、各種ウレタン、メラミン、ポリアミド、エポキシなどから選択することができ、これらを公知の方法で架橋剤などを添加して接着性向上や耐溶剤性向上などの特性を賦与することができる。
図2および図5で示した外光遮蔽層1を含むディスプレイ用フィルターの構成例を、それぞれ図6(図2の構成の外光遮断層1を有するディスプレイ用フィルターの構成例)および図7(図5の構成の外光遮断層1を有するディスプレイ用フィルターの構成例)に示す。
図6の構成例のディスプレイ用フィルターにおいて、樹脂層3内に光吸収部2がストライプ状に平行に複数配列された外光遮蔽層1と、プラスチックフィルム6に光学機能層7を有する光学フィルム8とが接着層9を介して貼合されている。そして外光遮蔽層1の光吸収部2の側は、光学フィルム8のプラスチックフィルム6が向き合うように貼合される。
かかるディスプレイ用フィルターは、光学機能層7が観賞側となるようにして、ディスプレイパネルに接着層10を介して直接あるいはガラス板やプラスチック樹脂板を介して装着される。
図7の構成例のディスプレイ用フィルターにおいて、プラスチックフィルム4に光吸収部2がストライプ状に平行に複数配列された外光遮蔽層1と、プラスチックフィルム6に光学機能層7を有する光学フィルム8とが接着層9を介して貼合されており、かかる貼合は、外光遮蔽層1の樹脂層5と光学フィルム8のプラスチックフィルム6が向き合うように、接着層9を介して貼合される。
かかるディスプレイ用フィルターは、光学機能層7が観賞側となるようにディスプレイパネルに接着層10を介して直接あるいはガラス板やプラスチック樹脂板を介して装着される。
なお本発明のディスプレイ用フィルターは、図6や図7の構成例に限定されず、例えば図6、7の構成例のディスプレイ用フィルターにおいて、外光遮蔽層1を反転(上下逆転)させて、光学フィルム8と貼合してもよい。
本発明のディスプレイ用フィルターを構成する光学機能層は、反射防止機能、ハードコート機能、及び防眩機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能層であることが好ましい。以下、光学機能層について詳細に説明する。
本発明の光学機能層は、単一層であっても複数層で構成されていてもよく、また防汚機能等の他の機能を併せ持った層であってもよい。
反射防止機能を有する層(反射防止層)は、ディスプレイの画像表示に影響を与える蛍光灯などの外光の反射や映り込みを防止するものである。反射防止層は、表面の視感反射率が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に以上3%以下であることが好ましい。また、視感反射率に下限は特になく、0%であることが最も好ましいが、視感反射率は0.05%程度であれば十分である。ここで視感反射率は、分光光度計等を使用して可視領域波長(380〜780nm)の反射率を測定し、CIE1931システムに準じて計算された視感反射率(Y)である。
このような反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が視認側になるように2層以上積層したものを用いることが好ましい。高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7の範囲が好ましく、特に1.55〜1.69の範囲が好ましい。低屈折率層の屈折率は1.25〜1.49の範囲が好ましく、特に1.3〜1.45の範囲が好ましい。
高屈折率層を形成する材料としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを重合硬化させたもの、あるいはシリコーン系、メラミン系、エポキシ系の架橋性樹脂原料を架橋硬化させたもの等の有機系材料、酸化インジウムを主成分としこれに二酸化チタンなどを少量含ませたもの、あるいはAl2 O3 、MgO、TiO2 等の無機系材料が挙げられる。これらの中でも、有機系材料が好ましく用いられる。以下に本発明の高屈折率層の好ましい態様を説明する。
本発明において、高屈折率層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、含リン系樹脂、含スルフィド樹脂、含ハロゲン樹脂などの樹脂成分を単体または混合系で用いることが出来るが、特に、硬度と耐久性などの点から、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂を用いるのが好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点から、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリレート系樹脂は、活性エネルギー線照射によって容易にラジカル重合が起こり、形成される膜の耐溶剤性や硬度が向上するので好ましい。
かかる(メタ)アクリレート系樹脂として、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
高屈折率層には、更にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(モノマー)を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
高屈折率層には、塗布した樹脂成分の硬化を進めるために開始剤を含有させてもよい。該開始剤としては、塗布した樹脂成分を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知の各種光重合開始剤が使用可能である。
かかる光重合開始剤としては、具体的には、ソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイド等のサルファイド類や、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体や、ヒドラゾン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、ベンゼンジアゾニウム塩等のジアゾ化合物や、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン等の芳香族カルボニル化合物や、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、D−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、p−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピル等のジアルキルアミノ安息香酸エステルや、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物や、9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジン等のアクリジン誘導体や、9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジン等のフェナジン誘導体や、6,4’,4”−トリメトキシ−2、3−ジフェニルキノキサリン等のキノキサリン誘導体や、2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体、2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリフェニルピリリウム四弗化ホウ素塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
また、高屈折率層には、上記開始剤の酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物や、芳香族アミン化合物等の不揮発性のものであれば、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が適切である。
また、高屈折率層には、金属酸化物微粒子を含有させてもよい。これによって帯電防止効果が得られる。金属酸化物微粒子としては錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が好ましく、より好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)である。
かかる金属酸化物粒子は、平均粒子径(BET法により測定される非表面積(JIS R1626:1996年)に基づく球相当径分布から計算される算術平均粒子径(JIS Z8819−1:1999年およびZ8819−2:2001年))が0.5μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは0.001〜0.3μm、更に好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が0.5μmを超える場合、高屈折率層の透明性を低下させることがある。また該平均粒子系は小さい程好ましいものの、0.001μm未満の場合は、該粒子が凝集し易くヘイズ値が増大する場合がある。なお金属酸化物粒子の含有量は、高屈折率層を構成する樹脂成分100質量%に対して0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
更に、高屈折率層には、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有することができる。
高屈折率層の厚みは、0.01〜20μmの範囲が好ましく、0.05〜10μmの範囲がより好ましい。
反射防止層を構成する低屈折率層は、含フッ素ポリマー、(メタ)アクリル酸の部分フッ素化アルキルエステルまたは完全フッ素化アルキルエステル、含フッ素シリコーン等の有機系材料、MgF2 、CaF2 、SiO2 等の無機系材料で構成することができる。以下に低屈折率層の好ましい態様を例示する。
低屈折率層の1つの好ましい態様として、MgF2やSiO2等の薄膜を真空蒸着法やスパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する方法、或いはSiO2ゾルを含むゾル液からSiO2ゲル膜を形成する方法等が挙げられる。
低屈折率層の他の好ましい態様として、シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーを主成分とする構成を採用することができる。なお、ここで言う「結合」とは、シリカ系微粒子のシリカ成分とマトリックスのシロキサンポリマーが反応して均質化している状態を意味する。シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーは、該シリカ系微粒子の存在下、多官能性シラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応によって、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。
かかる多官能性シラン化合物としては、多官能性フッ素含有シラン化合物を含むことが低屈折率化、防汚性の点から好ましく、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどの3官能性フッ素含有シラン化合物、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性フッ素含有シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが、より好ましい。
上記多官能性シラン化合物として、多官能性フッ素非含有シラン化合物を用いることができる。かかる多官能性フッ素非含有シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点からビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが、より好ましい。
また、上述のシリカ系微粒子としては、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に好ましくは、平均粒子径1nm〜70nmである。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。
さらに、かかるシリカ系微粒子の中でも、内部に空洞を有する構造のものが、屈折率を低下させるために、特に好ましく使用される。
かかる内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。このような例としては例えば、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、微粒子内部の空洞の占める体積、すなわち微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。空隙率は、例えば、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。また、該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるのが好ましく、1.20〜1.35であるのがより好ましい。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、特許第3272111号公報等の一般に市販されているものを挙げることができる。
低屈折率層の厚みは、0.01〜1μmの範囲が好ましく、0.02〜0.5μmの範囲がより好ましい。
防眩機能を有する層(防眩層)は、画像のギラツキを防止するものであり、防眩層表面に微小な凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩層としては、例えば、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させたもの、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させたものなどが用いられる。なお防眩層は、ヘイズ値(JISK 7136:2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。防眩層の厚みは、0.01〜20μmが好ましい。
本発明の機能層として、反射防止機能と防眩機能を併せ持つ層を用いることは好ましい態様の1つである。
また本発明の機能層は、以下のハードコート機能を単独で用いることもできるが、ハードコート機能と反射防止機能あるいは防眩機能を併せ持つのも好ましい態様の1つである。
ハードコート機能を有する層(ハードコート層)は、傷防止のために設けられる。ハードコート層は硬度が高いことが好ましく、JISK5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度が1H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得る。
また、反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム(登録商標)”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール(登録商標)”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC(登録商標)”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス(登録商標)”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー(登録商標)”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD(登録商標)”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
ハードコート層形成組成物を構成するアクリル化合物の代表的なものを例示すると、1分子中に3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる混合物を主たる構成成分とし、活性エネルギー線硬化または熱硬化によって得られるハードコート層が、硬度、耐摩耗性および可撓性に優れている点で好ましく用いられる。(メタ)アクリロイルオキシ基が多すぎる場合には、単量体は高粘度となり取り扱いし難くなり、また、高分子量とならざるを得なくなって塗布液として用いることが困難となるので、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基は好ましくは10個以下である。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体およびプレポリマーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。特にこれらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物は、後述するイソシアネートとの併用により、ハードコート層と隣接層との接着性を向上させることができるので特に好ましい。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して20〜90質量%が好ましく、より好ましくは30〜80質量%、最も好ましくは30〜70質量%である。
上記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して20質量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で不十分な場合がある。また、上記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して90質量%を超える場合は、硬化による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招く場合がある。
また、これらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、最も好ましくは30〜60質量%である。少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して10質量%未満の場合には、ハードコート層と隣接層との接着性を向上させる効果が小さい場合がある少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合がハードコート層形成組成物総量に対して80質量%を超える場合は、ハードコート層内の架橋密度が低下して、硬度が低下する傾向がある。
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
また、分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど;
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど;
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど;
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど;
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および;
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−およびi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合がハードコート層形成組成物総量に対して50質量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる場合がある。また、その1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する使用割合がハードコート層形成組成物総量に対して10質量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材フィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合がある。
本発明において、ハードコート層形成組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート層形成組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成組成物総量に対して0.01〜10質量%が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また220℃以上の高温で熱硬化させる場合には、熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
本発明におけるハードコート層形成組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有していることが好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、水添MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の少なくとも2量体以上のものが挙げられる。これらポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
これらのポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体は、前記したハードコート層形成組成物に混合されて塗布される。上記ポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量は、接着性、表面硬度、耐湿熱性および虹彩模様低減の点で、ハードコート層形成組成物に対し、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。配合量が0.5質量%未満の場合には、接着性向上効果が不足したり、虹彩模様の低減が不十分な場合があり、また配合量が50質量%を超えると 表面硬度が低下する場合がある。
上記ポリイソシアネートを添加したハードコート層形成組成物には、その硬化効率を高める目的で有機金属触媒を含有させることも好ましい。
有機金属触媒は、特に限定されるものではなく、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機4A族元素(チタン、ジルコニウムまたはハフニウム)化合物などが挙げられるが、安全性を考慮した場合、非錫系金属触媒である有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および、有機チタン化合物から選ばれたものが好ましく適用される。有機錫化合物としては、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウリレートなどのジブチル錫脂肪酸塩、ジオクチル錫ジラウリレートなどのジオクチル錫脂肪酸塩が例示できる。
有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ハフニウム化合物、有機チタン化合物としては、これらの金属のオルトエステルとβ−ケトエステル(βジケトン)の反応生成物が例示され、具体的にはジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、アルミニウムテトラ−n−プロポキシド、アルミニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムテトラ−n−ブトキシドなどの金属オルトエステルと、アセチルアセトン、メチルアセテート、エチルアセトアセテート、n−プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどのβケトエステル(βジケトン)との反応生成物を挙げることができる。金属オルトエステルとβジケトエステル(βジケトン)の混合モル比率は4:1〜1:4程度が好ましく、より好ましくは2:1〜1:4である。4:1より金属オルトエステルが多い場合は触媒の反応性が高すぎてポットライフが短くなりやすく、1:4よりβジケトエステルが多い場合は触媒活性が低下するため好ましい態様では無い。本発明における有機金属系触媒のハードコート組成物中の含有量は0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。0.001質量%より少ない場合には触媒添加効果が低く、10質量%より多くすることは経済的見地から好ましくない。
上記した組成物の好ましい態様としては、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物10〜80質量%、イソシアネート化合物1〜30質量%および必要に応じて有機金属系触媒0.001から10質量%の範囲とするのが望ましい。さらに必要に応じて1〜2個のエチレン性不飽和結合を有する単量体を50質量%以下添加しても良い。
本発明において、ハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤などを用いることができる。
シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基が付加されたものが好ましく、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
またハードコート層上にさらに積層膜を設ける場合には、接着性を阻害しないアクリル系レベリング剤を適用するのが好ましい。このようなレベリング剤としては「ARUFON−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製)などを好ましく用いることができる。レベリング剤の添加量はハードコート形成組成物総量に対し、0.01〜5質量%の範囲とするのが望ましい。
本発明で用いられる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200℃以上に加温された空気による熱が好ましく、さらに好ましくは200℃以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
ハードコート層の厚さは、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。ハードコート層の厚さが0.1μm未満の場合には十分硬化していても薄すぎるために、表面硬度が十分でなく、傷が付きやすくなる傾向にある。一方、ハードコート層の厚さが20μmを超える場合には、折り曲げなどの応力により、硬化膜にクラックが入りやすくなる傾向にある。
ハードコート層には、前述した反射防止層を構成する高屈折率層としての機能を付与することができる。ハードコート層の高屈折率化は、ハードコート層形成用樹脂組成物中に高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することにより、あるいは高屈折率成分の分子や原子を含んだ樹脂を用いることにより図られる。
前記高屈折率を有する超微粒子は、その粒径が5〜50nmで、屈折率が1.65〜2.7程度のものが好ましく、具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2 O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等の微粉末が挙げられる。
前記屈折率を向上させる樹脂に含まれる分子及び原子としては、F以外のハロゲン原子、S、N、Pの原子、芳香族環等が挙げられる。
また、ハードコート層に反射防止機能あるいは防眩機能を付与することができる。
反射防止機能を有するハードコート層の表面の視感反射率としては5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下であることが好ましい。また、視感反射率に下限は特になく、0%であることが最も好ましいが、視感反射率は0.05%程度であれば十分である。このハードコート層は、例えば、特開平1−197570号公報、特開2001−316604号公報に記載されているようにフッ素含有化合物を用いることによって形成することができる。
防眩機能を有するハードコート層は、例えば、上述したハードコート層形成組成物にシリカ等の微粒子を含有することによって形成することができる。
さらに、本発明のディスプレイ用フィルターには、上述した機能層とは別の機能層を設けることも好ましく、例えば近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与することも好ましい。
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近赤外線遮蔽機能は、プラスチックフィルムに近赤外線吸収色素や顔料を混錬することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。あるいは、後述する接着層に近赤外線遮蔽機能を持たせてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収色素や顔料を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。本発明においては、近赤外線吸収色素や顔料を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは接着層に上記近赤外線吸収色素や顔料を含有させる態様が好ましく用いられる。近赤外線吸収色素としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の公知の色素が挙げられる。
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、プラスチックフィルム、近赤外線遮蔽層、接着層に付与してもよいし、あるいは新たに透過率調整層を設けてもよい。
本発明のディスプレイ用フィルターには、接着層を設けることができる。かかる接着層としては、外光遮蔽層と上記した光学機能層が積層されたプラスチックフィルム(光学フィルム)とを貼り合わせるための接着層、あるいはディスプレイ用フィルターをディスプレイに貼り付けるための接着層等が挙げられる。接着層には、前述したように近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与することができる。
また、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに貼り付けるための接着層に、ディスプレイを衝撃から保護するための衝撃緩和機能を付与することは好ましい態様である。接着層に衝撃緩和機能を付与するには、接着層の厚みを50μm以上にすることが好ましく、100μm以上にすることが好ましい。上限の厚みは、接着層のコーティング適性を考慮して2000μm以下が好ましい。
接着層には、公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、光学機能層の上に更に防汚層を設けることができる。防汚層は、ディスプレイ用フィルターに人が指で触ることによって油脂性物質が付着するのを防止したり、大気中のごみや埃が付着するのを防止したり、あるいはこれらの付着物が付着しても除去しやすくするための層である。かかる防汚層としては、例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚さは、1〜10nmの範囲が好ましい。
本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用する場合は、更に導電層を設けるのが好ましい。導電層は、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽するための層であり、金属薄膜や導電性メッシュ等を用いることができる。導電層の面抵抗値は、低い方が好ましく、10Ω/□以下が好ましく、5Ω/□以下がより好ましく、特に3Ω/□以下が好ましい。面抵抗の下限値は0.01Ω/□程度である。導電層の面抵抗値は、4端子法により測定することができる。
本発明において、導電層として導電性メッシュが好ましく用いられる。導電性メッシュは、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜あるいは導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層に比べて、低い面抵抗値が得られるという利点がある。特に、導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層では本発明が所望する面抵抗値が得られず、スパッタ法や真空蒸着法等によって金属薄膜を形成するためには大がかりな装置が必要であり、高い生産性が得られないという問題がある。
また、導電層は光学フィルムを構成するプラスチックフィルムと光学機能層との間に設けるのが、層構成の簡素化、生産コストの低減、及び後述するレーザーによる電極の取り出しの容易性の観点から好ましい。上記の態様においても、導電層上に積層される光学機能層との密着性(接着力)の観点から、導電性メッシュが好ましい。導電層上に光学機能層を塗工形成するのが生産性の観点から好ましいが、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜の上に組成の異なる光学機能層を塗工形成した場合、密着性が不十分となり光学機能層が剥離することがある。
これに対して導電性メッシュは、上記した10Ω/□以下の面抵抗値が容易に得られ、また導電性メッシュの開口部を通して光学機能層と基材のプラスチックフィルムとが接するので、光学機能層とプラスチックフィルムとの密着性も十分に確保することができる。導電性メッシュの場合は、ディスプレイ用フィルターの透過率を低下させないために70%以上の開口率になるように設計するのが好ましく(ここで、導電性メッシュの開口率とは、導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を意味する)、従って導電性メッシュからなる導電層の上に塗工される光学機能層と導電層との接触面積はわずかであり、上記のような密着性の問題は生じない。
また、導電性メッシュ上に光学機能層を塗工形成する場合は、光学機能層の塗工性の観点からは、導電性メッシュの厚みは小さい方が好ましく、導電性メッシュの厚みは10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、特に3μm以下が好ましい。導電性メッシュの厚みが、上記範囲を超えて大きくなると導電層表面の凹凸が大きくなり平滑性が低下するので光学機能層の塗布性が悪化する。導電性メッシュの厚みの下限は電磁波遮蔽性能の観点から0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。
メッシュの線幅及び線間隔(ピッチ)は、開口率が70%以上となるように設計されるが、線幅としては5〜40μmが好ましく、線間隔(ピッチ)は100〜500μmの範囲が好ましい。
また、導電性メッシュからなる導電層は、プラスチックフィルム上に接着層を介さずに形成するのが好ましい。ここで接着層は、粘着材あるいは接着材で構成される層を意味する。導電層とプラスチックフィルムとの間に接着層が存在すると、導電層面の平滑性が更に低下し、光学機能層の塗布性を悪化させる。また更に、プラスチックフィルム上に接着層を介さずに直接に導電性メッシュを形成することによって、塗工形成された光学機能層の大部分はプラスチックフィルムと接触するので、上述したような樹脂を含む光学機能層を用いることによってプラスチックフィルムと光学機能層との密着性が向上する。
上記観点から本発明の導電層に好適な導電性メッシュの形成方法として、1)金属薄膜をエッチング加工する方法、2)印刷でプラスチックフィルム等の基材上に直接に導電性メッシュを形成する方法、3)感光性銀塩を用いる方法、4)印刷パターン上に金属膜積層後に現像する方法、及び5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法が挙げられる。以下にそれぞれの方法を詳細に説明する。
上記1)の金属薄膜をエッチング加工する方法は、プラスチックフィルム上に粘着材あるいは接着材からなる接着層を介さずに金属薄膜を形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフ法あるいはスクリーン印刷法等を利用してエッチングレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。金属薄膜の形成は、金属(例えば銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金など)をスパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、あるいはメッキ等の公知の方法を用いて行うことができる。
上記フォトリソグラフ法は、金属薄膜に紫外線等の照射により感光する感光層を設け、この感光層にフォトマスク等を用いて像様露光し、現像してレジスト像を形成し、次に、金属薄膜をエッチングして導電性メッシュを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
上記スクリーン印刷法は、金属薄膜表面にエッチングレジストインクをパターン印刷し、硬化させた後エッチング処理により導電性メッシュを形成し、この後レジストを剥離する方法である。
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、エッチングレジストで保護された導体部分以外の不要導体をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
上記2)の印刷で直接に導電性を形成する方法として、プラスチックフィルムに導電性ペースト等をメッシュパターンに印刷する方法、及びプラスチックフィルムに触媒インク等でメッシュパターンを印刷し、これに金属メッキを施す方法がある。後者の1つの方法として、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いてメッシュパターンに印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電性メッシュパターンを形成する方法がある。
上記3)の感光性銀塩を用いる方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層をプラスチックフィルムにコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法である。形成された銀メッシュは更に銅、ニッケル等の金属でメッキするのが好ましい。この方法は、国際公開第2004/7810号パンフレット、特開2004−221564号公報、特開2006−12935号公報等に記載されており、参照することができる。
上記4)の印刷パターン上に金属膜形成後に現像する方法は、プラスチックフィルム上に剥離可能な樹脂でメッシュパターンとは逆パターンの印刷を施し、その印刷パターン上に金属薄膜を上記1)と同様の方法で形成した後、現像して樹脂とその上の金属膜を剥離して金属のメッシュパターンを形成する方法である。剥離可能な樹脂として、水、有機溶剤あるいはアルカリに可溶な樹脂やレジストを用いることができる。この方法は、特開2001−185834号、特開2001−332889号、特開2003−243881号、特開2006−140346号、特開2006−156642号公報等に記載されており、参照することができる。
上記5)の金属薄膜をレーザーアブレーションする方法は、上記1)と同様の方法でプラスチックフィルム上に形成された金属薄膜をレーザーアブレーション方式で金属メッシュを作製する方法である。
レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることが出来る。
かかる固体レーザーの中でも、プラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。金属酸化物の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解および電解めっき法等を用いることができる。
上述した方法によって形成された導電層は、その厚みを小さくすることが可能であり、光学機能層を導電層上に直接に塗工形成することが可能となる。
本発明に用いることができる導電性メッシュのメッシュパターンとしては、格子状パターン、5角形以上の多角形からなるパターン、円形パターン、あるいはこれらの複合パターンが挙げられ、更にランダムパターンも好ましく用いられる。
本発明において、導電性メッシュは黒化処理するのが好ましい。黒化処理は、酸化処理や黒色印刷により行うことができる。例えば、特開平10−41682号、特開2000−9484号、2005−317703号公報等に記載の方法を用いることができる。黒化処理は、導電性メッシュの視認側の表面と両側面を行うのが好ましく、更に導電性メッシュの両面及び両側面を黒化処理するのが好ましい。
また、ディスプレイ用フィルターを連続生産ラインで効率よく製造するためには、導電層は連続メッシュであることが好ましい。連続メッシュとは、メッシュパターンが途切れることなく形成されていることであり、例えば、導電層を少なくとも有する積層体を長尺ロール状で製造した場合に、ロールの巻き方向にメッシュが連続的に形成されていることである。このような連続メッシュを用いることにより、積層体ロールをカットしてシート状のディスプレイ用フィルターを製造するときに、歩留まり及び生産性が向上する。また、連続メッシュは、いろんなサイズのディスプレイへの対応が容易であること、及び、ディスプレイ用フィルターの製造過程において欠陥が発生した場合は、欠陥部分のみの限られた量の廃棄ですむこと等の利点がある。
次に、本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法について説明する。
先ず、樹脂層内部に光吸収部を形成する、外光遮蔽層の製造方法について説明する。係る外光遮蔽層は、樹脂層にストライプ状の溝を形成し、この溝に黒色物質等の光吸収性物質を充填することによって製造することができる。
樹脂層にストライプ状の溝を形成するには、以下に示す方法を用いることができる。
1)シート状の樹脂層を形成した後、金型ロール等で樹脂層に溝を形成し、樹脂層を電離放射線等で硬化させる方法。
2)ベースフィルムと金型ロールとの間に樹脂を供給し、ベースフィルムと金型ロールとの間に樹脂層が形成された状態で電離放射線等を照射して硬化させる方法(この場合、ベースフィルムは離型フィルムであっても、ディスプレイ用フィルターの構成要素であってもよい。)
3)金型ロールに直接に樹脂を供給し、金型ロール上に樹脂層が密着している状態で電離放射線等を照射して硬化させる方法。
上記の金型ロールとして、樹脂層に形成する溝の形状に対応した突起がロールの円周方向に平行に複数形成されたロールを用いることができる。図8に、金型ロールの斜視図を示す。金型ロール20には、樹脂層に形成される溝の形状に対応した突起21が円周方向に平行に複数設けられている。以降、かかるロールを突起付き金型ロールと称す。
上記3)の製造方法について図9を用いて説明する。突起付き金型ロール20に供給装置22から硬化性樹脂が供給され、突起付き金型ロール20上に樹脂層23が形成される。樹脂層23が突起付き金型ロール20に密着している状態で、電離放射線照射装置24にて電離放射線を照射し樹脂層23を硬化させる。折り返しロール25で樹脂層23は突起付き金型ロール20から引き離されて、ストライプ状の溝が形成された長尺の樹脂層シートが製造される。このようにして長尺の樹脂層シートを製造することができるが、本発明は上記の製造方法に限定されない。
次に、樹脂層に形成した溝に光を吸収できる黒色物質を充填する方法について説明する。かかる充填は、長尺シートの状態で連続的に行うのが好ましい。充填方法としては、長尺の樹脂層シートに黒色物質をワイピング法で塗工する方法、あるいは黒色物質を塗工したのちスキーズ処理する方法を用いることができる。
黒色物質充填に際し、黒色物質を樹脂層に形成された溝に隙間なくほぼ完全に埋めることが重要である。溝内に気泡等の空気層が存在すると外観不良の原因となることがあるからである。この課題は、ストライプ状の溝を、図10のように、長尺の樹脂層シートの流れ方向(搬送方向)に平行に形成することによって解決する。
次に、プラスチックフィルム上に光吸収部を形成した後、光吸収部の空間を樹脂で埋設する外光遮蔽層の製造方法について説明する。
光吸収部は図11に示すロール30を用いて形成することができる。前記ロールには、円周方向に光吸収部に対応する溝31を有する。以降、かかるロールを溝付き金型ロールと称す。溝付き金型ロール30の溝31にカーボンブラック等の黒顔料が分散された硬化性樹脂を充填し、プラスチックフィルムを溝付き金型ロール30に密着した状態で硬化性樹脂を硬化させることによってプラスチックフィルム上に黒顔料と硬化性樹脂からなる光吸収部が転写される。なお該ロールからプラスチックフィルムへの光吸収部の転写において、ロールからの剥離性を向上させるためにロール面(溝部分を含む)をフッ素化合物やシリコーン化合物で被覆処理しておくのが好ましい。
図12は、外光遮蔽層を、プラスチックフィルム上に形成する工程の概略模式図である。黒顔料が分散された電離放射線硬化性樹脂が、供給装置32から矢印の方向に回転する溝付き金型ロール30に供給され、溝付き金型ロールの溝に充填される。溝付き金型ロール30に供給された余剰の樹脂はドクターブレード33でかき落とされる。次いで、連続走行するプラスチックフィルム34がニップロール35によって溝付き金型ロール30に密着され、プラスチックフィルム34が溝付き金型ロール30に密着した状態で電離放射線照射装置36にて電離放射線を照射して溝付き金型ロール30の溝に充填された樹脂を硬化させる。次いで、折り返しロール37でプラスチックフィルム34が溝付き金型ロール30から引き離される。このときに、溝付き金型ロール30の溝に充填され硬化した樹脂がプラスチックフィルム34に転写され、ストライプ状の光吸収部がプラスチックフィルム34に形成される。光吸収部が形成されたプラスチックフィルム34は、二つのミラーロール38,39の所定幅の隙間を通る。光吸収部が形成された面側のミラーロール38には、樹脂供給装置40から、硬化前の樹脂が供給され、二つのミラーロール38,39の間で、光吸収部の間の空間を埋めるようにして、プラスチックフィルム34上に圧着される。その後、電離放射線照射装置41にて電離放射線を照射され、樹脂が硬化した後、巻き取りロール42で巻き取られる。このようにして長尺の外光遮蔽シートを製造することができるが本発明は上記の製造方法に限定されない。
光吸収部の空間への樹脂の埋設に際し、光吸収部の空間に樹脂を隙間なくほぼ完全に埋めることが重要である。光吸収部の空間に気泡等の空気層が存在するとヘイズ値が高くなり本発明のディスプレイ用フィルターの透明性が低下することがあるからである。この課題は、ストライプ状の光吸収部を、図10に示すように、長尺の樹脂層シートの流れ方向(搬送方向)に平行に形成することによって解決する。
次に、本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用した場合の態様について説明する。
プラズマディスプレイ用前面フィルターに適用するには、前述したように本発明のディスプレイ用フィルターに電磁波遮蔽機能や近赤外線遮蔽機能を持たせるのが好ましい。
図6の構成のディスプレイ用フィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を設けたディスプレイ用フィルターの構成例の模式断面図を図13に示す。かかるディスプレイ用フィルターは、樹脂層3内部に光吸収部2が形成された外光遮蔽層1と、プラスチックフィルム6の一方の面に導電層50と光学機能層7が積層され、かつ他方の面に近赤外線遮蔽層51が積層された光学フィルム8とが、接着層9を介して貼合された構成になっている。
本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイ用前面フィルターに適用する場合は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着し筐体に組み立てたときに、導電層と筐体の外部電極とを電気的に接続するための電極を、ディスプレイ用フィルターに設ける必要がある。従って、ディスプレイ用フィルターに導電層に導通した電極を形成する必要がある。かかる電極の形成方法として、ディスプレイ用フィルターの周辺部(画像表示領域の外周)に額縁状に導電層を剥き出しにする方法があるが、導電層上に光学機能層を連続的に積層する製造方法には適用することができない。本発明においては、ディスプレイ用フィルターの周辺部に光学機能層側からレーザーを照射して、導電層に達する空隙を形成し、導電層を露出する方法が好ましく用いられる。以下、レーザーを用いた電極形成方法について詳細に説明する。
図14はディスプレイ用フィルターの平面図であり、図15は図14のB−Bの模式断面図である。ディスプレイ用フィルターの周辺部に、4辺の側辺に略平行に直線状に細長い空隙52が設けられている。このディスプレイ用フィルターの構成は図13と同一であり、図15において空隙52は光学機能層7の表面から光学機能層7を貫通して導電層50に達しており、導電層50が露出している。この導電層の露出部が電極となる。
図16は、空隙を直線状に不連続(破線状)に設けた態様の平面図である。ディスプレイ用フィルターの周辺部に、4辺の側辺に略平行に空隙52が破線状に設けられている。空隙を破線状に設ける場合は、1辺当たりの空隙部分の数は3〜50個が好ましく、5〜40個の範囲がより好ましい。1辺当たりの空隙部分の合計の長さ(A)と空隙部分と空隙部分の距離(間隔)の合計長さ(B)の比率(A/B)は、0.2〜20の範囲が好ましく、0.5〜10の範囲がより好ましい。
空隙52、即ち導電層の露出部は、ディスプレイ用フィルターの周辺部に設けられるが、ここで、ディスプレイ用フィルターの周辺部とは、かかるディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着した際に、ディスプレイの画像表示領域の外周に相当する部分のことを言い、好ましくはディスプレイ用フィルターの端部から1mm以上内側で、画像表示領域に相当する部分から1mm以上外側の範囲である。
ディスプレイ用フィルターは通常長方形であり、空隙は少なくとも対向する2辺の端縁部に設けるのが好ましく、4辺の端縁部にそれぞれ形成するのがより好ましい。空隙は、側辺に略平行に直線状に細長く溝状に形成するのが好ましい。空隙の幅は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、更に1.5mm以下が好ましい。空隙の幅の下限としては、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。空隙の幅が3mmを越えて大きくなると、導電層の露出面が大きくなり導電層が酸化劣化しやすくなるという問題、後述するように生産効率が低下するという問題が生じる場合がある。一方、空隙の幅が0.3mmより小さくなるとディスプレイ筐体(外部電極)との導通が不十分になり十分な電磁波遮蔽効果が得られない場合がある。
ディスプレイ用フィルターの1辺における空隙の長さは、ディスプレイ用フィルターの1辺の長さに対して10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、特に50%以上が好ましい。上記の比率は高い方が電磁波遮蔽性能の観点から好ましい。本発明における空隙は、直線状に連続した空隙であってもよいし、破線状の不連続な空隙であってもよい。後者の不連続な空隙の場合は合計の長さが上記比率の対象となる。
以下に空隙の形成方法について説明する。本発明において、導電層の上に位置する光学機能層等を物理的な方法で剥離することなく空隙を形成することが好ましく、レーザーを用いることによって光学機能層等の有機物を蒸発あるいは燃焼させることによって空隙を形成することができる。レーザーを照射する方法は、ディスプレイ用フィルターに物理的な接触なしに空隙が形成できること、ほぼ一定の幅で空隙を形成できること、及び空隙の深さ方向の制御が精度よくできるという利点がある。このようなレーザーの出力源としては、ヨウ素、YAG、CO2などがあるが、特にCO2レーザーは、空隙幅及び空隙深さが精度よく制御できること、及び金属からなる導電層は破壊せずに光学機能層を蒸発・燃焼させて空隙を形成できる点で好ましい。
空隙形成方法として、ナイフ等のカッター刃を用いて積層体表面から切り込みを入れる方法があるが、この方法では0.3mm以上の幅の空隙は形成できないので導通が取れないこと、及び導電性メッシュが切断されて導通が不十分になる場合がある。
空隙形成の他の方法として、超音波半田コテを用いて光学機能層を除去する方法があるが、この方法は高温のコテ先をディスプレイ用フィルターに接触させるのでプラスチックフィルムが熱変形を起こす可能性があること、及び導電層の露出を完全にかつ安定的に行うことが難しいという問題がある。
更に他の方法として、ドライエッチングする方法があるが、この方法は装置が大がかりとなること、及び操作中に高温となり積層体が変形することがある。
上述に鑑み、導電性メッシュの上に積層された光学機能層を貫通し導電性メッシュが露出するような空隙を形成する方法として、レーザーを用いる方法が極めて有益である。
空隙をレーザー照射で形成する場合、空隙の幅及び深さは、レーザーの焦点位置、レーザーの出力、及びレーザーの走査速度(ヘードスピード)を調整することによって制御することができる。空隙の幅は更に走査回数を調整することによって制御することができるが、1回の走査でも本発明が所望とする空隙を形成することができる。空隙の幅は3mm以下が好ましいことは前述した通りであるが、幅が3mmを越える空隙を形成するためにはレーザーの走査回数を多くする必要があり、生産効率が低下する。
空隙は、レーザーを用いて光学機能層を蒸発あるいは燃焼させて形成するので、導電層を完全に露出することが可能となる。図13の構成のフィルターにおいては、導電層上には光学機能層等の薄層が配置されるのみで、導電層からフィルター表面までの距離は小さくなるように設計されており、上述したような狭幅の空隙を形成するのみでアース効率を十分に確保することができる。この場合、導電層からフィルター表面までの距離は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、下限は光学機能層の設計上1μm以上が好ましい。
本発明においては、更に空隙に導電性材料を配置することが好ましく、これによって更に外部電極との導通が安定的に確保することができる。
空隙に導電性材料を配置する1つの態様として、空隙に導電性ペーストやはんだ等の流動性の導電性材料を塗布あるいは充填する態様がある。導電性ペーストとしては、銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などを含有する金属ペーストを用いることができる。
空隙に導電性材料を配置する他の態様として、空隙に挿入することができるように加工された導電性固体を配置する態様がある。導電性固体としては導電性金属あるいは非導電体の表面に導電性金属を被覆したものが用いられる。
空隙に導電性材料を配置する更に他の態様として、導電性粘着テープを空隙の上から貼り付ける態様がある。導電性粘着テープを貼り付けた後にヒートシーラー等で導電性粘着テープを加熱加圧するのが好ましい。本発明のディスプレイ用フィルターは、フィルター最表面から導電層表面までの距離が短いため、導電性粘着テープを加熱加圧することで、導電性粘着テープを導電層と接触させることができる。導電性粘着テープは、金属箔の一方の面に導電性粒子を分散させた粘着層を設けたものであって、この粘着層には、アクリル系、ゴム系、シリコン系粘着剤や、エポキシ系、フェノール系樹脂に硬化剤を配合したものを用いることができるが、特に架橋型導電粘着剤であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体を主成分とするポリマーとその架橋剤とを含む後架橋型接着層であるものが好ましい。
図17は、空隙に導電性材料を配置したディスプレイ用フィルターの模式断面図である。空隙52に導電性ペースト等からなる導電性材料53が塗布されて、導電層50と電気的に接続された電極が形成されている。
また、図18には、図7の構成の外光遮蔽層を用いた場合の、ディスプレイ用フィルターの模式断面図を示した。光学フィルム8の近赤外線遮蔽層51が積層された面と外光遮蔽層において光吸収部の空間を埋めた樹脂層が、接着層9を介して貼合されており、プラスチックフィルムの光吸収部を形成した面と逆側の面にディスプレイパネルに装着するための接着層10が形成されている。
上述した空隙の形成工程及び空隙に導電性材料を配置する工程において、ディスプレイ用フィルターの光学機能層側表面に更にカバーフィルムが積層された状態で行うのが好ましい。カバーフィルムは光学機能層等の表面層を保護する等の目的で設けられるものであり、最終的には剥離除去されるものである。カバーフィルムの上からレーザーを照射して空隙を形成することによって、レーザー照射時に発生する有機物の分解物残渣がディスプレイ用フィルターへ再付着するのを防止するという利点があり、またカバーフィルムが存在する状態で空隙に導電性ペースト等の導電性材料を充填することによって、光学機能層等の表面層に導電性材料が付着するのを防止する効果、及び表面層から盛り上がった電極を容易に形成することができるという利点がある。
本発明に用いられるカバーフィルムとしては、各種プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリアセチルセルロースフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、エポキシ系フィルム、ポリウレタンフィルム等が挙げられ、これらの中でもポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムが好ましく用いられる。カバーフィルムの厚みは、10〜100μmが好ましい。
カバーフィルムは、最終的にはディスプレイ用フィルターから剥離除去されるので、剥離可能な粘着材または接着材が用いられる。あるいは、カバーフィルムとして粘着性を有するフィルムを用いる場合には、粘着材等は不要である。カバーフィルムはディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着する前もしくは装着した後に剥離除去するのが好ましい。