JP5151222B2 - 塩素系漂白剤存在下での耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
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C:0.02mass%以下
Cは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であるが、0.02mass%を超えるとプレス加工性が低下するともに、Ti4C2S2の生成を促進して、塩素系漂白剤存在下での耐食性を低下させる。よって、Cは少ないほど好ましく、0.02mass%以下とする。好ましくは0.015mass%以下である。
Nは、鋼中に固溶すると、耐食性を向上させる効果がある。しかし、0.02mass%を超えて添加すると、プレス加工性が低下する。よって、N含有量は0.02mass%以下とする。好ましくは0.015mass%以下である。
Siは、脱酸剤として添加される有用な元素であり、含有量が0.05mass%未満では、十分な脱酸効果が得られず、酸化物が多量に鋼中に分散してプレス加工性が劣化する。一方、1.0mass%超え添加すると、鋼が硬質化して機械的性質の劣化を招く。よって、Siは0.05〜1.0mass%の範囲とする。
Mnは、脱酸作用があるが、過剰な添加は固溶強化により加工性を損なう上、MnSとして析出して耐食性を低下するので、含有量は低いほうが望ましい。よって、Mnの含有量は0.3mass%以下とする。
Pは、耐食性および熱間加工性を劣化させるため、表面性状が劣化する。よって、S含有量は低いほうが望ましく、0.04mass%以下とする。好ましくは0.03mass%以下である。
Sは、本発明において、重要な成分の一つである。ステンレス鋼中のSは、Mnと非金属介在物MnSを作り、大気中の水分と反応してpHを低下させ、発銹の原因となることが従来から知られている。そのため、MnよりもSと結合しやすいTiを添加し、SをTi系の非金属介在物として無害化する方法がとられてきた。TiとSの非金属介在物には、Ti4C2S2とTiSとが知られており、このうちTi4C2S2は粗大な介在物となりやすい。塩素系漂白剤存在下で腐食させると、発銹点に粗大なTi4C2S2が存在している個所が多く確認されたことから、Ti4C2S2から発銹が起こっているものと考えられる。逆に、微細に分散したTiSの周囲には、非金属介在物を起点とする腐食は観察されなかった。Ti4C2S2は、S含有量が0.010mass%を超えると、生成が促進されて粗大化するので、Sは0.010mass%以下とする必要がある。好ましくは、0.005mass%以下である。
Alは、脱酸のために添加される成分であるが、0.1mass%を超えると、Al系の非金属介在物の増加により表面疵の発生を招くとともに、加工性も低下させる。よって、Alは0.1mass%以下とする。
Crは、フェライト系ステンレス鋼としての耐食性を決定する重要な元素であり、そのためには20.5mass%以上添加する必要がある。そして、Crは、含有量が高いほど耐食性を向上するが、24.0mass%を超えて添加すると、σ相を生成しやすくなり、プレス加工性が低下する。よって、Crの含有量は20.5〜24.0mass%の範囲とする。好ましくは、21.0〜23.0mass%の範囲である。
Cuは、本発明において、主要な成分の一つである。腐食発生後、ステンレス鋼の表面に皮膜を形成し、アノード反応による地鉄の溶解を低減する効果がある。また、耐発銹性の向上にも有効であるが、特に耐隙間腐食性の向上に有効な元素である。さらに、発明者らは、Cuを添加することで、微細なTiSの周囲の不動態皮膜が改質され、耐食性がより向上することを新規に見出した。これらの効果は、0.3mass%以上の添加で発現する。しかし、0.8mass%を超えるCuの過剰な添加は、Cu自身の溶解を促進し、却って耐食性を低下させる。よって、Cuは0.3〜0.8mass%の範囲とする。好ましくは、0.4〜0.6mass%の範囲である。
Niは、耐食性を向上する効果があるが、1.0mass%を超えて添加すると、鋼を硬質化する。よって、Niは1.0mass%以下とする。
Tiは、本発明において重要な成分の一つであり、Sを固定して、MnSの生成による耐発銹性の低下を防ぐとともに、C,Nを固定してCr炭窒化物形成による鋭敏化を抑制する効果がある。上記鋭敏化防止効果は、0.2mass%以下のTi添加では十分な効果が得られない。さらに、Tiは、前述したように、Cuの添加されたフェライト系ステンレス鋼において、SをTiSとして微細に析出させることで耐食性を向上させる効果がある。しかし、Tiの0.3mass%を超える添加は、加工性を低下させるとともに、Ti4C2S2の析出を促進し、塩素系漂白剤存在下での耐食性を低下させる。よって、Tiは0.2〜0.3mass%の範囲とする。好ましくは、0.26〜0.29mass%の範囲である。
前述したように、粗大なTi4C2S2が生成されると、塩素系漂白剤の存在下では、これを起点として発銹する。そこで、発銹とTi4C2S2となるS量の相関について調査したところ、Ti4C2S2となるS量が0.005mass%以下ならば、生成したTi4C2S2も比較的小さく、発銹起点となりにくいことが明らかとなった。よって、Ti4C2S2となるS量は0.005mass%以下とする。
Claims (1)
- C:0.02mass%以下、Si:0.05〜1.0mass%、Mn:0.3mass%以下、P:0.04mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.1mass%以下、Cr:20.5〜24.0mass%、Cu:0.3〜0.8mass%、Ni:1.0mass%以下、Ti:0.2〜0.3mass%、N:0.02mass%以下の成分組成を有する鋼スラブを1150℃〜1200℃に加熱後、仕上圧延終了温度を700℃〜900℃とする熱間圧延し、20℃/s以上の冷却速度で500℃以下まで冷却して巻き取り、800〜1000℃の温度で熱延板焼鈍し、酸洗し、冷間圧延し、800℃以上となる時間を1分以下とする冷延板焼鈍し、酸洗することで、Ti4C2S2としてのS量が0.005mass%以下である鋼板を得ることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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