JP5149921B2 - 癌細胞増殖抑制性ハイブリッド型リポソーム製剤 - Google Patents
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さらに、本発明者等は無毒性のジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)と毒性が小さい直鎖型ポリオキシエチレンアルキルエーテル(CmH2m+1O(EO)nH)を含み、抗癌剤を含まない2成分系ハイブリッド型リポソーム自体にリンパ系の培養癌細胞に対する増殖抑制効果があることを見いだし、悪性黒色腫担癌マウスを用いたin vivo実験においてもある程度の延命効果が見られることも明らかにした(C. Imamura, Y.Kemura, Y. Matsumoto, R. Ueoka, Biol. Pharm. Bull., 20, 1119(1997); 金納明弘、児玉龍平,寺田安隆、松本陽子、上岡龍一、Drug Delivery System, 13, 101(1998))。
本発明の別の目的は、免疫原性が低く、生分解性の素材を利用した、効果的なドラッグデリバリーシステム(DDS)を提供することである。
前述のように、本発明者等はこれまでに1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)等を含む2成分系ハイブリッド型リポソームがラット脳腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示し、in vivoにおいても抗腫瘍性を有することを示し(特開平8-151333号)、更に研究を進める過程で、抗癌剤を含まないハイブリッド型リポソームも癌細胞増殖抑制効果を有することを発見し、これらのハイブリッド型リポソームについても報告してきた。本発明はこれらの知見に基づいて開発された、更に高い癌細胞増殖抑制効果を示す、抗癌剤を含まない、副作用の極めて少ない癌治療用のハイブリッド型リポソームである。
3成分系ハイブリッド製剤はリン脂質、非糖ミセル系界面活性剤の他に糖ミセル系界面活性剤を含むことを特徴とする。糖を第3の成分に含むことにより、これらのハイブリッド型リポソームは細胞膜表面への親和性が増大していると考えられる。
これら両タイプのリポソームとも、その成分比または組成を変化させることにより目的に応じてそのサイズ、膜流動性、相転移温度および疎水性を制御することができる。
本発明の2成分系ハイブリッド型リポソームは適切な量のリン脂質、適切な量の非糖ミセル系界面活性剤を緩衝水溶液中で超音波処理することによって得られる。また、本発明の3成分系ハイブリッド型リポソームは、前述のような超音波処理をした後、糖ミセルを添加し、さらに超音波処理をすることによって調製することができる。
(式中n=10〜25、m=12〜20、Z=C1〜C12のアルキル基)
が好ましい。より具体的には、ポリキシエチレンソルビタンモノラウレート(ツイーン20(Tween20))および、一般式(I)中、mが12〜14でかつnが10〜23であるアルキルポリオキシエチレングリコールである。特に好ましいのは、mが12または14でnが10または12のポリオキシエチレングリコールである。
(式中n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味する。)
(式中、n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味する。)
(式中n=7〜17)、
(式中n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味する。)
(式中n=7〜17であり、---はα型またはβ型を意味する。)
本発明の3成分系ハイブリッド型リポソームについても、リン脂質、ミセル界面活性剤、糖ミセルの使用量は、リポソームを形成することができる限り任意である。これら3成分の比も2成分系ハイブリッドリポソームに準じた範囲で任意に変更できるが、リン脂質と糖ミセルのみでは安定なリポソームが形成されないことは注意を要する。
本発明の2成分系および3成分系ハイブリッド型リポソーム製剤は癌患者に対して直接投与することができ、例えば、患者体重1kgあたり50〜300μg/1日を腹腔内、静脈内投与することができる。
リン脂質であるDMPG(L-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール)および非糖ミセル系界面活性剤であるC12H25O(EO)10H(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、上述の一般式(I)においてm=12、n=10の場合に相当する。以下においては、C12(EO)10と略記する。)を必要とする成分比に応じて一定量をとり、 BRANSONIC モデルB2210を用いて、90W、45℃にて窒素雰囲気下、超音波処理し(5分間/5ml)、均一溶液が得られたことを確認した後、孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌して2成分系ハイブリッド型リポソームを調製した。
リン脂質としてL-α-ジミルストイルホスファチジルコリン(DMPC)を使用し、非糖ミセル系界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)を用い、実施例1のようにして調製したハイブリッド型リポソームに、最終成分比に応じて糖ミセル系界面活性剤を添加した。使用した糖ミセル系界面活性剤は、以下のものである。すなわち、β-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート(DeFG)(同仁化学(株))、β-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエート(DoFG)(同仁化学(株))、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド(OcGlu)(同仁化学)、n-デシル-β-D-グルコピラノシド(DeGlu)(シグマ)、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド(DoGlu)(シグマ)、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド(OcMal)(CALBIOCHEM)、n-デシル-β-D-マルトピラノシド(DeMal)(シグマ)、のn-ドデシル-β-D-マルトピラノシド(DoMal)(シグマ)を使用した。これらの糖ミセル系界面活性剤の一定量を最終成分比に応じて加え、更にBRANSONIC モデルB2210を用いて、90W、45℃にて窒素雰囲気下、超音波処理し(3分間/5ml)、均一溶液が得られたことを確認した後、孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌して3成分系ハイブリッド型リポソームを調製した。
膜サイズの経時変化を測定することによって2成分系および3成分系ハイブリッド型リポソームの安定性を調べた。ハイブリッド型リポソームの膜サイズは、サブミクロン・サイザー(BROKKHAVENBI-90)を用い、動的光散乱法により測定した。光源としてHe-Neレーザーの632.8nmの発振線を出力35 mWで用い、散乱角90°で測定し、得られた拡散係数(D)から式(1)(Stokes-Einsteinの式)に従い膜の直径dhyを求めた。
dhy = kT/3πηD (1)
ここで、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、ηは溶媒の粘度である。37℃にてインキュベーションしたハイブリッド型リポソームについてdhyの値を調製後0日〜35日にわたって測定し、結果を記録した。
2成分系ハイブリッド型リポソームDMPG/10mol%C12(EO)10は一定して1ヶ月以上安定であった。この結果を図1に示した。
3成分系ハイブリッド型リポソームは、調製後1日目から2日目にかけて急激なサイズの増加が観察されたが、3日目以降はいずれのハイブリッド型リポソームも1ヶ月以上にわたって安定であった。その結果を図2に示す
ハイブリッド型リポソームのゲル・液晶の相転移温度(Tc)は、示差走査型熱量計(SEIKO SSC 5200 DSC 120)を用いて測定した。資料溶液をAg製容器に密封し、昇温速度1.0℃/分で測定した。2成分系および3成分系ハイブリッド型リポソームの相転移温度は、生理的条件温度(約37℃)よりもかなり低く、生理的条件では安定に液晶状態で保持されることが確認された。その結果を表1に示す。
DMPG/10mol%C12(EO)10ハイブリッド型リポソームについては、ヒト肺せん癌細胞(RERF-LC-OK)、ヒト胃癌細胞(GT3TKB)、ヒト肝臓癌細胞(Hep-G2)およびマウスのルイス肺癌細胞(LLC)を用いて癌細胞増殖抑制性を評価した。3成分系ハイブリッド型リポソームについては、ヒト脳腫瘍細胞(U251)、ヒト肝臓癌細胞(Hep-G2)およびヒト肺せん癌細胞(RERF-LC-OK)を用いて癌細胞増殖抑制性を評価した。
培養培地として、RERF-LC-OK細胞にはRPMI-1640+10%ウシ胎仔血清(FBS)を、GT3TKB細胞、Hep-G2細胞およびU251細胞にはダルベッコ改変ミニマムエセンシャルメディウム(DMEM)+10%FBSを用いた。
初期細胞数を約1.0x104細胞/mlに調製した細胞懸濁液100μlを96ウェルのマルチプレートに分注し、24時間プレインキュベーションした後テストサンプルを10μl/ウェル添加した。37℃にて、CO2濃度5.0%、湿度95%の条件下で48時間培養後、WST-1溶液を10μl/ウェル添加した。3時間後、分光光度計(EIA READER)を用いて450nmで吸光度を測定した。テストサンプル無添加の場合の吸光度(Acontrol)に対する、テストサンプルを添加した場合の吸光度(Amean)の比(Amean/Acontrol)を算出することにより、癌細胞増殖抑制効果を評価した。DMPG/10mol%C12(EO)10の癌細胞増殖抑制効果を表2および図3に、3成分系ハイブリッド型リポソームの癌細胞増殖抑制効果を図4〜図6に示した。
Claims (8)
- 有効成分としてリン脂質と非糖ミセル系界面活性剤と糖ミセル系界面活性剤のみを含む癌治療用ハイブリッド型リポソーム製剤であって、前記糖ミセル系界面活性剤がアルキルグルコシド、アルキルチオグルコシド、セレブロシド、アルキルマルトピラノシド、フルクトフラノシルアルキルグルコピラノシドおよびアルキルラクトピラノシドよりなる群から選ばれることを特徴とする、前記リポソーム製剤。
- リン脂質がL-α-ジアシルホスファチジルコリン、L-α-ジアシルホスファチジルグリセロール、L-α-ジアシルホスファチジルセリン、L-α-ジアシルホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、L-α-ジアシルホスファチジン酸、L-α-ジアシルホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピンよりなる群から選ばれる請求項1記載のハイブリッド型リポソーム製剤。
- リン脂質がL-α-ジアシルホスファチジルコリンである、請求項2記載のハイブリッドリポソーム製剤。
- 非糖ミセル系界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびアルキル若しくはアリールポリオキシエチレングリコールよりなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載のリポソーム製剤。
- 非糖ミセル系界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、請求項4記載のリポソーム製剤。
- 糖ミセル系界面活性剤がβ-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエート、β-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエート、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド、n-デシル-β-D-マルトピラノシド、または、n-ドデシル-β-D-マルトピラノシドである、請求項1〜5のいずれか1項記載のリポソーム製剤。
- 糖ミセル系界面活性剤がフルクトフラノシルアルキルグルコピラノシドである、請求項6記載のリポソーム製剤。
- 糖ミセル系界面活性剤がβ-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドモノデカノエートまたはβ-D-フルクトフラノシル-α-D-グルコピラノシドモノドデカノエートである、請求項7に記載のリポソーム製剤。
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